説明

油性化粧料

【課題】 トリオルガノシリル基を有するプルランの配合により、耐水性・耐油性に非常に優れた化粧料を作成することが出来るが、化粧塗膜が強固で、柔軟性に欠けていた。また塗膜が硬いため伸縮による、ひび割れや剥離が見られていた。
【解決手段】 柔軟な化粧塗膜を作るアシル化多糖を併用することで、耐水・耐油性に優れ維持することができ、柔軟性を有すると共に、伸縮に対し耐性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリオルガノシリル基を有するプルランと、アシル化多糖類を併用することを特徴とする油性化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
油性化粧料は、耐水性が良好なため、化粧持ちが要求される眉目化粧料、ファンデーション、紫外線防御用化粧料に用いられる。しかし、耐油性(耐皮脂性)に劣るため様々な工夫がなされてきた。
【0003】
トリオルガノシリル基を有するプルランを配合する化粧料は、耐水性や耐油性に優れた被膜を形成し、化粧持続性を向上させることが開示されている。
【0004】
トリオルガノシリル基を側鎖に置換基として40重量%以上有する非イオン性天然多糖類およびその誘導体から選ばれる少なくとも1種のポリマーを成分として含有することで化粧持ちを向上させたメイクアップ化粧料(特許文献1参照)、トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上と、揮発性油剤を含有することを特徴とする化粧崩れ防止用オーバーコート剤(特許文献2参照)、トリオルガノシリル基を有する非イオン性多糖類及びその誘導体の1種又は2種以上、疎水性無水ケイ酸、有機変性ベントナイト、合成ケイ酸ナトリウム・マグネシウムから選ばれる1種又は2種以上、化粧用粉体、及び揮発性油剤を含有する眉目化粧料(特許文献3参照)等も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平7−53650号公報
【特許文献2】特開2007−320905号公報
【特許文献3】特開2007−320907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トリオルガノシリル基を有するプルランは、耐水性・耐油性が非常に優れており、油性化粧料に配合されている。しかしながら、化粧塗膜が強固で、柔軟性に欠けていた。また該塗膜が硬いため眉目の伸縮による、ひび割れや剥離が見られるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
柔軟な化粧塗膜を作るアシル化多糖を併用することで、耐水・耐油性に優れ持続することができ、柔軟性を有すると共に、伸縮に対し耐性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、トリオルガノシリル基を有するプルランとアシル化多糖を併用することで、化粧持ちが良く、伸縮性のある耐水性及び耐油性に優れた皮膜を形成することができる油性化粧料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は画像処理ソフトによって、実施例1および比較例1の伸縮前を2階調化したものを示した図である。
【図2】図2は画像処理ソフトによって、実施例1および比較例1の伸縮後を2階調化したものを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で用いるトリオルガノシリル基を有するプルランのトリオルガノシリル基は、特に限定されず、一般式(1)で示されるトリオルガノシリル基を側鎖に置換基として40重量%以上含有する非イオン性の多糖類及びその誘導体である。トリオルガノシリル基の含有量が40重量%未満のものでは、他の油剤との相溶性が低く、また耐水性等の低下も認められ、好ましくない。かかるトリオルガノシリル基を含有する非イオン性多糖類及びその誘導体は、すでに開示されている(特公平7−53650)。
【0011】
【化1】

[式中、R、R、及びRは炭素数1〜6の炭化水素基であり、同一でも異なっていてもよい]
【0012】
本発明で用いるトリオルガノシリル基を有するプルランのトリオルガノシリル基は、特に限定されず、炭化水素基として炭素原子数1〜6のアルキル基及び/又はアルケニル基を有するものが好ましい。かかる炭化水素基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの環状アルキル基、ビニル、アリル、イソプロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニルなどの直鎖もしくは分岐鎖のアルケニル基が挙げられる。但し、これら炭化水素基の炭素原子数が多くなるに従い、炭化水素基が嵩高いものとなって非イオン性多糖類中に有効に導入することが困難になるため、上記例示のアルキル基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチルが良い。
【0013】
上記のような炭化水素基を有する一般式(1)のトリオルガノシリル基としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基、シクロヘキシルジメチルシリル基などを挙げることができる。
【0014】
本発明で用いるアシル化多糖は、特に限定されず、例えば、アシル部分は、炭素数2〜23の直鎖または分岐状のアシル基が挙げられ、より具体的には、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレリル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、デカノイル、エイコサノイル、ラウロイル、パルミトイル、ミリストイル、ステアロイル、オレオイル等が挙げられ、好ましくは、ミリストイルが良い。多糖部分は、グアーガム、ローカストビンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガガントガム、ペクチン、マンナン、デンプン、タマリンドガム、寒天、プルラン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、β−グルカン等を用いることができるが、好ましくは、プルランが良い。
【0015】
本発明で用いるトリオルガノシリル基を有するプルランの配合量は、油性化粧料全量に対して、0.1〜20.0質量%が好ましく、0.5〜20.0質量%がより好ましく、0.5〜10.0質量%が最も好ましい。20質量%を超えて配合すると溶媒への溶解性が困難になる。0.1%質量%未満の配合では良好な皮膜の形成が困難になる。
【0016】
本発明で用いるアシル化多糖の配合量は、油性化粧料全量に対して、0.1〜10.0質量%が好ましく、0.5〜10.0質量%がより好ましく、0.5〜5.0質量%が最も好ましい。0.1質量%未満では塗布膜の柔軟化効果が得にくく、10質量%を超えて配合すると塗布膜が厚ぼったくなりすぎる可能性がある。
【0017】
本発明の油性化粧料は、ファンデーション、紫外線防御剤、口紅、眉目(アイライナー、マスカラ)等に用いることができるが、眉目化粧料が好ましい。
【0018】
本発明の油性化粧料には、前述の必須となる成分以外に、必要に応じて、一般的な化粧料や医薬部外品に配合される他の成分、例えば油脂、界面活性剤、保湿剤、無機粉体、有機粉体、紫外線吸収剤、pH調整剤、キレート剤、薬剤、香料、樹脂、その他アルコール類などを、本発明品の効果を損なわない範囲で、適宜必要に応じて配合することができる。
【実施例】
【0019】
次に本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明の油性化粧料は、これらに限定されるものではない。
【0020】
2種類(実施例1および比較例1)の油性化粧料を調製した。
【0021】
[実施例1]油性アイライナー
(1)軽質流動イソパラフィン 56.6(質量%)
(2)シリル化プルラン 4.0
(3)アシル化多糖 1.0
(4)ナイロン末 3.0
(5)ポリエチレン末 8.0
(6)無水ケイ酸 2.5
(7)無水エタノール 1.2
(8)粘土鉱物 1.2
(9)黒酸化鉄 22.5
製法:(2)を(1)の一部に溶解する。(3)〜(5)を(1)の残部に溶解して添加し混合、均一化する。(6)〜(9)を添加してホモミキサーにて分散させる。
【0022】
[比較例1]油性アイライナー
(1)軽質流動イソパラフィン 56.6(質量%)
(2)シリル化プルラン 5.0
(3)ナイロン末 3.0
(4)ポリエチレン末 8.0
(5)無水ケイ酸 2.5
(6)無水エタノール 1.2
(7)粘土鉱物 1.2
(8)黒酸化鉄 22.5
製法:(2)を(1)の一部に溶解する。(3)、(4)を(1)の残部に溶解して添加し混合、均一化する。(5)〜(8)を添加してホモミキサーにて分散させる。
【0023】
<剥離度の評価方法>
食品用フィルム(サランラップ(登録商標))上に目視で同等レベルになるように、アイライナーを塗布する。塗布したフィルムの両端を持ち、50回伸縮させた後、塗膜の剥がれを写真で撮影する。その写真をPhotoshop(登録商標)で画像処理を行なった。画像を2階調化し(図1および図2)、処理前後での塗膜部分のピクセル数を記録したものを以下の表1に示す。
【0024】
【表1】

【0025】
表1の結果から、以下の式を用いて剥離度を求めた。その結果を表2に示す。

剥離度(%)=(処理前のピクセル数−処理後のピクセル数)/処理前のピクセル数×100
【0026】
<柔軟性の評価方法>
上記実施例1および比較例1について、20〜40歳代の化粧品の官能評価を専門に行うパネル3名を用いて使用試験を行った。使用試験は、実施例1および比較例1のそれぞれをブラインドにて使用させ、[柔軟性]、[化粧持ち(耐油性)]、[化粧持ち(耐水性)]について官能評価を行った。その結果を表2に示す。
【0027】
評価基準は、以下に示すとおりとした。
◎:優
○:良
△:可
×:不可
【0028】
【表2】

【0029】
[実施例2] 油性マスカラ
(1)軽質流動イソパラフィン 63.5(質量%)
(2)シリル化プルラン 3.0
(3)アシル化多糖 2.0
(4)ポリエチレン末 3.0
(5)トリメチルシロキシケイ酸 3.0
(6)パルミチン酸デキストリン 7.0
(7)合成炭化水素ワックス 14.0
(8)黒酸化鉄 4.5
製法:(2)を(1)の一部に溶解する。(3)、(4)を(1)の残部に溶解して添加し混合、均一化する。(5)〜(8)を添加してホモミキサーにて分散させる。
【0030】
以上の結果から、トリオルガノシリル基を有するプルランとアシル化多糖を併用するアイライナーおよびマスカラにおいて、化粧持ちが良く、伸縮性のある耐水性及び耐油性に優れた皮膜を形成する良好な結果を示すことがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
トリオルガノシリル基を有するプルランとアシル化多糖を併用することで、化粧持ちが良く、伸縮性のある耐水性及び耐油性に優れた皮膜を形成することができる油性化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリオルガノシリル基を有するプルランと、アシル化多糖類を併用することを特徴とする油性化粧料。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−126811(P2011−126811A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286035(P2009−286035)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000135324)株式会社ノエビア (258)
【Fターム(参考)】