説明

沸騰水型原子炉

【課題】その全長が短く、かつシュラウドの無い小径の原子炉圧力容器を有した沸騰水型原子炉を提供する。
【解決手段】本発明の沸騰水型原子炉は、燃料集合体の上方へと制御棒を引き抜く構造であるから、従来の原子炉において炉心の下方に必要であった制御棒を下方に引き抜くためのスペースが不要となり、原子炉圧力容器の全長を短くすることができる。また、原子炉冷却材の流路を確保する機能を有した冷却材導入チューブを備えるから、シュラウドを無くして小径の原子炉圧力容器を達成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関し、より詳しくは、原子炉圧力容器の全長を短くしつつその外径を小さくする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
まず最初に図3および図4を参照し、従来の沸騰水型原子炉のうち、ABWRと呼ばれる改良型沸騰水型原子炉の全体構造について概説する。
【0003】
この改良型沸騰水型原子炉においては、原子炉圧力容器1の内部に炉心2を収容するシュラウド3が設置され、このシュラウド3の下部および上部にそれぞれ配設された炉心支持板4および上部格子板5の間に多数の燃料集合体6が設置されている。
そして、シュラウド3の上部にはシュラウドヘッド7が配設され、かつこのシュラウドヘッド7の上部にスタンドパイプ8を介して気水分離器9が設置されている。
さらに、この気水分離器9の上方に蒸気乾燥器10が設置されている。
【0004】
炉心支持板4の下方には、炉心2の内側に挿入される制御棒11を収納してその上下動を案内する制御棒案内管12と、制御棒11を上下方向に駆動するための制御棒駆動機構13とが設置されている。
【0005】
原子炉圧力容器1の下部には、複数のインターナルポンプ14が周方向に並ぶように配設されている。
また、原子炉圧力容器1のうち蒸気乾燥器10の側方の壁面には、炉心2で発生した蒸気を図示されないタービンに導く主蒸気管15が接続されている。
さらに、原子炉圧力容器1のうちスタンドパイプ8の側方には、この原子炉圧力容器1の内部に冷却水を供給するための給水配管16が接続されている。
【0006】
このように構成された改良型沸騰水型原子炉においては、炉内上部の冷却水が、原子炉圧力容器1とシュラウド3とで囲まれた環状空間を通ってインターナルポンプ14に吸い込まれ、炉底部1aを経て炉心2で蒸気となり、スタンドパイプ8、気水分離器9、蒸気乾燥器10を通過して主蒸気管15からタービンに向かう。
そして、タービンを回した蒸気は主復水器で冷却されて水となり、給水配管16から原子炉圧力容器1の炉内に戻る循環となっている。
【0007】
なお、シュラウド3は、原子炉圧力容器1の下部に設けられているシュラウドサポート17およびポンプデッキ18により立設されている。
また、炉心2、シュラウドヘッド7および気水分離器9等の炉内機器は、シュラウド3によって支持されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した従来の改良型沸騰水型原子炉においては、原子炉圧力容器1の下鏡部に設置された制御棒駆動機構13によって制御棒11が上方に駆動されて、制御棒案内管12によって案内されつつ炉心支持板4の上部の燃料集合体6に挿入され、炉心2の出力を制御するようになっている。
そのため、原子炉圧力容器1の内部のうち炉心2の下側に制御棒11を収納するための空間が必要となり、原子炉圧力容器1の全長が長くなっている。
【0009】
また、原子炉圧力容器1の内部には炉心2を収容するシュラウド3が設置されているため、図4に示すように、原子炉圧力容器1の径が大きくなってしまっている。
さらに、シュラウド3の上部にはシュラウドヘッド7が配設されるとともに、このシュラウドヘッド7の上部にスタンドパイプ8を介して気水分離器9が設置されているため、それらの全長によって原子炉圧力容器1の全長がさらに長くなっている。
【0010】
そこで本発明の目的は、上述した従来技術が有する問題点を解消し、その全長が短く、かつシュラウドの無い小径の原子炉圧力容器を有した沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決する請求項1に記載した沸騰水型原子炉は、
原子炉圧力容器の下鏡部に配設された制御棒駆動機機構により駆動されて、炉心を構成する複数体の燃料集合体間に上方から下方に向けて挿入され、かつ下方から上方へ向けて引抜操作が行われる複数の制御棒と、
前記炉心を構成する複数体の燃料集合体の上部に立設された、前記炉心で発生した二相流を案内する蒸気案内管と、を備えることを特徴とする。
【0012】
すなわち、請求項1に記載した沸騰水型原子炉は、燃料集合体の上方に制御棒を引き抜く構造であるから、従来の原子炉において炉心の下方に必要であった制御棒を下方に引き抜くためのスペースが不要となり、原子炉圧力容器の全長を短くすることができる。
また、制御棒を急速に炉心に挿入する際には、制御棒の自重落下により挿入することができるから、従来の原子炉において制御棒を炉心へと急速に上方に挿入するために必要であった機器を削減することができる。
【0013】
なお、請求項1に記載の沸騰水型原子炉においては、燃料集合体を固定して保護する燃料チャンネルを上方に延長した延長燃料チャンネルに気水分離器を設けることができる。
また、気水分離器は、蒸気案内管に内蔵することもできるし、延長燃料チャンネルに内蔵することもできる。
【0014】
また、上記の課題を解決する請求項5に記載した沸騰水型原子炉は、原子炉冷却材の流路を確保する機能を有した冷却材導入チューブを備えることを特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項5に記載した沸騰水型原子炉においては、原子炉冷却材の流路を確保する機能を有した冷却材導入チューブを備えることにより、従来の沸騰水型原子炉において必要であったシュラウドを廃止することができるから、小径の原子炉圧力容器を達成することができる。
また、シュラウドの廃止に伴い、冷却材導入チューブの近傍まで燃料集合体を配置することができから、燃料の本数が同じならば原子炉圧力容器の内径をさらに小さくすることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、その全長が短くかつシュラウドの無い小径の原子炉圧力容器を有した沸騰水型原子炉を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図1および図2を参照し、本発明に係る沸騰水型原子炉の一実施形態について詳細に説明する。
なお、以下の説明においては、前述した従来技術を含めて同一の部分には同一の符号を用いて重複した説明を省略する。
【0018】
まず最初に図1を参照し、本実施形態の沸騰水型原子炉100の全体構成について説明すると、制御棒11は、原子炉圧力容器1の下鏡部に設置された制御棒駆動機構13により駆動されて、炉心2から上方に引き抜く動作を実施する構造となっている。
【0019】
そのため、制御棒11の上下動を案内する機能、炉心で発生した二相流を案内する機能、および従来の気水分離器9と同様の機能を有した気水分離器内蔵チムニー(蒸気案内管)21が、上部格子板5の上部に設けられている。
この気水分離器内蔵チムニー21は、炉心2に設置された燃料集合体6を保護する燃料チャンネル22の上部を延長した構造としても良く、この構造をバンドルインバスケット構造と呼ぶ。
【0020】
このような構造により、図3に示した従来の沸騰水型原子炉において炉心2の下部に必要であった制御棒11を下方に引き抜くためのスペースが不要となり、原子炉圧力容器20の全長を短くすることが可能となる。
【0021】
また、制御棒11を急速に炉心2に挿入する際には制御棒11の自重落下で挿入することができるから、従来の原子炉において制御棒11を炉心2へと急速に上方に挿入するために必要であった機器の削減が可能となる。
【0022】
さらに、本実施形態の改良型沸騰水型原子炉100においては、上部格子板5とポンプデッキ23とがRIPチューブ(冷却材導入用チューブ)24で連結されており、これにより冷却水の循環ルートを達成している。
このように原子炉圧力容器20の内壁に固定された上部格子板5およびRIPチューブ24により、従来の沸騰水型原子炉で必要であったシュラウド3の廃止が可能となる。
【0023】
図2は、図1に示した炉心2を上方から見た横断面図を示している。
このように、RIPチューブ24の配置によってシュラウド3の廃止が可能となったことにより、RIPチューブ128の近傍まで燃料集合体6を配置することができから、燃料の本数が同じならば原子炉圧力容器20の内径を小さくすることが可能となる。
これにより、この沸騰水型原子炉100の建設コストの低減が可能となる。
【0024】
以上、本発明に係る沸騰水型原子炉の一実施型態ついて詳しく説明したが、本発明は上述した実施型態によって限定されるものではなく、種々の変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、原子炉圧力容器の内径を従来のものと同じとするならば、より多くの本数の燃料を炉心に配設することが可能となる。
また、本発明は、新設される原子炉に限らず、既設の沸騰水型原子炉の新しい構造技術として採用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施例である沸騰水型原子炉概略縦断面図。
【図2】本発明の実施例である沸騰水型原子炉概略横断面図。
【図3】従来の沸騰水型原子炉概略縦断面図。
【図4】従来の沸騰水型原子炉概略横断面図。
【符号の説明】
【0026】
1 原子炉圧力容器
2 炉心
3 シュラウド
4 炉心支持板
5 上部格子板
6 燃料集合体
7 シュラウドヘッド
8 スタンドパイプ
9 汽水分離器
10 蒸気乾燥器
11 制御棒
12 制御棒案内管
13 制御棒駆動機構
14 インターナルポンプ
15 主蒸気管
16 給水配管
17 シュラウドサポート
18 ポンプデッキ
20 原子炉圧力容器
21 汽水分離器内蔵チムニー(蒸気案内管)
22 燃料チャンネル
23 ポンプデッキ
24 RIPチューブ(冷却材導入用チューブ)
100 本発明の沸騰水型原子炉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子炉圧力容器の下鏡部に配設された制御棒駆動機機構により駆動されて、炉心を構成する複数体の燃料集合体間に上方から下方に向けて挿入され、かつ下方から上方へ向けて引抜操作が行われる複数の制御棒と、
前記炉心を構成する複数体の燃料集合体の上部に立設された、前記炉心で発生した二相流を案内する蒸気案内管と、
を備えることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
前記燃料集合体を固定して保護する燃料チャンネルを上方に延長した延長燃料チャンネルに気水分離器が設けられていることを特徴とする請求項1に記載した沸騰水型原子炉。
【請求項3】
前記気水分離器が、前記蒸気案内管に内蔵されていることを特徴とする請求項1に記載した沸騰水型原子炉。
【請求項4】
前記気水分離器が、前記延長燃料チャンネルに内蔵されていることを特徴とする請求項2に記載した沸騰水型原子炉。
【請求項5】
原子炉冷却材の流路を確保する機能を有した冷却材導入チューブを備えることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載した沸騰水型原子炉。
【請求項6】
前記炉心を構成する複数体の燃料集合体が、前記冷却材導入チューブの近傍まで配置されていることを特徴とする請求項5に記載した沸騰水型原子炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−157866(P2008−157866A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−349564(P2006−349564)
【出願日】平成18年12月26日(2006.12.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)