説明

油圧供給装置

【課題】 エネルギー効率の良い制御を油圧回路のみで行うことができる油圧供給装置を提供する。
【解決手段】 傾転角を制御するための傾転シリンダ2を備えた可変容量ポンプ3と、この可変容量ポンプ3からアクチュエータに接続される油路7と、この油路7の途中に接続されたアキムレータ6と、上記油路7の途中から分岐して可変容量ポンプ3からの余剰流量をリリーフ弁8を介してタンクTに戻す戻し油路12とを供えた油圧供給装置であって、上記戻し油路12の途中に絞り10を設けると共に、この絞り10の前後の差圧が設定値より大きくなると可変容量ポンプ3の吐出流量を減らして上記設定値に戻すよう上記傾転シリンダ2を作動させる差圧弁11を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、シミュレータ等の試験装置に使用する油圧源としての油圧供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の油圧供給装置の一例として、図2に示すものを例示することができる。
【0003】
この油圧供給装置は、サーボ弁(図示なし)を使用することで、圧力一定の油圧源が要求される油圧回路であって、電動モータ20によって駆動される固定容量ポンプ21から吐出される作動油は、チェック弁23を備えた吐出通路22を通って上記サーボ弁へと導かれる。
【0004】
また、固定容量ポンプ21からの余剰流量は、リリーフ弁24を介してサーボ弁からの戻り通路25に流れると共に、タンクTに戻される。
【0005】
なお、上記吐出通路22にはアキュムレータ26が設けられており、サーボ弁が高速作動する際の流量変化に充分対応できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の油圧供給装置においては、サーボ弁で消費される流量に関係なく、上記固定容量ポンプ21が常に固定流量を吐出するので、常にこの固定流量と圧力を掛け合わせた動力を要する。
【0007】
したがって、この構成の油圧供給装置では、サーボ弁で消費される流量に関係なく上記した動力を常に要することになって、非常にエネルギー効率が悪いという問題点がある。
【0008】
そこでこのような不具合を解決する従来の油圧供給装置に関する先行技術文献を調査し、特許庁ホームページで公報を検索したが、発見することはできなかった。
【0009】
そこで、本発明者は上記の不具合を解決する技術を研究し、本発明を完成した。
【0010】
即ち、本発明の目的は、エネルギー効率の良い制御を油圧回路のみで行うことができる油圧供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の油圧供給装置は、傾転角を制御するための傾転シリンダを備えた可変容量ポンプと、この可変容量ポンプからアクチュエータに接続される油路と、この油路の途中に接続されたアキムレータと、上記油路の途中から分岐して可変容量ポンプからの余剰流量をリリーフ弁を介してタンクに戻す戻し油路とを供えた油圧供給装置であって、上記戻し油路の途中に絞りを設けると共に、この絞りの前後の差圧が設定値より大きくなると可変容量ポンプの吐出流量を減らして上記設定値に戻すよう上記傾転シリンダを作動させる差圧弁を設けている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、戻り油路に絞りを設けると共に、この絞りの前後の差圧で切り換わる差圧弁の作動油を用いて傾転シリンダを作動させるようにしたので、例えばアクチュエータとしてのサーボ弁への負荷流量が小さい場合には、傾転シリンダの傾転角を小さくして可変容量ポンプの吐出流量を下げると共に、アクチュエータへの負荷流量が大きくなると、傾転シリンダの傾転角を大きくして可変容量ポンプの吐出流量を上げるで、常に余剰流量を小流量で一定としたポンプ吐出制御ができて油圧源として大変効率が良い。
【0013】
また、リリーフ弁圧力に絞りの差圧を加えた圧力が一定圧力となるので、例えば、アクチュエータとしてサーボ弁を使用する環境設定が可能となる。
【0014】
さらには、油路の途中にアキュムレータを設けたので、可変容量ポンプから吐出する作動油の一部を常に蓄えることで、上記絞りと相俟って、例えば、アクチュエータが高速のサーボ弁である場合のように、高速で要求される流量変化にも充分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態を示す油圧供給装置の油圧回路図である。
【図2】従来例を示す油圧供給装置の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の油圧供給装置を、サーボ弁を使用した加振機の油圧源に具体化した形態を図に基づいて説明する。
【0017】
図1に示すように、電動機1により回転駆動されると共に、ポンプの傾転角を制御するための傾転シリンダ2を備えた可変容量ポンプ3と、この可変容量ポンプ3を上記サーボ弁に接続する油路7と、この油路7の途中に接続されたアキムレータ6と、上記油路7の途中から分岐して可変容量ポンプ3からの余剰流量をリリーフ弁8を介してタンクTに戻す戻し油路12とを供えた油圧供給装置であって、上記戻し油路12の途中に絞り10を設けると共に、この絞り10の前後の差圧が設定値より大きくなると可変容量ポンプ3の吐出流量を減らして上記設定値に戻すよう上記傾転シリンダ2を作動させる差圧弁11を設けている。
【0018】
この油圧供給装置は、サーボ弁を使用することで、圧力一定の油圧源が要求される油圧回路であって、可変容量ポンプ3から吐出される作動油は、チェック弁13を備えた通路12を通って上記サーボ弁へと導かれる。
【0019】
以下、さらに詳述すると、上記傾転シリンダ2はそのピストンロッド2aの伸縮動作によって可変容量ポンプ3の傾転角を変えて吐出流量を制御するようになっており、ピストン側室2bには上記差圧弁11からの作動油が供給されると共に、ロッド側室にはコイルスプリング2dが配置されている。
【0020】
上記コイルスプリング2dは上記ピストン側室2bに作動油が供給されていない状態では、その附勢力によって可変容量ポンプ3の吐出量が、最大値となるよう設定されている。
【0021】
差圧弁11はスプリング11aにより図1に示す初期状態に配置される3ポート2位置切換弁であって、絞り10前後の差圧が上記設定値を超えるとスプリング11aの弾性力に抗して切り換り、絞り10上流側の作動油を傾転シリンダ2の上記ピストン側室2bに導き、上記コイルスプリング2dの附勢力に抗してピストンロッド2aを伸張方向(図1における左側を示す)へ作動させ、上記可変容量ポンプ3の傾転角を小さくして吐出流量を下げるようになっている。
【0022】
なお、上記アキュムレータ6には、可変容量ポンプ3から吐出する作動油の一部が常に蓄えられるようになっており、上記絞り10と相俟って高速のサーボ弁が要求する流量変化に充分に対応できるようになっている。
【0023】
上記のように構成された油圧供給装置の作用を説明する。
【0024】
上記電動機1を回転駆動させ、可変容量ポンプ3から作動油を吐出させることで、上記サーボ弁に作動油を供給して加振動作を行う。
【0025】
このとき、上記サーボ弁の負荷が小さくて殆ど流量を必要としない場合には、可変容量ポンプ3からの吐出量が殆ど余剰流量となる。この余剰流量が戻し油路12に流れ、上記絞り10において、差圧が所定値を超え、スプリング11aの附勢力以上の差圧になってバルブが切り換り、絞り10上流側の作動油を傾転シリンダ2の上記ピストン側室2bに導き、コイルスプリング2dの附勢力に抗してピストンロッド2aを伸張方向へ作動させ、上記可変容量ポンプ3の傾転角を小さくして吐出流量を下げる。
【0026】
この状態で、上記サーボ弁の負荷が大きくなって多量の作動油流量を必要とする場合には、可変容量ポンプ3による吐出流量は全てサーボ弁に流れる。すると、上記戻し油路12に流れる作動油が減少することで絞り10前後の差圧が下がり、この差圧が上記スプリング11aの附勢力より小さくなると、スプリング11aの附勢力によって上記差圧弁11は図1に示す初期状態に戻る。
【0027】
このため、傾転シリンダ2のピストン室側2bの圧力が低下してコイルスプリング2dの附勢力に応じた位置、すなわち、可変容量ポンプ3の吐出量を増加させ、余剰流量による差圧が所定値になるよう傾転角を大きくする。
【0028】
以上、詳述したように本実施例によれば、戻り油路12に絞り10を設けると共に、この絞り10の前後の差圧で切り換わる差圧弁11の作動油を用いて上記傾転シリンダ2を作動させるようにしたので、上記サーボ弁消費流量が小さい場合には、傾転シリンダ2の傾転角を小さくして可変容量ポンプ3の吐出流量を下げると共に、サーボ弁消費流量が大きくなると、傾転シリンダ2の傾転角を大きくして可変容量ポンプ3の吐出流量を上げるで、常に余剰流量を小流量で一定としたポンプ吐出制御ができて油圧源として大変効率が良い。
【0029】
また、サーボ弁への負荷が小さくて余剰流量が多い場合には、可変容量ポンプ3の流量を下げるので、その分、油圧供給装置自体の振動や騒音が低減できる。
【0030】
また、油路7の途中にアキュムレータ6を設けたので、可変容量ポンプ3から吐出する作動油の一部を常に蓄えることで、上記絞り10と相俟って高速のサーボ弁が要求する流量変化に充分に対応することができる。
【0031】
なお、本実施の形態では、絞り10をリリーフ弁8の上流側に設けたが、この構造に限定されるものではなく、リリーフ弁8の下流側に設けても良いことは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0032】
サーボ弁を使用した加振機等の油圧源への具現化に向く。
【符号の説明】
【0033】
2 傾転シリンダ
2b ピストン側室
2d コイルスプリング
3 可変容量ポンプ
6 アキュムレータ
7 油路
8 リリーフ弁
10 絞り
11 差圧弁
12 戻し油路
T タンク










【特許請求の範囲】
【請求項1】
傾転角を制御するための傾転シリンダを備えた可変容量ポンプと、この可変容量ポンプからアクチュエータに接続される油路と、この油路の途中に接続されたアキムレータと、上記油路の途中から分岐して可変容量ポンプからの余剰流量をリリーフ弁を介してタンクに戻す戻し油路とを供えた油圧供給装置であって、上記戻し油路の途中に絞りを設けると共に、この絞りの前後の差圧が設定値より大きくなると可変容量ポンプの吐出流量を減らして上記設定値に戻すよう上記傾転シリンダを作動させる差圧弁を設けたことを特徴とする油圧供給装置。
【請求項2】
上記傾転シリンダは、ロッド室側にコイルスプリングが配置されると共に、ピストン室に上記差圧弁を介して絞り上流側の作動油が供給されることを特徴とする請求項1に記載の油圧供給装置。
【請求項3】
上記絞りは上記リリーフ弁の上流側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の油圧供給装置。

【図1】
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【図2】
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