説明

油圧ホースの保護構造

【課題】 隔壁で区隔されたエンジン室内に配設の油圧ホースから油が漏れた場合に、該漏れた油がエンジン室内に飛散してしまうことを防止する。
【解決手段】 油圧ホース21のエンジン室10内配設部位の外周側を、耐熱性を有する保護チューブ25で覆うと共に、該保護チューブ25を、油圧ホース21から漏洩した油をエンジン室10外に導くべくポンプ室12まで延設し、さらに、保護チューブ25のエンジン室内側端部を密閉する一方、エンジン室外側端部は開口せしめた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ショベル等の建設機械における油圧ホースの保護構造の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、油圧ショベル等の建設機械のなかには、エンジンが収納されるエンジン室をファイヤーウォール等の隔壁で区隔し、これによりエンジンの熱や騒音がエンジン室外に漏れることを低減するようにしたものがあるが、このものにおいて、エンジン室内は、かなりの高温領域となる。
ところで、前記隔壁で区隔されたエンジン室内に、例えば冷却ファン(ラジエータやオイルクーラー等のクーリング装置を冷却するためのファン)駆動用の油圧ポンプ等の油圧機器が配されることがあるが、このように油圧機器がエンジン室内に配された場合、該油圧機器に接続される油圧ホースは、高温領域であるエンジン室内を通ることになる。このため、従来から、エンジン室内を通る油圧ホースは耐熱性の高いホースが用いられているが、該耐熱性の高いホースであっても、経年劣化や機体振動等により周辺機器に接触したりして摩耗したような場合、油圧ホースから油が漏洩して、高温領域であるエンジン室内に油が飛散してしまう惧れがある。
そこで、油圧ホースと油圧機器とをつなぐ継手の締付部に、該締付部を覆う保護カバーを設けると共に、該保護カバーを、網目をもった網組材で形成した技術が提唱されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2004−225454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかるに、前記特許文献のものは、保護カバーで継手部分を覆う構成のものであるため、継手部分からの油の漏れには対応できるものの、経年劣化や機体振動等により周辺機器に接触したりして油圧ホースが摩耗し、該ホースの摩耗部分から油漏れがあったような場合には対応できないことになる。さらに、上記保護カバーは網組材で形成されているから、保護カバーから漏れ出た油は網目を通して滴下することになるが、該滴下した箇所が高温領域のエンジン室内であれば防火上好ましくないという問題があり、ここに本発明が解決しようとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、隔壁で区隔されたエンジン室内に配設の油圧機器と、エンジン室外に配設の油圧機器とを連結する油圧ホースを設けてなる建設機械において、該油圧ホースのエンジン室内配設部位の外周側を、耐熱性を有するチューブ部材で覆うと共に、該チューブ部材は、油圧ホースから漏洩した油をエンジン室外に導くべくエンジン室外まで延設されることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、油圧ホースのエンジン室内配設部位をチューブ部材によって保護できると共に、経年劣化等により油圧ホースから油が漏れるようなことがあったとしても、該漏れた油はチューブ部材によってエンジン室外に導かれることになり、而して、エンジン室内に油が飛散することを確実に防止できることになって、信頼性の向上に大きく貢献できる。
請求項2の発明は、請求項1において、チューブ部材は、エンジン室内側端部が密閉される一方、エンジン室外側端部は開口していることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、油圧ホースからチューブ部材内に油が漏れた場合、該油がチューブ部材のエンジン室内側端部からエンジン室内に漏出してしまうことを防止できる一方、チューブ部材内の油はエンジン室外側端部からエンジン室外に排出されることになる。
請求項3の発明は、請求項1または2において、油圧ホースは、チューブ部材のエンジン室内側端部が高位となり、エンジン室外側端部が低位となるようにルーティングされることを特徴とするものである。
そして、この様にすることにより、油圧ホースから保護チューブ内に漏れた油を、自然にエンジン室外に導くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図において、1は油圧ショベルであって、該油圧ショベル1は、クローラ式の下部走行体2、該下部走行体2の上方に旋回自在に設けられる上部旋回体3、該上部旋回体3に装着されるフロントアタッチメント4等から構成されており、さらに前記上部旋回体3には、キャブ5、燃料タンク6、作動油タンク7、エンジン8等の動力機構や各種機器装置、カウンタウエイト9等が搭載されているなどの基本的構成は従来通りである。
【0006】
前記エンジン8は、本実施の形態では、機体後部の左右方向略中央部に配されたエンジン室10に収納されているが、該エンジン室10の左右方向一方側には、エンジン8により駆動するメインポンプ11が収納されるポンプ室12が配され、またエンジン室10の左右方向他方側には、ラジエータ、オイルクーラー等のクーリング装置13や該クーリング装置13を冷却する冷却ファン14等が収納されるクーリング室15が配され、さらに、エンジン室10の前方には、バルブユニット16が収納されるバルブ室17が配されている。そして、エンジン室10と上記ポンプ室12、クーリング室15、バルブ室17とは、ファイヤーウォール(防火壁)等の隔壁18を介して区隔されており、これにより、エンジン8の騒音や熱がエンジン室10外に漏れることを可及的に低減できる構成となっている。
【0007】
一方、19は前記冷却ファン14に組込まれるファンモータ20の駆動源となるクーリング用ポンプであって、該クーリング用ポンプ19は、エンジン室10内のクーリング室15に近い側に配されているが、このクーリング用ポンプ19には、作動油タンク7からクーリング用ポンプ19に吸上げられる油の流路となる油圧ホース21が接続されている。
【0008】
前記油圧ホース21は、耐熱ホースで形成されているが、その一端側がクーリング用ポンプ19に接続される一方、他端側は、エンジン8の側方を通ってエンジン室10とポンプ室12とを区隔する隔壁18を貫通し、ポンプ室12に配設の供給パイプ22に接続される。この場合、油圧ホース21は、図3、図4に示す如く、クーリング用ポンプ19に接続される一端側が高位となり、隔壁18を貫通してポンプ室12に至る他端に向かって低位となるようにルーティングされている。尚、前記供給パイプ22は、作動油タンク7から種々の油圧ポンプに供給される作動油の流路となる油圧配管である。
【0009】
ここで、23は油圧ホース21をクーリング用ポンプ19に接続するための継手であって、該継手23の一端側は、フランジ24を介してクーリング用ポンプ19に締結される一方、継手23の他端側に形成された締結筒部23aには、油圧ホース21の一端側がカシメ等の手段によって締結されている。
【0010】
さらに、25は前記油圧ホース21のエンジン室10配設部位の外周側を覆うチューブ部材としての保護チューブであって、該保護チューブ25は、耐熱性および可撓性を有するシリコン材を用いて形成されると共に、保護チューブ25の内周面と油圧ホース21の外周面とのあいだに間隙Sが存するよう、保護チューブ25の内径は油圧ホース21の外径よりも大径に形成されている。そして、該保護チューブ25の一端側は、前記継手23の締結筒部23aの外周面部に、熱収縮等の手段によって密着状に嵌着されており、而して、保護チューブ25の一端側は密閉した状態になっている。一方、保護チューブ25の他端側は、隔壁18を貫通してポンプ室12に至るまで、つまりエンジン室10の外まで延設されていると共に、該保護チューブ25の他端側は開口25aしていて、前記保護チューブ25と油圧ホース21とのあいだの間隙Sが外部に連通する状態になっている。
【0011】
叙述の如く構成された本形態において、油圧ホース21は、エンジン室10内に配設のクーリング用ポンプ19と、エンジン室10とは隔壁18によって区隔されたポンプ室12に配設の供給パイプ22とのあいだを連結することになるが、該油圧ホース21のエンジン室10配設部位は、耐熱性および可撓性を有したシリコン材からなる保護チューブ25によって覆われることになる。しかも、該保護チューブ25は、隔壁18を貫通してポンプ室12に至るまで、即ちエンジン室10外まで延設されていると共に、該保護チューブ25のエンジン室10内側端部は密閉される一方、エンジン室10外側端部は開口25aしている。
【0012】
この結果、油圧ホース21のエンジン室10内配設部位は、保護チューブ25によって保護されることになって、機体振動等により油圧ホース21が周辺機器に接触して傷付いたり摩耗したりしてしまうことを防止できると共に、経年劣化等によって油圧ホース21にひび割れ等が発生し、これにより油圧ホース21から油が漏れるようなことがあったとしても、該漏れた油がエンジン室10内に飛散してしまうことを防止できる。しかも、油圧ホース21から漏れた油は、保護チューブ25内を伝わってエンジン室10外に導かれ、該保護チューブ25のエンジン室10外側端部の開口25aから排出されることになり、而して、高温領域であるエンジン室10内に油が飛散することを確実に防止できることになって、信頼性の向上に大きく貢献できる。
【0013】
さらに、油圧ホース21は、保護チューブ25のエンジン室10内側端部が高位となり、エンジン室10外側端部が低位となるようにルーティングされているため、油圧ホース21から保護チューブ25内に漏れた油は、自然にエンジン室10外に導かれてエンジン室10外側端部の開口25aから排出されることになる。尚、このようなルーティングが難しい場合であっても、保護チューブ25のエンジン室10内側端部は密閉されているため、保護チューブ25内の油がエンジン室10内に漏出してしまう惧れは確実に回避できる。
【0014】
尚、クーリング用ポンプ19には、前記油圧ホース21以外にも、クーリング用ポンプ19からファンモータ20に供給される油の流路となる油圧ホース26と、クーリング用ポンプ19から排出されるドレンの流路となる油圧ホース27とが接続されている。そして、これら油圧ホース26、27のエンジン室10内配設部位も、各々のホース外径に合った保護チューブ28、29によって覆われていると共に、該保護チューブ28、29はエンジン室10外まで延設されていて、前述した保護チューブ25と同様の作用効果を奏している。
【0015】
また、本発明は上記実施の形態に限定されないことは勿論であって、エンジン室内に配される油圧機器としては、クーリング用ポンプ以外の油圧機器であっても良く、また、本実施の形態では建設機械として油圧ショベルを例示したが、ホイールローダ等の他の建設機械にも適用できることは、勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】油圧ショベルの一部切欠き平面図である。
【図2】エンジン室およびその周辺部分の平面図である。
【図3】油圧ホースのルーティングを示す図である。
【図4】油圧ホースのルーティングを示す図である。
【図5】(A)は油圧ホースを保護チューブで覆った状態を示す図、(B)は(A)の断面図である。
【符号の説明】
【0017】
10 エンジン室
18 隔壁
19 油圧機器(クーリング用ポンプ)
21 油圧ホース
25 チューブ部材(保護チューブ)
28 チューブ部材(保護チューブ)
29 チューブ部材(保護チューブ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
隔壁で区隔されたエンジン室内に配設の油圧機器と、エンジン室外に配設の油圧機器とを連結する油圧ホースを設けてなる建設機械において、該油圧ホースのエンジン室内配設部位の外周側を、耐熱性を有するチューブ部材で覆うと共に、該チューブ部材は、油圧ホースから漏洩した油をエンジン室外に導くべくエンジン室外まで延設されることを特徴とする油圧ホースの保護構造。
【請求項2】
請求項1において、チューブ部材は、エンジン室内側端部が密閉される一方、エンジン室外側端部は開口していることを特徴とする油圧ホースの保護構造。
【請求項3】
請求項1または2において、油圧ホースは、チューブ部材のエンジン室内側端部が高位となり、エンジン室外側端部が低位となるようにルーティングされることを特徴とする油圧ホースの保護構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−9519(P2007−9519A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191336(P2005−191336)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000190297)新キャタピラー三菱株式会社 (1,189)
【Fターム(参考)】