説明

油冷式圧縮機

【課題】効率的に油タンク内の水分を除去できる油冷式圧縮機を得る。
【解決手段】圧縮機本体2に油を供給しながら気体を圧縮する油冷式圧縮機において、圧縮機本体2が圧縮した気体から分離して回収した油を溜める油タンク3と、一端が油タンク3内側の底部に位置し、他端が油タンク3の圧縮気体出口付近に位置するように配置した水分吸着材11と、水分吸着材11の他端部分を加熱するためのヒータ12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、油冷式圧縮機に係るものである。特に圧縮機が有する油タンクにおける水分除去に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、圧縮部分の冷却、潤滑、密封等を油(圧縮機油)を用いて行う油冷式圧縮機が従来からある。従来の油冷式圧縮機では、例えば、油タンク中の水分を、タンク下流の除湿された空気を油タンク内に導入させて除去している。具体的には、吸込み弁を閉鎖した無負荷運転時に、除湿空気を内気循環させる回路を形成し、油タンク中の水分を除去するものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−219024号公報(第5−6項、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の油冷式圧縮機における油タンク中の水分除去は、吸込み弁を閉鎖した無負荷運転ができることを前提に行うものである。このため、例えば無負荷運転を行うことができない油冷式圧縮機には適用することができない。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、例えば無負荷運転等によらず、効率的に油タンク内の水分を除去できる油冷式圧縮機を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る油冷式圧縮機は、圧縮機本体に油を供給しながら気体を圧縮する油冷式圧縮機において、圧縮機本体が圧縮した気体から分離して回収した油を溜める油タンクと、一端が油タンク内側の底部に位置し、他端が油タンクの圧縮気体出口付近に位置するように配置した水分吸着材と、水分吸着材の他端部分を加熱するための加熱手段とを備える。このとき、水分吸着材は、水分のみを選択的に吸着するように調整されているとともに、加熱等により生じる気体の雰囲気の変化により吸着した水分を周囲の圧縮した気体に放出し、かつ一旦水分を放出した後は再度水分を吸着できる状態に再生される。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、油タンク内面に設けられた水分吸着材において、油中に浸った一端にて水分を吸着するとともに、気体出口付近の一端でのヒータの加熱により吸着されている水分が放出され、圧縮気体と共に油タンクの出口から排出されるように構成したので、通常の圧縮機動作中に、連続的に油タンク中の水分を油から分離し、タンク外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】この発明の実施の形態1に係る油冷式圧縮機の全体構成の模式図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る油冷式圧縮機の油タンク3の断面図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る油冷式圧縮機の油タンク3の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1である油冷式圧縮機の全体構成の模式図である。図1に示すように、本実施の形態の油冷式圧縮機は、エアフィルタ1、圧縮機本体2、油タンク3、油分離手段4、セパレータエレメント5、アフタークーラ6、水分離器7、エアドライヤ8、オイルフィルタ9およびオイルクーラ10を有している。
【0010】
エアフィルタ1は、油冷式圧縮機内に吸い込んだ空気等の気体(以下、空気とする)に含まれる粉塵等を捕捉する。圧縮機本体2は、吸入した空気を圧縮し、圧縮空気として送り出す。油分離手段4は、圧縮空気に含まれる油(冷凍機油)を圧縮空気から分離(一次分離)する。油タンク3は油分離手段4が分離した油を、圧縮機本体2に戻すために一時的に蓄えるタンクである。セパレータエレメント5は、油タンク3を通過した圧縮空気からさらに油をろ過分離する。アフタークーラ6はセパレータエレメント5を通過した圧縮空気を冷却する。また、水分離器7は、圧縮空気から凝縮される水を分離する、ドレン排出機能を有する。エアドライヤ8は圧縮空気を除湿する。そして、オイルフィルタ9は、油タンク3の油を浄化冷却し、圧縮機本体2に再度供給する。オイルクーラ10は油を冷却する。
【0011】
図2は実施の形態1の油冷式圧縮機に係る油タンク3の断面図である。図2に示すように、本実施の形態の油冷式圧縮機において、油タンク3は水分吸着手段となる水分吸着材11を有している。水分吸着材11は、一端が油タンク3の下部(側面下部)、底部等、油タンク3に溜まった油に浸漬できるような位置にあり、他端が、圧縮空気が送り出される圧縮空気出口の直前(圧縮空気出口付近)の位置にあって、一連なりになっている。また、油タンク3の外面から油タンク3の空気出口付近における水分吸着材11の端部を加熱する加熱手段となるヒータ12を有している。そして、圧縮機本体2が稼動(駆動)して圧縮空気が発生する直前から、圧縮機本体2の稼動が終了して内圧が開放されるまでの間、ヒータ12に通電して加熱させるようにする。
【0012】
以上のような油冷式圧縮機における各機器の動作等について説明する。圧縮機本体2が稼動すると、圧縮機外の空気をエアフィルタ1を介して吸入する。そして圧縮機本体2は圧縮空気を吐出する。このとき、空気に油を供給して(混合させて)圧縮機本体2に吸入させることで、圧縮空気及び圧縮機本体2を冷却する。このため、圧縮空気と共に混入した油が吐出される。
【0013】
油分離手段4は圧縮空気から混入した油を分離する。分離した油は油タンク3に回収される。そして、回収した油を油タンク3下部から送り出し、オイルフィルタ9、オイルクーラ10を経て、前述の如く圧縮機本体2に再度供給する。
【0014】
ここで、大気中に含まれる水分の一部が、空気圧縮によって凝縮し、油と共に油タンク3に回収される。そこで、油タンク3内面に配された水分吸着材11のうち、油タンク3の油と共に回収された水分と接する一方の端部では水分を吸着する。また、同時に、ヒータ12が油タンク3の空気出口付近にあるもう一方の端部では、ヒータ12による局部的な加熱により、圧縮空気の温度が上昇して飽和水蒸気量が部分的に増加することで、油タンク3内を通過する圧縮空気に吸着した水分を放出(排出、脱着)する。
【0015】
水分放出により乾いた部分に吸着された水分が伝っていくことで、回収された水分の吸着と圧縮空気への水分放出が連続的に発生し、回収された水分が水分吸着材11を介して圧縮空気に移行する。このため、油タンク3内から水分を除去することができる。したがって、例えば、油タンク3内に水分がたまっていって油等をあふれさせることを防止することができる。また、油タンク3下部から回収した油と共に送り出される水分量を減らすことができ、潤滑、冷却等をはかるために適切な量の油を圧縮機本体2に供給することができる。
【0016】
一方、油タンク3から出た水分吸着材11が放出した水分を含む圧縮空気を、セパレータエレメント5に通過させて油を濾過する。また、アフタークーラ6が冷却する。さらに、水分離器7は圧縮空気から水分を除去し、エアドライヤ8によりさらに除湿して、外部の装置に送り出す。水分離器7が除去した水分については、例えば排出機構(図示せず)によって装置外に排出する。
【0017】
以上のように、実施の形態1の油冷式圧縮機においては、油タンク3の内面に、一端側が回収された油等に浸るようにし、他端側が圧縮空気の出口となる部分に位置するように水分吸着材11を設け、一端側において油に混じった水分を吸着するようにし、他端側においてヒータ12で加熱することで圧縮空気に放出して油タンク3外に排出するようにしたので、通常の油冷式圧縮機動作中においても、連続的に油タンク3中の水分を分離・排出することができる。また、油中に水分が撹拌されていても、水分吸着材11が微視的なレベルで水分を選択的に吸着することができるので、水分が油タンク3の底部に沈降する前に除去することができる。このため、油冷式圧縮機における空気回路にバイパス、オリフィス等を追加しなくてもよく、無負荷運転のない油冷式圧縮機でも油の性能劣化を防ぐことが可能となる。
【0018】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係る油冷式圧縮機の油タンク3の断面図である。ここで、油タンク3以外の油冷式圧縮機の構成については、実施の形態1と同じである。
【0019】
本実施の形態では、油タンク3内部に2個以上の一対の水分吸着材11、ヒータ12および電動巻上げ機13を有している。一対の水分吸着材11については、電動巻上げ機13により、一方の水分吸着材11が油タンク3にたまった油に浸漬して水分を吸着している間、他方の水分吸着材11は油タンク3の空気出口付近において水分放出のためにヒータ12で加熱される。
【0020】
また、本実施の形態のヒータ12は、油タンク3内部に設けられ、油タンク3の空気出口付近に位置する水分吸着材11を加熱する。本実施の形態においても、圧縮機本体2が稼動して圧縮空気が発生する直前から、圧縮機本体2の稼動が終了して内圧が開放されるまでの間、ヒータ12に通電して加熱させるようにする。
【0021】
吸着材移動手段となる電動巻上げ機13は、巻上げ動作が設定されており、ワイヤ等で吊された一対の水分吸着材11を巻き上げる等して、それぞれの水分吸着材11を上下方向に移動させ、水分吸着材11を、油中へ浸漬させる又はヒータ12によって加熱させることができる。これを釣瓶のように、一対の水分吸着材11に交互に行わせることができる。
【0022】
以上のように構成した油冷式圧縮機における油タンク3内部における動作について説明する。一対の水分吸着材11のうち、油タンク3に回収された油中の水分吸着材11は、油タンク3において回収された水分を吸着する。一方、油タンク3の空気出口の直前に位置するもう一方の水分吸着材11は、ヒータ12によって加熱され、空気出口付近の圧縮空気の温度が上昇することによって飽和水蒸気量が部分的に増加して、水分吸着材11から水分が放出される。
【0023】
そして、電動巻上げ機13は、例えば一定時間毎に、浸漬している水分吸着材11を引き上げてヒータ12で加熱させると共に、ヒータ12で加熱している水分吸着材を浸漬させて水分を吸着させる。水分吸着とヒータ12の加熱による水分放出を、電動巻上げ機13の動作によって、それぞれの水分吸着材11が交互に繰り返すことにより、油中の水分が圧縮空気に移行する。油タンク3から出た圧縮空気の処理及び油タンク3下部から送られる油の処理については、実施の形態1で説明したことと同様である。
【0024】
以上のように、実施の形態2の油冷式圧縮機によれば、一対の水分吸着材11において、一方の水分吸着材11で油と共に回収された水分を吸着しつつ、他方の水分吸着材11で圧縮空気に放出して油タンク3外に排出するように構成し、電動巻上げ機13により、交互に行うようにしたので、通常の油冷式圧縮機動作中においても、連続的に油タンク3中の水分を分離・排出することができる。また、油タンク3の内部形状に関らず、水分吸着材11の形状や体積を自由に設定することができる。そのため、実使用での水分発生条件や油タンクの形状といった個々の状況に対応が可能となる。
【0025】
実施の形態3.
上述の実施の形態1および実施の形態2では特に言及しなかったが、水分吸着材11の材料として、例えばゼオライトを用いるようにしても良い。ゼオライトは、その分子骨格構造を適切に選択することにより、骨格中の細孔において、水分のみを吸着また放出することができる。また、ゼオライトはケイ素を主成分としており、耐油・耐熱性にも優れており、本発明のように、油冷式圧縮機における水分吸着材として好適である。
【0026】
実施の形態4.
上述の実施の形態2においては、吸着材移動手段として電動巻上げ機13を用いて一対の水分吸着材11を交互に油タンク3底部と圧縮空気出口付近との間を移動させるようにしたが、これに限定するものではない。例えば、ロータ等の循環装置を吸着材移動手段とし、循環装置によって水分吸着材を循環させるようにして、水分の吸着と放出とを繰り返せるようにしてもよい。
【0027】
また、吸着材移動手段として、電動巻上げ機13、循環装置に限らず、例えば、水分吸着材11が、油中の水分吸着と吸着した水分の油タンク3からの排出をほぼ連続して行わせることができるような機構(装置)で構成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 エアフィルタ、2 圧縮機本体、3 油タンク、4 油分離手段、5 セパレータエレメント、6 アフタークーラ、7 水分離器、8 エアドライヤ、9 オイルフィルタ、10 オイルクーラ、11 水分吸着材、12 ヒータ、13 電動巻上げ機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機本体に油を供給しながら気体を圧縮する油冷式圧縮機において、
前記圧縮機本体が圧縮した気体から分離した油を溜める油タンクと、
一端が前記油タンク下部に位置し、他端が前記油タンクの圧縮気体出口付近に位置するように前記油タンク内側に配置して、前記油と混合している水分を吸着するための吸着手段と、
該水分吸着手段の前記他端部分を加熱するための加熱手段と
を備えることを特徴とする油冷式圧縮機。
【請求項2】
圧縮機本体に油を供給しながら気体を圧縮する油冷式圧縮機において、
前記圧縮機本体が圧縮した気体から分離した油を溜める油タンクと、
前記油と混合している水分を吸着するための水分吸着手段と、
前記水分吸着手段を前記油タンク下部と前記油タンクの圧縮気体出口付近との間で移動させる吸着材移動手段と、
前記油タンクの圧縮気体出口付近で前記水分吸着手段を加熱するための加熱手段と
を備えることを特徴とする油冷式圧縮機。
【請求項3】
前記水分吸着手段を一対有し、
前記吸着材移動手段は、各水分吸着手段が交互に前記溜まった油に浸漬するように、前記油タンク下部と前記油タンクの圧縮気体出口付近との間を移動させることを特徴とする請求項2記載の油冷式圧縮機。
【請求項4】
前記水分吸着手段の材料としてゼオライトを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の油冷式圧縮機。
【請求項5】
前記圧縮機本体が前記気体の圧縮を開始し、前記圧縮機本体が稼働を停止して内部の圧力を開放するまでの間、前記加熱手段による加熱を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の油冷式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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