説明

油脂用消泡剤

【課題】 リン脂質など油脂を増粘させる脂質、乳化剤、蛋白質、糖質、水などを含有する油脂を減圧状態にする時に生じる起泡を消泡すること、及びその為の消泡剤を提供すること。
【解決手段】 白土又はシリカと油脂とを混合してスラリー状にしてなる油脂用消泡剤で、消泡したい油脂を消泡しながら、減圧を伴う工程を通して精製すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂用消泡剤及びそれを用いて製造された油脂に関する。
【背景技術】
【0002】
油脂の製造や廃油のリサイクルなどにおいて、油脂を増粘させるリン脂質などの脂質、乳化剤、蛋白質、糖質、水などを含有していると、減圧を伴う工程において、激しく起泡してしまい、真空ラインに混入して故障や生産ロスを引き起こすなどの問題がある。
【0003】
そこで、特許文献1では、起泡と消泡のバランスをとるため低真空でゆっくり脱泡するか、薄膜真空乾燥機を使用することを提唱しているが、前者では生産効率が低い上に安全上の保障は低く、後者では専用の装置が必要となるし、生産効率も低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2006−121990号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、リン脂質など油脂を増粘させる脂質、乳化剤、蛋白質、糖質、水などを含有する油脂を減圧状態にする時に生じる起泡を消泡すること、及びその為の消泡剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、油脂を増粘させるリン脂質などの脂質、乳化剤、蛋白質、糖質、水などを含有する油脂に対し、白土又はシリカと油脂とを混合してスラリー状にしてなる油脂用消泡剤を添加することで、減圧状態にした時に生じる起泡を消泡できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、白土又はシリカと油脂とを混合してスラリー状にしてなる油脂用消泡剤に関する。好ましい実施態様は、混合する油脂量が、白土又はシリカに対して1〜5倍量(重量比)である上記記載の油脂用消泡剤に関する。より好ましくは、油脂が、食用油脂である上記記載の油脂用消泡剤に関する。本発明の第二は、上記記載の油脂用消泡剤を用いる油脂の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、油脂を増粘させるリン脂質などの脂質、乳化剤、蛋白質、糖質、水などを含有する油脂を減圧状態にする時に生じる起泡を消泡すること、及びその為の消泡剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明の油脂用消泡剤とは、白土又はシリカと油脂とを混合してスラリー状にしてなる組成物である。
【0010】
本発明における油脂用消泡剤により消泡される油脂としては、減圧を伴う工程において、起泡してしまう油脂であれば特に限定はないが、動植物油や魚油等から成る食用油脂、動植物油や魚油の未精製粗原油、およびそれらの廃油などが挙げられ、それらの群から選ばれる少なくとも1種類以上を用いることができるが、油脂を増粘させるリン脂質などの脂質、乳化剤、蛋白質、糖質、水などを含有しているものが起泡しやすく、本発明の効果をより好適に得ることができる。また、該消泡される油脂としては、処理後に食用に供せられる油脂が好適である。
【0011】
本発明における白土とは、活性白土、酸性白土などのことであり、シリカとはシリカゲルなどのことであり、それらの群から選ばれる少なくとも1種類以上を油脂と混合してスラリー状にし、消泡される油脂に添加して用いることができる。白土又はシリカとそれらの混合物の添加量は、消泡される油脂100重量部に対して0.5〜5重量部が好ましい。0.5重量部より少ないと、減圧時の起泡を抑制する効果が小さくなる場合があり、5重量部より多くしても、消泡効果は飽和となる。なお、前記消泡される油脂には、白土又はシリカをスラリー状にするために混合する油脂も含む。
【0012】
本発明において、スラリー状とするために白土又はシリカと混合する油脂は、動植物油や魚油等から成る食用油脂、動植物油や魚油の未精製粗原油、およびそれらの廃油など、油脂であれば特に限定されるものではなく、それらの群から選ばれる少なくとも1種類以上を用いることができるが、消泡する油脂と同一のものを使用することが好ましい。また、白土又はシリカに対して1〜5倍量(重量比)の油脂と混合してスラリー状にすることが好ましく、1倍量より少ないとスラリー状にならず消泡効果が低下する場合があり、5倍量より多くしても消泡効果は飽和となるため添加操作が増えて不便となるだけである。なお白土又はシリカの量は、吸着剤をスラリー状にするために用いた油脂も、リン脂質を含有する粗原油100重量部に含めて考える必要がある。
【0013】
処理方法については特に限定されるものではないが、例えば、食用油脂の精製工程において、脱ガム工程及び脱酸工程を好ましくは無くし、脱色工程前に、本発明の消泡剤を油脂に添加してから減圧し、その後特定温度で脱臭工程を施せば良い。
【実施例】
【0014】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0015】
(実施例1)
セパラブルフラスコ内に入れた大豆粗原油(リン脂質:1.4重量%、水分:0.1重量%)98重量部に対し、活性白土1重量部と大豆粗原油2重量部とを混合してスラリー状にした消泡剤を添加し、300rpmで撹拌しながら90℃まで加熱した。その後100rpmで撹拌しながら40kPa/分で15kPaまで減圧したところ、発生した気泡は液面から2cm以内の高さで消泡し、減圧開始から脱気・脱水終了までの所要時間は7分だった。
【0016】
(実施例2)
セパラブルフラスコ内に入れたコーン粗原油(リン脂質:1.2重量%、水分:0.3重量%、蛋白質:0.5重量%、糖質:0.6重量%)98重量部に対し、活性白土1重量部と大豆粗原油2重量部とを混合してスラリー状にした消泡剤を添加し、300rpmで撹拌しながら90℃まで加熱した。その後100rpmで撹拌しながら40kPa/分で15kPaまで減圧したところ、発生した気泡は液面から2cm以内の高さで消泡し、減圧開始から脱気・脱水終了までの所要時間は9分だった。
【0017】
(実施例3)
乳化剤が混入した廃食油(モノグリセライド:0.1重量%、リン脂質:0.1重量%、ポリグリセリン:0.1重量%、水分:2.1重量%)98重量部をセパラブルフラスコに入れ、これに対し活性白土1重量部と廃食油2重量部とを混合してスラリー状にした消泡剤を添加し、300rpmで撹拌しながら90℃まで加熱した。その後100rpmで撹拌しながら40kPa/分で15kPaまで減圧したところ、発生した気泡は液面から2cm以内の高さで消泡し、減圧開始から脱気・脱水終了までの所要時間は12分だった。
【0018】
(比較例1)
セパラブルフラスコ内に入れた大豆粗原油(リン脂質:1.4重量%、水分:0.1重量%)100重量部を300rpmで撹拌しながら90℃まで加熱した。その後100rpmで撹拌しながら40kPa/分で15kPaまで減圧したところ、発生した気泡は消泡されず、真空ラインへ混入した。
【0019】
(比較例2)
セパラブルフラスコ内に入れた大豆粗原油(リン脂質:1.4重量%、水分:0.1重量%)100重量部を300rpmで撹拌しながら90℃まで加熱した。その後100rpmで撹拌しながら4kPa/分で15kPaまで減圧したところ、発生した気泡は液面から6cm以内の高さで漸く消泡したが、減圧開始から脱気・脱水終了までの所要時間が62分かかった。
【0020】
(比較例3)
セパラブルフラスコ内に入れた大豆粗原油(リン脂質:1.4重量%、水分:0.1重量%)100重量部に対し、活性白土1重量部を添加し、300rpmで撹拌しながら90℃まで加熱した。その後100rpmで撹拌しながら40kPa/分で15kPaまで減圧したところ、発生した気泡は液面から4cm以内の高さで漸く消泡したが、減圧開始から脱気・脱水終了までの所要時間が26分かかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
白土又はシリカと油脂とを混合してスラリー状にしてなる油脂用消泡剤。
【請求項2】
混合する油脂量が、白土又はシリカに対して1〜5倍量(重量比)である請求項1に記載の油脂用消泡剤。
【請求項3】
油脂が、食用油脂である請求項1又は2に記載の油脂用消泡剤。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の油脂用消泡剤を用いる油脂の製造方法。

【公開番号】特開2010−209287(P2010−209287A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−59765(P2009−59765)
【出願日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】