治具
【課題】ワークをガタツキが生じることなく、基準面に対して所定位置に正確に保持することができるとともに、そのワークの保持状態でワークに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれを防止することができる治具を提供する。
【解決手段】ワークWを挟持可能な第1及び第2治具片22,23により、治具21を構成する。治具21の外側面には、加工テーブル等に設置するための基準面21a,21bを形成する。第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25には、ワークWの表面より軟質の保護層24a,25aを設ける。保護層24a,25aとして、第1及び第2治具片22,23を構成する金属の摩擦係数より低い摩擦係数の合成樹脂を用いる。
【解決手段】ワークWを挟持可能な第1及び第2治具片22,23により、治具21を構成する。治具21の外側面には、加工テーブル等に設置するための基準面21a,21bを形成する。第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25には、ワークWの表面より軟質の保護層24a,25aを設ける。保護層24a,25aとして、第1及び第2治具片22,23を構成する金属の摩擦係数より低い摩擦係数の合成樹脂を用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば工作機械において、タービンブレード等の特殊な断面形状を有するワークの両端部等を加工する際に、ワークをその両端部を除く部分において保持した状態で、加工テーブル等に設置する場合に用いられる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の治具としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、タービンブレード等のワークの長さ方向の一端部を、一対の支持ブロックと固定具との協働により支持するようになっている。各支持ブロックの支持面には、放電堆積によりセラミックを含む皮膜が被覆されている。そして、この皮膜により、ワークが支持ブロックの支持面上にガタツキを抑えて、擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷を生じることなく支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/095767号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来の治具においては、ワークの一側面を支持する一対の支持ブロックの支持面に保護用の皮膜が設けられているが、ワークの他側面に当接する固定具側には保護構成が施されていない。このため、ワークに損傷を生じるおそれを防止することが難しいという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ワークをガタツキが生じることなく、基準面に対して所定位置に正確に保持することができるとともに、そのワークの保持状態でワークに損傷が生じるおそれを防止することができる治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、ワークを挟持可能な第1及び第2治具片を有するとともに、外側面に基準面が形成された治具において、前記第1及び第2治具片のワーク保持面にワークの表面より軟質の保護層を設けたことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の治具においては、軟質の保護層を設けた両治具片のワーク保持面間において、ワークをガタツキが生じることなく、治具の外側面の基準面に対して所定位置に正確に保持することができる。また、ワークの保持状態においては、硬質の両ワーク保持面がワークの両側面に対して直接当接することなく、両ワーク保持面上の軟質の保護層がワークの両側面に当接するため、ワークに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれを効果的に防止することができる。
【0008】
前記の構成において、前記保護層として、第1及び第2治具片を構成する金属の摩擦係数より低い摩擦係数の合成樹脂を用いるとよい。
前記の構成において、前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、ワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記押圧部材の少なくとも押圧面を、前記保護層と同質の材料により形成するとよい。
前記の構成において、前記押圧部材の全体を、前記保護層と同質の材料により形成するとよい。
【0010】
前記の構成において、マスタワークをワーク保持面から浮かせた状態で第1,第2治具片間にそのマスタワークを挟持し、そのマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とするとよい。
【0011】
前記の構成において、前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、貫通孔を設け、その貫通孔にはワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けた構成であって、前記貫通孔を介してマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とし、さらに、前記貫通孔内の硬化合成樹脂を分離して押圧部材とするとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、ワークをガタツキが生じることなく、基準面に対して所定位置に正確に保持することができるとともに、そのワークの保持状態でワークに損傷が生じるおそれを防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の治具を示す平面図。
【図2】図1の治具の正面図。
【図3】同治具の底面図。
【図4】同治具の背面図。
【図5】同治具の左側面図。
【図6】同治具の一部分を実線で表した左側面図。
【図7】図1の治具における下側の第1治具片を示す斜視図。
【図8】同治具における上側の第2治具片を示す斜視図。
【図9】同治具における押圧部材及びその関連構成を示す分解斜視図。
【図10】図2の10−10線における拡大断面図。
【図11】図2の11−11線における拡大断面図。
【図12】図2の12−12線における拡大断面図。
【図13】押圧部材の分離状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明を具体化した治具の一実施形態を、図面に従って説明する。
図1〜図8に示すように、この実施形態の治具21は、金属製の下側の第1治具片22と、その第1治具片22上に着脱可能に組み付けられる金属製の上側の第2治具片23とから構成されている。両治具片22,23間には、特殊な断面形状を有するワークW(この実施形態においては、ワークWは金属製あるいはセラミック製のタービンブレード)が、その両端部を除く長さ方向の中間部において挟持されるようになっている(図1の2点鎖線参照)。また、両治具片22,23が相互に組み付けられた状態で、治具21が横長の直方体形状をなして、その治具21の外側面(例えば下面、前面及び左側面)に互いに直交する方向へ延びる3つの基準面21a,21b,21cが形成されるようになっている。そして、ワークWを挟持した治具21が、この基準面21a〜21cを基準にして、工作機械の加工テーブル上等に設置されるようになっている。この基準面は、治具21の他の3箇所の面でもよい。なお、実際の治具21の長さLは、158mmである。図2に2点鎖線で示すように、ワークWの端部と治具21の外側面との間には、ワークWの長さ方向の位置決めをするための突き当て60が設けられる。この突き当て60は治具21と別体であっても、治具21に設けられるものであっても、どちらでもよい。
【0015】
図7、図8及び図10に示すように、前記第1治具片22の上面における前後方向の中央部には、タービンブレードの一側面の形状をなすワーク保持面24が第1治具片22の長さ方向の全長にわたって延びるように形成されている。第2治具片23の下面における長さ方向の両端部には、第1治具片22のワーク保持面24に対応するとともに、タービンブレードの他側面の形状をなすワーク保持面25が形成されている。そして、第1治具片22のワーク保持面24上にワークWの長さ方向の中間部が載置された状態で、第1治具片22上に第2治具片23が組み付けられることにより、第2治具片23のワーク保持面25がワークWの上面に接合されて、ワークWが両ワーク保持面24,25間に挟持されるようになっている。前記ワーク保持面24,25が正確な位置関係を保持できるように、第2治具片23にはピン51が、第2治具片22の孔52にはピン51が嵌るスリーブ53が設けられている。なお、第1治具片22及び第2治具片23の長さ方向の中央部には凹部22a,23aがそれぞれ形成されている。このため、第1治具片22のワーク保持面24はその底部を残して切除され、第2治具片23のワーク保持面25は前記のように両端部のみに形成されている。
【0016】
図7、図8及び図10に示すように、前記第1治具片22の上面における長さ方向の両端部には、前後一対の固定座部26が形成されている。各固定座部26には、各一対のネジ孔27が上下方向に延びるように形成されている。第2治具片23の下面における長さ方向の両端部には、前後一対の固定座部28が形成されている。各固定座部28には、各一対のボルト挿通孔29が第1治具片22の各ネジ孔27に対応するように形成されている。そして、第1治具片22の各固定座部26上に第2治具片23の各固定座部28が接合された状態で、各ボルト挿通孔29から各ネジ孔27にボルト30が螺合されることにより、第1治具片22上に第2治具片23が組み付け固定されるようになっている。
【0017】
図10〜図12に示すように、前記第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25には、金属製のワークWの表面より軟質の保護層24a,25aが設けられている。これらの保護層24a,25aは、第1及び第2治具片22,23を構成する金属の摩擦係数よりも低い摩擦係数の合成樹脂を用いて、ワーク保持面24,25の表面に被覆形成されている。この保護層24a,25aとしては、エポキシ樹脂や、金属粉入りエポキシ樹脂が用いられる。そして、両治具片22,23のワーク保持面24,25間にワークWが挟持される際に、この軟質の保護層24a,25aにより、ワークWの表面が傷付くことなく保護されるようになっている。
【0018】
図1、図2、図8、図9及び図12に示すように、前記第2治具片23の上面における長さ方向の両端部には、平面四角形状の一対の凹部31が形成されている。第2治具片23の各凹部31の底部と各ワーク保持面25との間には、平面長円形状の一対の透孔32が貫設されている。各透孔32内には押圧部材33が上下方向へ移動可能に挿入され、その押圧部材33の下面には第2治具片23のワーク保持面25と同カーブ形状をなす押圧面33aが形成されている。この押圧部材33は、押圧面33aを含めて全体が前記ワーク保持面24,25の保護層24a,25aと同質の合成樹脂により形成されている。
【0019】
図1、図2、図9及び図12に示すように、前記第2治具片23の左右両側面の小孔には、一対の規制ピン34が各押圧部材33に向かって横方向に打ち込まれている。各押圧部材33の側面には、上下方向に延びる凹状の長孔33bが形成されている。そして、各規制ピン34の内端部が各押圧部材33上の長孔33bに係合されることにより、各押圧部材33が透孔32内において上下方向へ所定範囲内で移動可能に保持されるとともに、透孔32内から脱落しないように保持されている。なお、この規制ピン34は、先端が棒形状をしたネジであってもよい。
【0020】
図9及び図12に示すように、前記第2治具片23の各凹部31内には、平板状の蓋体35が嵌着されて複数のボルト36により固定されている。各蓋体35の中間部には、ネジ孔35aが形成されている。各蓋体35のネジ孔35aに対応するように、各押圧部材33の上面には凹状の収容孔33cが形成されている。各押圧部材33の収容孔33c内に突出するように、各蓋体35のネジ孔35aには押圧ボルト37が回転調節可能に螺合されている。押圧ボルト37の上端には工具用溝部37bを有する回転操作部37aが突設されるとともに、下端にはバネ保持用の小径の突起37cが形成されている。
【0021】
図9及び図12に示すように、前記各押圧ボルト37の下端と各収容孔33cの内底部との間には、コイルバネよりなる押圧バネ38が介装されている。そして、両治具片22,23のワーク保持面24,25間にワークWが挟持された状態で、各押圧ボルト37が回転操作部37aによって螺進回転されることにより、押圧バネ38により各押圧部材33に対して収容孔33c内で下方への弾発力が付与される。このため、各押圧部材33の押圧面33aにより、ワークWが第1治具片22のワーク保持面24に向かって押圧されて、ワークWの挟持状態におけるガタツキが抑制されるようになっている。
【0022】
なお、この実施形態においては、前記第1,第2治具片22,23を固定するためのボルト30として、JISネジ規格B1176六角穴付きボルトM6を使用し、蓋体35を固定するためのボルト36として、JISネジ規格B1176六角穴付きボルトM4を使用し、押圧ボルト37として、JISネジ規格B1176六角穴付きボルトM8を使用している。
【0023】
次に、前記のように構成された治具の機能を説明する。
さて、この治具21を用いてタービンブレード等のワークWを保持する場合には、第1治具片22上から第2治具片23を取り外した状態で、第1治具片22のワーク保持面24上にワークWを載置する。この状態で、第1治具片22上に第2治具片23を被せて、両治具片22,23の固定座部26,28を互いに接合させ、第2治具片23の各ボルト挿通孔29から第1治具片22の各ネジ孔27にボルト30を螺合する。このボルト30の螺合により、第2治具片23が第1治具片22上に組み付け固定されて、ワークWが両治具片22,23のワーク保持面24,25間に挟持される。
【0024】
この場合、両治具片22,23のワーク保持面24,25に、ワークWの表面より軟質の合成樹脂よりなる保護層24a,25aが設けられている。このため、ワークWが両保護層24a,25a間においてガタツキを抑制した状態で、治具21の外側面の基準面21a〜21cに対する所定位置に正確に保持される。さらに、このワークWの保持状態においては、両ワーク保持面24,25上の軟質の保護層24a,25aがワークWの両側の被保持面に当接している。このため、硬質の両ワーク保持面24,25がワークWの被保持面に直接当接する場合とは異なり、ワークWに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれはない。
【0025】
その後、前記第2治具片23上の各蓋体35のネジ孔35aから、各押圧ボルト37の回転操作部37aの工具用溝部37bに図示しないドライバ等の工具を嵌挿して、各押圧ボルト37を螺進回転させる。すると、押圧バネ38を介して各押圧部材33に収容孔33c内で下方への弾発力が付与され、その押圧部材33の押圧面33aにより、ワークWが第1治具片22のワーク保持面24に向かって押圧される。
【0026】
よって、両治具片22,23のワーク保持面24,25や、それに対応するワークWの被保持面に加工誤差が生じている場合でも、ワークWが両押圧部材33と第1治具片22のワーク保持面24との間で、ガタツキを生じることなく挟持される。この場合、押圧部材33がその下端の押圧面33aを含めて、ワーク保持面24,25の保護層24a,25aと同質の合成樹脂により形成されている。このため、押圧部材33によるワークWの押圧時に、ワークWに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれもない。
【0027】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態の治具においては、ワークWを挟持可能な第1及び第2治具片22,23から構成されている。治具21の外側面には、加工テーブル等に設置するための基準面21a〜21cが形成されている。第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25には、ワークWの表面より軟質の保護層24a,25aが設けられている。
【0028】
このため、軟質の保護層24a,25aを設けた両治具片22,23のワーク保持面24,25間において、ワークWをガタツキが生じることなく、治具21の外側面の基準面21a〜21cに対して所定位置に正確に保持することができる。また、ワークWの保持状態においては、硬質の両ワーク保持面24,25がワークWの両側の被保持面に対して直接当接することなく、両ワーク保持面24,25上の軟質の保護層24a,25aがワークWの被保持面に当接するため、ワークWに損傷が生じるおそれを防止することができる。
【0029】
(2) この実施形態の治具においては、前記保護層24a,25aとして、第1及び第2治具片22,23を構成する金属の摩擦係数より高い摩擦係数の合成樹脂が用いられている。このため、両ワーク保持面24,25上に設けられた合成樹脂製の保護層24a,25aにより、ワークWに損傷が生じるおそれを効果的に防止することができる。つまり、保護層24a,25aの摩擦係数が高いほど、ワークWは移動しにくく、所定位置を保持することができて、ワークWの損傷を防止できる。
【0030】
(3) この実施形態の治具においては、前記第1及び第2治具片22,23のうちの一方の治具片23に、ワークWを他方の治具片22のワーク保持面24に向かって押圧するための押圧部材33が設けられている。このため、第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25や、それに対応するワークWの被保持面に加工誤差が生じている場合でも、押圧部材33によってワークWを他方の治具片22のワーク保持面24に押圧することにより、ワークWにガタツキが生じるおそれを適切に抑制することができる。
【0031】
(4) この実施形態の治具においては、前記押圧部材33の少なくとも押圧面33aが、前記保護層24a,25aと同質の材料により形成されている。このため、押圧部材33によるワークWの押圧時に、押圧部材33の押圧面33aによって、ワークWに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれを防止することもできる。
【0032】
前記保護層24a,25aは、ワーク保持面24,25の形状を有する合成樹脂板をそのワーク保持面24,25に被せることで形成される。その他に、合成樹脂をワーク保持面24,25に膜状に形成することができる。このためには、以下の方法が採用される。すなわち、マスタワーク(図示しない)をワーク保持面24,25から浮かせた状態で第1,第2治具片22,23間に挟持する。マスタワークを治具21の規定の位置においてワーク保持面24,25から浮かせる手段としては、第1治具片22,23の一部にマスタワークを支持する突起等の手段を設けたり、治具21の外部に治具21とは別体の支持手段を設けたりすることができる。そして、マスタワークを浮かせた状態で、第1治具片22の透孔32と、第2治具片23に形成した樹脂注入用の透孔(図示しない)とから溶融状態の合成樹脂を注入する。このようにすれば、注入された合成樹脂がワーク保持面24,25とマスタワークの表裏両面との間に進入して、保護層24a,25aが形成される。なお、ワーク保持面24,25とマスタワークの表裏両面との外周縁から合成樹脂がはみ出るが、それらは、硬化後に除去される。また、前記透孔32内の合成樹脂も除去される。
【0033】
この場合、図13に示すように、透孔32内の硬化後の合成樹脂をその外周においてワイヤカット等によって透孔32の内面と分離すれば、その分離された合成樹脂を押圧部材33として用いることができる。そして、分離された押圧部材33を適当な高さとなるように加工するとともに、上面に収容孔33cを、側面に長孔33bを形成する。
【0034】
このようにすれば、前記(1)〜(4)の効果に加えて以下の効果がある。
(5) 保護層24a,25aを合成樹脂の注入によって形成するため、その保護層24a,25aをマスタワークの形状に従って正確に形成することができる。
【0035】
(6) 透孔32に注入された合成樹脂を利用して押圧部材33を形成すれば、その押圧部材33を正確な形状に、かつ容易に加工できる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0036】
・ 前記実施形態において、第1及び第2治具片22,23におけるワーク保持面24,25上の保護層24a,25aを、ワーク保持面24,25に対して合成樹脂フィルムを貼着することにより形成すること。
【0037】
・ 前記実施形態において、金属製の押圧部材33の下端面に合成樹脂フィルムを貼着することにより、合成樹脂からなる軟質の押圧面33aを形成すること。
・ 前記実施形態において、押圧部材33及びその関連構成を、第1治具片22側に設けること。
【0038】
・ 前記実施形態において、押圧部材33を付勢するための押圧バネ38を複数の皿バネより構成すること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握される請求項以外の技術的思想は以下の通りである。
【0039】
(イ) マスタワークをワーク保持面から浮かせた状態で第1,第2治具片間にそのマスタワークを挟持し、マスタワークとワーク治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層としたことを特徴とする治具の製造方法。
【0040】
(ロ) 前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、貫通孔を設け、その貫通孔にはワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けた構成において、前記貫通孔を介してマスタワークとワーク治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とし、さらに、前記貫通孔内の硬化合成樹脂を分離して押圧部材としたことを特徴とする前記(イ)項に記載の治具の製造方法。
【符号の説明】
【0041】
21…治具、21a,21b,21c…基準面、22…第1治具片、23…第2治具片、24,25…ワーク保持面、24a,25a…保護層、30…ボルト、33…押圧部材、33a…押圧面、37…押圧ボルト、38…押圧バネ、W…ワーク。
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば工作機械において、タービンブレード等の特殊な断面形状を有するワークの両端部等を加工する際に、ワークをその両端部を除く部分において保持した状態で、加工テーブル等に設置する場合に用いられる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の治具としては、例えば特許文献1に開示されるような構成が提案されている。この従来構成においては、タービンブレード等のワークの長さ方向の一端部を、一対の支持ブロックと固定具との協働により支持するようになっている。各支持ブロックの支持面には、放電堆積によりセラミックを含む皮膜が被覆されている。そして、この皮膜により、ワークが支持ブロックの支持面上にガタツキを抑えて、擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷を生じることなく支持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2006/095767号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、この従来の治具においては、ワークの一側面を支持する一対の支持ブロックの支持面に保護用の皮膜が設けられているが、ワークの他側面に当接する固定具側には保護構成が施されていない。このため、ワークに損傷を生じるおそれを防止することが難しいという問題があった。
【0005】
この発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、ワークをガタツキが生じることなく、基準面に対して所定位置に正確に保持することができるとともに、そのワークの保持状態でワークに損傷が生じるおそれを防止することができる治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、この発明は、ワークを挟持可能な第1及び第2治具片を有するとともに、外側面に基準面が形成された治具において、前記第1及び第2治具片のワーク保持面にワークの表面より軟質の保護層を設けたことを特徴としている。
【0007】
従って、この発明の治具においては、軟質の保護層を設けた両治具片のワーク保持面間において、ワークをガタツキが生じることなく、治具の外側面の基準面に対して所定位置に正確に保持することができる。また、ワークの保持状態においては、硬質の両ワーク保持面がワークの両側面に対して直接当接することなく、両ワーク保持面上の軟質の保護層がワークの両側面に当接するため、ワークに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれを効果的に防止することができる。
【0008】
前記の構成において、前記保護層として、第1及び第2治具片を構成する金属の摩擦係数より低い摩擦係数の合成樹脂を用いるとよい。
前記の構成において、前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、ワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けるとよい。
【0009】
前記の構成において、前記押圧部材の少なくとも押圧面を、前記保護層と同質の材料により形成するとよい。
前記の構成において、前記押圧部材の全体を、前記保護層と同質の材料により形成するとよい。
【0010】
前記の構成において、マスタワークをワーク保持面から浮かせた状態で第1,第2治具片間にそのマスタワークを挟持し、そのマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とするとよい。
【0011】
前記の構成において、前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、貫通孔を設け、その貫通孔にはワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けた構成であって、前記貫通孔を介してマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とし、さらに、前記貫通孔内の硬化合成樹脂を分離して押圧部材とするとよい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、この発明によれば、ワークをガタツキが生じることなく、基準面に対して所定位置に正確に保持することができるとともに、そのワークの保持状態でワークに損傷が生じるおそれを防止することができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】一実施形態の治具を示す平面図。
【図2】図1の治具の正面図。
【図3】同治具の底面図。
【図4】同治具の背面図。
【図5】同治具の左側面図。
【図6】同治具の一部分を実線で表した左側面図。
【図7】図1の治具における下側の第1治具片を示す斜視図。
【図8】同治具における上側の第2治具片を示す斜視図。
【図9】同治具における押圧部材及びその関連構成を示す分解斜視図。
【図10】図2の10−10線における拡大断面図。
【図11】図2の11−11線における拡大断面図。
【図12】図2の12−12線における拡大断面図。
【図13】押圧部材の分離状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、この発明を具体化した治具の一実施形態を、図面に従って説明する。
図1〜図8に示すように、この実施形態の治具21は、金属製の下側の第1治具片22と、その第1治具片22上に着脱可能に組み付けられる金属製の上側の第2治具片23とから構成されている。両治具片22,23間には、特殊な断面形状を有するワークW(この実施形態においては、ワークWは金属製あるいはセラミック製のタービンブレード)が、その両端部を除く長さ方向の中間部において挟持されるようになっている(図1の2点鎖線参照)。また、両治具片22,23が相互に組み付けられた状態で、治具21が横長の直方体形状をなして、その治具21の外側面(例えば下面、前面及び左側面)に互いに直交する方向へ延びる3つの基準面21a,21b,21cが形成されるようになっている。そして、ワークWを挟持した治具21が、この基準面21a〜21cを基準にして、工作機械の加工テーブル上等に設置されるようになっている。この基準面は、治具21の他の3箇所の面でもよい。なお、実際の治具21の長さLは、158mmである。図2に2点鎖線で示すように、ワークWの端部と治具21の外側面との間には、ワークWの長さ方向の位置決めをするための突き当て60が設けられる。この突き当て60は治具21と別体であっても、治具21に設けられるものであっても、どちらでもよい。
【0015】
図7、図8及び図10に示すように、前記第1治具片22の上面における前後方向の中央部には、タービンブレードの一側面の形状をなすワーク保持面24が第1治具片22の長さ方向の全長にわたって延びるように形成されている。第2治具片23の下面における長さ方向の両端部には、第1治具片22のワーク保持面24に対応するとともに、タービンブレードの他側面の形状をなすワーク保持面25が形成されている。そして、第1治具片22のワーク保持面24上にワークWの長さ方向の中間部が載置された状態で、第1治具片22上に第2治具片23が組み付けられることにより、第2治具片23のワーク保持面25がワークWの上面に接合されて、ワークWが両ワーク保持面24,25間に挟持されるようになっている。前記ワーク保持面24,25が正確な位置関係を保持できるように、第2治具片23にはピン51が、第2治具片22の孔52にはピン51が嵌るスリーブ53が設けられている。なお、第1治具片22及び第2治具片23の長さ方向の中央部には凹部22a,23aがそれぞれ形成されている。このため、第1治具片22のワーク保持面24はその底部を残して切除され、第2治具片23のワーク保持面25は前記のように両端部のみに形成されている。
【0016】
図7、図8及び図10に示すように、前記第1治具片22の上面における長さ方向の両端部には、前後一対の固定座部26が形成されている。各固定座部26には、各一対のネジ孔27が上下方向に延びるように形成されている。第2治具片23の下面における長さ方向の両端部には、前後一対の固定座部28が形成されている。各固定座部28には、各一対のボルト挿通孔29が第1治具片22の各ネジ孔27に対応するように形成されている。そして、第1治具片22の各固定座部26上に第2治具片23の各固定座部28が接合された状態で、各ボルト挿通孔29から各ネジ孔27にボルト30が螺合されることにより、第1治具片22上に第2治具片23が組み付け固定されるようになっている。
【0017】
図10〜図12に示すように、前記第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25には、金属製のワークWの表面より軟質の保護層24a,25aが設けられている。これらの保護層24a,25aは、第1及び第2治具片22,23を構成する金属の摩擦係数よりも低い摩擦係数の合成樹脂を用いて、ワーク保持面24,25の表面に被覆形成されている。この保護層24a,25aとしては、エポキシ樹脂や、金属粉入りエポキシ樹脂が用いられる。そして、両治具片22,23のワーク保持面24,25間にワークWが挟持される際に、この軟質の保護層24a,25aにより、ワークWの表面が傷付くことなく保護されるようになっている。
【0018】
図1、図2、図8、図9及び図12に示すように、前記第2治具片23の上面における長さ方向の両端部には、平面四角形状の一対の凹部31が形成されている。第2治具片23の各凹部31の底部と各ワーク保持面25との間には、平面長円形状の一対の透孔32が貫設されている。各透孔32内には押圧部材33が上下方向へ移動可能に挿入され、その押圧部材33の下面には第2治具片23のワーク保持面25と同カーブ形状をなす押圧面33aが形成されている。この押圧部材33は、押圧面33aを含めて全体が前記ワーク保持面24,25の保護層24a,25aと同質の合成樹脂により形成されている。
【0019】
図1、図2、図9及び図12に示すように、前記第2治具片23の左右両側面の小孔には、一対の規制ピン34が各押圧部材33に向かって横方向に打ち込まれている。各押圧部材33の側面には、上下方向に延びる凹状の長孔33bが形成されている。そして、各規制ピン34の内端部が各押圧部材33上の長孔33bに係合されることにより、各押圧部材33が透孔32内において上下方向へ所定範囲内で移動可能に保持されるとともに、透孔32内から脱落しないように保持されている。なお、この規制ピン34は、先端が棒形状をしたネジであってもよい。
【0020】
図9及び図12に示すように、前記第2治具片23の各凹部31内には、平板状の蓋体35が嵌着されて複数のボルト36により固定されている。各蓋体35の中間部には、ネジ孔35aが形成されている。各蓋体35のネジ孔35aに対応するように、各押圧部材33の上面には凹状の収容孔33cが形成されている。各押圧部材33の収容孔33c内に突出するように、各蓋体35のネジ孔35aには押圧ボルト37が回転調節可能に螺合されている。押圧ボルト37の上端には工具用溝部37bを有する回転操作部37aが突設されるとともに、下端にはバネ保持用の小径の突起37cが形成されている。
【0021】
図9及び図12に示すように、前記各押圧ボルト37の下端と各収容孔33cの内底部との間には、コイルバネよりなる押圧バネ38が介装されている。そして、両治具片22,23のワーク保持面24,25間にワークWが挟持された状態で、各押圧ボルト37が回転操作部37aによって螺進回転されることにより、押圧バネ38により各押圧部材33に対して収容孔33c内で下方への弾発力が付与される。このため、各押圧部材33の押圧面33aにより、ワークWが第1治具片22のワーク保持面24に向かって押圧されて、ワークWの挟持状態におけるガタツキが抑制されるようになっている。
【0022】
なお、この実施形態においては、前記第1,第2治具片22,23を固定するためのボルト30として、JISネジ規格B1176六角穴付きボルトM6を使用し、蓋体35を固定するためのボルト36として、JISネジ規格B1176六角穴付きボルトM4を使用し、押圧ボルト37として、JISネジ規格B1176六角穴付きボルトM8を使用している。
【0023】
次に、前記のように構成された治具の機能を説明する。
さて、この治具21を用いてタービンブレード等のワークWを保持する場合には、第1治具片22上から第2治具片23を取り外した状態で、第1治具片22のワーク保持面24上にワークWを載置する。この状態で、第1治具片22上に第2治具片23を被せて、両治具片22,23の固定座部26,28を互いに接合させ、第2治具片23の各ボルト挿通孔29から第1治具片22の各ネジ孔27にボルト30を螺合する。このボルト30の螺合により、第2治具片23が第1治具片22上に組み付け固定されて、ワークWが両治具片22,23のワーク保持面24,25間に挟持される。
【0024】
この場合、両治具片22,23のワーク保持面24,25に、ワークWの表面より軟質の合成樹脂よりなる保護層24a,25aが設けられている。このため、ワークWが両保護層24a,25a間においてガタツキを抑制した状態で、治具21の外側面の基準面21a〜21cに対する所定位置に正確に保持される。さらに、このワークWの保持状態においては、両ワーク保持面24,25上の軟質の保護層24a,25aがワークWの両側の被保持面に当接している。このため、硬質の両ワーク保持面24,25がワークWの被保持面に直接当接する場合とは異なり、ワークWに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれはない。
【0025】
その後、前記第2治具片23上の各蓋体35のネジ孔35aから、各押圧ボルト37の回転操作部37aの工具用溝部37bに図示しないドライバ等の工具を嵌挿して、各押圧ボルト37を螺進回転させる。すると、押圧バネ38を介して各押圧部材33に収容孔33c内で下方への弾発力が付与され、その押圧部材33の押圧面33aにより、ワークWが第1治具片22のワーク保持面24に向かって押圧される。
【0026】
よって、両治具片22,23のワーク保持面24,25や、それに対応するワークWの被保持面に加工誤差が生じている場合でも、ワークWが両押圧部材33と第1治具片22のワーク保持面24との間で、ガタツキを生じることなく挟持される。この場合、押圧部材33がその下端の押圧面33aを含めて、ワーク保持面24,25の保護層24a,25aと同質の合成樹脂により形成されている。このため、押圧部材33によるワークWの押圧時に、ワークWに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれもない。
【0027】
従って、この実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) この実施形態の治具においては、ワークWを挟持可能な第1及び第2治具片22,23から構成されている。治具21の外側面には、加工テーブル等に設置するための基準面21a〜21cが形成されている。第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25には、ワークWの表面より軟質の保護層24a,25aが設けられている。
【0028】
このため、軟質の保護層24a,25aを設けた両治具片22,23のワーク保持面24,25間において、ワークWをガタツキが生じることなく、治具21の外側面の基準面21a〜21cに対して所定位置に正確に保持することができる。また、ワークWの保持状態においては、硬質の両ワーク保持面24,25がワークWの両側の被保持面に対して直接当接することなく、両ワーク保持面24,25上の軟質の保護層24a,25aがワークWの被保持面に当接するため、ワークWに損傷が生じるおそれを防止することができる。
【0029】
(2) この実施形態の治具においては、前記保護層24a,25aとして、第1及び第2治具片22,23を構成する金属の摩擦係数より高い摩擦係数の合成樹脂が用いられている。このため、両ワーク保持面24,25上に設けられた合成樹脂製の保護層24a,25aにより、ワークWに損傷が生じるおそれを効果的に防止することができる。つまり、保護層24a,25aの摩擦係数が高いほど、ワークWは移動しにくく、所定位置を保持することができて、ワークWの損傷を防止できる。
【0030】
(3) この実施形態の治具においては、前記第1及び第2治具片22,23のうちの一方の治具片23に、ワークWを他方の治具片22のワーク保持面24に向かって押圧するための押圧部材33が設けられている。このため、第1及び第2治具片22,23のワーク保持面24,25や、それに対応するワークWの被保持面に加工誤差が生じている場合でも、押圧部材33によってワークWを他方の治具片22のワーク保持面24に押圧することにより、ワークWにガタツキが生じるおそれを適切に抑制することができる。
【0031】
(4) この実施形態の治具においては、前記押圧部材33の少なくとも押圧面33aが、前記保護層24a,25aと同質の材料により形成されている。このため、押圧部材33によるワークWの押圧時に、押圧部材33の押圧面33aによって、ワークWに擦過傷や変形、あるいは割れ等の損傷が生じるおそれを防止することもできる。
【0032】
前記保護層24a,25aは、ワーク保持面24,25の形状を有する合成樹脂板をそのワーク保持面24,25に被せることで形成される。その他に、合成樹脂をワーク保持面24,25に膜状に形成することができる。このためには、以下の方法が採用される。すなわち、マスタワーク(図示しない)をワーク保持面24,25から浮かせた状態で第1,第2治具片22,23間に挟持する。マスタワークを治具21の規定の位置においてワーク保持面24,25から浮かせる手段としては、第1治具片22,23の一部にマスタワークを支持する突起等の手段を設けたり、治具21の外部に治具21とは別体の支持手段を設けたりすることができる。そして、マスタワークを浮かせた状態で、第1治具片22の透孔32と、第2治具片23に形成した樹脂注入用の透孔(図示しない)とから溶融状態の合成樹脂を注入する。このようにすれば、注入された合成樹脂がワーク保持面24,25とマスタワークの表裏両面との間に進入して、保護層24a,25aが形成される。なお、ワーク保持面24,25とマスタワークの表裏両面との外周縁から合成樹脂がはみ出るが、それらは、硬化後に除去される。また、前記透孔32内の合成樹脂も除去される。
【0033】
この場合、図13に示すように、透孔32内の硬化後の合成樹脂をその外周においてワイヤカット等によって透孔32の内面と分離すれば、その分離された合成樹脂を押圧部材33として用いることができる。そして、分離された押圧部材33を適当な高さとなるように加工するとともに、上面に収容孔33cを、側面に長孔33bを形成する。
【0034】
このようにすれば、前記(1)〜(4)の効果に加えて以下の効果がある。
(5) 保護層24a,25aを合成樹脂の注入によって形成するため、その保護層24a,25aをマスタワークの形状に従って正確に形成することができる。
【0035】
(6) 透孔32に注入された合成樹脂を利用して押圧部材33を形成すれば、その押圧部材33を正確な形状に、かつ容易に加工できる。
(変更例)
なお、この実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
【0036】
・ 前記実施形態において、第1及び第2治具片22,23におけるワーク保持面24,25上の保護層24a,25aを、ワーク保持面24,25に対して合成樹脂フィルムを貼着することにより形成すること。
【0037】
・ 前記実施形態において、金属製の押圧部材33の下端面に合成樹脂フィルムを貼着することにより、合成樹脂からなる軟質の押圧面33aを形成すること。
・ 前記実施形態において、押圧部材33及びその関連構成を、第1治具片22側に設けること。
【0038】
・ 前記実施形態において、押圧部材33を付勢するための押圧バネ38を複数の皿バネより構成すること。
(他の技術的思想)
前記実施形態から把握される請求項以外の技術的思想は以下の通りである。
【0039】
(イ) マスタワークをワーク保持面から浮かせた状態で第1,第2治具片間にそのマスタワークを挟持し、マスタワークとワーク治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層としたことを特徴とする治具の製造方法。
【0040】
(ロ) 前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、貫通孔を設け、その貫通孔にはワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けた構成において、前記貫通孔を介してマスタワークとワーク治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とし、さらに、前記貫通孔内の硬化合成樹脂を分離して押圧部材としたことを特徴とする前記(イ)項に記載の治具の製造方法。
【符号の説明】
【0041】
21…治具、21a,21b,21c…基準面、22…第1治具片、23…第2治具片、24,25…ワーク保持面、24a,25a…保護層、30…ボルト、33…押圧部材、33a…押圧面、37…押圧ボルト、38…押圧バネ、W…ワーク。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを挟持可能な第1及び第2治具片を有するとともに、外側面に基準面が形成された治具において、
前記第1及び第2治具片のワーク保持面にワークの表面より軟質の保護層を設けたことを特徴とする治具。
【請求項2】
前記保護層として、第1及び第2治具片を構成する金属の摩擦係数より低い摩擦係数の合成樹脂を用いたことを特徴とする請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、ワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の治具。
【請求項4】
前記押圧部材の少なくとも押圧面を、前記保護層と同質の材料により形成したことを特徴とする請求項3に記載の治具。
【請求項5】
前記押圧部材の全体を、前記保護層と同質の材料により形成したことを特徴とする請求項3に記載の治具。
【請求項6】
マスタワークをワーク保持面から浮かせた状態で第1,第2治具片間にそのマスタワークを挟持し、そのマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層としたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の治具。
【請求項7】
前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、貫通孔を設け、その貫通孔にはワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けた構成において、前記貫通孔を介してマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とし、さらに、前記貫通孔内の硬化合成樹脂を分離して押圧部材としたことを特徴とする請求項6に記載の治具。
【請求項1】
ワークを挟持可能な第1及び第2治具片を有するとともに、外側面に基準面が形成された治具において、
前記第1及び第2治具片のワーク保持面にワークの表面より軟質の保護層を設けたことを特徴とする治具。
【請求項2】
前記保護層として、第1及び第2治具片を構成する金属の摩擦係数より低い摩擦係数の合成樹脂を用いたことを特徴とする請求項1に記載の治具。
【請求項3】
前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、ワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載の治具。
【請求項4】
前記押圧部材の少なくとも押圧面を、前記保護層と同質の材料により形成したことを特徴とする請求項3に記載の治具。
【請求項5】
前記押圧部材の全体を、前記保護層と同質の材料により形成したことを特徴とする請求項3に記載の治具。
【請求項6】
マスタワークをワーク保持面から浮かせた状態で第1,第2治具片間にそのマスタワークを挟持し、そのマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層としたことを特徴とする請求項1〜5のうちのいずれか一項に記載の治具。
【請求項7】
前記第1及び第2治具片のうちの一方の治具片に、貫通孔を設け、その貫通孔にはワークを他方の治具片のワーク保持面に向かって押圧するための押圧部材を設けた構成において、前記貫通孔を介してマスタワークと第1,第2治具片との間に溶融状態の合成樹脂を注入し、その合成樹脂を硬化させて保護層とし、さらに、前記貫通孔内の硬化合成樹脂を分離して押圧部材としたことを特徴とする請求項6に記載の治具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−96295(P2012−96295A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243162(P2010−243162)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000150604)株式会社ナガセインテグレックス (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000150604)株式会社ナガセインテグレックス (35)
【Fターム(参考)】
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