説明

油添白土含有ゴム組成物

【課題】ゴムの練り工程における加工特性を向上するゴム組成物の提供。さらに、これに起因する加硫速度や加硫ゴム物性の低下を伴わずゴムの特性を補強するゴム組成物の提供。
【解決手段】 ジエン系ゴム100重量部または異なる任意なジエン系ゴムの混合物100重量部に対し,必須成分として油添白土5〜200重量部が含有されるゴム組成物。および、上記組成物に対しテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)に代表されるチウラム系加硫促進剤0.1〜5.0重量部が同一組成内に含有されるゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はゴム製造分野における、油添白土の効果的な有効利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油添白土とは、鉱油系潤滑油基油の精製処理工程にて生じる鉱油含浸白土である。白土は、ケイ酸アルミニウムやケイ酸マグネシウムなどのケイ酸金属塩を含むケイ酸化合物を主成分とする天然素材であり、様々な用途に利用されている。
その中で、鉱油系潤滑油基油から不要成分を取り除くための利用法があり、この工程にて鉱油成分を含浸した白土である油添白土が副次産物として発生する。
この油添白土は、粉体のまま燃料として流用されており、またアスファルトなどへの添加物として利用(特許文献1参照)が試みられているが、有効な利用法が確立されていない。
【0003】
一方、ゴム製造分野ではこれまでシリカや焼成クレイを充填剤として使用しているが、ゴムの主成分である炭化水素系化合物とシリカや焼成クレイの主成分であるケイ酸化合物は親和性が低く、充填剤として分散させるための練り時間、練り温度などに一定の条件が必要であった。
【0004】
本発明者らは、ゴム充填剤として油添白土を利用する方法を検討した結果、油添白土中の鉱油成分がゴムとの高い親和性を示し、これによって分散性の高い充填剤として機能するのみならず、ゴムの練り工程における加工性向上とそれに付随する省エネルギーに対する加工助剤としての機能、及びゴムに対する無機補強剤としての機能も優れていることを見出した。
【0005】
しかし、油添白土は酸性度がpH5.0〜7.0の範囲にあり、ゴムに多量に添加すると加硫速度を低下させる傾向にあるため、こうした酸性な無機補強剤または無機充填剤による加硫速度の低下を抑制する方法として、例えばトリエタノールアミンやポリエチレングリコール等を併用することが一般的になされ、ゴム用加硫促進剤であるチウラム化合物の少量添加も有効とされている。
チウラム化合物とは、例えばテトラメチルチウラムジスルフィド,テトラエチルチウラムジスルフィド,テトラブチルチウラムジスルフィド,ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等がゴム用加硫促進剤として市販され、最近ではニトロソアミン問題に対応したテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)もある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−33954号公報
油添白土と類似の組成物である廃白土の再生アスファルト製造に対する使用に関して、株式会社男鹿テクノより出願された特許である。この特許は石油精製工程より発生する石油含有白土を再生アスファルトの充填剤として利用するものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ゴムの練り工程における加工特性を向上するゴム組成物の提供を目的とする。さらに、これに起因する加硫速度や加硫ゴム物性の低下を伴わずゴムの特性を補強するゴム組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に従えば、ジエン系ゴム100重量部または異なる任意なジエン系ゴムの混合物100重量部に対し,必須成分として油添白土5〜200重量部が含有されるゴム組成物および上記組成物に対しテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)に代表されるチウラム系加硫促進剤0.1〜5.0重量部が同一組成内に含有されるゴム組成物が提供される。
【発明の効果】
【0009】
油添白土のゴムに対する有効利用に関し、油添白土が分散性に優れた加工助剤/無機補強剤/無機充填剤でありゴムの練り工程における加工特性向上、省エネルギー性向上、工程時間短縮に有効であることを見出した。
また、この油添白土の配合に起因する加硫速度や加硫ゴム物性の低下を抑制する手段として、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)に代表されるチウラム系加硫促進剤の添加が有効であることを見出した。
よってこれらの方法は、油添白土の有効利用に有用であると考える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
ジエン系ゴムとは一般的に市販されているジエン系ゴムを示し、例えば天然ゴム(NR),イソプレンゴム(IR),ブタジエンゴム(BR),スチレンブタジエンゴム(SBR),ニトリルブタジエンゴム(NBR),エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)等を示し、それらが単独もしくは複数かつ任意の混合比でブレンドされたもので構わない。
【0011】
そのジエン系ゴム100重量部に対し、以下に定義される油添白土が5〜200重量部の範囲で添加され、好ましくは5〜50重量部添加される。
油添白土とは、鉱油系潤滑油基油の精製処理工程にて生じる鉱油含浸白土である。
【0012】
更に必須成分としてテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)を0.1〜5.0重量部の範囲で添加され、好ましくは0.2〜1.0重量部添加される。
また、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)の添加量が、0.1重量部以下であると、油添白土による加硫速度の低下を抑制するに効果が不足し、5.0重量部以上であると過剰となり、スコーチ安定性を損なう。
【0013】
その他、ゴムに一般的に添加される副資材、例えばカーボンブラック,シリカ,クレイ等の補強剤を油添白上と共に用いることは、ゴムの強度補強の上で好ましく、無機充填剤,オイル,合成可塑剤,脂肪酸および脂肪酸誘導体等の添加も任意で構わない。
【0014】
また、硫黄や硫黄供与物資等の加硫剤およびテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)以外の加硫促進剤は、選択されたゴムと副資材の組み合わせから、既知の適する処方により添加される。
【実施例】
【0015】
以下、本発明を具体的な実施形態にてより詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものでないことはもちろんである。
【0016】
実施例1、溶液重合SBR(SL552,JSR(株)製)100重量部をラボプラストミルに投入し、ローター回転数20rpmにてゴム温度が50℃になるまで予備練りした後、油添白上(日本サン石油(株)製)100重量部を投入し、1.0分間混練りした。(工程1)
続いてローター回転数50rpmにて10.0分混練りした後、ラボプラストミルからゴム組成物を排出し(工程2)、実施例1のゴム組成物を得た。
【0017】
実施例2、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)40重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)60重量部にした以外は実施例1と同様にし、実施例2のゴム組成物を得た。
【0018】
比較例1、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)100重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)0重量部にした以外は実施例1と同様の工程を実施した。
【0019】
実施例3、溶液重合SBR(SL552,JSR(株)製)100重量部をラボプラストミルに投入し、ローター回転数20rpmにてゴム温度が50℃になるまで予備練りした後、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)80重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)30重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)40重量部を投入し、1.0分間混練りした。(工程1)
続いてローター回転数50rpmにて10.0分混練りした後、ラボプラストミルからゴム組成物を排出し(工程2)、実施例3のゴム組成物を得た。
【0020】
実施例4、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)60重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)60重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)30重量部にした以外は実施例3と同様にし、実施例4のゴム組成物を得た。
【0021】
実施例5、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)40重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)90重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)20重量部にした以外は実施例3と同様にし、実施例5のゴム組成物を得た。
【0022】
実施例6、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)20重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)120重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)10重量部にした以外は実施例3と同様にし、実施例6のゴム組成物を得た。
【0023】
実施例7、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)0重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)150重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)0重量部にした以外は実施例3と同様にし、実施例7のゴム組成物を得た。
【0024】
比較例2、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)100重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)0重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)50重量部にした以外は実施例3と同様にし、比較例2のゴム組成物を得た。
【0025】
実施例8、溶液重合SBR(SL552,JSR(株)製)100重量部をバンバリーミキサーに投入し、ローター回転数103rpmにてゴム温度が50℃になるまで予備練りした後、シリカ(ニプシールAQ,東ソーシリカ(株)製)35重量部、油添白土(日本サン石油(株)製)10重量部、ステアリン酸1重量部、脂肪酸亜鉛塩(エクストンL−2,川口化学工業(株)製)1重量部、シランカップリング剤(Si69/TESPT,デグサ(株)製)3重量部を投入し、3.5分混練りした。(工程1)
続いて残りのシリカ15重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)10重量部、酸化亜鉛3重量部、老化防止剤(アンテージ6C,川口化学工業(株)製)2重量部を投入し、3.0分混練りした後、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出した。(工程2)
その後、得られたゴム組成物に50℃のオープンロールにて硫黄1.5重量部、シクロヘキシルベンゾチアゾールスルフェンアミド(アクセルCZ,川口化学工業(株)製)1.5重量部、ジフェニルグアニジン(アクセルD,川口化学工業(株)製)0.5重量部を添加し、実施例8のゴム組成物を得た。(加硫工程)
【0026】
実施例9.油添白土(日本サン石油(株)製)15重量部、ナフテン系プロセスオイル(サンセン415,日本サン石油(株)製)5重量部にした以外は実施例8と同様にし、実施例9のゴム組成物を得た。
【0027】
実施例10、実施例8にテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)(アクセルTBZT,川口化学工業(株)製)0.3重量部を加えたゴム組成物を実施例10とした。
【0028】
実施例11、実施例9にテトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)(アクセルTBZT,川口化学工業(株)製)0.3重量部を加えたゴム組成物を実施例11とした。
【0029】
比較例3、実施例8より油添白土を除き、シリカを60重量部に変更したものを比較例3とした。
【0030】
得られた各ゴム組成物の未加硫ゴム試験結果を表1〜3に示す。
油添白土を配合した実施例1と油添白土を配合していない比較例1を比較し、予備練りおよび工程1、2での結果から次の効果を見出した。まず、表1の実施例1と比較例1の比較によると、油添白土はSBRとの混練りによりゴム組成物を得ることができるが、シリカはSBRとの混練により粉体となってしまいゴム組成物を得ることができなかった。これは、シリカのSBRへの吸着力が強すぎることが原因と考えられ、油添白土はSBRへの適度な吸着力を持つ、優れた加工助剤となりうることが判明した。また、実施例2より、油添白土とシリカを併用しても比較的良い結果が得られることが判明した。
【0031】
このことを踏まえ、油添白土に吸着している鉱油成分の影響を確認するため、ゴム組成物中の鉱油成分比率が同等となる様、プロセスオイルの配合量を調整し、表2の試験を実施した。
油添白土を配合した実施例3〜7と油添白土を配合していない比較例2を比較し、予備練りおよび工程1、2での結果から次の効果を見出した。まず油添白土の添加量増加により混練り最高トルク値が小さくなるため、油添白土による、練り工程における省エネルギー性向上が期待できる。また、油添白土添加により最高トルク到達時間が短縮されるため、油添白土はシリカよりゴムへの導入が早い、つまり、練り工程における時間短縮が可能であることが確認された。さらに、油添白土の添加量増加により100℃5分後の弾性トルクが低下することから、油添白土により、加工しやすいゴム特性を得られることが確認された。よって、実施例3〜7はゴムの練り工程における省エネルギー性向上、時間短縮、加工特性向上に有効であることが確認できた。
【0032】
油添白土配合による、その他ゴム薬剤への影響、ゴム物性への影響を確認するため、表3及び表4の試験を実施した。油添白土を配合した実施例8〜11と油添白土を配合していない比較例3を比較し、予備練りおよび工程1での結果から次の効果を見出した。第一に消費電力ピーク値が小さいため練り工程における省エネルギー性向上が期待できる。また、コンパウンド温度が高いため、油添白土はシリカよりゴムへの導入が早い、つまり、練り工程における時間短縮が可能であることが確認された。よって、実施例8〜11はゴムの練り工程における加工特性向上、省エネルギー性向上、時間短縮に有効であることが確認できた。
【0033】
実施例8および実施例9は比較例3と比較し、最適加硫時間(T90)が長くなり、油添白土による加硫速度の低下がみられるが、実施例10および実施例11は、比較例3と比較しても最適加硫時間(T90)が十分短くなっているため、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBZT)が油添白土による加硫速度の低下を効果的に抑制し、更にシリカより加硫速度を改善していることがわかる。
【0034】
次に各ゴム組成物の加硫ゴム試験結果を表4に示す。
実施例10及び実施例11のゴム硬度は、中間応力(100〜200%)に関しては比較例3とほぼ同等であり、実施例8及び実施例9よりも改善されていることがわかる。
また、実施例10および実施例11の耐圧縮永久歪性は比較例3よりも優れ、且つ、動的発熱性(HBU)も低く優れていることがわかる。
【0035】
【表1】

【0036】
【表2】

【0037】
【表3】

【0038】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジエン系ゴム100重量部または異なる任意なジエン系ゴムの混合物100重量部に対し、鉱油系潤滑油基油精製時に発生する鉱油含浸白土である油添白土5〜200重量部が含有されるゴム組成物。
【請求項2】
ジエン系ゴム100重量部または異なる任意なジエン系ゴムの混合物100重量部に対し、必須成分として、鉱油系潤滑油基油精製時に発生する鉱油含浸白土である油添白土5〜200重量部とチウラム系加硫促進剤0.1〜5.0重量部が同一組成内に含有されるゴム組成物。
【請求項3】
チウラム系加硫促進剤がテトラベンジルチウラムジスルフィドであることを特徴とする、請求項2に記載のゴム組成物。

【公開番号】特開2008−115349(P2008−115349A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324829(P2006−324829)
【出願日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(591084816)日本サン石油株式会社 (7)
【出願人】(000199681)川口化学工業株式会社 (23)
【Fターム(参考)】