沸騰水型原子炉
【課題】キャリーオーバーやキャリーアンダーを低減することができる気水分離器を提供する。
【解決手段】気水分離器6は、スタンドパイプ7,ディフューザ8,スワラ9,三段の気水分離部10a〜10cを有する。内筒11aとの間に排水通路15aを形成する外筒12aは、ピックオフリング13aに設置される。同様にピックオフリング13の上端に内筒11bが、その上端にピックオフリング13bが取り付けられ、ピックオフリング13aで分離されない水の一部が排水通路15bを通って排出口18bから蒸気中へ排出される。排出され落下する水は、排出口18bよりも下部に設けた補強板21及び飛散防止板26で捕獲され、気水分離器外筒または飛散防止板26を伝って穏やかに冷却水水面に流入する。一部冷却水水面に直接落下した水の衝突により発生した液滴や蒸気の一部は、飛散防止板26に捕獲される。
【解決手段】気水分離器6は、スタンドパイプ7,ディフューザ8,スワラ9,三段の気水分離部10a〜10cを有する。内筒11aとの間に排水通路15aを形成する外筒12aは、ピックオフリング13aに設置される。同様にピックオフリング13の上端に内筒11bが、その上端にピックオフリング13bが取り付けられ、ピックオフリング13aで分離されない水の一部が排水通路15bを通って排出口18bから蒸気中へ排出される。排出され落下する水は、排出口18bよりも下部に設けた補強板21及び飛散防止板26で捕獲され、気水分離器外筒または飛散防止板26を伝って穏やかに冷却水水面に流入する。一部冷却水水面に直接落下した水の衝突により発生した液滴や蒸気の一部は、飛散防止板26に捕獲される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(以下、BWRという)は原子炉圧力容器(以下、RPVという)を有し、RPVは複数の燃料集合体を装荷した炉心を内部に備える。炉心に供給された冷却水は、炉心内の燃料集合体で発生した熱によって加熱されて沸騰する。この沸騰によって冷却水の一部が蒸気になる。発生した蒸気は、RPVから排出されてタービンに供給され、タービンを回転させる。タービンに連結される発電機が回転して電力を発生させる。
【0003】
この沸騰水型原子炉において、気水分離器が、RPV内であって、炉心の上方に配置されている。気水分離器は、炉心で発生した蒸気と水を含む気液二相流が供給され、その気液二相流から蒸気と水に分離して、乾燥蒸気を発生させる機能を有する。
【0004】
特許文献1には、気水分離器の構造を開示する。この気水分離器は、蒸気中へ排出される排出口の上部に捕獲リングを設置している。捕獲リングによって、飛散した液滴を捕獲することで、エントレインメントを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−179077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸気中へ飛散した液滴は広範囲に分布するため、捕獲リングは気水分離器外部の広範囲をカバーする必要がある。また、特許文献1の気水分離器は、キャリーアンダーを更に改善する必要がある。また、捕獲リングの設置により水面上部の圧力が増大するため、冷却水中への気泡の混入が増大する恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構造でキャリーアンダー及びエントレインメントの両方を低減できる沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内筒と外筒との間に形成された排水通路のうち、上流から2番目の排水通路の排出口よりも下方に、隣接する気水分離器を連結する補強板を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造で構造強度を維持しつつ、気水分離器におけるキャリーアンダーやエントレインメントを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例である気水分離器の縦断面図である。
【図2】図1に示す気水分離器の上面図である。
【図3】図1に示す気水分離器の構成図である。
【図4】補強部材の斜視図である。
【図5】本発明の一実施例である気水分離器の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施例である気水分離器の縦断面図である。
【図7】気水分離器の上面図である。
【図8】図6に示す気水分離器の補強部材の実施例である。
【図9】飛散防止板を設けた本構造案の実施例である。
【図10】図9に示す気水分離器の上面図である。
【図11】図9に示す気水分離器の補強部材の実施例である。
【図12】補強部材の斜視図である。
【図13】気水分離器の排出口付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者らは、簡易な構造を持ち、キャリーアンダーやエントレインメントを低減できる補強部材及び排水口の形状について検討した。以下に具体的な実施例を示す。
【実施例1】
【0012】
沸騰水型原子力プラント(BWRプラント)に適用された気水分離器を、図1,図2及び図3,図5を用いて説明する。気水分離器は、図5に示すように、スタンドパイプ7,ディフューザ8,スワラ9,内筒11,外筒12及びピックオフリング13を有する。内筒11,外筒12及びピックオフリング13は気水分離部10を構成し、気水分離器6は三段の気水分離部10を有する。図5では、各段の気水分離部10はa,b,cで区別している。すなわち、気水分離部10aが一段目の気水分離部であり、気水分離部10bが二段目の気水分離部、及び気水分離部10cが三段目の気水分離部である。図5においては、aを付した構成要素が気水分離部10aの構成要素であり、bを付した構成要素が気水分離部10bの構成要素であり、cを付した構成要素が気水分離部10cの構成要素である。
【0013】
スタンドパイプ7はシュラウドヘッド5に取り付けられる。上方(下流)に向かって内部の横断面積が拡大するディフューザ8は、下端(上流端)がスタンドパイプ7の上端(下流端)に溶接にて接合されている。複数の羽根を有するスワラ9がディフューザ8内に設置される。気水分離部10aがディフューザ8の上端に、気水分離部10bが気水分離部10aの上端に、気水分離部10cが気水分離部10bの上端にそれぞれ設置される。気水分離部10aは、内筒11a,外筒12a及びピックオフリング13aを有する。内筒11aがディフューザ8の上端に取り付けられ、ピックオフリング13aが内筒11aの上端にそれぞれ取り付けられる。ピックオフリング13aは、円板部に円筒部を取り付けた構成を有し、円筒部が円板部から下方(上流)に向かって伸びている。開口17aが円筒部内に形成されている。気水分離器6の圧力損失低減のため、ピックオフリング13aの円筒部の下端部の外面にはテーパー状の面取り加工が施されている。後述のピックオフリング13b,13cも、ピックオフリング13aと同じ構成を有している。内筒11aを取り囲む外筒12aは、ピックオフリング13aに取り付けられてピックオフリング13aから下方に向かって伸びている。環状の排水通路15aが内筒11aと外筒12aの間に形成される。内筒11aの上端部には、内筒11aの内部と排水通路15aを連絡するギャップ14aが形成されている。
【0014】
気水分離部10bは、内筒11b,外筒12b及びピックオフリング13bを有する。内筒11bの下端がピックオフリング13aに取り付けられ、ピックオフリング13bが内筒11bの上端に取り付けられる。内筒11bを取り囲む外筒12bは、ピックオフリング13bに取り付けられてピックオフリング13bから下方に向かって伸びている。環状の排水通路15bが内筒11bと外筒12bの間に形成される。内筒11bの上端部には、内筒11bの内部と排水通路15bを連絡するギャップ14bが形成されている。外筒12bの下端部には、排水通路15bと連通する排出口18bが形成される。
【0015】
気水分離部10cは、内筒11c,外筒12c及びピックオフリング13cを有する。内筒11cの下端がピックオフリング13bに取り付けられ、ピックオフリング13cが内筒11cの上端に取り付けられる。内筒11cを取り囲む外筒12cは、ピックオフリング13cに取り付けられてピックオフリング13cから下方に向かって伸びている。環状の排水通路15cが内筒11cと外筒12cの間に形成される。内筒11cの上端部には、内筒11cの内部と排水通路15cを連絡するギャップ14cが形成されている。外筒12cの下端部には、排水通路15cと連通する排出口18cが形成されている。
【0016】
気水分離器6における気水分離の機能を具体的に説明する。炉心3から上昇した、蒸気及び冷却水を含む気液二相流が、気水分離器6のスタンドパイプ7内に流入し、スタンドパイプ7内を上昇する。蒸気はスタンドパイプ7の横断面の中央部を流れ、冷却水の大部分はスタンドパイプ7の内面に付着して液膜として存在し液膜の状態でスタンドパイプ7の内面に沿って上昇する。
【0017】
気液二相流はディフューザ8内に流入する。この気液二相流はスワラ9によって旋回力が与えられ、遠心分離作用により密度の大きい水が外側に飛ばされ、密度の小さい蒸気が内筒11aの中心に集まって上昇する。外側に飛ばされた水は内筒11aの内面に付着して液膜を形成する。この液膜は、内筒11aの内面に沿って上昇してピックオフリング13aに当たり、蒸気から分離されてギャップ14aを通って排水通路15aに排出される。分離された水は、排水通路15aを下降して曲がり部25を通って排出口18aより気水分離器6の外側に存在する冷却水35に戻される。
【0018】
気水分離部10aで水分が除去されて含有する水分の量が少なくなった気液二相流は、旋回しながら、ピックオフリング13aの開口17aを通って気水分離部10bの内筒11b内に流入する。開口17aを通過した気液二相流に含まれた水は、外側に飛ばされ、内筒11bの内面に液膜を形成する。この液膜は、内筒11bの内面に沿って上昇し、ピックオフリング13bに当たって蒸気から分離される。分離された液膜、すなわち、水分はギャップ14bを通って排水通路15bに排出される。この水分は排水通路15bを下降して排出口18bから蒸気中へ排出される。
【0019】
気水分離器で分離された水は、気水分離部から気水分離器外側に排出される。排水された水は、気水分離器外部空間の下部一定領域に満たされている冷却水に流れ込む。冷却水水面は、図13に示すように気水分離部の排出口1よりも上部,排出口2よりも下部に位置するよう調節されている。そのため、排出口2で排出された水は重力によって水面24に向けて落下する。この時、落下した排水は水面24へ衝突し、その衝撃は冷却水中に蒸気29が混入したり、蒸気中へ液滴28が飛散したりする原因となる。冷却水中に混入した蒸気29の一部は、RPV内のダウンカマに流れ込む冷却水の流れに巻き込まれる。巻き込まれた蒸気量をキャリーアンダーという。キャリーアンダーは、炉心に冷却水を供給するインターナルポンプ(または再循環ポンプ)のキャビテーションの発生要因となるため、現行の炉心ではキャリーアンダーの値が許容範囲内になるよう設計されている。また、蒸気中へ飛散した液滴28の一部は、上昇する蒸気流22に運ばれて気水分離器上部に設置されたドライヤまで達し、気水分離器の気水分離性能を悪化させる要因となる。この現象をエントレインメントという。ドライヤまで達した水の量をキャリーオーバーという。上記キャリーアンダー及びキャリーオーバーは、現行の炉心ではそれぞれ許容値以下に抑えられているが、より経済性を向上した次世代プラント開発に向けてさらなるキャリーアンダー、キャリーオーバーの低減が望まれている。
【0020】
そこで、本実施例では、排水口2よりも低い位置に補強部材を設置し、かつ補強部材の真上に排水口2が位置するように排水口2の構造を変更したことにある。
【0021】
本実施例の構造により、従来の気水分離器と比較して構造強度を維持でき、付加価値として以下の2つの効果からキャリーアンダー及びエントレインメントの両方を低減できる。1つ目の効果は、排水口から排出された水の一部は、水面に落下する前に補強部材で捕獲され、気水分離器外筒または補強部材に設けた飛散防止板を伝って水面へ穏やかに流入するため、水が水面へ落下した衝撃で発生する蒸気や液滴の発生を低減できる。2つ目の効果は、発生した蒸気や液滴を飛散防止板で再捕獲することができる。
【0022】
本実施例は、蒸気に運ばれて上昇した後の液滴を捕獲する特開平8−179077号公報と違い、液滴の発生源である排出口より排出される水が、水面へ落下する衝撃を低減することで液滴の発生を低減するものである。また、飛散防止板により発生直後の液滴を蒸気に運ばれる前の段階で捕獲できる。そして、少ない設置面積で液滴飛散を低減できること、キャリーアンダーの要因となる冷却水中への蒸気混入も低減できる。また、設置面積が少ないため水面付近の圧力上昇を低減できる。
【0023】
具体的に、補強板の構造を説明する。本実施例の気水分離器では、排出口18aと排出口18bの中間に冷却水の水面が存在する。そこで、実施例1である気水分離器は、図1に示すように補強板21を設置し、図2に示すように上記補強板21の上部に排出口が3箇所設置している。補強板21は排出口18bよりも下部に設置している。補強板21は、図4のように半円筒形状とし、内壁を上向きとして、図1に示すように連結する2つの気水分離器のうち、排出口18bの方向に下降するように傾斜させて設置している。
【0024】
本実施例は、補強板21を設けているため、排出口18bより排出された水の大部分は、補強板21の内壁表面に形成された流路内に捕獲され、上記流路を伝って気水分離器外筒に達し、さらに気水分離器外筒を伝って冷却水水面に流れ込む。水面へ穏やかに流入するため、冷却水中への蒸気混入や、蒸気中への液滴飛散を低減することができる。
【0025】
気水分離部10bで水分が除去されて含有する水分の量が少なくなった蒸気は、旋回しながら、ピックオフリング13bの開口17bを通って気水分離部10cの内筒11c内に流入する。開口17bを通過した蒸気に含まれた水は、外側に飛ばされ、内筒11cの内面に液膜を形成する。この液膜は、内筒11cの内面に沿って上昇し、ピックオフリング13cに当たり、蒸気から分離される。分離された液膜である水分は、ギャップ14cを通って排水通路15cに排出される。この水分は排水通路15cを下降して排出口18cから排出される。排出口18cより排出された水は微量であり、冷却水水面へ落下時の衝撃は小さいため、本実施例では排出口18cの下部に補強板21を設置しない。
【実施例2】
【0026】
実施例2の補強板21の構造を図8に示す。補強板21の中央から接続する気水分離器の両端に向けて下降する傾斜板を設けた構造とする。本実施例では、図7に示すように、各気水分離器あたり6箇所の排出口18bを設けている。排出口18bを6箇所としたことで排出口18bの総流出面積が大きくなることから、1箇所当たりの水の排出速度が低減する。そのため、図6に示すように、排出された水がより穏やかに水面に流入することから、実施例1よりも冷却水中への蒸気混入や、蒸気中への液滴飛散の低減効果が向上する。
【実施例3】
【0027】
実施例3の補強板21の構造を図11に示す。本実施例では、補強板21、及び気水分離器の中心軸と平行に飛散防止板26を設けた。図10に示すように、排出口18bは6箇所設けた。
【0028】
図9に示すように、排出口18bより排出された水の一部は補強板21に捕獲され、補強板21を伝って両端である気水分離器外筒または飛散防止板26に達し、上記気水分離器外筒または飛散防止板26を伝って水面へ穏やかに流入する。排出された水の一部は飛散防止板26に衝突し、飛散防止板26を伝って下降し水面に流入する。排出された水の一部は直接水面に落下し、その衝突によって冷却水中に蒸気、蒸気中へ液滴を発生させる。しかし、発生した蒸気や液滴の一部は、飛散防止板に捕獲されて再度水面へ戻されることにより、エントレインメントやキャリーアンダーの発生を低減することができる。
【0029】
実施例3の飛散防止板26の構造は、上記説明したように発生した蒸気や液滴を再捕獲するため、水面より上部及び下部の両方向に長い構造であるほど、大きな効果が得られる。
【0030】
また、補強板の構造は、実施例1の半円筒形状補強板及び実施例3の飛散防止板を組み合わせた図12も考えられる。
【実施例4】
【0031】
本実施例の沸騰水型原子炉を、図3を用いて説明する。本実施例の沸騰水型原子炉は、上記実施例1,2,3のいずれかの気水分離器を設置している。実施例で設置した補強板21によって十分な構造強度を有する。付加効果として、上記説明したように気水分離器におけるキャリーアンダーやエントレインメントを低減することができる。
【符号の説明】
【0032】
7 スタンドパイプ
8 ディフューザ
9 スワラ
10,10a,10b,10c 気水分離部
11,11a,11b,11c 内筒
12,12a,12b,12c 外筒
13,13a,13b,13c ピックオフリング
15a,15b,15c 排水通路
18a,18b,18c 排出口
21 補強板
26 飛散防止板
【技術分野】
【0001】
本発明は、沸騰水型原子炉に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉(以下、BWRという)は原子炉圧力容器(以下、RPVという)を有し、RPVは複数の燃料集合体を装荷した炉心を内部に備える。炉心に供給された冷却水は、炉心内の燃料集合体で発生した熱によって加熱されて沸騰する。この沸騰によって冷却水の一部が蒸気になる。発生した蒸気は、RPVから排出されてタービンに供給され、タービンを回転させる。タービンに連結される発電機が回転して電力を発生させる。
【0003】
この沸騰水型原子炉において、気水分離器が、RPV内であって、炉心の上方に配置されている。気水分離器は、炉心で発生した蒸気と水を含む気液二相流が供給され、その気液二相流から蒸気と水に分離して、乾燥蒸気を発生させる機能を有する。
【0004】
特許文献1には、気水分離器の構造を開示する。この気水分離器は、蒸気中へ排出される排出口の上部に捕獲リングを設置している。捕獲リングによって、飛散した液滴を捕獲することで、エントレインメントを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−179077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、蒸気中へ飛散した液滴は広範囲に分布するため、捕獲リングは気水分離器外部の広範囲をカバーする必要がある。また、特許文献1の気水分離器は、キャリーアンダーを更に改善する必要がある。また、捕獲リングの設置により水面上部の圧力が増大するため、冷却水中への気泡の混入が増大する恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、簡易な構造でキャリーアンダー及びエントレインメントの両方を低減できる沸騰水型原子炉を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、内筒と外筒との間に形成された排水通路のうち、上流から2番目の排水通路の排出口よりも下方に、隣接する気水分離器を連結する補強板を設置することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡易な構造で構造強度を維持しつつ、気水分離器におけるキャリーアンダーやエントレインメントを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施例である気水分離器の縦断面図である。
【図2】図1に示す気水分離器の上面図である。
【図3】図1に示す気水分離器の構成図である。
【図4】補強部材の斜視図である。
【図5】本発明の一実施例である気水分離器の縦断面図である。
【図6】本発明の一実施例である気水分離器の縦断面図である。
【図7】気水分離器の上面図である。
【図8】図6に示す気水分離器の補強部材の実施例である。
【図9】飛散防止板を設けた本構造案の実施例である。
【図10】図9に示す気水分離器の上面図である。
【図11】図9に示す気水分離器の補強部材の実施例である。
【図12】補強部材の斜視図である。
【図13】気水分離器の排出口付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明者らは、簡易な構造を持ち、キャリーアンダーやエントレインメントを低減できる補強部材及び排水口の形状について検討した。以下に具体的な実施例を示す。
【実施例1】
【0012】
沸騰水型原子力プラント(BWRプラント)に適用された気水分離器を、図1,図2及び図3,図5を用いて説明する。気水分離器は、図5に示すように、スタンドパイプ7,ディフューザ8,スワラ9,内筒11,外筒12及びピックオフリング13を有する。内筒11,外筒12及びピックオフリング13は気水分離部10を構成し、気水分離器6は三段の気水分離部10を有する。図5では、各段の気水分離部10はa,b,cで区別している。すなわち、気水分離部10aが一段目の気水分離部であり、気水分離部10bが二段目の気水分離部、及び気水分離部10cが三段目の気水分離部である。図5においては、aを付した構成要素が気水分離部10aの構成要素であり、bを付した構成要素が気水分離部10bの構成要素であり、cを付した構成要素が気水分離部10cの構成要素である。
【0013】
スタンドパイプ7はシュラウドヘッド5に取り付けられる。上方(下流)に向かって内部の横断面積が拡大するディフューザ8は、下端(上流端)がスタンドパイプ7の上端(下流端)に溶接にて接合されている。複数の羽根を有するスワラ9がディフューザ8内に設置される。気水分離部10aがディフューザ8の上端に、気水分離部10bが気水分離部10aの上端に、気水分離部10cが気水分離部10bの上端にそれぞれ設置される。気水分離部10aは、内筒11a,外筒12a及びピックオフリング13aを有する。内筒11aがディフューザ8の上端に取り付けられ、ピックオフリング13aが内筒11aの上端にそれぞれ取り付けられる。ピックオフリング13aは、円板部に円筒部を取り付けた構成を有し、円筒部が円板部から下方(上流)に向かって伸びている。開口17aが円筒部内に形成されている。気水分離器6の圧力損失低減のため、ピックオフリング13aの円筒部の下端部の外面にはテーパー状の面取り加工が施されている。後述のピックオフリング13b,13cも、ピックオフリング13aと同じ構成を有している。内筒11aを取り囲む外筒12aは、ピックオフリング13aに取り付けられてピックオフリング13aから下方に向かって伸びている。環状の排水通路15aが内筒11aと外筒12aの間に形成される。内筒11aの上端部には、内筒11aの内部と排水通路15aを連絡するギャップ14aが形成されている。
【0014】
気水分離部10bは、内筒11b,外筒12b及びピックオフリング13bを有する。内筒11bの下端がピックオフリング13aに取り付けられ、ピックオフリング13bが内筒11bの上端に取り付けられる。内筒11bを取り囲む外筒12bは、ピックオフリング13bに取り付けられてピックオフリング13bから下方に向かって伸びている。環状の排水通路15bが内筒11bと外筒12bの間に形成される。内筒11bの上端部には、内筒11bの内部と排水通路15bを連絡するギャップ14bが形成されている。外筒12bの下端部には、排水通路15bと連通する排出口18bが形成される。
【0015】
気水分離部10cは、内筒11c,外筒12c及びピックオフリング13cを有する。内筒11cの下端がピックオフリング13bに取り付けられ、ピックオフリング13cが内筒11cの上端に取り付けられる。内筒11cを取り囲む外筒12cは、ピックオフリング13cに取り付けられてピックオフリング13cから下方に向かって伸びている。環状の排水通路15cが内筒11cと外筒12cの間に形成される。内筒11cの上端部には、内筒11cの内部と排水通路15cを連絡するギャップ14cが形成されている。外筒12cの下端部には、排水通路15cと連通する排出口18cが形成されている。
【0016】
気水分離器6における気水分離の機能を具体的に説明する。炉心3から上昇した、蒸気及び冷却水を含む気液二相流が、気水分離器6のスタンドパイプ7内に流入し、スタンドパイプ7内を上昇する。蒸気はスタンドパイプ7の横断面の中央部を流れ、冷却水の大部分はスタンドパイプ7の内面に付着して液膜として存在し液膜の状態でスタンドパイプ7の内面に沿って上昇する。
【0017】
気液二相流はディフューザ8内に流入する。この気液二相流はスワラ9によって旋回力が与えられ、遠心分離作用により密度の大きい水が外側に飛ばされ、密度の小さい蒸気が内筒11aの中心に集まって上昇する。外側に飛ばされた水は内筒11aの内面に付着して液膜を形成する。この液膜は、内筒11aの内面に沿って上昇してピックオフリング13aに当たり、蒸気から分離されてギャップ14aを通って排水通路15aに排出される。分離された水は、排水通路15aを下降して曲がり部25を通って排出口18aより気水分離器6の外側に存在する冷却水35に戻される。
【0018】
気水分離部10aで水分が除去されて含有する水分の量が少なくなった気液二相流は、旋回しながら、ピックオフリング13aの開口17aを通って気水分離部10bの内筒11b内に流入する。開口17aを通過した気液二相流に含まれた水は、外側に飛ばされ、内筒11bの内面に液膜を形成する。この液膜は、内筒11bの内面に沿って上昇し、ピックオフリング13bに当たって蒸気から分離される。分離された液膜、すなわち、水分はギャップ14bを通って排水通路15bに排出される。この水分は排水通路15bを下降して排出口18bから蒸気中へ排出される。
【0019】
気水分離器で分離された水は、気水分離部から気水分離器外側に排出される。排水された水は、気水分離器外部空間の下部一定領域に満たされている冷却水に流れ込む。冷却水水面は、図13に示すように気水分離部の排出口1よりも上部,排出口2よりも下部に位置するよう調節されている。そのため、排出口2で排出された水は重力によって水面24に向けて落下する。この時、落下した排水は水面24へ衝突し、その衝撃は冷却水中に蒸気29が混入したり、蒸気中へ液滴28が飛散したりする原因となる。冷却水中に混入した蒸気29の一部は、RPV内のダウンカマに流れ込む冷却水の流れに巻き込まれる。巻き込まれた蒸気量をキャリーアンダーという。キャリーアンダーは、炉心に冷却水を供給するインターナルポンプ(または再循環ポンプ)のキャビテーションの発生要因となるため、現行の炉心ではキャリーアンダーの値が許容範囲内になるよう設計されている。また、蒸気中へ飛散した液滴28の一部は、上昇する蒸気流22に運ばれて気水分離器上部に設置されたドライヤまで達し、気水分離器の気水分離性能を悪化させる要因となる。この現象をエントレインメントという。ドライヤまで達した水の量をキャリーオーバーという。上記キャリーアンダー及びキャリーオーバーは、現行の炉心ではそれぞれ許容値以下に抑えられているが、より経済性を向上した次世代プラント開発に向けてさらなるキャリーアンダー、キャリーオーバーの低減が望まれている。
【0020】
そこで、本実施例では、排水口2よりも低い位置に補強部材を設置し、かつ補強部材の真上に排水口2が位置するように排水口2の構造を変更したことにある。
【0021】
本実施例の構造により、従来の気水分離器と比較して構造強度を維持でき、付加価値として以下の2つの効果からキャリーアンダー及びエントレインメントの両方を低減できる。1つ目の効果は、排水口から排出された水の一部は、水面に落下する前に補強部材で捕獲され、気水分離器外筒または補強部材に設けた飛散防止板を伝って水面へ穏やかに流入するため、水が水面へ落下した衝撃で発生する蒸気や液滴の発生を低減できる。2つ目の効果は、発生した蒸気や液滴を飛散防止板で再捕獲することができる。
【0022】
本実施例は、蒸気に運ばれて上昇した後の液滴を捕獲する特開平8−179077号公報と違い、液滴の発生源である排出口より排出される水が、水面へ落下する衝撃を低減することで液滴の発生を低減するものである。また、飛散防止板により発生直後の液滴を蒸気に運ばれる前の段階で捕獲できる。そして、少ない設置面積で液滴飛散を低減できること、キャリーアンダーの要因となる冷却水中への蒸気混入も低減できる。また、設置面積が少ないため水面付近の圧力上昇を低減できる。
【0023】
具体的に、補強板の構造を説明する。本実施例の気水分離器では、排出口18aと排出口18bの中間に冷却水の水面が存在する。そこで、実施例1である気水分離器は、図1に示すように補強板21を設置し、図2に示すように上記補強板21の上部に排出口が3箇所設置している。補強板21は排出口18bよりも下部に設置している。補強板21は、図4のように半円筒形状とし、内壁を上向きとして、図1に示すように連結する2つの気水分離器のうち、排出口18bの方向に下降するように傾斜させて設置している。
【0024】
本実施例は、補強板21を設けているため、排出口18bより排出された水の大部分は、補強板21の内壁表面に形成された流路内に捕獲され、上記流路を伝って気水分離器外筒に達し、さらに気水分離器外筒を伝って冷却水水面に流れ込む。水面へ穏やかに流入するため、冷却水中への蒸気混入や、蒸気中への液滴飛散を低減することができる。
【0025】
気水分離部10bで水分が除去されて含有する水分の量が少なくなった蒸気は、旋回しながら、ピックオフリング13bの開口17bを通って気水分離部10cの内筒11c内に流入する。開口17bを通過した蒸気に含まれた水は、外側に飛ばされ、内筒11cの内面に液膜を形成する。この液膜は、内筒11cの内面に沿って上昇し、ピックオフリング13cに当たり、蒸気から分離される。分離された液膜である水分は、ギャップ14cを通って排水通路15cに排出される。この水分は排水通路15cを下降して排出口18cから排出される。排出口18cより排出された水は微量であり、冷却水水面へ落下時の衝撃は小さいため、本実施例では排出口18cの下部に補強板21を設置しない。
【実施例2】
【0026】
実施例2の補強板21の構造を図8に示す。補強板21の中央から接続する気水分離器の両端に向けて下降する傾斜板を設けた構造とする。本実施例では、図7に示すように、各気水分離器あたり6箇所の排出口18bを設けている。排出口18bを6箇所としたことで排出口18bの総流出面積が大きくなることから、1箇所当たりの水の排出速度が低減する。そのため、図6に示すように、排出された水がより穏やかに水面に流入することから、実施例1よりも冷却水中への蒸気混入や、蒸気中への液滴飛散の低減効果が向上する。
【実施例3】
【0027】
実施例3の補強板21の構造を図11に示す。本実施例では、補強板21、及び気水分離器の中心軸と平行に飛散防止板26を設けた。図10に示すように、排出口18bは6箇所設けた。
【0028】
図9に示すように、排出口18bより排出された水の一部は補強板21に捕獲され、補強板21を伝って両端である気水分離器外筒または飛散防止板26に達し、上記気水分離器外筒または飛散防止板26を伝って水面へ穏やかに流入する。排出された水の一部は飛散防止板26に衝突し、飛散防止板26を伝って下降し水面に流入する。排出された水の一部は直接水面に落下し、その衝突によって冷却水中に蒸気、蒸気中へ液滴を発生させる。しかし、発生した蒸気や液滴の一部は、飛散防止板に捕獲されて再度水面へ戻されることにより、エントレインメントやキャリーアンダーの発生を低減することができる。
【0029】
実施例3の飛散防止板26の構造は、上記説明したように発生した蒸気や液滴を再捕獲するため、水面より上部及び下部の両方向に長い構造であるほど、大きな効果が得られる。
【0030】
また、補強板の構造は、実施例1の半円筒形状補強板及び実施例3の飛散防止板を組み合わせた図12も考えられる。
【実施例4】
【0031】
本実施例の沸騰水型原子炉を、図3を用いて説明する。本実施例の沸騰水型原子炉は、上記実施例1,2,3のいずれかの気水分離器を設置している。実施例で設置した補強板21によって十分な構造強度を有する。付加効果として、上記説明したように気水分離器におけるキャリーアンダーやエントレインメントを低減することができる。
【符号の説明】
【0032】
7 スタンドパイプ
8 ディフューザ
9 スワラ
10,10a,10b,10c 気水分離部
11,11a,11b,11c 内筒
12,12a,12b,12c 外筒
13,13a,13b,13c ピックオフリング
15a,15b,15c 排水通路
18a,18b,18c 排出口
21 補強板
26 飛散防止板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液二相流を導くスタンドパイプと、前記スタンドパイプの下流端に接続され、下流に向かって拡がるディフューザと、このディフューザの上側端面に連通して流路を形成する第1段内筒と、前記第1段内筒を取り囲み前記第1段内筒との間に排水通路を形成する第1段外筒と、前記第1段外筒の上流端に取り付けられて開口部が形成されたピックオフリングを有し、前記内筒と前記ピックオフリングの間にギャップを形成している複数の気水分離部を備え、前記複数の気水分離部が下流に向かって順次配置されている沸騰水型原子炉において、
前記内筒と外筒との間に形成された排水通路のうち、上流から2番目の排水通路の排出口よりも下方に、隣接する気水分離器を連結する補強板を設置することを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
請求項1記載の沸騰水型原子炉において、
前記補強板が傾斜して取り付けられていることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項3】
請求項1記載の沸騰水型原子炉において、
前記気水分離器の中心軸と平行に飛散防止板を設けることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項1】
気液二相流を導くスタンドパイプと、前記スタンドパイプの下流端に接続され、下流に向かって拡がるディフューザと、このディフューザの上側端面に連通して流路を形成する第1段内筒と、前記第1段内筒を取り囲み前記第1段内筒との間に排水通路を形成する第1段外筒と、前記第1段外筒の上流端に取り付けられて開口部が形成されたピックオフリングを有し、前記内筒と前記ピックオフリングの間にギャップを形成している複数の気水分離部を備え、前記複数の気水分離部が下流に向かって順次配置されている沸騰水型原子炉において、
前記内筒と外筒との間に形成された排水通路のうち、上流から2番目の排水通路の排出口よりも下方に、隣接する気水分離器を連結する補強板を設置することを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項2】
請求項1記載の沸騰水型原子炉において、
前記補強板が傾斜して取り付けられていることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【請求項3】
請求項1記載の沸騰水型原子炉において、
前記気水分離器の中心軸と平行に飛散防止板を設けることを特徴とする沸騰水型原子炉。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−243266(P2010−243266A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90627(P2009−90627)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(507250427)日立GEニュークリア・エナジー株式会社 (858)
【Fターム(参考)】
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