説明

油タンク

【課題】油圧ポンプが気泡の混入した油を吸引することを確実に防ぐことができる油タンクを提供する。
【解決手段】油を収容するタンク本体26の底部に近接する位置に設けられ油圧回路に作動圧油を供給する油圧ポンプ34が接続する吸込口31と、油圧回路の戻り管路35に接続し油圧回路からの戻り油24をタンク本体26に流入させる戻り油流入口16とを備えた油タンクにおいて、タンク本体26に戻り油24を収容する収容部17aを設け、この収容部17aはその内部に戻り管路35に接続する戻り油流入口16が開口させられると共に、戻り油流入口16より戻り油24が流入し収容部17aを越流する戻り油24とタンク本体26に貯められた貯留油25とを、貯留油25の油面の下に設けてあり、越流した戻り油24を貯留油の油面に拡散して混合させる構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダ、油圧モータなどの油圧機器に作動圧油を供給する油圧ポンプを備えた油圧回路に設置して、前記油圧ポンプが接続する油タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
工場の生産設備や建設機械又は河口堰、河川に設置される水門、ダムの放水ゲート、などの各種の水門施設の動力源に利用される油圧装置は、前記した生産設備の機器、建設機械および水門、堰等の設備機器を駆動するアクチュエータ(油圧シリンダや油圧モータ等。)とこのアクチュエータに作動圧油を給排制御する制御弁及び作動圧油を発生する油ポンプとよりなる油圧回路と、この油圧回路に作動圧油を供給する油圧ポンプが吸引する油及び、前記油圧回路から帰還する戻り油を貯留する油タンクとより構成されている。
【0003】
前記油圧回路は、油圧装置の施工が完了した後油圧ポンプからの作動圧油を前記油圧回路に充満さるために循環させるフラッシング(以下初期フラッシングと記載する。)を行う。この初期フラッシングは、油圧回路内に滞留していた空気が気泡として混入された戻り油となって油タンクに帰還する。この気泡を含んだ戻り油が油タンクに帰還して油タンク内に収容された貯留油に混入し、この貯留油を油圧ポンプが吸引して作動圧油として油圧機器に供給すると、前記貯留油の気泡が油圧モータ内でのキャビテーションの発生、油圧機器内での加圧によるディーセル爆発の原因になり、油圧ポンプあるいは油圧機器が故障する原因になる。
【0004】
このため、初期フラッシング時に帰還した戻り油とタンク本体に収容された貯留油とが混合されてしまうと、この気泡がタンク本体に収容された貯留油内から消えるまで静止状態で放置する必要がある。しかし、戻り油に混入した気泡は微細であり且つ油の粘度が高いので、気泡が油面に上昇して空気中に飛散するには長い時間が必要となりその間油圧装置が作動できない問題点がある。
【0005】
この弊害を回避するため、フラッシング専用の油タンクを用いて、油圧回路の空気がなくなるまで循環し気泡が混入した作動油を廃棄して新しい作動油を貯留したタンクに切り換える方法がとられるが、水門作動用の油圧装置のようにその油圧回路が長大(河川の幅に相当する配管)であると、作動油のコストが嵩む問題点を有する。
【0006】
さらに、初期フラッシングにおいて油タンク内の気泡を完全に除去しても機器の作動に伴って空気の混入、汚染されるものである。この汚染は、作業環境に基づく汚染であったり外気の混入であったりするものであり、この汚染も作動機の故障の原因となる。このため、油圧回路は、時々回路内の作動油を清掃のためのフラッシング(以下清掃フラッシングと記載する。)を行う必要がある。この清掃フラッシング時にも清掃フラッシング時の戻り油の気泡が予め貯留していた油と混合され、油圧ポンプに吸引されて作動圧油として還流すると作動機器に悪影響を及ぼす。
【0007】
上記の問題点を解決する従来の技術である特許文献1には、気泡が混入した戻り油の流れを整流して油タンク内に流出させる整流手段、および予め貯留していた油の油面の上方で緩傾斜に配置された泡消し板を配置し、油タンク内に流入する戻り油を泡消し板の上面に沿って緩やかに流下させ、戻り油内の気泡を離脱させる装置が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、油タンク内に設けられたサイクロン型気泡除去装置によって、油圧回路を通って油タンクに戻ってきた油に混入された気泡を取り除く油タンクが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2000−24407号公報
【特許文献2】特開2004−84923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示された戻り油の泡消し装置は、整流手段の下段に泡消し板を設ける構造であり、その機能は戻り油を整流手段で整流し泡消し板に衝突しても飛散しないようにして空気を巻き込ないようにすること、および、泡消し板の上面に広く緩やかに泡が混入された戻り油を流すことで泡を空中に分離することである。しかしながら、粘度の高い油に混入された泡は、油圧回路の複雑な通路を通過する過程において微細になり分離しにくい懸濁状態になる。特許文献1に開示された戻り油泡消し装置の泡消し板は、戻り油がその表面を広く緩やかに流れる間では分離が困難であり分離できない気泡が戻り油と一緒に泡消し板からタンクに収容された貯留油クの油面に落下して混入する、この戻り油は、作動油の落下の慣性でタンクに収容された貯留油の深部に混入するので油タンク内全体に気泡が混入される問題点を有する。
【0011】
また、特許文献2に開示された油タンク内に設けられたサイクロンによる戻り油の気泡除去装置は、帰還する作動油によりサイクロン内に渦巻きを発生させその遠心力で気泡と作動油を分離する構成である。作動油は、粘度が高いのでサイクロン内で渦巻きを起こさせるために回路抵抗大きくなり油圧装置の効率が低下させる問題がある。また、サイクロンにより除去した気泡は、作動油中に放出する構成であるので、油タンクに気泡が混入する問題がある。
【0012】
本発明は、上記の問題を鑑みてされたものであり、油圧回路の戻り油を油タンク内に設置した収容部内に帰還させることでタンク本体に収容された貯留油との混合を避けると共に収容部に貯留した油圧回路の戻り油を、収容部の上部からタンク本体に収容された貯留油の油面に拡散させることでタンク本体に収容された貯留油の深部にもぐりこまないようにして、油圧ポンプに気泡が混入した油を吸引させることを確実に防ぐ油タンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明の油タンクは、油を収容するタンク本体の底部に近接する位置に設けられ油圧回路に作動圧油を供給する油圧ポンプが接続する吸込口と、前記油圧回路の戻り管路に接続し油圧回路からの戻り油を前記タンク本体に流入させる戻り油流入口とを備えた油タンクにおいて、前記タンク本体内に前記戻り油を収容する収容部を設け、この収容部は、その底部に近接する位置に前記戻り管路に接続する戻り油流入口が開口させられると共に、前記収容部に収容した貯留油を前記戻り油流入口より流入する戻り油で前記収容部を越流させ前記タンク本体内に貯められた貯留油の油面に沿って拡散して混合させる開口端を前記タンク本体に収容された貯留油の運転時の下方の油面より下に設けた構成としたことを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、収容部の開口端をタンク本体に貯められた貯留油の運転時の下方の油面より下に位置させて設けてあるので、前記したタンク本体に貯められた貯留油の上下動に関わらず油面の下で行われる。すなわち、収容部の開口端は、戻り油をタンク本体に貯められた貯留油の油面に沿って拡散させることができるので戻り油に混入した気泡も前記貯留油の油面に沿って漂うのみである。他方、油圧ポンプに接続する吸入口は、タンクの底部に近接した位置に設けてあり、前記貯留油表面を漂う戻り油を吸引しないので油圧回路に接続した各機器の気泡による故障を防止する。
【0015】
さらに、配管工事を経て作動油を供給する初期フラッシングにおいて大量の空気が混入し戻り油流入口より流入する戻り油は、収容部の底部に流入し貯留されその後戻り油流入口から流入する戻り油と共に、収容部の開口端からタンク本体に収容された貯留油の油面に拡散して放出されるので、タンク本体に収容された貯留油の深部にもぐりこまない。このため油圧ポンプには、空気の混入がない作動油を常時供給できるので初期フラッシングから運転までの時間を短縮できるので油圧回路の各種フラッシングによる作業ロスを短縮する効果を有する。
【0016】
さらに、この様に各種フラッシング終了から油圧装置の稼動までの時間をきわめて短い時間にすることができるので、各種フラッシングによる作業ロスを懸念しなくて良い。このため、各種フラッシングを高い頻度で行うことができ、油圧回路が常時清潔に保たれ作動油の汚染による機器の故障を防ぐことができる効果を有する。
【0017】
また、第2の発明の油タンクは、油を収容するタンク本体の底部に近接する位置に設けられ油圧回路に作動圧油を供給する油圧ポンプが接続する吸込口と、前記油圧回路の戻り管路に接続し油圧回路からの戻り油を前記タンク本体に排出する戻り油流入口とを備えた油タンクにおいて、前記タンク本体内に前記戻り油を収容する収容部を設け、この収容部は、その底部に近接する位置に前記戻り管路に接続する戻り油流入口が開口させられると共に、前記戻り油流入口より流入する戻り油で前記タンク本体に収容された貯留油の運転時の上方の油面を越えた位置で越流させる開口端と、前記タンク本体に収容された貯留油の運転時の下方の油面より下で前記の開口端から越流する前記収容部に収容した貯留油の流れを前記タンク本体に収容された貯留油の油面に沿った流れにする様に設置された整流翼を前記開口端に沿って配置する構成としたことを特徴とする。
【0018】
上記の構成によれば、収容部に流入する戻り油が収容部に貯留され順次流入する戻り油で収容部の開口端を越流した貯留油は、収容部に沿って流下して整流翼によりタンク本体に収容された貯留油の運転時の油面に沿って漂わせることができる。このため収容部に収容した戻り油のに混じって流入する気泡は、タンク本体に収容された貯留油の油面に拡散されその深部に混入ないので油圧ポンプに吸引されないので、油圧機器の故障を防止できる効果を有する。また、収容部の開口端をタンク本体に収容された貯留油の運転時の上方の油面より上に設けることで、油圧回路の使用によるタンク本体に収容された貯留油の油面が変動してもタンク本体に収容された貯留油と戻り油とを完全に遮断する。さらに、開口端を越流した収容部内の貯留油は、収容部に沿って流下してタンク本体に収容された貯留油の油面の運転時の下方より下に設けた整流翼によりタンク本体に収容された貯留油の油面の表面に漂わせる。この様に収容部の開口端をタンクに本体に貯られた貯留油の運転時の上方の油面より上にして、整流翼をタンクに本体に貯られた貯留油の運転時の下方油面より下に設置することで収容部から越流する戻り油が多くてもタンク本体に収容された貯留油の油面に漂わせることができるので、収容部を小型化しタンク本体の実質容積を大きくする効果を有する。
【0019】
また、収容部の開口端をタンク本体に収容された貯留油の運転時の上方の油面より上に設けることでタンク本体に収容された貯留油と戻り油とを完全に遮断し、さらに、タンク本体に収容された貯留油の運転時の下方の油面より下に設けた整流翼により収容部の貯留油をタンク本体に収容された貯留油の油面に拡散することが出来るので、開口端と整流翼の間で変化するタンク本体に収容された貯留油の油面変動に対応することが出来る。すなわち、油圧シリンダの様にそのロッド側とヘッド側に体積差がある場合、その体積差に対応してタンク本体に収容された貯留油の油面が上下するが、この上下する油面の位置は、収容部の開口端と整流翼の位置の間であると戻り油を貯留油の油面に漂わせることが出来るので貯留油の油面変動が大きい場合にも対応できる効果を有する。
【0020】
また、第3の発明の油タンクは、第2の発明の油タンクにおいて、前記収容部の深さ方向に前記整流翼を複数枚のを並設し、下段の整流翼の幅を上段の整流翼より広い構成としたことを特徴とする。
【0021】
上記の構成によれば、配管からの作動油の漏れなどにより、油タンクの作動油が減少してその油面が下がって上段の整流翼が油面から露出してもその下段に設けた整流翼が油面の下にある限り、戻り油を油面に漂わせることが出来る。すなわち、複数枚の整流板を収容部の深さ方向に並設することで大きな油面の変動に対応する効果を有する。
【0022】
また、第4の発明の油タンクは、第1ないし第3の何れか一つの発明の油タンクにおいて、前記戻り管路は前記タンク内に貯られた貯留油の運転時の上方の油面より上方で且つ前記収容部の開口端の範囲内に開口する排出口を備えた分岐管を備えたことを特徴とする。
【0023】
上記の構成によれば、配管工事の後の初期フラッシングにおいて、配管内の空気が供給された作動油により押出されるので戻り油に大量の気泡を含む、この様な大量の空気を含んだ戻り油を、収容部の開口端の上面でかつ油面より上面の空間に解放することで、大量の気泡を含む戻り油による収容部内の戻り油の飛散を防止して、タンクに本体に貯られた貯留油の深部へ気泡の混入を防止する効果を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の油タンクによると、油圧回路から帰還する戻り油を収容部に流入させて貯留し、この貯留油が収容部から越流する戻り油をタンク本体に収容された貯留油の油面に拡散させて漂うわせることで、前記貯留油の底部に戻り油の混入を防止するので、油圧回路の初期フランシング、清掃フラッシング、交換フラッシング、通常作動において油圧回路からの戻り油に気泡が混入していても、この気泡を油圧ポンプが吸入しない。このため、通常運転におい安全な運転ができる、さらに、フラッシングあるいは作動油の交換終了から通常運転の間の時間を短時間にすることが出来る効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の第1実施形態に係る油圧回路全体を示す説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る収容部の構成を示す説明図である。
【図3(a)】本発明の第1実施形態に係る油タンクに油が貯留される様子を示す説明図である。
【図3(b)】本発明の第1実施形態に係る油タンクに貯留された油が吸引される様子を示す説明図である。
【図4(a)】本発明の第1実施形態に係る油タンクに戻り油が流入する様子を示す説明図である。
【図4(b)】本発明の第1実施形態に係る収容部から戻り油が越流する様子を示す説明図である。
【図5(a)】本発明の第2実施形態に係る油タンクを示す説明図である。
【図5(b)】本発明の第3実施形態に係る油タンクを示す説明図である。
【図6(a)】本発明の第4実施形態に係る油タンクを示す説明図である。
【図6(b)】図6(a)のS4部の拡大図
【図7(a)】本発明の第5実施形態に係る油タンクを示す説明図である。
【図7(b)】図7(a)のS5部の拡大図
【図8】本発明の第6実施形態に係る油タンクを示す説明図である。
【図9】図8のA-A‘より見た泡の拡散状態図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図1〜図4(b)を参照しつつ説明する。
【0027】
(油タンク)
図1に示すように、本実施形態に係る油タンク20は、油25を予め貯留するタンク本体26と、タンク本体26の底部の近傍に設けられ油圧ポンプ34の吸い込み側が接続する吸込口31と、吸込口31から油圧ポンプ34により吸引された油25を加圧して作動圧油22として油圧回路1の油圧機器に供給され油圧機器の戻り油24が戻り管路35を介して帰還する戻り油流入口16と、側面11aと底部面11bとから構成され、タンク本体26に収容された油25(以下貯留油25あるはタンク本体26に収容された貯留油25と記載する場合もある。)の運転時の油面H2から突出して上面が開口されたる開口端15を備えた筐体18を有し、タンク本体26に収容された貯留油25から分離して戻り油流入口16から流入した戻り油24を収容貯留油23として収容する収容部10と、収容部10の開口端15から越流する収容部10に収容した貯留油23を貯留油25の油面に導くつば部12と、を備えた構成である。
【0028】
タンクに本体26に貯られた貯留油25の油面H2は、油圧回路1の機器が油圧、モータのように作動圧油が一方から他方へ流通することで作動する場合、タンク本体26に収容された貯留油25が油圧回路1を循環するのみであるからその油面H2変動しない。しかし、油圧シリンダ50のように、往復動する機器はそのロッドが伸張するときの容積が縮小するとの容積より大きいため、油圧シリンダ50の最も伸張した時のときタンク本体26に収容された貯留油25の油面H2が一番低い値になりこのときの油面H2を運転時の下方の油面H2と記載し、油圧シリンダ50の最も縮小した時のタンク本体26に収容された貯留油25の油面H2が一番高い値になりこのときの油面H2を運転時の上方の油面H2と記載する。なお貯留油25の油面を区別する必要の無い場合は、運転時の油面H2と記載する。
【0029】
また、第1実施形態に係る油タンク20におけるつば部12は、収容部10の開口端15からタンク本体26に収容された貯留油25の油面に向かって緩傾斜する構造である。
【0030】
さらに、第1実施形態に係る油タンク20におけるつば部12の表面には、金網13が設けられている。
【0031】
ここで、第1実施形態におけるタンク本体26に収容した貯留油25は、例えば産業機械の作業機を駆動する油圧シリンダなどの油圧機器に供給するの作動油のことである。なお、本発明において、貯留油25は作動油に限定される必要はなく、他種類のものであってもよい。
【0032】
油タンク20の構成の主体となるタンク本体26は、箱形状で構成してあり、シリンダ50を駆動する作動油である貯留油25を収容する。なお、タンク本体26の形状は箱形状に限定される必要はなく、例えば円筒状であってもよい。
【0033】
吸込口31は、タンク本体26の底部26aの近傍に位置しており、油圧ポンプ34に接続する吸入管38の先端部に設けられている。前記貯留油25は、吸入管38から油圧ポンプ34に吸引され油圧回路1の圧油供給管36を介して方向切換弁37によって油圧シリンダ50を作動させる作動圧油22として供給される。ここで、タンク本体26の底部26aの近傍とは、タンク本体26に収容される貯留油25の油面よりも下部に位置し、油面近くに滞留する気泡40が吸込口31から吸引されない位置で、且つタンク本体26の底に沈殿する貯留油25も吸引しにくい位置である。このような構成により、油圧ポンプ34を駆動することによって、タンク本体26に収容された貯留油25が吸込口31から吸引され、作動圧油22として油圧シリンダ50に供給されるようになっている。また、吸込口31には、図示しないフィルターを内臓しており、貯留油25内ゴミや塵埃などが油圧回路1内に入り込むことを防いでいる。
【0034】
戻り油流入口16は、図1の円部S1に示すように、戻り管路35の先端部に設けられている。戻り油流入口16からは、油圧回路1の油圧シリンダ50から戻り油24となって戻り管路35を通って、収容部10に流入し貯留油23として貯留される。この戻り油流入口16は、タンク本体26に収容された貯留油25と戻り油流入口16から流入した戻り油24とを分離して収容するよう収容部10の底部11bの近くに設けられており戻り管路35から戻り油流入口16を通って流入する戻り油24が収容部10に貯留油23として貯留される。この貯留油23とタンク本体26に収容さられた貯留油25との混合は、貯留油25の油面のみで混合しする様になっている。すなわち、戻り油24は、収容部10の底部11bの近くに開口する戻り油流入口16から流入して収容部10内に貯留油23として貯留され、この貯留油23が開口端15から越流すると収容された貯留油25と混合される。
【0035】
(収容部)
収容部10は、図2に示すように、底部11bと複数の側面11aとからなり、上面に開口端15を有する筐体18を主体としている。また、収容部10の開口端15には、つば部12が設けられている。つば部12は、収容部10の開口端15から下方に向けて緩傾斜されている。なお、収容部10の形状は、直方体に限定される必要はなく、例えば円筒状であってもよく、その開口端15に沿ってつば部12が設けられていてもよい。また、つば部12が設けられている場所は、収容部10の開口端15に限定される必要はなく、例えば、収容部10の側面11aに設けられていてもよい。つば部12は、タンク本体26に予め収容されている貯留油25の油面よりも上方または油面のちかくの位置し開口端15を囲む位置であれば、収容部10の側面11aにおける如何なる位置に設けられていてもよい。
【0036】
図1の円部S1に示すように、収容部10は、底部11bとタンク本体26の底部26aとを繋ぐ2本の支持部19によって、固定されている。そして、収容部10が取り付けられる際、戻り管路35は、収容部10内の底部11bの近傍まで挿入されその先端に戻り油流入口16が開口する。ここで収容部10の断面積は、戻り管路35を介して戻り油流入口16から流入する戻り油24が収容部10内で飛散しないように戻り管路35の横断面積よりも十分大きくしてある。すなわち、この収容部10の底部11b部分の断面積は、流入口16から収容部10に流入し貯留油23として満たしながら上昇する流速、および収容部10の開口端15を越流した貯留油23がつば部12を流下する流速がつば部12上において気泡40が外部の空気層へ逃げやすい流速で緩やかにタンク本体26に収容されていた貯留油25の油面に戻れるような流速となるように設定してある。また、収容部10は、タンク本体26に収容していた貯留油25の油面から突出して取り付けられ、開口端15に設けられたつば部12が、タンク本体26に収容された貯留油25の油面H2よりも上方に位置するようになっている。これにより、つば部12は、収容部10の上端部からタンク本体26に収容された貯留油25の油面に向かって緩やかな傾斜をするようになっている。さらに、つば部12の表面には金網13が設けられている。
【0037】
なお、つば部12を流下する貯留油23の流速は、気泡40が外部の空気層へ逃げやすい流速であり、かつ戻り油24が緩やかにタンク本体26内に収容された貯留油25の油面に戻れるような流速となっている。ここで、図1の円部S2に示すように、つば部12をゆっくりと流下する貯留油23は、つば部12上で拡散して薄くなる。そのため、貯留油23に混入された気泡40が外部の空気層に逃げられる距離が短くなり、つば部12上を流下する間に貯留油23から気泡40が離脱する。また、つば部12上に設けられた金網13により貯留油23の流下速度が遅くなり気泡40が空気中に発散し易くなっている。
【0038】
また、戻り管路35が接続する戻り油流入口16は、戻り管路35より大きい断面積を得るため管を斜めに切断した楕円形をしており、また、戻り油流入口16の近くに設けた複数の孔14は、戻り管路35から流入する戻り油24が急激に増加したとき戻り油24を放出して戻り油24による戻り管路35内が上昇しないようにさせる役割を有している。
【0039】
また、タンク本体26の天板上には、エアブリーザ32が設けられている。エアブリーザ32は、油圧回路1に設けた油圧シリンダのようにその作動によりタンク本体26に収容された貯留油25の油面が変動することにより出入りする空気を内部に設けたフィルターで濾過してゴミや水分の進入を防止している。
【0040】
上記のような構成を有する油タンク20は、油圧ポンプ34、方向切換弁37、多機能弁60、および油圧シリンダ50などから構成された油圧回路1に作動圧油22を供給する油25を貯留している。なお、第1実施形態に係る油圧回路1は、油圧シリンダ50の油圧回路であるが、これに限定される必要はなく、その他の用途に用いられていてもよい。
【0041】
(ポンプ)
油圧ポンプ34は、2つの歯車が噛み合うことによって回転して、タンク本体26に収容された貯留油25を吸込口31から吸出し作動圧油22として油圧シリンダ50を備えた油圧回路1へ供給する。なお、油圧ポンプ34は、歯車式ポンプに限らず、他形式の油圧ポンプを用いていてもよい。
【0042】
(シリンダ)
油圧シリンダ50、シリンダチューブ52と、シリンダチューブ52内を進退するロッド51と、シリンダチューブ52内に摺動自在に嵌入してありロッド51に固定されたピストンと、を備えている。油圧シリンダ50は、油圧ポンプ34からの作動圧油の供排により前記のピストンがシリンダチューブ52を摺動しロッド51が伸張するA方向またはロッド51が縮小するB方向に作動する。なお、ロッド51の伸張方向に作動させるための油室(ヘッド側圧力室)は、ロッド51を縮小方向に作動させるための油室(ロッド側圧力室)より大きい容積である。このため、油圧シリンダ50の作動によりタンク本体26に収容された貯留油25の油面H2は上下に変動する。
【0043】
(方向切換弁)
方向切換弁37は、油圧ポンプ34と油圧シリンダ50との間に設けられており、3つの切換位置を有し、これらの切換位置に切り換え操作することによって作動圧油の流れ方向を変える構成であり、左切換位置37aと中立位置37bと右切換位置37cとに切り換えることができる。この方向切換弁37を左切換位置37aに切り換えると油圧シリンダ50のロッド51はA方向に伸びる方向に油圧ポンプ34からの作動圧油22を供給し油圧シリンダ50の排出側を戻り管路35に接続する。また、方向切換弁37を右切換位置37cに切り換えるとロッド51が縮小するB方向に油圧ポンプ34からの作動圧油22を供給し油圧シリンダ50の排出側を戻り管路35に接続する。さらに、方向切換弁37を中立位置37bに切り換えた場合、油圧シリンダ50のロッド51の伸縮しないように圧油給排管36及び戻り管路35と油圧シリンダ50とを遮断する。
【0044】
(多機能弁)
第1実施形態における多機能弁60は、油圧シリンダ50に直接取り付けてあり、3つの止弁61、62、63を備えている。この多機能弁60の止弁62は、圧油給排管36aと油圧シリンダ50との間を開閉し、止弁63は圧油給排管36bと油圧シリンダ50との通路を開閉する。さらに止弁61が圧油給排管36bの間を開閉する。このような構成を有する多機能弁60を利用して、止弁62・63および止弁61を開閉することによって、油圧シリンダ50や圧油給排管36a、圧油給排管36bの破損箇所の検知が出来るようになっている。また、止弁61を開いて油圧シリンダ50をバイパスして圧油給排管36aと圧油給排管36bを接続してタンク本体26に収容された貯留油25を油圧回路1内で循環させて、各種(初期、清掃、交換)のフラッシングを行うことが出来るようなっている。
【0045】
(第1実施形態の作動)
次に、図3と図4を用いて、第1実施形態の作動について述べる。
【0046】
配管工事が終了した後油圧回路1に圧油を充満させる初期フラッシングについて述べる。まず図3(a)に示すように、作業者によって、図示しない供給口からタンク本体26に油が供給され貯留油25として貯留される。油圧回路1および収容部10内には、貯留油25が進入しない状態である。なお、タンク本体26に貯留油25が満たされ初期フラッシングが行われない状態の時のタンク本体26に収容された貯留油25油面を、油面H1とする。
【0047】
次に、図3(b)に示すように、油圧ポンプ34の駆動によって、吸込口31から貯留油25が油圧ポンプ34に吸引され、作動圧油22として油圧回路1に供給される。このとき、多機能弁60における止弁62・63を閉め、止弁61を開き、方向切換弁37を左切換位置37aに切換られている。このため、油圧ポンプ34からの作動圧油22は油圧シリンダ50へ供給されずに、圧油給排管36aから止弁61を介して圧油給排管36bから方向切換弁37を介して戻り管路35から収容部10へ還流する。すなわち、吸込口31から流出し油圧ポンプ34で加圧された作動圧油22は、圧油給排管36から方向切換弁37を介して圧油給排管36a、止弁61、圧油給排管36bを経て方向切換弁37から戻り管路35を介して戻り油24となって帰還する。このため、作動圧油22は、上記の管路、方向切換弁37に滞留していた空気を押し出しながら戻り油流入口16から収容部10に帰還する。この時、収容部10内は空状態となっているため、戻り油24によって押し出された空気は、収容部10内の空気層に排出される。
【0048】
次に、図4(a)に示すように、油圧回路1内に滞留していた空気が収容部10内の空気層へ逃げた後、油圧回路1内を循環した貯留油25が戻り油24となり戻り油流入口16から収容部10へ流入して貯留油23として収容される。収容部10に貯留された貯留油23は、収容部10を満たし、収容部10の上端部にまで貯留油23の油面を上げる。なお、この時の貯留油23は、空気層へ逃げ切れなかった空気を気泡40として含んだ状態である。
【0049】
次に、図4(b)に示すように、収容部10に収容された貯留油23は、やがて収容部10の開口端15を越流してつば部12の金網13上を矢印E1に示すように流下して、タンク本体26に収容された貯留油25の油面に流れ込む。この時、つば部12上を流下する貯留油23は薄くなるため、貯留油23に混入された一部の気泡40は外部の空気層に離脱する。また、つば部12の表面に設けられた金網13に気泡40が接触することによって貯留油23の流下速度が緩められ気泡40大気に離脱し易くする。このようにして、気泡40を含んだ貯留油23は、タンク本体26に収容された貯留油25の油面に矢印E1に示すように流入するので、貯留油23は、タンク本体26に収容された貯留油25油面に拡散する方向の力を受けて混入する。このため貯留油23は、収容された貯留油25の油面に拡散し滞留するため、タンク本体26の底部の近傍に設けられた吸込口からは、常に気泡40を含まない貯留油25が吸引されるようになる。
【0050】
次に、油圧シリンダ50内に作動圧油22を供給する初期フラッシングについて述べる。上記の管路の初期フラッシングにより油圧回路1内の圧油供給管36および戻り管路35等の管路に油を充満した状態で方向切換弁37を中立位置37bに操作し油圧回路1に油を閉じ込める。次に、多機能弁60の止弁62・63を開け、止弁61を閉める。さらに、方向切換弁37を左切換位置37a若しくは右切換位置37cに交互に切り替え、油圧シリンダ50のロッド51を進退させる。これにより、油圧シリンダ50内に油25を充満させることができる。この時、シリンダ50内に滞留していた空気は、気泡40となって戻り油24共に戻り管路35を通り、収容部10に収容されるようになっている。その後、気泡40は、収容部10を越流し、つば部12を流過することによってタンク本体26に予め収容されていた貯留油25の油面に戻される。これにより、油圧回路1内に予め滞留していた全ての空気を抜くことができる。この様に油圧回路1とその機器の初期フラッシングが終了すると回路、油圧機器に油が充満させられるので、その分タンク本体26に収容された貯留油25が減少して油面H2となる。、
【0051】
なお、本実形態に係る油圧回路1は、止弁62・63および止弁61を1つにまとめた多機能弁60を有しているが、夫々が別個に備えられた油圧回路1であってもよい。多機能弁60を用いることによって、止弁62、止弁63および止弁61との間に存在する配管を最小限に抑えることができるため、油圧回路1内で抜かなければならない空気を最小限に抑えることができる。
【0052】
収容部10内に帰還した戻り油24が収容された貯留油23に残留した気泡40は、収容部10および、つば部12を伝って矢印E1に示すようにタンク本体に収容された貯留油25の油面に拡散するように滞留させることができ、タンク本体26に収容された貯留油25の深部に貯留油23が混入しないので、吸込口31からは常に気泡40を含まない油を油圧ポンプ34へ供給することができる。また、この時のタンク本体26に収容された貯留油25の油面は、油圧回路1と油圧シリンダ50を満たす量だけ減少した油面H2の高さとなる。この油面H2は油圧シリンダ50が作動するときその容積差だけ上下する。この油面H2の上下により増減するタンク本体26内の空気は、エアブリーザ32を介して出入りする。
【0053】
(第2実施形態)
、次に 図5(a)に示す第2実施形態について説明する。
油タンク120は、つば部12によって導かれた収容部10の貯留油23タンク本体26に収容された貯留油25の油面で受けるふるい80が設けられていてもよい。ふるい80は、メッシュ状態に形成されており、そのメッシュ部分は、つば部12を流下してきた収容部10の貯留油23を一旦受けて落下の衝撃を吸収することで予め貯留していた貯留油25深部に貯留油23がもぐりこむのを防止しその表面に、貯留油23を拡散させる。
【0054】
すなわち、気泡40を含んだ戻り油24が収容部10aに貯留された貯留油23となった場合でも、ふるい80によって貯留油23の勢いがタンク本体26に収容された貯留油25の油面に沿った方向に変換することができるので、収容部10aの貯留油23は、図9に示すように収容された貯留油25油面に沿って拡散させられるので、貯留油25の深部に気泡40が混入すること防止する、また、勢いで予め貯留していた貯留油の中深くに気泡40が潜ってしまうことがないため、より確実に気泡40を油面近くに滞留させることができる。
【0055】
(第3実施形態)
また、図5(b)に示す第3実施形態に係る油タンク130は、つば部12によって導かれた貯留油23をタンク本体26に収容された貯留油25の油面近くで受けるフロート部90を設けた構成であり、フロート部90は、タンク本体26に予め貯留していた貯留油25の油面に浮かんでおり、タンク本体26に収容された貯留油25の油面が上昇または下降するのに伴って上下移動するようになっている。そのため、つば部12を流下した貯留油23は、タンク本体26に収容された貯留油25の油面に戻る前に、貯留油25の油面に浮かんだフロート部90上をゆっくりと流下し、タンク本体26に収容された貯留油25の油面上へ戻されるようになっている。このように、気泡40を含んだ戻り油24が油面に勢い良く戻った場合でも、フロート部90によってその勢いを貯留油25の油面の方向に変換し、貯留油23をタンク本体26に収容された貯留油25の油面に拡散させて漂わせる。これにより、油面との接触による衝撃で気泡40が貯留油25に混入しない。この様に、勢いでタンク本体26に収容された貯留油25の深部に気泡40が潜ってしまうことがないため、より確実に気泡40を油面近くに滞留させることができる。
【0056】
第2実施形態と第3実施形態において、戻り管路35は、図5(a)、(b)に示すように、戻り管路35がタンク本体26に入る前に2つの管路に別れていてもよい。具体的には、戻り管路35が戻り油流入口16を介して収容部10a、10b内に連結しており、この戻り管路35から分岐する分岐戻り管路35aは、止弁33を経由して、タンク本体26内の空気層で前記したふるい80またはフロート90の上に開口する構成にする。なお、止弁33は、図示しないハンドルを手動で回すことによって、分岐戻り管路35aを開閉するものである。このような構成により、収容部10a、10bに戻される戻り油24が貯留油23として貯留されても、タンク本体26の空気層へ油圧回路1内の空気を排出することができる。また、この分岐戻り管路35aからタンク本体26の空気層に大量の空気が噴射されても、この噴射された空気がメッシュ80またフロート90に衝突して、この空気をタンク本体26に収容された貯留油25の油面の方向に拡散させる。
【0057】
つまり、収容部10a、10b内が貯留油23で満たされていた場合、収容部10a、10b側への管路は圧力が高くなっているため、止弁33を開放状態にすることによって、戻り油24によって押し出した空気を分岐戻り管路35aへと流してタンク本体26の空気層に排出することができる。そして、配管内に大量に滞留していた空気を空気層へ排出し後、止弁33を閉塞状態にし、今度は気泡40を含んだ戻り油24を収容部10a、10b側へと流して、戻り油流入口16から収容部10a、10bへ戻り油24を流入させることができる。分岐戻り管路35aを利用することによって、複数のシリンダ50とそれに付随する複数の配管を備えた油圧回路1であっても、油圧回路1内の空気を確実に空気層へ排出する。
【0058】
(第2及び第3実施形態の概要)
以上のように、第2実施形態に係る油タンク120は、つば部12によって導かれた収容部10aに収容された貯留油23をタンク本体26に収容された貯留油25の油面近くで受けるふるい80が設けられている。
【0059】
上記の構成によれば、気泡40を含んだ収容部10aに収容された貯留油23が油面に勢い良く戻った場合でも、ふるい80によってその勢いを吸収することができる。これにより、タンク本体26に収容された貯留油25の油面との接触による衝撃でさらに気泡40が混入することがなく、また、勢いで油中深くに気泡40が潜ってしまうことがないため、より確実に気泡40を油面近くに滞留させることができる。
【0060】
また、第3実施形態に係る油タンク130は、つば部12によって導かれた収容部10bに収容された貯留油23をタンク本体26に収容された貯留油25の油面近くで受けるフロート部90が設けられている。
【0061】
上記の構成によれば、収容部10bに収容された貯留油23がタンク本体26に収容された貯留油25の油面に勢い良く戻った場合でも、フロート部90によってその勢いを吸収することができる。これにより、タンク本体26に収容された貯留油25の深くに収容部10bに収容された貯留油23が混入することがなく、より確実タンク本体26に収容された貯留油25の油面近くに滞留させることができる。
【0062】
また、第2及び第3実施形態に係る油圧回路は、戻り管路35が油タンク120、130に連絡する前に2つの管路に別れており、一方の管路は、戻り管路35に接続する戻り油流入口16となって収容部30内に連絡しており、もう一方の管路は、止弁33を経由して、タンク本体26内の空気層に連絡している。
【0063】
上記の構成によれば、タンク本体26に収容された貯留油25が貯留されていた場合でも、タンク本体26の空気層へ油圧回路内の空気を逃がしてやることができ、複数の油圧シリンダ50とそれに付随する複数の配管を備えた油圧回路であって油圧回路内に大量の空気あっても確実に空気層へ放出してタンク本体26に収容された貯留油25のに混入させない。
【0064】
(第4実施形態)
図6(a)と図6(b)に基づいて第4実施形態について述べる。第4実施形態に係る油タンク420は、その内部に設けられた収容部17aが、図9に示すようにカタカナの“コ”の字型に折り曲げた部材417を油タンク420の側板421と底板422にタップ溶接で固定してその上部が開放された箱体で構成してある。油圧回路1の戻り管路35は、収容部17aの底部近まで挿入し、その先端を斜めに切断することで前記戻り管路35の断面積より大きい断面積の戻り油流入口16と、その近くに複数の孔14を設けた構成であり、この孔14が戻り管路35に大量の戻り油24が帰還した時の収容部17a内の圧力の発生を防止する。また、前記戻り管路35からの分岐戻り管路35aは、止弁33を介して油面H3(タンク本体26に油が収容された油圧回路1が油で充満されない貯留油25の油面)より上で且つ収容部17aの内部に対応する位置に開口する開口部35bを有する。なお、部材417と側板421のタップ溶接は、油タンク420に油が貯留された時その貯留油25が浸入する隙間を有する。第4実施形態に係る油タンク420は、その内部に設けられた収容部17aの構成が相違するのみで、その他は前記第1実施形態と同様であるので、同一符号を付してその説明を省く。
【0065】
収容部17aの上部に設けた開口端150は、油圧回路1の初期フラッシングが終了し且つ油圧回路1とその油圧機器である油圧シリンダ50に圧油が供給された運転時の下方の油面H2(油タンク420に収容された貯留油25が最大限消費された油面)より下で、この油面H2との間に流路R4を形成する位置に開口させた構成である。
【0066】
上記の構成を有する第4実施形態において、油圧ポンプ34から圧油が油圧回路1に供給され、戻り油24が戻り管路35から収容部17aの底部近くに設けた戻り油流入口16を介して流入する。この戻り油24は、収容部17aによってタンク本体26に収容された貯留油25と隔離されいる。したがって、戻り油24に気泡40が含まれていてもタンク本体26収容された貯留油25の深部へ混入しない。戻り油24は、収容部17aの底部に戻り油流入口16から流入しその内部に貯留油23として貯留され順次上方に押出され開口端150を越流しその開口端150と油面H2の間の流路R4を介して、矢印Y4に示すようにタンク本体26収容された貯留油25の油面に沿って拡散する。なお、この拡散状況は、矢印Y4と図9の矢印Y7に示すように、油面H2の表面の全方向に拡散する。
【0067】
さらに、分岐戻り管路35aは、初期フラッシングなどにおいて、大量の空気が戻り管路35から流入する場合が予測されるとき止弁33を開いておき、流入する空気をタンク本体26の空間に放出するようになっている。この分岐戻り管路35aから流入する空気は、その勢いで油面H2から内部に深部に突入するが、分岐戻り管路35aの位置が油タンク420を構成する筐体の内部であるから、矢印K4に示すように収容部17aの内部に突入する。このため、タンク本体26に収容された貯留油25と混合が防止され、吸込口31に吸い込まれない。
【0068】
(第5実施形態)
次に図7(a)及び図7(b)に基づいて第5実施形態について述べる。第5実施形態に係る油タンク420は、その内部に設けられた収容部17bの構成が相違するのみで、その他は前記第4実施形態と同様であるので、同一符号を付してその説明を省く。
【0069】
前記油タンク420に設けた収容部17bの上部に設けた開口端150aは、油圧回路1の初期フラッシングが終了する前の油面H3と等しいか少し上に位置する。また、図9に示すように前記開口端150aに沿って収容部17bの部材417に固定した整流翼424は、油圧回路1とその油圧機器である油圧シリンダ50に最大に圧油が供給された運転時の下方の油面H2(油タンク420に収容された貯留油25が最大限消費された油面)より下で、この油面H2との間に流路R5を形成する位置に固定してあり、この流路R5によって、収容部17bの貯留油23が開口端150aを越流し部材417に沿って流下した時その流れを矢印Y5に示すように油面H2に沿う流れにする幅W1を備えた構成であり、開口端150aに沿って配置することで図9の矢印Y7に示すように、貯留油23をタンク本体26に収容された貯留油25の油面に拡散させる構成である。
【0070】
上記の構成を有する第5実施形態において、油圧ポンプ34から圧油が油圧回路1に供給され、戻り油24が戻り管路35から収容部17bの底部近くに設けた戻り油流入口16を介して流入する。この戻り油24は、収容部17bによってタンク本体26に収容された貯留油25と隔離されいる。したがって、戻り油24に気泡40が含まれていてもタンク本体26収容された貯留油25の深部へ混入しない。戻り管路35からの戻り油24は、収容部17bの底部の戻り油流入口16から流入しその内部に貯留油23として貯留され順次上方に押出され開口端150aを越流し部材417に沿って流下し前記整流翼424と油面H2の間の流路R5を介して、矢印Y5に示すようにタンク本体26に収容された貯留油25の油面に沿って拡散する。なお、この拡散状況は、矢印Y5と図9の矢印Y7に示すように、油面H2の表面の全方向に拡散する。また、戻り管路35より分岐する分岐戻り管路35aは、前記第4実施例とその構造と機能が同一であるので同一符号を付けてその説明を省略する。
【0071】
(第6実施形態)
次に図8に基づいて第6実施形態について述べる。第6実施形態と第5実施形態との相違点は、第5実施形態の整流翼424の下段に整流翼425を設けた点であるので、その部分について説明しその他は同一符号を付けてその説明を省く。
【0072】
収容部17cの整流翼424の下段に設けられた整流翼425は、整流翼424とほぼ平行であり、収容部17c内に還流する戻り油24が収容部17c内に貯留され貯留油23となってその開口端150aから部材417に沿って流下する貯留油23をタンク本体26に収容された貯留油25に沿った流れにするように、整流翼424より広い幅の構成である。
【0073】
上記の構成を有する第6実施形態は、タンク本体26に収容された貯留油25の油面H2が前記第5実施形態と同様の位置に保たれる場合は、収容部17cの開口端150aを越流する貯留油23が整流翼424によって矢印Y5と矢印Y7に示すように、タンク本体26に収容された貯留油25の油面の上部で拡散される。
【0074】
しかし、例えばタンク本体26あるいは配管からの油漏れの修理後、タンク本体26に油の補給を失念するなどにより、油面H2が整流翼424と整流翼425との間までより低下した場合にについて述べる。油面H2が整流翼424と整流翼425との間まで低下すると、収容部17cの開口端150aを越流した貯留油23は、収容部17cの開口端150aを越流し整流翼424の幅w1に沿って油面H2に落下する。この貯留油23は、整流翼425の幅W2上に落下するので、タンク本体26に収容された貯留油25の油面H2に沿うように案内される。このため、タンク本体26に収容された貯留油25が大きく減少しても、収容部17cに収容される戻り油24に気泡が混入していても、タンク本体26に収容された貯留油25の深部に混入しない。
【0075】
上記した実施形態の収容部は筐体に構成する。あるいは図9に示すような部材417をタップ溶接した形状を示したが、この形状は、その断面が円形でもよくまた、油圧タンク20、420の隅部に鉄板を溶接して囲いを形成しその断面が3角あるいは四角でも良い。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、具体例を例示したに過ぎず、特に本発明を限定するものではなく、具体的構成などは、適宜設計変更可能である。また、発明の実施形態に記載された、作用および効果は、本発明から生じる最も好適な作用および効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用および効果は、本発明の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、産業用油圧回路あるいは建機用油圧回路の油タンクについて利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 油圧回路
10 収容部
11a 側面
11b 底部
12 つば部
13 金網
14 孔
15 開口部
16 戻り油流入口
17a 収容部
17b 収容部
17c 収容部17c
20 油タンク
22 作動圧油
23 貯留油
24 戻り油
25 タンク本体26に収容された貯留油
26 タンク本体
26a 底部
31 吸込口
32 エアブリーザ
34 油圧ポンプ
35 戻り管路
36 圧油供給管
36a 圧油給排管
36b 圧油給排管
37 方向切換弁
37a 左切換位置
37b 中立位置
37c 右切換位置
38 吸入管
40 気泡
50 油圧シリンダ
51 ロッド
52 シリンダケース
60 多機能弁
61 止弁
62 止弁
63 止弁
424 整流翼
425 整流翼
H1 油面
H2 油面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油を収容するタンク本体の底部に近接する位置に設けられ油圧回路に作動圧油を供給する油圧ポンプが接続する吸込口と、前記油圧回路の戻り管路に接続し油圧回路からの戻り油を前記タンク本体に流入させる戻り油流入口とを備えた油タンクにおいて、
前記タンク本体内に前記戻り油を収容する収容部を設け、この収容部は、その底部に近接する位置に前記戻り管路に接続する戻り油流入口が開口させられると共に、前記収容部に収容した貯留油を前記戻り油流入口より流入する戻り油で前記収容部を越流させ前記タンク本体内に貯められた貯留油の油面に沿って拡散して混合させる開口端を前記タンク本体に収容された貯留油の運転時の下方の油面より下に設けた構成としたことを特徴とする油タンク。
【請求項2】
油を収容するタンク本体の底部に近接する位置に設けられ油圧回路に作動圧油を供給する油圧ポンプが接続する吸込口と、前記油圧回路の戻り管路に接続し油圧回路からの戻り油を前記タンク本体に排出する戻り油流入口とを備えた油タンクにおいて、
前記タンク本体内に前記戻り油を収容する収容部を設け、この収容部は、その底部に近接する位置に前記戻り管路に接続する戻り油流入口が開口させられると共に、前記戻り油流入口より流入する戻り油で前記タンク本体に収容された貯留油の運転時の上方の油面を越えた位置で越流させる開口端と、前記タンク本体に収容された貯留油の運転時の下方の油面より下で前記の開口端から越流する前記収容部に収容した貯留油の流れを前記タンク本体に収容された貯留油の油面に沿った流れにする様に設置された整流翼を前記開口端に沿って配置する構成としたことを特徴とする油タンク。
【請求項3】
前記収容部の深さ方向に前記整流翼を複数枚のを並設し、下段の整流翼の幅を上段の整流翼より広い構成としたことを特徴とする請求項2記載の油タンク。
【請求項4】
前記戻り管路は前記タンク内に貯られた貯留油の運転時の上方の油面より上方で且つ前記収容部の開口端の範囲内に開口する排出口を備えた分岐管を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の油タンク

【図1】
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【図2】
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【図3(a)】
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【図3(b)】
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【図4(a)】
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【図4(b)】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6(a)】
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【図6(b)】
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【図7(a)】
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【図7(b)】
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【図8】
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【図9】
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