説明

治療片貼付具

【課題】 患部が手の届きにくく見えない場所にある場合でも、容易かつ正確に治療片を貼り付け得る治療片貼付具を提供する。
【解決手段】 頭部1と握り柄部2とを備え、頭部1は、身体対応面1aに治療片保持機構Mを有している。治療片保持機構Mは、中央部に配設される磁性部材3と、磁性部材3を囲むと共に上記身体対応面1aに直交する前後方向へ移動可能として設けられる押し当て枠4と、を有している。また、押し当て枠4は、ベース部5と、ベース部5に開閉自在に取着される枠体6と、を有し、ベース部5と枠体6との間に治療片30の一部を挟持するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療片貼付具に係り、特に、頭部と握り柄部とを備えた治療片貼付具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、打撲、筋肉痛、筋肉疲労、腰痛、肩凝り等の症状を緩和するために、身体の患部に治療片を貼り付ける。
しかしながら、患部が背中等の手の届きにくい場所にある場合、患者は自分自身で身体の患部に治療片を貼り付けるのが困難であるという不都合がある。そこで、従来、患部が背中等の手の届きにくい場所にある場合でも、自分自身で簡単に治療片を貼り付けることが可能な種々の治療片貼付具が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1に開示された治療片貼付具は、粘着剤を塗布した頭部と握り柄部とを備えている。そして、粘着剤を塗布した頭部に治療片を貼り付け、握り柄部を持って頭部を患部に当てがうことにより、背中等の手の届きにくい場所に治療片を容易に貼り付けることを可能としている。
【特許文献1】特開2003−135605号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に開示された治療片貼付具では、身体に治療片貼付具の頭部を当てがうと同時に、治療片の粘着層にて治療片が身体に貼り付けられる。これにより、特許文献1の治療片貼付具では、一回の頭部の当てがいにより患部に治療片を貼り付ける必要があるという不都合があった。その結果、背中等の見えない場所に患部がある場合には、予め身体の患部の位置が正確にわかっている必要があり、治療片の患部への正確な貼り付けが困難となっていた。
そこで、本発明は、患部が手の届きにくく見えない場所にある場合でも、容易かつ正確に治療片を貼り付け得る治療片貼付具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するために、本発明に係る治療片貼付具は、頭部と握り柄部とを備え、該頭部は、身体対応面に治療片保持機構を有し、該治療片保持機構は、中央部に配設される磁性部材と、該磁性部材を囲むと共に上記身体対応面に直交する前後方向へ移動可能として設けられる押し当て枠と、を有している。
【0005】
また、上記押し当て枠は、ベース部と、該ベース部に開閉自在に取着される枠体と、を有し、上記ベース部と該枠体との間に治療片の一部を挟持するように構成したものである。
また、上記治療片保持機構は、上記頭部の上記押し当て枠を患部に押し当てた際に、該押し当て枠を該患部に接近する方向へ弾発付勢する弾発部材を有している。
また、上記押し当て枠には、摩擦抵抗面部が配設されている。
また、上記押し当て枠には、患部の位置を探るための突起部が配設されている。
また、上記握り柄部の先端部には、複数の治療片剥がし突条が設けられている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の治療片貼付具によれば、治療片を背中等の手の届きにくく見えない患部の位置まで容易に持っていくことができる。
また、押し当て枠の枠内に治療片を保持させた状態で、押し当て枠を身体に当てがって患部の位置を探ることができる。
また、治療片を容易かつ正確に患部に貼り付けることができる。
また、治療片を、狙った場所にてスムーズに貼り付けることができる。
また、患部に治療片を貼り付ける際に、治療片が治療片保持機構に引っ掛かった状態にならないようにすることができる。また、治療片を面状に張力を付与しつつ患部に貼り付けることができ、しわを生じないようにすることができる。
また、背中等の手の届きにくい患部に貼り付けられた治療片を容易に剥がすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1は、本発明の実施の一形態に係る治療片貼付具の使用状態を示す説明図である。また、図2は、本発明に係る治療片貼付具の斜視図であり、図3は、一部破断側面図である。
本発明に係る治療片貼付具は、図1に示すように、患者が自分自身で、身体Aの手の届きにくく見えない場所にある患部Bに、打撲、筋肉痛、筋肉疲労、腰痛、肩凝り等の症状を緩和するための治療片30を、容易かつ正確に貼り付けることができるものである。
本発明に係る治療片貼付具は、図2及び図3に示すように、(角部に丸みのある)平面視略矩形状の頭部1と握り柄部2とを備えている。
【0008】
頭部1は、身体対応面1a側に開口した箱状の本体部10を有し、かつ、身体対応面1aに治療片保持機構Mを有している。
本体部10は、押し当て枠収納部18と、弾発部材収納部19と、本体部10の開口端面に形成された複数の爪部16…と、を有している。弾発部材収納部19の側面視中央部には、取付部20が設けられている。
【0009】
ここで、治療片保持機構Mは、治療片受部11と、中央部に配設される短円柱状の磁性部材3と、外形が平面視略矩形状である押し当て枠4と、弾発部材17と、を有している。
治療片受部11は、下方に縮径する段付となった円柱状の柱部11aと、柱部11aの上端面に形成された帯板部11bと、を有している。そして、柱部11aの段付となった部分を本体部10の取付部20に接着することによって、治療片受部11は本体部10に取り付けられている。
【0010】
磁性部材3は、例えば鉄鋼片から成る。この磁性部材3は、治療片受部11の上部に埋設等で固着されている。
押し当て枠4は、全体として浅い箱状となっており、内部に治療片30を保持可能とするものである。また、押し当て枠4は、本体部10の押し当て枠収納部18に嵌め込まれるように構成されている。この押し当て枠4は、ベース部5と、枠体6と、を有している。
ベース部5には、平面視矩形状の凹部5aが形成されている(図4参照)。この凹部5aを形成する面のうち底面部には、円状の孔部5bが形成されている。この孔部5bには、治療片受部11の柱部11aが挿通されている。これにより、押し当て枠4は、磁性部材3を囲むと共に身体対応面1aに直交する前後方向へ移動可能として設けられている。
【0011】
なお、押し当て枠4のベース部5は、治療片受部11の帯板部11bにて、本体部10から分離しないように掛止されている。また、本体部10に設けられた爪部16…によって、押し当て枠4は、本体部10から分離しないように、かつ、本体部10に対して所定の角度以上に傾かないように、掛止されている。
【0012】
図4は、治療片を治療片貼付具に保持させる際の状態を示す斜視図である。
枠体6は、図2〜図4に示すように、身体対応面1aの握り柄部2側に設けられたヒンジ部12にて、ベース部5に開閉自在(揺動自在)に取着されている。この枠体6とベース部5との間に、治療片30の一部が挟持される。また、枠体6及びベース部5には、固定部材15a, 15bが設けられている。固定部材15a, 15bは、例えば一方が磁石により形成されると共に他方が磁性片により形成されている。そして、固定部材15aと固定部材15bとの吸着によって、枠体6とベース部5が閉じられた状態を保持することが可能となっている。なお、この固定部材15a, 15bは、磁石及び磁性片に限るのではなく、掛止部材及び被掛止部材や、面状ファスナを使用するも好ましい。
【0013】
枠体6は、略矩形枠状の基体部13と、基体部13の内周面に対向するように突設される一対の帯板部14, 14と、を有している。
基体部13は、揺動先端部の厚みが側面視で他の部分より厚く形成されている。即ち、身体対応面1a上に於て、基体部13の揺動先端部は、他の部分よりも隆起した形状となっている。
帯板部14, 14のベース部5と対向する側には、摩擦抵抗面部7, 7が配設されている。摩擦抵抗面部7, 7には、例えば多数のループ状の起毛を有するもの(面状ファスナ等)が使用される。そして、摩擦抵抗面部7, 7とベース部5との間に治療片30の外周部の一部が挟持されるように構成されている。
なお、摩擦抵抗面部7, 7は、多数のループ状の起毛を有するもの(面状ファスナ等)を使用するのに限るのではなく、他のものを使用するも自由である。例えば、フェルト生地を用いるも好ましい。
【0014】
また、押し当て枠4には、患部Bの位置を探るための半球状の突起部8が形成されている。より具体的には、枠体6の身体対応面1a側かつ揺動先端部側に、突起部8が形成されている。
また、弾発部材17は、例えばコイルスプリングから成っている。この弾発部材17は、頭部1の押し当て枠4を患部Bに押し当てた際に、押し当て枠4を患部Bに接近する方向へ弾発付勢するものである(図5参照)。より具体的には、弾発部材17は、治療片受部11の柱部11aに外嵌されると共に、押し当て枠4と本体部10の弾発部材収納部19との間に介装されている。そして、この弾発部材17は、押し当て枠4と本体部10とを相互に離間させる方向に弾発付勢している。
なお、弾発部材17は、コイルスプリングに限るのではなく、他のものを使用するも自由である。例えば、板ばねを使用するも好ましい。
【0015】
握り柄部2は、頭部1の身体対応面1aに対して適度な角度を持って延びるように、頭部1に連設されている。この握り柄部2の先端部には、複数の治療片剥がし突条9…が設けられている。より具体的に述べると、握り柄部2の先端部には、側面視台形状の隆起部21が形成されており、この隆起部21上に、側面視くさび状の治療片剥がし突条9…が設けられている。この治療片剥がし突条9…は、ゴム等の弾性部材にて形成されている。
【0016】
次に、本発明に係る治療片貼付具の作動について説明する。
図5は、本発明に係る治療片貼付具の作動を説明するための断面図である。
まず、図4に示すように、治療片貼付具の枠体6を開いた状態にする。
そして、磁石部30aを有する治療片30を使用する場合、治療片受部11に(粘着面を上にして)載置して、治療片30を、治療片受部11に埋設された磁性部材3に吸着させる。また、湿布片等の磁石部30aを有しない治療片30を使用する場合、枠体6の帯板部14, 14に配設された摩擦抵抗面部7, 7に、治療片30を粘着面側で軽く貼り付ける。
【0017】
次に、治療片貼付具の枠体6を図4中の矢印C方向に閉じて、図5(a)に示すように、ベース部5の凹部5aと枠体6の摩擦抵抗面部7, 7との間に、治療片30の外周部の一部を挟持する。
そして、図1及び図5(a)に示すように、治療片30の外周部の一部が挟持された状態で、治療片貼付具の押し当て枠4を身体Aに当てがう。
そして、押し当て枠4を身体Aに当てがった状態で治療片貼付具を移動させ、患部Bの位置を手探りで探す。この際、押し当て枠4に設けられた突起部8(図2参照)を利用して、刺激を身体Aに与えながら、患部Bの位置を探す。
【0018】
患部Bの位置を探すことができたら、図5(b)に示すように、治療片貼付具の頭部1を患部Bに押し当てる(図5(b)の矢印F方向)。すると、押し当て枠4は、本体部10に対して、弾発部材17の弾発力に抗する方向(図5(a)の矢印D方向)に移動する。
押し当て枠4が移動すると、治療片受部11が相対的に治療片30の中央部を押すように移動する。これにより、挟持された治療片30の外周部の一部は、凹部5a及び摩擦抵抗面部7, 7と治療片30との間に生じる摩擦力に抗して挟持面から引抜かれる。 そして、挟持状態が解除された治療片30は、治療片受部11によって患部Bに押し当てられ、治療片30の粘着層によって患部Bに貼り付けられる。
【0019】
なお、磁石部30aを有する治療片30の大きさが小さい場合、枠体6とベース部5との間に治療片30を挟持させなくてもよい。この場合、治療片30を治療片受部11の磁性部材3に吸着させることによって、治療片30の治療片保持機構Mへの保持が可能となる。 また、押し当て枠4は、枠体6がベース部5に開閉自在に取着されているものに限るのではなく、ベース部5と枠体6が一体となった形状とするも好ましい。この場合に於ても、磁性部材3への治療片30の吸着にて治療片30を保持することが可能である。
【0020】
以上のように、本発明に係る治療片貼付具は、頭部1と握り柄部2とを備え、頭部1は、身体対応面1aに治療片保持機構Mを有し、治療片保持機構Mは、中央部に配設される磁性部材3と、磁性部材3を囲むと共に身体対応面1aに直交する前後方向へ移動可能として設けられる押し当て枠4と、を有するように構成することによって、磁石部30aを有する治療片30を磁性部材3に吸着させて、容易に治療片30を保持することができる。これにより、治療片30を治療片保持機構Mから脱落させることなく、治療片30を背中等の手の届きにくく見えない患部Bの位置まで容易に持っていくことができる。
【0021】
また、磁性部材3を囲むと共に身体対応面1aに直交する前後方向へ移動可能として設けられる押し当て枠4を有することによって、押し当て枠4の枠内に治療片30を保持させた状態で、押し当て枠4を身体Aに当てがって患部Bの位置を探ることができる。また、患部Bに対する位置決めを行った後には、押し当て枠4を患部Bに押し当てて、押し当て枠4の枠内から治療片30を枠外へ露出させ、治療片30を容易かつ正確に患部Bに貼り付けることができる。
【0022】
また、押し当て枠4を、ベース部5と、ベース部5に開閉自在に取着される枠体6と、を有し、ベース部5と枠体6との間に治療片30の一部を挟持するように構成することによって、磁石部30aを有する治療片30のみならず、例えば湿布片等の磁石部30aを有しない治療片30を容易に治療片保持機構Mに保持させることができる。これにより、湿布片等の磁石部30aを有しない治療片30を、容易かつ正確に患部Bに貼り付けることができる。
【0023】
また、治療片保持機構Mを、頭部1の押し当て枠4を患部Bに押し当てた際に、押し当て枠4を患部Bに接近する方向へ弾発付勢する弾発部材17を有するように構成することによって、適度な力を押し当て枠4に加えた場合に治療片30が患部Bに貼り付けられるように構成することができる。その結果、治療片30を、狙った場所にてスムーズに貼り付けることができる。
【0024】
また、押し当て枠4に摩擦抵抗面部7, 7を配設することによって、治療片保持機構Mに保持させた治療片30が容易に治療片保持機構Mから脱落しないようにすることができる。また、押し当て枠4が、ベース部5と枠体6とを有する場合には、ベース部5と枠体6との挟持面に摩擦抵抗面部7, 7を配設することによって、挟持面から治療片30を引抜く際に適度な摩擦力を治療片30と挟持面との間に働かせることができる。これにより、患部Bに治療片30を貼り付ける際に、治療片30が治療片保持機構Mに引っ掛かったりする状態にならないようにすることができる。さらに、治療片30を面状に張力を付与しつつ患部Bに貼り付けることができ、治療片30にしわが生じないようにすることができる。
【0025】
また、押し当て枠4に患部Bの位置を探るための突起部8を配設することによって、突起部8を身体Aに当てがって身体Aを刺激しながら患部Bの位置を探ることができる。これにより、突起部8を有さない場合と比較して、より容易かつ正確に、患部Bの位置を探ることができる。
また、上記握り柄部2の先端部に複数の治療片剥がし突条9を設けることによって、頭部を持って、背中等の手の届きにくい患部Bに貼り付けられた治療片30を容易に剥がすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の一形態に係る治療片貼付具の使用状態を示す説明図である。
【図2】本発明に係る治療片貼付具の斜視図である。
【図3】一部破断側面図である。
【図4】治療片を療片貼付具に保持させる際の状態を示す斜視図である。
【図5】図2のX−X線に沿った、本発明に係る治療片貼付具の作動を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1 頭部
1a 身体対応面
2 握り柄部
3 磁性部材
4 押し当て枠
5 ベース部
6 枠体
7 摩擦抵抗面部
8 突起部
9 治療片剥がし突条
17 弾発部材
30 治療片
B 患部
M 治療片保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部(1)と握り柄部(2)とを備え、
該頭部(1)は、身体対応面(1a)に治療片保持機構(M)を有し、
該治療片保持機構(M)は、中央部に配設される磁性部材(3)と、該磁性部材(3)を囲むと共に上記身体対応面(1a)に直交する前後方向へ移動可能として設けられる押し当て枠(4)と、を有していることを特徴とする治療片貼付具。
【請求項2】
上記押し当て枠(4)は、ベース部(5)と、該ベース部(5)に開閉自在に取着される枠体(6)と、を有し、
上記ベース部(5)と該枠体(6)との間に治療片(30)の一部を挟持するように構成した請求項1記載の治療片貼付具。
【請求項3】
上記治療片保持機構(M)は、上記頭部(1)の上記押し当て枠(4)を患部(B)に押し当てた際に、該押し当て枠(4)を該患部(B)に接近する方向へ弾発付勢する弾発部材(17)を有している請求項1又は2記載の治療片貼付具。
【請求項4】
上記押し当て枠(4)には、摩擦抵抗面部(7)(7)が配設されている請求項1、2又は3記載の治療片貼付具。
【請求項5】
上記押し当て枠(4)には、患部(B)の位置を探るための突起部(8)が配設されている請求項1、2、3又は4記載の治療片貼付具。
【請求項6】
上記握り柄部(2)の先端部には、複数の治療片剥がし突条(9)が設けられている請求項1、2、3、4又は5記載の治療片貼付具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−14915(P2006−14915A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195231(P2004−195231)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(594111203)旭電機化成株式会社 (8)
【Fターム(参考)】