説明

河川の最高水位を記録できる量水標

【課題】堤外側にH鋼などの構造物を設けずに、堤防法面や護岸法面など傾斜した場所に量水標と痕跡計の機能兼ね備える装置を設置することにより河川水位を管理する方法を提供する。
【解決手段】金属材料やプラスチック材から形成される中空状函105の形状を有し、装置の正面蓋135に現在水位を読み取るための目盛りを印刷またはシート貼りにて表示し、量水標として用いるとともに、中空状函105の内部には、フロート115とフロート115が上下動するためのガイド110が設けられ、函の内部に水が浸入したときにはフロート115が上昇し、水位が下がったときには最高水位の場所のガイド110上でフロート115が停止し、最高水位を記録するとともに、函正面底には、量水標と連動した印刷またはシート貼りの目盛りが表示されており、これにより最高水位を読み取ることができる痕跡計としての機能の両方を兼ね備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、河川の水位を管理する際に、現在の水位を計測する量水標と、過去に遡って最高水位を記録する水位痕跡計(以下、痕跡計)の両方の機能を兼ね備えた装置を用いる新たな河川管理の方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川の水位を管理するためには、河川の堤外側(河川内)に水位計や量水標、痕跡計などを設置し、現在水位を観測したり、過去最高水位を記録する必要がある。
【0003】
しかしながら流水の阻害などによる水位の上昇を避けるためには、出来るだけ堤外側(河川内)には構造物を設けないことが好ましいというジレンマがある。
【0004】
これに対して、別の目的ですでに堤外側(河川内)に設けられている河川構造物を利用して、その施設に付帯させて河川の水位を管理する方法が従来から取られてきた。
その代表例が樋門への量水標や痕跡計の付設である。
【0005】
樋門は、排水路あるいは揚水路が堤防と交差して河川本流に接続する箇所に設けられた河川構造物である。
【0006】
この樋門に設けられたコンクリート製の門柱に水位計や量水標、痕跡計を設置する方法が従来から取られてきた。
【0007】
量水標は一般的に樋門門柱のコンクリート垂直面にビス止めなどにより付設され、水位上昇時には樋門操作人や河川管理者が量水標の目盛りを読むことで現在の水位を把握するなどの利用がされてきた。
【0008】
痕跡計の代表的なものは、塩ビパイプ内に目盛り板を有し、塩ビパイプ底にはコルクの粉末を充填し、水位上昇時には、このコルク粉末が上昇した水面に浮上し、目盛り板に付着し、これが水位低下後も目盛り板に残るため、最高水位が記録されるという粉末式痕跡計という方式である。
【0009】
また、近年この粉末式痕跡計の改良型として、同様の塩ビパイプの中に、目盛り板と目盛り板に沿って移動するフロートを有し、このフロートにより最高水位を記録するフロート式痕跡計という方法も利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】 特開2003−57091公報
【特許文献2】 特表2006−47167公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来から樋門の管理は樋門操作人に委託されており、樋門操作人が門柱上の樋門操作台に設けられた樋門巻き上げ機を操作することにより樋門の開閉を行い、排水路を逆流し堤内側に氾濫する内水氾等を防御する方法で行われてきた。
【0012】
しかし近年、高齢化による樋門操作人の選定の困難や河川管理経費の削減のため、堤外側(河川内)に門柱を設けない門柱レス樋門の設置が進んでおり、これに伴い、従来は門柱に設置していた量水標や水位痕跡計を新たな方法で堤外側(河川内)に設置し、河川の水位管理を実施する必要が生じてきた。
【0013】
この門柱レス樋門において量水標や痕跡計を設置するために、例えばH鋼などを堤外側(河川内)に垂直に打ち込み、このH鋼に量水標や痕跡計を設置する方法があり、実際にその方法で量水標などが設置されている例がある。
【0014】
しかしながら、前述したように、河川内への水位を阻害する構造物の設置は、水位上昇による氾濫を防ぐため、極力行わない方がよい。
【0015】
垂直の構造物に付設しない場合に考えられるのが、堤防の法面や護岸の法面に、量水標や痕跡計など水位を管理する計器を直接設置する方法である。
しかしながら、この場合、法面が傾斜しているため、垂直の壁面に付設するための量水標や痕跡計をそのまま用いることはできない。
【0016】
量水標は、その傾斜の勾配を考慮した目盛りを印刷などにより表示することにより、傾斜面への対応は可能であるが、痕跡計には傾斜面に付設するための機械的な創意工夫が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
樋門周辺の堤外側法面には通常、樋門を管理するためのコンクリート製階段が設けられており、これは門柱レス樋門となった場合にも、必要な設備として設けられている。
【0018】
この樋門階段工に脇には、階段を支持する滑らかなコンクリート面が階段の左右に設けられており、この滑らかな傾斜面に対して、量水標や痕跡計を設置する方法が考えられる。
【0019】
また、量水標と痕跡計をそれぞれ独立して付設する場合、スペースを取り、限られた空間を利用する点において不利であるとともに、製作費用や施工手間などの経済的側面からも、両方の機能を兼ね備える計器により、限られたスペースに一度に設置でき、現在水位を計るための量水標と過去の最高水位を記録するための痕跡計として利用できることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
傾斜面に設置できる量水標や痕跡計により、河川内に構造物を設けずに水位管理を実施することが可能となり、不要な流水の阻害を防ぐとともに、施工手間や施工費を下げることが可能となり、経済的で安全な河川管理に資することが可能となる。
【0021】
量水標と痕跡計の機能を兼ね備える計器を用いることにより、限られたスペースに設置が可能となるとともに、製作費用、施工費用などの経済的側面からも有利な方法で河川の安全管理をすることが可能となる
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の原理に従う実現例の詳細を添付図面に基づいて言及する。異なる図面の同一の参照符号は、同一または類似の要素と同一に扱ってもよい。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するわけではない。
【0023】
図1は、本発明の原理および利用方法が実現されうる例示の実施形態100の図である。
【0024】
装置はアルミなどの金属材料やプラスチック材によって形成される中空状函105の形状を有し、装置中央には底面と天面に固定されたガイド110が設けられている。このガイド110は水位を記録するフロート115が上下動するためのものであり、ガイド110中央部には凹凸突起を有するストッパー120が設けられており、フロート115内部に設けられた停止用突起125がこの凹凸突起を有するストッパー120に引っ掛かることによりフロート115が停止し、最高水位を記録するものである。
【0025】
中空状函105正面底には最高水位読み取り用目盛130が印刷あるいはシート貼りで表示されており、これにより記録された最高水位を読み取る。この最高水位読み取り用目盛125は、中空状函105の正面蓋135に印刷あるいはシートで貼られた目盛りと高さ関係が整合しており、この正面蓋135が法面の傾斜に応じた勾配型量水標になっており、通常はこの正面蓋135を閉じた状態で使用することにより、現在水位を読み取る量水標として使用する。
【0026】
記録された最高水位を読み取る痕跡計としての機能を使用する場合は、正面蓋を135を外し、内部に設けられたガイド110に停止しているフロート115と中空状函105正面底に印刷あるいはシート貼りで表示されている最高水位読み取り用目盛130を照合して最高水位の痕跡を読み取る。
【0027】
図2は、本発明の装置の構造正面図200である。本装置は、設置場所の長さに応じて長さを調整して製作するとともに、取り扱いし易いサイズで製作した後、複数個を上下方向に並べて設置することにより、必要な範囲の水位を記録することに利用する。中空状函105の天面と底面には通水孔210が設けられており、河川の水位が上昇した際には、この通水孔210から中空状函105の中に水が入り、フロート115をガイド110に沿って押し上げるものである。
【0028】
水が中空状函105に侵入した際には、フロート115が鉛直方向に浮きあがり、この浮き上がりによって停止用突起125がガイド110中央の凹凸突起を有するストッパー120に触れない状態が生まれ、フロート115はガイド120に沿って、水位(水の表面)箇所まで自由に移動が可能となる。水位が下がり始めたときには、フロート115の重量で、鉛直下方向に下がることにより停止用突起125がガイド110中央の凹凸突起を有するストッパー120に引っ掛かり、これによりフロート115は停止し、最高水位が記録される。
【0029】
一旦最高水位が記録されたのち、別の時期にさらにその最高水位を超える水が中空状函105内に侵入した場合、上記の同じ現象が生じ、新たな最高水位が記録される。逆にその水位が記録された最高水位より低い場合は、停止しているフロート115に影響はなく、引き続き最高水位が記録されることとなる。
【0030】
図3は、本発明の装置の構造平面図300であり、ガイド120にしてフロート115が停止した状態を示している。
【産業上の利用可能性】
【0031】
すでに実用されている量水標と水位痕跡計の機能を高めたものであり、早期の産業上の利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の原理および利用方法が実現されうる例示の実施形態の図である。
【図2】本発明の装置を正面から見た構造図である。
【図3】本発明の装置の平面から見た構造図である。
【符号の説明】
【0033】
100: 水位痕跡計付き量水標の実施形態
105: 中空状函
110: ガイド
115: フロート
120: ストッパー
125: 停止用突起
130: 最高水位読み取り用目盛
135: 正面蓋
200: 本装置の構造正面図
210: 通水孔
300: 本装置の構造平面図

【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川の水位に対して、増水時の現在水位を目視あるいは監視カメラで確認する方法および過去の最高水位を水位痕跡として記録する方法を同時に実現する装置であり、またその装置を堤防法面や護岸法面などの傾斜した斜面に設置し、河川の水位を管理する方法。
【請求項2】
請求項1の河川水位の管理方法において、金属製あるいはプラスチック製の中空状函の装置の正面蓋には現在水位を読み取るための目盛りを印刷またはシート貼りにて表示し、量水標として用いるとともに、中空状函の内部には、フロートとフロートが上下動するためのガイドが設けられ、函の内部に水が浸入したときにはフロートが上昇し、水位が下がったときには最高水位の場所のガイド上でフロートが停止し、最高水位を記録するとともに、函正面底には、量水標と連動した印刷またはシート張りの目盛りが表示されており、これにより最高水位を読み取ることができる痕跡計としての機能の両方を兼ね備えた装置。
【請求項3】
請求項1の河川水位の管理方法に用いる装置において、最高水位を記録する函の内部構造において、函の天面と底面に固定されたガイドの内側に凹凸突起形状のストッパーが設けられ、またフロート中央には停止用突起が設けられており、フロートに設けられたガイド用の孔の大きさを調整することにより、フロート上昇時には、フロートはガイドに沿ってスムーズに上昇するとともに、水位が下がり始めたときには、フロートの停止用突起がガイドの凹凸突起形状のストッパーに引っ掛かかり、最高水位が記録される仕組みとその構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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