説明

沸騰水型原子炉系の軽水炉に関する方法および装置

【課題】沸騰水型原子炉系の軽水炉において核燃料棒バンドルのためのR因子を決定する方法を提供する。
【解決手段】R因子は、燃料棒への加重局所出力の影響を説明する因子である。ローカルR因子(Ri(z))は、バンドル内の各燃料棒(i)ごとに、かつ、軸方向の複数の各レベル(z)ごとに決定される。特定の燃料棒(i)のためのローカルR因子(Ri(z))を決定するとき、当該燃料棒(i)のための個別の軸方向熱発生プロフィールが考慮される。また、R因子を自動的に決定するために構成されるプロセッサ、コンピュータプログラム製品、燃料棒バンドルのための限界出力を決定する方法、核エネルギープラント、および核エネルギープラントを運転する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軽水炉、より詳しくは沸騰水型原子炉(BWR)におけるドライアウト特性の決定に関する。本発明は、特に、沸騰水型原子炉のドライアウト特性を決定するときに使われるいわゆるR因子を決定する方法に関する。R因子は、当業者に知られた概念であり、核燃料棒に対する隣接する燃料棒からの貢献を含む加重局所出力の影響を説明するものである。
【0002】
本発明はまた、R因子を自動的に決定するために構成されるプロセッサ、コンピュータプログラム製品、燃料棒バンドルのための限界出力を決定する方法、核エネルギープラント、および核エネルギープラントを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
BWR炉心の燃料棒は、各バンドル内で燃料棒を予め定められた幾何学形状に保つために、スペーサおよび、通常はエンドプレートも有するバンドル状にグループ化される。燃料棒の予め定められた格子は、規則的でもよいし、不規則でもよく、軸方向に変化していてもよい。バンドルはその後、冷却材流量を上方へ導き、燃料配置(アレンジ)に機械および熱水力安定度を与えて、燃料の取り扱いおよび交換を容易にするために、チャンネルによって囲まれる。燃料集合体は、いくつかの(例えば4つの)燃料棒バンドル(時々、サブバンドルとも呼ばれる)を備えることができる。他の構造において、各燃料集合体は、1つの燃料棒バンドルだけを含む。
【0004】
燃料バンドルは、燃料棒の本数に関してかなり大きく変化することができ、また、タイロッド、ウォータロッドおよび可燃吸収体ロッドのような特殊目的ロッドを含むこともできる。バンドルは、全長ロッドと、全長ロッドより基本的に短いいわゆる部分長ロッドとの両方を含むことができる。核分裂物質の濃縮は、燃料棒の内部で変化することができ、また、燃料棒から燃料棒へ変化することもできる。本発明は、これらの燃料アレンジおよび炉内でのそれらの作用の全てに適用できる。
【0005】
当業者には周知のように、BWRでは、水の形態の冷却媒体は、燃料棒を含む燃料集合体の中を流れる。水の目的は、燃料棒を冷やして、中性子減速材として働くことである。蒸気と水との混合は、燃料バンドルの中を流れて、対流および沸騰による熱伝導によって燃料棒を冷却する。冷却材の蒸気体積率(the steam quality)すなわち蒸気含有割合(the steam content fraction)が増加するにつれて、流れパターンは変化する。バンドルの特定の地点で、環状の流れパターンが形成される。これは、燃料棒の表面上の薄い液体膜、および、チャンネル内の燃料棒間での蒸気と液滴との混合が存在することを意味する。この液体膜(フィルム)の存在は、燃料棒から冷却材への効率的な熱伝導を許容する。これは、有効な水蒸気発生と、燃料棒の過熱防止との両方を可能にする。この膜(フィルム)の破壊は、ドライアウトと呼ばれる。
【0006】
BWRにおいて、ドライアウトは、回避されなければならない。ドライアウトは、燃料棒から原子炉冷却媒体への熱伝導を悪化させ、したがって、燃料棒の壁の温度上昇を導く。この温度上昇は、燃料棒に損傷を与えることができる。BWRが、特定の高パワーまたはそれ以上、いわゆる限界出力(CP)で運転される場合、ドライアウトはこのように発生する可能性がある。ドライアウトを回避するために、原子炉は、従って、特定の安全マージン、いわゆるドライアウトマージンが存在する低い出力で運転される。ドライアウトマージンの基準は、限界出力比(CPR)である。CPRは、以下の比率として定義されることができる:
CPR=(限界出力)/(実効出力)
【0007】
CPRは、炉心の多数の地点のために、局所的に算出されることができる。いかなる地点でのCPRの最小値も、最小限界出力比MCPRと呼ばれる。
【0008】
以下において、限界出力、限界熱流束および限界蒸気体積率は、定常状態運転におけるそれら相互間の直線的な物理量変換法が存在するので、同義または等価の存在とみなされる。公知の冷却材流量および入口エンタルピーについては、蒸気体積率は、燃料アレンジ出力に蒸気/水・熱力学データを直接提供し、その逆もまたである。
【0009】
限界出力を決定する異なる方法は、先行技術において公知である。ここに引用したEP 1 775 732 A1および対応する米国特許出願11/512,938は、その1つの方法を記載する。どの方法によって限界出力が決定されるにしても、通常、上述したR因子を考慮に入れる必要がある。R因子は、上記引用のEP 1 775 732 A1(および対応する米国特許出願)にも言及される。
【0010】
先行技術によれば、燃料棒バンドルにおける特定の燃料棒のためのR因子は、通常、隣接する燃料棒からの効果を考慮に入れることによって、また、R因子の軸線方向変動のための予め定められた重み関数を用いることによって、決定される。この重み関数は、通常、燃料バンドルのより高いレベルが、より低いレベルに比べてより重い重みを有する。重み関数は、バンドル内のすべての燃料棒に共通である。さらにまた、部分長さのロッドより上のレベルは、非常に高い付加定数を用いて通常補償される。このように、先行技術によれば、燃料棒バンドル内のあらゆる燃料棒のためのR因子を決定することが可能である。燃料バンドル内の異なる燃料棒のための最も高いR因子は、バンドル全体のためのR因子とされる。このR因子が、問題の燃料バンドルのための限界出力比を決定するときに使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、沸騰水型原子炉系の軽水炉におけるR因子を決定する改良された方法を提供することにある。更なる目的は、先行技術による場合以上に、個々の燃料棒の特性がより良好なこの種の方法を提供することである。他の目的は、結果として、部分長さの燃料棒を含む燃料バンドルのためのより正確な単数または複数のR因子になる、この種の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これらの目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
【0013】
本発明によれば、ローカルR因子(Ri(z))は、前記バンドルにおける各燃料棒(i)ごとに、そして、軸方向における複数の各レベル(z)ごとに決定される。さらにまた、特定の燃料棒(i)のための個々の軸方向熱発生プロフィールは、その燃料棒(i)のためのローカルR因子(Ri(z))を決定するときに考慮される。この方法によると、R因子およびこれによるドライアウト特性は、以前の方法よりも正確に決定されることができる。
【0014】
本発明については、R因子の軸方向変動のための上記の予め定められた重み関数を使用する必要がない。この種の予め定められた重み関数は、各燃料棒ごとの各レベルごとに最適化されることができない。しかしながら、本発明では、ローカルR因子を決定するときに、燃料棒のための個々の軸方向熱発生プロフィールが使われるので、ローカルR因子は正確に決定されることができる。さらに、本発明では、ローカルR因子を決定するときに、燃料棒のための個々の軸方向熱発生プロフィールが使われるので、より短い燃料棒(いわゆる部分長さのロッド)のためのローカルR因子も、正確に決定されることができる。本発明については、従って、上述した非常に高い付加定数を用いて、より短い燃料棒を補償する必要がない。
【0015】
本発明による方法の好適な実施態様によれば、前記レベルの数は、少なくとも10に等しい。少なくとも10のレベルを用いることによって、R因子プロフィールは、受け入れ可能な精度で決定される。
【0016】
ローカルR因子が、(軸方向に連続的な)無限の数のレベルのために決定されることができるけれども、ローカルR因子は、決定を容易にするために、好ましくは、軸方向における限定された数のレベルのために決定される。レベルの数は、例えば15〜50の間が可能であるが、好ましくは、20〜30の間、例えば25である。
【0017】
好ましくは、前記核燃料棒バンドルは、少なくとも15本の燃料棒を含む。バンドルは、いわゆるサブバンドルでありえるし、このバンドルの燃料棒の本数は、例えば24本でもよい。あるいは、バンドルは、より大きい数の燃料棒、例えば燃料集合体のすべての燃料棒を含むことができる。
【0018】
本発明による方法を実施する好適な手法によれば、前記方法は、燃料棒バンドル全体のための前記各レベル(z)のためのトータルR因子(Rz)の決定を含み、或るレベル(z)での前記トータルR因子(Rz)は、前記核燃料棒バンドルにおける前記レベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の最大値として決定される。この種のトータルR因子は、燃料集合体またはサブバンドルのためのドライアウト特性を決定するときに使用するのに便利である。
【0019】
本発明による方法を実施する手法によれば、特定の燃料棒(i)のための或るレベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の決定は、バンドル内のすべての燃料棒のレベル(z)までの二重統合平均熱発生率(the double integrated average heat generation rate)に対する、前記燃料棒(i)のレベル(z)までの二重統合熱発生率(the double integrated heat generation rate)の決定を含む。この種の決定が、ローカルR因子を決定するのに有利な手法を提供することが分かった。
【0020】
「統合(または積分)(integrated)」の概念が、この文書において、必ずしも統合が連続的なことを意味するわけではない点に留意する必要がある。その代わりに、好適な実施の形態によれば、「統合(または積分)(integration)」は、離散レベル(離散準位)のためになされる。示された数式のインテグラル記号は、従って、その代わりにこの種の離散レベルに関する総和記号とみなされることができる。
【0021】
好ましくは、前記決定はまた、前記バンドル内のすべての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率による正規化を含み、前記バンドル内のすべての燃料棒のレベル(z)までの二重統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒のレベル(z)までの二重統合熱発生率の正規化は、以下の決定により実行される:
【数1】

または等価な式、ここで、
z=軸線位置
z’=軸線位置を表す積分変数(integration variable)
z’’=軸線位置を表す積分変数
i(z)=燃料棒iのレベルzでの比例熱発生率(linear heat generation rate)
【数2】

=バンドル内の全ての燃料棒のレベルzでの平均比例熱発生率
0=前記バンドル内のバルク沸騰境界(bulk boiling boundary)つまりゼロ蒸気体積率限界(zero steam quality limit))の軸線位置
a=定数、0<a<1
この種の正規化は、ドライアウト特性に対するR因子の影響の判定(決定)を容易にする。
【0022】
本発明による方法を実施する1つの手法によれば、特定の燃料棒(i)のためのレベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の決定は、前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率と、バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒に隣接する燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率の割合との合計の測定(決定)、を含む。
この種の決定は、ローカルR因子の決定の正確さを改善する。
【0023】
前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率と、バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒に隣接する燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率の割合との合計の前述の決定(測定)は、以下の決定により実行される:
【数3】

または等価な式、ここで、記号は上記のものであり、また、
j(z)=横に隣接する燃料棒jのレベルzでの比例熱発生率
k(z)=斜めに隣接する燃料棒kのレベルzでの比例熱発生率
i=燃料棒iのための横に隣接する燃料棒セット
i=燃料棒iのための斜めに隣接する燃料棒セット
Si=燃料棒iのための横に隣接する燃料棒の本数
Di=燃料棒iのための斜めに隣接する燃料棒の本数
b=定数、0<b<1
c=定数、0<c<1
d=定数、0<d<c
これは、決定を実行することの正確で効率的な手法であることが判明した。
【0024】
好ましくは、特定の燃料棒(i)のためのレベル(z)での前記ローカルR因子の決定は、以下の決定により実行される:
【数4】

または等価な式、ここで、記号は上記のものであり、また、
i=燃料棒iのためのドライアウト感度定数(または、「ロッド定数」)
【0025】
他の態様によれば、本発明は、沸騰水型原子炉系の軽水炉において核燃料棒バンドルのためのR因子を自動的に決定するプロセッサを提供する。軽水炉は、複数の核燃料棒バンドルを備え、バンドル内の燃料棒は、少なくとも互いに実質的に平行に並べで配置され、かつ、基本的に軸方向に延びる。R因子は、核燃料棒に対する隣接する燃料棒からの貢献を含む加重局所出力の影響を説明する因子である。本発明によれば、プロセッサは、バンドル内の異なるレベル(z)での異なる燃料棒(i)の比例熱発生率(qi(z))に関するデータを受信する入力を備え、以前の実施例のいずれか1つによるR因子を決定するように構成される。
【0026】
同様に、本発明は、コンピュータ(コンピュータープログラムが構成したコンピュータ・プログラム製品構成が方法を方法の以前の実施例のいずれか一つに行う)の内部記憶装置に、直接ロード可能なコンピュータ・プログラム製品を提供する。
【0027】
この種のプロセッサにおいて、そして、この種のコンピュータ・プログラム製品において、方法と関連した上記の効果が達成される。
【0028】
本発明はまた、沸騰水型原子炉系の軽水炉における核燃料棒バンドルのための限界出力を決定する方法を提供し、前記方法は、以前の実施例のいずれか1つによるR因子の決定を含む。
【0029】
本発明はまた、沸騰水型原子炉系の軽水炉における核燃料棒バンドルのためのドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率によって限界出力を決定する方法を提供する。この方法は、以下を含む:
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料バンドル(f1(G))を通る冷却媒体の流量にどのように依存するかの決定、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料バンドル(f2(I2))の軸出力プロフィールにどのように依存するかの決定、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料配置(f3(R))のR因子にどのように依存するかの決定、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料配置(f4(P))の冷却媒体の圧力にどのように依存するかの決定、
上記の決定に基づく、ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率の決定。
この方法は、R因子を決定するために上記の方法の実施例のいずれか1つによる方法を用いてR因子が決定されることを特徴とする。
【0030】
本発明はまた、沸騰水型原子炉系の軽水炉を含む核エネルギープラントを提供する。前記プラントは、先の2つの段落のいずれか1つによる方法を実行するコントロールユニットを備える。
【0031】
核エネルギープラントの一実施例によれば、プラントは、原子炉の運転中に、原子炉の運転パラメータを検出するように調整された運転パラメータ検出器を含み、コントロールユニットは、検出器から運転パラメータに関する情報を受信して、前記方法を実行するときにこれらの運転パラメータを使用するように調整される。
【0032】
一実施例によれば、コントロールユニットは、コントロールユニットによって実行される前記方法に依存する原子炉の運転を制御するように調整される制御出力を備える。
【0033】
さらにまた、本発明は、上記のコントロールユニットの一部を形成することができるコンピュータの内部記憶装置に直接ロード可能で、かつ、限界出力の決定方法の実施例のいずれか1つによる方法を実行するように構成されたコンピュータープログラムを含むコンピュータ・プログラム製品に関する。
【0034】
最後に、本発明は、沸騰水型原子炉系の軽水炉を含む核エネルギープラントを運転する方法を提供し、前記方法は、以下のステップを含む:
原子炉の運転パラメータに関する情報を提供するステップ、
前記情報を、限界出力の決定方法の実施例のいずれか1つによる方法に使用するステップ、
上記の方法ステップに依存する原子炉の運転を制御するステップ。
すべてのこれらの異なる本発明の態様は、上記のそれらに対応する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明の異なる態様が、運転中の核エネルギープラントに使用されることができる。しかしながら、例えば、実際の運転の前に核エネルギープラントのドライアウト特性を決定するために、核エネルギープラントの運転前に請求項1〜13に記載の発明が用いられることもできる。このように、正しいドライアウトマージンが、プラントが実際に運転される前の場合であることが確実にされることができる。
【0036】
図1は、本発明の実施形態を構成する核エネルギープラントを概略的(図式的)に示す。
【0037】
核エネルギープラントは、沸騰水型原子炉系の軽水炉を備えている。原子炉は、炉心5が位置する原子炉容器3を備えている。当業者に知られていているように、炉心5は、バンドル内に複数の燃料棒が、少なくとも互いに実質的に平行に並び、かつ、軸方向に基本的に伸びて配置された複数の核燃料棒バンドルを備えている。水は、ポンプ9の助けを借りて取水口7を介して原子炉容器3に供給される。生成された蒸気は、放出口11を経て容器3から排出される。制御棒13は、制御棒駆動装置15の助けを借りて、炉心5に対して移動することができる。
【0038】
核エネルギープラントは、コントロールユニット17を有し、コントロールユニット17は最適にはコンピュータを含む。コントロールユニット17は、本発明による方法を行うように調整される。コントロールユニット17は、このように、例えば限界出力を決定するための本発明による方法を実行するように調整(プログラム)されることによって、原子炉の炉心5の異なる部分のためのドライアウトマージンを算出して、これにより、本発明による方法に従って核燃料棒バンドルのためのR因子を決定するように、例えば調整されることができる。
【0039】
コントロールユニット17は、運転中、原子炉の運転パラメータを検出するように調整される運転パラメータ検出器19に接続されることができる。検出器19は、冷却媒体(水)の全流量、冷却媒体の圧力、炉心5内の制御棒13の位置、および炉心5の異なる部分における中性子束のような運転パラメータを、直接または間接に検出することができる。原子炉のこの種の運転パラメータをどのようにして検出するかは、当業者に周知である。
【0040】
コントロールユニット17は、このように、検出器19から運転パラメータに関する情報を受信して、これらの運転パラメータを、例えば炉心5の異なる部分のドライアウトマージンを決定するために前述の方法を実行するときに、使用するように調整される。
【0041】
算出されたドライアウトマージンに基づいて、核エネルギープラントの運転に対して責任がある人は、原子炉の運転出力を増減することができる。
【0042】
あるいは、コントロールユニット17は、コントロールユニット17によって実行される前記方法に依存する原子炉の運転を、自動制御するように調整される制御出力21を有することができる。本明細書で用いられる概念「コントロールユニット」が、このように2つの可能性を含む点に留意する必要がある:一方は、コントロールユニット17が、人(オペレータ)に情報を供給し、その人(オペレータ)がその後、核エネルギープラントの運転を手動で制御する(オープンループ)ことができる監視装置を構成し、他方は、コントロールユニット17が、核エネルギープラントを自動で制御する(クローズドループ)ための手段を含むことが可能である。しかしながら、いずれの場合においても、コントロールユニットは、原子炉のドライアウト特性に関する情報を提供するために、本発明による方法を自動的に実行するように調整される手段(例えばコンピュータ)を含むことが好ましい。
【0043】
当業者は、原子炉の出力を制御する方法を知っている。これは、ポンプ9の助けを借りて冷却媒体の全流量を変えることによって、または、制御棒駆動装置15の助けを借りて制御棒13の位置を変えることによって、例えば実現されることができる。コントロールユニット17からの出力21は、このように、例えば冷却媒体の全流量または制御棒13の位置を変えるように配置され、調整されることができる。
【0044】
本発明はまた、コントロールユニット17の一部を形成することができるコンピュータの内部記憶装置に、直接ロード可能なコンピュータ・プログラム製品23を提供する。コンピュータ・プログラム製品23は、原子炉の核燃料棒バンドルのためのR因子および/または限界出力を決定するための、本発明による方法を実行するように構成されるコンピュータープログラムを含む。
【0045】
符号23は、軽水炉の核燃料棒バンドルのためのR因子を自動的に決定するために構成されるプロセッサの参照符号として用いることもできる。すでに述べたように、R因子は、核燃料棒に対する隣接する燃料棒からの貢献を含む加重局所出力の影響を説明する因子である。プロセッサは、前記バンドルにおける異なるレベル(z)での異なる燃料棒(i)の比例熱発生率(qi(z))に関するデータを受信する入力を備え、本発明による方法に従うR因子を決定するように構成される。
【0046】
図2を参照して、核エネルギープラントを運転する本発明による方法の実施例について説明する。軽水炉は、沸騰水型原子炉系のものである。
【0047】
情報は、上述したように、原子炉の運転パラメータに関して提供される。
【0048】
この情報は、原子炉の核燃料棒バンドルのための限界出力を決定する本発明による方法に使われる。
【0049】
限界出力は、例えば上述したEP 1 775 732 A1および対応する米国特許出願11/512,938で説明したように、異なる方法で決定されることができる。限界出力は、このように、核燃料棒バンドルのためのドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率によって決定されることができる、すなわち:
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料棒バンドル(f1(G))全体の冷却媒体流量にどのように依存するかを決定し、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料棒バンドル(f2(I2))の軸出力プロフィールにどのように依存するかを決定し、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料配置(f3(R))のR因子にどのように依存するかを決定し、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料配置(f4(P))の冷却媒体の圧力にどのように依存するかを決定し、そして、
先行する決定を基礎としてドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率を決定する。上記の引用された文書で述べたように、ドライアウトXDOでのローカル蒸気体積率は、このように、機能として説明することができる:
【数5】

DOまたはドライアウト特性の他の適切な基準が決定されたとき、原子炉の運転は、原子炉が充分な安全マージンをもって運転されるように、決定された特性に依存して制御されることができる。
【0050】
R因子の依存を決定するとき、R因子は、本発明による方法を用いて決定される。これを行う1つの方法について以下に説明する。
【0051】
R因子はこのように、複数の核燃料棒バンドルを備えた沸騰水型原子炉系の軽水炉において、核燃料棒バンドルのために決定される。バンドルにおける燃料棒は、少なくとも実質的に互いに平行に並び、基本的に軸方向に延びて配置される。核燃料棒バンドルは、例えば24本の燃料棒を含むことができる。バンドルのためのR因子を決定するために、最初に、前記バンドルの各燃料棒(i)のための、かつ、前記軸方向の複数の各レベル(z)のための、ローカルR因子(Ri(z))が決定される。レベルの数は、例えば25でもよい。特定の燃料棒(i)のための個々の軸方向熱発生プロフィールは、前記燃料棒(i)のためのローカルR因子(Ri(z))を決定するときに考慮される。
【0052】
燃料棒バンドル全体のための前記各レベル(z)のトータルR因子(Rz)は、これにより、或るレベル(z)での前記トータルR因子(Rz)が、前記核燃料棒バンドルにおける前記レベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の最大値として決定されることができる。
【0053】
特定の燃料棒(i)のための或るレベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の決定は、バンドルにおける全ての燃料棒のレベル(z)までの二重統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒(i)のレベル(z)までの二重統合熱発生率の決定を含む。決定は、バンドルにおける全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒(i)のレベル(z)までの統合熱発生率による、正規化を含む。
【0054】
さらにまた、特定の燃料棒(i)のための或るレベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の決定は、前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率の合計、および、バンドルにおける全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒に隣接する燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率の割合、を含む。
【0055】
特定の燃料棒(i)のためのレベル(z)での前記ローカルR因子の決定は、以下を決定することによって実行されることができる:
【数6】

または等価な式、ここで、
z=軸位置
z’=軸位置を表す積分変数
z’’=軸位置を表す積分変数
i(z)=レベルzでのロッドiの比例熱発生率
【数7】

=レベルzでのバンドルにおける全てのロッドの平均比例熱発生率
0=前記バンドルにおけるバルク沸騰境界(ゼロ蒸気体積率限界)の軸位置
j(z)=レベルzでの横に隣接する燃料棒jの比例熱発生率
k(z)=レベルzでの斜めに隣接する燃料棒kの比例熱発生率
i=燃料棒iのための横に隣接する燃料棒セット
i=燃料棒iのための斜めに隣接する燃料棒セット
Si=燃料棒iのための横に隣接する燃料棒の本数
Di=燃料棒iのための斜めに隣接する燃料棒の本数
a=定数、0<a<1
b=定数、0<b<1
c=定数、0<c<1、好ましくは0<c<0.25
d=定数、0<d<c、好ましくは0<d<0.125
i=燃料棒iのためのドライアウト感度定数(または、「ロッド定数」)
【0056】
使用する概念は、当業者に知られている。しかしながら、図3を参照して、「横に隣接する燃料棒」および「斜めに隣接する燃料棒」の意味を、ここで説明する。図3は、24本の燃料棒のバンドルの概略的横断面図である。この種のバンドル4つが合わさって、燃料集合体を形成する。横におよび斜めに隣接する燃料棒を説明するための例として、符号31の付いた燃料棒を考慮することができる。この燃料棒31は、3本の横に隣接する燃料棒すなわち燃料棒32、33、34、および、2本の斜めに隣接する燃料棒すなわち燃料棒35、36を有する。
【0057】
本発明は、このように、R因子およびドライアウト特性を有利に決定するための方法および装置を提供する。これにより、ドライアウトマージンが充分なことを確認しながら、より高い精度を有する核燃料プラントの運転を予測および制御することができ、そして、高性能を有するプラントを運転することが可能である、
【0058】
本発明は、記載されている実施例に限定されず、請求項の範囲内で変更することができる。また、数式は、異なる方法で通常書かれることができ、同じ意味またはおよそ同じ意味を有することに注意すべきである。従って、請求項は、いくつかの請求項において定義される正確な数式に限定されるとみなされてはならない。請求項は、このように、同式と等価な式および、同式の近似を構成する代わりの式を包含することを意図する。この種の変形は、数値評価のために定期的に行われ、予め定められた適用範囲以上の高精度に合うように変えられることができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】核エネルギープラントを概略的に示す図である。
【図2】本発明による方法の実施例の概略的フローチャートである。
【図3】燃料棒バンドルの概略的横断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沸騰水型原子炉系の軽水炉において核燃料棒バンドルのためのR因子を決定する方法であって、
前記炉は、複数の核燃料棒バンドルを備え、
前記バンドル内の燃料棒は、少なくとも互いに実質的に平行に並べて配置され、かつ、基本的に軸方向に延び、
前記R因子は、核燃料棒に対する隣接する燃料棒からの貢献を含む加重局所出力の影響を説明する因子であり、
前記方法は、
ローカルR因子(Ri(z))が、前記バンドル内の各燃料棒(i)ごとに、かつ、前記軸方向の複数の各レベル(z)ごとに決定され、
そして、特定の燃料棒(i)のためのローカルR因子(Ri(z))を決定するとき、当該燃料棒(i)のための個別の軸方向熱発生プロフィールが考慮される、
ことを特徴とする。
【請求項2】
前記レベルの数が、少なくとも10に等しい請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記核燃料棒バンドルが、少なくとも15本の燃料棒を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記燃料棒バンドル全部のための前記各レベル(z)のためのトータルR因子(Rz)の決定を含み、
或るレベル(z)の前記トータルR因子(Rz)は、前記核燃料棒バンドルにおける前記レベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の最大値として決定される、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
特定の燃料棒(i)のための或るレベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の決定は、前記バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの二重統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒(i)のレベル(z)までの二重統合熱発生率の決定を含む、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記決定はまた、前記バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率による正規化を含み、
前記バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの二重統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒のレベル(z)までの二重統合熱発生率の正規化は、次式で実行される、請求項1に記載の方法。
【数1】

または等価な式、ここで、
z=軸線位置
z’=軸線位置を表す積分変数
z’’=軸線位置を表す積分変数
i(z)=燃料棒iのレベルzでの比例熱発生率
【数2】

=バンドル内の全ての燃料棒のレベルzでの平均比例熱発生率
0=前記バンドル内のバルク沸騰境界(ゼロ蒸気体積率限界)の軸線位置
a=定数(0<a<1)
【請求項7】
特定の燃料棒(i)のためのレベル(z)での前記ローカルR因子(Ri(z))の決定は、前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率と、バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒に隣接する燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率の割合との合計の決定(測定)、を含む、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率と、バンドル内の全ての燃料棒のレベル(z)までの統合平均熱発生率に対する、前記燃料棒に隣接する燃料棒のレベル(z)までの統合熱発生率の割合との合計の決定(測定)は、次式で実行される、請求項7に記載の方法。
【数3】

または等価な式、ここで、
j(z)=横に隣接する燃料棒jのレベルzでの比例熱発生率
k(z)=斜めに隣接する燃料棒kのレベルzでの比例熱発生率
i=燃料棒iのための横に隣接する燃料棒セット
i=燃料棒iのための斜めに隣接する燃料棒セット
Si=燃料棒iのための横に隣接する燃料棒の本数
Di=燃料棒iのための斜めに隣接する燃料棒の本数
b=定数(0<b<1)
c=定数(0<c<1)
d=定数(0<d<c)
【請求項9】
特定の燃料棒(i)のためのレベル(z)での前記ローカルR因子の決定は、次式で実行される、
請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【数4】

または等価な式、ここで、
i=燃料棒iのためのドライアウト感度定数(または、「ロッド定数」)
【請求項10】
沸騰水型原子炉系の軽水炉において核燃料棒バンドルのためのR因子を自動的に決定するプロセッサであって、
前記炉は、複数の核燃料棒バンドルを備え、
前記バンドル内の燃料棒は、少なくとも互いに実質的に平行に並べで配置され、かつ、基本的に軸方向に延び、
前記R因子は、核燃料棒に対する隣接する燃料棒からの貢献を含む加重局所出力の影響を説明する因子であり、
前記プロセッサは、
前記バンドル内の異なるレベル(z)での異なる燃料棒(i)の比例熱発生率(qi(z))に関するデータを受信する入力を備え、請求項1〜9のいずれか1項に記載のR因子を決定するように構成される。
【請求項11】
コンピュータの内部記憶装置に直接ロード可能で、かつ、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータープログラムを含むコンピュータ・プログラム製品。
【請求項12】
沸騰水型原子炉系の軽水炉における核燃料棒バンドルのための限界出力を決定する方法であって、請求項1〜9のいずれか1項に記載のR因子の決定を含む。
【請求項13】
沸騰水型原子炉系の軽水炉における核燃料棒バンドルのためのドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率によって限界出力を決定する方法であって、
前記方法は、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料バンドル(f1(G))を通る冷却媒体の流量にどのように依存するかを決定し、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料バンドル(f2(I2))の軸出力プロフィールにどのように依存するかを決定し、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料配置(f3(R))のR因子にどのように依存するかを決定し、
ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率が、核燃料配置(f4(P))の冷却媒体の圧力にどのように依存するかを決定し、
上記の決定に基づいて、ドライアウト(XDO)でのローカル蒸気体積率を決定し、
R因子を決定するために、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法を用いてR因子が決定されることを特徴とする。
【請求項14】
沸騰水型原子炉系の軽水炉を含む核エネルギープラントであって、前記プラントは、請求項12または13に記載の方法を実行するコントロールユニットを備える。
【請求項15】
原子炉の運転中に、原子炉の運転パラメータを検出するように調整された運転パラメータ検出器を含み、
前記コントロールユニットは、前記検出器から前記運転パラメータに関する情報を受信して、前記方法を実行するときにこれらの運転パラメータを使用するように調整される、
請求項14に記載の核エネルギープラント。
【請求項16】
前記コントロールユニットは、当該コントロールユニットによって実行される前記方法に依存する原子炉の運転を制御するように調整される制御出力を備える、請求項14または15に記載の核エネルギープラント。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれか1項に記載のコントロールユニットの一部を形成することができるコンピュータの内部記憶装置に直接ロード可能で、かつ、請求項12または13に記載の方法を実行するように構成されたコンピュータープログラムを含むコンピュータ・プログラム製品。
【請求項18】
沸騰水型原子炉系の軽水炉を含む核エネルギープラントを運転する方法であって、
原子炉の運転パラメータに関する情報を提供するステップ、
前記情報を請求項12または13に記載の方法に使用するステップ、
上記の方法ステップに依存する原子炉の運転を制御するステップ、を含む。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−92661(P2009−92661A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−260418(P2008−260418)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(504446548)ウェスティングハウス エレクトリック スウェーデン アーベー (26)
【Fターム(参考)】