説明

汚泥処理方法及び汚泥処理システム

【課題】汚泥の高濃度化の効果的かつ確実な実現、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を全て満足する汚泥処理方法及び汚泥処理システムの提供を目的とする。
【解決手段】本発明は、原汚泥を減圧下で発泡させ発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り濃縮汚泥を得る減圧濃縮工程と、高温蒸気を高速で噴出させ、この高温蒸気を動作流体として真空状態を形成する真空形成工程と、上記濃縮汚泥と高温蒸気とを接触させ可溶化汚泥を得る可溶化工程と、上記可溶化汚泥を滞留させて脱気し脱気汚泥を得る固気分離工程と、上記脱気汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させ消化汚泥を得るメタン発酵工程とを有する汚泥処理方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥処理方法及び汚泥処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
下水汚泥などの汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させて処理する汚泥処理技術として、様々な汚泥処理方法や汚泥処理システム等が提供されている。かかるメタン発酵を利用した汚泥処理技術において、近年における環境問題の観点から、エネルギーの効果的かつ効率的な利用が要請されている。また、このようなメタン発酵を利用した汚泥処理技術において、メタン発酵の効率化や設備のコンパクト化等の観点から、処理に用いる汚泥の濃度を高める必要があり、加えて、このような汚泥の高濃度化を効果的かつ確実に実現する必要がある。
【0003】
このように、高濃度の汚泥をメタン発酵させて処理する技術としては、例えば、含水率90%以下の高濃度汚泥を超臨界若しくは亜臨界水処理といった高温高圧の領域内で処理する高温高圧工程と、この高温高圧工程の産出物をメタン発酵処理するメタン発酵工程とを有する高濃度汚泥の処理方法が挙げられる(特開2003−103299号公報等)。かかる高濃度汚泥の処理方法は、高濃度汚泥を超臨界若しくは亜臨界水処理といった、高温高圧の領域内で処理した後にメタン発酵することにより、高濃度メタン発酵を可能としたことを特徴とするものである。
【0004】
しかしながら、上述の高濃度汚泥の処理方法は、高濃度の汚泥をメタン発酵処理することができるものの、汚泥の高濃度化を効果的かつ確実に実現する手段について具体的に開示しておらず、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を具体的かつ十分に満足するには至っていない。また、かかる高濃度汚泥の処理方法は、汚泥からのエネルギー回収等のエネルギーの効果的かつ効率的な利用について具体的に開示していない。
【0005】
つまり、汚泥の高濃度化の効果的かつ確実な実現と、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化と、エネルギーの効果的かつ効率的な利用とを全て満足する汚泥処理方法及び汚泥処理システムは、未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−103299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの不都合に鑑みてなされたものであり、汚泥の高濃度化の効果的かつ確実な実現、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を全て満足する汚泥処理方法及び汚泥処理システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、
原汚泥を減圧下で発泡させ、発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り、濃縮汚泥を得る減圧濃縮工程と、
高温蒸気を高速で噴出させ、この高温蒸気を動作流体として真空状態を形成する真空形成工程と、
上記濃縮汚泥と高温蒸気とを接触させ、可溶化汚泥を得る可溶化工程と、
上記可溶化汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離工程と、
上記脱気汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させ、消化汚泥を得るメタン発酵工程と
を有する汚泥処理方法である。
【0009】
当該汚泥処理方法は、上記減圧濃縮工程を有することで、減圧下において原汚泥中の溶存ガスが発泡し、原汚泥中の固体成分が発泡ガスを同伴して浮上するにつれて固体成分の層が厚く形成され、圧密による高い濃縮効果を発揮し、高濃度の濃縮汚泥を得ることができ、その結果、原汚泥の高濃度化を効果的かつ確実に実現することができる。また、上記真空形成工程を有することで、高速で噴出される高温蒸気がエジェクター等を通過することで真空状態を容易に形成し減圧濃縮工程で得られる濃縮汚泥を容易に減圧吸引できると共に、この高温蒸気により濃縮汚泥を後述する可溶化工程において容易に可溶化できることから、高温蒸気の噴出という一つの操作により真空状態の形成と濃縮汚泥の可溶化とを同時に実現できることとなり、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を達成することができる。また、上記可溶化工程を有することで、高濃度かつ高粘度の上記濃縮汚泥を高温蒸気の凝縮衝撃により分解し加熱して可溶化汚泥を得ることができ、かかる可溶化汚泥は、後述するメタン発酵工程におけるメタン発酵の消化速度や消化率を飛躍的に向上させることから、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を十分に実現することができる。また、固気分離工程を有することで、後述するメタン発酵工程におけるメタン発酵を阻害するアンモニアガス等を脱気して脱気汚泥を得ることができ、このアンモニアガス等の脱気により高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を効果的かつ確実なものとすることができる。また、メタン発酵工程において、加熱された高濃度の脱気汚泥が嫌気性条件下で十分な消化速度及び消化率を発揮しつつメタン発酵され消化汚泥を得ることができ、加えて、加熱された脱気汚泥がメタン発酵工程におけるメタン発酵に最適な温度を維持し、エネルギー効率的に良好なメタン発酵を維持することができる。つまり、当該汚泥処理方法は、汚泥の高濃度化の効果的かつ確実な実現、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を、簡素でコンパクトな構成により全て満足することができる。
【0010】
上記メタン発酵工程で得られる消化汚泥を原汚泥として用いるとよい。このような消化汚泥は、メタン発酵工程においてメタン発酵の最適温度に加熱されており、また、原汚泥と比較して溶存ガスを多く含むものである。つまり、上記メタン発酵工程で得られる消化汚泥を原汚泥として用いることで、減圧濃縮工程における減圧下で沸点降下による沸騰蒸発現象により汚泥中の水蒸気を含む発泡ガスがより多く発生し、かかる発泡ガスが汚泥の固形成分を同伴しつつ汚泥中の熱を多く回収して浮上する。その結果、このように熱を多く回収した発泡ガスを含む濃縮汚泥を高温蒸気で凝縮加熱する場合のエネルギー量を少なくすることができる。つまり、当該汚泥処理方法は、このような水蒸気を含む発泡ガスによる効率的な熱回収により、真空形成工程や可溶化工程における高温蒸気の使用エネルギー量を低減できることに加え、水蒸気を含む発泡ガスや高温蒸気により約55℃〜100℃程度に加熱された脱気汚泥をメタン発酵工程でメタン発酵することからメタン発酵工程における最適温度を恒常的に維持でき、メタン発酵工程においてメタン発酵の最適温度を維持するための加熱操作の必要がなくなり、省エネルギー化やエネルギーの効率的な回収及び利用を単純な手段により確実に実現することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するための別の発明は、
原汚泥を減圧下で発泡させ、発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り、濃縮汚泥を得る減圧濃縮装置と、
高温蒸気を高速で噴出させる高温蒸気噴出装置と、
上記高温蒸気を動作流体として用い、真空状態を形成するエジェクターと、
上記濃縮汚泥と高温蒸気とを接触させ、可溶化汚泥を得る可溶化槽と、
上記可溶化汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離槽と、
上記脱気汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させ、消化汚泥を得るメタン発酵槽と
を備える汚泥処理システムである。
【0012】
当該汚泥処理システムは、上記減圧濃縮装置を備えることで、上述の当該汚泥処理方法の場合と同様に、減圧下において原汚泥中の溶存ガスが発泡し、原汚泥中の固体成分が発泡ガスを同伴して浮上するにつれて固体成分の層が厚く形成され、圧密による濃縮効果により原汚泥の高濃度化を効果的かつ確実に実現することができる。また、上記高温蒸気噴出装置を備えることで、後述するエジェクターの真空状態の形成と濃縮汚泥の可溶化とを高温蒸気の噴出という一つの手段により同時に実現することができ、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を達成することができる。また、上記エジェクターを備えることで、上述の高温蒸気を動作流体として真空状態を容易に形成できると共に、減圧濃縮装置で得られる濃縮汚泥を容易に減圧吸引することができる。また、上記可溶化槽を備えることで、高濃度かつ高粘度の上記濃縮汚泥を高温蒸気の凝縮衝撃により分解し加熱して可溶化汚泥を得ることができ、かかる可溶化汚泥は、後述するメタン発酵槽におけるメタン発酵の消化速度や消化率を飛躍的に向上させることから、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を十分に実現することができる。また、固気分離槽を備えることで、後述のメタン発酵槽におけるメタン発酵を阻害するアンモニアガス等を脱気して脱気汚泥を得ることができ、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を効果的かつ確実なものとすることができる。また、メタン発酵槽を備えることで、上述の脱気汚泥が嫌気性条件下で効果的かつ効率的にメタン発酵され、消化汚泥を得ることができる。つまり、当該汚泥処理システムは、汚泥の高濃度化の効果的かつ確実な実現、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を、簡素でコンパクトな構成により全て満足することができる。
【0013】
上記メタン発酵槽で得られる消化汚泥を原汚泥として用いるとよい。このように、上記メタン発酵槽で得られる消化汚泥を原汚泥として用いることで、上述した当該汚泥処理方法の場合と同様に、減圧濃縮装置において減圧下で汚泥中の水蒸気を含む発泡ガスがより多く発生し、かかる発泡ガスが汚泥中の固体成分を同伴しつつ汚泥中の熱を多く回収して浮上し、その結果、熱を多く回収した発泡ガスを含む濃縮汚泥を高温蒸気で凝縮加熱する場合のエネルギー量を少なくすることができる。つまり、当該汚泥処理システムは、かかる水蒸気を含む発泡ガスによる効率的な熱回収により、エジェクターや可溶化槽における高温蒸気の使用エネルギー量を低減できることに加え、水蒸気を含む発泡ガスや高温蒸気により約55℃〜100℃程度に加熱された脱気汚泥をメタン発酵槽でメタン発酵することからメタン発酵槽における最適温度を恒常的に維持でき、メタン発酵槽においてメタン発酵の最適温度を維持するための加熱操作の必要がなくなり、省エネルギー化やエネルギーの効率的な回収及び利用を単純な手段により確実に実現することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理システムは、原汚泥を減圧下で発泡させ浮上濃縮を図り、高速で噴出する高温蒸気を動作流体として真空状態を形成すると共に浮上濃縮された汚泥を減圧吸引し、かかる濃縮汚泥と高温蒸気とを接触させ可溶化し、この可溶化汚泥を滞留させて脱気し、脱気された汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させることから、従来の課題である汚泥の高濃度化の効果的かつ確実な実現、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を、簡易かつコンパクトな構成により全て解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る汚泥処理方法を示すフロー図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る汚泥処理システムを示す概略構成図である。
【図3】本発明の別の実施形態に係る汚泥処理システムを示す概略構成図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る汚泥処理システムを示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。
【0017】
まず、図1を参照しつつ、当該汚泥処理方法に係るSTP1〜STP5の各工程について説明する。具体的には、当該汚泥処理方法は、原汚泥Pを減圧下で濃縮し濃縮汚泥Qを得るための減圧濃縮工程STP1、高温蒸気Sを動作流体として真空状態を形成するための真空形成工程STP2、濃縮汚泥Qと高温蒸気Sとを接触させ可溶化汚泥Tを得るための可溶化工程STP3、可溶化汚泥Tを脱気し脱気汚泥Uを得るための固気分離工程STP4、脱気汚泥Uをメタン発酵させ消化汚泥Vを得るためのメタン発酵工程STP5を主として有する。
【0018】
(減圧濃縮工程)
減圧濃縮工程STP1は、原汚泥Pを減圧下で発泡させ、発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り、濃縮汚泥Qを得るための工程である。この減圧濃縮工程STP1において、減圧下で原汚泥P中の溶存ガスが発泡し、発泡ガスが発生する。かかる発泡ガスが原汚泥P中の固体成分を同伴して浮上し、発泡ガスを含む固体成分と液体成分とに固液分離する。かかる発泡ガスを含む固体成分が浮上し積層するにつれて固体成分の層が厚く形成され、圧密による高い濃縮効果を発揮し、その結果、高濃度の濃縮汚泥Qを得ることができる。つまり、減圧濃縮工程STP1は、原汚泥Pを減圧下で発泡させるという簡易な手段により、原汚泥Pの高濃度化を効果的かつ確実に実現することができる。また、この濃縮汚泥Qは、浮上移動の最終地点の位置、即ち、最上位に蓄積されることから、高濃度かつ高粘度の濃縮汚泥Qの排出や回収を上方から容易に達成することができ、濃縮汚泥Qの排出の容易化を実現することができる。なお、上述の液体成分は脱離液Rとして取り扱い、減圧濃縮工程STP1から排出することができる。
【0019】
減圧濃縮工程STP1における減圧手段としては、特に限定されず、例えば、後述する真空形成工程STP2の真空状態を利用する手段や、別途真空ポンプなどを用いる手段等が挙げられる。
【0020】
減圧濃縮工程STP1における減圧下の負圧としては、60kPa以上100kPa以下が好ましく、70kPa以上90kPa以下がより好ましい。このように、減圧濃縮工程STP1における減圧下の負圧を上記範囲とすることで、発泡ガスを含む原汚泥Pの固体成分の浮上速度を向上させ、その結果、上述した汚泥の圧密による濃縮効果の向上を確実なものとすることができると共に、浮上濃縮された濃縮汚泥Qの排出や回収の容易性を向上させることができる。かかる負圧が上記上限を超えると、原汚泥P中のガスの発泡が過度に促進され、上述した発泡ガスによる原汚泥Pの固体成分の同伴浮上の効率性が低下し、汚泥濃縮効果が低減する可能性がある。また、かかる負圧が上記下限未満であると、原汚泥P中の溶存ガスの発泡が不十分となり、原汚泥Pの固形成分の浮上効果が低減し、汚泥濃縮効果が低減する可能性がある。
【0021】
原汚泥Pの種類としては、特に限定されず、例えば、活性汚泥、初沈汚泥、余剰汚泥、凝集沈殿汚泥、浄化槽汚泥、有機性汚泥等が挙げられる。ここで、「活性汚泥」とは、微生物の集合体に汚水中の浮遊性の有機物、無機物及び種々の原生動物等が吸着又は付着して泥状となったものを意味する。
【0022】
減圧濃縮工程STP1で発生する発泡ガスの種類としては、具体的には、アンモニアガス、水素ガス、硫化水素ガス、メタンガス、二酸化炭素ガス、水蒸気等が挙げられる。
【0023】
(真空形成工程)
真空形成工程STP2は、高温蒸気Sを高速で噴出させ、この高温蒸気Sを動作流体として真空状態を形成するための工程である。具体的には、この真空形成工程STP2は、高速で噴出された高温蒸気Sをエジェクター等に通過させることで、高温蒸気Sの流速が増す代わりに圧力が低下し、かかる圧力損失により真空状態を容易に発生させることができ、上述した減圧濃縮工程STP1で得られる濃縮汚泥Qを容易に減圧吸引することができる。また、真空形成工程STP2で噴出される高温蒸気Sは、後述する可溶化工程STP3において凝縮発熱により濃縮汚泥Qを容易に可溶化することができる。つまり、真空形成工程STP2は、高温蒸気Sを高速で噴出させるという一つの操作で、減圧濃縮工程STP1における濃縮汚泥Qの減圧吸引に加え、可溶化工程STP3における濃縮汚泥Qの可溶化も実現できることから、エネルギーの効果的かつ効率的な利用を達成することができる。なお、かかる真空形成工程STP2における真空状態を利用して、上述の減圧濃縮工程STP1における減圧を行うこともできる。
【0024】
上記高温蒸気Sを高速で噴出させる手段としては、公知の手段を用いることができ、例えば、蒸気ボイラー等が挙げられる。
【0025】
上記高温蒸気Sの温度としては、120℃以上180℃以下が好ましく、150℃以上170℃以下がより好ましい。このように、真空形成工程STP2における高温蒸気Sの温度を上記範囲とすることで、後述する可溶化工程STP3における濃縮汚泥Qを十分に可溶化できると共に、可溶化汚泥Tを十分に加熱し、後述のメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵の最適温度を維持させることができる。この高温蒸気Sの温度が上記上限を超えると、温度を上げるためのエネルギーが多く必要となり、省エネルギー化の要請に反するおそれがある。また、かかる高温蒸気Sの温度が上記下限未満であると、後述する可溶化工程STP3における濃縮汚泥Qの可溶化を十分に達成できない可能性があり、また、可溶化汚泥Tを十分に加熱できず、後述のメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵の最適温度を維持することが困難となる可能性がある。
【0026】
上記高温蒸気Sの噴出圧力としては、200kPa以上1000kPa以下が好ましく、500kPa以上800kPaがより好ましい。このように、真空形成工程STP2における高温蒸気Sの噴出圧力を上記範囲とすることで、真空形成工程STP2の真空状態を利用して減圧濃縮工程STP1における減圧を行う場合には、上述した原汚泥Pの浮上濃縮を十分に達成できる程度の減圧状態を形成することができると共に、上述した減圧濃縮工程STP1で得られる濃縮汚泥Qの減圧吸引を確実に達成することができる。この高温蒸気Sの噴出圧力が上記上限を超えると、噴出圧力を上げるためのエネルギーが多く必要となり、省エネルギー化の要請に反するおそれがある。また、かかる高温蒸気Sの噴出圧力が上記下限未満であると、上述した濃縮汚泥Qの減圧吸引を十分に達成できない可能性がある。
【0027】
(可溶化工程)
可溶化工程STP3は、上記濃縮汚泥Qと高温蒸気Sとを接触させ、可溶化汚泥Tを得るための工程である。具体的には、可溶化工程STP3は、真空形成工程STP2において噴出された高温蒸気Sと、減圧吸引された濃縮汚泥Qとを真空条件下で接触させ、次いで大気圧下に解放することで高温蒸気Sの凝縮衝撃により濃縮汚泥Qを加熱すると同時に分解し、低粘度で流動性が高く、加熱されている可溶化汚泥Tを得ることができる。このような可溶化汚泥Tは、後述するメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵の消化速度や消化率を飛躍的に向上させることから、可溶化工程STP3は、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を十分に実現することができる。
【0028】
上述の加熱された可溶化汚泥Tの温度としては、具体的には、後述するメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵が中温メタン発酵の場合は55℃以上85℃以下、高温メタン発酵の場合は70℃以上100℃以下であるとよい。このように可溶化汚泥Tの温度を上記範囲とすることで、メタン発酵工程STP5における中温メタン発酵又は高温メタン発酵における最適温度を効果的に実現でき、消化速度や消化率の飛躍的な向上を確実なものとすることができる。なお、かかる可溶化汚泥Tの温度が上記上限を超えると、後述するメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵の消化を阻害するおそれがある。また、かかる可溶化汚泥Tの温度が上記下限未満であると、後述するメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵の消化速度や消化率の飛躍的な向上を達成できない可能性がある。
【0029】
(固気分離工程)
固気分離工程STP4は、上記可溶化汚泥Tを滞留させて脱気し、脱気汚泥Uを得るための工程である。具体的には、固気分離工程STP4は、可溶化工程STP3で得られる流動性の高い可溶化汚泥Tを滞留させて脱気し、脱気汚泥Uと脱気ガスとに効果的かつ確実に固気分離できると共に、高い流動性を損なうことなく汚泥密度を向上させ、搬送性や取り扱いの容易性を向上させることができる。かかる脱気ガスは、上述の通り、減圧濃縮工程STP1の減圧下で原汚泥Pから発生した発泡ガスに由来し、具体的にはアンモニアガス、水素ガス、硫化水素ガス、メタンガス、二酸化炭素ガス等の混合ガスである。つまり、固気分離工程STP4は、後述するメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵を阻害するアンモニアガスを十分に脱気できることから、このアンモニアガスの脱気により高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を効果的かつ確実なものとすることができる。
【0030】
固気分離工程STP4における可溶化汚泥Tの脱気手段としては、特に限定されず、例えば、大気解放手段や、後述するメタン発酵工程STP5における消化ガスの回収手段を用いて可溶化汚泥Tの脱気ガスを脱気する手段等が挙げられる。
【0031】
(メタン発酵工程)
メタン発酵工程STP5は、上記脱気汚泥Uを嫌気性条件下でメタン発酵させ、消化汚泥Vを得るための工程である。かかるメタン発酵工程STP5において、上述の固気分離工程STP4で得られる高濃度の脱気汚泥Uが嫌気性条件下でのメタン発酵の消化速度や消化率を飛躍的に向上させることから、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を十分に実現することができる。また、この脱気汚泥Uは、上述の通り加熱された可溶化汚泥Tを脱気したものであり、かかる脱気汚泥Uがメタン発酵工程STP5におけるメタン発酵に最適な温度を維持できることから、メタン発酵工程STP5において特段の加熱手段を設けることなく、良好なメタン発酵をエネルギー効率的に維持することができる。なお、このメタン発酵工程STP5において、硫化水素ガス、メタンガス、アンモニアガス、二酸化炭素ガス等の消化ガスが発生する。
【0032】
メタン発酵工程STP5におけるメタン発酵の温度としては、例えば、中温発酵の場合は約35℃〜40℃程度に、高温発酵の場合は約50℃〜55℃程度に調整することができる。このように各発酵方式に適した最適温度に調整することで、メタン発酵工程STP5におけるメタン発酵による汚泥の消化を効果的かつ安定的に実現することができる。
【0033】
また、かかるメタン発酵工程STP5は、上記消化ガスを回収する手段を設けることができる。このように、メタン発酵工程STP5が上記消化ガスを回収する手段を設けることで、メタン発酵工程STP5で発生したメタンガスをエネルギー源として利用することができ、例えば、真空形成工程STP2における高温蒸気の噴出を行う蒸気ボイラー等の動力源として利用することができる。
【0034】
当該汚泥処理方法において、上記メタン発酵工程STP5で得られる消化汚泥Vを原汚泥として用いるとよい。具体的には、メタン発酵工程STP5で得られる消化汚泥Vの全部又は一部を減圧濃縮工程STP1に返送し、上述した一連の浮上濃縮、可溶化、脱気、消化等を再度行うとよい。この消化汚泥Vは、上述の通り、中温発酵では約35℃〜40℃程度、高温発酵では約50℃〜55℃程度に加熱維持されており、また、原汚泥Pと比較して溶存ガスを多く含むものである。つまり、メタン発酵工程STP5で得られる消化汚泥Vを原汚泥として用いることで、減圧濃縮工程STP1における減圧下で沸点降下による沸騰蒸発現象により汚泥中の水蒸気を含む発泡ガスがより多く発生し、この発泡ガスが汚泥中の固形成分を同伴しつつ汚泥中の熱を多く回収して浮上する。なお、かかる水蒸気の蒸発潜熱により脱離液Rの温度は約10℃〜30℃低下する場合がある。その結果、このように熱を多く回収した発泡ガスを含む濃縮汚泥を高温蒸気で凝縮加熱する場合にエネルギー量を少なくすることができる。つまり、当該汚泥処理方法は、この水蒸気を含む発泡ガスによる効率的な熱回収により、真空形成工程STP2や可溶化工程STP3における高温蒸気の使用エネルギー量を低減できることに加え、水蒸気を含む発泡ガスや高温蒸気により約55℃〜100℃程度という上述のメタン発酵の最適温度以上に加熱された脱気汚泥をメタン発酵工程STP5でメタン発酵することからメタン発酵工程STP5における放熱量とバランスさせて最適温度を恒常的に維持することができ、メタン発酵の最適温度を維持するための特段の加熱操作の必要がなくなり、省エネルギー化やエネルギーの効率的な回収及び利用を単純な手段により確実に実現することができる。なお、このようにメタン発酵工程STP5で得られる消化汚泥Vを原汚泥として用いる場合であっても、当該汚泥処理方法は、上述の各工程で説明した作用効果を十分に発揮することができ、また、減圧手段等について、それぞれ同様の手段を用いることができる。
【0035】
次に、図2を参照しつつ、汚泥処理システム1について説明する。かかる汚泥処理システム1は、減圧濃縮装置2、高温蒸気噴出装置3、エジェクター4、可溶化槽5、固気分離槽6、メタン発酵槽7を主として備える。
【0036】
(減圧濃縮装置)
減圧濃縮装置2は、原汚泥Pを減圧下で発泡させ、発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り、濃縮汚泥Qを得るための装置である。具体的には、減圧濃縮装置2は、原汚泥供給部8、脱離液排出部9、濃縮汚泥排出部10を主として備える。なお、原汚泥供給部8、脱離液排出部9、濃縮汚泥排出部10には、本発明の目的を損なわない範囲で、原汚泥の供給量や脱離液及び濃縮汚泥の排出量を調整すると共に減圧濃縮装置2内部の減圧状態を調整するための調整弁(図示せず)をさらに備えることができる。
【0037】
減圧濃縮装置2に原汚泥Pを供給するための手段としては、特に限定されず、例えば、後述するエジェクター4が形成する真空状態を利用して濃縮汚泥排出部10側から原汚泥Pを減圧吸引する手段や、原汚泥供給部8側から原汚泥Pを加圧して供給する手段等が挙げられる。また、この減圧濃縮装置2の内部を減圧する手段としては、特に限定されず、例えば、後述するエジェクター4が形成する真空状態を利用して濃縮汚泥排出部10側から吸引減圧する手段や、真空ポンプなどを用いて脱離液排出部9から吸引減圧する手段等が挙げられる。
【0038】
減圧濃縮装置2の形状としては、原汚泥Pを浮上濃縮させることができるものであれば特に限定されず、例えば、円筒形や直方体等が挙げられる。また、減圧濃縮装置2の素材としては、内部の減圧状態を維持できるものであれば特に限定されず、公知の素材を用いることができる。
【0039】
(高温蒸気噴出装置)
高温蒸気噴出装置3は、高温蒸気Sを高速で噴出させるための装置である。かかる高温蒸気噴出装置3の種類としては、特に限定されず、例えば、公知の蒸気ボイラー等が挙げられる。また、高温蒸気噴出装置3は、本発明の目的を損なわない範囲で、高温蒸気の温度、噴出圧力及び噴出量などを調整する調整機構(図示せず)等をさらに備えることができる。
【0040】
(エジェクター)
エジェクター4は、上記高温蒸気Sを動作流体として用い、真空状態を形成するための装置である。具体的には、エジェクター4は、後述の汚泥濃縮装置2における減圧状態の形成や濃縮汚泥Qの減圧吸引を行うと共に、後述する可溶化槽5に濃縮汚泥Q及び高温蒸気Sを供給するための装置である。このエジェクター4は、主としてノズル及びディフューザー(図示せず)から構成される。かかるノズル及びディフューザーは、適当な距離を置いて対向しており、このノズルに、高温蒸気Sが高速で通過することで、高温蒸気Sの流速が増す代わりに圧力が低下し、かかる圧力損失によりノズルとディフューザーとの間に真空状態を発生させることができる。なお、かかるノズルやディフューザーの寸法、形状、配置等については、要求される到達真空圧や吸い込み流量等に応じて自在に調整することができる。
【0041】
(可溶化槽)
可溶化槽5は、上記濃縮汚泥Qと高温蒸気Sとを接触させ、可溶化汚泥Tを得るための装置である。具体的には、この可溶化槽5は、エジェクター4を通過した高温蒸気Sと濃縮汚泥Qとを接触させ、大気圧下に解放することで高温蒸気Sの凝縮衝撃により濃縮汚泥Qを加熱すると同時に分解し、可溶化汚泥Tを得ることができる。かかる可溶化槽5の形状や素材については、高温蒸気Sと濃縮汚泥Qとの接触や大気圧下での解放を実現できるものであれば、特に限定されず、公知の形状や素材を使用することができる。
【0042】
(固気分離槽)
固気分離槽6は、上記可溶化汚泥Tを滞留させて脱気し、脱気汚泥Uを得るための装置である。具体的には、固気分離槽6は、可溶化槽5で得られる流動性の高い可溶化汚泥Tを滞留させて脱気し、脱気汚泥Uと脱気ガスとに固気分離する装置である。この固気分離槽6は、脱気ガスを外部に排出するためのガス排出部11、脱気汚泥Uを外部に排出するための脱気汚泥排出部12を主として備える。
【0043】
固気分離槽6において可溶化汚泥Tを脱気するための手段としては、例えば、大気に解放して自然脱気する手段や、後述するメタン発酵槽7における消化ガスの回収装置を用いる手段等が挙げられる。また、固気分離槽6の形状としては、特に限定されず、例えば、ガス排出部11を上部に、脱気汚泥排出部12を下部に配設し、かかる下部がコーン状に狭まる略円錐形状であるとよい。このように、固気分離槽6の下部が略円錐形状であることで、脱気汚泥Uを自然流下により排出しやすくすることができる。なお、固気分離槽6は、本発明の目的を損なわない範囲で、脱気汚泥Uや脱気ガスの排出量を調整するための調整弁(図示せず)をさらに備えることができる。
【0044】
(メタン発酵槽)
メタン発酵槽7は、上記脱気汚泥Uを嫌気性条件下でメタン発酵させ、消化汚泥Vを得るための部材である。具体的には、このメタン発酵槽7は、脱気汚泥Uをメタン発酵槽7に供給するための脱気汚泥供給部13、消化汚泥Vを外部に排出するための消化汚泥排出部14を主として備え、加えて、メタン発酵槽7内部の汚泥を撹拌するための撹拌機構(図示せず)、メタン発酵槽7におけるメタン発酵により発生した消化ガスを回収するガスタンク等の回収装置を備えることができる。また、脱気汚泥供給部13及び消化汚泥排出部14には、本発明の目的を損なわない範囲で、脱気汚泥Uの供給量や消化汚泥Vの排出量を調整するための調整弁(図示せず)をさらに備えることができる。なお、このメタン発酵槽7の形状や素材については、特に限定されず、公知の形状や素材を使用することができる。なお、上述した消化ガスの回収ラインに、固気分離槽6の脱気ガスラインを連結してガスタンク等の回収装置を共有化することができる。
【0045】
(汚泥処理システムの操作手順)
汚泥処理システム1の操作手順について、作用効果を踏まえて詳説する。
【0046】
例えば、減圧濃縮装置2における原汚泥供給部8及び脱離液排出部9の調整弁を閉じると共に濃縮汚泥排出部10の調整弁を解放する。次いで、高温蒸気噴出装置3から高温蒸気Sを高速で噴出させ、エジェクター4を通過させると、ノズル及びディフューザーに高温蒸気Sが高速で通過することで、高温蒸気Sの流速が増す代わりに圧力が低下し、かかる圧力損失によりノズルとディフューザーとの間に真空状態を発生させることができる。すると、減圧濃縮装置2の内部は減圧状態となり、かかる減圧状態を維持継続させつつ原汚泥供給部8の調整弁を解放し、原汚泥Pを減圧濃縮装置2内部に供給する。
【0047】
かかる減圧濃縮装置2の内部において、減圧下で原汚泥P中の溶存ガスが発泡し、発泡ガスが発生する。かかる発泡ガスが原汚泥P中の固体成分を同伴して浮上し、発泡ガスを含む固体成分と液体成分とに固液分離する。この発泡ガスを含む固体成分が浮上し積層するにつれて固体成分の層が厚く形成され、圧密による高い濃縮効果を発揮し、その結果、高濃度の濃縮汚泥Qを得ることができる。つまり、減圧濃縮装置2は、原汚泥Pを減圧下で発泡させるという簡易な手段により、原汚泥Pの高濃度化を効果的かつ確実に実現することができる。また、濃縮汚泥Qは、浮上移動の最終地点の位置、即ち、最上位に蓄積されることから、高濃度かつ高粘度の濃縮汚泥Qの排出や回収を上方から容易に達成することができ、濃縮汚泥Qの排出の容易化を実現することができる。また、上述の液体成分は脱離液Rとして取り扱い、脱離液排出部9から排出することができる。なお、減圧濃縮装置2における減圧下の負圧や発生する発泡ガスの種類、原汚泥Pの種類、高温蒸気Sの温度や噴出圧力等については、上述の当該汚泥処理方法の場合と同様とすることができる。
【0048】
減圧濃縮装置2で浮上濃縮された濃縮汚泥Qは、エジェクター4の真空作用により濃縮汚泥排出部10を通じてエジェクター4の内部に減圧吸引された後、可溶化槽5において高温蒸気Sと接触し大気圧下に解放されることで高温蒸気Sの凝縮衝撃により濃縮汚泥Qが加熱されると同時に分解され、低粘度で流動性が高く、加熱されている可溶化汚泥Tを得ることができる。このような可溶化汚泥Tは、後述のメタン発酵槽7におけるメタン発酵の消化速度や消化率を飛躍的に向上させることから、可溶化槽5は、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を十分に実現することができる。なお、この可溶化汚泥Tの温度は、上述の当該汚泥処理方法の場合と同様とすることができる。
【0049】
可溶化槽5から得られる可溶化汚泥Tは、固気分離槽6に搬送され、内部に滞留する。かかる固気分離槽6に滞留した可溶化汚泥Tは、例えば大気解放により自然脱気され、脱気汚泥Uと脱気ガスとに固気分離される。かかる脱気ガスはガス排出部11を通じて外部に排出され、脱気汚泥Uは脱気汚泥排出部12を通じて外部に排出される。このように、固気分離槽6は、可溶化汚泥Tを脱気汚泥Uと脱気ガスとに効果的かつ確実に固気分離できると共に、高い流動性を損なうことなく汚泥密度を向上させ、搬送性や取り扱いの容易性を向上させることができる。また、かかる脱気ガスは、上述の当該汚泥処理方法の場合と同様にアンモニアガス、メタンガス、二酸化炭素ガス等の混合ガスであり、固気分離槽6を用いて後述のメタン発酵槽7におけるメタン発酵を阻害するアンモニアガスを十分に脱気できることから、固気分離槽6は、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を効果的かつ確実なものとすることができる。
【0050】
固気分離槽6から得られる脱気汚泥Uは、メタン発酵槽7の脱気汚泥供給部13を通じてメタン発酵槽7内部に搬送され、嫌気性条件下でメタン発酵されることで、消化汚泥Vとなる。かかるメタン発酵槽7において、上述した当該汚泥処理方法の場合と同様に、固気分離槽6で得られる高濃度の脱気汚泥Uが嫌気性条件下での中温又は高温のメタン発酵の消化速度や消化率を飛躍的に向上させることから、高濃度汚泥のメタン発酵の効率化を十分に実現することができる。また、かかる脱気汚泥Uは、上述の通り加熱された可溶化汚泥Tを脱気したものであり、この脱気汚泥Uがメタン発酵に最適な温度を維持できることから、メタン発酵槽7において特段の加熱手段を設けることなく、メタン発酵をエネルギー効率的に維持することができる。なお、このメタン発酵槽7におけるメタン発酵の温度については、上述の当該汚泥処理方法の場合と同様とすることができる。
【0051】
なお、このメタン発酵槽7において、メタンガス、アンモニアガス、二酸化炭素ガス等の消化ガスが発生するが、かかる消化ガスを回収するガスタンク等の回収装置を用いることで、メタン発酵槽7で発生したメタンガスをエネルギー源として利用することができ、例えば、高温蒸気噴出装置3の動力源として利用することができる。
【0052】
メタン発酵槽7で得られる消化汚泥Vは、消化汚泥排出部14を通じて外部に排出し、廃棄することも可能であるが、上記メタン発酵槽7で得られる消化汚泥Vを原汚泥として用いるとよい。つまり、メタン発酵槽7で得られる消化汚泥Vの全部又は一部を減圧濃縮装置2に返送し、上述した一連の浮上濃縮、可溶化、脱気、消化等を再度行うとよい。即ち、上記メタン発酵槽7で得られる消化汚泥Vを原汚泥として用いることで、上述の当該汚泥処理方法の場合と同様に、減圧濃縮装置2における減圧下で沸点降下による沸騰蒸発現象により汚泥中の水蒸気を含む発泡ガスがより多く発生し、かかる発泡ガスが汚泥中の固形成分を同伴しつつ汚泥中の熱を多く回収して浮上する。その結果、このように熱を多く回収した発泡ガスを含む濃縮汚泥を高温蒸気で凝縮加熱する場合のエネルギー量を少なくすることができる。つまり、かかる汚泥処理システム1は、この水蒸気を含む発泡ガスによる効率的な熱回収により、エジェクター4や可溶化槽5における高温蒸気の使用エネルギー量を低減できることに加え、水蒸気を含む発泡ガスや高温蒸気により約55℃〜100℃程度の温度に加熱された脱気汚泥をメタン発酵槽7でメタン発酵することからメタン発酵槽7における最適温度を恒常的に維持でき、メタン発酵の最適温度を維持するための特段の加熱操作の必要がなくなり、省エネルギー化やエネルギーの効率的な回収及び利用を単純な手段により確実に実現することができる。なお、このようにメタン発酵槽7で得られる消化汚泥Vを原汚泥として用いる場合であっても、当該汚泥処理システムは、上述の各装置等で説明した作用効果を十分に発揮でき、また、減圧手段等について、それぞれ同様の各手段を用いることができる。
【0053】
なお、本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理システムは、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、本発明の汚泥処理システムにおいて、図3に示す通り、メタン発酵槽を2槽に分離し、メタン発酵槽7の前段にもう一つのメタン発酵槽15を直列的に配設することができる。このような場合、本発明の汚泥処理システムにおいて、メタン発酵槽7から得られる消化汚泥Vを原汚泥として適用すると、消化汚泥Vは、消化汚泥排出部14を通じて汚泥濃縮装置2に供給され、上述した一連の浮上濃縮、可溶化、脱気等を経て脱気汚泥Uとなり、この脱気汚泥Uはメタン発酵槽15に供給され消化されることとなる。このような構成を有することにより、本発明の汚泥処理システムは、上述した汚泥処理システム1が発揮する作用効果と同様の作用効果を発揮することができることに加え、従来の2槽式、即ち第1槽目をメタン発酵槽、第2槽目を汚泥分離槽とする場合における汚泥分離槽に、例えば撹拌機を設置することでメタン発酵槽としても機能させることができ、その結果、汚泥処理能力を向上させることができる。
【0054】
また、例えば、本発明の汚泥処理システムにおいて、図4に示す通り、可溶化槽及び固気分離槽が一体となった可溶化固気分離槽16を用い、可溶化部17において濃縮汚泥の可溶化を、固気分離部18において可溶化汚泥の固気分離を一体的に行うことができる。このように、可溶化槽と固気分離槽とを分離せず、可溶化固気分離槽16を用いることによっても、上述した汚泥処理システム1が発揮する作用効果と同様の作用効果を発揮することができ、さらに、システムの簡素化及びコンパクト化を図ることができる。なお、この場合において、かかる可溶化固気分離槽16の構造としては、例えば、エジェクターから供給される高温蒸気及び濃縮汚泥の供給部を中心から偏心させ、所謂サイクロンの如く固気分離槽内で旋回流を発生させるような構造が挙げられる。
【0055】
また、例えば、本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理システムの減圧濃縮工程や減圧濃縮装置において、原汚泥に対し、又は減圧濃縮工程や減圧濃縮装置に返送する消化汚泥に対し凝集剤を添加することができる。かかる凝集剤を添加することで、汚泥の濃縮速度を向上させると共に、脱気汚泥の含水率を低減し、汚泥処理性能を向上させることができる。
【0056】
上記凝集剤の種類としては、特に限定されず、例えば、ポリ塩化アルミニウム、ポリ硫酸第2鉄、塩化第2鉄、硫酸バンドなどの無機凝集剤;アクリルアミド共重合体、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル4級化物などのカチオン系高分子凝集剤;ポリアクリルアミド部分加水分解物、アニオン性モノマーの共重合体、アニオン性モノマーとノニオン性モノマーとの共重合体などのアニオン系高分子凝集剤;アクリルアミド、メタクリルアミド、メタアクリロニトリル、酢酸ビニルなどのノニオン系高分子凝集剤等が挙げられる。中でも、入手が容易で良好な汚泥凝集効果を発揮する高分子凝集剤を使用することが好ましい。なお、この凝集剤は、1種単独又は2種以上併用して使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明の汚泥処理方法及び汚泥処理システムは、活性汚泥、初沈汚泥、余剰汚泥、凝集沈殿汚泥、浄化槽汚泥、有機性汚泥等の処理に使用され得る。
【符号の説明】
【0058】
1 汚泥処理システム
2 減圧濃縮装置
3 高温蒸気噴出装置
4 エジェクター
5 可溶化槽
6 固気分離槽
7 メタン発酵槽
8 原汚泥供給部
9 脱離液排出部
10 濃縮汚泥排出部
11 ガス排出部
12 脱気汚泥排出部
13 脱気汚泥供給部
14 消化汚泥排出部
15 メタン発酵槽
16 可溶化固気分離槽
17 可溶化部
18 固気分離部
P 原汚泥
Q 濃縮汚泥
R 脱離液
S 高温蒸気
T 可溶化汚泥
U 脱気汚泥
V 消化汚泥


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原汚泥を減圧下で発泡させ、発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り、濃縮汚泥を得る減圧濃縮工程と、
高温蒸気を高速で噴出させ、この高温蒸気を動作流体として真空状態を形成する真空形成工程と、
上記濃縮汚泥と高温蒸気とを接触させ、可溶化汚泥を得る可溶化工程と、
上記可溶化汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離工程と、
上記脱気汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させ、消化汚泥を得るメタン発酵工程と
を有する汚泥処理方法。
【請求項2】
上記メタン発酵工程で得られる消化汚泥を原汚泥として用いる請求項1記載の汚泥処理方法。
【請求項3】
原汚泥を減圧下で発泡させ、発泡ガスと同伴させて浮上濃縮を図り、濃縮汚泥を得る減圧濃縮装置と、
高温蒸気を高速で噴出させる高温蒸気噴出装置と、
上記高温蒸気を動作流体として用い、真空状態を形成するエジェクターと、
上記濃縮汚泥と高温蒸気とを接触させ、可溶化汚泥を得る可溶化槽と、
上記可溶化汚泥を滞留させて脱気し、脱気汚泥を得る固気分離槽と、
上記脱気汚泥を嫌気性条件下でメタン発酵させ、消化汚泥を得るメタン発酵槽と
を備える汚泥処理システム。
【請求項4】
上記メタン発酵槽で得られる消化汚泥を原汚泥として用いる請求項3記載の汚泥処理システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−45512(P2012−45512A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191929(P2010−191929)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(708001244)株式会社テクノプラン (5)
【Fターム(参考)】