説明

汚泥脱水システム

【課題】火力発電所で排出された排水中の汚泥を効率よく処理する。
【解決手段】本発明の汚泥脱水システムは、火力発電所で排出された排水中の汚泥を濃縮する濃縮部(60)と、前記濃縮部で濃縮された前記汚泥を加熱してスラリー化するスラリー化部(70)と、スラリー化された前記汚泥を脱水する脱水部(90)とを備える。前記スラリー化部は、伝熱性を有する伝熱配管と、前記伝熱配管を外側から加熱する加熱機構と、を有し、前記伝熱配管の内部が前記汚泥が移動する移動空間となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚泥脱水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
主として汚泥を加熱による水熱処理で改質し、改質された汚泥を冷却し、冷却された汚泥をろ過脱水する汚泥処理方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−243275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
火力発電所においては、排煙脱硫装置排水、配管洗浄排水、灰処理排水といった様々な工業排水が常時大量に排出される。これらの排水には、多量の汚泥が含まれているので、効率のよい汚泥処理システムが望まれている。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、火力発電所で排出された排水中の汚泥を効率よく処理することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明の汚泥脱水システムは、火力発電所で排出された排水中の汚泥を濃縮する濃縮部と、前記濃縮部で濃縮された前記汚泥を加熱してスラリー化するスラリー化部と、スラリー化された前記汚泥を脱水する脱水部とを備えた汚泥脱水システムであって、前記スラリー化部は、伝熱性を有する伝熱配管と、前記伝熱配管を外側から加熱する加熱機構と、を有し、前記伝熱配管の内部が、前記汚泥が移動する移動空間となることを特徴とする。
この汚泥脱水システムによれば、加熱機構によって伝熱配管が加熱されると、移動空間を移動している汚泥も加熱され、水熱反応によってスラリー化される。このように、伝熱配管を移動している過程で汚泥をスラリー化できるので、連続処理が可能となる。その結果、汚泥を効率よく脱水処理できる。また、汚泥の加熱度合いは、伝熱配管及び加熱機構の長さと汚泥の移動速度とで規定でき、スラリー化の際における圧力は、汚泥の量と移動空間の大きさとで規定できる。このため、簡単な構成でスラリー化の条件を定めることができる。
【0006】
上記システムにおいて、前記濃縮部で濃縮された前記汚泥を脱水し、脱水後の前記汚泥を前記スラリー化部に供給する事前脱水部を、さらに有することが好ましい。
この汚泥脱水システムによれば、事前脱水した汚泥をスラリー化部でスラリー化するので、スラリー化に要するエネルギーを抑制できる。
【0007】
上記システムにおいて、前記加熱機構は、前記伝熱配管が挿入される空間を内側に区画し、挿入された伝熱配管との間に形成される加熱空間に加熱用蒸気を導入することで、前記伝熱配管を外側から加熱する加熱配管を含むことが好ましい。
この汚泥脱水システムによれば、火力発電所の各所に存在する加熱された状態の蒸気を、加熱用蒸気として用いることができるので、熱源を容易に取得できる。
【0008】
上記システムにおいて、前記加熱配管は、前記加熱用蒸気の入口と出口を有し、前記伝熱配管の延長方向に並んだ状態で複数設けられていることが好ましい。
この汚泥脱水システムによれば、加熱用蒸気の入口と出口の接続態様に応じて、加熱温度を細かく調整できる。これにより、スラリー化する際の処理を最適化できる。
【0009】
上記システムにおいて、前記加熱機構は、前記移動空間における前記汚泥の温度が210℃以下80℃以上となるように調整された前記加熱用蒸気を、前記加熱空間に導入することが好ましい。さらに、130℃以下80℃以上となるように調整された前記加熱用蒸気を、前記加熱空間に導入することがより好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、火力発電所で排出された排水中の汚泥を効率よく処理できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】火力発電所における排水処理設備を説明する図である。
【図2】汚泥の脱水処理設備を説明する図である。
【図3】(a)はスラリー化部の構成を説明する断面図である。(b)はスラリー化部における加熱用蒸気の温度勾配を説明する図である。
【図4】スラリー化温度と処理結果の関係を説明する図である。
【図5】事前脱水部を備えた脱水処理設備を説明する図である。
【図6】図5の実施形態に対応する、スラリー化温度と処理結果の関係を説明する図である。
【図7】複数の加熱配管を備えた実施形態を説明する図であり、(a)〜(c)はそれぞれ接続態様のバリエーションを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
===第1実施形態===
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
<排水処理施設について>
図1に例示するように、火力発電所の排水処理施設は、NS分解部10と、フッ素処理部20と、窒素処理部30と、重金属処理部40と、COD処理部50と、汚泥濃縮部60を有する。
【0014】
NS分解部10は、生物学的な窒素除去プロセスでは除去が困難な窒素−硫黄化合物(NS化合物)を分解し、窒素成分をガス化して除去する部分である。このNS分解部10は、NS分解槽11と貯水槽12とを有する。NS分解槽11には、火力発電所で排出された排水が供給される。例えば、排煙脱硫装置排水、配管洗浄排水、灰処理排水といった各種の排水が供給される。このNS分解槽11では、排水中に含まれるNS化合物を硫酸酸性下で強熱することで、アンモニウムイオン(NH)と硫酸イオン(SO)とに分解する。そして、この分解物に亜硝酸を反応させることで窒素ガスを発生させる。貯水槽12は、NS分解槽11で分解処理された後の排水を貯留する部分であり、エアレーションによって窒素ガスを大気放出させる。貯水槽12に貯められた排水は、ポンプ13によってフッ素処理部20に供給される。
【0015】
フッ素処理部20は、NS分解部10で処理された排水に含まれるフッ素を除去する部分である。このフッ素処理部20は、フッ素処理槽21と、第1沈殿槽22とを有する。フッ素処理槽21では、凝集剤を添加することで、フッ素を、排水中のマグネシウムや硫酸アルミニウムともに水酸化物として共沈させ、除去する。第1沈殿槽22は、フッ素処理部20で生成された水酸化物等を沈殿させ、汚泥として取り出す部分である。フッ素をマグネシウムや硫酸アルミニウムと共沈させているので、この汚泥は無機成分を多く含んでいる。そして、取り出された汚泥は、汚泥濃縮部60に送出される。
【0016】
窒素処理部30は、排水に含まれる窒素を生物的に除去する部分である。この窒素処理部30は、第1中継槽31と、窒素処理槽32と、第2沈殿槽33とを有する。第1中継槽31は、第1沈殿槽22からの排水を一時的に貯留する部分である。第1中継槽31に貯留された排水は、ポンプ34によって窒素処理槽32に送られる。窒素処理槽32は、上流側から下流側に向けて、好気性菌処理室32a、嫌気性菌処理室32b、窒素排出室32cに区切られている。好気性菌処理室32aでは、排水の活性汚泥中に生息している好気性菌(亜硝酸菌,硝酸菌)をエアレーションによって活性化する。これにより、アンモニウム塩や有機態窒素を亜硝酸塩や硝酸塩となるまで酸化する。嫌気性菌処理室32bには、好気性菌処理室32aで処理された後の排水が供給される。この嫌気性菌処理室32bには、水中ポンプが配置されており、貯留された排水が嫌気性の状態で攪拌される。そして、嫌気性菌処理室32bでは、活性汚泥中に生息している嫌気性菌(脱窒菌)により、亜硝酸塩や硝酸塩を窒素ガスとなるまで還元する。なお、嫌気性菌を安定的に生息させるため、この嫌気性菌処理室32bには、嫌気性菌用の栄養剤が投入される。窒素排出室32cには、嫌気性菌処理室32bで処理された後の排水が供給される。この窒素排出室32cでは、エアレーションによって窒素ガスを大気放出させる。第2沈殿槽33は、窒素排出室32cで処理された後の排水に含まれる汚泥を沈殿によって取り出す部分である。取り出された汚泥は、汚泥濃縮部60に送出される。
【0017】
重金属処理部40は、排水中に含まれる重金属を除去する部分である。この重金属処理部40は、第2中継槽41と、重金属処理槽42と、第3沈殿槽43とを有する。第2中継槽41は、第2沈殿槽33からの排水を一時的に貯留する部分である。第2中継槽41に貯留された排水は、ポンプ44によって重金属処理槽42に送られる。重金属処理槽42では、水酸化ナトリウム等のアルカリ薬品を排水に投入することで、重金属を水酸化物にして沈殿させる。アルカリ薬品の投入により、排水のpHは10〜11程度になる。なお、本実施形態では、沈殿物の回収を容易にする目的で、アルカリ薬品に加えて凝集剤も加えている。第3沈殿槽43は、重金属処理槽42で処理された後の排水に含まれる水酸化物を取り出す部分である。取り出された水酸化物は、フッ素処理槽21に送出される。
【0018】
COD処理部50は、重金属処理部40で処理された後の排水に含まれるCOD成分(有機物)を除去する部分である。このCOD処理部50は、調整槽51と、砂濾過塔52と、COD吸着塔53と、中和槽54とを有する。調整槽51は、重金属処理部40からの排水のpHを貯留する部分であり、pH調整剤が投入される。pH調整剤の投入により、排水のpHは3〜4程度の酸性を呈する。調整槽51に貯留された排水は、ポンプ55によって砂濾過塔52に送られる。砂濾過塔52では、調整槽51でpHが調整された後の排水が砂中を流下し、不要な固形分が濾別される。砂濾過塔52で濾過された排水はCOD吸着塔53に供給される。COD吸着塔53では、通水された排水に含まれるCOD成分が、塔内に配置されたCOD吸着樹脂(図示せず)に吸着される。これにより、COD成分が排水から除去される。COD成分が除去された排水は、中和槽54に供給される。中和槽54は排水を中和する部分である。このため、中和槽54では中和用のpH処理剤が投入され、排水のpHが7程度に調整される。そして、中和処理された廃水は、施設外に放流される。
【0019】
汚泥濃縮部60は、フッ素処理部20や窒素処理部30にて、排水から分離された汚泥を濃縮する部分であり、汚泥を濃縮する濃縮部に相当する。この汚泥濃縮部60は、濃縮用沈殿槽61を備えている。濃縮用沈殿槽61で静置することで汚泥が沈殿し、汚泥が濃縮される。そして、沈殿した汚泥は、濃縮用沈殿槽61の下部からポンプ62によって吸い出される。なお、濃縮用沈殿槽61の上澄み液は、フッ素処理部20のフッ素処理槽21に戻される。
【0020】
<脱水処理施設について>
火力発電所の脱水処理施設は、排水処理施設から排出された濃縮汚泥を脱水する部分である。図2に例示するように、この排水処理施設は、加熱部70と、冷却部80と、脱水部90とを備える。そして、これらの加熱部70、冷却部80、及び、脱水部90は、汚泥濃縮部60とともに汚泥脱水システムを構成する。
【0021】
加熱部70は、濃縮用沈殿槽61からの汚泥を水熱反応で分解することでスラリー化する部分である。従って、加熱部70は、汚泥をスラリー化するスラリー化部に相当する。なお、加熱部70の詳細については後述する。
【0022】
冷却部80は、加熱部70でスラリー化された汚泥(便宜上、汚泥スラリーという)の温度を、脱水部90で扱える程度の温度まで冷却する部分である。本実施形態の冷却部80は、二重管(ジャケット配管)を備えている。すなわち、冷却部80は、汚泥スラリーが移動するスラリー流路を区画する伝熱性の内側配管81と、この内側配管81が内部に挿入され、水等の冷媒が流れる冷媒流路を内部に区画する外側配管82とを有している。そして、外側配管82の両端部は内側配管に対して液密な状態となるように塞がれている。また、外側配管82の端部側面には、冷媒入口と冷媒出口とが設けられている(図示せず)。従って、スラリー流路に汚泥スラリーを流し、冷媒流路に冷媒を流すことで、汚泥スラリーと冷媒との間の熱交換により、汚泥スラリーが所望の温度まで冷却される。
【0023】
脱水部90は、汚泥スラリーに含まれる水分を減少させるための部分である。水分を減少させることで、埋め立て、焼却、固化等の最終処分を行う際において運搬が容易になり、乾燥に要するエネルギーも抑制できる。脱水部90には、種々の方式のものが用いられる。例えば、真空脱水、遠心脱水、加圧脱水で脱水を行う装置が用いられる。真空脱水は、真空の吸引力によって、濾布表面に汚泥を吸い付けるとともに水分を吸引する脱水方式である。遠心脱水は、遠心力によって汚泥スラリー中の水分と固形分とを分離する脱水方式である。加圧脱水は、圧搾等によって汚泥スラリー中の水分と固形分とを分離する脱水方式である。本実施形態では、汚泥スラリーの連続処理に適することから、加圧脱水装置の一種であるベルトプレス型加圧脱水装置91を用いている。そして、冷却部80で冷却された汚泥スラリーを、ポンプ92でこの脱水装置91に供給している。この脱水装置91で脱水されることにより、汚泥は汚泥ケーキとなる。この汚泥ケーキは、汚泥ケーキホッパー(図示せず)に送出され、その後、最終処分場へと運搬される。
【0024】
<加熱部70の詳細について>
図3(a)に示すように、本実施形態の加熱部70は、冷却部80と同様に二重管によって構成されている。すなわち、加熱部70は、ポンプから送出された濃縮用沈殿槽61の濃縮汚泥が移動する移動空間71aを内部に区画する内側配管71と、この内側配管71が内部空間に挿入される外側配管72とを有する。
【0025】
内側配管71は伝熱配管に相当し、ステンレス鋼等の伝熱性を有する金属性の円筒状配管で構成される。内側配管71に伝熱性を有する配管を用いる理由は、内側配管71の外周面側から加熱することで、移動空間71aを移動する汚泥を加熱するためである。
【0026】
外側配管72は加熱配管(加熱機構)に相当し、内側配管71を外側から加熱する部分である。すなわち、外側配管72の内周面と内側配管71の外周面との間の空間は、加熱用空間72aに相当する。そして、加熱用空間72aに加熱用の蒸気を導入することで、内側配管71を外側から加熱する。このため、外側配管72の両端部は、内側配管71に対して気密状態となるように塞がれている。
【0027】
また、外側配管72における両端部の側面には、加熱用蒸気の入口となる筒状部72bと出口となる筒状部72cとが設けられている(図示せず)。本実施形態では、汚泥の進行方向下流側に蒸気の入口を設け、上流側に蒸気の出口を設けている。このように構成することで、図3(b)に符号A,B,P1,P2で示すように、内側配管71の上流側から下流側に向かう程に加熱用空間72aの温度が高くなる。このため、内側配管を流れる汚泥が急激に加熱されて突沸する等の不具合を抑制できる。
【0028】
この加熱部70では、移動空間71aを下流側へ流れる過程で汚泥が加熱され、水熱反応によって汚泥がスラリー化される。従って、汚泥の連側的なスラリー化処理が可能となり、この処理を効率よく行うことができる。ここで、汚泥の加熱度合いは、加熱用蒸気の温度、内側配管71や外側配管72の長さ、移動空間71aを移動する汚泥の移動速度等によって規定できる。また、スラリー化の際の圧力は、汚泥の量と移動空間71aの直径等によって規定できる。例えば、図3(a)の右端に示すように、内側配管71の下流端に接続される他の配管の内径を適宜定めることで、スラリー化の際の圧力を規定できる。従って、簡単な構成でスラリー化の条件を定めることができる。
【0029】
また、この加熱部70では、熱源として加熱用蒸気を用いている。火力発電所では、至る所に加熱された状態の蒸気が存在するので、加熱用蒸気を用いることで熱源を容易に確保できる。
【0030】
<スラリー化の温度条件について>
次に、スラリー化の際の温度条件について説明する。図4は、サンプルA1〜A3とサンプルB1〜B3について汚泥量と含水率とを示している。ここで、サンプルA1〜A3とサンプルB1〜B3とは、採取した火力発電所が異なっている。
【0031】
また、サンプルA1,A2,A3は、スラリー化の温度条件及び温度の保持時間が異なっている。具体的には、サンプルA1では、スラリー化の温度が80℃であり、保持時間は0時間である。すなわち、サンプルA1では常温のスラリーを80℃まで加熱した時点で加熱を停止している。サンプルA2では、スラリー化の温度が130℃であり、保持時間は0時間である。サンプルA3では、スラリー化の温度が210℃であり、保持時間は1時間である。すなわち、温度を210℃まで上昇させた後、210℃を1時間に亘って維持している。なお、サンプルB1の温度条件と保持時間は、サンプルA1と同じである。同様に、サンプルB2はサンプルA2と、サンプルB3はサンプルA3と同じ条件である。
【0032】
汚泥量に関し、矢印の左側が、所定量の濃縮汚泥を単に脱水部90で脱水した場合の汚泥量、すなわちスラリー化処理をしていない比較例を示している。一方、矢印の右側が、同量の濃縮汚泥を加熱部70でスラリー化した後に冷却部80で冷却し、脱水部90で脱水した場合の汚泥量、すなわちスラリー化処理をした本実施形態での結果(サンプルA1〜A3,B1〜B3)を示している。この点は含水率も同じである。すなわち、矢印の左側が比較例を示し、矢印の右側が本実施形態での結果を示している。
【0033】
サンプルA1〜A3に関し、比較例での汚泥量は111mであったのに対し、サンプルA1(80℃)では同じ量の濃縮汚泥であるにも拘わらず汚泥量は54mにまで少なくなった。同様に、サンプルA2(130℃)の汚泥量は49mであり、サンプルA3(210℃)の汚泥量は44mであった。含水率に関し、比較例での含水率は82%であったのに対し、サンプルA1の含水率は63%、サンプルA2の含水率は59%、サンプルA3の含水率は55%であった。
【0034】
サンプルB1〜B3に関し、比較例での汚泥量は95mであったのに対し、サンプルB1(80℃)の汚泥量は83mであり、サンプルB2(130℃)の汚泥量は61mであり、サンプルB3(210℃)の汚泥量は54mであった。含水率に関し、比較例での含水率は79%であったのに対し、サンプルB1の含水率は76%、サンプルB2の含水率は67%、サンプルA3の含水率は63%であった。
【0035】
火力発電所による違いはあるが、何れのサンプルA,Bについても、比較例と比べて汚泥量及び含水率が減少していることが理解できる。従って、加熱部70において、汚泥を80℃以上210℃以下の温度で加熱することで汚泥をスラリー化でき、その後、脱水部90による脱水を行うことで、汚泥量を減少できるといえる。
【0036】
ここで、加熱に要するエネルギー量を少なくするという観点からすれば、スラリー化の温度は、80℃以上130℃以下の範囲が好ましいといえる。加えて、サンプルA2とサンプルA3で比較し、サンプルB2とサンプルB3で比較すると、汚泥量と含水率に処理条件の違いほどの差はみられない。そうすると、今回の条件に限れば、スラリー化の温度は130℃が最も好ましいといえる。
【0037】
<まとめ>
以上説明したように、本実施形態によれば、加熱蒸気によって内側配管71が加熱されると、移動空間71aを移動する汚泥が加熱され、水熱反応によってスラリー化される。このように、内側配管71の移動空間71aを移動している過程で汚泥をスラリー化できるので、連続処理が可能となる。その結果、汚泥の脱水処理を効率よく行うことができる。また、汚泥の加熱度合いは、内側配管71及び外側配管72の長さや汚泥の移動速度で規定でき、スラリー化の際における圧力は、汚泥の量と移動空間71aの大きさ等で規定できる。このため、簡単な構成でスラリー化の条件を定めることができる。
【0038】
===第2実施形態===
次に、第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、図5に示すように、汚泥濃縮部60と加熱部70の間に事前脱水部100を設けた点に特徴を有する。この事前脱水部100は、汚泥濃縮部60で濃縮された汚泥を、加熱部70へ供給する前に脱水する部分である。すなわち、加熱部70には、事前脱水部100で脱水された汚泥が供給される。この事前脱水部100は、第1実施形態の脱水部90と同様に、種々の方式を用いる装置が用いられる。
【0039】
本実施形態では、脱水部90と同じくベルトプレス型加圧脱水装置101と、ホッパー102とを有する。そして、脱水装置101で脱水された汚泥(脱水ケーキ)はホッパー102に送られ、ポンプ103によって加熱部70に送出される。なお、加熱部70や冷却部80等、事前脱水部100以外の部分は第1実施形態と同じであるため、説明は省略する。
【0040】
図6は、第2実施形態の脱水処理施設により、汚泥濃縮部60からの汚泥を処理した際の汚泥量と含水率とを示している。なお、サンプルA1〜A3,サンプルB1〜B3については、第1実施形態と同じである。また、矢印の左側は比較例であり、やはり第1実施形態と同じである。
【0041】
サンプルA1〜A3に関し、比較例での汚泥量は111mであったのに対し、サンプルA1(80℃)の汚泥量は80mであり、サンプルA2(130℃)の汚泥量は67mであり、サンプルA3(210℃)の汚泥量は57mであった。含水率に関し、比較例での含水率は82%であったのに対し、サンプルA1の含水率は75%、サンプルA2の含水率は70%、サンプルA3の含水率は65%であった。
【0042】
サンプルB1〜B3に関し、比較例での汚泥量は95mであったのに対し、サンプルB1(80℃)の汚泥量は87mであり、サンプルB2(130℃)の汚泥量は65mであり、サンプルB3(210℃)の汚泥量は53mであった。含水率に関し、比較例での含水率は79%であったのに対し、サンプルB1の含水率は77%、サンプルB2の含水率は69%、サンプルA3の含水率は62%であった。
【0043】
第1実施形態と同様に第2実施形態でも、汚泥量と含水率を比較例よりも減少できることが確認できた。この第2実施形態では、事前脱水部100にて事前脱水した汚泥をスラリー化しているので、水分が少ない分だけ汚泥を効率良く加熱でき、スラリー化に要するエネルギーを抑制できる。
【0044】
===第3実施形態===
次に、第3実施形態について説明する。この第3実施形態は、複数の外側配管を内側配管の延長方向に並べた状態で設けた点に特徴を有する。図7(a)〜図7(d)では、3つの外側配管72A〜72Cを並べた例を示している。便宜上、汚泥の進行方向における最上流の外側配管を第1外側配管72Aといい、最下流の外側配管を第3外側配管72Cという。また、第1外側配管72Aと第3外側配管72Cの間に位置する外側配管を第2外側配管72Bという。
【0045】
これらの第1外側配管72A〜第3外側配管72Cの両端部には加熱用蒸気の入口と出口となる筒状部72b,72c(図3参照)が設けられており、これらの筒状部72b,72cの接続態様に応じて、内側配管71を移動する汚泥の過熱状態を調整できる。
【0046】
図7(a)は、第3外側配管72Cの下流側筒状部を加熱用蒸気の入口として用い、第1外側配管72Aの上流側筒状部を加熱用蒸気の出口として用いている。そして、第3外側配管72Cの上流側筒状部を第2外側配管72Bの下流側筒状部に接続し、第2外側配管72Bの上流側筒状部を第1外側配管72Aの下流側筒状部に接続している。これにより、第3外側配管72Cから第2外側配管72Bを通って第1外側配管72Aに至る一連の蒸気流路が形成される。この例では、第1外側配管72Aの上流側から第3外側配管72Cの下流側に向かって汚泥の加熱温度を高くすることができる。
【0047】
図7(b)は、第2外側配管72Bの下流側筒状部を第1入口として用い、第3外側配管72Cの上流側筒状部を第2入口として用いている。また、第1外側配管72Aの上流側筒状部を第1出口として用い、第3外側配管72Cの下流側筒状部を第2出口として用いている。そして、第1外側配管72Aの下流側筒状部を第2外側配管72Bの上流側筒状部に接続している。これにより、第1外側配管72Aと第2外側配管72Bとを流れる第1加熱用蒸気流路と、第3外側配管72Cから第2外側配管72Bを通って第1外側配管72Aに至る一連の蒸気流路が形成される。この例では、第1外側配管72Aの上流側から第2外側配管72Bの下流側に向かって汚泥の加熱温度を高めることができる。また、第3外側配管72Cについては、独立して加熱温度を定めることができ、かつ、下流側に向かって加熱温度を低くできる。
【0048】
図7(c)は、第1外側配管72Aの下流側筒状部を第1入口として、第2外側配管72Bの下流側筒状部を第2入口として、第3外側配管72Cの下流側筒状部を第3入口として用いている。同様に、第1外側配管72Aの上流側筒状部を第1出口として、第2外側配管72Bの上流側筒状部を第2出口として、第3外側配管72Cの上流側筒状部を第3出口として用いている。この例では、各外側配管について、個別に加熱温度を定めることができる。
【0049】
以上の説明から判るように、第3実施形態では、各外側配管72A〜72Cに対する蒸気配管の接続態様により、汚泥に対する加熱の仕方を変化させることができる。これにより、汚泥をスラリー化する際の温度条件を最適化できる。
【0050】
===その他の実施形態===
前述した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく変更、改良されると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0051】
例えば、本発明の適用対象となる汚泥は、図1の排水処理施設から排出されたものに限られない。他の形態の排水処理施設から排出されたものであっても同様に適用できる。
【0052】
また、加熱機構として電熱ヒータを用いてもよい。この場合、電熱ヒータを内側配管71の外周に巻き付けた後、この電熱ヒータの外周面を断熱材で覆えばよい。
【符号の説明】
【0053】
10 NS分解部,11 NS分解槽,12 貯水槽,13 ポンプ,20 フッ素処理部,21 フッ素処理槽,22 第1沈殿槽,30 窒素処理部,31 第1中継槽,32 窒素処理槽,32a 好気性菌処理室,32b 嫌気性菌処理室,32c 窒素排出室,33 第2沈殿槽,34 ポンプ,40 重金属処理部,41 第2中継槽,42 重金属処理槽,43 第3沈殿槽,44 ポンプ,50 COD処理部,51 調整槽,52 砂濾過塔,53 COD吸着塔,54 中和槽,55 ポンプ,60 汚泥濃縮部,61 濃縮用沈殿槽,62 ポンプ,70 加熱部,71 内側配管,71a 移動空間,72 外側配管,72A 第1外側配管,72B 第2外側配管,72C 第3外側配管,72a 加熱用空間,72b 蒸気入口となる筒状部,72c 蒸気出口となる筒状部,80 冷却部,81 内側配管,82 外側配管,90 脱水部,91 ベルトプレス型加圧脱水装置,92 ポンプ,100 事前脱水部,101 ベルトプレス型加圧脱水装置,102 ホッパー,103 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火力発電所で排出された排水中の汚泥を濃縮する濃縮部と、
前記濃縮部で濃縮された前記汚泥を加熱してスラリー化するスラリー化部と、
スラリー化された前記汚泥を脱水する脱水部と
を備えた汚泥脱水システムであって、
前記スラリー化部は、
伝熱性を有する伝熱配管と、
前記伝熱配管を外側から加熱する加熱機構と、を有し、
前記伝熱配管の内部が、前記汚泥が移動する移動空間となることを特徴とする汚泥脱水システム。
【請求項2】
前記濃縮部で濃縮された前記汚泥を脱水し、脱水後の前記汚泥を前記スラリー化部に供給する事前脱水部を、さらに有することを特徴とする請求項1に記載の汚泥脱水システム。
【請求項3】
前記加熱機構は、
前記伝熱配管が挿入される空間を内側に区画し、挿入された伝熱配管との間に形成される加熱空間に加熱用蒸気を導入することで、前記伝熱配管を外側から加熱する加熱配管を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の汚泥脱水システム。
【請求項4】
前記加熱配管は、
前記加熱用蒸気の入口と出口を有し、前記伝熱配管の延長方向に並んだ状態で複数設けられていることを特徴とする請求項3に記載の汚泥脱水システム。
【請求項5】
前記加熱機構は、
前記移動空間における前記汚泥の温度が210℃以下80℃以上となるように調整された前記加熱用蒸気を、前記加熱空間に導入することを特徴とする請求項3又は4に記載の汚泥脱水システム。
【請求項6】
前記加熱機構は、
前記移動空間における前記汚泥の温度が130℃以下80℃以上となるように調整された前記加熱用蒸気を、前記加熱用蒸気を前記加熱空間に導入することを特徴とする請求項3又は4に記載の汚泥脱水システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−139985(P2011−139985A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1475(P2010−1475)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】