説明

治療分子およびそれを生成および/または選択する方法

本発明は、一般に、特定の細胞、例えば、それに限定されるわけではないが、癌細胞のアポトーシスを誘導させるのに有用な治療分子およびそれを生成するおよび/または選択する方法に関する。本発明は、さらに、細胞、例えば、癌細胞のアポトーシスを誘導する方法およびそのために有用な医薬組成物を提供する。本発明は、さらに、生存促進タンパク質の選択的阻害により特定の細胞のアポトーシスを誘導することができる治療剤を生成するかまたは選択する方法を提供する。本発明は、さらに、構造−結合特徴に基づいた治療分子デザインへのコンピュータによるアプローチを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、一般に、特定の細胞、例えば、それに限定されるわけではないが、癌細胞のアポトーシスを誘導するために有用な治療分子およびそれを生成および/または選択する方法に関する。本発明は、細胞、例えば癌細胞のアポトーシスを誘導する方法およびそのために有用な医薬組成物をさらに提供する。本発明は、生存促進タンパク質の選択的阻害により特定の細胞のアポトーシスを誘導することができる治療剤を生成するかまたは選択する方法をさらに提供する。本発明は、構造−結合特徴に基づいて治療分子デザインへのコンピュータによるアプローチをさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の概要
本願明細書でのいかなる先行技術の参照も、すべての国において、これらの先行技術が一般的常識の一部を形成するということの認知またはいかなる形態の示唆でもなく、またはそのようにみなされるべきではない。
【0003】
本願明細書で提供された参照文献の詳細は、本願明細書の最後に列挙している。
【0004】
癌は、先進世界における第2の主要な死因である。それが患者およびその家族に引き起こす苦しみの他に、処置コストが最も高い疾患の1つでもある(Zhang, Nat Rev Drug Discov 1:101-102, 2002)(非特許文献1)。従って、人命に対する代償にもかかわらず、処置コストおよび減少した経済的生産性のコストの減少の両方を考慮すると、社会に対する年間経済的負担の総額は、2010年までにはほぼUS$2,000〜5,000億程度であると予測される。
【0005】
プログラム細胞死(アポトーシス)の混乱は、癌を含む多くの主要な疾患の進行における中心的段階である。アポトーシスの重要なレギュレーターの1つのファミリーは、Bcl-2タンパク質ファミリーである。研究によって、ヒト濾胞リンパ腫において強制されたBcl-2過剰発現は、アポトーシスを阻害し、腫瘍原性に寄与することを示した(Vaux et al., Nature 335:440-442, 1988; Strasser et al., Nature 348:331-333, 1990)(非特許文献2、非特許文献3)。Bcl-2過剰発現は、最も一般的な癌に代表される表す、乳癌、結腸癌および前立腺癌の90%以下に認められ(上記 Zhang, 2002)(非特許文献1)。Bcl-2の生存促進関連物も多くの腫瘍において過剰発現される。実際に、障害性アポトーシスは、大抵の形態の悪性腫瘍の発生における中心的段階として、いまや受け入れられている(Cory et al., Nat Rev Cancer 2:647-656, 2002)(非特許文献4)。
【0006】
障害性アポトーシスは、細胞障害性癌治療の有効性に対する主要な障害でもある(上記 Cory et al., 2002; Johnstone et al., Cell 108:153-164, 2002)(非特許文献4、非特許文献5)。多くの化学療法薬物および放射線を含むほとんどの細胞障害性作用物質は、癌抑制因子p53などの分子を介してアポトーシスを間接的に誘発する(上記 Cory et al., 2002)(非特許文献4)。しかしながら、大抵の腫瘍において、p53経路は不活性化され、アポトーシスを開始するためのシグナルを阻止する。従って、p53機能の損失またはBcl-2の過剰発現は、化学的抵抗、処置の失敗の通常の原因を引き起こすことがある。
【0007】
哺乳動物Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Mcl-1およびA1を含む細胞生存を促進するBcl-2タンパク質ファミリーのそれらのメンバーは、配列類似性の3つまたは4つのBH(Bcl-2 homology(相同性))領域を含有し、それらのBH3-only関連物により中和されるまで機能する。哺乳動物Bim、Puma、Bmf、Bad、Bik、Hrk、BidおよびNoxaを含むこれらのアポトーシス促進アンタゴニストは、短いBH3ドメインによってのみ互いに関係しており、より広いファミリーに関係する(Huang and Strasser, Cell 103:839-842, 2000)(非特許文献6)。対照的に、BaxおよびBak、アポトーシス促進アァミリーメンバーのサブグループは、Bcl-2と3つのBHドメインを共有し、おそらく細胞内膜の透過処理おいて必須の下流の役割を有する(Wei et al., Science 292:727-730, 2001)(非特許文献7)。
【0008】
BH3-onlyタンパク質は、細胞の安寧を監視し、損傷シグナルは生存促進Bcl-2様タンパク質へのBH3-onlyタンパク質の結合をトリガーし、それにより細胞死を開始する(Cory et al., Oncogene 22:8590-8607, 2003; 上記 Huang and Strasser, 2000)(非特許文献8、非特許文献6)。転写合図により誘導された(例えば、Bim、Puma、Noxa)または種々の翻訳後の機構により誘導された(例えば、Bim、Bmf、Bad、Bid)それらの活性化差異は、いくらかのシグナリング特異性を付与する(Puthalakath et al., Cell Death Differ 9:505-512, 2002)(非特許文献9)。しかしながら、一旦活性化されると、種々のBH3-onlyタンパク質は、一般に、すべての生存促進Bcl-2様タンパク質をターゲッティングすることにより同様に機能すると考えられる(Adams et al., Genes Dev 17:2481-2495, 2003; Cory et al., Oncogene 22:8590-8607, 2003; 上記 Huang and Strasser, 2000)(非特許文献10、非特許文献8、非特許文献6)。しかしながら、それらの相互作用は、系統的に特徴付けされておらず、少数の定量的研究は、Bcl-xLまたはBcl-2に限定されている( Letai et al., Cancer Cell 2:183-192, 2002;上記 Petros et al., 2000; 上記 Sattler et al., 1997)(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。様々なBH3-onlyタンパク質および生存促進ファミリーメンバーが選択的にまたは無差別に相互作用するかどうかを確立することは、細胞死がいかにして始まるかを明らかにするために重要であり(上記 Adams, 2003; 上記 Cory et al., 2003; Danial and Korsmeyer, Cell 116:205-219, 2004)(非特許文献10、非特許文献9、非特許文献14)、新規な抗癌剤としてBH3-onlyタンパク質の作用を模倣する化合物を開発するための最近の努力に対して極めて適切である。
【0009】
毒性がより少なく、より良好なターゲットされた抗癌治療に対する要求に照らしてみると、Bcl-2様タンパク質と相互作用することができ、それらの生存促進機能を阻害することができる分子の同定に対する明白な要求がある。
【0010】
【非特許文献1】Zhang, Nat Rev Drug Discov 1:101-102, 2002
【非特許文献2】Vaux et al., Nature 335:440-442, 1988;
【非特許文献3】Strasser et al., Nature 348:331-333, 1990
【非特許文献4】Cory et al., Nat Rev Cancer 2:647-656, 2002
【非特許文献5】Johnstone et al., Cell 108:153-164, 2002
【非特許文献6】Huang and Strasser, Cell 103:839-842, 2000
【非特許文献7】Wei et al., Science 292:727-730, 2001
【非特許文献8】Cory et al., Oncogene 22:8590-8607, 2003
【非特許文献9】Puthalakath et al., Cell Death Differ 9:505-512, 2002
【非特許文献10】Adams et al., Genes Dev 17:2481-2495, 2003
【非特許文献11】Letai et al., Cancer Cell 2:183-192, 2002
【非特許文献12】Petros et al., 2000;
【非特許文献13】Sattler et al., 1997
【非特許文献14】Danial and Korsmeyer, Cell 116:205-219, 2004
【発明の開示】
【0011】
本明細書全体にわたり、特記しない限り、「含む(comprise)」という語およびその変形、例えば、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」は、述べられた整数または工程あるいは整数または工程の群を含むことを意味するが、任意の他の整数または工程あるいは整数または工程の群を排徐しないことは理解されるであろう。
【0012】
本明細書で使用される略号は表1に定義される。
【0013】
本発明は、生存促進分子の小分子アンタゴニスト、特に生存促進分子のBcl-2ファミリーまたは他の関連する生存促進分子の1種または複数のメンバーの小分子アンタゴニストを提供する。アンタゴニストの生成および/または選択は、Bcl-2ファミリータンパク質の天然アンタゴニスト(BH3-onlyタンパク質)の模倣物および/または狭い範囲のBH3-onlyタンパク質によってのみ阻害されるBcl-2分子間の構造的類似性の模倣物に基づいている。
【0014】
構造の研究により、アポトーシス促進タンパク質のBH3ドメインにより形成された両親媒性αヘリックスの疎水性面は、生存促進タンパク質のBH1、BH2およびBH3ドメインにより形成された疎水性溝に挿入し、それらの生存促進機能を阻害することが明らかになった。アポトーシス促進タンパク質におけるαヘリックスは、H1、H2、H3およびH4と呼ばれるヘリカルターム(helical terms)の外側部分の疎水性領域を含む。アミノ酸配列は、7アミノ酸繰り返しを形成する。H1〜H4外側面はBcl-2タンパク質のポケット(溝)と相互作用する。
【0015】
本発明に従って、BH3-onlyタンパク質は、それらが相互作用するBcl-2標的分子のスペクトルに関して機能的に区別されうる。これらのグループは、本発明に従って無差別性および拘束性として分類される。アミノ酸の電荷、サイズ、コンホメーション、溶解度、極性、疎水性、親水性、ならびに、特にBH3ドメインのαヘリックスとBcl-2タンパク質の疎水性溝との相互作用を取り巻く無差別BH3-onlyタンパク質および拘束性BH3-onlyタンパク質との第三級構造差への寄与を同定することによって、これらのグループの1つまたは他を、模倣する模倣物を生成するかまたは選択することができる。Bcl-2タンパク質は、BH3-onlyタンパク質の無差別活性または拘束性活性に寄与する構造的特徴も有する。
【0016】
例えば、アポトーシス促進分子上の7アミノ酸繰り返しにおけるアミノ酸は、第三級構造におけるアミノ酸または近位のアミノ酸がBcl-2タンパク質上の第三級構造により形成されたポケットにはまり込む能力を減少させるように修飾されてもよい。
【0017】
ゆえに、拘束性BH3-onlyタンパク質は、特定のBcl-2タンパク質に拮抗作用する選択的能力を与えるコンホメーションを有する足場を提供する。足場を本発明に従って、無差別BH3-onlyタンパク質を含む模倣物をデザインするためのまたは化合物の規範を作るためのテンプレートとして使用し、拘束性結合スペクトルを有するアンタゴニストを生成することができる。
【0018】
従って、本発明の1つの態様では、選択したタイプの細胞、例えばそれに限定されるわけではないが、癌細胞においてアポトーシスを誘導することを可能にする拘束性BH3-onlyタンパク質に対する模倣物を作るべきである。
【0019】
本発明のさらに別の態様では、無差別BH3-onlyタンパク質と拘束性BH3-onlyタンパク質とは、生存促進Bcl-2タンパク質上に存在する結合溝との相互作用のレベルに関して異なる。
【0020】
本発明は、拘束性BH3-onlyタンパク質足場を模倣する分子のコンホメーションを予測して、候補作用物質を生成させ、および/または選択し、および/またはスクリーニングし、次いでこれを作製し、アポトーシスを誘導するその能力を実験的に評価することができるためのコンピュータによる方法も提供する。
【0021】
本発明は他の態様において、生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストを生成するかまたは選択する方法であって、以下の段階を含む方法:BH3ドメインにより形成された両親媒性αヘリックスを規定する残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質構造を選択する段階;BH3-onlyタンパク質の無差別結合表現型と関連する1個または複数の残基位置を選択する段階;Bcl-2タンパク質への拘束性結合パターンを与えるアミノ酸またはその化学アナログを無差別表現型を与えるアミノ酸残基で置換する段階;およびBcl-2タンパク質へのより強い拘束性結合スペクトルを誘導する能力について各置換の相互作用を分析する段階、を提供する。
【0022】
本発明は、生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストを生成するかまたは選択する方法であって、足場タンパク質として拘束性BH3-onlyタンパク質を選択し、拘束性表現型を与える足場のコンホメーションを決定し、該足場および/またはBcl-2タンパク質への拘束性結合スペクトルを与えるコンホメーション部分を模倣する化合物を生成するかまたはスクリーニングするための方法をさらに提供する。
【0023】
従って、本発明は、拘束性表現型を与える残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質に基づく生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストをデザインするためのコンピュータによる方法であって、以下の段階を含む方法:無差別BH3-onlyタンパク質のコレクションを選択する段階;これらのタンパク質の配列アラインメントを提供し、それを拘束性BH3-onlyタンパク質と比較する段階;Bcl-2タンパク質への結合に関して無差別性または拘束性を与える該アラインメントで1つまたは複数の位置において個々のアミノ酸についての出現の頻度を生成する段階;該頻度を使用して、電荷、サイズ、コンホメーション、溶解度、極性、疎水性、親水性および第三級構造への寄与から選択されたスコア関数を作成する段階;該スコア関数および/または少なくとも1つの追加のスコア関数を使用して、最適化されたタンパク質配列またはそれらのコンホメーション等価物のセットを生成させ、Bcl-2タンパク質への拘束性結合表現型を有する化合物またはタンパク質を生成するかまたは選択する段階、を提供する。
【0024】
さらに他の態様では、本発明は、無差別BH3-onlyタンパク質またはその化学的もしくはコンホメーション等価物に拘束性結合表現型を与えるアミノ酸置換変異体の生成または選択における無差別BH3-onlyタンパク質の使用を提供する。
【0025】
なお、本発明の更なる局面は、Bcl-2タンパク質のアンタゴニストを生成するかまたは選択するための方法であって、下記(1)〜(3)から選択される一連のパラメーターを決定し、次に、Bcl-2タンパク質の拘束性範囲に結合するBH3-onlyタンパク質の模倣物をデザインする段階、を含む方法を考察する:
(1)無差別性Bcl-2タンパク質と拘束性Bcl-2タンパク質との構造的相違点を同定する段階;
(2)無差別性BH3-onlyタンパク質と拘束性BH3-onlyタンパク質との構造的相違点を同定する段階;および
(3)Bcl-2−BH3-onlyタンパク質複合体の構造的特徴を同定する段階。
【0026】
BH3-onlyタンパク質の模倣物は、それらに限定されるわけではないが、コンピュータでのスクリーニング、ハイスループットケミカルスクリーニング、機能に基づくアッセイまたは構造−活性関係などの方法により生成される、または選択することもできる。
【0027】
なおさらに他の態様では、本発明のBH3-only模倣物は、医薬組成物などの医薬形態において都合良く提供される。
【0028】
本発明の模倣物は、癌を有する被験者または癌を発生させる性向を有する被験者を処置するのに特に有用である。
【0029】
発明の詳細な説明
本発明は、選ばれた細胞、特に癌細胞のアポトーシスを誘導するのに有用であることが提唱されたBH3-onlyタンパク質の模倣物を生成するための方法を包含する。アミノ酸の電荷、サイズ、コンホメーション、溶解度、極性、疎水性、親水性および拘束性BH3-onlyタンパク質とそれらのそれぞれの標的Bcl-2タンパク質間の第三級構造類似性への寄与を利用して、アポトーシスを誘導するBH3-onlyタンパク質の模倣物を生成することが提唱される。
【0030】
本発明を詳細に説明する前に、本発明は、特定の治療成分、製造方法、投与計画等に限定されず、それ自体変わりうることに留意されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することをのみ目的とするものであり、限定することを意図しないことも理解されるべきである。
【0031】
本明細書で使用される、単数形は、特記しない限り、複数の局面を含むことにも留意されなければならない。かくして、例えば「治療剤」という表現は、単数の治療剤ならびに2種以上の治療剤を含み;「方法」という表現は、単一の方法ならびに2つ以上の方法を含み;「残基」は、単一の残基および2個以上の残基を含む等。
【0032】
本明細書で「アポトーシス」という表現は、プログラムされた順序の事象が細胞の消失をもたらす細胞死の形態を意味する。
【0033】
従って、本発明の1つの態様では、それに限定されるわけではないが、癌細胞などの選ばれたタイプの細胞においてアポトーシスを誘導することを可能とする拘束性BH3-onlyタンパク質に対する模倣物が作られる。
【0034】
本明細書で「癌細胞」という表現は、異常な増殖を示し、制御されない方法で増殖し、或る場合には転移する傾向がある任意の細胞を意味する。本明細書で意図されるガンは、それに限定されるわけではないが、下記を含む:ABL1プロトオンコジーン、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢胞腫、副腎皮質癌、原因不明骨髄様化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫(Alveolar soft-part sarcoma)、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、アストロチトーム、毛細血管拡張性運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹グリオーマ、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児期脳腫瘍、小児癌、小児期白血病、小児期軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、悪性皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、硬線維性の小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌腺癌、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイングの肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニ(Fanconi)貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸性癌、胃腸性カルチノイド(Gastrointestinal-Carcinoid)腫瘍、尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液学的悪性腫瘍、毛様細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞性癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンスの細胞組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、Li-Fraumeni症候群、口唇(Lip)癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性の乳癌、腎臓の悪性棒状小体腫瘍(Malignant-Rhabdoid-Tumor-of-Kidney)、髄芽細胞腫、メラノーマ、メルケル(Merkel)細胞癌、中皮腫、転移癌、口こう癌、多発性内分泌腫瘍、菌状息肉腫、脊髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイメーヘン染色体不安定(Nijmegen Breakage)症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼性癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、口卵嚢癌(Ostomy Ovarian Cancer)、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚様性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、まれな癌および関連する障害(Rare- cancers-and-associated-disorders)、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムンド-トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮細胞-癌腫(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行性細胞癌(膀胱)、移行性細胞癌(腎臓-骨盤-/-尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿系癌、ウロプラキン(Uroplakin)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ワルデンストレームのマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍。
【0035】
本発明の特定の標的である癌は、過剰量のBcl-2タンパク質もしくは生存促進関連物を産生するおよび/またはBcl-2タンパク質を阻害する減少した量のアポトーシス促進分子を産生する癌である。
【0036】
本発明のさらに他の態様では、BH3-onlyタンパク質は、無差別性であるかまたは拘束性であることができる。本明細書で「無差別性」という表現は、タンパク質が多数の標的に結合する(即ち、すべてのまたは多数のBcl-2タンパク質に結合する)ことを意味する。本明細書で「拘束性」という表現は、タンパク質が特定の標的にのみ結合する(即ち、1つまたは少数のみのBcl-2タンパク質に結合する)ことを意味する。無差別BH3-onlyタンパク質および拘束性BH3-onlyタンパク質は、生存促進Bcl-2タンパク質上に存在する結合溝との相互作用のレベルに関して異なることができる。
【0037】
本発明に従えば、用語「標的」は、Bcl-2タンパク質、例えば、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、MclおよびA1、または3つもしくは4つのBcl-2相同性(BH)領域を含む任意の他の生存促進分子を同定するのに使用される。
【0038】
「標的結合剤」は、生存促進タンパク質を阻害する分子および/または模倣BH3-onlyタンパク質を説明するのに使用される。天然に存在する標的結合剤は、Bim、Puma、Bmf、Bad、Bik、Hrk、BidおよびNoxaを含む。
【0039】
本発明の目的は、癌細胞などの特定の細胞のアポトーシスの阻害剤への標的結合剤として作用する高度な拘束性および特異的模倣物を生成するかまたは選択することである。
【0040】
本発明は、他の態様では、生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストを生成するかまたは選択するための方法であって、以下の段階を含む方法:BH3ドメインにより形成された両親媒性αヘリックスを規定する残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質構造を選択する段階;BH3-onlyタンパク質の無差別結合表現型と関連する1個または複数の残基位置を選択する段階;Bcl-2タンパク質への拘束性結合表現型を与えるアミノ酸またはその化学アナログを無差別表現型を与える残基の各々のためのアミノ酸残基で置換する段階;およびBcl-2タンパク質へのより強い拘束性結合のスペクトルを誘導する能力について各置換の相互作用を分析する段階、を提供する。
【0041】
本明細書で「足場タンパク質」という表現、そのための変異体のライブラリーが所望されるタンパク質(即ち、BH3-onlyタンパク質)を意味する。足場タンパク質は、タンパク質デザイン計算におけるインプットとして使用され、実験的ライブラリー生成を促進するのにしばしば使用される。足場タンパク質は、既知の構造を有するか、またはその構造を計算し、評価し、モデル化するかもしくは実験的に決定することができる任意のタンパク質であることができる。
【0042】
本発明は、さらに生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストを生成するかまたは選択するための方法であって、以下の段階を含む方法:足場タンパク質として拘束性BH3-onlyタンパク質を選択する段階;拘束性表現型を与える足場のコンホメーションを決定する段階;および該足場および/またはBcl-2タンパク質への拘束性結合スペクトルを与えるコンホメーション部分を模倣する化合物を生成するかまたはスクリーニングする段階、を提供する。
【0043】
さらに他の態様では、本発明は、BH3-onlyタンパク質またはその化学的もしくはコンホメーション等価物に拘束性結合表現型を与える置換変異体の生成または選択におけるアミノ酸残基置換マトリツクスとしての無差別BH3-onlyタンパク質の使用を提供する。
【0044】
1つの例では、Noxa BH3-onlyタンパク質の選択性についての分子的基礎を述べる。
【0045】
Noxa BH3は、Mcl-1およびA1に選択的に結合し、Bcl-2、Bcl-wまたはBcl-xLに結合しない。
【0046】
NoxaのBH3ドメインの配列の研究は、H4の直前のアミノ酸は、独特に、ヒトNoxaにおいておよび2つのマウスNoxa BH3ドメインにおいて塩基性アミノ酸であることを示す(表3)。他のBH3ドメイン配列においてより一般的に見い出されるとおり、その位置における酸性残基の回復は、Bcl-2、Bcl-wおよびBcl-xLへの結合を回復することが提唱される。関連リシンアミノ酸がグルタミン酸により置換されている突然変異体ヒトNoxa BH3ドメインのアッセイは、5.8μMの突然変異体ペプチドについてのIC50、即ち、野生型ペプチドより少なくとも17倍堅固であることを示す。
【0047】
ヒトNoxa BH3ドメインの更なる独特の性質は、H3位置における芳香族アミノ酸、フェニルアラニンの存在である。これは、分岐したγ炭素原子を有するアミノ酸の唯一の出現であり(表3)、標的Bcl-2ファミリータンパク質においてこの位置のより大きなアミノ酸を受け容れるためにより多くの空間が要求されることを示唆する。Bcl-2ファミリータンパク質のアミノ酸配列がアラインメントにおいて配置されるとき、Mcl-1およびA1がBH3ドメインのH3アミノ酸のための受容体部位においてより小さいアミノ酸を含有することは明らかである。この結論は、Bim BH3ドメインと複合体化したBcl-xLの公表された三次元構造上を利用し(Liu, X. et al., Immunity 19:341-352, 2003)、上記の配列アラインメントを使用することにより可能である。H3位置におけるFからIまでのヒトNoxa BH3の突然変異は、突然変異体ペプチドについて1.1μMのIC50をもたらし、即ち、野生型よりも少なくとも90倍堅固である。二重突然変異体、KからE+FからIは、0.1μMのIC50で、変化が相乗性であることを示す。
【0048】
これは、本発明が無差別BH3ドメインへの選択性BH3ドメインの転換をいかにして可能とするかを示す。
【0049】
本明細書における「作用物質(agent)」という表現は、天然、組換えまたは合成ソースに由来するいかなるタンパク質または非タンパク質分子も指すものと理解されるべきである。有用なソースは、天然に産生されたライブラリー、化学分子ライブラリー、およびコンビナトリアルライブラリー、ファージディスプレーライブラリーおよびインビトロ翻訳ベ−スのライブラリーのスクリーニングを含む。特に有用なソースは、拘束性分子を生成するための無差別BH3-onlyタンパク質足場の修飾である。
【0050】
1つの態様では、Bcl-2または生存促進関連物の生存促進機能のレベルまたは活性の完全な抑制または実質的な減少のために有用な本発明の作用物質は、タンパク質分子または化学的分子であることができる。Bcl-2ファミリータンパク質生存促進活性のすべてのこのような減少、阻害、減少およびダウンレギュレーションは、用語「アンタゴニスト」、「拮抗作用」または「拮抗性の」により包含される。
【0051】
タンパク質分子である作用物質に関して、このような分子は、ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質を含む。さらに、突然変異体、部分、誘導体、相同体、類似体または模倣物という用語は、Bcl-2ファミリータンパク質の生存促進機能を完全に抑制するかまたは実質的に減少させる作用物質の種々の形態を包含することを意味する。
【0052】
作用物質は、天然に存在するかまたは人工的に生成させた分子であることができる。作用物質は、1個または複数のアミノ酸置換、欠失または付加を含むBH3-onlyタンパク質であることができる。作用物質は、突然変異誘発もしくは他の化学的方法により生成するかまたは組換えによりもしくは合成により生成することができる。アラニンスキャニングは、重要なアミノ酸を同定するための有用な技術である(Wells, Methods Enzymol 202:2699-2705, 1991)。この技術では、アミノ酸残基は、アラニンにより置換され、ペプチドの活性に対するその効果が決定される。作用物質のアミノ酸残基の各々は、このようにして分析されて重要な構造的および/または電荷および/またはコンホメーションおよび/または疎水性および/または親水性領域を決定する。作用物質は、そのBcl-2に結合する能力および他の品質、例えば、寿命、結合親和性、解離速度、膜を横断する能力またはアポトーシスを誘導する能力について試験される。
【0053】
本発明の作用物質は、完全長BH3-onlyタンパク質のBcl-2結合部分を包含することもできる。部分は、少なくとも1、少なくとも10、少なくとも20および少なくとも30の連続したアミノ酸、例えば、Bcl-2結合性断片、例えば、両親媒性αヘリックス構造を規定する1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29および30アミノ酸である。この構造はBcl-2タンパク質の疎水性溝と相互作用することが提唱される。この型のペプチドは、標準組換え核酸技術の適用により得ることができるかまたは慣用の液相または固相合成技術を使用して合成することができる。例えば、Nicholsonにより編集され、Blackwell Scientific Publicationsにより刊行された「Synthetic Vaccines」と題する刊行物に含まれるAthertonおよびShephardによる「Peptide Synthesis」と題するChaptr 9に記載のとおり、溶液合成または固相合成技術を参照することができる。または、ペプチドは、プロテイナーゼ、例えば、endoLys-C、endoArg-C、endoGlu-Cおよびstaphylococcus V8-プロテアーゼによる本発明のアミノ酸配列の消化により産生させることができる。消化された断片は、例えば、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)技術により精製することができる。その生成の手段にかかわりなく、いかなるこのような断片も本明細書で使用された「アンタゴニスト」という用語によって包含されるものと理解されるべきである。
【0054】
かくして、アンタゴニストは、無差別BH3-onlyタンパク質の誘導体を含むことができる。このような誘導体は、無差別BH3-onlyタンパク質の一部、突然変異体、相同体、断片、類似体ならびにハイブリッドまたは融合分子およびグリコシル化変異体を含む。誘導体は、最適アラインメント後の比較のウインドー上で百分率アミノ酸配列同一性を有する分子も含む。好ましくは、特定の配列と参照配列との百分率類似性は、少なくとも約60%または少なくとも約70%または少なくとも約80%または少なくとも約90%または少なくとも約95%またはそれより上、例えば、少なくとも約96%、97%、98%、99%またはそれより上である。好ましくは、本発明の作用物質の種、機能的または構造的相同体間の百分率類似性は、少なくとも約60%または少なくとも約70%または少なくとも約80%または少なくとも約90%または少なくとも約95%またはそれより上、例えば、少なくとも約96%、97%、98%、99%またはそれより上である。60%と100%との間の類似性または同一性は、例えば、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99 または100%も包含する。
【0055】
タンパク質アンタゴニスト、例えば、本明細書に包含されるBH3-onlyタンパク質の誘導体における残基の類似体は、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質合成期間中および架橋剤の使用およびタンパク質の分子またはその類似体にコンホメーション拘束を強いる他の方法の期間中、非天然のアミノ酸および/またはその誘導体を組み込む、側鎖への修飾を含むが、それに限定されるわけではない。この用語は、ポリペプチドの修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化等も排除しない。この定義内に含まれるのは、例えば、アミノ酸(例えば、表1に記載のような非天然アミノ酸を含む)の1種または複数の類似体を含有するポリペプチドまたは置換された連鎖を有するポリペプチドである。このようなポリペプチドは細胞に入ることができることが必要でありうる。
【0056】
本発明により包含される側鎖修飾の例は、アミノ基の修飾、例えば、アルデヒドとの反応のよる還元アルキル化、それに続くNaBH4による還元;メチルアセトイミデートによるアミジン化;無水酢酸によるアシル化;シアナートによるアミノ基のカルバモイル化;2,4,6-トリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)によるアミノ基のトリニトロベンジル化;無水コハク酸および無水テトラヒドロフタル酸によるアミノ基のアシル化;およびピリドキサール-5-ホスフェートによるリシンのピリドキサール化、それに続くNaBH4による還元を含む。
【0057】
アルギニン残基のグアニジン基は、2,3-ブタンジオン、フェニルグリオキサールおよびグリオキサールなどの試薬との複素環縮合生成物の形成により修飾されうる。
【0058】
カルボキシル基は、O-アシルイソ尿素形成を介するカルボジイミド活性化、それに続く例えば、対応するアミドへのその後の誘導体化により修飾されうる。
【0059】
スルフヒドリル基は、ヨード酢酸もしくはヨードアセタミドによるカルボキシメチル化;システイン酸への過ギ酸酸化;他のチオール化合物による混合ジスルフイドの形成;マレイミド、無水マレイン酸もしくは他の置換されたマレイミドとの反応;4-クロロメルクリベンゾエート、4-クロロメルクリフェニルスルホン酸、塩化フェニル水銀、2-クロロメルクリ-4-ニトロフェノールおよび他の水銀化合物を使用する水銀誘導体の形成;アルカリ性pHにおけるシアナートによるカルバモイル化などの方法により修飾されうる。
【0060】
トリプトファン残基は、例えば、N-ブロモスクシンイミドによる酸化または2-ヒドロキシ-5-ニトロベンジルブロミドもしくはスルフェニルハライドによるインドール環のアルキル化により修飾されうる。他方チロシン残基は、テトラニトロメタンによりニトロ化して3-ニトロチロシン誘導体を形成することにより修飾することができる。
【0061】
ヒスチジン残基のイミダゾール環の修飾は、ヨード酢酸誘導体によるアルキル化またはジエチルピロカーボネートよるN−カルベトキシル化により達成することができる。
【0062】
ペプチド合成期間中に非天然アミノ酸および誘導体を組み込む例は、ノルロイシン、4-アミノ酪産、4-アミノ-3-ヒドロキシ-5-フェニルペンタン酸、6-アミノヘキサン酸、t-ブチルグリシン、ノルバリン、フェニルグリシン、オルニチン、サルコシン、4-アミノ-3-ヒドロキシ-6-メチルヘプタン酸、2-チエニルアラニンおよび/またはアミノ酸のD異性体の使用を含むが、それに限定されるわけではない。本明細書に包含される非天然のアミノ酸のリストを表1に示す。このような非天然アミノ酸は、拘束性BH3-onlyタンパク質足場に類似した第三級構造を与えるのに有用でありうる。
【0063】
(表1)非慣用アミノ酸のコード




【0064】
三次元コンホメーションを安定化させるために、架橋剤を使用することができ、例えば、ホモ二官能性架橋剤、例えば、(CH2)nスペーサー基(n=1〜n=6である)を有する二官能性イミドエステル、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、ならびに通常アミノ反応性部分、例えばN-ヒドロキシスクシンイミドおよび他の基特異的反応性部分、例えばマレイミドもしくはジチオ部分(SH)もしくはカルボジイミド(COOH)を含有するヘテロ二官能性試薬を使用することができる。さらに、例えば、CαおよびNα-メチルアミノ酸の組み込み、アミノ酸のCα原子とCβ原子との間に二重結合の導入、ならびにN末端とC末端間、2つの側鎖間または側鎖とN末端もしくはC末端間にアミド結合を形成するなどの二重結合の導入による環状ペプチドもしくは類似体の形成により、ペプチドは、コンホメーション的に束縛される。
【0065】
BH3-onlyタンパク質の模倣物という表現は、構造的および/または機能的レベルでの標的結合剤(即ち、BH3-onlyタンパク質)を含み、生存促進Bcl-2タンパク質を阻害する。本発明の1つの態様に従えば、選ばれたBH3-onlyタンパク質模倣物を生成することが提唱される。BH3-onlyタンパク質模倣物は、標的間の構造的差および標的結合剤間の構造的差に基づいてデザインされる。後者は、本発明に従い、以前に定義されたとおり、無差別(即ち、すべてのまたは多数のBcl-2タンパク質に結合する)または拘束性(即ち、1つのまたは少数のBcl-2タンパク質にのみに結合する)に分けることができる。
【0066】
ペプチド模倣物は、タンパク質二次構造のエレメントを模倣するペプチド含有分子であることができる(Johnson et al., Peptide Turn Mimetics in Biotechnology and Pharmacy, Pezzuto et al., Eds., Chapman and Hall, New York, 1993)。ペプチド模倣物の使用の基礎をなす論理的根拠は、タンパク質のペプチド主鎖が、分子相互作用、例えば、抗体と抗原、酵素と基質または足場タンパク質との分子相互作用を促進するような方法で、主としてアミノ酸側鎖を配向させるように存在するということにある。ペプチド模倣物は、天然分子に類似した分子相互作用を可能とするようにデザインされる。BH3-onlyタンパク質のペプチドもしくは非ペプチド模倣物は、Bcl-2の生存促進機能を減少させる作用物質として本発明において有用でありうる。
【0067】
薬学的に活性な化合物に対する模倣物のデザイン化は、「リード」化合物に基づいている医薬の開発への既知のアプローチである。これは、活性化合物の合成が困難であるかもしくは高価である場合または活性化合物が特定の投与方法に不適当な場合に、望ましいことがあり得る。例えば、ペプチドは消化管においてプロテアーゼにより急速に分解される傾向があるので、経口組成物には不適当な活性作用物質である。模倣物デザイン、合成および試験を一般的に使用して、標的の性質について多数の分子を無作為にスクリーニングすることを回避する。
【0068】
所与の標的の性質を有する化合物からの模倣物のデザインにおいて、通常いくつかの工程が採用される。第1に、標的の性質を決定するのに決定的であるおよび/または重要である化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合には、これは、ペプチドにおけるアミノ酸残基を系統的に変えること、例えば、各残基を順に置換することにより行うことができる。前述のとおり、ペプチドのアラニンスキャンを、一般的に使用してこのようなペプチドモチーフを精密化する。化合物の活性領域を構成するこれらの部分または残基は、その「ファルマコフォア(pharmacophore)」として知られている。
【0069】
一旦、ファルマコフォアが見い出されると、その構造は、その物理的性質、例えば、立体化学、結合、サイズおよび/または電荷にしたがって、ある範囲のソースからのデータ、例えば、分光学的技術、X線回折データおよびNMRを使用して、モデル化される。コンピュータによる分析、類似性マッピング(原子間の結合よりはむしろファルマコフォアの電荷および/または容積をモデル化する)および他の技術をこのモデル化方法において使用することができる。
【0070】
このアプローチの変法では、リガンドおよびその結合相手の三次元構造をモデル化する。これは、リガンドおよび/または結合相手が結合時にコンホメーションを変える場合に特に有用であり得、模倣物のデザインおいてモデルにこれを考慮することを可能とする。モデル化を使用して、直鎖状配列または三次元配置と相互作用する阻害剤を生成することができる。
【0071】
次いで、テンプレート分子を選択し、それにファルマコフォアを模倣する化学基をグラフトすることができる。テンプレート分子およびそれにグラフトされた化学基は、模倣物を合成するのが容易であり、模倣物が薬理学的に許容できそうであり、リード化合物の生物学的活性を保持しながらインビボで分解しないように、都合よく選ぶことができる。または、模倣物がペプチドをベースとする場合は、ペプチドを環化し、その剛性を増加させることにより更なる安定性を達成することができる。次いで、このアプローチにより見出された模倣物(1つまたは複数)をスクリーニングして、それらが標的の性質を有するかどうかまたはどの程度それらが標的の性質を示すかを見ることができる。次いで、更なる最適化または修飾を行って、インビボもしくは臨床試験のための1種または複数の最終模倣物に到達することができる。
【0072】
本発明に従うラショナルドラッグデザインの目標は、コンピュータによる方法を使用して、拘束性BH3-onlyタンパク質の構造的類似体を生成させおよび/または選択して、例えば、より活性なもしくはより安定な形態のポリペプチドであり、拘束性結合スペクトルを有する薬物を作ることである。1つのアプローチでは、最初に、X線結晶学により、コンピュータモデル化により、またはさらに典型的にはアプローチの組み合わせにより、関心被験体のタンパク質の三次元構造を決定する。ポリペプチドの構造に関する有用な情報は、相同性タンパク質の構造に基づくモデル化により得ることもできる。ラショナルドラッグデザインの例は、HIVプロテアーゼ阻害剤の開発である(Erickson et al., Science 249:527-533, 1990)。
【0073】
薬物スクリーニングの1つの方法は、好ましくは競合結合アッセイにおいてポリペプチドまたは断片を発現する組み換えポリヌクレオチドにより安定に形質転換される真核宿主細胞または原核宿主細胞を利用する。このような細胞は、生存している形態または固定された形態のいずれかにおいて、標準結合アッセイのために使用することができる。例えば、標的もしくは断片と試験されるべき作用物質との複合体の形成を測定することができ、または標的もしくは断片と既知のリガンドとの複合体の形成が試験されるべき作用物質により支援されるかまたは妨害される程度を検査することができる。
【0074】
スクリーニング手順には、(i)薬物と標的との複合体の存在、または(ii)標的をコードする核酸分子の発現レベルの変化をアッセイする段階を含む。アッセイの1つの形態は、競合結合アッセイを含む。このような競合結合アッセイにおいて、標的を典型的に標識する。遊離標的を任意の推定複合体から分離し、遊離(即ち、複合体化されていない)標識の量は、試験されるべき作用物質の標的分子への結合の目安である。遊離よりはむしろ結合した標的の量を測定することもできる。標的よりも化合物を標識し、試験されるべき薬物の存在および非存在下に標的に結合する化合物の量を測定することも可能である。
【0075】
薬物スクリーニングのための他の技術は、標的への適当な結合親和性を有する化合物のためのハイスループットスクリーニングを提供し、Geysenにおいて詳細に記載されている(国際公開公報第WO 84/03564号)。簡単に言えば、多数の異なる小分子ペプチド試験化合物を、固体サブストレート、例えばプラスチックピンまたはいくらかの他の表面で合成する。ペプチド試験化合物を標的と反応させ、洗浄する。次いで、結合した標的分子を当技術分野で周知されている方法により検出する。この方法は、非ペプチド化学物質をスクリーニングするのに適合させることができる。ゆえに、この局面は、標的アンタゴニストまたはアゴニストのスクリーニングへの組み合わせアプローチに及ぶ。
【0076】
精製された標的は、前記した薬物スクリーニング技術において使用するためにプレート上に直接コーティングすることができる。しかしながら、標的に対する非中和性抗体を使用して、固相上に標的を固定化することもできる。または、標的を、結合および同定を促進するために都合よく選ばれたタグとの融合タンパク質として発現することができる。
【0077】
他の態様では、Bcl-2およびBcl-wの阻害剤のためのハイスループット化学スクリーニング(HTCS)を行うことができる。生存促進分子(Bcl-2またはBcl-w)とBimのようなBH3-onlyタンパク質の相互作用がアポトーシスの生成を早めると仮定すれば、BH3結合を阻止するような方法で生存促進タンパク質に結合する小さな有機分子のためのライブラリーをスクリーニングすることができる。1つまたは両抗アポトーシス分子をターゲッティングする化合物を同定するために、多重スクリーニングキャンペーンに着手することができる。
【0078】
高容量アッセイに必要なタンパク質は、バクテリアにおいて産生させることができ、光学的バイオセンサ(BiaCore)を使用する最初の研究は、ビオチニル化Bim BH3ペプチドが、高親和性(Kd〜11nM)でHis6タグ付きBcl-wΔC10に結合することを示す(Hinds et al., EMBO J 22:1497-1507, 2003)。HTCSに必要な高容量結合アッセイは、AlphaScreen(登録商標)(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay/増幅ルミネッセンス近接ホモジニアスアッセイ法)技術を使用して開発された(Glickman et al., J Biomol Screen 7:3-10, 2002)。2つのパートナータンパク質が相互作用するにつれて蛍光出力の変化を示すことによって、それは鋭敏な感度でタンパク質相互作用を監視することができる。AlphaScreen(登録商標)は、HTCSによく適している。何故ならば、それは頑強であり、大きなダイナミックレンジを有する均質アッセイとして小さな容積で容易に行うことができるからである。
【0079】
1つの態様では、His6Bcl-wΔC10をニッケルコーティングされた受容体ビーズに結合させ、ビオチニル化BimBH3ペプチドをストレプトアビジンコーテッドドナービーズに結合させる。次いで、ビーズを384ウエルマイクロタイタープレート(ウエル当たり1つの試験化合物)のウエルにおいて試験化合物とインキュベートし、アッセイ結果は、ヒュージョンαプレートリーダー(Fusion α plate reader)を使用して読み取る。結合アッセイは、タンパク質パートナーおよびビーズの濃度、インキュベーション時間およびアッセイ容積に関して、アッセイが典型的には>30:1のシグナル対バックグラウンド比を生じるように最適化することができる。一連のペプチドについて得られたIC50値が光学的バイオセンサーを使用して得られたIC50値に匹敵していたので、このアッセイは有効であると認められた。ペプチドの親和性は3桁の大きさにわたっていた(8nM〜35μM)けれども、2組の結果間で観察された強い相関(R2=0.9983)は、このアッセイが同じ相互作用を測定することを示す。His6 Bcl-2ΔC22/BimBH3についての結合アッセイも最適化することができる。一旦アッセイが最適化されると、それは厳密な品質制御に供して、プレート間の再現性および日々の再現性を評価することができる。次いで各アッセイを使用して独特のディスカバリーライブラリーをスクリーニングすることができる。偽のポジティブを排除するために、標的効能を満足する(IC50<25μM)すべての阻害性化合物は、二次競合アッセイにおいて有効であることが立証されうる(AlphaScreen(登録商標)、蛍光偏光およびBiaCore光学的バイオセンサー)。光学的バイオセンサーは、Bcl-2ファミリーメンバー間の相互作用を定量することを促進し、BH3-onlyタンパク質による生理学的結合に対する強い候補間の親和性の比較を容易に行うことができる。
【0080】
これらの最初の試験に合格する化合物を、とりわけ、液体クロマトグラフィー質量分析法により同一性および純度についてチェックすることができ、次いでそれらの標的特異性、即ち、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-wに対する親和性について試験することができる。活性化合物は腸吸収(Wohnsland et al., J Med Chem 44:923-930, 2001)および肝毒性を予測するようにデザインされたアッセイにおいても試験されるであろう。さらに、インシリコ法(コンピュータ利用)を使用してそれらの生体分布特性を予測し、代謝または毒性問題を与えることがありうるファルマコフォアを排除することができる(Drug Metabolism Databases and High-Throughput Testing During Drug Design and Development, Ed Erhardt, Blackwell Science, Malden, MA, USA, 1999)。全ての活性化合物に関するデータは、結合アッセイ、標的選択性、有利な予測されるADMET(Adsorption, Distribution, Metabolism, Excretion and Toxicity/吸着、分布、代謝、排泄および毒性)特性(van de Waterbeemd and Gifford, Nat Rev Drug Disc 2:192-204, 2003)および化学的追跡可能性における効能により等級付けすることができる。次いで、トップ化合物の全ての入手可能な近い構造の類似体を得ることができ、結合および死滅アッセイにおいて阻害活性について試験して、各構造シリーズについての予備的構造−活性関係を決定することができる。
【0081】
リード化合物に関する生物学的活性のアッセイに関して、有望なリード化合物が見出されると、培養における細胞生存率に関するそれらの活性を評価することができる。上記した基準に従って最適化された最大50のリード化合物を、培養された腫瘍原性および非腫瘍原性細胞系のパネルならびに初代マウスおよびヒト細胞集団、例えば、リンパ球に関して試験することができる。細胞生存率は、化合物1nM〜100μMを用いて3〜7日のインキュベーションにわたって監視することができる。もちろん、正常な細胞のカウンターパートよりもはるかに高く有効に癌細胞を死滅させる化合物にもっとも高い注意が向けられるであろう。<10μMで死滅させる化合物を、それらの標的の特異性および作用方式について評価することができる。それらの作用方式を立証することは重要である。何故ならば、試験化合物は細胞を間接的に死滅させるかも知れないからである。例えば、リード化合物がBcl-2に対して高い選択性で結合するならば、それはBcl-2を欠いている細胞を死滅させないであろう。ゆえに、作用の特異性は、野生型細胞における化合物の活性を、Bcl-2を欠いている細胞と比較することにより確認することができる。
【0082】
大部分の有望な候補は、マウスモデルにおいてそれらの抗腫瘍有効性の完全な分析に供することができる。以前に十分に特徴付けされた2つのモデルにおいて、mycトランスジェニックマウス(Adams et al., Nature 318:533-538, 1985)またはmyc/bcl-2二重トランスジェニック動物(上記 Strasser et al.)に由来するB細胞リンパ腫を注射された免疫適格性マウスは、急速に且つ再現可能に白血病/リンパ腫症候群に屈する。両腫瘍は標準化学療法(シクロホスファミド)に応答するけれども、myc/bcl-2腫瘍細胞を注射されたマウスは必ず再発する。これらの2つの移植可能な腫瘍は、ヒトリンパ腫に酷似しているこれらの悪性腫瘍を処置するに際して、単独でまたはシクロホスファミドと組み合わせて与えられたいかなる化合物の試験も可能とする。
【0083】
リード化合物の構造−活性関係(SAR)およびそれらの最適化に関して、最初のスクリーンから選ばれたリード化合物は、それらの生化学的、生物学的および薬理学的特性を高めるために相当な修飾を必要としうる(Bleicher et al., Nat Rev Drug Discov 2:369-378, 2003)。これらの化合物の最適化を助けるために、それらの作用様式は、生化学的および構造的研究において立証されうる。さらに、作用物質と生存促進分子間で形成された複合体は、NMR分光光度法により分析することができる。NMRは低親和性のリガンドを検出し、標的タンパク質上のどこにそれらが結合するかを示すことができるので、それは、結合の最適化を大いに支援することができ、薬物発見プロセスを加速することができる(Hajduk et al., J Med Chem 42:2315-2317, 1999; Pellecchia et al., Nat Rev Drug Discov 1:211-219, 2002)。化学シフトマッピングなどの技術を使用して、試験化合物のBcl-2タンパク質への結合を監視し、BH3ドメインを模倣する試験化合物が最適化のために選ばれるであろう。
【0084】
関連するアプローチにおいて、リード作用物質の分子モデル化を行って、適合したDOCKプログラムを使用してインシリコでのそれらの結合を評価することができる(Kuntz, Science 257:1078-1082, 1992)。リード化合物は、標的Bcl-2溝上にモデル化され、スコア関数を使用して最も可能性のある結合方式を予測する。これは、追加の相互作用を与えて結合を高める誘導体のデザインを導くであろう。NMR由来の実験データの入手可能性は、リガンドおよび標的を柔軟なドッキングをして、改良されたリガンドを予測することも可能とする(Lugovskoy et al., J Am Chem Soc 124:1234-1240, 2002)。
【0085】
この情報および生物学的アッセイからの情報を使用して、更なる試験のための誘導体化合物を合成することができる。各クラスのリード化合物について、誘導体を合成するためのストラテジー。例えば、典型的なヒット化合物は、2個または3個の連結された環系からなり、その各々はある範囲の官能基により置換されてもよい。官能基の各々を系統的に置き換えることにより、広い範囲の化学的性質を有する化合物を作製し、試験することができる。
【0086】
本発明は、拘束性BH3-onlyタンパク質足場を模倣する分子のコンホメーションを予測して候補作用物質を生成させおよび/または選択しおよび/またはスクリーニングし、次いでそれを作製し、それらのアポトーシスを誘導する能力を実験的に評価することができる、コンピュータによる方法も提供する。
【0087】
ゆえに、本発明は、拘束性表現型を与える残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質に基づく生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストをデザインするためのコンピュータによる方法であって、以下の段階を含む方法:無差別BH3-onlyタンパク質のコレクションを選択する段階;これらのタンパク質の配列アラインメントを提供し、それを拘束性BH3-onlyタンパク質と比較する段階;Bcl-2タンパク質への結合に関して無差別性または拘束性を与える該アラインメントで1つまたは複数の位置において個々のアミノ酸についての出現の頻度を生成さる段階;該頻度を使用して、電荷、サイズ、コンホメーション、溶解度、極性、疎水性、親水性および第三級構造への寄与から選択されたスコア関数を作成する段階;該スコア関数および少なくとも1つの追加のスコア関数を使用して、最適化されたタンパク質配列またはそのコンホメーション等価物のセットを生成させ、Bcl-2タンパク質への拘束性結合表現型を有する化合物もしくはタンパク質を生成するかまたは選択する段階、を提供する。
【0088】
拘束性BH3-onlyタンパク質の、Bcl-2タンパク質に拮抗作用し、アポトーシスを誘導する能力の評価は、適切な治療プロトコールの選択にとって重要である。このような評価は、ソフトウエアでプログラムされたコンピュータの支援により適当に促進され、このソフトウエアは、とりわけ、拘束性BH3-onlyタンパク質と関連する少なくとも1つの特徴についてスコア関数(SF)を加えて、誘導されたBcl-2拮抗作用の程度に対応する効能値(PA)を与える。このSFは、とりわけ、(a)酸性残基の数および位置;または(b)塩基性残基の数および位置;または(c)極性残基の数および位置;または(d)非極性残基の数および位置;または(e)帯電した残基の数および位置;または(f)帯電していない残基の数および位置;または(g)親水性残基の数および位置;または(h)疎水性残基の数および位置;または(i)残基のレベル;または(j)残基の溶解度レベル;または(k)残基のサイズ;または(l)BH3-onlyタンパク質において残基が作る第三級構造への寄与から選択されることができる。
【0089】
従って他の局面では、本発明は、細胞におけるアポトーシスを誘導する作用物質の構造を決定するためのコンピュータプログラム製品であって、下記(1)〜(3)を含む製品を包含する:
(1)BH3-onlyタンパク質またはBcl-2タンパク質と関連した少なくとも2つの特徴についてのインプットスコア関数(SF)として受け取るコードであって、ここで、該特徴は、とりわけ下記から選択されるものであるコード:
(a)酸性残基の数および位置、
(b)塩基性残基の数および位置、
(c)極性残基の数および位置、
(d)非極性残基の数および位置、
(e)帯電した残基の数および位置、
(f)帯電していない残基の数および位置、
(g)親水性残基の数および位置、
(h)疎水性残基の数および位置、
(i)残基のレベル、
(j)残基の溶解度レベル、
(k)残基のサイズ、
(l)BH3-onlyタンパク質において残基が作り出す第三級構造への寄与;
(2)該SFを加えてBH3-onlyタンパク質についてのPvに対応する和を提供するコード;ならびに
(3)前記コードを記憶するコンピューター可読媒体。
【0090】
関連した局面では、本発明は、細胞におけるアポトーシスを誘導するためのBH3-onlyタンパク質または化学的等価物の可能性のある有用性を評価するためのコンピュータであって、下記を含むコンピュータ:
(1)機械可読データでコードされたデータ記憶材料を含む機械可読データ記憶媒体であって、ここで、該機械可読データは、BH3-onlyタンパク質またはBcl-2タンパク質と関連する少なくとも2つの特徴についてのIvsを含み、ここで、該特徴は、とりわけ下記から選択されるものである機械可読データ記憶媒体:
(a)酸性残基の数および位置、
(b)塩基性残基の数および位置、
(c)極性残基の数および位置、
(d)非極性残基の数および位置、
(e)帯電した残基の数および位置、
(f)帯電していない残基の数および位置、
(g)親水性残基の数および位置、
(h)疎水性残基の数および位置、
(i)残基のレベル、
(j)残基の溶解度レベル、
(k)残基のサイズ、
(l)BH3-onlyタンパク質において残基が作り出す第三級構造への寄与;
(2)該機械可読データを処理するための指示を記憶するためのワーキングメモリ;
(3)該ワーキングメモリおよび該機械可読データ記憶媒体にカップリングされた中央処理装置であって、該機械可読データを処理して該化合物についてのPvに対応する該SFの和を提供する中央処理装置;ならびに
(4)該Pvを受け取るために、該中央処理装置にカップリングされたアウトプットハードウエア
に及ぶ。
【0091】
任意の汎用または特定の目的のコンピュータシステムが、本発明により包含され、メモリおよび少なくとも1つのインプット/アウトプットデバイス、例えば、端末などの両方と電気的に連通しているプロセッサーを含む。このようなシステムは、パーソナルコンピュータ、ワークステーションまたはメインフレームを含むことができるが、それらに限定されるわけではない。プロセッサーは、汎用プロセッサーまたはマイクロプロセッサーまたはRAMメモリ内にロケーションしたプログラムを実行する特殊化されたプロセッサーであることができる。プログラムは、記憶デバイス、例えば、ディスクまたはプレプログラムドROMメモリからRAM内に置かれることができる。1つの態様におけるRAMメモリは、データ記憶およびプログラム実行の両方のために使用される。コンピュータシステムは、プロセッサーおよびメモリが異なる物理的実体内にあるがしかしネットワークによって電気的に連通しているシステムも包含する。
【0092】
本発明に従って同定された作用物質は、癌の処置において有用である。
【0093】
本明細書で「処置」という表現は、現在の症状の重症度の減少を意味する。「処置」という用語は、症状の開始を阻止するための「予防処置」も含むものと考えられる。「処置」という用語は、被験体が完全に回復するまで処置されることを必ずしも意味しない。同様に、「予防処置」は、被験体が結局病気にかからないことを必ずしも意味しない。
【0094】
本明細書で使用された被験体は、ヒトおよび非ヒト霊長類(例えば、ゴリラ、キツネザル、キヌザル)、牧畜動物(例えば、ヒツジ、ウシ、ウマ、ロバ、ブタ)、伴侶動物(例えば、イヌ、ネコ)、研究室実験動物(例えば、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ハムスター)、捕獲性の野生動物(例えばキツネ、シカ)、爬虫類または両生類(例えば、オオヒキガエル)、魚類(例えば、ミノカサゴ)および本発明の作用物質から利益を得ることができる任意の他の生物(例えば、c. elegans)を指す。本発明に記載の作用物質から利益を得ることができる動物のタイプに対する限定はない。本発明の最も好ましい被験体はヒトである。被験体がヒトであるかまたは非ヒト生物であるかどうかにかかわりなく、被験体は、患者、固体、動物、宿主またはレシピエントと呼ぶことができる。
【0095】
従って、本発明の他の局面は、被験体における癌を予防するかまたは減少させる方法であって、癌を予防するかまたは減少させるのに十分な時間および条件下に、有効量のBcl-2タンパク質のアンタゴニストを該被験体に投与する段階を含む方法を提供する。
【0096】
Bcl-2に拮抗作用することができ、アポトーシスを誘導することができる作用物質の同定は、癌の治療的処置で使用するための医薬組成物を提供する。
【0097】
本発明の作用物質を、1種または複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と組み合わせて医薬組成物を形成することができる。薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の医薬組成物の吸収またはクリアランス速度を安定化させるかまたは増加もしくは減少させるように作用する薬学的に許容される化合物を含有することができる。薬学的に許容される化合物は、例えば、炭水化物、例えば、グルコース、スクロースまたはデキストラン、酸化予防剤、例えば、アスコルビン酸もしくはグルタチオン、キレート剤、小分子量タンパク質、ペプチドもしくはポリペプチドのクリアランスもしくは加水分解を減少させる組成物、または賦形剤または他の安定剤および/または緩衝剤を含むことができる。リポソーム担体を含む医薬組成物の吸収を安定化させるかまたは増加もしくは減少させるのに界面活性剤を使用することもできる。ペプチドまたはポリペプチドのための薬学的に許容される担体および処方は、当業者に知られており、科学文献および特許文献に詳細に述べられており、例えばRemington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Company, Easton, PA, 1990 ("Remington's")を参照。
【0098】
他の生理学的に許容される化合物は、湿潤剤、乳化剤、分散化剤または、微生物の増殖もしくは作用を阻止するのに特に有用な保存剤を含む。種々の保存剤が周知であり、例えば、フェノールおよびアスコルビン酸を含む。生理学的に許容される化合物を含む薬学的に許容される担体の選択は、例えば、本発明の調節剤の投与経路およびその特定の物理化学的特徴に依存することを、当業者は認識するであろう。
【0099】
医薬組成物の形態の作用物質の投与は、当業者により知られている慣用の手段により行うことができる。投与経路は、呼吸器、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下,頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、鞘内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、パッチ、または移植を含むが、それに限定される訳ではない。
【0100】
経口投与のために、化合物は、固体または液体製剤、例えば、カプセル剤、丸剤、錠剤、トローチ剤、散剤、懸濁剤または乳剤に処方することができる。経口剤形の組成物を調製する際に、通常の薬学的媒体のいずれも、例えば水、グリコール、油、アルコール、香味剤、保存剤、着色剤、懸濁化剤等を経口液体製剤(例えば、懸濁剤、エリキシル剤および溶液剤など)の場合に使用することができ;または、担体、例えば、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑剤、結合剤、崩壊剤等を、経口固体製剤(例えば、散剤、カプセル剤および錠剤など)の場合に使用することができる。それらの投与が容易であるので、錠剤およびカプセル剤は、最も有利な経口単位剤形を表し、その場合に、固体の薬学的担体が明らかに使用される。所望ならば、錠剤を標準技術により糖衣化または腸溶コーティングしてもよい。活性作用物質をカプセル化して、同時に血液脳関門の通過を許容するとともに胃腸管の通過に対して安定化させることができる。例えば、国際特許出願公開番号WO 96/11698参照。
【0101】
本発明の作用物質は、経口投与される場合には、消化から保護することができる。これは、核酸、ペプチドまたはポリペプチドを組成物と複合化させて、それを酸加水分解および酵素加水分解に耐性とするか、あるいは核酸、ペプチドまたはポリペプチドを適当に耐性の担体、例えば、リポソーム中にパッケージするかのいずれかにより達成することができる。化合物を消化から保護する手段は、当技術分野で周知であり、例えば、治療剤の経口送達用の液体組成物を記載している例えば Fix, Pharm Res 13:1760-1764, 1996; Samanen et al., J Pharm Pharmacol 48:119-135, 1996; 米国特許第5,391,377号を参照されたい(リポソーム送達が、以下にさらに詳細に検討されている)。
【0102】
注射可能な使用のための適当な医薬形態は、無菌の水性溶液剤(水溶性の場合)または無菌の注射可能溶液剤もしくは分散剤の即時調整のための分散剤および無菌の散剤、あるいはクリームまたは局所適用に適した他の形態にあることができる。それは製造および保存条件下で安定でなければならず、微生物、例えば、バクテリアまたは真菌の汚染作用に対して保存されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコールおよび液体ポリエチレングリコール等)、それらの適当な混合物および植物油を含有する溶媒または分散媒であることができる。適切な流動性は、例えばレシチンなどのコーティングの使用、分散剤の場合に必要な粒径の維持およびスーパーファクタントの使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗バクテリア剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサール等により引き起こすことができる。多くの場合に、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含むことは好ましいであろう。注射可能な組成物の長期の吸収は、組成物において吸収遅延剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを使用することにより引き起こされうる。
【0103】
無菌注射剤は、必要に応じて上記に列挙された種々の他の成分とともに適切な溶媒中に必要な量で作用物質を加え、次いでろ過滅菌により調製される。一般に、分散剤は、種々の無菌化された活性成分を、基本的分散媒および上記した成分からの必要な他の成分を含有する無菌のビヒクルに加えることにより調製される。無菌注射剤の調製のための無菌粉末の場合に、好ましい調製方法は、活性成分プラス任意の追加の所望成分の粉末を、予め無菌ろ過されたその溶液から生じさせる真空乾燥および凍結乾燥技術である。
【0104】
非経口投与のために、作用物質を、薬学的担体中に溶解し、液剤または懸濁剤のいずれかとして投与することができる。例示的な適当な担体は、水、食塩水、デキストロース溶液、フルクトース溶液、エタノールまたは動物、植物もしくは合成起源の油である。担体は、他の成分、例えば、保存剤、懸濁化剤、可溶化剤、緩衝剤等を含有することもできる。作用物質を鞘内に投与する場合には、作用物質は、脳脊髄液中に溶解させることもできる。
【0105】
経粘膜または経皮投与のために、透過されるべきバリアーに対して適切な透過剤を使用して作用物質を送達することができる。このような透過剤は、当技術分野で公知であり、例えば、経粘膜投与には、胆汁塩およびフシジン酸誘導体が知られている。さらに、界面活性剤を使用して透過を促進することができる。経粘膜投与は、鼻噴霧によりまたは座剤、例えば、Sayani and Chien, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst 13:85-184, 1996を使用することによるものであることができる。局所的、経皮的投与のために、作用物質は、軟膏剤、クリーム剤、軟膏、散剤およびゲル剤に処方される。経皮送達システムはパッチを含むこともできる。
【0106】
吸入のために、本発明の作用物質は、当技術分野で知られている任意のシステムを使用して送達することができ、乾燥散剤エアゾル、液剤送達システム、エアジェット噴霧器、噴射剤システム等を含み、例えば Patton, Nat Biotech 16:141-143, 1998参照;ポリペプチド高分子のための製品および吸入送達システムについては、例えばDura Pharmaceuticals (San Diego, CA), Aradigm (Hayward, CA), Aerogen (Santa Clara, CA), Inhale Therapeutic Systems (San Carlos, CA) 等による。例えば、医薬製剤は、エアゾルまたはミストの形態で投与することができる。エアゾル投与では、処方物は、界面活性剤および噴射剤と共に微細に分割された形態で供給することができる。他の局面では、処方物を呼吸組織に送達するための装置は、処方物を蒸発させる吸入器である。他の液体送達システムは、例えば、エアジェット噴霧器を含む。
【0107】
本発明の作用物質は、処方物を内部に送達することができる、徐放または徐放性機構において投与することもできる。例えば、生物分解性マイクロスフェアーまたはカプセルまたはペプチドを徐放することができる他の生物分解性ポリマー立体配置は、本発明の処方物に含まれることができる(例えばPutney and Burke, Nat Biotech 16:153-157, 1998)。
【0108】
本発明の医薬を調製する際に、様々の処方の改変を使用し、うまく取り扱って薬物動態学および生体分布を変えることができる。薬物動態学および生体分布を変えるための多数の方法が当業者に知られている。このような方法の例は、タンパク質、脂質(例えば、リポソーム、下記参照)、炭水化物または合成ポリマー(上記で検討)などの物質からなるベシクルにおける本発明の組成物の保護を含む。薬物動態学の一般的検討については、例えば、Remington’s参照。
【0109】
1つの局面では、本発明の作用物質を含む医薬製剤は、脂質単層または二層、例えば、リポソーム中に組み込まれる。例えば、米国特許第6,110,490号;第6,096,716号;第5,283,185号および第5,279,833号参照。本発明は、本発明の水溶性調節剤が単層または二層の表面に結合している処方物も提供する。例えば、ペプチドは、ヒドラジド-PEG-(ジステアロイルホスファチジル)エタノールアミン含有リポソーム(例えばZalipsky et al., Bioconjug Chem 6:705-708, 1995)に結合させることができる。リポソームまたは任意の形態の脂質膜、例えば、平面状脂質膜または無傷細胞、例えば、赤血球の細胞膜を使用することができる。リポソーム処方物は、静脈内投与、経皮投与(Vutla et al., J Pharm Sci 85:5-8, 1996)、経粘膜または経口投与を含む、いかなる手段によってもよい。本発明は、本発明の核酸、ペプチドおよび/またはポリペプチドがミセルおよび/またはリポソーム内に組み込まれている医薬製剤も提供する(Suntres and Shek, J Pharm Pharmacol 46:23-28, 1994; Woodle et al., Pharm Res 9:260-265, 1992)。リポソームおよびリポソーム処方物は、標準方法に従って調製することができ、当技術分野で周知されており、例えばRemington's; Akimaru et al., Cytokines Mol Ther 1:197-210, 1995; Alving ら、Immunol Rev 145:5-31,1995; Szoka and Papahadjopoulos, Ann Rev Biophys Bioeng 9:467-508, 1980、米国特許第4,235,871号、第4,501,728号および第4,837,028号参照。
【0110】
本発明の医薬組成物は、投与方法に依存して様々な単位剤形で投与することができる。典型的な医薬組成物の薬用量は当業者に周知されている。このような薬用量は、事実上助言的であり、特定の治療状況、患者の耐性等に依存して調節される。これを達成するのに適当な作用物質の量は、「有効量」として定義される。この使用のための投与スケジュールおよび有効量、即ち、「投与計画」は、疾患または症状の段階、疾患または症状の重さ、患者の健康の一般的状態、患者の身体的状態、年齢、活性作用物質の医薬製剤および濃度等を含む種々のファクターに依存するであろう。患者のための投与計画を計算する際に、投与の方法も考慮される。投与計画は薬物動態学、即ち、医薬組成物の吸収速度、生物利用性、代謝、クリアランス等も考慮しなければならない。例えば、Remington's; Egleton and Davis, Peptides 18:1431-1439, 1997; Langer, Science 249:1527-1533, 1990参照。
【0111】
これらの方法に従えば、本発明に従って規定された作用物質および/または医薬組成物は1種または複数の他の作用物質と共投与することができる。本明細書で「共投与される」という表現は、同じ処方物または2つの異なる処方物において同じ経路もしくは異なる経路で同時に投与することあるいは同じ経路もしくは異なる経路で逐次に投与すること(sequential administration)を意味する。本明細書で「逐次の」投与という表現は、2つのタイプの作用物質および/または医薬組成物の投与の間の秒、分、時間または日の時間差を意味する。作用物質および/または医薬組成物の共投与は、任意の順序で行ってよい。
【0112】
または、ターゲッティングシステム、例えば、抗体または細胞特異的リガンドまたは特異的核酸分子の使用により、ターゲッティング治療を使用して、活性作用物質をあるタイプの細胞に、より特異的に送達することができる。ターゲッティングは、種々の理由で、例えば、作用物質が許容不可能に毒性である場合、または別の状況では作用物質があまりにも高い投与量を必要とする場合、または別の状況では作用物質が標的細胞に入ることができない場合に、望ましいことがある。
【0113】
作用物質を直接投与する代わりに、作用物質を、標的細胞中で、例えば、上記したようにウイルスベクターにおいてまたは米国特許第5,550,050号および国際特許公開番号第WO92/19195号、第WO94/25503号、第WO95/01203号、第WO95/05452号、第WO96/02286号、第WO96/02646号、第WO96/40871号、第WO96/40959号および第WO97/12635号に記載のように細胞をベースとする送達システムにおいて産生させることができる。ベクターは、標的細胞にターゲッティングされうる。細胞をベースとする送達システムは、所望の標的部位において患者の身体に移植されるようにデザインされ、標的作用物質のためのコード配列を含有する。または、作用物質は、処置されるべき細胞において産生されたまたは処置されるべき細胞にターゲッティングされた活性化剤によって活性な形態に転換される前駆体として投与することができる。例えば、ヨーロッパ特許出願番号第0 425731A および国際特許公開番号第WO90/07936参照。
【0114】
さらに他の局面では、本発明は、本発明の組成物、例えば、作用物質を含むキットを提供する。このキットは、本明細書に記載された本発明の方法および使用を教示する指示資料を含むこともできる。
【0115】
当業者は、本明細書に記載の本発明が特定的に記載された本発明以外の変更および修正を受けることができることを認識するであろう。本発明は、すべてのこのような変更および修正を含むことは理解されるべきである。本発明はまた、本明細書で個々にまたはまとめて言及されまたは示された工程、特徴、組成物および化合物のすべてを含み、工程または特徴の任意のおよびいずれか2つ以上の全ての組み合わせも含む。
【0116】
本発明を下記の非限定的実施例によりさらに説明する。
【0117】
実施例1
実験手順
下記の実験手順を下記するその後の実施例で使用する。
発現構築物:
ヒトBcl-2(受入番号NP 000624、残基 1〜217)およびヒトBcl-w(受入番号NP_004041; 残基 1〜164; C29S A128E)をpQE-9(Qiagen)にクローニングした。発現したタンパク質は、追加のN末端残基(MRGSHHHHHHGS、配列番号:1)を有する。ヒトBcl-xL(受入番号NP_612815; 残基1〜209)、マウスMcl-1(受入番号NP_031588; 残基 152〜308)およびマウスAl(受入番号NP_033872; 残基 1〜152)をpGEX-6P-3(Amersham Biosciences)中にクローニングし、それにより、PreScissionプロテアーゼ消化(下記参照)の後タンパク質中に5個のみの追加のベクター由来の残基(GPLGS)が存在するようにした。ヒトBcl-2、ヒトBcl-xLおよびマウスMcl-1のためのFLAG(DYKDDDDK、配列番号:2)タグ付哺乳動物発現ベクターは、Huangら、EMBO J 16:4628-4638, 1997に記載されている。N末端にHA(YPYDVPDYA、配列番号:3)タグ付の完全長ヒトBimEL、ヒトBimL、ヒトPuma、マウスBad、ヒトBikおよびマウスNoxaをpEF PGKhygro(上記 Huang et al.; O'Conner et al., EMBO J 17:384- 395, 1998)にサブクローニングした。プルーフリーディングPfuポリメラーゼ(Stratagene)をPCRのために使用し、構築物は自動化された配列決定により確かめられた。使用したオリゴヌクレオチドおよび構築物の詳細は本発明者から入手可能である。
【0118】
pQE-9(Quiagen)における構築物は、その安定性を改良するために(Hinds et al., 2003)C29SおよびA128E突然変異を有する、ヒト (h) Bcl-2(受入番号NP_000624; 残基 1〜217)およびhBcl-w(NP_612815; 残基 1〜209)を含む。HexaHisタグ(HHHHHH)は、ニッケルカラムでのそれらの精製を可能とした。組み換えhBcl-xL ΔC24、マウス(m)Mcl-1 ΔN151 ΔC23およびmAl ΔC20をGST融合タンパク質として発現させ、PreScissionプロテアーゼを用いてグルタチオンセファロースカラムから開裂させて、記載されたとおりに精製した(Day et al., 1999; Hindset al., 2003)。pGEX-6P-3(Amersham Biosciences)において使用された構築物は、Bcl-xL(NP_612815; 残基 1〜209)、Mcl-1(NP_031588; 残基 152〜308)およびAl(NP_033872; 残基 1〜152)からの配列を含んでいた。プロテアーゼ消化の後に、それらは5個のN末端ベクター由来の残基(GPLGS)を保持する。
【0119】
遊離N末端およびC末端を有するこの研究で使用されたペプチド(図2A)は、Mimotopes(Victoria, Australia)により合成された。すべてのペプチドを、逆相HPLCにより精製し、hBik(87%)、mBmf(85%)およびmNoxa B(78%)を除いて、>90%の純度であった。それらの同定は、エレクトロスプレー質量分析法により確かめられた。重量を計ることおよび分析HPLCカラムでの214nMでのそれらの吸光度により定量されたペプチドは、1〜2mMストック水溶液として完全に溶解し;hBimBH3をDMSOに溶解した。ペプチドの受入番号は、mBimL(AAC40030)、hBimL(AAC39594)、hPuma(AAK39542)、mBmf(AAK38747)、hBad(NP_004313)、hBik(NP_ 001188)、hHrk(NP_003797)、hBid(NP_001187)、hNoxa(NP_066950)、mNoxa(NP_067426)である。
【0120】
組み換えタンパク質およびペプチド:
N末端HexaHis融合タンパク質として発現された、組み換えヒトBcl-2 ΔC22およびヒトBcl-w ΔC29(C29SおよびA128E突然変異を含有してタンパク質溶解性を改良するが結合特性に影響はない)を、Wilson-Annan et al., J Cell Biol 162:877-888, 2003に記載のとおりに調製した。組み換えヒトBcl-xL ΔC24、マウスMcl-1 ΔN151 ΔC23およびマウスAl ΔC20をGST融合タンパク質として発現させ、記載のとおりグルタチオンセファロースカラムから開裂させた(Day et al., Cell Death Differ 6:1125-1132, 1999; Hinds et al., EMBO J 22:1497-1507, 2003)。
【0121】
遊離N末端およびC末端を有するこの研究で使用されたペプチドは、Mimotopesにより合成された。逆相HPLCにより精製されたすべてのペプチドは、Bik(87%)、mBmf(85%)およびmNoxa2(78%)を除いて、90%より高い純度であった。それらの同定は、エレクトロスプレー質量分析法により確かめられた。ペプチドは、重量を計ることおよび分析HPLCカラムで214nMでのそれらの吸光度により定量され;それらは、1〜2mMストック水溶液として完全に溶解した。ペプチドの受入番号はマウスBimL(AAC40030)、ヒトBimL(AAC39594)、ヒトPuma(AAK39542)、マウスBmf(AAK38747)、ヒトBad(NP_004313)、ヒトBik(NP_001188)、ヒトHrk(NP_003797)、ヒトBid(NP_001187)、ヒトNoxa(NP_066950)、およびマウスNoxa(NP_067426)であった。
【0122】
円偏光二色性(CD)分光法:
円偏光二色性(CD)測定のために、ペプチドおよびウマ心臓ミオグロビンのストック溶液を、30mMリン酸ナトリウム(pH7)中かまたは30%(v/v)(2,2,2-トリフルオロエタノール)(TFE)を補充された20mMリン酸ナトリウム(pH7)中いずれかの0.15mg/mlの終濃度に希釈した。CDスペクトルを、0.1cmのキュベットを有するAVIV 62DSモデル分光旋光計で室温にて記録した。2つの逐次走査を記録し、緩衝剤のみのバックグラウンドスペクトルを差し引いた。
【0123】
親和性測定および溶液競合アッセイ:
ランニングバッファーとしてHBS(10 mM HEPES pH 7.2、150 mM NaCl、3.4 mM EDTA、0.005% Tween 20)を用いてBiacore 3000バイオセンサー(Biacore)で室温にて親和性測定を行った。アミンカップリング化学(上記Wilson-Annan et al.)を使用してCM5センサーチップ上に、マウス26-mer wtBimBH3、4EBimBH3突然変異体、BadBH3、NoxaBH3または対照無関係ペプチドを固定化した。直接、BimBH3に対する生存促進Bcl-2様タンパク質の結合親和性を評価するために、タンパク質を20μl/分でセンサーチップ中に直接注入した。残留結合タンパク質を50mM NaOHまたは6M GuHCl(pH7.2)で脱着し、次いでランニングバッファーで2回洗浄した。結合速度論は、BIA evaluation software(version 3, Biacore)(上記Wilson-Annanet al.)を使用して、ベースライン応答を差し引いた後、センサーグラム(sensorgrams)から誘導された。
【0124】
生存促進Bcl-2タンパク質に対するBH3ペプチドの相対的親和性は、Bcl-2様タンパク質への結合について固定化されたwtBimBH3ペプチドと競合するそれらの能力を比較することにより評価された(上記 Wilson-Annan et al.)。固定された飽和以下の量の(10nM)の生存促進Bcl-2タンパク質を、HBS中の変化する量の競合剤BH3ペプチドと氷上で>2時間インキュベートした。次いで、混合物を、マウスwtBimBH3を有するチャンネルおよび固定化されたマウス4EBimBH3を有する対照チャンネルを含むセンサーチップに注入した。ベースライン応答(対照チャンネル)を差し引いて、絶対結合応答を得た。生存促進タンパク質のみに対する応答を最大応答(100%)とみなして、次いで所与の注入時点(430秒)において増加する量の競合剤ペプチドの存在下に相対的残留結合(%)を計算した。相対的残留応答(f)は、最初のペプチド濃度に対してプロットされ、式 f=100/(1+(c/IC50)m)(式中、cは競合剤ペプチドの濃度であり、m=曲率定数であり、IC50=結合を50%減少させるのに必要な競合剤ペプチドの濃度である)に適合した。理論的には、IC50=[A]/2+KD(式中、[A]は分析物濃度である)。
【0125】
研究された組み換えタンパク質(Bcl-2、Bcl-xL、Al)のいくらかは、システイン残基を含有するが、Bcl-2またはBcl-xLの挙動は、ジチオトレイトール(DTT)により影響されなかった。2.5mMトリス(カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)を、2つのシステインを含有し、研究された他のタンパク質より安定性が低いと思われるAlとのインキュベーション混合物中に含ませた。
【0126】
一過性トランスフェクション、免疫沈殿およびイムノブロッティング:
ヒト胚腎臓(HEK)293T細胞の維持、トランスフェクションおよび35S-メチオニン/システイン(NEN)による代謝標識ならびに共免疫沈殿は記載されている(上記 Huang et al.; Moriishi et al., Proc Natl Acad Sci USA 96:9683-9688, 1999; 上記 O'Conner et al.)。簡単に言えば、当量のTCAで沈殿可能なライセートを、HA(HA.11;CRP)、FLAG(M2;Sigma)および対照Glu-Glu(CRP)タグに対するマウスモノクローナル抗体を使用して免疫沈殿させた。タンパク質をSDS:PAGEにより分離し、ニトロセルロース膜に移し、フルオログラフィー(Amplify; Amersham Biosciences)により検出した。HA(3F10; Roche)、FLAG(9H1;(上記 Wilson-Annan et al.)に対するラットモノクローナル抗体またはHRP複合抗ラット(Southern Biotechnology)により検出されたマウスモノクローナル抗14-3-3β(H-8;Santa Cruz)を使用してイムノブロッティングを行った。タンパク質は、高められた化学発光(ECL; Amersham Biosciences)により示された。
【0127】
実施例2
BimBH3は、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Mcl-1およびAlに堅く結合する。
比較インビトロ結合の研究に必要な可溶性の、モノマーで、等価な組み換え生存促進タンパク質を生成することは、それらの疎水性C末端ドメイン(例えば上記 Hinds et al.)およびMcl-1のN末端PEST領域の除去を必要とした(Kozopas et al., Proc Natl Acad Sci 90:3516-3520, 1993)。同様に、完全長BH3-onlyタンパク質は、高い信頼性で産生させることができず、それゆえ我々は、長いペプチド(24〜26残基;表3)を使用した。何故ならば、より短いペプチドの減少したヘリックスの傾向は、結合を減少させうるからである(上記 Petros et al., 2000)。マウスBimのBH3ドメイン(BimBH3)に及んでいる26-mer ペプチドは、より長いBimポリペプチドと同じく強くBcl-wに結合するので(上記 Wilson-Annan et al.)、我々はそれを使用して、他の哺乳動物生存促進分子に対するBimの親和性を測定した。Mcl-1は、例えば、固定化された野生型に対して行うとき強い応答を与えたが、突然変異体(非結合性)BimBH3ペプチドに対してはそうではなかった(図1A)。実際に、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、Mcl-1およびAlは、すべてwtBimBH3に対する強い1:1化学量論的結合を示した(図1B)。解離平衡定数(KD)は0.2〜4.5nMの範囲であった(表2)。かくして、Bimはすべての5つの哺乳動物生存促進タンパク質を比較可能にターゲッティングする。
【0128】
(表2)生存促進タンパク質へのBimの比較可能な結合

【0129】
センサーチップに固定化されたwtBimBH3に対する生存促進分子の結合定数を、上記 Hinds et al., Supra; Wilson-Annan et al.に記載のバイオセンサー実験を使用して決定した。
【0130】
実施例3
あるBH3ドメインは生存促進標的に選択的に結合する
他のBH3ペプチドが生存促進タンパク質に同様に結合するかどうかを評価するために、我々は、競合結合アッセイを使用して溶液中のそれらの結合親和性を直接比較した。このようなアッセイにおいて、標的タンパク質の品質および絶対量は直接結合におけるよりは重要性が低く、溶液結合は、いくらかの固定化されたペプチドで遭遇した立体障害を排除する。図1Cはこのアプローチを説明する:溶液中のBcl-xLの増加する量のBikBH3との予備インキュベーションは、wtBimBH3へのその結合を減少させた(図1D)。結合の低下から、BikBH3のIC50(結合を半分にする競合剤ペプチド濃度)を計算することができる(図1E)。IC50は相対的結合親和性を反映するので(実験手順参照)、我々は、このアッセイを使用して8つのBH3ペプチド(表3)の5つの生存促進タンパク質への結合親和性を比較した。
【0131】
印象的なことに、異なる生存促進タンパク質に対するBH3ペプチドの相対的親和性は、10,000倍にわたって変化した(図2Aおよび表2)。それらの結合性は、いくつかのクラスに入った(図2Bおよび図4)。BimBH3およびPumaBH3のみはすべての生存促進タンパク質に対して匹敵する親和性を有していた。他のBH3ペプチドは驚くべきことにそれらの特定のサブセットに対して選択的であった。BadBH3は、例えば、Bcl-2、Bcl-xLおよびBcl-wを強く好み(5.3〜30nM)、Al(〜15μM)またはMcl-1(>100μm)であり(図2AおよびB)、BmfBH3は類似した好みを示した。顕著に対照的に、NoxaBH3は、Mcl-1およびAlに対して高度に選択性であったが(nM範囲)、他のものには検出できるほどに結合しなかった(>100μM)。最後に、BikBH3、HrkBH3およびBidBH3は、Bcl-2またはMcl-1よりも、Bcl-xL、Bcl-wおよびAlを好む。広くいきわたっている見解とは対照的に、生存促進タンパク質もまたBH3結合に対して独特なパターンを持っていた:即ち、Bcl-xLはBcl-wのような挙動をし、Bcl-2とは明らかに異なり、これに対して、Mcl-1およびAlは別のグループを形成した(図2B)。
【0132】
(表4)BH3ペプチド

【0133】
固定化されたペプチド(上部の2列)はマウス(m)BimLに由来していた。4EBimBH3は、グルタミン酸(E)に突然変異した生存促進タンパク質と相互作用するために重要な4個の疎水性残基(H1〜H4)を有する(テキスト参照)。競合剤ペプチドは、「m」(マウス)と表示されたペプチドを除いては、ヒトタンパク質に由来していた。配列は、上記 Huang and Strasserに記載のとおりGCG“PILEUP”プログラムを使用してアラインメントされた。
【0134】
すべてのBH3ペプチドは少なくとも2つの生存促進タンパク質に強く結合したので(図2)、それらのインテグリティーまたはコンホメーションは、我々の結果に影響を及ぼすことはありそうもない。にもかかわらず、より短いBadBH3ペプチドのBcl-xLへの結合はそれらのヘリシティーに依存しているので(上記 Petros et al., 2000)、我々は、CD(円偏光二色性)分光法により使用されたペプチドのコンホメーションを評価した。水性環境では、すべてのペプチドは、顕著に構造性がない(図5A)ように見えた。しかしながら、30% TFE(2,2,2-トリフルオロエタノール)、αヘリックス形成を安定化する溶媒(Nelson and Kallenbach, Biochemistry 28:5256-5261, 1989)を添加すると、それらは容易にαヘリックスになったが(補足図S2B)、これはそれらのヘリックス潜在力を示している。我々は、TFE中のそれらのヘリックス傾向と結合親和性との間に相関関係はないことを観察した。
【0135】
BadおよびNoxaで観察された、特徴的で相補的な結合パターンは、特に印象的であった(図2)。Noxaに関する結果は、他の溶液競合アッセイの結果(上記 Letai et al.)と合致していたが、Noxaは、報告によれば、共免疫沈殿アッセイにおいてBcl-2およびBcl-xLに結合した(Oda et al., Science 288:1053-1058, 2000)。この矛盾に対処するために、我々は、固定化されたBadBH3またはNoxaBH3ペプチドとの直接結合アッセイも行った。溶液競合結果によれば、Bcl-2、Bcl-xLおよびBcl-wのみがBadBH3に結合し(図6A)、Mcl-1およびAlのみがNoxaBH3に結合した(図6B)。ヒトNoxaと違って、マウスNoxaは2つのBH3ドメインを含有する(上記 Oda et al.)が、両方のマウスNoxaBH3ペプチド(表2)はMcl-1に結合したが(IC50 87および109nM)、Bcl-2、Bcl-xLまたはBcl-wには結合しなかった。ゆえに、Noxaは、推定されるようにMcl-1およびAlに特異的に拮抗作用する。
【0136】
実施例4
Bad、BikおよびNoxaは哺乳動物細胞において選択的生理学的標的を有する
選択的相互作用を異なるアッセイで確かめた。作製することができた組み換えBH3-onlyタンパク質(Bim、Bmf、BadおよびBid)で行われたGSTプルダウン実験は、溶液競合アッセイと合致した結果を与えた。最も適切なことに、GST Mcl-1はBimに堅く結合し、Bmfには弱く結合したが、Badには結合しなかった。このインビトロでの発見を立証するために、完全長N末端タグ付タンパク質の選ばれたペアーの相互作用を、共免疫沈殿により哺乳動物細胞において調べた。HA-Bim、Puma、Bad、BikまたはNoxaを、プロフィルされた3つのクラスの生存促進タンパク質の代表として、FLAG-Bcl-2、Bcl-xLおよびMcl-1と共にHEK293T細胞中で共発現した(図2B)。細胞を35S-メチオニン/システインで代謝的に標識して、共会合している放射線標識されたタンパク質間のいかなる相互作用の半定量的評価も可能とした。試験したすべてのペアーについて、共免疫沈殿により検出された相互作用(図3)は、先の親和性測定(図2)と一致していた。特に、Badは、Bcl-2およびBcl-xLによく結合したが、Mcl-1には認められるほどには結合しなかったが(図3D、3E)(Opferman et al., Nature 426:671-676, 2003)、これに対して、Noxa(2つのBH3を有する完全長マウスNoxa)は、Mcl-1とのみ相互作用した(図3F、3G)。Bikは、Bcl-2またはMcl-1より高い程度にBcl-xLに結合したが(図3C)、これに対して、BimおよびPumaは、予想されたとおり、すべての3つの生存促進タンパク質によく結合した(図3Aおよび3B)。
【0137】
実施例5
特定の残基は、Mcl-1に対するNoxaの選択性を決定するのに重要である
BH3ドメインの配列を比較すると、そのF32およびK35はMcl-1に対するNoxaの特異性を決定するのに重要でありうると思われる。野生型NoxaはBcl-xLに結合しなかったが、F32またはK35いずれかへの突然変異はBcl-xL結合を高め、Bcl-xL結合は二重突然変異体においてさらに高められる(表4)。これは、NoxaのF32およびK35がMcl-1に対するNoxaの選択性を決定するのに重要であることを強く示唆している。
【0138】
(表4)特定の残基がMcl-1に対するNoxaの選択性を決定するのに重要である

【0139】
実施例6
Bad、BikおよびNoxaは、哺乳動物細胞において異なる標的を有する
インビトロでの発見を立証するために、哺乳動物細胞において会合した完全長N末端タグ付タンパク質の選ばれたペアーを共免疫沈殿により調べた。プロフィルされた異なるクラスの生存促進タンパク質の代表として(図4)、Bcl-2、Bcl-xLおよびMcl-1を、Bim、Puma、Bik、BadまたはNoxaと共に293T細胞中で共発現した。細胞を、35S-メチオニン/システインで代謝的に標識して、標識されたタンパク質間のいかなる相互作用の半定量的評価も可能とし、または相互作用をより鋭敏なウエスタンブロットにより測定した。
【0140】
有意義なことに、試験したすべてのペアーについて、共免疫沈殿により検出された相互作用は、先の親和性測定から予想された相互作用であった(図4)。特に、Badは、Bcl-2およびBcl-xLによく結合したが、Mcl-1に認められるほどには結合せず、これに対して、Noxa(2つのBH3を有する完全長マウスNoxa)はMcl-1とのみ相互作用した。さらに、Bikは、Bcl-2またはMcl-1よりは高い程度にBcl-xLに結合したが、これに対して、Bimは、予想されるとおり、全ての3つの生存促進タンパク質に、Pumaと同じく、強く結合した。
【0141】
実施例7
制限された標的を有するBH3-onlyタンパク質はより弱いキラーである
選択的結合の生物学的関係を評価するために、レトロウイルス送達を使用して、異なるBH3-onlyタンパク質の、野生型マウス胚繊維芽細胞(MEFs)を死滅させる能力を比較した。導入された遺伝子の発現を監視するために、その発現が内部リボソームエントリー部位(IRES)を介してグリーン蛍光タンパク質(GFP)のそれにカップリングされたベクター(pMIG)を使用した(Van Parijs et al., Immunity 11:281-288, 1999)。細胞を有効に感染させ(>90%)、導入されたBH3-onlyタンパク質を比較可能に発現した。感染した(GFP+ve)細胞の生存率を感染の24時間後(図7A、7B)および長期コロニーアッセイ(図7E)において採点した。
【0142】
親ウイルスによる感染は最小のアポトーシスを引き起こしたが、これに対して、Pumaまたは種々のBimアイソホーム(Bims、BimLまたはBimEL)を発現するウイルスで感染させた大抵の細胞は、用量に依存してまもなく死に(図7B)、コロニーを形成しなかった(図7E)。重要なことであるが、試験した他のBH3-onlyタンパク質(Bmf、Bad、Bik、Hrk、Noxa)は、適当に発現されたけれども、はるかに効力の低いキラーであった(図7B)。これは多分、これらのBH3-onlyタンパク質のどれもMEFsで実質的に発現されたすべての生存促進分子(Bcl-2、Bcl-xL、Mcl-1)を中和することはできないからである。
【0143】
あるBH3-onlyタンパク質のより弱いアポトーシス促進活性は、通常特異的ネガティブ調節機構、例えば、Badの14-3-3タンパク質による結合のせいにされてきた。このような効果を排除し、異なるBH3ドメイン間の直接の比較を可能とするために、BimsBH3がPuma、BadまたはNoxaのそれで置き換えられているキメラ分子も分析した。最も効力のあるBimアイソホームであるBimsは、ダイニンモーター複合体との相互作用により調節されないので、共通の主鎖としてBimsが選ばれた。そのアポトーシス促進活性は、BH3領域だけに頼っている。何故ならば、突然変異したBH3を有するBims4Eは生存促進分子のいずれにも結合せず、アポトーシス促進活性を欠いていたからである。キメラタンパク質の他の利点は、それらのネイティブ対応物と違って、すべてが比較しうるレベルで発現されたということである。
【0144】
注目すべきことに、PumaBH3とのBimsキメラは、試験したすべての生存促進分子に結合するPumaの能力を保持しており、ネイティブBimまたはPumaと同じく強力に死滅させた。対照的に、BadBH3またはNoxaBH3とのBimsキメラは、それぞれ、ネイティブBadまたはNoxaと同様に挙動した。BimsBadBH3はBcl-xLに結合し、Mcl-1に結合しなかったが、これに対して、BimsNoxa BH3がその代わりにMcl-1に結合した。従って、これらの2つのキメラは短期間および長期間アッセイの両方において弱いアポトーシス促進活性を示した。かくして、各BH3-onlyタンパク質により誘導される死滅は、細胞中に存在する全ての生存促進Bcl-2様分子に堅く結合するその能力を反映すると思われる。
【0145】
実施例8
BadとNoxaとの機能的相補性
結果は、アポトーシスはすべての関係する生存促進タンパク質の中和を必要とすることを示すので、相補的結合プロフィルを有するBH3-onlyタンパク質(図8A)は、細胞を死滅させることにおいて協同するべきである。かくして、Mcl-1のNoxaによる中和は、MEFsにおいてBcl-2およびBcl-xLを中和するためにBadBH3の共発現により相補されるべきである(図8A)。同様に、NoxaBH3は、Bcl-xLに対するよりは約40倍少なくMcl-1に結合するBikにより誘導される死滅を増加させるべきである。相補性の試験を可能とするために、BH3-onlyタンパク質のペアーは、GFPを、BimsのGFP融合物またはキメラBimsBadBH3およびBimsNoxaBH3のGFP融合物で置き換えることによりpMIGベクターにおいて共発現された。このような融合物は、GFP Bims融合物が強力なキラーであったので、このような融合物の親BH3-only対応物と同様に挙動する(図8B)。
【0146】
重要なことに、NoxaのBadBH3との共発現は、Bims単独の発現と同じく多く細胞死をもたらした(図8B)。同様にNoxaBH3は、Bikによる死滅を強力に高めた。観察された相乗性は、相補性BH3機能を反映する。何故ならばNoxaBH3の共発現はNoxa死滅を増加させず、GFPに融合されたBimsBadBH3がMcl-1に結合しないNoxaの不活性な形態(3EBH3突然変異体;実験手順参照)と共発現されたとき有意な死滅は観察されなかった(図8B)。かくして、主としてBcl-2およびBcl-xLに結合するBadおよびBikの両方は、Mcl-1に選択的に結合するNoxaと強力に協同して、3つのBH3-onlyタンパク質のいずれかが繊維芽細胞において単独で発現されるときに観察される弱い死滅を増加させることができる。
【0147】
実施例9
無差別性Noxa突然変異体により誘導される強力な死滅
次いでNoxaの選択性結合プロフィルおよび弱い死滅活性の分子的基礎を探索した。機能的相補性結果(図8)は、追加の生存促進タンパク質に結合するNoxaの形態は、強力なキラーであることを示唆する。Bcl-xLの高解像X線結晶学的構造:Bim複合体は、このような変異体についての調査を導いた(図9A)。BimBH3の疎水性残基(ロイシンL94、イソロイシンI97、フェニルアラニンF101;マウスBimLのナンバーリングに基づいている)は、Bcl-xLの表面の疎水性ポケットに結合する。Bcl-xL(およびBcl-2)上のBim I97(h3)のためのポケットは、部分的にフェニルアラニン(F97)およびチロシン(Y101)残基により部分的に形成され、これらはMcl-1における対応する残基(バリン、ヒスチジン)またはAlにおける対応する残基(バリン、バリン)よりも大きく、これは、Mcl-1およびAlがヒトNoxa BH3に見出されるγ分岐状フェニルアラニン(F32)をより容易に収容することができる(図9B)ことを示唆する。さらに、Bimの負に帯電したグルタメート(E100)とBcl-xL上の正に帯電したアルギニン(R100)とで相互電荷ペアーが形成されるが、Bcl-2およびBcl-wに保存されたこのアルギニンは、Mcl-1では中性アスパラギンにより、Alではグルタメートにより置き換えられている。従って、BimBH3におけるグルタメート(E100)からNoxaに存在するリシン(K35)への電荷変化は(図9B)、Bcl-xLへのNoxaBH3の結合を害するファクターでありうる。
【0148】
これらの考察に基づいて、突然変異K35E(m1)、F32I(m2)またはその両方(m3)を有するNoxaペプチド(図9B)を、溶液競合アッセイにおいて生存促進タンパク質への結合について試験した。Bcl-2へのそれらの結合は、弱いままであったが、Bcl-xLおよびBcl-wへの結合は、顕著に増加した(図9C)。Bcl-xLについては、電荷切り替え突然変異K35E(m1)は20倍より多く結合を増加させ;F32I置換(m2)は100倍より多く結合を高め;かつ二重突然変異(m3)は、結合をさらに増加させた(図9C)。wt NoxaBH3のIC50はBcl-xLおよびBcl-wの両方にに対して>100,000nMであり、m3突然変異体は、Bcl-xLについて110nMのIC50およびBcl-wについて410nMのIC50を示したが、Mcl-1結合は僅かに改良された(図9C)。共免疫沈殿実験は、Noxa m3が細胞中のBcl-xLに結合することを確かめたが(図9D)、これに対して野生型Noxaはそうではなかった(図7C)。かくして、2つのキーBH3残基の変化はNoxaの特異性を広くするのに十分であった。
【0149】
有意義なことに、繊維芽細胞中で発現されるとき、Noxa m3は、野生型Noxaよりも強力なキラーであることが証明された(図9E、9F)。かくして、NoxaのMcl-1のみへの結合は、MEFsを死滅させるのに十分ではない。Noxaによるアポトーシスの有効な誘導は、Bad様タンパク質の共発現(図8)によるかまたはNoxa選択性を減少させる突然変異(m3、図9)により与えられた、Bcl-2/Bcl-xL/Bcl-wクラスのタンパク質との追加のBH3相互作用を必要とする。
【0150】
参考文献一覧




【図面の簡単な説明】
【0151】
【図1】競合結合アッセイを示すグラフ表示である。(A)Mcl-1を、固定化されている突然変異体4EBimBH3(青)またはwtBimBH3(赤)を有するセンサーチップに注入した。絶対結合(黒)を得るために、4EBimBH3とのベースライン応答をwtBimBH3との応答から差し引いた。(B)生存促進タンパク質はBimに等しく結合する。生存促進タンパク質を固定化されたwtBimBH3上に注入したときの匹敵する応答を示すセンサーグラム。(C)溶液競合アッセイ。増加する競合剤ペプチド濃度(2)は、固定化されたリガンド(1)へのBcl-xL結合を減少させる。(D)競合剤BH3ペプチドとの予備インキュベーションは、バイオセンサー応答を減少させる。混合物をwtBimBH3チップ上に注入する前に、Bcl-xLを、増加する濃度のBikBH3と予備インキュベートした。ライン(430秒における)は、IC50を計算するために使用された応答を示す。(E)BikBH3は、Bcl-xL結合について固定化されたBimBH3と有効に競合した。相対的応答(%)は、BikBH3なしのBcl-xL(100%)と比較して、指示された濃度のBikBH3の存在下に固定化されたペプチドに依然結合するBcl-xLの割合を示す。(500秒の後の不規則な応答は、分析物解離後のチップを洗浄したことによる)。色の再現は要求に応じて特許権者から入手可能である。
【図2】アポトーシス促進BH3-onlyタンパク質と生存促進Bcl-2様タンパク質は異なる相互作用を有することを示すグラフ表示である。(A)競合結合アッセイを使用して、指示された相互作用についてのIC50(nM)を決定した。示された結果は、代表的実験からの結果であり;多重実験で観察された変動は、2倍より低かった(異なるチップまたはタンパク質バッチを使用して)。(B)相互作用の相対的結合アフィニティ(Aに要約された)を逆にプロットした。生存促進タンパク質のBH3結合プロフイルを示す。(C)では、そのBH3結合溝を形成する、ヒトBcl-2(残基93〜202)、ヒトBcl-xL(86〜195)、ヒトBcl-w(42〜151)、マウスMcl-1(190〜300)およびマウスA1(33〜148)の配列(α-ヘリックスhelices 2〜8; Hinds et al., EMBO J 22:1497-1507, 2003)を比較し、系統樹として表した。色再現は要求に応じて特許権者から入手可能である。
【図3】Bad、BikおよびNoxaが、哺乳動物細胞における選択的生存促進標的を有することを示す写真表示である。FLAG(FL)タグ付き生存促進タンパク質(ヒトBcl-2、ヒトBcl-xLおよびマウスMcl-1)とHAタグ付きBH3-onlyタンパク質(A、ヒトBim;B、ヒトPuma;C、ヒトBik;DおよびE、マウスBad;FおよびG、マウスNoxa)との相互作用を共免疫沈澱により試験した。293T細胞から回収された同等な35S標識化ライセートを、HA、FLAG(FL)または対照(C)タグに対する抗体と免疫沈殿させた。Bim(A)またはPuma(B)は、Bcl-2、Bcl-xLおよびMcl-1によく結合した。Aの頂部パネルにおいて、BimELの代わりにBimLを使用して、サイズによりBimをBcl-2から識別した。(C)BikはBcl-xLに優先的に結合した。(D)Badは、指示された抗体で同じフィルターをイムノブロットすることにより確かめられたとおり(E)、Bcl-2およびBcl-xLに結合したが、Mcl-1に結合しなかった。**イムノブロッティングにより確かめられたとおり(E)、Badと会合している内因性14-3-3。(F)イムノブロッティングにより確かめられたとおり(G)、NoxaはMcl-1にのみ結合した。*結合することができないMcl-1の分解産物。
【図4】BH3-onlyタンパク質による生存促進Bcl-2様タンパク質のディファレンシャルターゲッティングを示すグラフ表示である。生存促進タンパク質に対するBH3-onlyペプチドの親和性(図2に要約されている)を、逆にプロットして、BH3ドメインの比較を可能とした。色の再現は要求に応じて特許権者から入手可能である。
【図5】BH3ペプチドがαヘリックスである性向を有することを示すグラフ表示である。(A)使用されたBH3ペプチドが殆ど明確な組織を持たなかった(いくらかは低い%のらせん性を有する)ことを示し、これに対して対照タンパク質ウマ心臓ミオグロビンは緩衝剤条件下に予測されるとおりαヘリックス構造を形成したことを示す、リン酸ナトリウム(pH7)30mM中のBH3ペプチドおよびウマ心臓ミオグロビンのCDスペクトル。208nMおよび222nMにおける極小(矢印)は、αヘリックスであるポリペプチドの典型である。(B)すべてのBH3ペプチドがヘリックス安定化溶媒TFEの存在下にウマ心臓ミオグロビンのαヘリックスコンホメーションに類似したαヘリックスコンホメーションを有することを示す(Nelson and Kallenbach, Biochemistry 28:5256-5261, 1989)、30%(v/v)TFEを補充された20mMリン酸ナトリウム(pH7)中のBH3ペプチドおよびミオグロビンのCDスペクトル。色の再現は要求に応じて特許権者から入手可能である。
【図6】アポトーシス促進BadおよびNoxaは選択的生存促進Bcl-2様タンパク質をターゲッティングすることを示すグラフ表示である。組換え生存促進Bcl-2様タンパク質(Bcl-2ΔC22、Bcl-xLΔC24、Bcl-wΔC29、Mcl-1ΔN151ΔC23、A1ΔC20)または関係のないタンパク質(GSTおよびLIF受容体)を注入したとき、(A)BadBH3または(B)Noxa BH3固定化チップへのバイオセンサー応答。Mcl-1およびA1はBadBH3に対する親和性を有していなかったが、これに対してBcl-2、Bcl-xL、Bcl-wはBadBH3に強く結合する(A)。相補的パターンがNoxa BH3で観察された(B)。色の再現は、要求に応じて特許権者から入手可能である。
【図7】選択的標的に結合するBH3-onlyタンパク質が弱い死滅活性を有することを示すグラフ表示である。(A)生存促進タンパク質に対するBH3-onlyペプチドのアフイニティー(図3Aに要約されている)を逆にプロットしてBH3結合のパターンの比較を容易にした。(B)BimおよびPumaによるMEFsの強力な死滅、しかしBmf、Bad、Bik、HrkまたはNoxaではそうではない。不死化された3T9 MEFsを、GFP(対照)のみまたはBH3-onlyタンパク質の1つおよびGFPを発現するレトロウイルスで感染させた。感染した(GFP+ve)細胞の生存率を、注入の24時間後にPI排除により決定した。ヒストグラムは、少なくとも3実験の平均±1SDを示す。(C)FLAG(FL)タグ付き生存促進タンパク質(Bcl-xLおよびMcl-1)とBims(またはその変異体)との相互作用を共免疫沈殿により試験した。トランスフェクションされた293T細胞からの同等なライセートを、Bim、FLAG(FL)タグまたは対照無関係抗原(C)に対する抗体により免疫沈殿させた。フィルターをラットモノクローナル抗FLAG抗体でプローブした。*Mcl-1の分解産物。(D)生存促進タンパク質への拘束性結合を有するBims変異体は、弱いキラーであった。指示されたタンパク質(GFP+ve)をコードするレトロウイルスで感染したMEFsの生存率を、感染の24時間後に分析した。ヒストグラムは、少なくとも3実験の平均±1SDを表す。(E)BH3発現レトロウイルスで感染させたMEFsの長期生存。100個のレトロウイルスに感染させた細胞をプレート培養し、6日後に形成されたGFP+veコロニーの絶対数を採点した。Bimsによる感染の後にコロニーは得られなかったが(+)、これに対してBims 4Eは長期の生存率に影響しなかった。Bik、Noxa、Bims Bad BH3またはBims Noxa BH3は中程度の効果を有していた。データは少なくとも3実験からの形成されたGFP+veコロニーの平均数±1SDを表す。
【図8】異なるクラスのBH3-onlyタンパク質間の協同を示すグラフ表示である。(A)結合データに基づいて、選択的標的を有するあるBH3-onlyタンパク質の弱い死滅活性を説明するために提唱されたモデル。(B)アポトーシス促進BH3-onlyタンパク質間の協同。MEFsを、BH3-onlyタンパク質(Bims、Bik、NoxaまたはNoxa3E)およびGFP、またはBH3-onlyタンパク質およびGFP-タグ付き-Bims、-BimsBadBH3もしくは-BimsNoxa BH3を共発現するレトロウイルスで感染させた。細胞生存率を感染の24時間後に採点した。データは少なくとも3実験の平均±1SDを表す。
【図9】より少ない選択性のNoxa突然変異体が強力なキラーであることを示す表示である。(A)αヘリックスBimBH3領域間の相互作用;符番は、Bcl-xLの標的溝(黒でラベルされたキー残基)を有するマウスBimL)を指す。(B)ヒトBim(BimL)およびヒトNoxaのコアBH3領域のアラインメント。突然変異したNoxa残基は四角に囲まれている。(C)Bcl-xLおよびBcl-wへのNoxa突然変異体の増加した結合。野生型または突然変異体Noxaペプチドを、それらのBcl-2、Bcl-xL、Bcl-wまたはMcl-1に結合する能力について溶液競合アッセイにおいて試験した。ヒストグラムは、各相互作用についてのIC50(nM)を示す。+:IC50>100μM。(D)Noxa m3は、Bcl-xLおよびMcl-1の両方に結合する。Bcl-xL又はMcl-1と、Bims Noxa BH3 m3との相互作用を共免疫沈殿により試験した。*Mcl-1分解産物。(E)Noxa BH3 m3は、強力なキラーである。指示されたレトロウイルスによる感染の24時間後のMEFsの生存。(F)Noxa BH3 m3による用量依存性死滅。Noxa BH3またはNoxa BH3 m3で感染させたMEFsの生存率を、低、中または高GFP発現について分類した。(E、F)におけるデータは、少なくとも3実験の平均±1SDを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存促進Bcl-2ファミリーのアンタゴニストを生成する方法であって、以下の段階を含む方法:BH3ドメインにより形成された両親媒性αヘリックスを規定する残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質構造を選択する段階;BH3-onlyタンパク質の無差別結合表現型と関連する1個または複数の残基位置を選択する段階;Bcl-2タンパク質への拘束性結合パターンを与えるアミノ酸またはその化学アナログを、無差別表現型を与えるアミノ酸残基で置換する段階;およびBcl-2タンパク質へのより強い拘束性結合スペクトルを誘導する能力について各置換の相互作用を分析する段階。
【請求項2】
Bcl-2アンタゴニストが、Bcl-2、Bcl-xL、Bcl-w、MclまたはAlの1つまたは複数に対して特異的である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
Bcl-2アンタゴニストが、Noxa、Bim、Puma、Bmf、Bad、Bik、HrkおよびBidからなるリストより選ばれる分子の構造に基づいている、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
Bcl-2アンタゴニストが、癌細胞上の生存促進タンパク質を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項5】
癌細胞が以下からなるリストより選択される、請求項4記載の方法:ABL1プロトオンコジーン、AIDS関連癌、聴神経腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、腺嚢胞腫、副腎皮質癌、原因不明骨髄様化生、脱毛症、胞巣状軟部肉腫(Alveolar soft-part sarcoma)、肛門癌、血管肉腫、再生不良性貧血、アストロチトーム、毛細血管拡張性運動失調、基底細胞癌(皮膚)、膀胱癌、骨癌、腸癌、脳幹グリオーマ、脳およびCNS腫瘍、乳癌、CNS腫瘍、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、小児期脳腫瘍、小児癌、小児期白血病、小児期軟部組織肉腫、軟骨肉腫、絨毛癌、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸直腸癌、悪性皮膚T細胞リンパ腫、隆起性皮膚線維肉腫、硬線維性の小円形細胞腫瘍、腺管癌、内分泌腺癌、子宮内膜癌、上衣細胞腫、食道癌、ユーイングの肉腫、肝外胆管癌、眼癌、眼:黒色腫、網膜芽細胞腫、卵管癌、ファンコニ(Fanconi)貧血、線維肉腫、胆嚢癌、胃癌、胃腸性癌、胃腸性カルチノイド(Gastrointestinal-Carcinoid)腫瘍、尿生殖器癌、胚細胞腫瘍、妊娠絨毛性疾患、神経膠腫、婦人科癌、血液学的悪性腫瘍、毛様細胞白血病、頭頚部癌、肝細胞性癌、遺伝性乳癌、組織球増殖症、ホジキン病、ヒト乳頭腫ウイルス、胞状奇胎、高カルシウム血症、下咽頭癌、眼内黒色腫、膵島細胞癌、カポジ肉腫、腎臓癌、ランゲルハンスの細胞組織球増殖症、喉頭癌、平滑筋肉腫、白血病、Li-Fraumeni症候群、口唇(Lip)癌、脂肪肉腫、肝癌、肺癌、リンパ浮腫、リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、男性の乳癌、腎臓の悪性棒状小体腫瘍(Malignant-Rhabdoid-Tumor-of-Kidney)、髄芽細胞腫、メラノーマ、メルケル(Merkel)細胞癌、中皮腫、転移癌、口こう癌、多発性内分泌腫瘍、菌状息肉腫、脊髄異形成症候群、骨髄腫、骨髄増殖性疾患、鼻腔癌、鼻咽頭癌、腎芽細胞腫、神経芽細胞腫、神経線維腫症、ナイメーヘン染色体不安定(Nijmegen Breakage)症候群、非黒色腫皮膚癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、眼性癌、食道癌、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、口卵嚢癌(Ostomy Ovarian Cancer)、膵臓癌、副鼻腔癌、副甲状腺癌、耳下腺癌、陰茎癌、末梢性神経外胚様性腫瘍、下垂体癌、真性多血症、前立腺癌、まれな癌および関連する障害(Rare- cancers-and-associated-disorders)、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、ロートムンド-トムソン症候群、唾液腺癌、肉腫、神経鞘腫、セザリー症候群、皮膚癌、小細胞肺癌(SCLC)、小腸癌、軟部組織肉腫、脊髄腫瘍、扁平上皮細胞-癌腫(皮膚)、胃癌、滑膜肉腫、精巣癌、胸腺癌、甲状腺癌、移行性細胞癌(膀胱)、移行性細胞癌(腎臓-骨盤-/-尿管)、栄養膜癌、尿道癌、泌尿系癌、ウロプラキン(Uroplakin)、子宮肉腫、子宮癌、膣癌、外陰部癌、ワルデンストレームのマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍。
【請求項6】
Bcl-2アンタゴニストが哺乳動物における生存促進タンパク質を阻害する、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
哺乳動物がヒトである、請求項6記載の方法。
【請求項8】
生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストを生成するかまたは選択するための方法であって、以下の段階を含む方法:足場タンパク質として拘束性BH3-onlyタンパク質を選択する段階;拘束性表現型を与える足場のコンホメーションを決定する段階;およびBcl-2タンパク質への拘束性結合スペクトルを与える該足場および/またはコンホメーション部分を模倣する化合物を生成するかまたはスクリーニングする段階。
【請求項9】
BH3-onlyタンパク質またはその化学的もしくはコンホメーション等価物に拘束性結合表現型を与える置換変異体の生成または選択におけるアミノ酸残基置換マトリックスとしての無差別BH3-onlyタンパク質の使用。
【請求項10】
拘束性表現型を与える残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質に基づく生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストをデザインするためのコンピュータによる方法であって、以下の段階を含む方法:無差別BH3-onlyタンパク質のコレクションを選択する段階;これらのタンパク質の配列アラインメントを提供し、それを拘束性BH3-onlyタンパク質と比較する段階;Bcl-2タンパク質への結合に関して無差別性または拘束性を与える該アラインメントで1つまたは複数の位置において個々のアミノ酸についての出現の頻度を生成する段階;該頻度を使用して、電荷、サイズ、コンホメーション、溶解度、極性、疎水性、親水性および第三級構造への寄与から選択されたスコア関数を作成する段階;該スコア関数および少なくとも1つの追加のスコア関数を使用して、最適化されたタンパク質配列またはそれらのコンホーメーション等価物のセットを生成させ、Bcl-2タンパク質への拘束性結合表現型を有する化合物またはタンパク質を生成するかまたは選択する段階。
【請求項11】
スコア関数が、(a)酸性残基の数および位置;または(b)塩基性残基の数および位置;または(c)極性残基の数および位置;または(d)非極性残基の数および位置;または(e)帯電した残基の数および位置;または(f)帯電していない残基の数および位置;または(g)親水性残基の数および位置;または(h)疎水性残基の数および位置;または(i)残基のレベル;または(j)残基の溶解度レベル;または(k)残基のサイズ;または(l)BH3-onlyタンパク質において残基が作り出す第三級構造への寄与から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
細胞におけるアポトーシスを誘導する作用物質の構造を決定するためのコンピュータプログラム製品であって、下記(1)〜(3)を含む製品:
(1)BH3-onlyタンパク質またはBcl-2タンパク質と関連する少なくとも2つの特徴についてのインプットスコア関数(SF)として受け取るコードであって、ここで、該特徴は、とりわけ下記から選択されるものであるコード:
(m)酸性残基の数および位置、
(n)塩基性残基の数および位置、
(o)極性残基の数および位置、
(p)非極性残基の数および位置、
(q)帯電した残基の数および位置、
(r)帯電していない残基の数および位置、
(s)親水性残基の数および位置、
(t)疎水性残基の数および位置、
(u)残基のレベル、
(v)残基の溶解度レベル、
(w)残基のサイズ、
(x)BH3-onlyタンパク質において残基が作り出す第三級構造への寄与;
(2)該SFを加えてBH3-onlyタンパク質についてのPvに対応する和を提供するコード;ならびに
(3)前記コードを記憶するコンピュータ可読媒体。
【請求項13】
細胞におけるアポトーシスを誘導するためのBH3-onlyタンパク質または化学的等価物の可能性のある有用性を評価するためのコンピュータであって、下記を含むコンピュータ:
(1)機械可読データでコードされたデータ記憶材料を含む機械可読データ記憶媒体であって、ここで、該機械可読データは、BH3-onlyタンパク質またはBcl-2タンパク質と関連する少なくとも2つの特徴についてのIvsを含み、ここで、該特徴は、とりわけ下記から選択されるものである機械可読データ記憶媒体:
(m)酸性残基の数および位置、
(n)塩基性残基の数および位置、
(o)極性残基の数および位置、
(p)非極性残基の数および位置、
(q)帯電した残基の数および位置、
(r)帯電していない残基の数および位置、
(s)親水性残基の数および位置、
(t)疎水性残基の数および位置、
(u)残基のレベル、
(v)残基の溶解度レベル、
(w)残基のサイズ、
(x)BH3-onlyタンパク質において残基が作り出す第三級構造への寄与;
(2)該機械可読データを処理するための指示を記憶するためのワーキングメモリ;
(3)該ワーキングメモリおよび該機械可読データ記憶媒体にカップリングされた中央処理装置であって、該機械可読データを処理して該化合物についてのPvに対応する該SFの和を提供する中央処理装置;ならびに
(4)該Pvを受け取るために、該中央処理装置にカップリングされたアウトプットハードウエア。
【請求項14】
癌を予防または減少させるのに十分な時間および条件下で有効量のBcl-2タンパク質のアンタゴニストを被験者に投与する段階を含む、該被験者における癌を予防または減少させる方法。
【請求項15】
アンタゴニストを1種または複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤と組み合わせて薬理学的組成物を形成する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
アンタゴニストの投与が、呼吸器、気管内、鼻咽頭、静脈内、腹腔内、皮下,頭蓋内、皮内、筋肉内、眼内、鞘内、脳内、鼻腔内、注入、経口、直腸、パッチ、またはインプラントの速度で投与される、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストを含む組成物であって、該アンタゴニストが以下の方法により生成させられ、かつ該組成物は1種または複数の薬学的に許容される担体および/または希釈剤をさらに含む、組成物:BH3ドメインにより形成された両親媒性αヘリックスを規定する残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質構造;BH3-onlyタンパク質の無差別結合表現型と関連する1個または複数の残基位置を選択する段階;Bcl-2タンパク質への強い拘束性結合パターンを与えるアミノ酸またはその化学アナログを、無差別表現型を与えるアミノ酸残基で置換する段階;およびBcl-2タンパク質へのより強い拘束性結合スペクトルを誘導する能力について各置換の相互作用を分析する段階。
【請求項18】
癌の処置用の医薬の製造における、生存促進Bcl-2タンパク質ファミリーのアンタゴニストの使用であって、該アンタゴニストが以下の方法により生成させられる、使用:BH3ドメインにより形成された両親媒性αヘリックスを規定する残基位置を有する足場BH3-onlyタンパク質構造;BH3-onlyタンパク質の無差別結合表現型と関連する1個または複数の残基位置を選択する段階;Bcl-2タンパク質への拘束性結合パターンを与えるアミノ酸またはその化学アナログを無差別表現型を与えるアミノ酸残基で置換する段階;およびBcl-2タンパク質へのより強い拘束性結合スペクトルを誘導する能力について各置換の相互作用を分析する段階。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−509378(P2008−509378A)
【公表日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−551682(P2006−551682)
【出願日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000140
【国際公開番号】WO2005/075645
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(500058017)ザ ウォルター アンド エリザ ホール インスティテュートオブ メディカル リサーチ (2)
【Fターム(参考)】