河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法
【課題】形成された人工河床の形状保持性を高めて水流による洗堀を防止することができ、また、流導体により河水の流路を所望の方向に誘導して河岸の浸食作用を緩和することができる河床形成用ブロックを提供する。
【解決手段】河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロック1fであって、棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部2dと、この流導部2dに固設される少なくとも1つの軸部3と、軸部3の流導部2dが設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部4とを有することを特徴とする河床形成用ブロックによる。
【解決手段】河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロック1fであって、棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部2dと、この流導部2dに固設される少なくとも1つの軸部3と、軸部3の流導部2dが設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部4とを有することを特徴とする河床形成用ブロックによる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の河床に形成される人工河床に関し、水流による河床の洗掘を防止するための河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
島国である日本は地形が急峻なため、降雨時に雨水が河川に急激に流入して水量が増え、その水力で河岸が浸食されたり河床が洗掘され、最悪の場合、堤防が決壊して水害が発生している。
このような水害を防止する目的で、河岸や河床をコンクリートで形成して水流による浸食や洗堀に対する抵抗性を付与したところ、治水に関しては一定の効果が得られたものの、従来河川に生息する魚類、昆虫、植物等の貴重な生態系が失われてしまい、河川における生態系の保護と治水の両立が望まれている。
古来日本では、木の枝を編んで形成した河床保護構造物である「沈床」を河床に設置して河川の水流を減速させていた。
この沈床を構成する木の枝からなる構造物の隙間は、水生生物の棲みかにもなり、河川の生態系の保護効果も期待できた。
その一方で沈床は、木の枝を編んで作られるため、工業的に大量生産し難く、また、河川の水量が大幅に増加した場合には沈床そのものが流亡してしまい、その度ごとに新たに沈床を作製して河床に設置する必要があった。また、沈床は自然の材料を用いて作製されるため、時間の経過とともに劣化、損傷するので定期的にメンテナンスを行う必要があり、コストがかかるという課題もあった。
このような課題に対処する目的で、河床に構造物を設けて水の流れを制御することで、河床の洗掘を防止するための技術がいくつか開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、「流導壁」という名称で、河水の流路を制御するために河床に設置する流導壁に関する発明が開示されている。
特許文献1に記載の発明は、左右両端に滑動溝を備えた流導板を、支柱に滑動可能に緩嵌し、また、流導板の下流側を斜柱で支え、さらに、流導板を支柱に沿って上下に滑動可能に構成したことを特徴とするものである。
上記構成の流導壁を河川の曲流域に複数設置することで、河川の増水時に曲流域部分において水流が堤防に向って流れるのを妨げることができ、濁流による堤防の破壊を防止することができる。
また、曲流域の内側では土砂の堆積が抑制され、洪水による河川損害の発生が軽減されるという効果を有する。
また、増水して橋桁付近まで濁流に浸かる状況下では、本発明の流導壁の形状に成形した橋脚を用いて架橋することで、流水が曲流の接線方向に曲がり河川の外側堤防等にかかる破壊的な水圧を軽減するという効果を有する。
【0004】
また、特許文献2には、「河川の流れ制御方法及び装置」という名称で、海に臨む河川の下流付近において、その河川の上流から流下してくる土砂が沈殿してその水底に堆積し、中洲が形成されたり、河口を塞ぐ現象が生じるのを防止するための方法及び装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に係る発明は、河川の河口付近の河床上に、流れに沿って複数組の逆ハの字状の水制体を配設し、その水制体と河岸との間に間隔を設けたことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に係る発明によれば、河川の河口付近に上流から流下してきた土砂により中洲が形成されたり、河口が塞がれることを防止することができるという効果を有する。
また、上流から流下してきた土砂を河川の中心部分の早い流速により河口から海中の沖合まで押し流すことができるという効果を有する。
さらに、河川の中央部に配設される逆ハの字状の水制体と河岸との間に間隔を設けることにより、その間隔部分の流れは逆流するか、あるいは、よどむので、小船の遡上を容易にすることができると同時に、その河岸にも良い影響を及ぼすことができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−248132号公報
【特許文献2】特開平9−275939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に係る流導壁は、河床上に設置されるものであるため、河川の水量が著しく増加した場合には、流導壁自体が水圧で破損または流亡してしまう可能性が高く、長期間にわたり恒常的な整流効果が期待できないという課題があった。
また、特許文献1に係る発明は、河床自体の形状保持性を高めるよう構成されるものではなく、従って、水流により洗堀され難い河床を提供するものではなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明においては、河川の中心付近において水流による洗掘が進行すると考えられ、この状態を放置した場合、水制体が載置された河床までもが徐々に浸食され、最終的には水制体が河床において転倒してしまう可能性もあった。
すなわち、特許文献2に記載の発明においても、河床自体の形状保持性を高めるよう構成されるものではなく、従って、水流により洗堀され難い河床を提供するものではなかった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、河床自体を補強して水流による河床の洗掘を防止すると同時に、河床表面における水流を撹乱することによって河水の流速を低減させることができ、しかも、水流が河岸に向うのを妨げることで水圧による河岸の破損を防止することができる河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である河床形成用ブロックは、河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部と、この流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、軸部の流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、流導部は河床から水中に突出して、河床近傍の水流を撹乱するという作用を有する。また、軸部は、河床の地中に収容されて流導部を支持することで、河水の流れが流導体に作用した場合でも流導部が河床から脱離したり位置ずれするのを妨げるという作用を有する。さらに、脚部は、掘削された河床に請求項1に係る河床形成用ブロックを自立させると同時に、軸部と協同して流導体の脱離や位置ずれを妨げるという作用を有する。
そして、請求項1記載の河床形成用ブロックを複数用いることで、河床に骨組み構造が形成され、この骨組み構造により河床形成材を保持して、水流による移動を妨げるという作用を有する。
特に、積み重ねた場合に隙間を形成するような不定形な自然石を用いて、請求項1に係る河床形成用ブロックを埋設した場合には、水生生物の生息場所となるに隙間が河床に形成され、この隙間が安定した状態で保持されるという作用を有する。
【0010】
請求項2記載の発明である河床形成用ブロックは、請求項1記載の河床形成用ブロックであって、軸部は、流導部と脚部との間でかつ軸部の周方向に垂設又は斜設される少なくとも1つの棒状又は平板状の枝部を有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加え、枝部を有することで、軸部が河床の地中に収容された場合に、河床形成材と請求項2に記載の河床形成用ブロックとの接触面積を増加させて、流導部が河床から脱離するのを高めるという作用を有する。
また、前記枝部を河床から水中に露出させた場合には、流導体と枝部の両者で水流を撹乱して河水の流速を減速させるという作用を有する。
【0011】
請求項3記載の発明である河床形成用ブロックは、河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、棒状で、かつ、湾曲又は屈曲した1つの流導部と、この流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、軸部の流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部と、軸部の流導部と脚部との間でかつ軸部の周方向に垂設又は斜設される1つの棒状又は平板状の枝部と、を有し、流導部の両端部における2つの中心軸と、枝部の中心軸は、軸部に垂直な同一平面に投影した場合に、3つの中心軸間の角度が120°に形成されることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2記載の発明と同じ作用に加え、複数の河床形成用ブロックを組み合わせることで河床に略六角形状の格子からなる一体の骨組み構造を形成するという作用を有する。
【0012】
請求項4記載の発明である河床の構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、流導部の端部のいずれか一方の中心軸を河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に河床に配置したことを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項3に記載のそれぞれの発明の作用に加え、流導部の端部のいずれか一方の中心軸を河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に河床に配置することで河水の流れを特定の方向に誘導するという作用を有する。
【0013】
請求項5記載の発明である河床の構造は、請求項4記載の河床の構造であって、流導部の端部を接触又は重ねながら連設することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項4記載の発明と同じ作用に加え、河川の水流の減速効果と、水流誘導性を促進するという作用を有する。
【0014】
請求項6記載の発明である河床の構造は、請求項2又は請求項3に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、流導部及び枝部を河床上に裸出させた状態で配置することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2又は請求項3記載に記載の発明と同じ作用に加え、枝部が河水の撹乱を一層促進するという作用を有する。
【0015】
請求項7記載の発明である河床の形成方法は、河床を掘り下げる掘削工程と、この工程の後に河床に請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロック配設する配設工程と、この工程の後に流導部を、又は、流導部及び枝部を河床上に露出させた状態で軸部を埋める埋設工程とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項4乃至6に記載の発明を方法の発明として捕らえたものであり、請求項4乃至6に記載されるそれぞれの発明と同じ作用を有する。
【0016】
請求項8記載の発明である河床の形成方法は、請求項7記載の河床の形成方法であって、埋設工程において、軸部を河床に埋める際の河床形成材に自然石を用いることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項7記載の発明と同じ作用に加え、不定形な天然石により河床に隙間が恒常的に形成されるという作用を有する。また、この隙間は、水生生物に棲みかを提供するという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の河床形成用ブロックによれば、流導部が河川の水流に対して抵抗となり流速を低減するという効果を有する。このとき、流導部は河床の地中に収容される軸部により支持されるため、流導部が水流による水圧で脱離したり移動するのを防止することができるという効果を有する。
その一方で、請求項1に記載の河床形成用ブロックにより河床に骨組み構造が形成されるため、水流で河床形成材である砂や石が移動又は流亡するのを防止することができるという効果を有する。この結果、河床の洗掘を防止して、河床の著しい形状変化を防止することができるという効果を有する。
また、脚部は、河床の地中において流導部に水流による水圧が作用した際に、抵抗体として作用し、軸部が河床から抜けるのを防止するという効果を有する。
加えて脚部4を有することで、請求項1に記載の河床形成用ブロックを掘削した河床に配置する際に、河床形成用ブロックを掘削面上に自立させることができるという効果を有する。
よって、河床の形成時に、河床形成用ブロックを支持するための設備を別途設ける必要がなく、人工河床の形成作業を簡素化することができるという効果を有する。
特に、河床形成材として不定形な自然石を用いた場合には、その荷重で請求項1記載の河床形成用ブロックの流亡や移動を防止することができると同時に、自然石による石組みにより河床に水生生物の棲みかとなる間隙が形成され、河川の生態系を保全することができるという効果を有する。
【0018】
本発明の請求項2に記載の河床形成用ブロックは、請求項1記載の発明と同じ効果に加え、特に枝部を脚部の両方を河床の地中に埋設した場合には、請求項2に記載の河床形成用ブロックによる河床の形状保持効果を一層高めることができる。
また、特に枝部を河床から水中に露出させた状態で軸部を埋設した場合には、水流の撹乱効果が増し、流速の低減効果を促進することができる。
【0019】
本発明の請求項3記載の河床形成用ブロックは、請求項2に記載の発明と同じ効果に加え、複数の請求項3に係る河床形成用ブロックを組み合わせることで、略六角形状の格子からなる一体の骨組み構造を河床に形成することができる。
この結果、水圧に対する河床の抵抗性が増し、河床の形状保持効果が一層促進される。
【0020】
本発明の請求項4記載の河床の構造によれば、請求項1乃至請求項3記載のそれぞれの発明の効果に加え、流導体の端部の中心軸を特定の方向に向け、かつ、このような流導体を複数河床上に規則的に配置することで、所望の方向に河水の流れを誘導することができるという効果を有する。
よって、例えば、曲がった流路を有する河川に請求項4に記載の河床の構造を形成する場合、流導体の端部の中心軸を河川の中央側でかつ流れの下流側に向けることで、水流が中央側に誘導されて、水流が河岸に向かうのを防止することができたり、あるいは、流導体の端部の中心軸を河川の内側でかつ流れの下流側に向けることで、水流が河川の内側に誘導されて、水流が外側の河岸に向かうのを防止することができるという効果を有する。
従って、水量が増加した場合に堤防が破損したり決壊したりするのを防止することができるという効果を有する。また、河水の水流により洗堀され難い人工河床を提供するという効果を有する。
【0021】
本発明の請求項5記載の河床の構造は、請求項1乃至請求項3記載のそれぞれの発明の効果に加え、導水部が切れ目なく連続することにより、請求項4に記載の発明の効果を一層促進することができるという効果を有する。
【0022】
本発明の請求項6記載の河床の構造は、請求項3に記載の発明と同じ効果に加え、河床に水流の抵抗となる突起を多く形成することができるので、高い流速低減効果を有する。
特に、堰における着水地点に請求項6記載の河床の構造を形成することによれば、着水時に生じる水圧を水中に効率的に分散させることができ、この部分の洗掘を防止することができるという効果を有する。
この結果、堰の近傍が洗堀されて堰自体が倒壊するのを防止することができるという効果を有する。
【0023】
本発明の請求項7記載の河床の形成方法は、請求項4乃至請求項6に記載のそれぞれの発明を方法の発明として捉えたものであり、請求項4乃至請求項6に記載のそれぞれの発明と同じ効果を有する。
【0024】
本発明の請求項8記載の河床の形成方法は、請求項7記載の発明と同じ効果に加え、河床形成材として不定形な天然石を用いることで、河床に水生生物の生息に適した棲みかを提供することができるという効果を有する。
この結果、水量が増加した際に水圧により破損し難い人工河床を提供すると同時に、河川の生態系を保全することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の最良の実施の形態に係る河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法について図1乃至図15を参照しながら説明する。
【0026】
本発明に係る河床形成用ブロックは、人工河床を形成するための構造材である。
【0027】
まず、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロックについて図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項1及び請求項4に対応)
図1は(a)本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例2に係る河床形成用ブロックの概念図である。
図1(a)に示すように、本発明の実施例1に係る河床形成用ブロック1aは、棒状の流導体2aの下面側略中央に柱状の軸部3が接続され、この軸部3の流導体2aに接続されない側の端部近傍でかつその周方向に、脚部4が3本突設されたものである。
なお、図1(a)においては、脚部4が軸部3に垂設された場合を例に挙げて説明しているが、脚部4は、図示される位置よりもさらに高い位置から掘削面6に向って突設されていてもよい。
このように、実施例1に係る河床形成用ブロック1aにおいては、軸部3に脚部4が設けられることで、掘削面6に河床形成用ブロック1aを単独で自立させることができるという効果を有する。よって、人工河床を形成する目的で複数の河床形成用ブロック1aを配設する場合、クレーン等で河床形成用ブロック1aを一つずつ吊り上げて掘削面6上に載置するだけで河床形成用ブロック1aの配設作業を完了することができるので、施工現場における作業性を高めることができるという効果を有する。
【0028】
また、本発明に係る河床形成用ブロックは、図1(b)に示すように、棒状の流導体2aの下面側でかつ両端部近傍にそれぞれ柱状の軸部3を接続し、この軸部3のそれぞれにおいて、流導体2aに接続されない側の端部近傍でかつその周方向に脚部4を突設したものでもよい。
図1(b)に示すような、実施例2に係る河床形成用ブロック1bも、軸部3および脚部4を備えることで掘削面6上に安定した状態で自立させることができるという効果を有する。
上記構成の河床形成用ブロック1a,1bは、掘削されて平にならされた掘削面6上に複数配置され、その後、流導体2a,2aの底面まで、すなわち、図1(a),(b)中の符号Aで示される平面の高さまで、図示しない河床形成材で埋め戻されて人工河床が形成される。
【0029】
従来、自然の河川では河水の水流により河床が徐々に削り取られる洗堀が生じたり、河岸が浸食されることが知られている。
そして河床の洗堀や河岸の浸食が進行すると、河川の途中に設置される堰や河岸に形成される堤防が支持基盤を失い、洪水時に倒壊したり破損することにより水害が生じていた。
また、特に河床の洗堀を防止するためには、河床に複数の突起を形成して河水の水流を撹乱し、川底における河水の流速を低減することが効果的である。
その一方で、単に河床に突起物となるような物体を設置しただけでは、洪水時の水圧で突起を構成する物体が容易に流亡してしまい、いざという時に水流の流速低減効果が期待できない可能性が高かった。
そこで、発明者らは河水の流速を低減させるための突起物を河床に配設する際に、その突起物を支持するための構造を設け、この構造を河床の地中に収容することで、突起物の水圧に対する抵抗性を高めると同時に、河床に埋め込まれた構造物を河床の骨組み構造として利用することで、河床形成材の水流による移動を防止することができる人工河床を発案した。
【0030】
従って、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロック1a,1bによれば、軸部3及び脚部4を河床の地中に収容することで、河床から水中に突設する流導体2a,2aの水圧に対する抵抗性を高めることができるという効果を有する。
また、流導体2aは河床近傍の水流を撹乱するという作用を有し、この結果、河水の水流が乱されて流速が低減されるという効果を有する。
また、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロック1a,1bに係る軸部3及び脚部4は、河川の河床において骨組み構造を形成し、土砂等の河床形成材が水流によって移動するのを防止できるという効果も有する。
よって、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロック1a,1bによれば、流導体2による水流撹乱作用と、軸部3及び脚部4による河床形成材の保持作用により、水流で洗堀されにくい人工河床を提供するという効果を有する。
なお、図1では、流導体2が軸部を1本又は2本有する場合を例に挙げて説明しているが、軸部3は図示される本数に限定されることなく、3本以上でも良い。
特に、軸部3を流導体2aに3本以上設ける場合でかつ実施例1に係る河床形成用ブロックを自立させることができる場合には、軸部3に必ずしも脚部4を設けなくとも良い。この場合、軸部3が脚部4の作用及び効果を兼ねるため、上記河床形成用ブロック1a,1bと同様の作用及び効果を有する。
さらに、軸部3の端部近傍において周方向に突設される脚部は、河床の掘削面6上において実施例1,2に係る河床形成用ブロック1a,1bを、支柱等を用いることなく自立可能に配置されるのであれば、その設置位置及び本数は問題としない。
【0031】
ここで、流導体2aの変形例について図2を参照しながら説明する。
図2(a)〜(d)はいずれも本発明に係る流導部の変形例を示す概念図である。
図1では、流導体2aの形状が、例えば、直線状である場合を例に挙げて説明しているが流導体2aの形状は必ずしも直線状でなくともよい。
例えば、図2(a)に示す流導体2bのように、略円弧状に湾曲していても良いし、図2(b)に示す流導体2cのように、多角形の複数の辺を切り取ったような形状で湾曲しているものでも良い。
あるいは、図2(c)に示す流導体2dのように略く字形に屈曲したものでもよいし、さらに、図2(d)に示す流導体2eのように、ジグザグ状に屈曲したものでも良い。
そして、特に上述の図1に示すような流導体2a及び、上記の図2に示すような流導体2a〜2eを、河床9上においてその端部のいずれか一方の中心軸21を、特に河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に向けて配置した場合には、図2に示すように、河川の上流側から流れてくる水流Bを、流導体2a〜2eを乗り越えようとする水流Cと、流導体2a〜2eが伸延する方向に沿って向きを変えた水流Dとに分断して撹乱することができるという効果を有する。
この結果、図2中における水流Cは、河床9から水面へと向う上昇流を形成しながら河川の垂直方向において水流Bの勢いを打ち消すように作用する。また、水流Dは、河床9の平面方向において水流Bの勢いを打ち消すように作用する。
よって、これらの作用が複合されて、水流Bの流速低減効果が発揮されるのである。
なお、上述のような変形例に係る流導体2b〜2eは、他の実施例に係る河床形成用ブロックの流導体と置換することが可能である。
【0032】
次に実施例3及び実施例4に係る河床形成用ブロックについて図3を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項2に対応。)
図3は本発明の実施例3に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例4に係る河床形成用ブロックの概念図である。なお、図1又は図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図3(a),(b)に示すように、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dは、上述の実施例1又は実施例2に係る河床形成用ブロックと同じ構成に加え、流導体2aと脚部4との間の軸部3の側面に垂設又は斜設される少なくとも1つの棒状又は平板状の枝部5を有することを特徴とするものである。
図3(a),(b)においては、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dの軸部3が、棒状である場合を例に挙げて説明しているが、この枝部5は、例えば、軸部3の長さ方向に平行な方向に平面有する平板状の枝部でも良い、あるいは、設置面である掘削面6と平行な、あるいは、掘削面6と交差するような平面を有する平板状の枝部でもよい。
また、図3(b)において、枝部5は、脚部4の突設方向と同じ方向に突設されているが、これは、実施例4に係る河床形成用ブロック1dを、例えば、互いに接触させながら複数連設することができるよう、隣り合う河床形成用ブロック1dの枝部5を配置したためである。
さらに、図3(b)において、実施例4に係る河床形成用ブロック1dの軸部3のいずれか一方にのみ枝部5を設けても良い。
この場合、実施例4に係る河床形成用ブロック1dの河床9からの離脱を防止する効果が低減するものの、複数の実施例4に係る河床形成用ブロック1dを掘削面6上に配置し易くし、施工時の作業性を向上することができるという効果を有する。
よって、実施例3又は実施例4に係る河床形成用ブロック1c,1dの枝部は、河床の掘削面6に複数配設する場合の邪魔にならなければ軸部3の側面のどこに設けても良いし、その本数も1本以上でも良い。
なお、本願明細書では、軸部3に突設される突起のうち、本発明に係る河床形成用ブロックの自立に必要な突起を脚部4、それ以外の突起を枝部5としてこれらを区別している。以下、本願明細書中に記載される他の実施例においても同様である。
【0033】
このように、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dにおいては、軸部3に枝部5を備えることで、軸部3を河床の地中に収容した場合に、河床形成材と、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dとの接触面積が増加して、流導体2aに水流が作用した場合の抵抗性を高めることができるという効果を有する。
この結果、洪水時に実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dが河床から脱離する可能性を低減することができるという効果を有する。
また、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dと河床形成材との接触面積が増加するということはすなわち、河床形成用ブロック1c,1dによる河床形成材の保持効果が高まることを意味しており、実施例1,2に係る河床形成用ブロック1a,1bに比べて高い洗堀防止効果を有する人工河床を提供できるという効果を有する。
なお、枝部5の本数が多いほど河床形成用ブロック1c又は1dの水圧に対する抵抗性を高めることができかつ、河床形成材の保持効果を高めることができると言える。
【0034】
また、特に実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dの枝部5を流導体2a近傍に設け、流導体2aと枝部5の両方を河床から水中に突出させた場合には、枝部5によっても水流を撹乱することができるので、水流の速度低減効果を促進することができるという効果を有する。
【0035】
続いて、実施例5及び実施例6に係る河床形成用ブロックについて図4及び図5を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項3に対応。)
図4は本発明の実施例5に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。また、図5は本発明の実施例6に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付しその構成についての説明は省略する。
実施例5に係る河床形成用ブロック1eは、図4(a)に示すように、実施例3に係る河床形成用ブロック1cの流導体2aを、図2に示す流導体2bに置き換えたものである。なお、実施例5に係る河床形成用ブロック1eの流導体は、図2に示す流導体2cでもよい。
さらに、上記構成に加え実施例5に係る河床形成用ブロック1eは、図4(b)に示すように、流導体2bの両端部15a,15bにおける2つの中心軸16,17と、枝部5の中心軸18が、軸部16,17に垂直な同一平面に投影した場合に、3つの中心軸16,17,18間の角度が120°に形成されている。
さらに、実施例6に係る河床形成用ブロック1fは、図5(a),(b)に示すように、実施例5に係る河床形成用ブロック1eの2bを、図2(c)の流導体2dに置き換えたものである。
【0036】
また、実施例5に係る河床形成用ブロック1eでは、いずれも流導体2bの上面よりも低い位置に枝部5の上面が配置されている。
そして、他の河床形成用ブロック1eに係る流導体2bの端部15a又は15bを枝部5の上面に載置可能に枝部5の高さ、すなわち、軸部3における枝部5の上面の高さを、流導体2bの上面の高さから流導体2eの厚みの2倍低い位置に設定することによれば、個々の河床形成用ブロック1eを自立させた状態で設置しながら、複数の河床形成用ブロック1eを連設して一体の骨組み構造を形成することができるという効果を有する。
なお、実施例6に係る河床形成用ブロック1fについても同様の作用及び効果を有する。
【0037】
図6は実施例6に係る河床形成用ブロックを複数連設した状態の一例を示す概念図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、図6では、実施例6に係る河床形成用ブロックを連設した場合の流導体の位置関係が理解され易いよう、軸部の一部と脚部の記載は省略した。
図6に示すように、例えば、実施例6に係る河床形成用ブロック1fによれば、河床形成用ブロック1fに係る枝部5の上面に、他の河床形成用ブロック1fに係る流導体2dの端部15a,15bを載置しながら複数の河床形成用ブロック1fを連設した場合、六角形からなる格子状に組まれた一体の骨組み構造を河床に形成することができるという効果を有する。
そして、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを例えば、鉄筋コンクリート製の荷重の大きなもので形成することによれば、河床の骨組み構造の強度を高めることができるという効果を有する。
また、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを例えば、金属材料のような比較的軽量な材料により形成した場合には、連結具を用いたり、溶接して実施例6に係る河床形成用ブロック1fを互いに連結することが可能である。
いずれの場合も、河床において複数の河床形成用ブロック1fが一体の構造物として機能するため、河床の形状保持効果を高めることができる。
なお、実施例5に係る河床形成用ブロック1eや、河床形成用ブロック1eの流導体2bを図2(b)に示す流導体2cに置き換えた河床形成用ブロックも、実施例6に係る河床形成用ブロック1fと同様の作用及び効果を有する。
【0038】
ここで、実施例1〜実施例6に係る河床形成用ブロック1a〜1fが河床において流速低減効果を発揮する仕組みについて図7を参照しながら詳細に説明する。
図7(a)は本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックを河床に設置した場合の断面図であり、(b)は図7(a)において軸部の取付角度を変更した場合の一例を示す断面図である。
図7に示すように、実施例1に係る河床形成用ブロック1aは、従来の河床を掘削して形成された掘削面6上に自立した状態で設置され、その軸部3及び脚部4が河床形成材7により埋戻されて流導体2aの下面と略同じ高さに河床9が形成された状態で使用されるものである。
この状態で、河床9上に河水8が流れると、図7(a)中の符号Bで示す方向に水流が生じる。
この時、河床9の上面に突出する流導体2a近傍では、流導体2aを乗り越えようとする水流Cと、流導体2aの伸延方向に沿って方向転換した水流(図示せず)が生じ、流導体2aの下流側には水流Cの作用により剥離流れ19が発生する。
そして、この剥離流れ19及び、図示しない方向転換した水流により水流Bの勢いが弱められて、河水8の流速が低減されるという効果が発揮されるのである。
【0039】
このとき、水流Bにより流導体2aに作用する水圧は、軸部3を介して脚部4へと伝達されるものの、軸部3及び脚部4は河床形成材7により保定されているため、流導体2aが脱離したり移動したりする心配がないのである。
特に脚部4は、軸部3の脱離を妨げる抵抗材としても作用するため、実施例1に係る河床形成用ブロック1aは、河床9の形状保持効果も有する。
さらに、軸部3に脚部4は河床形成用ブロック1aの一つ一つを自立させるための支柱としての働きも有する。
よって、実施例1に係る河床形成用ブロック1aにおいては、河水8中に突設される流導体2aと、河床9の地中に収容される軸部3及び脚部4を両方備えることではじめて、水流Bの流速低減効果、河床9の形状保持効果、そして施工時の作業性の向上効果が発揮されるのである。
なお、実施例2〜6に係る河床形成用ブロック1b〜1fにおいても同様である。
特に、軸部3に枝部5を有する実施例3〜6に係る河床形成用ブロック1c〜1fによれば、枝部5を有することで河床形成材7と河床形成用ブロック1c〜1fとの接触面積が増加し、河床の形状保持効果を一層促進することができるのである。
【0040】
上述の実施例1〜6に係る河床形成用ブロック1a〜1fにおいては、流導体2a〜2eに軸部3が垂設される場合を例に挙げて説明してきたが、必ずしも軸部3を、流導体2a〜2eに垂設する必要はなく、例えば、図7(b)に示すように、流導体2a〜2eが伸延する平面、すなわち、河床9と平行な平面に対して軸部3を傾斜させた状態で接続してもよい。
この場合、変形例に係る河床形成用ブロック1gは、上述の実施例1に係る河床形成用ブロック1aと同じ効果を有する。
なお、変形例に係る河床形成用ブロック1gにおいて、流導体2を図2(a)〜(d)に記載の流導体2b〜2eに置き換えても実施例1に係る河床形成用ブロック1aと同じ効果が期待できる。
さらにこの場合、本発明に係る河床形成用ブロック1gを自立させる際に、河床形成用ブロック1gが横転することがないよう、傾斜する軸部3を支えるように脚部4を設ける必要がある。
他方、軸部3の流導体2aに接続されない側の端部3aを脚部として利用することができるので、脚部4を軸部3から最低2本突設させるだけで河床形成用ブロック1gを自立させることができるという効果を有する。
【0041】
実施例7に係る河床の構造について図8を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項4に対応。)
なお、実施例7に係る河床の構造は、実施例1〜6に係る河床形成用ブロック1a〜1fのいずれかを複数用いて成る河床の構造であって、流導部2a〜2eの端部のいずれか一方の中心軸を河床において、河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に向けて配置したことを特徴とするものである。
このように、複数の本発明に係る河床形成用ブロックに係る流導体を、その伸延方向を一定方向に向けた状態で河床に規則的に配置することで、河水の流れを所望の方向に誘導することができるという効果を有する。
【0042】
ここでは、特に実施例1に係る河床形成用ブロック1aを用いて実施例7に係る河床の構造を形成した場合を例に挙げて説明する。
図8(a)〜(c)はいずれも本発明の実施例7に係る河床の構造を示す平面図である。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図8(a)は直線的な流路を有する河川の河床9に実施例7に係る河床の構造を形成した場合を示している。
図8(a)に示すように、実施例7に係る河床の構造14aは、河床9に、流導体2aの一方の端部の中心軸を、河川の下流方向でかつ水流Bを遮る方向に、すなわち、特に図8(a)においては、河川の中央11側に向けたことを特徴とするものである。
この場合、水流Bの向きを河川の中央11側に向う方向に(図中の符号Eで示す方向に)変えることができるという効果を有する。
この結果、河岸10に向う河水の水圧が弱められ、洪水時に河岸10が破損するのを防止することができるという効果を有する。
実施例7に係る河床の構造14aにおいては、河床9の地中に図示しない軸部3や脚部4が収容されて骨組み構造が形成されているので、この骨組み構造により河床形成材7が保定され、河床9の洗堀が生じないのである。
よって、実施例7に係る河床の構造14aによれば、まず、水中において個々の流導体2aが水流に対する抵抗体として作用することで水流Bの流速が低減され、次いで、複数の流導体2aが一定の方向に向けられかつそれが規則的に配置されていることで水流Bの流れが所望の方向に変更されるという効果が発揮される。さらに、複数の河床形成用ブロック1aが河床9に網目状に配置されることにより河床9の洗堀も防止することができるのである。
加えて、例えば実施例1に係る河床形成用ブロック1aを鉄筋コンクリート製とした場合には、実施例7に係る河床の構造14aの耐久性を向上させることができるという効果を有する。
つまり、一旦実施例7に係る河床の構造14aを形成すれば、恒久的に使用することができるという効果を有する。
【0043】
図8(b)は曲がった流路を有する河川の河床9に、実施例7に係る河床の構造を形成した場合を示している。なお、図8(b)の河川において、河川の上流側に背を向けて立った場合の右手側の河岸を右岸10a、左手側の河岸を左岸10bという。
本図の場合は、河床9に、流導体2aの一方の端部の中心軸を、河川の下流方向でかつ水流Bを遮る方向に、すなわち、特に図8(b)においては、右岸10a側に向けたことを特徴とするものである。なお、本図8(b)では、中央11よりも河川の左岸10b近傍に流導体2aを配置しているが、河川の右岸10a側にも流導体2aを、河川の右岸10aに向けて配置してもよい。このことは、図9(b)を用いて後述する河床の構造14bにおいても同様である。
図8(b)に示すように、実施例7に係る河床の構造14aは、曲がった流路を有する河川の河床9に形成してもよい。ここでは、直線的な流路を有する河川の河床9に実施例7に係る河床の構造を形成した場合との相違点に重点をおいて説明する。
一般に、河川が曲がった流路を有している場合には、河川の左岸10bが浸食され易い傾向にある。その一方で、河川の右岸10aでは、水流により運ばれてきた土砂等が堆積する傾向にある。
このため、河川が曲がっている場合には、左岸10bの保護が最も重要な課題である。
よって、河川の左岸10bを保護するためには、少なくとも左岸10b側に実施例7に係る河床の構造14aを形成することが望ましい。この場合、河川の地中央11から左岸10bまでの河床の保護効果に加え、この部分の水流を河川の中央11側に誘導するという効果を有する。
【0044】
さらに、特に曲がった流路を有する河川の左岸10bに面する部分では、水流が特殊な流路を形成している。
すなわち、図8(c)に示すように、河川水面付近では河水が左岸10bに向って流下する一方で、(図8(c)中の矢印の実線部分を参照)、この水流は左岸10bで進路を変えて河床9に向って下降するように流れ、その後、河床9では左岸10bから中央11に向う方向に流下しているのである(図8(c)中の矢印の破線部分を参照)。
このように左岸10bにおいて急激に向きを変える水流は、左岸10b及びその河床9を抉り取るように作用するため、左岸10bの河床9に洗堀が生じるのである。
よって、特に曲がった流路を有する河川においては、左岸10bに面する河床9に流導体2aを、その片方の端部の中心軸を河川の下流側でかつ左岸10bに向けて配置することで、左岸10bに面する河床9を抉るように作用する水流を流導体2aで遮ることができ、この結果、左岸10bに面する河床9の洗堀を防止することができるという効果を有する。
もちろん、この場合も水流のBの流速低減効果を有する。
【0045】
実施例8に係る河床の構造について図9を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項5に対応。)
ここでは、実施例7に係る河床の構造との相違点に重点をおいて説明する。
なお、実施例8に係る河床の構造には、実施例1〜6に係る河床形成用ブロックのいずれも使用可能であるが、ここでは特に実施例1に係る河床形成用ブロック1aを用いた場合を例に挙げて説明する。
また、実施例8に係る河床の構造は、実施例7に係る河床の構造の流導体2aの端部が互いに接触しながら、あるいは、互いに重なり合いながら連設されて一体の連設体が形成されることを特徴とするものである。
図9は(a),(b)はいずれも本発明の実施例8に係る河床の構造を示す平面図である。なお、図1乃至図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例8に係る河床の構造14bは、実施例7に係る河床の構造と同じ作用及び効果に加え、連設体12aを河床9に規則的に配置することで、流導体2aに到達した水流Bを連続的に所望の方向に誘導することができるという効果を有する。
すなわち、図9(a),(b)を参照すれば、水流Bを河川の中央11側に連続的に誘導することができるという効果を有する。
従って、実施例8に係る河床の構造14bは、実施例7に係る河床の構造14aと比較して、水流の流路変更効果が高められていると言える。
なお、特に図示しないが、図8(c)を参照しながら説明した理由により、実施例8に係る河床の構造14bにおいて、連設体12aの左岸10b側の端部近傍に位置する流導体2aを、すなわち、図9(b)において左岸10bに面する河床9に配置される流導体2aを、その左岸10b側の端部の中心軸を河川の下流側でかつ左岸10bに向けて配置してもよい。
この場合、左岸10bに面する河床9の洗堀を防止することができるという効果に加え、水流のBの流速低減効果も有する。
【0046】
さらに、実施例8に係る河床の構造14bにおいて複数の河床形成用ブロック1aの連設方法について図10及び図11を参照しながらより詳細に説明する。
図10(a)は実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を互いに接触させながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)はその側面図である。なお、図1乃至図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図10(a),(b)に示すように、流導体2aの側面を接触させながら実施例1に係る河床形成用ブロック1aを連設した場合には、連設体12aの側面が階段状となる。
従って、連設体12aの側面形状が複雑化することで、河床9の平面方向における水流の撹乱が促進され、河水の流速が低減されるという効果を有する。
また、流導体2aの端部の側面を互いに接触させながら連設体12aを形成した場合、河床形成用ブロック1aが相互に支えあった構造となるので、河床9の形状保持効果も促進される。
【0047】
また、図11(a)は実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を互いに重ねながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)はその側面図である。なお、図1乃至図10に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図10(a),(b)に示すように、流導体2aの端部を重ねながら実施例1に係る河床形成用ブロック1aを連設した場合には、連設体12bの上面が階段状となる。
このため、連設体12bの上面の形状が複雑化すると同時に、河床9からの突起の高さが高くなることで、河床9の垂直方向への水流の撹乱が促進され、河水の流速が低減されるという効果を有する。
また、流導体2aの端部を互いに重ねながら河床形成用ブロック1aを連設して連設体12bを形成した場合も、河床形成用ブロック1aが相互に支えあった構造となるので、河床9の形状保持効果も促進される。
この場合、流導体2aを重ね合わせながら連設した場合でも、河床形成用ブロック1aを確実に自立させることができるよう、軸部3に流導体2aを河床9と平行な平面に対して傾斜させた状態で接続してもよい。
【0048】
実施例9に係る河床の構造について図12を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項6及び請求項8に対応。)
実施例9に係る河床の構造は、実施例3〜6に係る河床形成用ブロックのいずれかを複数用いてなる河床の構造であって、実施例3〜6に係る河床形成用ブロックの流導体及び枝部を河床上に裸出させた状態で配設することを特徴とするものである。
【0049】
図12(a)は実施例9に係る河床の構造の一例を示す概念図であり、(b)は実施例9に係る河床の構造の他の例を示す概念図である。なお、図1乃至図11に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例9に係る河床の構造20aは、例えば、図12(a)に示すように実施例3に係る河床形成用ブロック1cの流導体2aの端部を重ねながら連設し、かつ、枝部5が河床9上に裸出するよう軸部3及び脚部4を河床9の地中に収容したものである。
この場合、流導体2aが連設されることで、水流の流路転換が促進されるという効果を有する。また、連設体12cの上面が階段状になることで、河床9の垂直方向における水流の撹乱が促進されるという効果を有する。さらに、枝部5が河床9の上面に裸出することで、河床9の平面方向における水流の撹乱も促進されるという効果を有する。
これらの効果を複合されて、河水の流速低減効果が一層促進される。
なお、図12(a)に示す河床の構造20aにおいては、軸部3に別途枝部5を設け、この枝部5を地中に収容してもよい。この場合、河床の構造20aの水圧に対する抵抗性を向上させることができるという効果を有する。
また、図12(a)に示す河床の構造20aにおいて、河床形成用ブロック1cは必ずしも連設しなくともよい。
【0050】
また、実施例9に係る河床の構造20bは、図12(b)に示すように、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを用い、この流導体2dの端部を枝部5の上面に載置しながら連設し、かつ、枝部5が河床9上に裸出するよう軸部3及び脚部4を河床9の地中に収容してもよい。
この場合、河床9上に複雑な形状を有する構造物を形成することができるので、河床9の平面方向及び垂直方向の両方において水流を好適に撹乱することができ、高い流速低減効果と河床9の洗堀防止効果が期待できる。
なお、図12(a)に示す河床の構造20bにおいても、軸部3に別途枝部5を設け、この枝部5を地中に収容してもよい。この場合、河床の構造20bの水圧に対する抵抗性を向上させることができるという効果を有する。
【0051】
なお、実施例7〜9に係る河床の構造において、河床9を形成する河床形成材として不定形な自然石を用いてもよい。
この場合、河床9の表面及びその内部に多数の隙間を形成することができるという効果を有する。
そしてこの隙間は、河川に生息する生物の棲みかとなるので、人工的に形成された河床9においても河川の生態系を維持することができるという効果を有する。
また、不定形な自然石を組んで形成される河床9は、それ自体が強固な形状保持性を有するため、実施例7〜9に係る河床の構造に、洗堀作用に対する強い抵抗性を付与することができるという効果を有する。また、自然石の荷重により、本発明に係る河床形成用ブロックを河床9から脱離し難くすることができるという効果も有する。
従って、実施例7〜9に係る河床の構造に自然石による石組みを組み合わせることで、河川の形状保持性を一層高め、かつ、流路の方向転換を可能にするとともに、河川の生態系を保全することができるという3つの効果を同時に実現できる人工河床を提供できるという効果を有する。また、この場合、人工河床の耐久性を一層向上させることができるという効果も有する。
【0052】
最後に本発明の実施例10に係る河床の形成方法について図13乃至図15を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項7及び請求項8に対応。)
本発明の実施例10に係る河床の形成方法は、上述の実施例7又は実施例8に係る河床の構造の形成方法に関する発明であり、実質的には実施例7又は実施例8に係る河床の構造と同じ作用及び効果を有する。
図13〜15はいずれも実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。なお、図1乃至図12に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例10に係る河床の形成方法では、上述の実施例1〜6に係る河床形成用ブロック1a〜1fのいずれも使用可能であるが、ここでは特に実施例6に係る河床形成用ブロック1fを用いて人工河床を形成する場合を例に挙げて説明する。
なお、先に説明した図5及び図6においては、実施例6に係る河床形成用ブロック1fの流導体2dや軸部3、そして、脚部4や枝部5が四角柱で形成された場合を例に挙げて説明しているが、これらは、例えば、四角柱以外の多各柱である六角柱でもよいし、円柱でもよい。また、上記実施例1〜実施例5に係る河床形成用ブロック1a〜1eにおいても同様である。
【0053】
実施例10に係る河床の形成方法により人工河床を形成するには、まず、河川の水流を堰き止めるか、あるいは、水流を迂回させるなどして施工対象となる河床を露出させる。
次に、施工対象である河床の地中に、実施例6に係る河床形成用ブロック1fの軸部3及び脚部4を収容可能にする目的で掘削工程を設け、施工対象である河床を掘り下げて掘削面6を形成しておく。
続いて、図13に示すように、掘削面6上に、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを複数配設する。この配設工程においては、河床形成用ブロック1fの枝部5上に他の河床形成用ブロック1fの流導体2dの端部を重ねながら河床形成用ブロック1fをそれぞれ自立させながら配設することが望ましい。
この場合、河床9が一体の骨組み構造となり、河床9の形状保持性が高められると同時に、河床9の洗堀に対する抵抗性を高めることができるという効果を有する。
また、この配設工程において、河床形成用ブロック1fの流導体2dの片方の端部を河川の下流側でかつ河水の流れを遮る方向に向けても良い。この場合、複数の流導体2dが、河床9上において一定の方向を向いた状態で規則的に配置されることで河水を所望の方向に誘導することができるという効果を有する。
さらに、配設工程において、河床形成用ブロック1fの流導体2dの端部を重ねながら連設してもよく、この場合、流導体2dによる流路変更効果及び河水の流速低減効果を高めることができる。
【0054】
さらに、この配設工程の後に設けられる埋設工程では、図14に示すように、まず、河床形成用ブロック1fの脚部4を河床形成材7により埋め戻して複数の河床形成用ブロック1fにより形成される骨組み構造を安定させてから、再び河床形成用ブロック1fの枝部5の上面近傍まで河床形成材7により埋め戻して河床9を形成する。
なお、この埋設工程において、特に河床9を不定形な自然石13用いた石組みにより形成した場合には、河床9に隙間が形成され、この隙間が水生生物の棲みかとなるので、人工河床9においても河川の生態系を保全することができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る河床形成用ブロック及びそれを用いた河床構造は、形成された人工河床の形状保持性を高めて水流による洗堀を防止することができ、また、流導体により河水の流路を所望の方向に誘導して河岸の浸食作用を緩和することができるものであり、人工河床や人工海岸の施工に関する分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例2に係る河床形成用ブロックの概念図である。
【図2】(a)〜(d)はいずれも本発明に係る流導部の変形例を示す概念図である。
【図3】本発明の実施例3に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例4に係る河床形成用ブロックの概念図である。
【図4】本発明の実施例5に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。
【図5】本発明の実施例6に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。
【図6】実施例6に係る河床形成用ブロックを複数連設した状態の一例を示す概念図である。
【図7】(a)本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックを河床に設置した場合の断面図であり、(b)は図7(a)において軸部の取付角度を変更した場合の一例を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)はいずれも本発明の実施例7に係る河床の構造を示す平面図である。
【図9】(a),(b)はいずれも本発明の実施例8に係る河床の構造を示す平面図である。
【図10】(a)実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を接触させながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)その側面図である。
【図11】(a)実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を重ねながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)その側面図である。
【図12】(a)実施例9に係る河床の構造の一例を示す概念図であり、(b)実施例9に係る河床の構造の他の例を示す概念図である。
【図13】実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。
【図14】実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。
【図15】実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。
【符号の説明】
【0057】
1a〜1g…河床形成用ブロック 2a〜2e…流導体 3…軸部 3a…端部 4…脚部 4a…端部 5…枝部 6…堀削面 7…河床形成材 8…河水 9…河床 10…河岸 10a…右岸 10b…左岸 11…中央 12a,12b…連設体 13…自然石 14a,14b…河床の構造 15a,15b…端部 16〜18…中心軸 19…剥離流れ 20a,20b…河床の構造 21…中心軸
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川の河床に形成される人工河床に関し、水流による河床の洗掘を防止するための河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
島国である日本は地形が急峻なため、降雨時に雨水が河川に急激に流入して水量が増え、その水力で河岸が浸食されたり河床が洗掘され、最悪の場合、堤防が決壊して水害が発生している。
このような水害を防止する目的で、河岸や河床をコンクリートで形成して水流による浸食や洗堀に対する抵抗性を付与したところ、治水に関しては一定の効果が得られたものの、従来河川に生息する魚類、昆虫、植物等の貴重な生態系が失われてしまい、河川における生態系の保護と治水の両立が望まれている。
古来日本では、木の枝を編んで形成した河床保護構造物である「沈床」を河床に設置して河川の水流を減速させていた。
この沈床を構成する木の枝からなる構造物の隙間は、水生生物の棲みかにもなり、河川の生態系の保護効果も期待できた。
その一方で沈床は、木の枝を編んで作られるため、工業的に大量生産し難く、また、河川の水量が大幅に増加した場合には沈床そのものが流亡してしまい、その度ごとに新たに沈床を作製して河床に設置する必要があった。また、沈床は自然の材料を用いて作製されるため、時間の経過とともに劣化、損傷するので定期的にメンテナンスを行う必要があり、コストがかかるという課題もあった。
このような課題に対処する目的で、河床に構造物を設けて水の流れを制御することで、河床の洗掘を防止するための技術がいくつか開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、「流導壁」という名称で、河水の流路を制御するために河床に設置する流導壁に関する発明が開示されている。
特許文献1に記載の発明は、左右両端に滑動溝を備えた流導板を、支柱に滑動可能に緩嵌し、また、流導板の下流側を斜柱で支え、さらに、流導板を支柱に沿って上下に滑動可能に構成したことを特徴とするものである。
上記構成の流導壁を河川の曲流域に複数設置することで、河川の増水時に曲流域部分において水流が堤防に向って流れるのを妨げることができ、濁流による堤防の破壊を防止することができる。
また、曲流域の内側では土砂の堆積が抑制され、洪水による河川損害の発生が軽減されるという効果を有する。
また、増水して橋桁付近まで濁流に浸かる状況下では、本発明の流導壁の形状に成形した橋脚を用いて架橋することで、流水が曲流の接線方向に曲がり河川の外側堤防等にかかる破壊的な水圧を軽減するという効果を有する。
【0004】
また、特許文献2には、「河川の流れ制御方法及び装置」という名称で、海に臨む河川の下流付近において、その河川の上流から流下してくる土砂が沈殿してその水底に堆積し、中洲が形成されたり、河口を塞ぐ現象が生じるのを防止するための方法及び装置に関する発明が開示されている。
特許文献2に係る発明は、河川の河口付近の河床上に、流れに沿って複数組の逆ハの字状の水制体を配設し、その水制体と河岸との間に間隔を設けたことを特徴とするものである。
上記構成の特許文献2に係る発明によれば、河川の河口付近に上流から流下してきた土砂により中洲が形成されたり、河口が塞がれることを防止することができるという効果を有する。
また、上流から流下してきた土砂を河川の中心部分の早い流速により河口から海中の沖合まで押し流すことができるという効果を有する。
さらに、河川の中央部に配設される逆ハの字状の水制体と河岸との間に間隔を設けることにより、その間隔部分の流れは逆流するか、あるいは、よどむので、小船の遡上を容易にすることができると同時に、その河岸にも良い影響を及ぼすことができる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−248132号公報
【特許文献2】特開平9−275939号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術である特許文献1に係る流導壁は、河床上に設置されるものであるため、河川の水量が著しく増加した場合には、流導壁自体が水圧で破損または流亡してしまう可能性が高く、長期間にわたり恒常的な整流効果が期待できないという課題があった。
また、特許文献1に係る発明は、河床自体の形状保持性を高めるよう構成されるものではなく、従って、水流により洗堀され難い河床を提供するものではなかった。
【0007】
また、特許文献2に記載の発明においては、河川の中心付近において水流による洗掘が進行すると考えられ、この状態を放置した場合、水制体が載置された河床までもが徐々に浸食され、最終的には水制体が河床において転倒してしまう可能性もあった。
すなわち、特許文献2に記載の発明においても、河床自体の形状保持性を高めるよう構成されるものではなく、従って、水流により洗堀され難い河床を提供するものではなかった。
【0008】
本発明はかかる従来の事情に対処してなされたものであり、河床自体を補強して水流による河床の洗掘を防止すると同時に、河床表面における水流を撹乱することによって河水の流速を低減させることができ、しかも、水流が河岸に向うのを妨げることで水圧による河岸の破損を防止することができる河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明である河床形成用ブロックは、河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部と、この流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、軸部の流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明において、流導部は河床から水中に突出して、河床近傍の水流を撹乱するという作用を有する。また、軸部は、河床の地中に収容されて流導部を支持することで、河水の流れが流導体に作用した場合でも流導部が河床から脱離したり位置ずれするのを妨げるという作用を有する。さらに、脚部は、掘削された河床に請求項1に係る河床形成用ブロックを自立させると同時に、軸部と協同して流導体の脱離や位置ずれを妨げるという作用を有する。
そして、請求項1記載の河床形成用ブロックを複数用いることで、河床に骨組み構造が形成され、この骨組み構造により河床形成材を保持して、水流による移動を妨げるという作用を有する。
特に、積み重ねた場合に隙間を形成するような不定形な自然石を用いて、請求項1に係る河床形成用ブロックを埋設した場合には、水生生物の生息場所となるに隙間が河床に形成され、この隙間が安定した状態で保持されるという作用を有する。
【0010】
請求項2記載の発明である河床形成用ブロックは、請求項1記載の河床形成用ブロックであって、軸部は、流導部と脚部との間でかつ軸部の周方向に垂設又は斜設される少なくとも1つの棒状又は平板状の枝部を有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1記載の発明と同じ作用に加え、枝部を有することで、軸部が河床の地中に収容された場合に、河床形成材と請求項2に記載の河床形成用ブロックとの接触面積を増加させて、流導部が河床から脱離するのを高めるという作用を有する。
また、前記枝部を河床から水中に露出させた場合には、流導体と枝部の両者で水流を撹乱して河水の流速を減速させるという作用を有する。
【0011】
請求項3記載の発明である河床形成用ブロックは、河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、棒状で、かつ、湾曲又は屈曲した1つの流導部と、この流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、軸部の流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部と、軸部の流導部と脚部との間でかつ軸部の周方向に垂設又は斜設される1つの棒状又は平板状の枝部と、を有し、流導部の両端部における2つの中心軸と、枝部の中心軸は、軸部に垂直な同一平面に投影した場合に、3つの中心軸間の角度が120°に形成されることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2記載の発明と同じ作用に加え、複数の河床形成用ブロックを組み合わせることで河床に略六角形状の格子からなる一体の骨組み構造を形成するという作用を有する。
【0012】
請求項4記載の発明である河床の構造は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、流導部の端部のいずれか一方の中心軸を河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に河床に配置したことを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項1乃至請求項3に記載のそれぞれの発明の作用に加え、流導部の端部のいずれか一方の中心軸を河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に河床に配置することで河水の流れを特定の方向に誘導するという作用を有する。
【0013】
請求項5記載の発明である河床の構造は、請求項4記載の河床の構造であって、流導部の端部を接触又は重ねながら連設することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項4記載の発明と同じ作用に加え、河川の水流の減速効果と、水流誘導性を促進するという作用を有する。
【0014】
請求項6記載の発明である河床の構造は、請求項2又は請求項3に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、流導部及び枝部を河床上に裸出させた状態で配置することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項2又は請求項3記載に記載の発明と同じ作用に加え、枝部が河水の撹乱を一層促進するという作用を有する。
【0015】
請求項7記載の発明である河床の形成方法は、河床を掘り下げる掘削工程と、この工程の後に河床に請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロック配設する配設工程と、この工程の後に流導部を、又は、流導部及び枝部を河床上に露出させた状態で軸部を埋める埋設工程とを有することを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項4乃至6に記載の発明を方法の発明として捕らえたものであり、請求項4乃至6に記載されるそれぞれの発明と同じ作用を有する。
【0016】
請求項8記載の発明である河床の形成方法は、請求項7記載の河床の形成方法であって、埋設工程において、軸部を河床に埋める際の河床形成材に自然石を用いることを特徴とするものである。
上記構成の発明は、請求項7記載の発明と同じ作用に加え、不定形な天然石により河床に隙間が恒常的に形成されるという作用を有する。また、この隙間は、水生生物に棲みかを提供するという作用を有する。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明の請求項1に記載の河床形成用ブロックによれば、流導部が河川の水流に対して抵抗となり流速を低減するという効果を有する。このとき、流導部は河床の地中に収容される軸部により支持されるため、流導部が水流による水圧で脱離したり移動するのを防止することができるという効果を有する。
その一方で、請求項1に記載の河床形成用ブロックにより河床に骨組み構造が形成されるため、水流で河床形成材である砂や石が移動又は流亡するのを防止することができるという効果を有する。この結果、河床の洗掘を防止して、河床の著しい形状変化を防止することができるという効果を有する。
また、脚部は、河床の地中において流導部に水流による水圧が作用した際に、抵抗体として作用し、軸部が河床から抜けるのを防止するという効果を有する。
加えて脚部4を有することで、請求項1に記載の河床形成用ブロックを掘削した河床に配置する際に、河床形成用ブロックを掘削面上に自立させることができるという効果を有する。
よって、河床の形成時に、河床形成用ブロックを支持するための設備を別途設ける必要がなく、人工河床の形成作業を簡素化することができるという効果を有する。
特に、河床形成材として不定形な自然石を用いた場合には、その荷重で請求項1記載の河床形成用ブロックの流亡や移動を防止することができると同時に、自然石による石組みにより河床に水生生物の棲みかとなる間隙が形成され、河川の生態系を保全することができるという効果を有する。
【0018】
本発明の請求項2に記載の河床形成用ブロックは、請求項1記載の発明と同じ効果に加え、特に枝部を脚部の両方を河床の地中に埋設した場合には、請求項2に記載の河床形成用ブロックによる河床の形状保持効果を一層高めることができる。
また、特に枝部を河床から水中に露出させた状態で軸部を埋設した場合には、水流の撹乱効果が増し、流速の低減効果を促進することができる。
【0019】
本発明の請求項3記載の河床形成用ブロックは、請求項2に記載の発明と同じ効果に加え、複数の請求項3に係る河床形成用ブロックを組み合わせることで、略六角形状の格子からなる一体の骨組み構造を河床に形成することができる。
この結果、水圧に対する河床の抵抗性が増し、河床の形状保持効果が一層促進される。
【0020】
本発明の請求項4記載の河床の構造によれば、請求項1乃至請求項3記載のそれぞれの発明の効果に加え、流導体の端部の中心軸を特定の方向に向け、かつ、このような流導体を複数河床上に規則的に配置することで、所望の方向に河水の流れを誘導することができるという効果を有する。
よって、例えば、曲がった流路を有する河川に請求項4に記載の河床の構造を形成する場合、流導体の端部の中心軸を河川の中央側でかつ流れの下流側に向けることで、水流が中央側に誘導されて、水流が河岸に向かうのを防止することができたり、あるいは、流導体の端部の中心軸を河川の内側でかつ流れの下流側に向けることで、水流が河川の内側に誘導されて、水流が外側の河岸に向かうのを防止することができるという効果を有する。
従って、水量が増加した場合に堤防が破損したり決壊したりするのを防止することができるという効果を有する。また、河水の水流により洗堀され難い人工河床を提供するという効果を有する。
【0021】
本発明の請求項5記載の河床の構造は、請求項1乃至請求項3記載のそれぞれの発明の効果に加え、導水部が切れ目なく連続することにより、請求項4に記載の発明の効果を一層促進することができるという効果を有する。
【0022】
本発明の請求項6記載の河床の構造は、請求項3に記載の発明と同じ効果に加え、河床に水流の抵抗となる突起を多く形成することができるので、高い流速低減効果を有する。
特に、堰における着水地点に請求項6記載の河床の構造を形成することによれば、着水時に生じる水圧を水中に効率的に分散させることができ、この部分の洗掘を防止することができるという効果を有する。
この結果、堰の近傍が洗堀されて堰自体が倒壊するのを防止することができるという効果を有する。
【0023】
本発明の請求項7記載の河床の形成方法は、請求項4乃至請求項6に記載のそれぞれの発明を方法の発明として捉えたものであり、請求項4乃至請求項6に記載のそれぞれの発明と同じ効果を有する。
【0024】
本発明の請求項8記載の河床の形成方法は、請求項7記載の発明と同じ効果に加え、河床形成材として不定形な天然石を用いることで、河床に水生生物の生息に適した棲みかを提供することができるという効果を有する。
この結果、水量が増加した際に水圧により破損し難い人工河床を提供すると同時に、河川の生態系を保全することができるという効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の最良の実施の形態に係る河床形成用ブロックおよびそれを用いた河床の構造およびその形成方法について図1乃至図15を参照しながら説明する。
【0026】
本発明に係る河床形成用ブロックは、人工河床を形成するための構造材である。
【0027】
まず、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロックについて図1及び図2を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項1及び請求項4に対応)
図1は(a)本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例2に係る河床形成用ブロックの概念図である。
図1(a)に示すように、本発明の実施例1に係る河床形成用ブロック1aは、棒状の流導体2aの下面側略中央に柱状の軸部3が接続され、この軸部3の流導体2aに接続されない側の端部近傍でかつその周方向に、脚部4が3本突設されたものである。
なお、図1(a)においては、脚部4が軸部3に垂設された場合を例に挙げて説明しているが、脚部4は、図示される位置よりもさらに高い位置から掘削面6に向って突設されていてもよい。
このように、実施例1に係る河床形成用ブロック1aにおいては、軸部3に脚部4が設けられることで、掘削面6に河床形成用ブロック1aを単独で自立させることができるという効果を有する。よって、人工河床を形成する目的で複数の河床形成用ブロック1aを配設する場合、クレーン等で河床形成用ブロック1aを一つずつ吊り上げて掘削面6上に載置するだけで河床形成用ブロック1aの配設作業を完了することができるので、施工現場における作業性を高めることができるという効果を有する。
【0028】
また、本発明に係る河床形成用ブロックは、図1(b)に示すように、棒状の流導体2aの下面側でかつ両端部近傍にそれぞれ柱状の軸部3を接続し、この軸部3のそれぞれにおいて、流導体2aに接続されない側の端部近傍でかつその周方向に脚部4を突設したものでもよい。
図1(b)に示すような、実施例2に係る河床形成用ブロック1bも、軸部3および脚部4を備えることで掘削面6上に安定した状態で自立させることができるという効果を有する。
上記構成の河床形成用ブロック1a,1bは、掘削されて平にならされた掘削面6上に複数配置され、その後、流導体2a,2aの底面まで、すなわち、図1(a),(b)中の符号Aで示される平面の高さまで、図示しない河床形成材で埋め戻されて人工河床が形成される。
【0029】
従来、自然の河川では河水の水流により河床が徐々に削り取られる洗堀が生じたり、河岸が浸食されることが知られている。
そして河床の洗堀や河岸の浸食が進行すると、河川の途中に設置される堰や河岸に形成される堤防が支持基盤を失い、洪水時に倒壊したり破損することにより水害が生じていた。
また、特に河床の洗堀を防止するためには、河床に複数の突起を形成して河水の水流を撹乱し、川底における河水の流速を低減することが効果的である。
その一方で、単に河床に突起物となるような物体を設置しただけでは、洪水時の水圧で突起を構成する物体が容易に流亡してしまい、いざという時に水流の流速低減効果が期待できない可能性が高かった。
そこで、発明者らは河水の流速を低減させるための突起物を河床に配設する際に、その突起物を支持するための構造を設け、この構造を河床の地中に収容することで、突起物の水圧に対する抵抗性を高めると同時に、河床に埋め込まれた構造物を河床の骨組み構造として利用することで、河床形成材の水流による移動を防止することができる人工河床を発案した。
【0030】
従って、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロック1a,1bによれば、軸部3及び脚部4を河床の地中に収容することで、河床から水中に突設する流導体2a,2aの水圧に対する抵抗性を高めることができるという効果を有する。
また、流導体2aは河床近傍の水流を撹乱するという作用を有し、この結果、河水の水流が乱されて流速が低減されるという効果を有する。
また、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロック1a,1bに係る軸部3及び脚部4は、河川の河床において骨組み構造を形成し、土砂等の河床形成材が水流によって移動するのを防止できるという効果も有する。
よって、実施例1及び実施例2に係る河床形成用ブロック1a,1bによれば、流導体2による水流撹乱作用と、軸部3及び脚部4による河床形成材の保持作用により、水流で洗堀されにくい人工河床を提供するという効果を有する。
なお、図1では、流導体2が軸部を1本又は2本有する場合を例に挙げて説明しているが、軸部3は図示される本数に限定されることなく、3本以上でも良い。
特に、軸部3を流導体2aに3本以上設ける場合でかつ実施例1に係る河床形成用ブロックを自立させることができる場合には、軸部3に必ずしも脚部4を設けなくとも良い。この場合、軸部3が脚部4の作用及び効果を兼ねるため、上記河床形成用ブロック1a,1bと同様の作用及び効果を有する。
さらに、軸部3の端部近傍において周方向に突設される脚部は、河床の掘削面6上において実施例1,2に係る河床形成用ブロック1a,1bを、支柱等を用いることなく自立可能に配置されるのであれば、その設置位置及び本数は問題としない。
【0031】
ここで、流導体2aの変形例について図2を参照しながら説明する。
図2(a)〜(d)はいずれも本発明に係る流導部の変形例を示す概念図である。
図1では、流導体2aの形状が、例えば、直線状である場合を例に挙げて説明しているが流導体2aの形状は必ずしも直線状でなくともよい。
例えば、図2(a)に示す流導体2bのように、略円弧状に湾曲していても良いし、図2(b)に示す流導体2cのように、多角形の複数の辺を切り取ったような形状で湾曲しているものでも良い。
あるいは、図2(c)に示す流導体2dのように略く字形に屈曲したものでもよいし、さらに、図2(d)に示す流導体2eのように、ジグザグ状に屈曲したものでも良い。
そして、特に上述の図1に示すような流導体2a及び、上記の図2に示すような流導体2a〜2eを、河床9上においてその端部のいずれか一方の中心軸21を、特に河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に向けて配置した場合には、図2に示すように、河川の上流側から流れてくる水流Bを、流導体2a〜2eを乗り越えようとする水流Cと、流導体2a〜2eが伸延する方向に沿って向きを変えた水流Dとに分断して撹乱することができるという効果を有する。
この結果、図2中における水流Cは、河床9から水面へと向う上昇流を形成しながら河川の垂直方向において水流Bの勢いを打ち消すように作用する。また、水流Dは、河床9の平面方向において水流Bの勢いを打ち消すように作用する。
よって、これらの作用が複合されて、水流Bの流速低減効果が発揮されるのである。
なお、上述のような変形例に係る流導体2b〜2eは、他の実施例に係る河床形成用ブロックの流導体と置換することが可能である。
【0032】
次に実施例3及び実施例4に係る河床形成用ブロックについて図3を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項2に対応。)
図3は本発明の実施例3に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例4に係る河床形成用ブロックの概念図である。なお、図1又は図2に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図3(a),(b)に示すように、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dは、上述の実施例1又は実施例2に係る河床形成用ブロックと同じ構成に加え、流導体2aと脚部4との間の軸部3の側面に垂設又は斜設される少なくとも1つの棒状又は平板状の枝部5を有することを特徴とするものである。
図3(a),(b)においては、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dの軸部3が、棒状である場合を例に挙げて説明しているが、この枝部5は、例えば、軸部3の長さ方向に平行な方向に平面有する平板状の枝部でも良い、あるいは、設置面である掘削面6と平行な、あるいは、掘削面6と交差するような平面を有する平板状の枝部でもよい。
また、図3(b)において、枝部5は、脚部4の突設方向と同じ方向に突設されているが、これは、実施例4に係る河床形成用ブロック1dを、例えば、互いに接触させながら複数連設することができるよう、隣り合う河床形成用ブロック1dの枝部5を配置したためである。
さらに、図3(b)において、実施例4に係る河床形成用ブロック1dの軸部3のいずれか一方にのみ枝部5を設けても良い。
この場合、実施例4に係る河床形成用ブロック1dの河床9からの離脱を防止する効果が低減するものの、複数の実施例4に係る河床形成用ブロック1dを掘削面6上に配置し易くし、施工時の作業性を向上することができるという効果を有する。
よって、実施例3又は実施例4に係る河床形成用ブロック1c,1dの枝部は、河床の掘削面6に複数配設する場合の邪魔にならなければ軸部3の側面のどこに設けても良いし、その本数も1本以上でも良い。
なお、本願明細書では、軸部3に突設される突起のうち、本発明に係る河床形成用ブロックの自立に必要な突起を脚部4、それ以外の突起を枝部5としてこれらを区別している。以下、本願明細書中に記載される他の実施例においても同様である。
【0033】
このように、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dにおいては、軸部3に枝部5を備えることで、軸部3を河床の地中に収容した場合に、河床形成材と、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dとの接触面積が増加して、流導体2aに水流が作用した場合の抵抗性を高めることができるという効果を有する。
この結果、洪水時に実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dが河床から脱離する可能性を低減することができるという効果を有する。
また、実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dと河床形成材との接触面積が増加するということはすなわち、河床形成用ブロック1c,1dによる河床形成材の保持効果が高まることを意味しており、実施例1,2に係る河床形成用ブロック1a,1bに比べて高い洗堀防止効果を有する人工河床を提供できるという効果を有する。
なお、枝部5の本数が多いほど河床形成用ブロック1c又は1dの水圧に対する抵抗性を高めることができかつ、河床形成材の保持効果を高めることができると言える。
【0034】
また、特に実施例3,4に係る河床形成用ブロック1c,1dの枝部5を流導体2a近傍に設け、流導体2aと枝部5の両方を河床から水中に突出させた場合には、枝部5によっても水流を撹乱することができるので、水流の速度低減効果を促進することができるという効果を有する。
【0035】
続いて、実施例5及び実施例6に係る河床形成用ブロックについて図4及び図5を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項3に対応。)
図4は本発明の実施例5に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。また、図5は本発明の実施例6に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。なお、図1乃至図3に記載されたものと同一部分については同一符号を付しその構成についての説明は省略する。
実施例5に係る河床形成用ブロック1eは、図4(a)に示すように、実施例3に係る河床形成用ブロック1cの流導体2aを、図2に示す流導体2bに置き換えたものである。なお、実施例5に係る河床形成用ブロック1eの流導体は、図2に示す流導体2cでもよい。
さらに、上記構成に加え実施例5に係る河床形成用ブロック1eは、図4(b)に示すように、流導体2bの両端部15a,15bにおける2つの中心軸16,17と、枝部5の中心軸18が、軸部16,17に垂直な同一平面に投影した場合に、3つの中心軸16,17,18間の角度が120°に形成されている。
さらに、実施例6に係る河床形成用ブロック1fは、図5(a),(b)に示すように、実施例5に係る河床形成用ブロック1eの2bを、図2(c)の流導体2dに置き換えたものである。
【0036】
また、実施例5に係る河床形成用ブロック1eでは、いずれも流導体2bの上面よりも低い位置に枝部5の上面が配置されている。
そして、他の河床形成用ブロック1eに係る流導体2bの端部15a又は15bを枝部5の上面に載置可能に枝部5の高さ、すなわち、軸部3における枝部5の上面の高さを、流導体2bの上面の高さから流導体2eの厚みの2倍低い位置に設定することによれば、個々の河床形成用ブロック1eを自立させた状態で設置しながら、複数の河床形成用ブロック1eを連設して一体の骨組み構造を形成することができるという効果を有する。
なお、実施例6に係る河床形成用ブロック1fについても同様の作用及び効果を有する。
【0037】
図6は実施例6に係る河床形成用ブロックを複数連設した状態の一例を示す概念図である。なお、図1乃至図5に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。また、図6では、実施例6に係る河床形成用ブロックを連設した場合の流導体の位置関係が理解され易いよう、軸部の一部と脚部の記載は省略した。
図6に示すように、例えば、実施例6に係る河床形成用ブロック1fによれば、河床形成用ブロック1fに係る枝部5の上面に、他の河床形成用ブロック1fに係る流導体2dの端部15a,15bを載置しながら複数の河床形成用ブロック1fを連設した場合、六角形からなる格子状に組まれた一体の骨組み構造を河床に形成することができるという効果を有する。
そして、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを例えば、鉄筋コンクリート製の荷重の大きなもので形成することによれば、河床の骨組み構造の強度を高めることができるという効果を有する。
また、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを例えば、金属材料のような比較的軽量な材料により形成した場合には、連結具を用いたり、溶接して実施例6に係る河床形成用ブロック1fを互いに連結することが可能である。
いずれの場合も、河床において複数の河床形成用ブロック1fが一体の構造物として機能するため、河床の形状保持効果を高めることができる。
なお、実施例5に係る河床形成用ブロック1eや、河床形成用ブロック1eの流導体2bを図2(b)に示す流導体2cに置き換えた河床形成用ブロックも、実施例6に係る河床形成用ブロック1fと同様の作用及び効果を有する。
【0038】
ここで、実施例1〜実施例6に係る河床形成用ブロック1a〜1fが河床において流速低減効果を発揮する仕組みについて図7を参照しながら詳細に説明する。
図7(a)は本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックを河床に設置した場合の断面図であり、(b)は図7(a)において軸部の取付角度を変更した場合の一例を示す断面図である。
図7に示すように、実施例1に係る河床形成用ブロック1aは、従来の河床を掘削して形成された掘削面6上に自立した状態で設置され、その軸部3及び脚部4が河床形成材7により埋戻されて流導体2aの下面と略同じ高さに河床9が形成された状態で使用されるものである。
この状態で、河床9上に河水8が流れると、図7(a)中の符号Bで示す方向に水流が生じる。
この時、河床9の上面に突出する流導体2a近傍では、流導体2aを乗り越えようとする水流Cと、流導体2aの伸延方向に沿って方向転換した水流(図示せず)が生じ、流導体2aの下流側には水流Cの作用により剥離流れ19が発生する。
そして、この剥離流れ19及び、図示しない方向転換した水流により水流Bの勢いが弱められて、河水8の流速が低減されるという効果が発揮されるのである。
【0039】
このとき、水流Bにより流導体2aに作用する水圧は、軸部3を介して脚部4へと伝達されるものの、軸部3及び脚部4は河床形成材7により保定されているため、流導体2aが脱離したり移動したりする心配がないのである。
特に脚部4は、軸部3の脱離を妨げる抵抗材としても作用するため、実施例1に係る河床形成用ブロック1aは、河床9の形状保持効果も有する。
さらに、軸部3に脚部4は河床形成用ブロック1aの一つ一つを自立させるための支柱としての働きも有する。
よって、実施例1に係る河床形成用ブロック1aにおいては、河水8中に突設される流導体2aと、河床9の地中に収容される軸部3及び脚部4を両方備えることではじめて、水流Bの流速低減効果、河床9の形状保持効果、そして施工時の作業性の向上効果が発揮されるのである。
なお、実施例2〜6に係る河床形成用ブロック1b〜1fにおいても同様である。
特に、軸部3に枝部5を有する実施例3〜6に係る河床形成用ブロック1c〜1fによれば、枝部5を有することで河床形成材7と河床形成用ブロック1c〜1fとの接触面積が増加し、河床の形状保持効果を一層促進することができるのである。
【0040】
上述の実施例1〜6に係る河床形成用ブロック1a〜1fにおいては、流導体2a〜2eに軸部3が垂設される場合を例に挙げて説明してきたが、必ずしも軸部3を、流導体2a〜2eに垂設する必要はなく、例えば、図7(b)に示すように、流導体2a〜2eが伸延する平面、すなわち、河床9と平行な平面に対して軸部3を傾斜させた状態で接続してもよい。
この場合、変形例に係る河床形成用ブロック1gは、上述の実施例1に係る河床形成用ブロック1aと同じ効果を有する。
なお、変形例に係る河床形成用ブロック1gにおいて、流導体2を図2(a)〜(d)に記載の流導体2b〜2eに置き換えても実施例1に係る河床形成用ブロック1aと同じ効果が期待できる。
さらにこの場合、本発明に係る河床形成用ブロック1gを自立させる際に、河床形成用ブロック1gが横転することがないよう、傾斜する軸部3を支えるように脚部4を設ける必要がある。
他方、軸部3の流導体2aに接続されない側の端部3aを脚部として利用することができるので、脚部4を軸部3から最低2本突設させるだけで河床形成用ブロック1gを自立させることができるという効果を有する。
【0041】
実施例7に係る河床の構造について図8を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項4に対応。)
なお、実施例7に係る河床の構造は、実施例1〜6に係る河床形成用ブロック1a〜1fのいずれかを複数用いて成る河床の構造であって、流導部2a〜2eの端部のいずれか一方の中心軸を河床において、河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に向けて配置したことを特徴とするものである。
このように、複数の本発明に係る河床形成用ブロックに係る流導体を、その伸延方向を一定方向に向けた状態で河床に規則的に配置することで、河水の流れを所望の方向に誘導することができるという効果を有する。
【0042】
ここでは、特に実施例1に係る河床形成用ブロック1aを用いて実施例7に係る河床の構造を形成した場合を例に挙げて説明する。
図8(a)〜(c)はいずれも本発明の実施例7に係る河床の構造を示す平面図である。なお、図1乃至図7に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図8(a)は直線的な流路を有する河川の河床9に実施例7に係る河床の構造を形成した場合を示している。
図8(a)に示すように、実施例7に係る河床の構造14aは、河床9に、流導体2aの一方の端部の中心軸を、河川の下流方向でかつ水流Bを遮る方向に、すなわち、特に図8(a)においては、河川の中央11側に向けたことを特徴とするものである。
この場合、水流Bの向きを河川の中央11側に向う方向に(図中の符号Eで示す方向に)変えることができるという効果を有する。
この結果、河岸10に向う河水の水圧が弱められ、洪水時に河岸10が破損するのを防止することができるという効果を有する。
実施例7に係る河床の構造14aにおいては、河床9の地中に図示しない軸部3や脚部4が収容されて骨組み構造が形成されているので、この骨組み構造により河床形成材7が保定され、河床9の洗堀が生じないのである。
よって、実施例7に係る河床の構造14aによれば、まず、水中において個々の流導体2aが水流に対する抵抗体として作用することで水流Bの流速が低減され、次いで、複数の流導体2aが一定の方向に向けられかつそれが規則的に配置されていることで水流Bの流れが所望の方向に変更されるという効果が発揮される。さらに、複数の河床形成用ブロック1aが河床9に網目状に配置されることにより河床9の洗堀も防止することができるのである。
加えて、例えば実施例1に係る河床形成用ブロック1aを鉄筋コンクリート製とした場合には、実施例7に係る河床の構造14aの耐久性を向上させることができるという効果を有する。
つまり、一旦実施例7に係る河床の構造14aを形成すれば、恒久的に使用することができるという効果を有する。
【0043】
図8(b)は曲がった流路を有する河川の河床9に、実施例7に係る河床の構造を形成した場合を示している。なお、図8(b)の河川において、河川の上流側に背を向けて立った場合の右手側の河岸を右岸10a、左手側の河岸を左岸10bという。
本図の場合は、河床9に、流導体2aの一方の端部の中心軸を、河川の下流方向でかつ水流Bを遮る方向に、すなわち、特に図8(b)においては、右岸10a側に向けたことを特徴とするものである。なお、本図8(b)では、中央11よりも河川の左岸10b近傍に流導体2aを配置しているが、河川の右岸10a側にも流導体2aを、河川の右岸10aに向けて配置してもよい。このことは、図9(b)を用いて後述する河床の構造14bにおいても同様である。
図8(b)に示すように、実施例7に係る河床の構造14aは、曲がった流路を有する河川の河床9に形成してもよい。ここでは、直線的な流路を有する河川の河床9に実施例7に係る河床の構造を形成した場合との相違点に重点をおいて説明する。
一般に、河川が曲がった流路を有している場合には、河川の左岸10bが浸食され易い傾向にある。その一方で、河川の右岸10aでは、水流により運ばれてきた土砂等が堆積する傾向にある。
このため、河川が曲がっている場合には、左岸10bの保護が最も重要な課題である。
よって、河川の左岸10bを保護するためには、少なくとも左岸10b側に実施例7に係る河床の構造14aを形成することが望ましい。この場合、河川の地中央11から左岸10bまでの河床の保護効果に加え、この部分の水流を河川の中央11側に誘導するという効果を有する。
【0044】
さらに、特に曲がった流路を有する河川の左岸10bに面する部分では、水流が特殊な流路を形成している。
すなわち、図8(c)に示すように、河川水面付近では河水が左岸10bに向って流下する一方で、(図8(c)中の矢印の実線部分を参照)、この水流は左岸10bで進路を変えて河床9に向って下降するように流れ、その後、河床9では左岸10bから中央11に向う方向に流下しているのである(図8(c)中の矢印の破線部分を参照)。
このように左岸10bにおいて急激に向きを変える水流は、左岸10b及びその河床9を抉り取るように作用するため、左岸10bの河床9に洗堀が生じるのである。
よって、特に曲がった流路を有する河川においては、左岸10bに面する河床9に流導体2aを、その片方の端部の中心軸を河川の下流側でかつ左岸10bに向けて配置することで、左岸10bに面する河床9を抉るように作用する水流を流導体2aで遮ることができ、この結果、左岸10bに面する河床9の洗堀を防止することができるという効果を有する。
もちろん、この場合も水流のBの流速低減効果を有する。
【0045】
実施例8に係る河床の構造について図9を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項5に対応。)
ここでは、実施例7に係る河床の構造との相違点に重点をおいて説明する。
なお、実施例8に係る河床の構造には、実施例1〜6に係る河床形成用ブロックのいずれも使用可能であるが、ここでは特に実施例1に係る河床形成用ブロック1aを用いた場合を例に挙げて説明する。
また、実施例8に係る河床の構造は、実施例7に係る河床の構造の流導体2aの端部が互いに接触しながら、あるいは、互いに重なり合いながら連設されて一体の連設体が形成されることを特徴とするものである。
図9は(a),(b)はいずれも本発明の実施例8に係る河床の構造を示す平面図である。なお、図1乃至図8に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例8に係る河床の構造14bは、実施例7に係る河床の構造と同じ作用及び効果に加え、連設体12aを河床9に規則的に配置することで、流導体2aに到達した水流Bを連続的に所望の方向に誘導することができるという効果を有する。
すなわち、図9(a),(b)を参照すれば、水流Bを河川の中央11側に連続的に誘導することができるという効果を有する。
従って、実施例8に係る河床の構造14bは、実施例7に係る河床の構造14aと比較して、水流の流路変更効果が高められていると言える。
なお、特に図示しないが、図8(c)を参照しながら説明した理由により、実施例8に係る河床の構造14bにおいて、連設体12aの左岸10b側の端部近傍に位置する流導体2aを、すなわち、図9(b)において左岸10bに面する河床9に配置される流導体2aを、その左岸10b側の端部の中心軸を河川の下流側でかつ左岸10bに向けて配置してもよい。
この場合、左岸10bに面する河床9の洗堀を防止することができるという効果に加え、水流のBの流速低減効果も有する。
【0046】
さらに、実施例8に係る河床の構造14bにおいて複数の河床形成用ブロック1aの連設方法について図10及び図11を参照しながらより詳細に説明する。
図10(a)は実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を互いに接触させながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)はその側面図である。なお、図1乃至図9に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図10(a),(b)に示すように、流導体2aの側面を接触させながら実施例1に係る河床形成用ブロック1aを連設した場合には、連設体12aの側面が階段状となる。
従って、連設体12aの側面形状が複雑化することで、河床9の平面方向における水流の撹乱が促進され、河水の流速が低減されるという効果を有する。
また、流導体2aの端部の側面を互いに接触させながら連設体12aを形成した場合、河床形成用ブロック1aが相互に支えあった構造となるので、河床9の形状保持効果も促進される。
【0047】
また、図11(a)は実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を互いに重ねながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)はその側面図である。なお、図1乃至図10に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
図10(a),(b)に示すように、流導体2aの端部を重ねながら実施例1に係る河床形成用ブロック1aを連設した場合には、連設体12bの上面が階段状となる。
このため、連設体12bの上面の形状が複雑化すると同時に、河床9からの突起の高さが高くなることで、河床9の垂直方向への水流の撹乱が促進され、河水の流速が低減されるという効果を有する。
また、流導体2aの端部を互いに重ねながら河床形成用ブロック1aを連設して連設体12bを形成した場合も、河床形成用ブロック1aが相互に支えあった構造となるので、河床9の形状保持効果も促進される。
この場合、流導体2aを重ね合わせながら連設した場合でも、河床形成用ブロック1aを確実に自立させることができるよう、軸部3に流導体2aを河床9と平行な平面に対して傾斜させた状態で接続してもよい。
【0048】
実施例9に係る河床の構造について図12を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項6及び請求項8に対応。)
実施例9に係る河床の構造は、実施例3〜6に係る河床形成用ブロックのいずれかを複数用いてなる河床の構造であって、実施例3〜6に係る河床形成用ブロックの流導体及び枝部を河床上に裸出させた状態で配設することを特徴とするものである。
【0049】
図12(a)は実施例9に係る河床の構造の一例を示す概念図であり、(b)は実施例9に係る河床の構造の他の例を示す概念図である。なお、図1乃至図11に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例9に係る河床の構造20aは、例えば、図12(a)に示すように実施例3に係る河床形成用ブロック1cの流導体2aの端部を重ねながら連設し、かつ、枝部5が河床9上に裸出するよう軸部3及び脚部4を河床9の地中に収容したものである。
この場合、流導体2aが連設されることで、水流の流路転換が促進されるという効果を有する。また、連設体12cの上面が階段状になることで、河床9の垂直方向における水流の撹乱が促進されるという効果を有する。さらに、枝部5が河床9の上面に裸出することで、河床9の平面方向における水流の撹乱も促進されるという効果を有する。
これらの効果を複合されて、河水の流速低減効果が一層促進される。
なお、図12(a)に示す河床の構造20aにおいては、軸部3に別途枝部5を設け、この枝部5を地中に収容してもよい。この場合、河床の構造20aの水圧に対する抵抗性を向上させることができるという効果を有する。
また、図12(a)に示す河床の構造20aにおいて、河床形成用ブロック1cは必ずしも連設しなくともよい。
【0050】
また、実施例9に係る河床の構造20bは、図12(b)に示すように、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを用い、この流導体2dの端部を枝部5の上面に載置しながら連設し、かつ、枝部5が河床9上に裸出するよう軸部3及び脚部4を河床9の地中に収容してもよい。
この場合、河床9上に複雑な形状を有する構造物を形成することができるので、河床9の平面方向及び垂直方向の両方において水流を好適に撹乱することができ、高い流速低減効果と河床9の洗堀防止効果が期待できる。
なお、図12(a)に示す河床の構造20bにおいても、軸部3に別途枝部5を設け、この枝部5を地中に収容してもよい。この場合、河床の構造20bの水圧に対する抵抗性を向上させることができるという効果を有する。
【0051】
なお、実施例7〜9に係る河床の構造において、河床9を形成する河床形成材として不定形な自然石を用いてもよい。
この場合、河床9の表面及びその内部に多数の隙間を形成することができるという効果を有する。
そしてこの隙間は、河川に生息する生物の棲みかとなるので、人工的に形成された河床9においても河川の生態系を維持することができるという効果を有する。
また、不定形な自然石を組んで形成される河床9は、それ自体が強固な形状保持性を有するため、実施例7〜9に係る河床の構造に、洗堀作用に対する強い抵抗性を付与することができるという効果を有する。また、自然石の荷重により、本発明に係る河床形成用ブロックを河床9から脱離し難くすることができるという効果も有する。
従って、実施例7〜9に係る河床の構造に自然石による石組みを組み合わせることで、河川の形状保持性を一層高め、かつ、流路の方向転換を可能にするとともに、河川の生態系を保全することができるという3つの効果を同時に実現できる人工河床を提供できるという効果を有する。また、この場合、人工河床の耐久性を一層向上させることができるという効果も有する。
【0052】
最後に本発明の実施例10に係る河床の形成方法について図13乃至図15を参照しながら詳細に説明する。(特に請求項7及び請求項8に対応。)
本発明の実施例10に係る河床の形成方法は、上述の実施例7又は実施例8に係る河床の構造の形成方法に関する発明であり、実質的には実施例7又は実施例8に係る河床の構造と同じ作用及び効果を有する。
図13〜15はいずれも実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。なお、図1乃至図12に記載されたものと同一部分については同一符号を付し、その構成についての説明は省略する。
実施例10に係る河床の形成方法では、上述の実施例1〜6に係る河床形成用ブロック1a〜1fのいずれも使用可能であるが、ここでは特に実施例6に係る河床形成用ブロック1fを用いて人工河床を形成する場合を例に挙げて説明する。
なお、先に説明した図5及び図6においては、実施例6に係る河床形成用ブロック1fの流導体2dや軸部3、そして、脚部4や枝部5が四角柱で形成された場合を例に挙げて説明しているが、これらは、例えば、四角柱以外の多各柱である六角柱でもよいし、円柱でもよい。また、上記実施例1〜実施例5に係る河床形成用ブロック1a〜1eにおいても同様である。
【0053】
実施例10に係る河床の形成方法により人工河床を形成するには、まず、河川の水流を堰き止めるか、あるいは、水流を迂回させるなどして施工対象となる河床を露出させる。
次に、施工対象である河床の地中に、実施例6に係る河床形成用ブロック1fの軸部3及び脚部4を収容可能にする目的で掘削工程を設け、施工対象である河床を掘り下げて掘削面6を形成しておく。
続いて、図13に示すように、掘削面6上に、実施例6に係る河床形成用ブロック1fを複数配設する。この配設工程においては、河床形成用ブロック1fの枝部5上に他の河床形成用ブロック1fの流導体2dの端部を重ねながら河床形成用ブロック1fをそれぞれ自立させながら配設することが望ましい。
この場合、河床9が一体の骨組み構造となり、河床9の形状保持性が高められると同時に、河床9の洗堀に対する抵抗性を高めることができるという効果を有する。
また、この配設工程において、河床形成用ブロック1fの流導体2dの片方の端部を河川の下流側でかつ河水の流れを遮る方向に向けても良い。この場合、複数の流導体2dが、河床9上において一定の方向を向いた状態で規則的に配置されることで河水を所望の方向に誘導することができるという効果を有する。
さらに、配設工程において、河床形成用ブロック1fの流導体2dの端部を重ねながら連設してもよく、この場合、流導体2dによる流路変更効果及び河水の流速低減効果を高めることができる。
【0054】
さらに、この配設工程の後に設けられる埋設工程では、図14に示すように、まず、河床形成用ブロック1fの脚部4を河床形成材7により埋め戻して複数の河床形成用ブロック1fにより形成される骨組み構造を安定させてから、再び河床形成用ブロック1fの枝部5の上面近傍まで河床形成材7により埋め戻して河床9を形成する。
なお、この埋設工程において、特に河床9を不定形な自然石13用いた石組みにより形成した場合には、河床9に隙間が形成され、この隙間が水生生物の棲みかとなるので、人工河床9においても河川の生態系を保全することができるという効果を有する。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明に係る河床形成用ブロック及びそれを用いた河床構造は、形成された人工河床の形状保持性を高めて水流による洗堀を防止することができ、また、流導体により河水の流路を所望の方向に誘導して河岸の浸食作用を緩和することができるものであり、人工河床や人工海岸の施工に関する分野において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】(a)本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例2に係る河床形成用ブロックの概念図である。
【図2】(a)〜(d)はいずれも本発明に係る流導部の変形例を示す概念図である。
【図3】本発明の実施例3に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)は実施例4に係る河床形成用ブロックの概念図である。
【図4】本発明の実施例5に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。
【図5】本発明の実施例6に係る河床形成用ブロックの概念図であり、(b)はその平面図である。
【図6】実施例6に係る河床形成用ブロックを複数連設した状態の一例を示す概念図である。
【図7】(a)本発明の実施例1に係る河床形成用ブロックを河床に設置した場合の断面図であり、(b)は図7(a)において軸部の取付角度を変更した場合の一例を示す断面図である。
【図8】(a)〜(c)はいずれも本発明の実施例7に係る河床の構造を示す平面図である。
【図9】(a),(b)はいずれも本発明の実施例8に係る河床の構造を示す平面図である。
【図10】(a)実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を接触させながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)その側面図である。
【図11】(a)実施例1に係る河床形成用ブロックの流導体を重ねながら連設した場合の様子を示す平面図であり、(b)その側面図である。
【図12】(a)実施例9に係る河床の構造の一例を示す概念図であり、(b)実施例9に係る河床の構造の他の例を示す概念図である。
【図13】実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。
【図14】実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。
【図15】実施例10に係る河床の形成方法により人工河床が形成される様子を示す概念図である。
【符号の説明】
【0057】
1a〜1g…河床形成用ブロック 2a〜2e…流導体 3…軸部 3a…端部 4…脚部 4a…端部 5…枝部 6…堀削面 7…河床形成材 8…河水 9…河床 10…河岸 10a…右岸 10b…左岸 11…中央 12a,12b…連設体 13…自然石 14a,14b…河床の構造 15a,15b…端部 16〜18…中心軸 19…剥離流れ 20a,20b…河床の構造 21…中心軸
【特許請求の範囲】
【請求項1】
河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、
棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部と、
前記流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、
前記軸部の前記流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部とを有することを特徴とする河床形成用ブロック。
【請求項2】
前記軸部は、前記流導部と前記脚部との間でかつ前記軸部の周方向に垂設又は斜設される少なくとも1つの棒状又は平板状の枝部を有することを特徴とする請求項1記載の河床形成用ブロック。
【請求項3】
河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、
棒状で、かつ、湾曲又は屈曲した1つの流導部と、
前記流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、
前記軸部の前記流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部と、
前記軸部の前記流導部と前記脚部との間でかつ前記軸部の周方向に垂設又は斜設される1つの棒状又は平板状の枝部と、を有し、
前記流導部の両端部における2つの中心軸と、前記枝部の中心軸は、前記軸部に垂直な同一平面に投影した場合に、3つの中心軸間の角度が120°に形成されることを特徴とする河床形成用ブロック。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、
前記流導部の端部のいずれか一方の中心軸を河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に向けて河床に配置したことを特徴とする河床の構造。
【請求項5】
前記流導部の端部を接触又は重ねながら連設することを特徴とする請求項4記載の河床の構造。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、
前記流導部及び前記枝部を河床上に裸出させた状態で配置することを特徴とする河床の構造。
【請求項7】
河床を掘り下げる掘削工程と、
この工程の後に前記河床に請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロック配設する配設工程と、
この工程の後に前記流導部を、又は、前記流導部及び前記枝部を河床上に露出させた状態で前記軸部を埋める埋設工程とを有することを特徴とする河床の形成方法。
【請求項8】
前記埋設工程において、前記軸部を河床に埋める際の河床形成材に自然石を用いることを特徴とする請求項7記載の河床の形成方法。
【請求項1】
河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、
棒状で、かつ、直線状又は湾曲又は屈曲した流導部と、
前記流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、
前記軸部の前記流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部とを有することを特徴とする河床形成用ブロック。
【請求項2】
前記軸部は、前記流導部と前記脚部との間でかつ前記軸部の周方向に垂設又は斜設される少なくとも1つの棒状又は平板状の枝部を有することを特徴とする請求項1記載の河床形成用ブロック。
【請求項3】
河床において河水の流れに作用するように配置される河床形成用ブロックであって、
棒状で、かつ、湾曲又は屈曲した1つの流導部と、
前記流導部に固設される少なくとも1つの軸部と、
前記軸部の前記流導部が設けられていない側の端部近傍において周方向に突設される少なくとも1つの脚部と、
前記軸部の前記流導部と前記脚部との間でかつ前記軸部の周方向に垂設又は斜設される1つの棒状又は平板状の枝部と、を有し、
前記流導部の両端部における2つの中心軸と、前記枝部の中心軸は、前記軸部に垂直な同一平面に投影した場合に、3つの中心軸間の角度が120°に形成されることを特徴とする河床形成用ブロック。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、
前記流導部の端部のいずれか一方の中心軸を河川の下流方向でかつ水流を遮る方向に向けて河床に配置したことを特徴とする河床の構造。
【請求項5】
前記流導部の端部を接触又は重ねながら連設することを特徴とする請求項4記載の河床の構造。
【請求項6】
請求項2又は請求項3に記載の河床形成用ブロックを複数用いて成る河床の構造であって、
前記流導部及び前記枝部を河床上に裸出させた状態で配置することを特徴とする河床の構造。
【請求項7】
河床を掘り下げる掘削工程と、
この工程の後に前記河床に請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の河床形成用ブロック配設する配設工程と、
この工程の後に前記流導部を、又は、前記流導部及び前記枝部を河床上に露出させた状態で前記軸部を埋める埋設工程とを有することを特徴とする河床の形成方法。
【請求項8】
前記埋設工程において、前記軸部を河床に埋める際の河床形成材に自然石を用いることを特徴とする請求項7記載の河床の形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−255576(P2008−255576A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95924(P2007−95924)
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(598108364)株式会社吉工園 (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月31日(2007.3.31)
【出願人】(598108364)株式会社吉工園 (2)
【Fターム(参考)】
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