説明

油性磁性流体の調製方法

【課題】油性磁性流体の調整方法の提供。
【解決手段】油性磁性流体の調製方法において、鉄イオン溶液にカルボキシル化合物を混合し、カルボキシル基含有磁性酸化鉄を生成し、カルボキシル化合物に有機除去剤を混合し、カルボキシル基含有有機除去剤溶液を生成し、カルボキシル基含有磁性酸化鉄にカルボキシル基含有有機除去剤溶液を混合し、油性物質を含む有機除去剤溶液を加えて油性磁性流体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油性磁性流体の調製方法に関するもので、特に流体内の有機物質、油性物質及び金属イオンを吸い付け、外からの磁場を加えることにより、流体中から分離して流体を処理もしくは浄化する方法に用いる、油性磁性流体の調整方法である。
【背景技術】
【0002】
磁性物質は過去に録音テープ、ディスク、録画テープ等の磁気記憶材の調製、及び印刷インクやペンキ、塗料等の建材、磁気スイッチ、回転軸等の機械用途に広く使用されている。最近では調製方法が留まることなく研究され、多くの新しい応用領域で発展している。例として、薬品、タンパク質、DNAの純化等の生物医学応用及び環境廃棄物の処理等がある。例として、特許文献1である極性の炭水化物溶液内に磁性顆粒を混合し、1000nmより小さい粒径の磁性物質を精製し、細胞の分離、純化に応用している。この種の磁性分離の技術は、処理したい物質の特性を二種に分けている。(1)外から加えた磁場によって、本体が具える磁性物質を分離する。(2)磁性を具えない物質を先ず磁性材料を結合して一つにして、その後外から磁場を加えて分離する。そのうち、非磁性物質を有効に磁性材と結合させる為には、異なる磁性材の種類と調製方法が大切な鍵となる。
【0003】
磁性物質に関して、対象及び必要が異なれば、異なる調製方法となる。調製方法でよく見かけるのが、(1)機械研磨方式で、特許文献2は有機担体を利用している。例としてグリコール(glycol)、エステル(ester) 、磁性粒子及びプラスイオン界面活性剤等の物質を機械で研磨して磁性流体を精製し、計算機磁気盤設計の電導性及び密封効果を改善している。(2)酸化反応方式で、特許文献3は、第一鉄溶液(ferrous solution)とリン酸塩化合物、例としてオルトリン酸ナトリウム(sodium orthophosphate) 及びアルカリ性水酸化合物を使用して水酸化鉄IIを反応生成し、続いて酸素を通して酸化反応させ、鉄酸化磁性粉体を生成する。(3)化学共沈法で、特許文献4は、磁性粉末、例としてマンガン亜鉛及びニッケル亜鉛、鉄を含む金属酸化物と、金、銀、銅、アルミニウム、石墨等導電性粒子を混合し、磁性流体を生成して電磁バルブスイッチに応用する。磁性粒子自身は相互に引き合い集まる性質があり、そのため調製過程で顆粒表面処理を行わなければならない。顆粒間を有効に離し、直径の小さい粉体にすると、溶剤内で分散しやすく流体状態になる。同時に調製が完了した油性磁性流体は、親油性もしくは親水性を具えているため、表面処理の方法はそれぞれ異なる。
【0004】
油性磁性流体の調製方法は、特許文献5に示すとおり、低沸点の有機溶剤を使用して親水基の有機分散剤内に加える。磁性顆粒をその中に分散させ、続いて蒸発方式で低沸点有機溶剤を除去する。このようにして油性磁性流体を生成し、真空儀器の密封設計に応用する。また、特許文献6は、αーFe23 粉体、油(Ampro Type II oil)と界面活性剤(polyolefin anhydride)を混合して泥状にし、続いて研磨方式で油性磁性流体を生成する。磁性顆粒を直接機械で研磨することにより、油と界面活性剤が磁性顆粒表面に付着し、相互に結合力が小さくなり、表面の結合物質が落ちやすくなり、使用効果に影響を及ぼす。
【0005】
磁性流体は一般に、磁性記憶材、機械回転軸設計などによく使用される。しかし、水中に浮かぶ油もしくは微量の有機成分の除去及び無機廃水中の金属イオンの処理に関しては余り応用されておらず、有機成分を含む廃水は通常、熱処理もしくは化学酸化破壊方式を採用する。しかし、コストがかかり、化学試薬を添加しなければならないので、二次廃水の問題がある。金属イオンを含む廃水は、従来薬を加えて沈殿させる方式の他に、薄膜分離等物理処理方式があり、化学試薬を加えなくてもよいのだが、設備コストが高く、技術性も高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4, 687, 748号(1978)明細書
【特許文献2】米国特許第4, 604, 222号(1986)明細書
【特許文献3】米国特許第6, 140, 001号(2000)明細書
【特許文献4】米国特許第6, 743, 371号(2004)明細書
【特許文献5】米国特許第5, 124, 060号(1992)明細書
【特許文献6】米国特許第6, 068, 785号(2000)明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、油性磁性流体の調製方法を提供し、それは化合物の作用基の架橋作用によって化学反応し、磁性物質がより有効に油性物質と結合し、安定した油性磁性流体を形成できるものとする。本発明により調製された油性磁性流体に、更に外から磁場作用を加え、油性磁性流体に流体中の有機物質もしくは金属イオンを吸い付けさせた後、流体から分離することで、廃水を処理もしくは浄化することができる。
【0008】
本発明の次の目的は、油性磁性流体の調製方法を提供し、その油性磁性流体は磁性及び流体の流動性を具え、流体(例として廃水)と混合すると、流体の有機物及び金属イオンを吸いつけて結合し、水に溶けない。廃水処理の過程で、促進剤、酸化剤及びその他如何なる化学薬品を添加する必要がなく、処理費用を節約するだけでなく、促進剤の回収の必要もなく、磁力作用を利用して有機物と金属イオンを吸いつけた油性磁性流体と水を相互に分離し、如何なる油性物質が残留することなく、且つ操作も非常に簡単である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ジアミノ化合物もしくは有機除去剤の架橋剤を含む。一端に油性物質を有し、別一端にはカルボキシル基の界面活性剤を有する。この端は別に界面活性剤のナノ磁気金属酸化合物と結合し、油性物質は磁性を具えた油性磁性流体である。この他、本発明は、水中に浮遊する油及び有機成分に対して無機金属イオン廃水処理に応用でき、この油性磁性流体は、簡単に磁場を制御して、水中の有機及び金属成分を分離、回収処理することを最も主要な特徴とする。
【0010】
油性磁性流体に親油性を具えた界面と磁性酸化粉体の間に非常に強い結合力を持たせるため、鉄酸化金属酸化物を調製する過程に於いて、カルボキシル基作用基を含む界面活性剤を加え、その二者を同時に反応させて表面にカルボキシル基作用基を含む鉄酸化磁性物質を生成し、架け橋反応と別の調製完了の油性物質で油性磁性流体を生成する。磁性物質とその化合物間に化学反応が発生するため、強い結合力が発生し、安定性も高い。
【0011】
請求項1の発明は、油性磁性流体の調製方法において、主なステップは下述を含み、
鉄イオン溶液にカルボキシル化合物を混合し、カルボキシル基含有磁性酸化鉄を生成し、
カルボキシル化合物に有機除去剤を混合し、カルボキシル基含有有機除去剤溶液を生成し、
カルボキシル基含有磁性酸化鉄にカルボキシル基含有有機除去剤溶液を混合し、油性物質を含む有機除去剤溶液を加えて油性磁性流体を得ることを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
請求項2の発明は、請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記鉄イオン溶液は、硫酸第一鉄であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
請求項3の発明は、請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記カルボキシル化合物は、ウンデカン酸(undecenoic acid) 、オレイン酸(oleic acid)、ラウリン酸(lauric acid) もしくはカプロン酸(caproic acid)の中から一つを選ぶことを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
請求項4の発明は、請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記有機除去剤は、リン酸トリブチル(Tributyl Phosphate,TBP)であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
請求項5の発明は、請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記油性物質は、灯油(Kerosene)であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
請求項6の発明は、請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記油性物質を含む有機除去剤溶液は、その比例が30%の有機除去剤溶液であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
請求項7の発明は、請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記鉄イオン溶液は、カルボキシル化合物を混合してカルボキシル基含有磁性酸化鉄を得るステップには下述を含み、更に一歩進めたステップには水酸化ナトリウムを加えることを特徴とする油性磁性流体の調製方法としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調整方法により得られた油性磁性流体は、水中に浮遊する油、有機物及び金属イオンと反応させ、外から磁場作用を加えて分離し、如何なる化学試薬を加える必要がなく、設備も簡単で、容易に操作できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施例で、有機除去剤を含む油性磁性流体の調製フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例の有機除去剤を含む油性磁性流体の調製フローチャートである。図に示すとおり、ステップS20は、鉄イオン溶液を取り出してカルボキシル化合物を混合し、カルボキシル基含有磁性酸化鉄を得る。ステップS22は、カルボキシル化合物を取り出し、有機除去剤を含む有機除去剤溶液を得る。ステップS24は、そのカルボキシル基含有磁性酸化鉄にカルボキシル基含有有機除去剤溶液を混合し、次に油性物質を含む有機除去剤溶液を加えて油性磁性流体を得る。
【0015】
実施例の説明では、硫酸鉄2.78グラムを100ミリリットル純水中に溶かし、85℃まで加熱する。1ミリリットルのウンデカン酸を加えて攪拌加熱し、85℃で蒸気の蒸発・凝縮サイクルが起こり、続いて10%濃度の水酸化ナトリウム溶液10ミリリットルを一滴ずつ加え、85℃で1時間加熱して蒸発・凝縮サイクルを行い、磁気吸取り傾倒法で上層液を移し、アセトン(acetone) で数回洗浄し、蒸発・凝縮サイクル装置に移してウンデカン酸1ミリリットルをすでに混ぜた有機除去剤のリン酸トリブチル(TBP)10ミリリットルを加え、続けて1時間加熱し、磁気吸取り傾倒法で上層液を除去し、アセトン(acetone) で洗浄後、30%濃度のTBP灯油溶液で更に数回洗浄し、最後に30%濃度のTBP灯油液内で分散すると、それが油性磁性流体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性磁性流体の調製方法において、主なステップは下述を含み、
鉄イオン溶液にカルボキシル化合物を混合し、カルボキシル基含有磁性酸化鉄を生成し、
カルボキシル化合物に有機除去剤を混合し、カルボキシル基含有有機除去剤溶液を生成し、
カルボキシル基含有磁性酸化鉄にカルボキシル基含有有機除去剤溶液を混合し、油性物質を含む有機除去剤溶液を加えて油性磁性流体を得ることを特徴とする油性磁性流体の調製方法。
【請求項2】
請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記鉄イオン溶液は、硫酸第一鉄であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法。
【請求項3】
請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記カルボキシル化合物は、ウンデカン酸(undecenoic acid) 、オレイン酸(oleic acid)、ラウリン酸(lauric acid) もしくはカプロン酸(caproic acid)の中から一つを選ぶことを特徴とする油性磁性流体の調製方法。
【請求項4】
請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記有機除去剤は、リン酸トリブチル(Tributyl Phosphate,TBP)であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法。
【請求項5】
請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記油性物質は、灯油(Kerosene)であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法。
【請求項6】
請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記油性物質を含む有機除去剤溶液は、その比例が30%の有機除去剤溶液であることを特徴とする油性磁性流体の調製方法。
【請求項7】
請求項1記載の油性磁性流体の調製方法において、前記鉄イオン溶液は、カルボキシル化合物を混合してカルボキシル基含有磁性酸化鉄を得るステップには下述を含み、更に一歩進めたステップには水酸化ナトリウムを加えることを特徴とする油性磁性流体の調製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−188426(P2009−188426A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−121836(P2009−121836)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【分割の表示】特願2005−358158(P2005−358158)の分割
【原出願日】平成17年12月12日(2005.12.12)
【出願人】(599171866)行政院原子能委員會核能研究所 (37)
【Fターム(参考)】