説明

油浸絶縁ケーブルの放射線照射による診断方法

【課題】 油浸絶縁ケーブルへ放射線を照射して撮影することによる内部診断を活線状態で行えるようにすること。
【解決手段】 放射線照射前に活線状態で採油を行い(ステップS1)、接続部へ部分放電を検出するための超音波センサ、クランププローブ等のセンサを取り付ける(ステップS2)。ついで、放射線を照射し写真撮影を行なう(ステップS3)。その際センサの出力変化を調べる(ステップS4)。センサの信号に変化がない場合には、放射線照射による撮影を継続し(ステップS7)、センサの信号に変化が出た時は、照射を一旦やめて、信号が元に戻るのを待って再び照射する(ステップS5)。センサの出力が元に戻らない場合は放射線診断を止める。放射線診断が終わったら採油を行い(ステップS8)、撮影結果と採油のガス分析結果により中間接続部の状況を判断する(ステップS9)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、OF(Oil filled)ケーブル、POF(Pipe type Oil filled)ケーブル等の油浸絶縁ケーブル及びその付属品に対して、放射線を照射して内部診断を行う診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電力ケーブルおよび接続部の欠陥を検出する方法として、X線、γ線等の放射線を診断対象線路に照射してその放射線による内部観察写真を撮影し、その写真の解読により内部の欠陥を検出する技術が提案されている(例えば特許文献1参照)。
OFケーブルやPOFケーブルなどの油浸絶縁ケーブルでは、接続部の健全性を確認するため上記X線やγ線を用いた放射線による写真撮影が実施されており、例えば、コア移動(ケーブルコアと金属被との間に生ずるずれ)が発生すると推定される接続部においてアセチレンが検出された場合に放射線による写真撮影を実施している。
しかし、現状では、放射線がケーブルの絶縁性能に与える影響が不明なため、線路を停止した状態で実施している。
【特許文献1】特開2003−65975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
油浸絶縁ケーブルへの放射線照射は、ケーブル劣化の一因であるとの指摘がある。このため上述したように油浸絶縁ケーブルへの放射線による写真撮影は線路を停止した状態で実施している。
しかし、電力の安定供給の面からは、健全性の確認を迅速に行うことができるようにしたい、またそのためのスケジュール調整を容易にしたいという要望がある。油浸絶縁ケーブルの放射線による内部診断が活線下にて実施可能になると、線路停止の必要が無く、迅速な診断が可能となり、且つ診断スケジュールの調整が容易となる。さらには、運用状態でのケーブル内部変動が確認できるなど、大きな効果が期待できる。
このためには、油浸絶縁ケーブルの健全性確認を活線状態で行うことができるようにすることが望まれている。
本発明は上述した事情に鑑みなされたものであって、油浸絶縁ケーブルへ放射線を照射し撮影することによる内部診断を活線状態で行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では、油浸絶縁ケーブルを放射線を照射して診断する際に、ケーブルから生じる超音波、電流などを計測しながら放射線照射し、活線状態での診断の安全性を向上させることにより、上記の課題を解決を図った。
本発明を完成するに当たって、活線下での放射線照射がケーブルへどのような影響を与えるかを調べるため、後述するようにモデルケーブルと実機のケーブルを試験対象としての絶縁性能に与える影響を調査した。
その結果、放射線を照射して診断する際に、ケーブルから生じる部分放電に起因する音波、電気信号(電圧、電流など)を計測し部分放電量を測定しながら放射線照射すれば、活線状態での診断が可能であることが確認された。
以上の知見に基づき、本発明は以下のようにして前記課題を解決する。
(1)活線中に油浸絶縁ケーブルに放射線照射を行い、ケーブルの健全性の確認を行うに際し、照射対象のケーブルに音波センサを取り付け、その出力変化を確認しながら放射線照射を行う。音波センサとしては、超音波センサが好ましい。超音波センサを用いるときは、防食層上などに密着させるようにすることが重要である。
(2)活線中に油浸絶縁ケーブルに放射線照射を行い、ケーブルの健全性の確認を行うに際して、照射対象のケーブルに、電気信号を検出する検出手段を取り付け、該検出手段で検出された前記電気信号の周波数特性の変化を確認しながら放射線照射を行う。
(3)(2)において、検出手段により照射対象のケーブルに設けられた接地線を流れる電流を検出する。
(4)(2)において、照射対象のケーブルが絶縁接続部を有するものである場合に、検出手段が、前記絶縁接続部の絶縁筒を挟んで両側に取り付けた箔電極であり、この箔電極で検出された電圧信号の周波数特性の変化を確認する。この方法は、ケーブルの接続部が絶縁接続部(IJ接続部)である場合において好適である。
なお、箔電極で検出された電圧信号の出力変化を監視しても良く、周波数特性の変化と出力変化とを合わせて監視しても良い。
以上の(1)〜(4)において、放射線照射の前に、油浸絶縁ケーブルから油を採取し、放射線による診断を行った後、放射線照射を行ったケーブルから再度油を採取して、ガス分析を行い、ガス分析結果の変化を確認すると、さらに好ましい。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては以下の効果を得ることができる。
(1)活線下での放射線照射による油浸絶縁ケーブルへの診断が可能になったので、放射線を用いた検査を行うときに線路停止の必要が無く、迅速な診断が可能となった。また、診断スケジュールの調整が容易となり、さらには運用状態でのケーブル内部の確認も可能となった。
(2)音波センサの出力変化や、ケーブルからの出力の周波数特性の変化を確認しながら放射線照射を行うことにより、活線中での放射線照射によるケーブルの破壊を防ぐことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明を完成するための予備的な検討として、以下に説明するようにモデルケーブルと実機のケーブルを試験対象として、放射線がケーブルの絶縁性能に与える影響とその長期性能を調査した。
(1)モデルケーブルによる試験
図1のように欠陥入りのモデルケーブル1を使用し、長期課電を継続しながら、放射線を照射して、その影響調査を行った。
モデルケーブルを図1に示し、測定回路を図2に示す。
モデルケーブル1は、図1(a)に示すように電極(銅棒)1a、カーボン紙2層の内部導電層1b、絶縁紙からなる厚さ約1mmの絶縁層1c、カーボン紙2層の外部導電層1d、編組線からなる遮蔽層1eとで構成され、両側にシールド電極1fを設けたものであり、長さ500mm、有効長180mmである。
図1(a)のA部分の拡大図を同図(b)に示す。同図に示すように内部導電層1b、外部導電層1dは、1/2ラップ、2層ギャップ巻きであり、絶縁層1cはクラフト紙の1枚ものを8回巻いたものである。この部分に同図に示すようにφ5mmの模擬欠陥を設けた。
【0007】
測定回路は図2に示すように構成した。
課電容器2内に入れたモデルケーブル1の電極1aを高圧電源4に接続し、課電容器2に、部分放電により発生する放電音を取得するための超音波センサ11(以下AEセンサという)を取り付けた。AEセンサ11にはNF回路設計ブロック社のAE−503DTを使用した。
また、モデルケーブル1の接地側に部分放電検出器12aを取り付け、また、高圧電源2に標準コンデンサ3を接続し、標準コンデンサ3の接地側に、部分放電検出器12bを取り付け、検出器12a,12bの出力を差動増幅器14に入力して、部分放電を検出した。
上記測定回路を用いて放射線発生装置16から放射線を照射することにより、放射線照射による部分放電への影響を調べた。その結果を表1に示す。
【0008】
【表1】

【0009】
表1に示した結果から、以下のことが分かる。
(i) 初期の部分放電状況が数10pCから数100pCの場合(ケースC〜F)は、放射線(X線)照射中に部分放電の数や電荷量が大きくなるものの、照射後にはすぐに元に戻って安定し、破壊には至らない。
(ii)初期に300pCの部分放電が出ていたケースFでは、放射線照射中は部分放電が700pCまで上昇したものの、照射後64時間経過した時には100pCに下がっていた。このケースFについて、部分放電発生状況を図3に示す。
(iii) 初期で2500pCの部分放電が生じていたケースHでは、放射線(X線)照射後1.5hで絶縁破壊しており、初期で3000pCの部分放電(ケースI)では、放射線照射中2分で破壊しており、何れも放射線照射の影響により破壊したとも考えられる。
なお、初期の部分放電が1500pCであったケースGの場合は、放射線照射をしなくても26h後に破壊している。これらのケースG〜Hから初期に、1500pC〜3000pCのレベルの部分放電がある場合はX線照射によって破壊を促進すると考えられる。 以上より、1000pC以上の部分放電が出ている場合に放射線を照射すると、破壊を促進させると予想される。
すなわち、放射線照射により絶縁破壊を起こす場合と起こさない場合があり、初期の部分放電が小であれば放射線照射しても問題は生じない。しかし、初期の部分放電が大であると放射線照射が破壊を促進させる傾向がある。このことから、部分放電データが活線下での放射線照射の可否を決定する際の参考となることが分かる。
【0010】
(2)実機接続部による試験
上記モデルケーブルを用いた試験により、活線下での放射線照射においては部分放電データが照射の可否を決定する際の参考となることがわかったので、次に実機を用い、部分放電を測定しながら、放射線照射を行なった場合と行なわない場合の破壊電圧などを調べた。
実機試験のため、154kV、800mm2 の中間接続部(IJ接続部)を2組作成した。ケーブルには昭和60年製造の撤去ケーブルを用いた。
図4に示すように接続部には人工的に欠陥を作成した。図4は中間接続部10の上半分を示したものであり、10aはスリーブ、10bはケーブル絶縁体、10cは補強絶縁層、10dは絶縁油、10eは金属被、10fは銅管および防食層であり、欠陥位置は、金属被10eの端部に設けられたセミストップと、補強絶縁層10cのスロープ立ち上がりとの中間点、およびスリーブ10aの近傍にそれぞれ2箇所ずつ設けた。絶縁厚12.5mmに対して、設けた欠陥は深さ4.7mmであり、絶縁紙にパンチで穴あけることにより形成した。
【0011】
実機試験における部分放電の測定法と実際の試験の様子を図5に示す。
中間接続部10の絶縁スリット(IJスリット)が設けられた部分を覆う絶縁筒10gの両側に部分放電検出用箔電極12a,12bを接続し、この箔電極12a,12bの出力を部分放電測定器15に入力した。この部分放電の測定法は、外部半導電層および金属遮蔽層が絶縁スリットにより縁切されている絶縁接続部(IJ接続部)に適用される方法である(参考文献:特許3196671等)。この測定法は、従来、無課電状態で校正パルスを入れて校正を行ってから測定を行うことを前提としている。これに対して、本発明では、活線下で、箔電極の取り付けから放射線照射下での測定(放射線照射による出力変化の観測)まで行う点で、従来と異なる。
他方、現地でも簡便に測定できる手段として、AEセンサ11を接続部10の防食層上に取り付けた。防食層上にAEセンサを取り付けるときは、工場で成型された防食層のように表面が平滑で厚さも均一な防食層の表面に取り付けることが望ましい。また、センサの取り付け位置にはシリコングリスを塗布して、センサの表面への密着性を良くしておくことが望ましい。加えて、広帯域に周波数毎の出力を測定する検出手段として、クランププローブ13を接地線に取り付け、クランププローブ13の出力をスペクトルアナライザ13aに入力した。
AEセンサ11の取り付け位置は、中間接続部10の中心付近の防食層上に取り付けた。また、比較のために防食層を取り、銅管上にもAEセンサ11を取り付けた。(これは、活線上では行えない。実験的に行っただけである。)
クランププローブ13は、横河電気製960 21を使用した。なお、この横河電気製960 21は測定できる周波数帯域が0.1MHzまでであり、現地で使用する場合はさらに広帯域のもの(数10MHz以上)を使用したが方が良い。
図5に示す測定回路により部分放電測定を行い、放射線発生装置16から放射線を照射した場合としない場合の破壊電圧を調べた。破壊試験結果を表2に示す。
【0012】
【表2】

【0013】
No.1の中間接続部には、部分放電開始電圧が80kVであり、80〜170kVの電圧を3時間加え、その間20分間放射線を照射した。No.2の中間接続部には、部分放電開始電圧が60kVであり、60kV〜150kVの電圧を1.5時間加え、放射線を照射しなかった。これらの破壊電圧を調べたところ、No.1では200kV、No.2では230kVであった。なお、破壊電圧の測定は、放射線照射の影響を見た後、電圧を落してから再課電することによって行った。
【0014】
ついで、破壊したNo.1の中間接続部を解体した後、再接続しNo.3の中間接続部を作成した。このNo.3の中間接続部に次のように4回の課電と、放射線照射を行った。
(i) 1回目:部分放電開始電圧が80kVに対して、80kV〜160kVに順次昇圧し1.5時間課電、20分放射線照射、30分休止。
(ii)2回目:80kV〜160kVに順次昇圧し1.5時間課電、20分放射線照射、30分休止。
(iii) 3回目:80kV〜160kVに順次昇圧し1.5時間課電、20分放射線照射、30分休止。
(iv)4回目:80kV(8.2kV/mm)〜200kV(20.5kV/mm)に順次昇圧し1.5時間課電、20分放射線照射。
この後、No.3の破壊電圧を調べたところ210kVであった。
【0015】
No.3の中間接続部はNo.1の中間接続部の解体再接続であり、最も放射線履歴が多い。それにもかかわらずNo.3の中間接続部の部分放電開始電圧は80kV(8.2kV/mm)であり、破壊電圧210kV(21.6kV/mm)であり、No.1の中間接続部の破壊電圧200kV(20.5kV/mm)と同じ電圧を課電した状態で放射線を照射しても問題なかった。
No.1〜3の中間接続部の破壊電圧を比較すると、放射線履歴と破壊電圧との間の因果関係は薄いと考えられる。
【0016】
図6はNo.3の中間接続部の試験中に防食上のAEセンサから得られた出力であり、同図に示した電圧値は、課電電圧である。
課電電圧110kV、130kVでX線を3分照射した時に(Xrayと付記した部分)AEセンサ11に反応が現れている。また、課電電圧130kVでは照射後も部分放電が7〜8分持続している。
なお、防食層上のAEセンサ11の出力は銅管上のそれと比較して若干小さくなっていたが、変化を読み取るのに大きな差異は見られなかった。
図7はNo.3の試験で160kV課電時において、γ線を照射した時と照射しないときのクランププローブ13により検出された接地線を流れる電流の周波数特性であり、横軸は周波数、縦軸は出力強度である。同図のAはγ線を照射した時、Bは照射しない時を示している。
同図に示すように、放射線を照射したとき接地線に流れる電流が増加している。これにより放射線照射による変化を確認することが出来る。
図8はNo.3の中間接続部の試験で放射線照射および約1.5h課電の1サイクルが各回終了した毎の採取した油について行ったアセチレンとTCG(可燃ガス総量)の油中ガス分析結果を示しており、アセチレンとTCG共に明らかな増加傾向を確認でき、過酷な条件下であったことが分かる。
【0017】
以上の実験結果をまとめると、以下のようになる。
(i) No.3の中間接続部については、実機の破壊電圧が210kVであったのに対して、200kV課電下でのX線照射をしたが、破壊には至らず、図6に示すように、X線照射を中止すると、部分放電は安定状態になった。
(ii)活線中に放射線を照射しても破壊電圧に大きな違いはない。
すなわち、表2のNo.1とNo.3の破壊電圧は、いずれも200kV程度であり、大きな違いは見られない。
(iii) 図8に示す結果では、課電・放射線照射を1サイクル行うごとのアセチレン増加が約0.2ppmであった。
この結果から計算すると、即改修のレベルと考えられている50ppm以上になるのに、約半月の連続課電することが必要である。これは非常に過酷な条件下であり、現実にはこのようなことはありえない。
上記のように過酷な条件下で放射線照射しても、通常は破壊電圧には大きな影響は生じていない。
【0018】
今回の測定で、防食層上のAEセンサ11と接地線に取り付けたクランププローブ13と箔電極12a,12bで部分放電測定を試みた。いずれの場合も放射線照射による部分放電の変化を捉えており、活線下での放射線照射と組み合わせる事が可能であることが分かった。また、接続部に部分放電が発生していれば、放射線の照射によって、部分放電が増加して照射前後のアセチレン量が増加するデータが得られた。
以上の実機試験により、活線下での放射線照射検査は可能であることが確認された。
しかし、実機において活線下での放射線照射は可能であるが、様々な階級のケーブル、接続形態、ケーブル種がある以上、全ての条件について保障はできず、また、モデルケーブルの結果は放射線照射による有害性を否定できない。
そこで、放射線を照射して診断する際に、AEセンサ11あるいはクランププローブ13あるいは箔電極12a,12b等のセンサで部分放電を監視しながら放射線照射するのが望ましいと考えられる。
【0019】
以上の知見に基づき、本発明者らは活線下での放射線照射による油浸絶縁ケーブルの診断を完成した。これにより、放射線照射によるケーブル劣化の進行具合の判定をケーブルの破壊を回避しつつ、活線中に行うことが可能になる。
以下、本発明における活線下での放射線照射による油浸絶縁ケーブルの診断の具体的な方法について図9のフローにより説明する。
まず、放射線照射前に活線状態で採油を行う(ステップS1)。なお、活線状態で採油ができない場合はこの工程を省略する。
次に接続部へセンサを取り付ける(ステップS2)。活線下で取り付けられるセンサとして、防食層上に取り付けられ前記超音波センサか、接地線に取り付けた前記クランププローブか、IJスリットの両側に取り付けた箔電極を用いる。どちらの場合も放射線照射による部分放電の変化を捉える事が出来、活線下での放射線照射と組み合わせる事が可能である。また、センサは、1つではなく、組み合わせることで、部分放電検出への信頼性が向上する。
通常、部分放電の測定は、無課電の状態の信号を取っておき、そこからの変化を電荷量として読み取っている。今回使用したセンサである超音波センサとクランププローブと箔電極は、初期状態(部分放電が出ている状態かどうか分からない状態)と、放射線の照射による場合の比較を行なう事で、部分放電の変化を読み取ろうとするものである。これは、無課電の状態の信号を必要としないため、簡易な部分放電の診断技術にもなる。
【0020】
ついで、放射線を照射し油浸絶縁ケーブルの写真撮影を行なう(ステップS3)。活線下で放射線による写真撮影の際、センサの出力変化を調べる(ステップS4)。
センサの信号に変化がない場合には、そのまま放射線照射による撮影を継続し(ステップS6)、センサの信号に変化が出た時は、ノイズの可能性もあるので、照射を一旦やめて、信号が元に戻るのを待って、再び照射する(ステップS5→ステップS3)。
これは、課電電圧110kVでセンサが反応しても、130kV、160kVでは反応がない場合があって、破壊しなかったという実験結果があり(本明細書中ではこの実験には記載していない)、この実験結果に基づいている。
繰り返し照射によって、部分放電は放射線の影響を受けなくなる傾向がある。また、実際の現場では、振動や高調波の多い環境下が考えられるので、センサの出力に誤判定が生じる場合も考えられる。
センサの出力が元に戻らない場合は、ステップS7に行き、放射線診断を終了し、次の採油工程に移る。また、超音波センサの場合、取付具合によってセンサの出力が出ない場合も考えられるので、複数個取り付けておくと良い。クランププローブは接地線が複数あれば、その数だけ取り付ける。
【0021】
放射線照射終了後の採油を行い(ステップS8)、放射線照射による写真撮影結果と、採油のガス分析結果により中間接続部の状況を判断する(ステップS9)。
上記放射線照射の前後のガス分析結果の比較によって、部分放電の発生状況を評価できる。例えば前記表2に示した1.5hの放電開始電圧を超えた課電と約10分の放射線照射によってアセチレンが0.2ppm上昇するという試験結果から、接続部に部分放電が発生していれば、放射線の照射によって、部分放電が増加して照射前後にアセチレンの量が異なってくるはずであり、この結果から部分放電の発生を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明において試験に用いたモデルケーブルの構造を示す図である。
【図2】モデルケーブルにおける測定回路を示す図である。
【図3】モデル試験における部分放電の発生状況を示す図である。
【図4】本発明において実機試験に用いた中間接続部の欠陥位置を説明する図である。
【図5】実機試験における部分放電測定回路を示す図である。
【図6】実機試験におけるAEセンサの出力例を示す図である。
【図7】実機試験におけるクランププローブの出力例を示す図である。
【図8】実機試験における油中ガス分析結果を示す図である。
【図9】本発明の実施例における油浸絶縁ケーブルの診断手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0023】
1 モデルケーブル
10 中間接続部
11 超音波センサ(AEセンサ)
12a,12b 部分放電検出用箔電極
13 クランププローブ
14 差動増幅器
15 部分放電測定器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活線中に油浸絶縁ケーブルに放射線照射を行い、ケーブルの健全性の確認を行う診断方法であって、
照射対象のケーブルに音波センサを取り付け、その出力変化を確認しながら放射線照射を行う
ことを特徴とする油浸絶縁ケーブルの放射線照射による診断方法。
【請求項2】
活線中に油浸絶縁ケーブルに放射線照射を行い、ケーブルの健全性の確認を行う診断方法であって、
照射対象のケーブルに、電気信号を検出する検出手段を取り付け、該検出手段で検出された前記電気信号の周波数特性の変化を確認しながら放射線照射を行う
ことを特徴とする油浸絶縁ケーブルの放射線照射による診断方法。
【請求項3】
請求項2の診断方法において、
検出手段により照射対象のケーブルに設けられた接地線を流れる電流を検出する
ことを特徴とする油浸絶縁ケーブルの放射線照射による診断方法。
【請求項4】
請求項2の診断方法において、
照射対象のケーブルが絶縁接続部を有するものであり、検出手段が、前記絶縁接続部の絶縁筒を挟んで両側に取り付けた箔電極で構成され、この箔電極で検出された部分放電の周波数特性の変化を確認する
ことを特徴とする油浸絶縁ケーブルの放射線照射による診断方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−205984(P2007−205984A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−27164(P2006−27164)
【出願日】平成18年2月3日(2006.2.3)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(502308387)株式会社ビスキャス (205)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】