説明

治療用分子を送達するためのカチオン性両親媒性物質と共脂質とを含む組成物

本開示は、治療薬と組み合わせて有用であり、また疾患および状態の診断および処置に有用な組成物を提供する。当該組成物は、核酸治療薬などの物質の細胞、組織、器官、および対象への送達に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書には、核酸とカチオン性脂質との貯蔵安定性塩、およびこの塩を使用して、哺乳動物への投与時に組織細胞に核酸を送達するための脂質処方物を製造する方法について記載されている。
【0002】
背景技術
多種多様な核酸が、数々の疾患を処置するための治療薬として、現在開発されている。これらの核酸には、遺伝子治療におけるDNA、プラスミドベースの干渉核酸、RNA干渉(RNAi)において使用するためのsiRNAを含む低分子干渉核酸、miRNA、アンチセンス分子、リボザイム、およびアプタマーが含まれる。これらの分子が開発されるに従い、安定で長い有効期間を有し、かつ無水有機溶媒または無水極性非プロトン性溶媒に簡単に組み込んで、極性水溶液中または非極性溶媒中で生じうる副反応を伴わずに核酸のカプセル封入を可能にする形態で、それらの分子を製造する必要性が生じてきている。
【0003】
本発明は、生物活性のある治療用の分子の細胞内送達を容易にする、新規の脂質組成物に関する。また、本発明は、そのような脂質組成物を含み、患者の細胞内に治療有効量の生物活性分子を送達するのに有用な医薬組成物に関する。
【0004】
対象への治療用化合物の送達は、その治療効果にとって重要であり、これは通常は、化合物の標的細胞および組織に到達する能力が限定されることにより、妨げられる可能性がある。さまざまな送達手段によって、標的とされる組織細胞に進入するこのような化合物を改善することは、極めて重要である。本発明は、生物活性分子の標的化細胞内送達を容易にする、新規の脂質、組成物、および製造方法に関する。
【0005】
患者の組織の効果的な標的化が達成されないことが多い生物活性分子の例には、(1)免疫グロブリンタンパク質を含む多数のタンパク質、(2)ゲノムDNA、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド、(3)アンチセンスポリヌクレオチド、および(4)合成または天然の多くの低分子量化合物、例えばペプチドホルモンおよびペプチド抗生物質がある。
【0006】
医師らが現在直面している根本的な課題の1つは、多種多様な核酸が、数々の疾患を処置するための治療薬として現在開発されていることである。これらの核酸には、遺伝子治療におけるDNA、RNA干渉(RNAi)において使用するためのプラスミド低分子干渉核酸(iNA)、アンチセンス分子、リボザイム、アンタゴmir、マイクロRNA、およびアプタマーが含まれる。これらの核酸が開発されていることから、簡単に作製でき、かつ標的組織に容易に送達することができる脂質処方物を製造する必要性が存在する。
【0007】
発明の概要
本発明の一態様は、カチオン性脂質とポリヌクレオチドとの固体混合物からなる組成物であり、このカチオン性脂質分子はポリヌクレオチドと水不溶性のイオン性複合体を形成する(以下、脂質/核酸塩とする)。一実施形態において、脂質/核酸塩における、カチオン性脂質のポリヌクレオチドのヌクレオチドモノマーに対するモル比が0.1〜10、好ましくは0.5〜2である。本発明の実施形態は、カチオン性脂質が、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N−ジメチル−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);3−(N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(DC−Chol);N−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」);1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA);および1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、N4−スペルミンコレステリルカルバメート(GL−67)、N4−スペルミジンコレストリルカルバメート(GL−53)、1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート(GL−89)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、脂質/核酸塩である。最も好ましくは、この脂質は、DOTAP、DODAP、DLinDMA、DC−Chol、およびDOTMAからなる群から選択される。本発明の別の態様は、核酸が、DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、antagamer、プラスミドベースの干渉核酸(iNA)、リボザイム、低分子干渉核酸(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、脂質/核酸塩である。好ましくは、この脂質/核酸塩は、無水固体の形態、すなわち真空中(in vacuo)で、または気流下、好ましくは窒素ガス流下で乾燥させることによって、水を除去したものである。
【0008】
本発明の別の態様は、水性溶媒中でカチオン性脂質とポリヌクレオチドとを混合し、水不溶性沈殿物を生成し、この沈殿物を単離し、この沈殿物を乾燥させる方法によって作製される脂質/核酸塩である。一実施形態は、有機溶媒もしくは極性非プロトン性溶媒に可溶化することができる脂質/核酸塩である。
【0009】
本発明の別の態様は、有機溶媒もしくは非プロトン性溶媒に溶解した脂質/核酸塩を含む溶液(「溶液」)である。
【0010】
一実施形態は、カルバメート、好ましくはN6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート、N4−スペルミンコレステリルカルバメート、N4−スペルミジンコレステリルカルバメート、1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート、および2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテートからなる群から選択されるカルバメートをさらに含む溶液である。
【0011】
別の実施形態は、中性リン脂質、好ましくはホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、およびジホスファチジルグリセロールからなる群から選択されるリン脂質、好ましくは炭素8〜22個のアルキル鎖、最も好ましくは18:2、20:4、および22:6アルキル鎖からなる群から選択される鎖から構成されるリン脂質をさらに含む溶液である。
【0012】
別の実施形態は、ステロール、好ましくはコレステロール、ラノステロール、24−イソプロピルコレステロール、ニカステロール、7−デヒドロコレステロール、24−デヒドロコレステロール、ゴルゴステロール、ジノステロール、24S−ヒドロキシコレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、スチグマステロール、カンペステロール、フコステロール、β−シトステロール、フィトスタノール、ステロールエステル、ステリルグリコシド、およびステリルアルキルエーテルからなる群から選択されたステロールをさらに含む溶液である。
【0013】
別の実施形態は、脂質−PEG化合物をさらに含む溶液であり、好ましくはこの脂質はリン脂質またはステロールであり、好ましくは分子量200〜5000kDaのPEGを有する。
【0014】
本発明の別の態様は、コレステロール、ポリエチレングリコール(PEG)結合コレステロール(1K)、リン脂質、およびN6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメートからなる群から選択される1つ以上の脂質を含む溶液をさらに含む溶液である。一実施形態は、ホスファチジルエタノールアミンが、場合により不飽和結合を含む8〜24アルキル鎖からなる溶液である。別の実施形態は、さまざまな比率の上記の組成物、好ましくはポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート4.4部/ホスファチジルエタノールアミン4.4部/コレステロールPEG14.4部/コレステロール1.6部(質量/質量)をさらに含む溶液である。別の実施形態は、ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート8.8部/ホスファチジルエタノールアミン2.2部/コレステロールPEG14.4部/コレステロール1.6部(質量/質量)をさらに含む溶液である。別の実施形態は、ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート6.6部/ホスファチジルエタノールアミン2.2部/コレステロールPEG14.4部/コレステロール1.6部(質量/質量)をさらに含む溶液である。別の実施形態は、ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート4.4部/ホスファチジルエタノールアミン4.4部/コレステロールPEG21.6部/コレステロール4.8部(質量/質量)をさらに含む溶液である。
【0015】
本発明の別の態様は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、およびC16−PEG750セラミドをさらに含む溶液である。
【0016】
本発明の別の態様は、1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、およびDSPE−PEG、DOPE−PEG、コレステロール−PEGからなる群から選択される脂質−PEGをさらに含む溶液である。
【0017】
本発明の別の態様は、核酸の皮膚への送達に適した上記の溶液のいずれかである。
【0018】
本発明の別の態様は、前述の溶液のいずれかから溶媒を除去することで得られる固体処方物である。
【0019】
本発明の別の態様は、前述の溶液のいずれかから溶媒を除去し、得られた固体を水性溶液に懸濁させて、好ましくは対象への投与に適し、最も好ましくは注射に適した溶液を生成することで得られる水性処方物である。
【0020】
本発明の別の態様は、治療用分子の肝臓、肺、または腫瘍への送達に適した上記の処方物のいずれかである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】これは、肝臓(ApoB)siRNA送達処方物の用量反応曲線を示している。Balb/Cマウスに、指定の用量レベルで、単一用量0.2mlの処方ApoB siRNAを静脈内投与した。注射2日後に、リアルタイムRT−PCR法(参照遺伝子としてGAPDH)によって遺伝子発現を解析するために、肝臓を採取した。総コレステロール値を解析するために、血清も採取した。各データポイントは、平均+SEM(n=6)を表わす。マウス肝臓におけるApoB遺伝子ノックダウンは、血清コレステロール値の変化と相関する。
【図2】これは、単一用量の処方siRNAを投与量0.2ml/マウスおよび2mg/kgで静脈内投与したBalb/Cマウスにおける、ApoB遺伝子発現と対応するコレステロール低下の経時的研究を示している。限定された時点で、上述のように遺伝子発現を解析するために、肝臓組織を採取した。肝臓における遺伝子ノックダウンと血清中のコレステロールの変化は、ほぼ3週間持続している。
【図3】129S1/svImJマウスに、単一用量のsiRNAの肺特異的送達処方物を投与量0.2ml(4mg/kg siRNA)で静脈内投与した。3日後、リアルタイムRT−PCR法(参照遺伝子としてGAPDHおよびβ−アクチン)によって遺伝子発現を解析するために、肺および肝臓を採取した。各データポイントは、平均+SEM(n=5)を表わす。標的遺伝子の発現レベルは、肺(A)では有意にノックダウンされていたが、肝臓(B)ではノックダウンされていなかった。Speca−11およびSpeca−12は、異なる遺伝子を標的とするsiRNAである。
【図4】129S1/svImJマウスに、単一用量0.2mlの処方siRNAを指定の用量レベルで静脈内投与した。3日後、リアルタイムRT−PCR法(参照遺伝子としてGAPDHおよびβ−アクチン)によって遺伝子発現を解析するために、肺(A)および肝臓(B)を採取した。各データポイントは、平均+SEM(n=5)を表わす。標的遺伝子の発現レベルは、肺で用量反応的にノックダウンされていた。
【図5】Balb/Cマウスに、2mg/kgで、0.2mlの単一用量の処方siRNAを静脈内投与した。2日後、リアルタイムRT−PCR法(参照遺伝子としてGAPDH)によって遺伝子発現を解析するために、腫瘍(A)および肝臓(B)を採取した。腫瘍モデルは、EMT6細胞(Balb/Cマウス由来のマウス乳房肉腫)を左下葉のグリソン鞘内に注射することによって作成する。各データポイントは、平均+SEM(n=6)を表わす。
【0022】
好ましい実施形態の詳細な説明
本発明は、これらの必要性を満たし、かつ核酸を有機対イオンとともに用いる新規の方法および組成物を提供することによって、さらなる目的および利点を実現する。
【0023】
本発明は、水不溶性であり安定な形態の有機対イオン核酸塩、とりわけ有機塩−干渉核酸を提供することによって、この要求をさらに満足する。このような水不溶性の沈殿物は、有機カチオン、すなわち疎水基/親油基を有する正荷電化合物(カチオンとしてプロトン化有機アミンを含有する有機化合物、例えばカチオン性脂質およびプロカインを含むが、それらに限定されない)の溶液を核酸の水性溶液と、このカチオン性脂質分子が核酸と複合体を形成する条件下で接触させて、カチオン性化合物−核酸沈殿物を形成することにより生成する。核酸を水不溶性にさせる炭素数またはそれに十分な疎水性度を有するカチオン性有機分子の場合に、沈殿が生じる。得られる沈殿物は、核酸中に存在するヌクレオチドの数と1対1の電荷モル濃度で、カチオン性脂質分子の正電荷の総数を含む。また、核酸中に存在するヌクレオチドの数と1対1未満の電荷モル濃度は、部分的な核酸の沈殿に使用される。この核酸−有機カチオン性脂質沈殿物は、濾過、遠心分離、および化学および物理工程の当業者が利用できるその他の方法を用いて、水性液から回収することができる。沈殿したカチオン性脂質塩を乾燥させ、数々の機械的処理を施して、これを核酸薬処方物の固体剤形および液体剤形に組み込むのに適するようにしてもよい。驚くべきことに、特定の有機カチオンの核酸水不溶性有機沈殿物は、多数の一般的な有機溶媒に容易に溶媒和させることができ、これには極性非プロトン性の溶媒群(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、ジグリム、およびその他のエーテルグリコール、クロロホルム、メチレンクロリド、およびその他のハロゲン化有機溶媒、テトラヒドロフラン、およびその他の環状エーテル溶媒)を含み、これらの溶媒は、無水条件下で使用することができ、試薬を新しい化学形態にする化学的変換および反応における使用で工業的価値を有することが確認されている。
【0024】
当業者は、核酸沈殿物を無水非プロトン性溶媒に溶媒和させたときに、これを数々の反応性中間体と接触させて、その核酸を化学反応によって新しい形態の核酸に変換させることができることを容易に理解するであろう。これらの反応には、蛍光プローブまたはレポーター分子を付着させるリボースおよびデオキシリボース糖の第1級および第2級アルコールのアシル化、リボース核酸をヌクレアーゼ抵抗性2′O−メチル化リボース核酸に変換させるメチル化化学反応、核酸の反応性遊離アミノ基を保護するための、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、およびグアニンの環外アミノ基のアミド化が含まれるが、これらに限定されない。末端1級ヒドロキシル基の化学修飾は、極めて容易な反応であると想像され、これを用いてコレステロールと別の疎水性物質とを結合させて、治療用薬および遺伝子送達の用途の核酸ポリマーにすることができる。この方法の有用性は、イノシンおよび転移リボ核酸中に存在する多くの修飾RNAヌクレオシドを含む、天然リボシドの微量成分の回収および化学修飾にまで広げることができる。これらの化学的変換は、新しい物理的および化学的特性、例えば化学分解および酵素分解に対する耐性の向上、器官、組織、および細胞特異的疾患標的化などに作用し、その他の製薬用途および工業用途における核酸の価値を高めることができる。
【0025】
核酸溶液とカチオン性脂質の溶液との接触は、典型的には水性溶液である第1の核酸溶液をカチオン性脂質の溶液と一緒に混合することによって実施する。カチオン性脂質は、有機溶媒または水性溶媒のいずれかの溶液であってよい。当業者は、この混合を任意の数の方法によって、例えば機械的手段によって、ボルテックスミキサーまたは注入ポンプおよび撹拌反応器を用いて実施可能なことを理解するであろう。
【0026】
カチオン性脂質核酸塩の作成に使用可能なカチオン性脂質の例には、選択されたpH、例えば生理的pH(例えば、pH約7.0)で正味の正電荷を有する複数の脂質種のうちのいずれかが含まれる。本明細書において、生理的pHとは、生体液、例えば血液またはリンパ液のpH、ならびに細胞内コンパートメント、例えばエンドソーム、酸性エンドソーム、またはリソソームのpHを指す。このような脂質には、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA」);N,N−ジメチル−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);3−(N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」);N−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」);1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA);および1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)が含まれるが、それらに限定されない。以下の脂質:1,2−ジミリストイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、DODMA、DMDMAなどは、カチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する。これらの脂質および関連する類似体は、同時係属中の米国特許出願第08/316,399号;米国特許第5,208,036号、第5,264,618号、第5,279,833号、および第5,283,185号に記載されている。さらに、複数のカチオン性脂質の市販製剤が入手可能であり、これらは本発明において使用することができる。カチオン性脂質以外に、正電荷を有するいかなる有機カチオンも核酸沈殿に使用でき、同じように使用できる可能性がある。
【0027】
カチオン−核酸沈殿物の作成に使用可能な有機カチオンは、水性液中でミセルを形成しても、可溶化された状態でアルコール中に含まれても、あるいは水性液とアルコールとの混合物中に含まれてもよい。また、一部の例では、有機カチオンは別の有機溶液、例えばクロロホルム中に含まれ、これを核酸を含有する水性溶液と混合することができる。有機溶媒の蒸発後、沈殿物が形成される。
【0028】
本開示は、核酸、プラスミド、siRNA、miRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、アプタマー、アンタゴmir、および遺伝子サイレンシング核酸などの治療的送達に有用な薬学的に許容される核酸組成物を提供する。これらの組成物および方法は、哺乳動物における疾患の予防および/または処置に使用することができる。本発明のカチオン性脂質核酸塩は、有機溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、THF、1−オクタノール、および多くの生体適合性溶媒、例えばDMSO、ジメチルアセトアミド、ラウロイルグリコール、およびその他の油性媒体、例えばミリスチン酸イソプロピル、オレイン酸エステル、メチル、エチル、イソプロピル、および高級アルキル置換基に対する劇的に向上した溶解性を有するカチオン性核酸塩をもたらす。
【0029】
これらのカチオン性脂質核酸塩は、次いで有機溶媒に再懸濁させ、別の脂質と混合して核酸脂質複合体を生成することができ、これを核酸としてプラスミドDNAを用いる遺伝子治療のために、またはアンチセンス、siRNA、miRNA、リボザイムを用いた遺伝子の下方制御のために、または核酸としてアプタマーを用いてその他の症状を抑制するために、個人に投与することができる。
【0030】
定義
ここに示す技術用語の定義は、当業者に既知のこれらの用語に関する意味を詳述することなく含むものと解釈されるべきであり、また本発明の範囲を制限するものではない。
【0031】
本発明の説明および請求項における用語「a」、「an」、「the」、および類似する用語の使用は、単数および複数を含むものとする。用語「包含する」、「有する」、「含む」、および「含有する」は、非限定的な用語として解釈され、すなわち、例えば「含むが、それらに限定されない」を意味する。本明細書における値の範囲の記述は、その範囲内に含まれるそれぞれのあらゆる個々の値をそれが本明細書に個別に記述されているのと同様に個別に指し、これはその範囲内の値の一部が明記されているか否かには関わらない。本明細書において使用する特定の値は、例であり、本発明の範囲を制限するものではないと理解される。
【0032】
用語「有機カチオン」および「カチオン性脂質」は、選択されたpH、例えば生理的pH(例えば、pH約7.0)で正味の正電荷を有する複数の脂質種または有機化合物のうちのいずれかを指す。本発明においても有用な複数のカチオン性脂質および関連する類似体は、米国特許公開第20060083780号;米国特許第5,208,036号;第5,264,618号;第5,279,833号;第5,283,185号;第5,753,613号;米国特許第第5,767,099号および第5,785,992号;ならびにPCT公開第WO 96/10390号に記載されている。カチオン性脂質の例には、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC)、ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTAP)、3−(N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(DC−Chol)、N−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(DMRIE)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、N4−スペルミンコレステリルカルバメート(GL−67)、N4−スペルミジンコレストリルカルバメート(GL−53)、1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート(GL−89)、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。非限定的な例として、生理的pH未満で正電荷を有するカチオン性脂質には、1,2−ジミリストイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、DODMA、およびDSDMAが含まれるが、それらに限定されない。一部の例では、カチオン性脂質は、プロトン化可能な第3級アミン頭部基、C18アルキル鎖、頭部基とアルキル鎖との間のエーテル結合、および0〜3個の二重結合を含む。このような脂質には、例えば、DSDMA、DLinDMA、DLenDMA、およびDODMAが含まれる。また、カチオン性脂質は、エーテル結合およびpH滴定可能な頭部基も含んでいてよい。このような脂質には、例えばDODMAが含まれる。カチオン性脂質は、例えば、DODAC、DDAB、DOTAP、DOTMA、DODMA、DLinDMA、DLenDMA、またはそれらの混合物であってもよい。本発明において有用なカチオン性脂質は、生理的pHで正味の正電荷を有する複数の脂質種のうちのいずれであってもよい。このような脂質には、DODAC、DODMA、DSDMA、DOTMA、DDAB、DOTAP、DOSPA、DOGS、DC−Chol、DMRIE、およびそれらの混合物が含まれるが、それらに限定されない。さらに、複数のカチオン性脂質の市販製剤が入手可能であり、これらは本発明において使用することができる。
【0033】
本明細書において、干渉核酸(iNA)という用語は、RISC複合体に進入したときにmRNAの酵素分解を誘導する、センス鎖およびアンチセンス鎖を有する核酸二本鎖を指す。一般に、各鎖はRNAヌクレオチドを主に含むが、これらの鎖はRNA類似体、RNAとRNA類似体、RNAとDNA、RNA類似体とDNA、あるいはiNA構築体が相同mRNAの酵素分解を誘導する限りにおいて、完全にDNAである一本鎖とRNAである一本鎖を含みうる。
【0034】
極性非プロトン性溶媒は、プロトン性溶媒とイオン溶解力を共有するが、酸性水素を有さない溶媒である。これらの溶媒は、一般に、高誘電率および高極性を有する。極性非プロトン性溶媒の例は、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサンおよびヘキサメチルホスホロトリアミド、アセトン、アセトニトリル、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、アセトニトリル、ヘキサメチルリン酸トリアミド(HMPA)、ピリジン、テトラメチル尿素(TMU)、尿素類似体、N,N−ジメチルホルムアミドHCON(CH3)2、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)CH3CON(CH3)2、およびテトラメチル尿素(CH3)2NCON(CH3)2、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、および1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(lH)−ピリミジノン(DMPU)である。比較的有毒なヘキサメチルホスホルアミド(HMPA)をDMPUに置き換えることが可能である。
【0035】
本明細書において、「アプタマー」または「核酸アプタマー」という用語は、標的分子と特異的に結合する核酸分子であって、自然状態で標的分子によって認識される配列を含む核酸分子を包含する。あるいは、アプタマーは、標的分子と結合する核酸分子であってもよく、このとき標的分子は核酸と自然には結合しない。
【0036】
例えば、アプタマーを用いて、タンパク質のリガンド結合ドメインと結合させ、それにより天然リガンドとタンパク質との相互作用を妨げることができる。例えば、Gold, et al., Annu. Rev. Biochem. 64:763, 1995; BrodyおよびGold, J. Biotechnol. 74:5, 2000; Sun, Curr. Opin. Mol. Ther. 2:100, 2000; Kusser, J. Biotechnol. 74:27, 2000; Hermann and Patel, Science 287:820, 2000; およびJayasena, Clinical Chemistry 45:1628, 1999を参照されたい。
【0037】
「アンチセンス核酸」とは、RNA−−RNAまたはRNA−DNAまたはRNA−PNA(タンパク質核酸;Egholm et al., 1993 Nature 365, 566)相互作用によって標的RNAに結合して、標的RNAの活性を変化させる非酵素的核酸分子を意味する(概説は、SteinおよびCheng, 1993 Science 261, 1004、およびWoolf et al., 米国特許第5,849,902号を参照)。典型的には、アンチセンス分子は、アンチセンス分子の単一の連続する配列に沿って標的配列に相補的である。しかしながら、特定の実施形態では、アンチセンス分子は、基質分子がループを形成するように基質に結合することができ、および/またはアンチセンス分子は、アンチセンス分子がループを形成するように結合することができる。したがって、アンチセンス分子は、2つ(またはそれ以上)の非連続的基質配列に相補的であってもよく、またはアンチセンス分子の2つ(またはそれ以上)の非連続的配列部分が標的配列に相補的であってもよく、またはそれら両方であってもよい。さらに、アンチセンスDNAを使用して、DNA−RNA相互作用によってRNAを標的としてもよく、それによってRNaseHを活性化し、これが二本鎖中の標的RNAを消化する。アンチセンスオリゴヌクレオチドは、標的RNAのRNAse H切断を活性化することができる、1つ以上のRNAse H活性化領域を含んでもよい。アンチセンスDNAは、化学的に合成しても、または一本鎖DNA発現ベクターまたはその同等物を用いて発現させてもよい。「アンチセンスRNA」は、標的遺伝子mRNAに相補的な配列を有するRNA鎖であり、標的遺伝子mRNAに結合することによってRNAiを誘導することができる。「アンチセンスRNA」は、標的遺伝子mRNAに相補的な配列を有するRNA鎖であり、標的遺伝子mRNAに結合することによってRNAiを誘導すると考えられている。「センスRNA」は、アンチセンスRNAに相補的な配列を有し、その相補的アンチセンスRNAにアニールされてiNAを形成する。これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAは従来、RNA合成機を用いて合成されてきた。
【0038】
「核酸」は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドおよびそれらの一本鎖形態または二本鎖形態のポリマーを指す。この用語は、合成、天然、および非天然であって、参照核酸と類似する結合特性を有し、参照ヌクレオチドと類似する形で代謝される、既知のヌクレオチド類似体または修飾骨格残基もしくは結合を含む核酸を包含する。このような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2′−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)が含まれるが、それらに限定されない。
【0039】
「RNA」とは、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を意味する。「リボヌクレオチド」とは、β−D−リボフラノース部分の2′位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドを意味する。この用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えにより作製されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または改変により、天然のRNAとは異なる改変RNAを含む。このような改変は、例えば干渉RNAの末端または内部への、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチドにおける、非ヌクレオチド物質の付加を含みうる。また、本発明のRNA分子中のヌクレオチドは、非標準ヌクレオチド、例えば非天然ヌクレオチド、または化学的に合成されたヌクレオチド、またはデオキシヌクレオチド含みうる。これらの改変RNAは、類似体または天然RNAの類似体と称することができる。本明細書において、「リボ核酸」および「RNA」という用語は、少なくとも1つのリボヌクレオチド残基を含む分子を指す。リボヌクレオチドは、β−D−リボフラノース部分の2′位にヒドロキシル基を有するヌクレオチドである。これらの用語は、二本鎖RNA、一本鎖RNA、単離されたRNA、例えば部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換えにより作製されたRNA、ならびに1つ以上のヌクレオチドの付加、欠失、置換、修飾、および/または改変により、天然のRNAとは異なる修飾および改変RNAを含む。RNAの改変には、例えば干渉RNAの末端または内部への、例えばRNAの1つ以上のヌクレオチド(RNA分子中のヌクレオチドは、非標準ヌクレオチド、例えば非天然ヌクレオチド、または化学的に合成されたヌクレオチド、またはデオキシヌクレオチドを含む)における、非ヌクレオチド物質の付加を含みうる。これらの改変RNAは、類似体と称することができる。
【0040】
本明細書において「ヌクレオチド」とは、当該技術分野において認識されているように、天然塩基(標準的)および当該技術分野で周知の修飾塩基を含むものである。このような塩基は、一般に、ヌクレオチドの糖部分の1′位に位置する。ヌクレオチドは、一般に、塩基、糖、およびリン酸基を含む。ヌクレオチドは、糖部分、リン酸部分、および/または塩基部分で修飾されていなくても、または修飾されていてもよい(同じ意味で、ヌクレオチド類似体、修飾ヌクレオチド、非天然ヌクレオチド、非標準ヌクレオチドなどと称することもできる;例えば、全て参考として本明細書で援用される、UsmanおよびMcSwiggen, supra; Eckstein, et al, 国際PCT公開第WO 92/07065号; Usman, et al, 国際PCT公開第WO 93/15187号; Uhlman & Peyman, supraを参照)。Limbach, et al, Nucleic Acids Res. 22:2183, 1994に要約されているように、当該技術分野で既知の修飾核酸塩基にはいくつかの例がある。核酸分子に導入することができる塩基修飾の非限定的ないくつかの例には、イノシン、プリン、ピリジン−4−オン、ピリジン−2−オン、フェニル、シュードウラシル、2,4,6−トリメトキシベンゼン、3−メチルウラシル、ジヒドロウリジン、ナフチル、アミノフェニル、5−アルキルシチジン(例えば、5−メチルシチジン)、5−アルキルウリジン(例えば、リボチミジン)、5−ハロウリジン(例えば、5−ブロモウリジン)、または6−アザピリミジンもしくは6−アルキルピリミジン(例えば、6−メチルウリジン)、プロピンなどが含まれる(Burgin, et al., Biochemistry 35:14090, 1996; Uhlman & Peyman, supra)。本態様における「修飾塩基」とは、1′位のアデニン、グアニン、シトシン、およびウラシル以外のヌクレオチド塩基、またはそれらの同等物を意味する。
【0041】
本明細書において相補的なヌクレオチド塩基とは、互いに水素結合を形成する一対のヌクレオチド塩基である。RNAにおいてアデニン(A)はチミン(T)またはウラシル(U)と対合し、グアニン(G)はシトシン(C)と対合する。核酸の相補的セグメントもしくは鎖は、互いにハイブリダイズする(水素結合により接合する)。「相補性」とは、核酸が、伝統的なワトソン・クリックによって、または別の非伝統的な結合様式によって、別の核酸配列と水素結合を形成しうることを意味する。
【0042】
アンタゴmirは、新規の群の化学的に設計されたアンチセンスオリゴヌクレオチドの1つである。アンタゴmirは、内因性マイクロRNAのサイレンシングに使用される。
【0043】
マイクロRNA(miRNA)は、長さ約21〜23ヌクレオチドの一本鎖RNA分子であり、これは遺伝子発現を調節する。miRNAは、DNAから転写される遺伝子によってコードされるが、タンパク質には翻訳されない(非コードRNA);その代わり、これらはpri−miRNAとして既知の一次転写産物からpre−miRNAと呼ばれるショートステムループ構造に、そして最終的には機能的miRNAへとプロセシングされる。成熟miRNA分子は、1つ以上のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に部分的に相補的であり、これらの主な機能は、遺伝子発現を下方制御することである。
【0044】
短鎖干渉RNAまたはサイレンシングRNAとしても知られている、低分子干渉RNA(siRNA)という用語は、本明細書において、生物学においてさまざまな役目を果たす、長さ16〜29ヌクレオチドの二本鎖RNA分子の群を指して用いられる。最も注目に値するのは、siRNAがRNA干渉(RNAi)経路に関与し、そこで特定の遺伝子の発現に干渉することである。RNAi経路における役目に加え、siRNAは、RNAi関連経路においても、例えば抗ウイルス機構として、またはゲノムのクロマチン構造を形成する際にも機能を果たす。これらの経路の複雑性はようやく解明されだしたばかりである。
【0045】
本明細書において、RNAiという用語は、RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)によって制御され、細胞内の短い二本鎖RNA分子によって開始されて、これらが触媒RISC成分アルゴノートと相互作用する、RNA依存性遺伝子サイレンシングプロセスを指す。二本鎖RNAまたはRNA様iNAもしくはsiRNAが外因性(RNAゲノムを有するウイルスによる感染、またはトランスフェクトしたiNAもしくはsiRNAに起因する)である場合、RNAまたはiNAは、細胞質内に直接取り込まれ、酵素ダイサーによって短い断片に切断される。また、開始dsRNAは、ゲノム内のRNAコード遺伝子から発現したpre−マイクロRNAにように、内在性(細胞に由来する)であってもよい。そのような遺伝子からの一次転写産物は、まずプロセスされて、核内でpre−miRNAの特徴的なステムループ構造を形成し、次いで細胞質に輸送されてダイサーによって切断される。したがって、外因性と内在性との2つのdsRNA経路は、RISC複合体内に集まる。RNA誘導サイレンシング複合体(RISC)の活性成分は、アルゴノートタンパク質と呼ばれるエンドヌクレアーゼであり、これらはその結合したsiRNAもしくはiNAに相補的な標的mRNA鎖を切断する。ダイサーにより生成された断片は二本鎖であるため、これらはそれぞれ理論上は、機能的siRNAもしくはiNAを生成することができる。しかしながら、二本の鎖のうちガイド鎖として知られる一本のみがアルゴノートタンパク質と結合し、遺伝子サイレンシングを導く。他方の非ガイド鎖、すなわちパッセンジャー鎖は、RISC活性化時に分解される。
【0046】
保存料の例には、フェノール、メチルパラベン、パラベン、m−クレゾール、チオマーサル、塩化ベンジルアルコニウム、およびそれらの混合物が含まれる。
【0047】
コア複合体
好ましくは、カチオン性脂質核酸塩を有機溶媒、とりわけ非プロトン性極性溶媒中の溶液の形態にして処方物を形成し、これを上述の1つ以上の脂質の溶液と混合する。これらの脂質は、有機溶媒、好ましくは非プロトン性極性溶媒中の溶液の形態である。
【0048】
カチオン性脂質核酸塩を作製する際に使用可能なカチオン性脂質の例には、選択されたpH、例えば生理的pH(例えば、pH約7.0)で、正味の正電荷を有する複数の脂質種のうちのいずれかが含まれる。本明細書において、生理的pHとは、生体液、例えば血液またはリンパ液のpH、ならびに細胞内コンパートメント、例えばエンドソーム、酸性エンドソーム、またはリソソームのpHを指す)。そのような脂質には、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(「DODAC」);N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTMA);N,N−ジメチル−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);3−(N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(「DC−Chol」);N−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」);1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA);および1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)が含まれるが、それらに限定されない。以下の脂質:1,2−ジミリストイル−3−ジメチルアンモニウムプロパン(DODAP)、DODMA、DMDMAなどは、カチオン性であり、生理的pH未満で正電荷を有する。これらの脂質および関連する類似体は、同時係属中の米国特許出願第08/316,399号;米国特許第5,208,036号、第5,264,618号、第5,279,833号、および第5,283,185号に記載されている。さらに、複数のカチオン性脂質の市販製剤が入手可能であり、これらは本開示において使用することができる。
【0049】
炭素数6超、好ましくは15超、最も好ましくは18超の特定の有機カチオンの核酸カチオン性有機塩沈殿物は、多くの一般的な有機溶媒に容易に溶媒和させることができ、これには極性非プロトン性の溶媒群(ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジン、ジグリム、およびその他のエーテルグリコール、クロロホルム、メチレンクロリド、およびその他のハロゲン化有機溶媒、テトラヒドロフラン、およびその他の環状エーテル溶媒)を含む。これらの溶媒は、無水条件下で使用することができ、試薬を新しい化学形態にする化学的変換および反応における使用で工業的価値を有する。
【0050】
核酸溶液とカチオン性脂質溶液との接触は、典型的には水性溶液である核酸溶液をカチオン性脂質溶液と一緒に混合することによって実施する。カチオン性脂質は、有機溶媒または水性溶媒のいずれかの溶液であってもよい。カチオン性脂質の核酸中に存在するヌクレオチドに対する比率は、好ましくは2〜3:1(質量比)であるべきである。当業者は、この混合を任意の数の方法によって、例えば機械的手段によって、例えばボルテックス、ミキサー、または注入ポンプおよび撹拌反応器を用いて実施可能なことを理解するであろう。
【0051】
共脂質を含む処方物
生物活性分子、特に核酸分子、例えばDNAおよびsiRNAの細胞内送達を促進するように設計された化合物は、たいていは極性ドメインと非極性ドメインとを有するため、これらは極性環境および非極性環境の双方と相互作用することができる。そのような両ドメインを有する化合物は、両親媒性物質と呼ぶことができ、開示されているそのような細胞内送達を促進する際に使用するための多くの脂質および合成脂質(in vitro応用またはin vivo応用に関わらず)が、この定義に当てはまる。
【0052】
コア複合体は、有機溶媒もしくは極性非プロトン性溶媒中の共脂質と混合してよい。共脂質は、(i)脂質カルバメート、(ii)中性リン脂質、(iii)ステロール、および(iv)ステロール−PEG化合物からなる群から選択される、1つ以上の脂質である。
【0053】
脂質カルバメートは、以下の分子を含む。
【0054】
【化1】

[式中、
p、q、r、s、およびtは、互いに独立して、0〜16から選択され、
XおよびYは、互いに独立して、H、Ac、Boc、またはPivからなる群から、あるいはC、アミド、カルバメート、スクシンアミド、マレイミド、エポキシド、およびウレタンからなるリンカー群から選択され、
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、およびR8は、互いに独立して、C1〜C26アルカンもしくはアルケン、多価不飽和脂質、ステロイド、PUFA、グアニジン、またはアルギニンからなる群から任意の組み合わせで選択され、このときステロイドは、ラノステロール、エルゴステロール、デスモステロール、植物フィトステロール、例えばスチグマステロール、または胆汁塩もしくは胆汁塩誘導体、例えばコール酸、デオキシコール酸、ヒドロデオキシコール酸、またはデヒドロコール酸からなる群から選択される。]
好適な実施形態を以下の一覧に示す(α群、β群、およびγ群;式I−LXVIII)。式中、R1はHであり;R2は、Meまたはtert−ブトキシカルボニル(Boc)であり;R1およびR2は、グアニジニルまたはN−CNNHであり;あるいはR1はHであり、R2はアミド結合の形成によるアルギニンである。コレステロール部分は、ラノステロール、エルゴステロール、デスモステロール、植物フィトステロール、例えばスチグマステロール、または胆汁塩もしくは胆汁塩誘導体、例えばコール酸、デオキシコール酸、ヒオデオキシコール酸、およびデヒドロコール酸に置き換えてもよい。
【0055】
【化2】

【0056】
【化3】

【0057】
【化4】

【0058】
【化5】

【0059】
【化6】

【0060】
【化7】

【0061】
【化8】

【0062】
【化9】

【0063】
【化10】

【0064】
【化11】

【0065】
【化12】

【0066】
【化13】

【0067】
3種の塩基性ポリアミン分子から誘導された分子のその他の例は以下の通りである。
【0068】
【化14】

【0069】
【化15】

【0070】
【化16】

【0071】
【化17】

【0072】
【化18】

【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
【化21】

【0076】
【化22】

【0077】
【化23】

【0078】
使用可能な多価カチオン性脂質ポリアミン、例えばN6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート、およびリポスペルミンの例には、N4−スペルミンコレステリルカルバメート(GL−67)、N4−スペルミジンコレステリルカルバメート(GL−53)、1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート(GL−89)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミルスペルミン(DPPES)、ジオクタデシルアミドグリシルスペルミン(Transfectam、DOGS)、2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテートが含まれる。リポスペルミンおよびリポスペルミジンは、イオン電荷複合体を形成する核酸鎖のリン酸の酸素と複合体を形成しうる、3個以上のアミド水素を有するカチオン性基と共有結合した、1つ以上の疎水性鎖からなる二官能性分子である。
【0079】
好適なカルバメートはコレステロール様化合物:N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメートであり、以下の構造:
【化24】

を有する。
【0080】
中性リン脂質には、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、スフィンゴミエリン、およびジホスファチジルグリセロールが含まれるが、それらに限定されない。リン脂質アシル(脂肪酸)鎖は、飽和であっても、またはそのいずれかのアシル鎖に1つ以上の不飽和結合を有してもよく、鎖はそれぞれ8個から約26個の炭素原子を有し、同じ(対称)または異なる(非対称)。アシル鎖中の二重結合は、独立して、シスまたはトランスのいずれかであってよく、この例としては、1−アシル鎖と2−アシル鎖が含まれ、それぞれが、独立して、リノレオイル(18:2)、リノレノイル(18:3)、アラキドノイル(20:4)、およびドコサヘキサエノイル(22:6)からなる群から選択される。
【0081】
ステロールには、コレステロール、ラノステロール、24−イソプロピルコレステロール、ニカステロール、7−デヒドロコレステロール、24−デヒドロコレステロール、ゴルゴステロール、ジノステロール、24S−ヒドロキシコレステロール、およびフィトステロール(エルゴステロール、スチグマステロール、カンペステロール、フコステロール、β−シトステロールを含む)、およびフィトスタノール、ならびにステロールエステル、ステリルグリコシド、およびステリルアルキルエーテルが含まれる。
【0082】
ステロール−PEG化合物は、ポリエチレングリコール(PEG)と結合したステロール、例えばPEG結合コレステロールであり、このときPEGは、5000ダルトン未満、好ましくは2000ダルトン未満、最も好ましくは200〜1000ダルトンである。
【0083】
請求項に記載の処方物中に使用する、固体の安定形態のカチオン性脂質核酸塩、とりわけカチオン性脂質干渉核酸塩は、カチオン性脂質の溶液を核酸の水性溶液と、このカチオン性脂質分子が核酸と複合体を形成する条件下で接触させて、カチオン性脂質核酸塩沈殿物を形成することにより生成する。親油性部分を有する、あるいは核酸を水不溶性にさせるのに十分な疎水性度を有するカチオン性有機分子の場合に、沈殿が生じる。得られる沈殿物は、核酸を完全な親水性からより低い親水性へと低下させる、あるいは核酸を部分的もしくは完全に疎水性にさせる、好ましくは核酸中に存在するヌクレオチドの数と1対1のモル濃度の比のカチオン性脂質分子の正電荷の総数を含む。この核酸塩有機カチオン性脂質沈殿物は、濾過、遠心分離、および化学工程の分野の当業者が利用できるその他の方法を用いて、水性液から回収することができる。沈殿したカチオン性脂質塩を乾燥させ、数々の機械的処理を施して、これを核酸薬剤の固体剤形および液体剤形に組み込むのに適するようにしてもよい。
【0084】
次いで、カチオン性脂質核酸塩を1つ以上の脂質、例えば別のカチオン性脂質である両親媒性物質、例えばN6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート、リン脂質、疎水性脂質、好ましくはステロール、例えばコレステロール、およびPEG結合脂質、好ましくはPEG結合ステロールと混合することによって、処方物を生成する。
【0085】
ポリエチレングリコール(PEG)結合脂質には、PEG結合コレステロールおよびPEG結合コレステロール誘導体、およびPEG結合フィトステロール、例えばPEG−カンペステロール、PEG−シトステロール、およびPEG−スチグマステロール、DSPE−PEG、DOPE−PEG、およびセラミド−PEGが含まれる。
【0086】
本開示は、核酸、プラスミド、アンチセンス核酸、リボザイム、アプタマー、アンタゴmir、siRNA、miRNA、遺伝子サイレンシング干渉核酸、およびそれらの混合物の治療的送達に有用な、薬学的に許容される核酸組成物を提供する。これらの組成物および方法は、哺乳動物における疾患の予防および/または処置に使用することができる。
【0087】
請求項に記載の脂質/核酸処方物は、カチオン性脂質核酸塩を有機溶媒または非プロトン性溶媒に再懸濁させることによって作製することができ、別の脂質と混合し、溶媒の蒸発なのどのさらなる処理を行なって核酸脂質複合体を生成することができる。これを個人に投与して、核酸としてプラスミドDNAを用いた遺伝子治療、またはアンチセンス、リボザイム、アンタゴmir、siRNA、miRNA、iNAを用いた遺伝子の下方制御、または核酸としてアプタマーを用いたその他の状態の抑制を行なうことができる。
【0088】
また、本開示は、これらの必要性を満たし、かつ600nmを下回る、好ましくは400nmを下回る、最も好ましくは200nmを下回る単分散の粒径分布を有する脂質と核酸との自己乳化性複合体を提供することによって、さらなる目的および利点を実現する。
【0089】
投与のための組成物および処方物
本開示の核酸−脂質組成物は、さまざまな経路により投与して、例えば、静脈内経路、非経口経路、腹腔内経路、または局所経路により、全身送達を実施することができる。一部の実施形態では、siRNAを細胞内に、例えば肺や肝臓などの標的組織あるいは炎症組織の細胞内に送達することができる。一部の実施形態では、本開示は、in vivoにおけるsiRNAの送達のための方法を提供する。核酸−脂質組成物は、対象に静脈内投与、皮下投与、または腹腔内投与することができる。一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物対象の肺への干渉RNAのin vivo送達ための方法を提供する。
【0090】
一部の実施形態では、本開示は、哺乳動物対象において疾患または障害を処置する方法を提供する。核酸、カチオン性脂質、両親媒性物質、リン脂質、コレステロール、およびPEG結合コレステロールを含有する本開示の組成物の治療有効量を、この組成物による低下、減少、下方制御、またはサイレンシングが可能な遺伝子の発現または過剰発現に関連する疾患または障害を有する対象に投与することができる。
【0091】
本開示の組成物および方法は、種々の粘膜投与法により対象に投与することができるが、これには経口送達、直腸送達、膣内送達、鼻腔内送達、肺内送達、または経皮的送達もしくは皮膚送達によるもの、あるいは目、耳、皮膚、またはその他の粘膜面への局所送達によるものが含まれる。本開示の一部の態様において、粘膜組織層は上皮細胞層を含む。この上皮細胞は、肺上皮細胞、気道上皮細胞、気管支上皮細胞、肺胞上皮細胞、鼻上皮細胞、口腔上皮細胞、表皮上皮細胞、または胃腸上皮細胞であってよい。本開示の組成物は、従来の作動装置、例えば機械的スプレー装置、ならびに加圧式、電気作動式、またはその他のタイプの作動装置を用いて投与することができる。
【0092】
本開示の組成物は、鼻用スプレーまたは肺用スプレーとして水性溶液の形態で投与してもよく、当業者に既知の種々の方法によってスプレー形態で投薬してもよい。本開示の組成物の肺送達は、エアロゾル化、微粒化、または霧化されていてもよい、液滴、粒子、またはスプレーの形態の組成物を投与することによって達成される。組成物の粒子、スプレー、またはエアロゾルは、液体または固体のいずれかの形態であってもよい。鼻用スプレーとして液剤を投薬するのに好適なシステムは、米国特許第4,511,069号に記載されている。このような処方物は、好都合には、本開示による組成物を水に溶解させて水性溶液を生成し、その溶液を殺菌することによって製造することができる。この処方物は、多回投与容器、例えば米国特許第4,511,069号に開示されている密封式投薬システムで付与することができる。その他の適切な鼻用スプレー送達システムは、Transdermal Systemic Medication, Y. W. Chien ed., Elsevier Publishers, New York, 1985;および米国特許第4,778,810号に記載されている。さらなるエアロゾル送達形態には、例えば、圧縮空気ネブライザー、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、および圧電式ネブライザーを含んでもよく、これらは薬剤溶媒、たとえば水、エタノール、またはそれらの混合物などに溶解または懸濁させた生物活性物質を送達する。
【0093】
本開示の鼻用および肺用スプレー溶液は、典型的には、薬剤、または場合により界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤(例えば、ポリソルベート−80)および1つ以上の緩衝剤を含んで処方された送達用の薬剤を含む。本開示の一部の実施形態では、鼻用スプレー溶液は、推進剤をさらに含む。鼻用スプレー溶液のpHは、およそpH6.8〜7.2であってよい。また、使用する薬剤溶媒は、pH4〜6の弱酸性の水性緩衝剤であってもよい。化学的安定性を向上または維持するために、他の成分を添加してもよく、これには保存料、界面活性剤、分散剤、またはガスが含まれる。
【0094】
一部の実施形態では、本開示の組成物を含有する溶液と、肺用、粘膜用、または鼻腔内用のスプレーもしくはエアロゾルの作動装置とを含む医薬製品が開示される。
【0095】
本開示の組成物の剤形は、液滴または乳剤の形態、あるいはエアロゾルの形態の液体であってよい。
【0096】
本開示の組成物の剤形は固体であってもよく、これは投与前に液体中で再構成させることができる。この固体は、粉剤として投与してもよい。この固体は、カプセル剤、錠剤、またはゲルの形態であってもよい。
【0097】
本開示の範囲内で肺送達用の組成物を処方するために、生物活性物質を種々の薬学的に許容される添加剤、ならびに活性物質を分散させるための基剤または担体と混合することができる。添加剤の例には、pH調整剤、例えばアルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸、およびそれらの混合物が含まれる。その他の添加剤には、局所麻酔薬(例えば、ベンジルアルコール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着阻害剤(例えば、Tween 80)、溶解度向上剤(例えば、シクロデキストリンおよびそれらの誘導体)、安定剤(例えば、血清アルブミン)、および還元剤(例えば、グルタチオン)が含まれる。粘膜送達用組成物が液剤である場合、0.9%(w/v)生理食塩溶液の浸透圧(1とする)を基準にして測定した処方物の浸透圧は、典型的には、投与部位の粘膜に実質的な不可逆的組織損傷を生じさせない値に調整する。一般に、溶液の浸透圧は、約1/3〜3、より典型的には1/2〜2、最も多くの場合3/4〜1.7の値に調整する。
【0098】
生物活性物質は、基剤または媒体中に分散されていてもよく、これにはその活性物質および任意の所望の添加剤を分散させることができる親水性化合物を含んでいてもよい。基剤は、さまざまな適切な担体から選択することができ、これにはポリカルボン酸もしくはその塩、カルボン酸無水物(例えば、マレイン酸無水物)と別のモノマー(例えば、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸など)とのコポリマー、親水性ビニルポリマー、例えばポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど、および天然ポリマー、例えばキトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、およびそれらの非毒性金属塩が含まれるが、それらに限定されない。多くの場合、基剤または担体として、生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシ酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−グリコール酸)コポリマー、およびそれらの混合物が選択される。代替的または付加的に、合成脂肪酸エステル、例えばポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなども担体として使用することができる。親水性ポリマーおよびその他の担体は、単独でまたは組み合わせて使用することができ、部分結晶化、イオン結合、架橋などにより、担体の構造完全性を向上させることができる。担体は、流体もしくは粘性溶液、ゲル、ペースト、粉末、マイクロスフェア、およびフィルムを含むさまざまな形態で提供して、鼻粘膜に直接塗布することができる。これに関連して、選択された担体の使用は、生物活性物質の吸収促進をもたらしうる。
【0099】
粘膜送達用、鼻送達用、または肺送達用の処方物は、基剤または賦形剤として、親水性低分子量化合物を含有していてもよい。そのような親水性低分子量化合物は通過媒体を提供し、それを通して水溶性活性物質、例えば生理活性ペプチドもしくはタンパク質が基剤を通って身体表面に拡散することができ、そこで活性物質が吸収される。親水性低分子量化合物は、場合により、粘膜または投与環境から水分を吸収し、水溶性の活性ペプチドを溶解させる。親水性低分子量化合物の分子量は、一般に10,000以下、好ましくは3000以下である。親水性低分子量化合物の例には、ポリオール化合物、例えばオリゴ糖、二糖、および単糖が含まれ、これにはショ糖、マンニトール、乳糖、L−アラビノース、D−エリトロース、D−リボース、D−キシロース、D−マンノース、D−ガラクトース、ラクツロース、セロビオース、ゲンチビオース、グリセリン、ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物を含む。親水性低分子量化合物のさらなる例には、N−メチルピロリドン、アルコール(例えば、オリゴビニルアルコール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)、およびそれらの混合物が含まれる。
【0100】
あるいは、本開示の組成物は、薬学的に許容される担体物質として、生理的条件に近づけるために必要とされる物質、例えばpH調整剤および緩衝剤、浸透圧調整剤、および湿潤剤、例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、ソルビタンモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、およびそれらの混合物を含有してもよい。固体組成物の場合、従来の非毒性の薬学的に許容される担体を用いてもよく、これには例えば、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、ブドウ糖、ショ糖、炭酸マグネシウムなどが含まれる。
【0101】
本開示の特定の実施形態では、生物活性物質は、徐放性処方物として、例えば、持続放出性ポリマーを含む組成物として投与してもよい。活性物質は、迅速放出を防ぐ担体、例えば制御放出媒体、例えばポリマー、マイクロカプセル化送達系、または生体接着ゲルを用いて製造することができる。本開示の種々の組成物における活性物質の持続的送達は、組成物中に吸収を遅延させる物質、例えば、モノステアリン酸アルミニウムヒドロゲルおよびゼラチンを含めることによって実現することができる。
【0102】
本開示を特定の実施形態に関連して記載し、説明の目的で多くの詳細を示してきたが、本開示がさらなる実施形態を含むこと、また本明細書に記載されている詳細の一部を本開示から逸脱することなく大幅に変更することができることは、当業者には明らかであろう。本開示は、そのようなさらなる実施形態、変更形態、および相当物を含む。とりわけ、本開示は、種々の例示的構成要素および例の特長、表現、または要素の任意の組み合わせを含む。
【0103】
本発明を特定の実施形態に関連して記載し、説明の目的で多くの詳細を示してきたが、本発明がさらなる実施形態を含むこと、また本明細書に記載した詳細の一部を本発明から逸脱することなく大幅に変更することができることは、当業者には明らかであろう。本発明は、そのようなさらなる実施形態、変更形態、および相当物を含む。とりわけ、本発明は、種々の例示的構成要素および例の特長、表現、または要素の任意の組み合わせを含む。
【0104】
実施例
実施例1〜4:核酸/カチオン性脂質塩
核酸/カチオン性脂質塩を以下の方法で製造した。清浄で乾燥した透明なホウケイ酸ガラスバイアル中で、2mgのカチオン性脂質を0.1mLのクロロホルムに溶解させ、バイアルに窒素ガスを送入してクロロホルムを蒸発させ、真空槽に入れて真空中(in vacuo)で乾燥させることによって、残留した微量のクロロホルムを全て除去した。バイアルを真空槽から取り出し、0.1mLのエタノールを添加した。このバイアルをTEFLON(登録商標)ライナー付きキャップで密閉し、シーリングテープでしっかりと巻いた。このバイアルをボルテックスまたは/および超音波処理して、カチオン性脂質を溶解させた。
【0105】
カチオン性脂質のエタノール溶液を1mgのsiRNAを含有する水性溶液に添加した。このカチオン性脂質のsiRNA溶液への添加により、速やかに凝集が起こり、カチオン性脂質とsiRNAとから構成される水不溶性のカチオン性脂質/核酸塩を形成した。
【0106】
次いで管内のこの水不溶性のカチオン性脂質/核酸塩をエッペンドルフ微量遠心機で最大速度にて15分間遠心分離し、ペレットを形成した。毎回の遠心分離後に上澄みを回収し、OD260で上澄み中のsiRNAの量を測定した。
【0107】
残りの実施例では、核酸/カチオン性脂質塩を有機溶媒に可溶化し、さらなる脂質と混合して処方物にした。
【0108】
第1表は、本方法を用いて核酸/カチオン性脂質塩を形成するために使用したカチオン性脂質の一覧である。
【0109】
第1表
【表1】

【0110】
第2表は、siRNAを水不溶性にするsiRNA/脂質の比率の測定の概要である。
【0111】
第2表
【表2】

【0112】
実施例5〜18:肝臓siRNA送達処方物
肝臓siRNA送達処方物を以下の方法で製造した。実施例1〜4と同様に作製したカチオン性脂質/siRNA塩(カチオン性脂質と複合体を形成する1mgのsiRNAを含有)を遠心分離し、乾燥させたあと、その塩を100μLのクロロホルムに再懸濁させ、クロロホルム中の脂質の混合物(第3表に指定の特定のカルバメート、リン脂質、および脂質−PEGに従って、4.4mgのカルバメート、2.7〜4.4mgのリン脂質、3.2mgのコレステロール、および14.4mgの脂質−PEG)と混合した。この混合物を真空下で乾燥させ、使用まで4℃で保管した。注射前、振盪しながら9%ショ糖溶液を添加して、siRNA/脂質処方物の等張性自己乳化性siRNA/脂質懸濁液を形成した。この処方物を投与量0.2mlでCDlマウスに尾静脈投与した。2日後、マウスを致死させて肝臓を採取し、リアルタイムRT−PCR法により遺伝子発現を解析した。siRNA用量2mg/kgで、80%超の標的遺伝子のサイレンシングが認められた。
【0113】
第3表:肝臓送達処方物
【表3】

【0114】
図1は、実施例11の処方物をマウスに注射することによる試験の結果を記載している。これらの結果は、請求項に記載の処方物としてのApoB siRNAの注射が、siRNA0.5〜4mg/kgの投薬量で、肝臓におけるApoB遺伝子発現の発現ノックダウン、および血清コレステロール値の低下に有効であることを示している。
【0115】
図2は、実施例11の請求項に記載の処方物としてのApoB siRNAに対する身体反応の経時変化を示している。これらの結果は、注射14日後まで、ApoB miRNA発現および血清コレステロールが低下していることを示している。
【0116】
実施例20〜25:肺siRNA送達処方物
肺siRNA送達処方物を以下の方法で製造した。実施例1〜4と同様に作製したカチオン性脂質/siRNA塩(カチオン性脂質と複合体を形成する1mgのsiRNAを含有)を遠心分離し、乾燥させたあと、その塩を100μLのクロロホルムに再懸濁させ、クロロホルム中の脂質の混合物(第4表に指定の特定のカルバメート、リン脂質、および脂質−PEGに従って、8.8mgのカルバメート、2.2mgのリン脂質、1.6mgのコレステロール、および14.4mgの脂質−PEG)と混合した。この混合物を真空下で乾燥させ、使用まで4℃で保管した。注射前、振盪しながら9%ショ糖溶液を添加して、siRNA/脂質処方物の等張性自己乳化性siRNA/脂質懸濁液を形成した。この処方物を投与量0.2mlで129S1/svImJマウスに尾静脈投与した。2日後、マウスを致死させた。肺および肝臓を採取し、リアルタイムRT−PCR法により遺伝子発現を解析した。
【0117】
第4表:肺送達処方物
【表4】

【0118】
図3は、請求項に記載の処方物をマウスに注射することによる試験の結果を記載している。これらの結果は、実施例20の処方物としてのGAPDH siRNAおよびβ−アクチンの注射が、肺における相当する遺伝子の発現のノックダウンに有効であるが、この処方物は、肝臓におけるこれらの遺伝子の発現をほんのわずかに変化させるのみであることを示している。
【0119】
図4は、実施例20の請求項に記載の処方物としてのGAPDH siRNAおよびβ−アクチン ApoB siRNAの注射に対する、肺の用量反応を示している。これらの結果は、siRNA2〜12mg/kgの投薬量で、これらの発現が低下すること、またこれらのsiRNA2〜8mg/kgの投薬量では、肝臓発現にほとんど作用しないことを示している。
【0120】
実施例26〜32:腫瘍siRNA送達処方物
腫瘍siRNA送達処方物を以下の方法で製造した。実施例1〜4と同様に作製したカチオン性脂質/siRNA塩(カチオン性脂質と複合体を形成する1mgのsiRNAを含有)を遠心分離し、乾燥させたあと、その塩を100μLのクロロホルムに再懸濁させ、クロロホルム中の脂質の混合物(第5表に指定の特定のカルバメート、リン脂質、および脂質−PEGに従って、4.4mgのカルバメート、4.4mgのリン脂質、2.4mgのコレステロール、および21.6mgの脂質−PEG)と混合した。この混合物を真空下で乾燥させ、使用まで4℃で保管した。注射前、振盪しながら9%ショ糖溶液を添加して、siRNA/脂質処方物の等張性自己乳化性siRNA/脂質懸濁液を形成した。この処方物を投与量0.2mlでBalb/cマウスに尾静脈投与した。siRNA処方物の投与5日前に、このマウスの肝臓にEMT6細胞を移植した。2日後、マウスを致死させた。腫瘍および肝臓を採取し、リアルタイムRT−PCR法により遺伝子発現を解析した。
【0121】
第5表:腫瘍送達処方物
【表5】

【0122】
図5は、請求項に記載の処方物をマウスに注射することによる試験の結果を記載している。これらの結果は、実施例27の処方物としてのラミンsiRNAの注射は、腫瘍における相当する遺伝子の発現のノックダウンに有効であるが、この処方物が、肝臓におけるこれらの遺伝子の発現をそれほど変化させなかったことを示している。
【0123】
実施例33:骨髄siRNA送達処方物
骨髄siRNA送達処方物を以下の方法で製造した。実施例1〜4と同様に作製したDOTMA/siRNA塩(DOTMAと複合体を形成する1mgのsiRNAを含有)を遠心分離し、乾燥させたあと、その塩を100μLのクロロホルムに再懸濁させ、クロロホルム中の脂質(6.6mgのN6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート、2.2mgのDLinPE(1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン)、2.4mgのコレステロール、および21.6mgのコレステロール−PEG(コレステロール−ポリ(エチレングリコール)) 660)と混合した。この混合物を真空下で乾燥させ、使用まで4℃で保管した。注射前、振盪しながら9%ショ糖溶液を添加して、siRNA/脂質処方物の等張性自己乳化性siRNA/脂質懸濁液を形成した。この処方物を投与量0.2mlでCDlマウスに尾静脈投与した。2日後、マウスを致死させた。骨髄および肝臓を採取し、リアルタイムRT−PCR法により遺伝子発現を解析した。
【0124】
実施例34:皮膚処方物
皮膚siRNA送達処方物を以下の方法で製造した。蛍光標識したsiRNAまたは蛍光標識していないsiRNAを実験に使用した。siRNA/DOTMAカチオン性脂質塩を実施例1と同様に製造した。次いで、このsiRNA/DOTMAカチオン性脂質塩を1−オクタノールに溶解させた。ラウロイルグリコールおよびアゾンを含有する別の賦形剤の添加後、この処方物をブタ皮膚表面に塗布した。5時間のインキュベーション後、この処方物を除去し、皮膚表面を濯いで取り込まれていないsiRNを除去した。次いで、この皮膚組織を固定し、切断し(5μm厚)、核染色用のDAPIで染色し、蛍光顕微鏡下で蛍光強度を観察した。
【0125】
実施例35:In vivo遺伝子ノックダウン試験
実施した動物試験に使用した全ての手順は、動物実験委員会(Institutional Animal Care and Use Committee:IACUC)に承認されたものであり、該当する場合には、地方、州、および連邦の規制に準拠した。マウスに、投与量0.2mlでsiRNA処方物を尾静脈投与した。投与2日後にマウスの組織を採取し、Turbocaptureキット(Qiagen社)を用いてmRNAを単離し、リアルタイムRT−PCR法(SensiMix SYBR One−Step Kit、Bioline社)により遺伝子発現の変化を解析した。
【0126】
実施例36:カチオン性脂質を含むsiRNAのスケールアップ沈殿
in vivoでの送達siRNAの臨床試験のためにより大量の沈殿物を生成する目的で、1gのApoB siRNAを500mlのRNaseを含まない水に室温で完全に可溶化した。2グラムの乾燥DOTMAを25mlの無水エタノールに溶解して、DOTMA溶液を製造した。siRNA溶液を撹拌プレート上で撹拌しながら、DOTMA溶液をsiRNA溶液にゆっくりと添加した。沈殿物が速やかに形成される。この混合物を室温で20分間、続いて4℃で30分〜数時間インキュベートした。この混合物を30,000gで30分間遠心分離した。上澄みを除去し、固体を真空下で乾燥させた。
【0127】
実施例37:カチオン性脂質DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)の水性溶液および核酸/DOTMA塩の製造
清浄で乾燥した透明なホウケイ酸ガラスバイアル中で、2mgのDOTMAを0.1mLのクロロホルムに溶解させ、バイアルに窒素ガスを送入してクロロホルムを蒸発させ、真空槽に入れて真空中(in vacuo)で乾燥させることによって、残留した微量のクロロホルムを全て除去した。バイアルを真空槽から取り出し、1mLの滅菌水を添加した。このバイアルをTEFLON(登録商標)ライナー付きキャップで密閉し、シーリングテープでしっかりと巻いた。このバイアルをボルテックスまたは/および超音波処理して澄明にした。
【0128】
1mgのsiRNAを含有する水性溶液をDOTMAの水性溶液に添加した。このDOTMAカチオン性脂質の水性溶液へのsiRNAの添加により、速やかに凝集が起こり、DOTMAとsiRNAとから構成される水不溶性のカチオン性脂質/核酸塩を形成した。
【0129】
管内の水不溶性のカチオン性脂質/核酸塩を氷上で少なくとも10分間冷却した。次いで管内のこの水不溶性のカチオン性脂質/核酸塩をエッペンドルフ微量遠心機で最大速度にて15分間遠心分離し、ペレットを形成した。水層を慎重に除去し、塩ペレットを真空槽に入れて真空中(in vacuo)で乾燥させ、さらに水分を除去した。
【0130】
実施例38:カチオン性脂質DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)の水性溶液および核酸/DOTMA塩の製造
実施例35の方法を実施したが、siRNAのDOTMAへの添加後、得られた混合物を氷上で冷却せずに、そのまま遠心分離した。
【0131】
実施例39:カチオン性脂質DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)の水性溶液および核酸/DOTMA塩の製造
実施例36の方法を実施したが、DOTMAの水性溶液をsiRNA溶液に添加した。
【0132】
実施例40:カチオン性脂質1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)のエタノール溶液および核酸/DLinDMA塩の製造
実施例35の方法を実施したが、カチオン性脂質としてDLinDMAを使用した。
【0133】
実施例41:カチオン性脂質N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」)のエタノール溶液および核酸/DOTAP塩の製造
実施例35の方法を実施したが、カチオン性脂質としてDOTAPを使用し、この脂質をエタノールに可溶化した。
【0134】
実施例42:カチオン性脂質DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)の水性溶液および核酸/DOTMA塩の製造
実施例35の方法を実施したが、siRNAの代わりに細菌プラスミドを使用した。
【0135】
実施例43:カチオン性脂質DOTMA(N−[1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド)のエタノール溶液および核酸/DOTMA塩の製造
実施例40の方法を実施したが、DOTMAを水ではなくエタノールに可溶化した。
【0136】
実施例44:核酸とカチオン性脂質との混合後の液体からの核酸/カチオン性脂質塩の単離
実施例1〜4および35〜41のとおり核酸とカチオン性脂質とを混合したあと、混合物を氷上で少なくとも10分間冷却してから遠心分離した。
【0137】
実施例45:核酸とカチオン性脂質との混合後の液体からの核酸/カチオン性脂質塩の単離
核酸およびカチオン性脂質塩を実施例42と同様に製造するが、混合物を遠心分離せずに乾燥させた。
【0138】
実施例46:核酸とカチオン性脂質との混合後の液体からの核酸/カチオン性脂質塩の単離
核酸およびカチオン性脂質塩を実施例43と同様に製造するが、混合物を濾過して沈殿した塩を回収した。
【0139】
実施例47:核酸とカチオン性脂質との混合後の液体からの核酸/カチオン性脂質塩の単離
核酸およびカチオン性脂質塩を実施例42と同様に製造するが、混合物を遠心分離前に冷却しなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カチオン性脂質とポリヌクレオチドとの固体混合物からなる組成物であって、前記固体混合物が、前記カチオン性脂質とポリヌクレオチドとが水を含有する溶媒中で混合されたときに即座に沈殿し、このとき前記カチオン性脂質は前記ポリヌクレオチドと水不溶性のイオン性複合体を形成し、前記複合体が乾燥無水固体として単離される、組成物。
【請求項2】
カチオン性脂質の前記ポリヌクレオチドのヌクレオチドモノマーに対するモル比が0.1〜10である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カチオン性脂質の前記ポリヌクレオチドのヌクレオチドモノマーに対するモル比が0.5〜2である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記カチオン性脂質が、N,N−ジオレイル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリド(DODAC);N−(1−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA);N,N−ジメチル−(2,3−ジオレイルオキシ)プロピルアミン(「DODMA」);N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムブロミド(「DDAB」);N−(1−(2,3−ジオレオイルオキシ)プロピル)−N,N,N−トリメチルアンモニウムクロリド(「DOTAP」);3−(N−(N′,N′−ジメチルアミノエタン)−カルバモイル)コレステロール(DC−Chol);N−(1,2−ジミリスチルオキシプロパ−3−イル)−N,N−ジメチル−N−ヒドロキシエチルアンモニウムブロミド(「DMRIE」);1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA);および1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、ジオクタデシルジメチルアンモニウム(DODMA)、ジステアリルジメチルアンモニウム(DSDMA)、1,2−ジリノレイルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLinDMA)、1,2−ジリノレニルオキシ−N,N−ジメチルアミノプロパン(DLenDMA)、N4−スペルミンコレステリルカルバメート(GL−67)、N4−スペルミジンコレストリルカルバメート(GL−53)、1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート(GL−89)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記脂質が、DOTAP、DODAP、DLinDMA、DC−Chol、およびDOTMAからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記核酸が、DNA、RNA、アンチセンス、アプタマー、アンタガマー(antagamer)、プラスミド、プラスミド干渉核酸(iNA)、リボザイム、低分子干渉核酸(siRNA)、マイクロRNA(miRNA)、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記カチオン性脂質と前記ポリヌクレオチドとの電荷比が1:1である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記混合物が、水を含有する溶媒中で前記カチオン性脂質と前記ポリヌクレオチドとを混合し、水不溶性沈殿物を生成し、前記沈殿物を単離し、前記沈殿物を乾燥させて無水固体を形成する方法よって作製される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記混合物は、無水の有機溶媒もしくは極性非プロトン性溶媒に可溶化することができる、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
無水の有機溶媒もしくは非プロトン性溶媒に溶解された請求項1に記載の組成物を含む溶液。
【請求項11】
カルバメートをさらに含む、請求項10に記載の溶液。
【請求項12】
前記カルバメートが、N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート、N4−スペルミンコレステリルカルバメート、N4−スペルミジンコレステリルカルバメート、1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート、および2,3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミンカルボキサミド)エチル]−N,N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテートからなる群から選択される、請求項11に記載の溶液。
【請求項13】
中性リン脂質をさらに含む、請求項10に記載の溶液。
【請求項14】
前記リン脂質が、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルイノシトール(PI)、スフィンゴミエリン、およびジホスファチジルグリセロール(PG)からなる群から選択される、請求項13に記載の溶液。
【請求項15】
前記リン脂質が、炭素8〜22個のアルキル鎖から構成される、請求項13に記載の溶液。
【請求項16】
前記アルキル鎖が、18:2、20:4、および22:6アルキル鎖からなる群から選択される、請求項15に記載の溶液。
【請求項17】
ステロールをさらに含む、請求項10に記載の溶液。
【請求項18】
前記ステロールが、コレステロール、ラノステロール、24−イソプロピルコレステロール、ニカステロール、7−デヒドロコレステロール、24−デヒドロコレステロール、ゴルゴステロール、ジノステロール、24S−ヒドロキシコレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、スチグマステロール、カンペステロール、フコステロール、β−シトステロール、フィトスタノール、ステロールエステル、ステリルグリコシド、およびステリルアルキルエーテルからなる群から選択される、請求項17に記載の溶液。
【請求項19】
脂質−PEG化合物をさらに含む、請求項10に記載の溶液。
【請求項20】
前記脂質が、リン脂質、グリセリル脂質、コレステロール、ラノステロール、24−イソプロピルコレステロール、ニカステロール、7−デヒドロコレステロール、24−デヒドロコレステロール、ゴルゴステロール、ジノステロール、24S−ヒドロキシコレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、スチグマステロール、カンペステロール、フコステロール、β−シトステロール、フィトスタノール、ステロールエステル、ステリルグリコシド、およびステリルアルキルエーテルからなる群から選択される、請求項19に記載の溶液。
【請求項21】
前記PEGが、分子量200〜5000kDaを有する、請求項19に記載の溶液。
【請求項22】
コレステロール、コレステロールPEG、PE、およびN6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメートからなる群から選択される1つ以上の脂質をさらに含む、請求項10に記載の溶液。
【請求項23】
ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート4.4部/PE2.7〜4.4部/コレステロールPEG14.4部/コレステロール1.6部(質量/質量)からなる、請求項22に記載の溶液。
【請求項24】
ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート8.8部/PE2.2部/コレステロールPEG14.4部/コレステロール1.6部(質量/質量)からなる、請求項22に記載の溶液。
【請求項25】
ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート6.6部/PE2.2部/コレステロールPEG14.4部/コレステロール1.6部(質量/質量)からなる、請求項22に記載の溶液。
【請求項26】
ポリヌクレオチド1部/N6−テトラキス(3−アミノプロピル)−1,3−プロパンジアミンコレステリルカルバメート4.4部/PE4.4部/コレステロールPEG21.6部/コレステロール4.8部(質量/質量)からなる、請求項22に記載の溶液。
【請求項27】
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、およびC16 PEG750セラミドをさらに含む、請求項22に記載の溶液。
【請求項28】
1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、およびコレステロール−PEGをさらに含む、請求項22に記載の溶液。
【請求項29】
1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、およびDSPE−PEG 2000をさらに含む、請求項22に記載の溶液。
【請求項30】
1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、およびDOPE−PEG 2000をさらに含む、請求項22に記載の溶液。
【請求項31】
1,2−ジリノレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホエタノールアミン、コレステロール、コレステロール−PEG 660、およびDSPE−PEG 2000をさらに含む、請求項22に記載の溶液。
【請求項32】
請求項10から31までのいずれか1項に記載の溶液から前記有機溶媒もしくは非プロトン性溶媒を除去することによって得られる、固体処方物。
【請求項33】
請求項32に記載の処方物を水性溶液に懸濁させることによって得られる、水性処方物。
【請求項34】
前記ポリヌクレオチドを皮膚に送達するのに適した処方物の形の、請求項10から31までのいずれか1項に記載の溶液。
【請求項35】
哺乳動物に核酸を送達するのに適した、請求項33に記載の水性処方物。
【請求項36】
注射に適した、請求項33に記載の水性処方物。
【請求項37】
前記ポリヌクレオチドを肝臓に送達するのに適した、請求項36に記載の水性処方物。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチドを肺に送達するのに適した、請求項36に記載の水性処方物。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチドを腫瘍に送達するのに適した、請求項36に記載の水性処方物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−526858(P2012−526858A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−511923(P2012−511923)
【出願日】平成22年5月16日(2010.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/035049
【国際公開番号】WO2010/135207
【国際公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(511278604)
【氏名又は名称原語表記】Kunyuan Cui
【住所又は居所原語表記】3224 189th Street SE, Bothell, WA 98012−7962, United States of America
【出願人】(511278615)
【氏名又は名称原語表記】Dong Liang
【住所又は居所原語表記】4918 148th Place SE, Everett, WA 98208−8811, United States of America
【出願人】(511278626)
【氏名又は名称原語表記】David Sweedler
【住所又は居所原語表記】516 E. Union Street, #202, Seattle, WA 98122, United States of America
【Fターム(参考)】