治療薬を送達するためのコーティングを施した医療器具
本明細書においては、治療薬を患者の生体組織に送達するための血管内ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具、およびそのような医療器具を製作するための方法が説明される。とりわけ、本明細書では、表面を有する基材、および放出可能な金属酸化物を含むコーティング組成物からなる表面に配置されたコーティングからなる埋め込み型コーティング医療器具について説明される。このコーティングは、ポリマー、またはいかなる放出可能な金属酸化物の一部ではない特定の種類のポリマーを含まない。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、治療薬を患者の生体組織に送達するための血管内ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具、およびそのような医療器具を製作するための方法について説明する。とりわけ、本明細書で説明されるのは、表面を有する基材と、放出可能な金属酸化物を含むコーティング組成物からなる表面に配置されたコーティングとを備える埋め込み型のコーティングを施された医療器具である。このコーティングは、ポリマー、またはいかなる放出可能な金属酸化物の一部ではない特定の種類のポリマーを含まない。
【背景技術】
【0002】
治療薬を局部的に患者の生体組織に送達するための医療器具が使用されてきた。例えば、再狭窄の治療または予防に、抗再狭窄剤などの治療薬を含有するコーティングが施されているステントが使用されてきた。現在、このような医療器具のコーティングは、治療薬単独、または治療薬とポリマーの組合せを含んでいる。これらの種類のコーティングは、両者にいくつかの制限があり得る。
【0003】
ポリマーを伴わない治療薬を含有するコーティングは、一般的に、治療薬を送達するのには役立たないが、それは、このようなコーティングは、治療薬の放出速度をほとんど、またはまったく制御しないためである。特に、治療薬は、一般的に数時間以内にバースト放出(burst release)で送達される。したがって、多くの医療デバイスコーティングは、時間の経過とともに治療薬の持続放出を行うために治療薬とポリマーを含む。
【0004】
コーティング中にポリマーを使用すると、コーティングから出る治療薬の放出速度を制御できるけれども、コーティング中でのこのようなポリマーの使用には、他にもある種の制限が生じ得る。例えば、コーティング中のポリマーは、血液と有害な反応をもたらし、血栓症を引き起こす可能性がある。
【0005】
さらに、ある種のポリマー・コーティング組成物は、実際に医療器具の表面に付着しない。コーティング組成物が表面に留まることを確実にするために、ステント・ストラットなどの、コーティングされる医療器具の領域がコーティング組成物でカプセル封入される。しかしながら、ポリマーは医療器具に付着しないため、コーティング組成物は、医療器具の装填、配備、および埋め込み時に変形と損傷の影響を受けやすい。ポリマー・コーティングが損傷すると、治療薬の放出特性が変わり、治療薬放出速度の望ましくない増大または減少に至る可能性がある。
【0006】
さらに、ポリマーからなる組成物でコーティングされた表面は、他の表面への望ましくない付着を生じる可能性がある。例えば、体腔に送達される前に、バルーン拡張式ステントを未拡張、または「捲縮(crimped)」状態にしなければならない。捲縮工程では、コーティングされたステント・ストラットは、互いに接触するように留置され、場合によっては互いに付着し得る。ステントが拡張されるか、または捲縮状態から展開されたときに、互いに付着していたストラット上のコーティングが損傷したり、破れたり、またはそうでなければ取り外され得る。さらに、ポリマー・コーティングが、ステントの内面に施される場合、これは、ステントを展開するために使用されるバルーンが膨張時にステントの内面に接触したときにバルーンに固着または付着する可能性がある。バルーンに対するこのような付着があると、医療器具の適切な配備に支障を来すことがある。
【0007】
バルーン拡張式ステントと同様に、自己展開式ステント上のポリマー・コーティングも、ステントの送達に干渉する可能性がある。自己展開式ステントは、通常、引き戻しシース・システムを使用して送達される。このシステムが作動しステントを送達する段になると、シースは、引き戻され、ステントを露出させ、ステントの自己展開を許す。シースが引き戻されるときに、シースはステントの外面上を摺動する。ステントの外側表面または管腔外面上に配置されているポリマー・コーティングは、シースが引き戻されるときにシースに付着し、ステントの送達を邪魔する可能性がある。
【0008】
そこで、ポリマーをほとんどまたはまったく含まない、またポリマーを含む医療器具用の現在のコーティングの不利点を回避しつつ制御放出法で有効量の治療薬を放出することができる医療器具および医療器具用のコーティングが必要である。それに加えて、そのような医療器具を製作し、医療器具用のコーティングを調製する方法も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができるコーティングを施した医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらおよび他の目的は、本明細書で説明されている実施形態によって対処される。いくつかの実施形態では、治療薬を制御放出法で放出することができる医療器具用のコーティング、およびそのような医療器具を作成するための方法が提供される。
【0011】
例えば、1実施形態では、ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具は、1つの表面を有する基材からなる。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置され、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まないか、または場合によっては、どのようなポリマーをも含まない。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物からなる。第1のコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物を含み、いくつかの場合において、第1の治療薬からなる。いくつかの実施形態では、コーティングは、表面上に配置される第2のコーティング組成物をさらに含む。第2のコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物からなり、表面と第1のコーティング組成物との間に配置される。第2のコーティング組成物は、治療薬を含むことができるが含む必要はない。
【0012】
他の実施形態では、ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具は、1つの表面を有する基材からなる。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置され、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まないか、または場合によっては、どのようなポリマーをも含まない。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物からなる。第1のコーティング組成物は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる。いくつかの場合において、第1の治療薬は、放出不可能な金属酸化物の複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。放出可能な金属酸化物を含む、またいくつかの場合には、治療薬を含む第2のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物の少なくとも一部に配置される。いくつかの場合において、放出不可能な金属酸化物の微細孔は、コーティング組成物が第1のコーティング組成物上に配置される前には、治療薬を含んでいない。
【0013】
さらに他の実施形態では、ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具は、1つの表面を有する基材からなる。基材は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる。いくつかの場合において、第1の治療薬は、放出不可能な金属酸化物の複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置され、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まないか、または場合によっては、どのようなポリマーをも含まない。コーティングは、放出可能な金属酸化物を含み、いくつかの場合において、治療薬を含むコーティング組成物からなる。いくつかの実施形態において、放出不可能な金属酸化物の微細孔は、第2のコーティング組成物が表面上に配置される前には、いかなる治療薬をも含んでいない。
(定義)
本明細書で使用されているように、「合成ポリマー」は、人造である、つまり天然ものでない、ポリマーを指す。
【0014】
本明細書で使用されているように、「(任意の)ポリマーまたは(任意の)合成ポリマーを含まない」コーティングとは、コーティングを形成するために使用される材料にポリマーまたは合成ポリマーが、目的を持って、または意図的に加えられなかったことを意味する。
【0015】
本明細書で使用されているように、「金属酸化物」は、酸素が1つまたは複数の金属と結合している化合物を指す。
本明細書で使用されているように、「放出可能な金属酸化物」は、医療器具が患者体内に埋め込まれたときに、医療器具、例えば医療器具のコーティング、から放出され得る金属酸化物を指す。金属酸化物は、分解または解離して、酸化物小粒子および/または酸化物の表面に結合されている放出分子になることができる。例えば、金属酸化物コーティングおよび/または金属酸化物に結合されている分子は、金属酸化物および/または金属酸化物コーティングに結合されている分子を分解するか、解離するか、または他の何らかの形で金属酸化物および/または金属酸化物コーティングに結合されている分子の放出を促進する体液または組織に曝すことによって放出され得る。
【0016】
本明細書で使用されているように、「放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマー」は、放出可能な金属酸化物に直接的または間接的に化学結合されていないポリマーを指す。
【0017】
本明細書で使用されているように、「放出不可能な金属酸化物」は、医療器具が患者体内に埋め込まれたときに、医療器具、例えば医療器具のコーティング、から放出され得ない金属酸化物を指す。
【0018】
本明細書で使用されているように、「有機基」は、有機化合物部分を指す。
本明細書で使用されているように、「金属酸化物と有機基の付加体」は、例えば水素結合によって少なくとも1つの有機基に結合されている少なくとも1つの金属酸化物からなる化合物を指す。
【0019】
本明細書で使用されているように、「微細孔」は、複数の開口部または孔隙を指す。
本明細書で使用されているように、「(1つの)治療薬を含まない」または「任意の治療薬を含まない」は、目的を持って、または意図的に含まれる治療薬がなかったことを意味する。
【0020】
本明細書で使用されているように、「約」は、「近似的に」という言い回しと同義であり、言及した値より少し大きいか、または小さいことを指す。
本明細書で使用されているように、「制御放出」、「持続放出」、「変調放出」、および「調節放出」という用語は、入れ換えて使用することができ、また即時もしくはバースト放出特性でない治療薬の放出特性を記述するために使用される。
【0021】
いくつかの実施形態は、以下の図面を参照しつつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】基材と放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図1B】基材と放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図2A】基材と基材の表面上に配置されるコーティングを有し、コーティングは放出可能な金属酸化物を含む第1のコーティング組成物および放出不可能な金属酸化物を含む第2のコーティングからなる、医療器具の実施例を示す断面図。
【図2B】基材と基材の表面上に配置されるコーティングを有し、コーティングは放出可能な金属酸化物を含む第1のコーティング組成物および放出不可能な金属酸化物を含む第2のコーティングからなる、医療器具の実施例を示す断面図。
【図3A】基材と基材の表面上に配置される放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図3B】基材と基材の表面上に配置される放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図4A】コーティングされた医療器具の他の2つの実施形態を示す断面図。
【図4B】コーティングされた医療器具の他の2つの実施形態を示す断面図。
【図5】血管内ステントの1実施形態を示す周辺図。
【図6A】実施例1によって調製されたさまざまなコーティングが施された試料に対する治療薬放出特性を示す図。
【図6B】実施例1によって調製されたさまざまなコーティングが施された試料に対する治療薬放出特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1実施形態では、医療器具は、表面を有する基材、および表面の少なくとも一部に配置されているコーティングを有する。コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まず、またはいくつかの場合においては、どのようなポリマーをも含まない。図1Aは、このような実施形態の1実施例の断面図を示している。この実施例では、ステントとすることができる、医療器具の基材10は、コーティング20が施された表面15を有する。コーティング20は、表面15の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物70を含む。第1のコーティング組成物70は、第1の放出可能な金属酸化物80および治療薬65を含む。いくつかの実施形態では、第1の放出可能な金属酸化物80および治療薬65は、第1のコーティング組成物70全体にわたって分配される。他の実施形態では、第1の放出可能な金属酸化物80および治療薬65は、コーティング組成物の離散的部分に配置され得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。例えば、放出可能な金属酸化物は、治療薬を含み得る金属酸化物と有機基の付加体とすることができ、例えば、治療薬は、この付加体の一部に水素結合されることによって付加体の一部となる。医療器具が患者体内に埋め込まれると、第1の放出可能な金属酸化物80が、治療薬65とともに医療器具から放出される。本明細書に示されている、いくつかの図では、治療薬は、黒い点で表現されているが、そのような表現は、治療薬が特定の形態でのみ存在することを要求しているものと解釈すべきではない。
【0024】
図1Bは、図1Aに示されているのと類似の1実施形態を示している。第1のコーティング組成物70に加えて、コーティング20は、第2の放出可能な金属酸化物19からなる第2のコーティング組成物17を含む。第2のコーティング組成物17は、第1のコーティング組成物70と基材表面15との間に配置される。第1の放出可能な金属酸化物80および第2の放出可能な金属酸化物19は、同じであっても異なっていてもよい。また、第2のコーティング組成物17は、さらに、第1のコーティング組成物70の治療薬65と同じであるか、または異なっていてもよい、治療薬も含み得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0025】
図2Aは、他の実施形態の1実施例を示している。この図では、ステントとすることができる、医療器具の基材10は、コーティング20が施された表面15を有する。このコーティング20は、表面15の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物30を含む。第1のコーティング組成物30は、複数の微細孔50を中に有する放出不可能な金属酸化物40を含む。第1の治療薬60は、放出不可能な金属酸化物40の複数の微細孔50のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置される。第2のコーティング組成物70は、第1のコーティング組成物30の少なくとも一部に配置される。第2のコーティング組成物70は、放出可能な金属酸化物80を含む。この実施形態では、放出可能な金属酸化物は、医療器具が埋め込まれたときに放出される。
【0026】
図2Bは、図2Aに示されているものと類似しているコーティング医療器具の1実施例の断面図を示している。しかしながら、図2Bに示されている実施例では、第2のコーティング組成物70は、第2の治療薬65を含む。第1の治療薬60および第2の治療薬65は、同じであっても、または異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0027】
他の実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、表面を有する基材を備える。基材は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる。コーティングは、基材の表面の少なくとも一部の上に配置される。コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、いかなる合成ポリマーをも含まず、またはいくつかの場合においては、どのようなポリマーをも含まない。図3Aは、このような実施形態の1実施例を示している。この図では、ステントとすることができる、医療器具の基材110は、コーティング120でコーティングされた表面115を有する。基材110は、複数の微細孔150を中に有する放出不可能な金属酸化物140を含む。第1の治療薬160は、放出不可能な金属酸化物140の複数の微細孔150のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置される。第1のコーティング組成物170からなるコーティング120は、表面115の少なくとも一部に配置される。第1のコーティング組成物170は、放出可能な金属酸化物180を含む。放出可能な金属酸化物は、患者体内に埋め込まれたときに医療器具から放出される。
【0028】
図3Bは、図3Aに示されているものと類似しているコーティング医療器具の1実施例の断面図を示している。しかしながら、図3Bに示されている実施例では、第1のコーティング組成物170は、第2の治療薬165を含む。第1の治療薬160および第2の治療薬165は、同じであっても、または異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、第1のコーティング組成物の放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0029】
図4Aは、図2Bに示されているものと類似しているコーティング医療器具の他の実施形態の断面図を示している。この実施形態では、治療薬は、放出可能な金属酸化物および治療薬からなる第2のコーティング組成物が第1のコーティング組成物上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置されることはない。特に、図4Aに示されているように、ステントとすることができる、医療器具の基材210は、コーティング220が施された表面215を有する。このコーティング220は、表面215の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物230を含む。第1のコーティング組成物230は、複数の微細孔250を中に有する放出不可能な金属酸化物240を含む。第2のコーティング270は、第1のコーティング組成物230の少なくとも一部に配置される。第2のコーティング組成物270は、放出可能な金属酸化物280および第1の治療薬260からなる。この実施形態では、治療薬は、第2のコーティング組成物270が第1のコーティング組成物230上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物240の微細孔250内に配置されることはない。いくつかの場合において、第2のコーティング組成物270の治療薬260の一部は、微細孔250内に配置され得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、第2のコーティング組成物の放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0030】
図4Bは、図3Bに示されているものと類似しているコーティング医療器具の他の実施形態の断面図を示している。この実施形態では、治療薬は、放出可能な金属酸化物および治療薬からなるコーティング組成物が放出不可能な金属酸化物を含む医療器具の表面上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置されることはない。特に、図4Bに示されているように、ステントとすることができる、医療器具の基材210は、コーティング220が配置される表面215を有する。基材210は、複数の微細孔250を中に有する放出不可能な金属酸化物240を含む。コーティング220は、放出可能な金属酸化物280および第1の治療薬260からなるコーティング組成物270を含む。この実施形態では、治療薬は、コーティング組成物270が表面215上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物240の微細孔250内に配置されることはない。いくつかの場合において、コーティング組成物270の治療薬260の一部は、微細孔250内に配置され得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、コーティング組成物の放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0031】
上述の実施形態のコーティングは、1つまたは2つのコーティング組成物を含むように示されているが、これらのコーティングは、2つよりも多いコーティング組成物を含むことができることに留意されたい。
【0032】
放出不可能な金属酸化物および放出可能な金属酸化物中の微細孔は、さまざまなサイズをとり得る。例えば、複数の微細孔のうちの少なくとも一部は、約1nmから約100μmまで、約1000nmから約1000μmまで、10nmから約10μmまで、約100nmから約10μmまで、約10nmから約1μmまで、または約100nmから約1μmまでの範囲内の直径または幅を持つことが可能である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物中の微細孔の直径または幅は、約1nm、約10nm、約100nm、約1μm、約10μm、約100μmである。いくつかの実施形態では、コーティング組成物の微細孔の直径または幅は、1nm未満、10nm未満、100nm未満、1μm未満、10μm未満、100μm未満である。
【0033】
上述の図に示されているように、第1および第2のコーティング組成物は、一般的に、複数の層の形態をとる。他の実施形態では、これらの組成物は層の形態をとる必要はない。コーティング組成物が層の形態をとる場合、これらの層の厚さは、約1nmから約1000μmまで、約10nmから約100μmまで、約1nmから約10μmまで、または約1μmから約100μmまでの範囲内とすることができる。
【0034】
本明細書で説明されている医療器具については、以下の「医療器具」の節でさらに詳しく説明される。本明細書で説明されている医療器具を準備する方法については、以下の「コーティングを形成する方法」で説明されている。開示をわかりやすくするため、また制限することなく、詳細な説明を以下の複数の節に分割する。
(医療器具)
(医療器具の調整)
本明細書で説明されている医療器具は、患者の体内に埋め込むことができるか、または挿入することができる。好適な医療器具としては、限定はしないが、ステント、外科用ステープル、バルーン・カテーテル、中心静脈カテーテル、および動脈カテーテルなどのカテーテル、ガイドワイヤ、カニューレ、心臓ペースメーカー・リードもしくはリード先端、細動除去器リードもしくはリード先端、埋め込み可能血管アクセス・ポート、血液貯蔵バッグ、血液用チューブ、血管もしくは他のグラフト、大動脈下バルーン・ポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、完全人工心臓および心室補助ポンプ、骨インプラント、ならびに血液酸素付加装置、血液フィルター、中隔欠損機器、血液透析ユニット、血液かん流ユニット、および血漿交換ユニットなどの体外機器が挙げられる。
【0035】
好適な医療器具としては、限定はしないが、チューブ状またはシリンダー状部分を有するものが挙げられる。例えば、医療器具のチューブ状部分は、完全なシリンダー状である必要はない。チューブ状部分の断面は、円形だけでなく、矩形、三角形など、任意の形状としてよい。このような器具としては、限定はしないが、ステント、バルーン・カテーテル、およびグラフトが挙げられる。分岐ステントも、本明細書で説明されている方法によって製作できる医療器具の間に入れられる。
【0036】
それに加えて、医療器具のチューブ状部分は、複数の開口部を定める複数のストラットを備えることができる側壁とすることが可能である。側壁は、内腔を定める。ストラットは、任意の好適な構成で配列され得る。また、ストラットは、すべて同じ形状または幾何学的構造を持つ必要があるわけではない。医療器具が、複数のストラットを備えるステントである場合、これらのストラット上に表面が配置される。それぞれの個別ストラットは、患者の生体組織に曝されるように適合された外面、内面、および外面と内面との間の少なくとも1つの側面を有する。
【0037】
特に好適な医療器具は、当業者に知られている医療目的に合う任意の種類のステントを含む。好ましくは、ステントは、患者の血管内に永久的に埋め込むように設計されている血管内ステントである。いくつかの実施形態では、ステントは、冠状動脈ステントなどの、開格子側壁ステント構造を含む。他の好適なステントとしては、例えば、自己拡張式ステントおよびバルーン拡張式ステントなどの血管ステントが挙げられる。使用可能な自己拡張式ステントの例は、ウォルステン(Wallsten)に発行された米国特許第4,655,771号および第4,954,126号、ならびにウォルステンら(Wallsten et al.)に発行された米国特許第5,061,275号に示されている。適切なバルーン拡張式ステントの例は、ピンチャシクら(Pinchasik et al.)に発行された米国特許第5,449,373号に示されている。
【0038】
図5は、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している医療器具の1実施例を示している。この図は、埋め込み可能血管内ステント310の周辺図である。図5に示されているように、血管内ステント310は、一般的なシリンダー形状である。ステント310は、側壁320内に複数のストラット330および少なくとも1つの開口部340を備える側壁320を具備する。一般的に、開口部340は、隣接するストラット330の間に配置される。また、側壁320は、第1の側壁表面322および図5には示されていない対向する第2の側壁表面を有することができる。第1の側壁表面322は、ステントが埋め込まれるときに体腔壁に面する外側もしくは管腔外側壁表面、または体腔表面から外方に向く内側または管腔内側壁表面とすることができる。同様に、第2の側壁表面は、管腔外側壁表面であるか、または管腔内側壁表面であるものとしてよい。
【0039】
本明細書で説明されているコーティングが、ステント側壁構造内に開口部を有するステントに施された場合、いくつかの実施形態では、側壁ステント構造内の開口部が温存されるように、例えば、開口部全体または一部がコーティング材料で閉塞されることのないように、コーティングがステントの表面に適合することが好ましい。
【0040】
好適なステントのフレームワークは、当技術分野で知られているようなさまざまな方法を通じて形成され得る。フレームワークは、溶接されるか、成形されるか、レーザー切断されるか、電気鋳造されるか、または連続構造を形成するように巻かれるか、または編んでまとめられた長繊維または繊維からなるものとすることができる。
【0041】
医療器具(例えば、ステント)の好適な基材は、金属材料、セラミック材料、またはポリマー材料またはこれらの組合せから作製できる(以下の節「デバイス形成用の金属材料」、「デバイス形成用のセラミック材料」、「デバイス形成用のポリマー材料」を参照のこと)。好ましくは、これらの材料は生体適合性のある材料である。材料は、多孔性または無孔性とすることができ、また多孔性構造要素は、微細孔性またはナノ細孔性とすることができる。
(デバイス形成用の金属材料)
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、金属製の基材を備える。基材を製作するために使用される好適な金属材料として、限定はしないが、チタンをベースとする金属および合金(ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料など)、ステンレス鋼、金、白金、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム、クロム、タンタル、ニッケルクロム、またはElgiloy(登録商標)およびPhynox(登録商標)などのコバルトクロムニッケル合金を含むいくつかのコバルト合金、またはこれらの組合せが挙げられる。医療器具を製作するために使用され得る他の金属材料は、国際公開第94/16646号に開示されているようなクラッド長繊維複合材料を含む。
【0042】
好ましくは、金属または金属酸化物領域は、放射線不透性物質を含む。医療器具がX線または蛍光透視の下で見えるように、放射線不透性物質を含めることが望ましい場合がある。放射線不透性である好適な材料としては、限定はしないが、金、タンタル、白金、ビスマス、イリジウム、ジルコニウム、ヨウ素、チタン、バリウム、銀、スズ、これらの金属の合金、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0043】
さらに、本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、基材を形成するために単一の種類の金属を使用することによって実施できるけれども、金属のさまざまな組合せを使用することも可能である。金属の適切な混合を調整することで、基材に組み込んだときに望ましい効果が発揮されるようにできる。
(デバイス形成用のセラミック材料)
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、セラミック製の基材を備える。基材を製作するために使用される好適なセラミック材料としては、限定はしないが、酸化チタン、酸化白金、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、またはこれらの組合せなどの遷移元素の酸化物、炭化物、または窒化物が挙げられる。シリカなどのシリコンベースの材料も使用できる。
【0044】
さらに、本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、基材を形成するために単一の種類のセラミックを使用することによって実施できるけれども、セラミックのさまざまな組合せを使用することも可能である。セラミックの適切な混合を調整することで、基材に組み込んだときに望ましい効果が発揮されるようにできる。
(デバイス形成用のポリマー材料)
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、ポリマーを使用した基材を備える。他の実施形態では、材料はポリマーでない材料とすることもできる。医療器具のコンポーネントを形成するために有用な(複数の)ポリマーは、生体適合性を有し、生体組織に対する炎症を避けるものでなければならない。ポリマーは、生体適合性、または生体吸収性を有するものとしてよい。基材を製作するために有用な好適なポリマー材料としては、限定はしないが、イソブチレンベースのポリマー、スチレンイソブチレンスチレン共重合体などのポリスチレンベースのポリマー、ポリシアノアクリレート、エチレングリコール1ジメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)などのポリアクリレートおよびポリアクリレート誘導体、エチレン酢酸ビニルなどのビニル酢酸ベースのポリマーおよび共重合体、ポリウレタンおよびその共重合体、シリコーンおよびその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアミド、ダクロンポリエステルおよびポリ(オルトエステル)などのポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミノカーボネートなどのポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリドラクチド)共重合体、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(ジメチルシロキサン)などのポリシロキサン、ナイロン、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(HEMA)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリジオキサノン、ポリ(γ−エチルグルタミン酸塩)、ポリアンハイドライド、ポリエーテルオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、コラーゲン、キチン、Teflon、アルギン酸塩、デキストラン、綿、およびこれらの組合せおよび誘導体化した化合物が挙げられる(つまり、例えば付着部位または架橋基、例えばアルギニングリシンアスパラギン酸RGDを含むように修飾されたポリマーであるが、これらのポリマーは、タンパク質および/または核酸などの、細胞および分子の付着を可能にしつつ構造的完全性を保持する)。
【0045】
ポリマーは、その機械的強度を高めるために乾燥させることができる。次いで、ポリマーを原料物質として使用し、基材の全部または一部を形成することができる。さらに、いくつかの実施形態は、基材を形成するために単一の種類のポリマーを使用することによって実施できるけれども、ポリマーのさまざまな組合せを使用することも可能である。ポリマーの適切な混合を調整することで、基材に組み込んだときに望ましい効果が発揮されるようにできる。
(治療薬)
本明細書で使用されているような「治療薬」という用語は、薬物、遺伝物質、および生物由来物質を包含するものであり、「生物学的活性物質」と入れ換えて使用することができる。「遺伝物質」という用語は、限定はしないが、ウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターを含む、人体に挿入されることが意図されている、後述の有用なタンパク質をエンコードするDNA/RNAを含む、DNAまたはRNAを意味する。
【0046】
「生物由来物質」という用語は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカイン、およびホルモンを包含する。ペプチドおよびタンパク質の例としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来成長因子(BDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン増殖因子(CGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子−1(HIF−1)、幹細胞由来因子(SDF)、幹細胞因子(SCF)、内皮細胞増殖用添加物(ECGS)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、増殖分化因子(GDF)、インテグリン修飾因子(IMF)、カルモジュリン(CaM)、チミジンキナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16、など)、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)、マトリクス・メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15など)、リンホカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(すべての種類)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞接着ドメイン(例えば、RGD)、およびテネイシンが挙げられる。現在好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7である。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはこれらの組合せとして、単独で、または他の分子と併せて形成され得る。細胞は、ヒト由来のもの(自系または同種異系)であるか、または必要ならば注目するタンパク質を移植部位に送達するために遺伝子操作された動物由来(異種)とすることができる。送達媒体は、細胞機能および生存能力を維持するために必要に応じて配合され得る。細胞には、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、線維芽細胞、マクロファージ、および衛星細胞がある。
【0047】
他の好適な治療薬としては以下のものがある。
・ ヘパリン、ヘパリン誘導体類、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓症薬、
・ エノキサプリン、アンジオペプチン、または平滑筋細胞増殖を阻害できるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、シロリムス、ゾタロリムス、アムロジピン、およびドキサゾシンなどの抗増殖剤、
・ グルココルチコイド、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸、およびメサラミンなどの抗炎症薬、
・ パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシンおよびムタマイシン、エンドスタチン、アンギオスタチンおよびチミジンキナーゼ阻害薬、クラドリビン、タクソールおよびそのアナログもしくは誘導体、パクリタキセル、さらにはその誘導体、類似体、またはタンパク質に結合されたパクリタキセル、例えば、Abraxane(商標)などの、抗悪性腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬、
・ リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインなどの麻酔薬、
・ D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンは鎮痛薬、解熱剤、および抗炎症薬にも分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、トラピジルまたはリプロスチンなどの抗血小板薬、およびマダニ抗血小板ペプチドなどの抗凝血薬、
・ 細胞増殖を阻害し、ある種の癌細胞にアポトーシスを誘発するRNAまたはDNA代謝産物としても分類される5−アザシチジンなどのDNA脱メチル化薬、
・ 増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、すべての種類がVEGF−2を含む)、成長因子受容体、転写活性化因子、および翻訳促進因子などの血管細胞増殖促進剤、
・ 抗増殖剤、増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒素からなる二官能性分子などの血管細胞増殖阻害剤、
・ コレステロール降下薬、血管拡張剤、および内因性血管作動機構に干渉する薬剤、
・ プロブコールなどの抗酸化薬、
・ ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラナイシン(tobranycin)、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)などの抗生物質製剤、
・ 酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、および17−ベータエストラジオールを含むエストロゲンなどの血管新生物質、
・ ジゴキシン、ベータブロッカー、カプトプリルおよびエナロプリルを含むアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、スタチン、および関連化合物などの心不全治療薬、
・ シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスなどのマクロライド、
・ 塩化アラゲブリウム(ALT−711)を含むAGE分解剤。
【0048】
他の治療薬としては、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオール、および配糖体が挙げられる。好ましい治療薬としては、ステロイド、ビタミン、および再狭窄抑制薬などの抗増殖薬が挙げられる。好ましい再狭窄抑制薬としては、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(つまり、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、またはパクリタキセル誘導体、およびこれらの混合物)などの微小管安定化薬が挙げられる。例えば、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している誘導体としては、2’−スクシニル−タクソール、2’−スクシニル−タクソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タクソール、2’−グルタリル−タクソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、およびN−(ジメチルアミノエチル)グルダミド塩酸塩との2’−O−エステルが挙げられる。
【0049】
他の好ましい治療薬としては、タクロリムス、ハロフギノン、ゲルダナマイシンなどのHSP90熱ショックタンパク質の阻害薬、エポチロンDなどの微小管安定化薬、クリスタゾール(cliostazole)などのホスホジエステラーゼ阻害薬、Barkct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、およびSerca2遺伝子/タンパク質が挙げられる。さらに他の好ましい実施形態では、治療薬は、エリスロマイシン、アンフォテリシン、ラパマイシン、アドリアマイシンなどの抗生物質である。
【0050】
好ましい実施形態では、治療薬として、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)、デキサメタゾン、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、ヘパリン、アスピリン、ワルファリン、チクロピジン、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、プリオキシカム(prioxicam)、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロジン、セルコキシブ(celcoxib)、塩化アラゲブリウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0051】
治療薬は、当業者によく知られている方法によって合成することができる。代替として、化学薬品および製薬会社から治療薬を購入することもできる。
(放出不可能な金属酸化物と放出可能な金属酸化物)
放出不可能な金属酸化物および放出可能な金属酸化物のうち好適な金属酸化物として、限定はしないが、金属である、チタン、スカンジウム、鉄、タンタル、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、白金、イリジウム、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、ロジウム、ルテニウム、金、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、テクネチウム、パラジウム、カドミウム、ハフニウム、レニウム、およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む金属酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい金属として、限定はしないが、金、タンタル、白金、チタン、イリジウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0052】
好適な金属酸化物の例としては、限定はしないが、酸化白金、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、アルミナ、ジルコニア、石英系ガラスおよび二酸化ケイ素などのシリコーン酸化物、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0053】
これらの金属酸化物は、スズ/四価スズ酸化物、スズ/二価スズ酸化物、スズ/酸化インジウム、スズ/酸化アンチモン、スズ/酸化亜鉛、スズ/酸化チタン、スズ/酸化バナジウム、スズ/酸化クロム、スズ/酸化マンガン、スズ/酸化鉄、スズ/酸化コバルト、スズ/酸化ニッケル、スズ/酸化ジルコニウム、スズ/酸化モリブデン、スズ/酸化パラジウム、スズ/酸化イリジウム、スズ/酸化マグネシウム、チタン/四価チタン酸化物、チタン/二価チタン酸化物、チタン/酸化インジウム、チタン/酸化アンチモン、チタン/酸化亜鉛、チタン/酸化スズ、チタン/酸化バナジウム、チタン/酸化クロム、チタン/酸化マンガン、チタン/酸化鉄、チタン/酸化コバルト、チタン/酸化ニッケル、チタン/酸化ジルコニウム、チタン/酸化モリブデン、チタン/酸化パラジウム、チタン/酸化イリジウム、またはチタン/酸化マグネシウムなどのうちのどれかの混合金属酸化物とすることもできる。
【0054】
いくつかの実施形態では、放出可能な金属酸化物は、少なくとも1つの金属酸化物と有機基との付加体である。すべての目的に関してその全体を本願明細書に援用する国際公開第2005/049520号では、このような化合物を含む放出可能な金属酸化物の例を説明している。いくつかの実施態様では、付加体は、複数の種類の有機基を含むことが可能である。有機基は、金属に、または付加体の他の有機基に結合できる。例えば、付加体は、金属酸化物、第1の有機基、および第1の有機基または金属酸化物に結合された第2の有機基を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の有機基は、治療薬である。このような治療薬は、例えば、水素結合によって付加体に結合され得る。有機基は、例えば、フルオロ酢酸塩などの酢酸塩、リン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリマー、治療薬、または付加体に結合できる任意の化学部分であってもよい。
(コーティングを作製する方法)
本明細書では、上述の医療器具を製作する方法が提示されている。1実施形態では、埋め込み型コーティング・ステントを製作する方法は、表面を有する基材を有する埋め込み可能なステントを形成することからなる。いかなる放出可能な金属酸化物の一部でもない、いかなる合成ポリマーをも含まない、またはどのようなポリマーをも含まないコーティングが、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に施すことによって表面の少なくとも一部に形成される。第1のコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物からなる。いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物は、治療薬を含む。また、この方法は、第1のコーティング組成物が施される前に第2の放出可能な金属酸化物からなる第2のコーティング組成物を表面上に施すことをさらに含むものとしてよい。したがって、第2のコーティング組成物は、表面と第1のコーティング組成物との間に配置される。第2のコーティング組成物は、治療薬を含むか、またはいかなる治療薬をも含まないものとすることができる。
【0055】
例えば、本明細書で説明されている方法は、表面を有する基材を含む埋め込み可能なステントを用意し、放出可能な金属酸化物の一部でない合成ポリマーを含まないコーティングを表面の少なくとも一部に形成することによって埋め込み型コーティング・ステントを作製する方法を含む。コーティングは、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に施し、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物の少なくとも一部の上に施すことによって形成される。第1のコーティング組成物は、酸化チタンと酢酸塩の付加体を有する放出可能な金属酸化物を含む。この実施形態では、第1のコーティング組成物は、表面に施されるときに治療薬を含まない。第2のコーティング組成物は、パクリタキセル、および酸化チタンと酢酸塩の付加体を有する放出可能な金属酸化物を含む。
【0056】
他の実施形態では、コーティング医療器具を製作する方法は、表面を有する基材を備える、ステントなどの埋め込み型医療器具を形成することからなる。合成ポリマーを含まないか、または放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まないコーティングが、表面の少なくとも一部に形成される。コーティングは、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に形成することによって形成される。第1のコーティング組成物は、放出不可能な金属酸化物からなる。複数の微細孔が、放出不可能な金属酸化物中に存在する。いくつかの実施形態において、第1の治療薬は、放出不可能な金属酸化物の複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。放出可能な金属酸化物からなる第2のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物の少なくとも一部に施される。この第2のコーティング組成物は、治療薬を含むこともできる。いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物の放出不可能な金属酸化物は、放出可能な金属酸化物からなる組成物を表面に施すことによって形成される。放出可能な金属酸化物は、放出不可能な金属酸化物を形成するために熱源に曝される。
【0057】
他の実施形態では、埋め込み型コーティング医療器具を製作する方法は、表面を有する基材を備える、ステントなどの埋め込み型医療器具を形成することからなる。基材は、放出不可能な金属酸化物を含み、複数の微細孔を備える。いくつかの実施形態において、第1の治療薬は、複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。合成ポリマーを含まないか、または放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まないコーティングが、基材の表面上に形成される。コーティングは、コーティング組成物を表面の少なくとも一部に施すことによって調製され、このコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物を含み、またいくつかの場合においては、治療薬をも含む。
【0058】
例えば、本明細書で説明されている方法は、基材および表面を有する埋め込み可能なステントを形成することと、コーティング組成物を表面の少なくとも一部に施すことによって基材の表面上にコーティングを形成することとを含む埋め込み型コーティング・ステントを製作する方法を含む。基材は、中に複数の微細孔を有する放出不可能な金属酸化物であり、コーティング組成物は、パクリタキセル、ならびに酸化チタンと酢酸塩の付加体を含む放出可能な金属酸化物を含む。それに加えて、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない。
【0059】
さらに他の実施形態では、埋め込み型コーティング・ステントを製作する方法は、表面を有する基材を備える埋め込み可能なステントを形成することと、放出可能な金属酸化物の一部でない合成ポリマーを含まないコーティングを表面の少なくとも一部に形成することと、からなる。コーティングを形成することは、放出可能な金属酸化物の溶液または懸濁液を表面の少なくとも一部に塗布する工程と、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に形成するためにステントを熱源に曝す工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物の少なくとも一部の上に施す工程とを含む。金属酸化物の溶液または懸濁液は、酸化チタンと酢酸塩の付加体を含むことができる。第1のコーティング組成物は、酸化チタンからなる放出不可能な金属酸化物であり、複数の微細孔が、放出不可能な金属酸化物中にある。これに加えて、第2のコーティング組成物は、パクリタキセル、および酸化チタンと酢酸塩の付加体からなる放出可能な金属酸化物を含む。
(多孔質基材の作製)
基材の微細孔は、限定はしないが、焼結、共蒸着、マイクロラフィング、レーザー切断、ドリル穴開け、化学エッチング、またはこれらの組合せを含む、当業者に知られている任意の方法によって形成することができる。例えば、多孔質構造は、蒸着条件に調整を加えたスパッタリングなどの蒸着工程、反応性プラズマを使用したマイクロラフィング、イオン衝撃、電解質エッチング、またはこれらの組合せによって形成され得る。他の方法としては、限定はしないが、合金メッキ、物理的気相蒸着法、化学的気相蒸着法、焼結、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0060】
これに加えて、微細孔は、基材を形成するために使用される放出不可能な金属酸化物からスペーサー基などの二次材料を除去することによって形成できる。特に、基材は、放出不可能な金属酸化物および二次材料を含む組成物から形成される。その後、二次材料が除去される。二次材料を除去する技術は、限定はしないが、脱合金または陽極酸化処理工程、あるいはベーキングまたは加熱による二次材料の除去を含む。二次材料は、放出不可能な金属酸化物から除去できる限りどのような材料であってもよい。例えば、二次材料は、放出不可能な金属酸化物に比べて電気化学的活性がより強いものとすることができる。また、スペーサー基または二次材料は、上述のような放出可能な金属酸化物に結合されている有機基であってもよい。
【0061】
治療薬が微細孔内に配置される実施形態では、治療薬は、限定はしないが、ディッピング、スプレー・コーティング、スピンコーティング、プラズマ蒸着、凝縮、電気化学的方法、静電気を用いた方法、蒸発、プラズマ気相蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、流動床の使用、またはこれらの組合せを含む当業者に知られている方法によって基材の微細孔内に分散され得る。治療薬を基材の微細孔内に分散させるのに適した方法は、好ましくは、治療薬の治療特性を変化させたり、または治療薬の治療特性に悪影響を及ぼしたりしない。治療薬を微細孔内に配置させやすくするために、治療薬を溶媒もしくは担体を含む溶液もしくは懸濁液中に入れるとよい。例えば、治療薬を含む溶液を形成し、医療器具をその溶液中に浸漬し、治療薬を微細孔内に配置することができる。
(コーティング組成物の使用)
コーティング組成物は、好ましくは、所望の成分を含む溶液もしくは懸濁液を施すことによって形成される。例えば、放出可能な金属酸化物を含むコーティング組成物を形成するために、そのような酸化物を溶媒中に溶解もしくは懸濁させることが可能である。好適な溶媒としては、限定はしないが、メタノール、水、アセトン、エタノン、ブタノン、およびTHFが挙げられる。溶液もしくは懸濁液は、治療薬を含むこともできる。
【0062】
これらの溶液もしくは懸濁液は、限定はしないがディッピング、従来のノズルまたは超音波ノズルなどによる噴霧、ラミネート加工、加圧、刷毛塗り、スワッビング、ディッピング、圧延、静電沈着、塗装、電気メッキ、蒸発、プラズマ気相蒸着、エアー・サスペンションなどのバッチ法、パン・コーティングまたは超音波ミスト噴霧、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、静電気を使用した方法、電気メッキ、電気化学的方法、および生体分子を表面に固定化する化学的方法、またはこれらの組合せを含む、当業者に知られている方法によって基材の表面または他のコーティング組成物の少なくとも一部に塗布され得る。好ましくは、コーティング組成物は、噴霧、ディッピング、ラミネート加工、加圧、またはこれらの組合せによって施される。
(複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなるコーティング組成物の調製)
上述のように、コーティング組成物は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなるものとすることができる。放出不可能な金属酸化物中の微細孔は、限定はしないが、基材を形成するために使用される放出不可能な金属酸化物中の微細孔の形成と関連して上で説明されている方法を含む当業者に知られている任意の方法によって形成できる。例えば、微細孔は、コーティング組成物中の放出不可能な金属酸化物からスペーサー基などの二次材料を除去することによって形成され得る。特に、コーティング組成物は、金属酸化物と二次材料とを含む。コーティング組成物が基材または他のコーティング組成物に施された後、二次材料が除去されて、金属酸化物中に微細孔が形成される。他の実施形態では、微細孔は、金属酸化物が医療器具の表面または他のコーティング組成物に施されるときに形成され得る。
【0063】
1実施形態では、複数の微細孔を有する放出不可能な金属酸化物は、放出可能な金属酸化物の溶液または懸濁液を使用することによって形成される。溶液または懸濁液が表面またはコーティング組成物に施され、次いで、熱源もしくはエネルギー源に曝され、複数の微細孔を有する放出不可能な金属酸化物が形成される。いくつかの実施形態では、表面またはコーティング組成物に施された溶液または懸濁液は、最大約900℃まで加熱されるが、それよりも低い温度も、必要なアニーリングもしくは空隙率もしくは結晶相の程度または除去されるスペーサー基の種類に応じて使用できる。また、いくつかの場合において、放出可能な金属酸化物が金属酸化物と有機基との付加体である場合、熱源もしくはエネルギー源への曝露は、有機基の除去に十分であり、その結果、微細孔が形成される。使用される有機基の種類を変えることによって、微細孔のサイズを変えることができる。さらに、基材の微細孔内に治療薬を配置することに関連して上で説明されている方法により、治療薬が微細孔内に配置され得る。
【0064】
以下の実施例は、例示することを目的としており、制限することを目的としていない。
【実施例1】
【0065】
以下の表1で説明されているように、9つのステンレス鋼切り取り試片を作製した。
【0066】
【表1】
国際公開第2005/049520号で説明されている方法に従って、チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩を調製した。可溶性のTiO2/TFA材料をパクリタキセルのエタノール溶液と1:1の割合で反応させることによってパクリタキセル:TiO2/TFAの50:50(w/w)溶液を調製し、表面誘導体化酸化チタン(IV)パクリタキセル材料を固体状態で単離し、ブタノン中に再溶解させた(固形物10%/ブタノン90%)。他の溶媒も潜在的に使用可能である。
【0067】
コーティングされた切り取り試片をpH7.4の0.05%(w/v)のツイン20で食塩緩衝液中に留置した。UVによるHPLC検出を使用して、時間の経過とともにそれぞれの切り取り試片から緩衝溶液中に放出されるパクリタキセルの量を測定した。下の表2は、時間の経過とともにそれぞれの切り取り試片から放出されるパクリタキセルの量を示している。
【0068】
図6A〜6Bは、時間の経過とともに切り取り試片のそれぞれから放出されるパクリタキセルの量のグラフである。
【0069】
【表2】
【実施例2】
【0070】
コーティングを伴うステントは、以下のように作製できる。酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩のブタノン溶液組成物(例えば、コーティング1回につき100g/L、0.3cm3)をスピンコーティングすることができる(例えば、約500rpmから約3000rpmの回転速度)。この組成物が上に配置されているステントを、800℃で、またはそれより低い温度で、2時間かけてアニールする。その後、ステントを室温で60時間かけてパクリタキセルの1%エタノール溶液中に浸すことができる。次いで、ステントを外気中で乾燥させることができる。その後、ステントを50:50(w/w)の酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸とパクリタキセルのブタノン溶液(例えば、TiO2/TFA 0.5g、パクリタキセル0.5g、ブタノン5cm3)でコーティングし、コーティングを形成できる。
【実施例3】
【0071】
コーティングを伴うステントは、以下のように作製できる。酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩のブタノン溶液組成物(例えば、コーティング1回につき100g/L、0.3cm3)をスピンコーティングすることができる(例えば、約500rpmから約3000rpmの回転速度)。この組成物が上に配置されているステントを、800℃で、またはそれより低い温度で、2時間かけてアニールする。次いで、ステントを、スピンコーティング(例えば、約500rpmから3000rpmの回転速度)を使用して、パクリタキセル:TiO2/TFA=50:50(w/w)のブタノン溶液(例えば、ブタノン5cm3中パクリタキセル0.5g、TiO2/TFA0.5gで、0.3cm3溶液)によりコーティングする。次いで、ステントを2時間かけて70℃に加熱し、コーティングを形成することができる。
【実施例4】
【0072】
コーティングを伴うステントは、以下のように作製できる。酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩のブタノン溶液組成物(例えば、コーティング1回につき100g/L、0.3cm3)をスピンコーティングすることができる(例えば、約500rpmから約3000rpmの回転速度)。この組成物が上に配置されているステントを、270℃で2時間かけてアニールする。次いで、ステントを、スピンコーティング(例えば、約500rpmから3000rpmの回転速度)を使用して、パクリタキセル:TiO2/TFA=50:50(w/w)のブタノン溶液(例えば、ブタノン5cm3中パクリタキセル0.5g、TiO2/TFA 0.5gで、0.3cm3溶液)によりコーティングする。次いで、ステントを2時間かけて70℃に加熱し、コーティングを形成することができる。ステントは、限定はしないが、ローラー・コーティング、浸漬コーティング、およびスプレー・コーティングなどのさまざまな技術を使用してコーティングできることに留意すべきである。また、乾燥速度を変える必要がある場合には、沸点の高い、または低い他の溶媒を使用することもできる。
【0073】
本明細書に記載した説明は、いくつかの実施形態の個別の態様の単一の例示として意図されている説明されている特定の実施形態により範囲を制限されないものとする。本明細書で説明されている方法、組成物、および器具は、単独で、または本明細書で説明されている他の(複数の)特徴と組み合わせて、本明細書で説明されている特徴を備えることができる。実際、本明細書に示され、説明されているものに加えて、さまざまな修正形態が、当業者にとって通常の実験だけで前記の説明および付属の図面から明らかになるであろう。このような修正形態および同等の形態は、付属の請求項の範囲内にあることが意図されている。
【0074】
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願が、本願明細書に援用されることが具体的にまた個別に指示されている場合と同じ程度にその全体が本願明細書に援用される。本明細書でなされている参照の引用または説明は、そのような参照が従来技術のものであることを認めたと解釈されないものとする。
【技術分野】
【0001】
本明細書においては、治療薬を患者の生体組織に送達するための血管内ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具、およびそのような医療器具を製作するための方法について説明する。とりわけ、本明細書で説明されるのは、表面を有する基材と、放出可能な金属酸化物を含むコーティング組成物からなる表面に配置されたコーティングとを備える埋め込み型のコーティングを施された医療器具である。このコーティングは、ポリマー、またはいかなる放出可能な金属酸化物の一部ではない特定の種類のポリマーを含まない。
【背景技術】
【0002】
治療薬を局部的に患者の生体組織に送達するための医療器具が使用されてきた。例えば、再狭窄の治療または予防に、抗再狭窄剤などの治療薬を含有するコーティングが施されているステントが使用されてきた。現在、このような医療器具のコーティングは、治療薬単独、または治療薬とポリマーの組合せを含んでいる。これらの種類のコーティングは、両者にいくつかの制限があり得る。
【0003】
ポリマーを伴わない治療薬を含有するコーティングは、一般的に、治療薬を送達するのには役立たないが、それは、このようなコーティングは、治療薬の放出速度をほとんど、またはまったく制御しないためである。特に、治療薬は、一般的に数時間以内にバースト放出(burst release)で送達される。したがって、多くの医療デバイスコーティングは、時間の経過とともに治療薬の持続放出を行うために治療薬とポリマーを含む。
【0004】
コーティング中にポリマーを使用すると、コーティングから出る治療薬の放出速度を制御できるけれども、コーティング中でのこのようなポリマーの使用には、他にもある種の制限が生じ得る。例えば、コーティング中のポリマーは、血液と有害な反応をもたらし、血栓症を引き起こす可能性がある。
【0005】
さらに、ある種のポリマー・コーティング組成物は、実際に医療器具の表面に付着しない。コーティング組成物が表面に留まることを確実にするために、ステント・ストラットなどの、コーティングされる医療器具の領域がコーティング組成物でカプセル封入される。しかしながら、ポリマーは医療器具に付着しないため、コーティング組成物は、医療器具の装填、配備、および埋め込み時に変形と損傷の影響を受けやすい。ポリマー・コーティングが損傷すると、治療薬の放出特性が変わり、治療薬放出速度の望ましくない増大または減少に至る可能性がある。
【0006】
さらに、ポリマーからなる組成物でコーティングされた表面は、他の表面への望ましくない付着を生じる可能性がある。例えば、体腔に送達される前に、バルーン拡張式ステントを未拡張、または「捲縮(crimped)」状態にしなければならない。捲縮工程では、コーティングされたステント・ストラットは、互いに接触するように留置され、場合によっては互いに付着し得る。ステントが拡張されるか、または捲縮状態から展開されたときに、互いに付着していたストラット上のコーティングが損傷したり、破れたり、またはそうでなければ取り外され得る。さらに、ポリマー・コーティングが、ステントの内面に施される場合、これは、ステントを展開するために使用されるバルーンが膨張時にステントの内面に接触したときにバルーンに固着または付着する可能性がある。バルーンに対するこのような付着があると、医療器具の適切な配備に支障を来すことがある。
【0007】
バルーン拡張式ステントと同様に、自己展開式ステント上のポリマー・コーティングも、ステントの送達に干渉する可能性がある。自己展開式ステントは、通常、引き戻しシース・システムを使用して送達される。このシステムが作動しステントを送達する段になると、シースは、引き戻され、ステントを露出させ、ステントの自己展開を許す。シースが引き戻されるときに、シースはステントの外面上を摺動する。ステントの外側表面または管腔外面上に配置されているポリマー・コーティングは、シースが引き戻されるときにシースに付着し、ステントの送達を邪魔する可能性がある。
【0008】
そこで、ポリマーをほとんどまたはまったく含まない、またポリマーを含む医療器具用の現在のコーティングの不利点を回避しつつ制御放出法で有効量の治療薬を放出することができる医療器具および医療器具用のコーティングが必要である。それに加えて、そのような医療器具を製作し、医療器具用のコーティングを調製する方法も必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記した問題を解決することができるコーティングを施した医療器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これらおよび他の目的は、本明細書で説明されている実施形態によって対処される。いくつかの実施形態では、治療薬を制御放出法で放出することができる医療器具用のコーティング、およびそのような医療器具を作成するための方法が提供される。
【0011】
例えば、1実施形態では、ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具は、1つの表面を有する基材からなる。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置され、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まないか、または場合によっては、どのようなポリマーをも含まない。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物からなる。第1のコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物を含み、いくつかの場合において、第1の治療薬からなる。いくつかの実施形態では、コーティングは、表面上に配置される第2のコーティング組成物をさらに含む。第2のコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物からなり、表面と第1のコーティング組成物との間に配置される。第2のコーティング組成物は、治療薬を含むことができるが含む必要はない。
【0012】
他の実施形態では、ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具は、1つの表面を有する基材からなる。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置され、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まないか、または場合によっては、どのようなポリマーをも含まない。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物からなる。第1のコーティング組成物は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる。いくつかの場合において、第1の治療薬は、放出不可能な金属酸化物の複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。放出可能な金属酸化物を含む、またいくつかの場合には、治療薬を含む第2のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物の少なくとも一部に配置される。いくつかの場合において、放出不可能な金属酸化物の微細孔は、コーティング組成物が第1のコーティング組成物上に配置される前には、治療薬を含んでいない。
【0013】
さらに他の実施形態では、ステントなどの埋め込み型コーティング医療器具は、1つの表面を有する基材からなる。基材は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる。いくつかの場合において、第1の治療薬は、放出不可能な金属酸化物の複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。コーティングは、表面の少なくとも一部に配置され、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まないか、または場合によっては、どのようなポリマーをも含まない。コーティングは、放出可能な金属酸化物を含み、いくつかの場合において、治療薬を含むコーティング組成物からなる。いくつかの実施形態において、放出不可能な金属酸化物の微細孔は、第2のコーティング組成物が表面上に配置される前には、いかなる治療薬をも含んでいない。
(定義)
本明細書で使用されているように、「合成ポリマー」は、人造である、つまり天然ものでない、ポリマーを指す。
【0014】
本明細書で使用されているように、「(任意の)ポリマーまたは(任意の)合成ポリマーを含まない」コーティングとは、コーティングを形成するために使用される材料にポリマーまたは合成ポリマーが、目的を持って、または意図的に加えられなかったことを意味する。
【0015】
本明細書で使用されているように、「金属酸化物」は、酸素が1つまたは複数の金属と結合している化合物を指す。
本明細書で使用されているように、「放出可能な金属酸化物」は、医療器具が患者体内に埋め込まれたときに、医療器具、例えば医療器具のコーティング、から放出され得る金属酸化物を指す。金属酸化物は、分解または解離して、酸化物小粒子および/または酸化物の表面に結合されている放出分子になることができる。例えば、金属酸化物コーティングおよび/または金属酸化物に結合されている分子は、金属酸化物および/または金属酸化物コーティングに結合されている分子を分解するか、解離するか、または他の何らかの形で金属酸化物および/または金属酸化物コーティングに結合されている分子の放出を促進する体液または組織に曝すことによって放出され得る。
【0016】
本明細書で使用されているように、「放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマー」は、放出可能な金属酸化物に直接的または間接的に化学結合されていないポリマーを指す。
【0017】
本明細書で使用されているように、「放出不可能な金属酸化物」は、医療器具が患者体内に埋め込まれたときに、医療器具、例えば医療器具のコーティング、から放出され得ない金属酸化物を指す。
【0018】
本明細書で使用されているように、「有機基」は、有機化合物部分を指す。
本明細書で使用されているように、「金属酸化物と有機基の付加体」は、例えば水素結合によって少なくとも1つの有機基に結合されている少なくとも1つの金属酸化物からなる化合物を指す。
【0019】
本明細書で使用されているように、「微細孔」は、複数の開口部または孔隙を指す。
本明細書で使用されているように、「(1つの)治療薬を含まない」または「任意の治療薬を含まない」は、目的を持って、または意図的に含まれる治療薬がなかったことを意味する。
【0020】
本明細書で使用されているように、「約」は、「近似的に」という言い回しと同義であり、言及した値より少し大きいか、または小さいことを指す。
本明細書で使用されているように、「制御放出」、「持続放出」、「変調放出」、および「調節放出」という用語は、入れ換えて使用することができ、また即時もしくはバースト放出特性でない治療薬の放出特性を記述するために使用される。
【0021】
いくつかの実施形態は、以下の図面を参照しつつ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1A】基材と放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図1B】基材と放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図2A】基材と基材の表面上に配置されるコーティングを有し、コーティングは放出可能な金属酸化物を含む第1のコーティング組成物および放出不可能な金属酸化物を含む第2のコーティングからなる、医療器具の実施例を示す断面図。
【図2B】基材と基材の表面上に配置されるコーティングを有し、コーティングは放出可能な金属酸化物を含む第1のコーティング組成物および放出不可能な金属酸化物を含む第2のコーティングからなる、医療器具の実施例を示す断面図。
【図3A】基材と基材の表面上に配置される放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図3B】基材と基材の表面上に配置される放出可能な金属酸化物からなるコーティングとを有する医療器具の実施例を示す断面図。
【図4A】コーティングされた医療器具の他の2つの実施形態を示す断面図。
【図4B】コーティングされた医療器具の他の2つの実施形態を示す断面図。
【図5】血管内ステントの1実施形態を示す周辺図。
【図6A】実施例1によって調製されたさまざまなコーティングが施された試料に対する治療薬放出特性を示す図。
【図6B】実施例1によって調製されたさまざまなコーティングが施された試料に対する治療薬放出特性を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
1実施形態では、医療器具は、表面を有する基材、および表面の少なくとも一部に配置されているコーティングを有する。コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、合成ポリマーを含まず、またはいくつかの場合においては、どのようなポリマーをも含まない。図1Aは、このような実施形態の1実施例の断面図を示している。この実施例では、ステントとすることができる、医療器具の基材10は、コーティング20が施された表面15を有する。コーティング20は、表面15の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物70を含む。第1のコーティング組成物70は、第1の放出可能な金属酸化物80および治療薬65を含む。いくつかの実施形態では、第1の放出可能な金属酸化物80および治療薬65は、第1のコーティング組成物70全体にわたって分配される。他の実施形態では、第1の放出可能な金属酸化物80および治療薬65は、コーティング組成物の離散的部分に配置され得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。例えば、放出可能な金属酸化物は、治療薬を含み得る金属酸化物と有機基の付加体とすることができ、例えば、治療薬は、この付加体の一部に水素結合されることによって付加体の一部となる。医療器具が患者体内に埋め込まれると、第1の放出可能な金属酸化物80が、治療薬65とともに医療器具から放出される。本明細書に示されている、いくつかの図では、治療薬は、黒い点で表現されているが、そのような表現は、治療薬が特定の形態でのみ存在することを要求しているものと解釈すべきではない。
【0024】
図1Bは、図1Aに示されているのと類似の1実施形態を示している。第1のコーティング組成物70に加えて、コーティング20は、第2の放出可能な金属酸化物19からなる第2のコーティング組成物17を含む。第2のコーティング組成物17は、第1のコーティング組成物70と基材表面15との間に配置される。第1の放出可能な金属酸化物80および第2の放出可能な金属酸化物19は、同じであっても異なっていてもよい。また、第2のコーティング組成物17は、さらに、第1のコーティング組成物70の治療薬65と同じであるか、または異なっていてもよい、治療薬も含み得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0025】
図2Aは、他の実施形態の1実施例を示している。この図では、ステントとすることができる、医療器具の基材10は、コーティング20が施された表面15を有する。このコーティング20は、表面15の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物30を含む。第1のコーティング組成物30は、複数の微細孔50を中に有する放出不可能な金属酸化物40を含む。第1の治療薬60は、放出不可能な金属酸化物40の複数の微細孔50のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置される。第2のコーティング組成物70は、第1のコーティング組成物30の少なくとも一部に配置される。第2のコーティング組成物70は、放出可能な金属酸化物80を含む。この実施形態では、放出可能な金属酸化物は、医療器具が埋め込まれたときに放出される。
【0026】
図2Bは、図2Aに示されているものと類似しているコーティング医療器具の1実施例の断面図を示している。しかしながら、図2Bに示されている実施例では、第2のコーティング組成物70は、第2の治療薬65を含む。第1の治療薬60および第2の治療薬65は、同じであっても、または異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0027】
他の実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、表面を有する基材を備える。基材は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる。コーティングは、基材の表面の少なくとも一部の上に配置される。コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない、いかなる合成ポリマーをも含まず、またはいくつかの場合においては、どのようなポリマーをも含まない。図3Aは、このような実施形態の1実施例を示している。この図では、ステントとすることができる、医療器具の基材110は、コーティング120でコーティングされた表面115を有する。基材110は、複数の微細孔150を中に有する放出不可能な金属酸化物140を含む。第1の治療薬160は、放出不可能な金属酸化物140の複数の微細孔150のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置される。第1のコーティング組成物170からなるコーティング120は、表面115の少なくとも一部に配置される。第1のコーティング組成物170は、放出可能な金属酸化物180を含む。放出可能な金属酸化物は、患者体内に埋め込まれたときに医療器具から放出される。
【0028】
図3Bは、図3Aに示されているものと類似しているコーティング医療器具の1実施例の断面図を示している。しかしながら、図3Bに示されている実施例では、第1のコーティング組成物170は、第2の治療薬165を含む。第1の治療薬160および第2の治療薬165は、同じであっても、または異なっていてもよい。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、第1のコーティング組成物の放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0029】
図4Aは、図2Bに示されているものと類似しているコーティング医療器具の他の実施形態の断面図を示している。この実施形態では、治療薬は、放出可能な金属酸化物および治療薬からなる第2のコーティング組成物が第1のコーティング組成物上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置されることはない。特に、図4Aに示されているように、ステントとすることができる、医療器具の基材210は、コーティング220が施された表面215を有する。このコーティング220は、表面215の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物230を含む。第1のコーティング組成物230は、複数の微細孔250を中に有する放出不可能な金属酸化物240を含む。第2のコーティング270は、第1のコーティング組成物230の少なくとも一部に配置される。第2のコーティング組成物270は、放出可能な金属酸化物280および第1の治療薬260からなる。この実施形態では、治療薬は、第2のコーティング組成物270が第1のコーティング組成物230上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物240の微細孔250内に配置されることはない。いくつかの場合において、第2のコーティング組成物270の治療薬260の一部は、微細孔250内に配置され得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、第2のコーティング組成物の放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0030】
図4Bは、図3Bに示されているものと類似しているコーティング医療器具の他の実施形態の断面図を示している。この実施形態では、治療薬は、放出可能な金属酸化物および治療薬からなるコーティング組成物が放出不可能な金属酸化物を含む医療器具の表面上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置されることはない。特に、図4Bに示されているように、ステントとすることができる、医療器具の基材210は、コーティング220が配置される表面215を有する。基材210は、複数の微細孔250を中に有する放出不可能な金属酸化物240を含む。コーティング220は、放出可能な金属酸化物280および第1の治療薬260からなるコーティング組成物270を含む。この実施形態では、治療薬は、コーティング組成物270が表面215上に配置される前に、放出不可能な金属酸化物240の微細孔250内に配置されることはない。いくつかの場合において、コーティング組成物270の治療薬260の一部は、微細孔250内に配置され得る。いくつかの実施形態では、医療器具に施される前に、コーティング組成物の放出可能な金属酸化物が治療薬を含むようにできる。
【0031】
上述の実施形態のコーティングは、1つまたは2つのコーティング組成物を含むように示されているが、これらのコーティングは、2つよりも多いコーティング組成物を含むことができることに留意されたい。
【0032】
放出不可能な金属酸化物および放出可能な金属酸化物中の微細孔は、さまざまなサイズをとり得る。例えば、複数の微細孔のうちの少なくとも一部は、約1nmから約100μmまで、約1000nmから約1000μmまで、10nmから約10μmまで、約100nmから約10μmまで、約10nmから約1μmまで、または約100nmから約1μmまでの範囲内の直径または幅を持つことが可能である。いくつかの実施形態では、コーティング組成物中の微細孔の直径または幅は、約1nm、約10nm、約100nm、約1μm、約10μm、約100μmである。いくつかの実施形態では、コーティング組成物の微細孔の直径または幅は、1nm未満、10nm未満、100nm未満、1μm未満、10μm未満、100μm未満である。
【0033】
上述の図に示されているように、第1および第2のコーティング組成物は、一般的に、複数の層の形態をとる。他の実施形態では、これらの組成物は層の形態をとる必要はない。コーティング組成物が層の形態をとる場合、これらの層の厚さは、約1nmから約1000μmまで、約10nmから約100μmまで、約1nmから約10μmまで、または約1μmから約100μmまでの範囲内とすることができる。
【0034】
本明細書で説明されている医療器具については、以下の「医療器具」の節でさらに詳しく説明される。本明細書で説明されている医療器具を準備する方法については、以下の「コーティングを形成する方法」で説明されている。開示をわかりやすくするため、また制限することなく、詳細な説明を以下の複数の節に分割する。
(医療器具)
(医療器具の調整)
本明細書で説明されている医療器具は、患者の体内に埋め込むことができるか、または挿入することができる。好適な医療器具としては、限定はしないが、ステント、外科用ステープル、バルーン・カテーテル、中心静脈カテーテル、および動脈カテーテルなどのカテーテル、ガイドワイヤ、カニューレ、心臓ペースメーカー・リードもしくはリード先端、細動除去器リードもしくはリード先端、埋め込み可能血管アクセス・ポート、血液貯蔵バッグ、血液用チューブ、血管もしくは他のグラフト、大動脈下バルーン・ポンプ、心臓弁、心臓血管縫合糸、完全人工心臓および心室補助ポンプ、骨インプラント、ならびに血液酸素付加装置、血液フィルター、中隔欠損機器、血液透析ユニット、血液かん流ユニット、および血漿交換ユニットなどの体外機器が挙げられる。
【0035】
好適な医療器具としては、限定はしないが、チューブ状またはシリンダー状部分を有するものが挙げられる。例えば、医療器具のチューブ状部分は、完全なシリンダー状である必要はない。チューブ状部分の断面は、円形だけでなく、矩形、三角形など、任意の形状としてよい。このような器具としては、限定はしないが、ステント、バルーン・カテーテル、およびグラフトが挙げられる。分岐ステントも、本明細書で説明されている方法によって製作できる医療器具の間に入れられる。
【0036】
それに加えて、医療器具のチューブ状部分は、複数の開口部を定める複数のストラットを備えることができる側壁とすることが可能である。側壁は、内腔を定める。ストラットは、任意の好適な構成で配列され得る。また、ストラットは、すべて同じ形状または幾何学的構造を持つ必要があるわけではない。医療器具が、複数のストラットを備えるステントである場合、これらのストラット上に表面が配置される。それぞれの個別ストラットは、患者の生体組織に曝されるように適合された外面、内面、および外面と内面との間の少なくとも1つの側面を有する。
【0037】
特に好適な医療器具は、当業者に知られている医療目的に合う任意の種類のステントを含む。好ましくは、ステントは、患者の血管内に永久的に埋め込むように設計されている血管内ステントである。いくつかの実施形態では、ステントは、冠状動脈ステントなどの、開格子側壁ステント構造を含む。他の好適なステントとしては、例えば、自己拡張式ステントおよびバルーン拡張式ステントなどの血管ステントが挙げられる。使用可能な自己拡張式ステントの例は、ウォルステン(Wallsten)に発行された米国特許第4,655,771号および第4,954,126号、ならびにウォルステンら(Wallsten et al.)に発行された米国特許第5,061,275号に示されている。適切なバルーン拡張式ステントの例は、ピンチャシクら(Pinchasik et al.)に発行された米国特許第5,449,373号に示されている。
【0038】
図5は、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している医療器具の1実施例を示している。この図は、埋め込み可能血管内ステント310の周辺図である。図5に示されているように、血管内ステント310は、一般的なシリンダー形状である。ステント310は、側壁320内に複数のストラット330および少なくとも1つの開口部340を備える側壁320を具備する。一般的に、開口部340は、隣接するストラット330の間に配置される。また、側壁320は、第1の側壁表面322および図5には示されていない対向する第2の側壁表面を有することができる。第1の側壁表面322は、ステントが埋め込まれるときに体腔壁に面する外側もしくは管腔外側壁表面、または体腔表面から外方に向く内側または管腔内側壁表面とすることができる。同様に、第2の側壁表面は、管腔外側壁表面であるか、または管腔内側壁表面であるものとしてよい。
【0039】
本明細書で説明されているコーティングが、ステント側壁構造内に開口部を有するステントに施された場合、いくつかの実施形態では、側壁ステント構造内の開口部が温存されるように、例えば、開口部全体または一部がコーティング材料で閉塞されることのないように、コーティングがステントの表面に適合することが好ましい。
【0040】
好適なステントのフレームワークは、当技術分野で知られているようなさまざまな方法を通じて形成され得る。フレームワークは、溶接されるか、成形されるか、レーザー切断されるか、電気鋳造されるか、または連続構造を形成するように巻かれるか、または編んでまとめられた長繊維または繊維からなるものとすることができる。
【0041】
医療器具(例えば、ステント)の好適な基材は、金属材料、セラミック材料、またはポリマー材料またはこれらの組合せから作製できる(以下の節「デバイス形成用の金属材料」、「デバイス形成用のセラミック材料」、「デバイス形成用のポリマー材料」を参照のこと)。好ましくは、これらの材料は生体適合性のある材料である。材料は、多孔性または無孔性とすることができ、また多孔性構造要素は、微細孔性またはナノ細孔性とすることができる。
(デバイス形成用の金属材料)
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、金属製の基材を備える。基材を製作するために使用される好適な金属材料として、限定はしないが、チタンをベースとする金属および合金(ニチノール、ニッケルチタン合金、熱記憶合金材料など)、ステンレス鋼、金、白金、イリジウム、モリブデン、ニオブ、パラジウム、クロム、タンタル、ニッケルクロム、またはElgiloy(登録商標)およびPhynox(登録商標)などのコバルトクロムニッケル合金を含むいくつかのコバルト合金、またはこれらの組合せが挙げられる。医療器具を製作するために使用され得る他の金属材料は、国際公開第94/16646号に開示されているようなクラッド長繊維複合材料を含む。
【0042】
好ましくは、金属または金属酸化物領域は、放射線不透性物質を含む。医療器具がX線または蛍光透視の下で見えるように、放射線不透性物質を含めることが望ましい場合がある。放射線不透性である好適な材料としては、限定はしないが、金、タンタル、白金、ビスマス、イリジウム、ジルコニウム、ヨウ素、チタン、バリウム、銀、スズ、これらの金属の合金、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0043】
さらに、本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、基材を形成するために単一の種類の金属を使用することによって実施できるけれども、金属のさまざまな組合せを使用することも可能である。金属の適切な混合を調整することで、基材に組み込んだときに望ましい効果が発揮されるようにできる。
(デバイス形成用のセラミック材料)
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、セラミック製の基材を備える。基材を製作するために使用される好適なセラミック材料としては、限定はしないが、酸化チタン、酸化白金、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化イリジウム、酸化クロム、酸化ニオブ、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、またはこれらの組合せなどの遷移元素の酸化物、炭化物、または窒化物が挙げられる。シリカなどのシリコンベースの材料も使用できる。
【0044】
さらに、本明細書で説明されているいくつかの実施形態は、基材を形成するために単一の種類のセラミックを使用することによって実施できるけれども、セラミックのさまざまな組合せを使用することも可能である。セラミックの適切な混合を調整することで、基材に組み込んだときに望ましい効果が発揮されるようにできる。
(デバイス形成用のポリマー材料)
いくつかの実施形態では、本明細書で説明されている医療器具は、ポリマーを使用した基材を備える。他の実施形態では、材料はポリマーでない材料とすることもできる。医療器具のコンポーネントを形成するために有用な(複数の)ポリマーは、生体適合性を有し、生体組織に対する炎症を避けるものでなければならない。ポリマーは、生体適合性、または生体吸収性を有するものとしてよい。基材を製作するために有用な好適なポリマー材料としては、限定はしないが、イソブチレンベースのポリマー、スチレンイソブチレンスチレン共重合体などのポリスチレンベースのポリマー、ポリシアノアクリレート、エチレングリコール1ジメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)およびポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)などのポリアクリレートおよびポリアクリレート誘導体、エチレン酢酸ビニルなどのビニル酢酸ベースのポリマーおよび共重合体、ポリウレタンおよびその共重合体、シリコーンおよびその共重合体、ポリエチレンテレフタレート、熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアミド、ダクロンポリエステルおよびポリ(オルトエステル)などのポリエステル、ポリスルホン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミノカーボネートなどのポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン共重合体、アクリル、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリ(グリコリドラクチド)共重合体、ポリカプロラクトン、ポリプロピレン、ポリアルキレンオキサレート、ポリ(ジメチルシロキサン)などのポリシロキサン、ナイロン、ポリホスファゼン、ポリ(アミノ酸)、ポリ(HEMA)、ポリヒドロキシアルカノエート、ポリヒドロキシブチレート、ポリジオキサノン、ポリ(γ−エチルグルタミン酸塩)、ポリアンハイドライド、ポリエーテルオキシド、ポリビニルアルコール、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、コラーゲン、キチン、Teflon、アルギン酸塩、デキストラン、綿、およびこれらの組合せおよび誘導体化した化合物が挙げられる(つまり、例えば付着部位または架橋基、例えばアルギニングリシンアスパラギン酸RGDを含むように修飾されたポリマーであるが、これらのポリマーは、タンパク質および/または核酸などの、細胞および分子の付着を可能にしつつ構造的完全性を保持する)。
【0045】
ポリマーは、その機械的強度を高めるために乾燥させることができる。次いで、ポリマーを原料物質として使用し、基材の全部または一部を形成することができる。さらに、いくつかの実施形態は、基材を形成するために単一の種類のポリマーを使用することによって実施できるけれども、ポリマーのさまざまな組合せを使用することも可能である。ポリマーの適切な混合を調整することで、基材に組み込んだときに望ましい効果が発揮されるようにできる。
(治療薬)
本明細書で使用されているような「治療薬」という用語は、薬物、遺伝物質、および生物由来物質を包含するものであり、「生物学的活性物質」と入れ換えて使用することができる。「遺伝物質」という用語は、限定はしないが、ウイルス・ベクターおよび非ウイルス・ベクターを含む、人体に挿入されることが意図されている、後述の有用なタンパク質をエンコードするDNA/RNAを含む、DNAまたはRNAを意味する。
【0046】
「生物由来物質」という用語は、細胞、酵母、細菌、タンパク質、ペプチド、サイトカイン、およびホルモンを包含する。ペプチドおよびタンパク質の例としては、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、形質転換増殖因子(TGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮成長因子(EGF)、軟骨成長因子(CGF)、神経成長因子(NGF)、ケラチノサイト成長因子(KGF)、骨格成長因子(SGF)、骨芽細胞由来成長因子(BDGF)、肝細胞成長因子(HGF)、インスリン様成長因子(IGF)、サイトカイン増殖因子(CGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、低酸素誘導因子−1(HIF−1)、幹細胞由来因子(SDF)、幹細胞因子(SCF)、内皮細胞増殖用添加物(ECGS)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、増殖分化因子(GDF)、インテグリン修飾因子(IMF)、カルモジュリン(CaM)、チミジンキナーゼ(TK)、腫瘍壊死因子(TNF)、成長ホルモン(GH)、骨形態形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6(Vgr−1)、BMP−7(PO−1)、BMP−8、BMP−9、BMP−10、BMP−11、BMP−12、BMP−14、BMP−15、BMP−16、など)、マトリクス・メタロプロテイナーゼ(MMP)、マトリクス・メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、サイトカイン、インターロイキン(例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−15など)、リンホカイン、インターフェロン、インテグリン、コラーゲン(すべての種類)、エラスチン、フィブリリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、トランスフェリン、サイトタクチン、細胞接着ドメイン(例えば、RGD)、およびテネイシンが挙げられる。現在好ましいBMPは、BMP−2、BMP−3、BMP−4、BMP−5、BMP−6、BMP−7である。これらの二量体タンパク質は、ホモ二量体、ヘテロ二量体、またはこれらの組合せとして、単独で、または他の分子と併せて形成され得る。細胞は、ヒト由来のもの(自系または同種異系)であるか、または必要ならば注目するタンパク質を移植部位に送達するために遺伝子操作された動物由来(異種)とすることができる。送達媒体は、細胞機能および生存能力を維持するために必要に応じて配合され得る。細胞には、前駆細胞(例えば、内皮前駆細胞)、幹細胞(例えば、間葉細胞、造血細胞、神経細胞)、間質細胞、実質細胞、未分化細胞、線維芽細胞、マクロファージ、および衛星細胞がある。
【0047】
他の好適な治療薬としては以下のものがある。
・ ヘパリン、ヘパリン誘導体類、ウロキナーゼ、およびPPack(デキストロフェニルアラニンプロリンアルギニンクロロメチルケトン)などの抗血栓症薬、
・ エノキサプリン、アンジオペプチン、または平滑筋細胞増殖を阻害できるモノクローナル抗体、ヒルジン、アセチルサリチル酸、タクロリムス、エベロリムス、ピメクロリムス、シロリムス、ゾタロリムス、アムロジピン、およびドキサゾシンなどの抗増殖剤、
・ グルココルチコイド、ベータメタゾン、デキサメタゾン、プレドニゾロン、コルチコステロン、ブデゾニド、エストロゲン、スルファサラジン、ロシグリタゾン、ミコフェノール酸、およびメサラミンなどの抗炎症薬、
・ パクリタキセル、5−フルオロウラシル、シスプラチン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エポチロン、メトトレキサート、アザチオプリン、アドリアマイシンおよびムタマイシン、エンドスタチン、アンギオスタチンおよびチミジンキナーゼ阻害薬、クラドリビン、タクソールおよびそのアナログもしくは誘導体、パクリタキセル、さらにはその誘導体、類似体、またはタンパク質に結合されたパクリタキセル、例えば、Abraxane(商標)などの、抗悪性腫瘍/抗増殖/抗有糸分裂薬、
・ リドカイン、ブピバカイン、およびロピバカインなどの麻酔薬、
・ D−Phe−Pro−Argクロロメチルケトン、RGDペプチド含有化合物、ヘパリン、抗トロンビン化合物、血小板受容体拮抗薬、抗トロンビン抗体、抗血小板受容体抗体、アスピリン(アスピリンは鎮痛薬、解熱剤、および抗炎症薬にも分類される)、ジピリダモール、プロタミン、ヒルジン、プロスタグランジン阻害薬、血小板阻害薬、トラピジルまたはリプロスチンなどの抗血小板薬、およびマダニ抗血小板ペプチドなどの抗凝血薬、
・ 細胞増殖を阻害し、ある種の癌細胞にアポトーシスを誘発するRNAまたはDNA代謝産物としても分類される5−アザシチジンなどのDNA脱メチル化薬、
・ 増殖因子、血管内皮細胞増殖因子(VEGF、すべての種類がVEGF−2を含む)、成長因子受容体、転写活性化因子、および翻訳促進因子などの血管細胞増殖促進剤、
・ 抗増殖剤、増殖因子阻害剤、増殖因子受容体拮抗薬、転写抑制因子、翻訳抑制因子、複製阻害剤、阻害抗体、増殖因子に対する抗体、増殖因子と細胞毒素からなる二官能性分子、抗体と細胞毒素からなる二官能性分子などの血管細胞増殖阻害剤、
・ コレステロール降下薬、血管拡張剤、および内因性血管作動機構に干渉する薬剤、
・ プロブコールなどの抗酸化薬、
・ ペニシリン、セフォキシチン、オキサシリン、トブラナイシン(tobranycin)、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)などの抗生物質製剤、
・ 酸性および塩基性線維芽細胞増殖因子、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)、および17−ベータエストラジオールを含むエストロゲンなどの血管新生物質、
・ ジゴキシン、ベータブロッカー、カプトプリルおよびエナロプリルを含むアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、スタチン、および関連化合物などの心不全治療薬、
・ シロリムス(ラパマイシン)またはエベロリムスなどのマクロライド、
・ 塩化アラゲブリウム(ALT−711)を含むAGE分解剤。
【0048】
他の治療薬としては、ニトログリセリン、亜酸化窒素、一酸化窒素、抗生物質、アスピリン、ジギタリス、エストロゲン、エストラジオール、および配糖体が挙げられる。好ましい治療薬としては、ステロイド、ビタミン、および再狭窄抑制薬などの抗増殖薬が挙げられる。好ましい再狭窄抑制薬としては、Taxol(登録商標)、パクリタキセル(つまり、パクリタキセル、パクリタキセル類似体、またはパクリタキセル誘導体、およびこれらの混合物)などの微小管安定化薬が挙げられる。例えば、本明細書で説明されている実施形態で使用するのに適している誘導体としては、2’−スクシニル−タクソール、2’−スクシニル−タクソールトリエタノールアミン、2’−グルタリル−タクソール、2’−グルタリル−タクソールトリエタノールアミン塩、N−(ジメチルアミノエチル)グルタミンとの2’−O−エステル、およびN−(ジメチルアミノエチル)グルダミド塩酸塩との2’−O−エステルが挙げられる。
【0049】
他の好ましい治療薬としては、タクロリムス、ハロフギノン、ゲルダナマイシンなどのHSP90熱ショックタンパク質の阻害薬、エポチロンDなどの微小管安定化薬、クリスタゾール(cliostazole)などのホスホジエステラーゼ阻害薬、Barkct阻害薬、ホスホランバン阻害薬、およびSerca2遺伝子/タンパク質が挙げられる。さらに他の好ましい実施形態では、治療薬は、エリスロマイシン、アンフォテリシン、ラパマイシン、アドリアマイシンなどの抗生物質である。
【0050】
好ましい実施形態では、治療薬として、ダウノマイシン、マイトサイシン(mitocycin)、デキサメタゾン、エベロリムス、タクロリムス、ゾタロリムス、ヘパリン、アスピリン、ワルファリン、チクロピジン、サルサラート、ジフルニサル、イブプロフェン、ケトプロフェン、ナブメトン、プリオキシカム(prioxicam)、ナプロキセン、ジクロフェナク、インドメタシン、スリンダク、トルメチン、エトドラク、ケトロラク、オキサプロジン、セルコキシブ(celcoxib)、塩化アラゲブリウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0051】
治療薬は、当業者によく知られている方法によって合成することができる。代替として、化学薬品および製薬会社から治療薬を購入することもできる。
(放出不可能な金属酸化物と放出可能な金属酸化物)
放出不可能な金属酸化物および放出可能な金属酸化物のうち好適な金属酸化物として、限定はしないが、金属である、チタン、スカンジウム、鉄、タンタル、ニッケル、コバルト、クロム、マンガン、白金、イリジウム、ニオブ、バナジウム、ジルコニウム、タングステン、ロジウム、ルテニウム、金、銅、亜鉛、イットリウム、モリブデン、テクネチウム、パラジウム、カドミウム、ハフニウム、レニウム、およびこれらの組合せのうちの1つまたは複数を含む金属酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、好ましい金属として、限定はしないが、金、タンタル、白金、チタン、イリジウム、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0052】
好適な金属酸化物の例としては、限定はしないが、酸化白金、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化イリジウム、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化タングステン、酸化ロジウム、酸化ルテニウム、アルミナ、ジルコニア、石英系ガラスおよび二酸化ケイ素などのシリコーン酸化物、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0053】
これらの金属酸化物は、スズ/四価スズ酸化物、スズ/二価スズ酸化物、スズ/酸化インジウム、スズ/酸化アンチモン、スズ/酸化亜鉛、スズ/酸化チタン、スズ/酸化バナジウム、スズ/酸化クロム、スズ/酸化マンガン、スズ/酸化鉄、スズ/酸化コバルト、スズ/酸化ニッケル、スズ/酸化ジルコニウム、スズ/酸化モリブデン、スズ/酸化パラジウム、スズ/酸化イリジウム、スズ/酸化マグネシウム、チタン/四価チタン酸化物、チタン/二価チタン酸化物、チタン/酸化インジウム、チタン/酸化アンチモン、チタン/酸化亜鉛、チタン/酸化スズ、チタン/酸化バナジウム、チタン/酸化クロム、チタン/酸化マンガン、チタン/酸化鉄、チタン/酸化コバルト、チタン/酸化ニッケル、チタン/酸化ジルコニウム、チタン/酸化モリブデン、チタン/酸化パラジウム、チタン/酸化イリジウム、またはチタン/酸化マグネシウムなどのうちのどれかの混合金属酸化物とすることもできる。
【0054】
いくつかの実施形態では、放出可能な金属酸化物は、少なくとも1つの金属酸化物と有機基との付加体である。すべての目的に関してその全体を本願明細書に援用する国際公開第2005/049520号では、このような化合物を含む放出可能な金属酸化物の例を説明している。いくつかの実施態様では、付加体は、複数の種類の有機基を含むことが可能である。有機基は、金属に、または付加体の他の有機基に結合できる。例えば、付加体は、金属酸化物、第1の有機基、および第1の有機基または金属酸化物に結合された第2の有機基を含むことができる。いくつかの実施形態では、第2の有機基は、治療薬である。このような治療薬は、例えば、水素結合によって付加体に結合され得る。有機基は、例えば、フルオロ酢酸塩などの酢酸塩、リン酸塩、ポリエチレングリコール、ポリマー、治療薬、または付加体に結合できる任意の化学部分であってもよい。
(コーティングを作製する方法)
本明細書では、上述の医療器具を製作する方法が提示されている。1実施形態では、埋め込み型コーティング・ステントを製作する方法は、表面を有する基材を有する埋め込み可能なステントを形成することからなる。いかなる放出可能な金属酸化物の一部でもない、いかなる合成ポリマーをも含まない、またはどのようなポリマーをも含まないコーティングが、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に施すことによって表面の少なくとも一部に形成される。第1のコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物からなる。いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物は、治療薬を含む。また、この方法は、第1のコーティング組成物が施される前に第2の放出可能な金属酸化物からなる第2のコーティング組成物を表面上に施すことをさらに含むものとしてよい。したがって、第2のコーティング組成物は、表面と第1のコーティング組成物との間に配置される。第2のコーティング組成物は、治療薬を含むか、またはいかなる治療薬をも含まないものとすることができる。
【0055】
例えば、本明細書で説明されている方法は、表面を有する基材を含む埋め込み可能なステントを用意し、放出可能な金属酸化物の一部でない合成ポリマーを含まないコーティングを表面の少なくとも一部に形成することによって埋め込み型コーティング・ステントを作製する方法を含む。コーティングは、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に施し、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物の少なくとも一部の上に施すことによって形成される。第1のコーティング組成物は、酸化チタンと酢酸塩の付加体を有する放出可能な金属酸化物を含む。この実施形態では、第1のコーティング組成物は、表面に施されるときに治療薬を含まない。第2のコーティング組成物は、パクリタキセル、および酸化チタンと酢酸塩の付加体を有する放出可能な金属酸化物を含む。
【0056】
他の実施形態では、コーティング医療器具を製作する方法は、表面を有する基材を備える、ステントなどの埋め込み型医療器具を形成することからなる。合成ポリマーを含まないか、または放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まないコーティングが、表面の少なくとも一部に形成される。コーティングは、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に形成することによって形成される。第1のコーティング組成物は、放出不可能な金属酸化物からなる。複数の微細孔が、放出不可能な金属酸化物中に存在する。いくつかの実施形態において、第1の治療薬は、放出不可能な金属酸化物の複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。放出可能な金属酸化物からなる第2のコーティング組成物は、第1のコーティング組成物の少なくとも一部に施される。この第2のコーティング組成物は、治療薬を含むこともできる。いくつかの実施形態では、第1のコーティング組成物の放出不可能な金属酸化物は、放出可能な金属酸化物からなる組成物を表面に施すことによって形成される。放出可能な金属酸化物は、放出不可能な金属酸化物を形成するために熱源に曝される。
【0057】
他の実施形態では、埋め込み型コーティング医療器具を製作する方法は、表面を有する基材を備える、ステントなどの埋め込み型医療器具を形成することからなる。基材は、放出不可能な金属酸化物を含み、複数の微細孔を備える。いくつかの実施形態において、第1の治療薬は、複数の微細孔のうちの少なくとも一部の微細孔の中に配置され得る。合成ポリマーを含まないか、または放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まないコーティングが、基材の表面上に形成される。コーティングは、コーティング組成物を表面の少なくとも一部に施すことによって調製され、このコーティング組成物は、放出可能な金属酸化物を含み、またいくつかの場合においては、治療薬をも含む。
【0058】
例えば、本明細書で説明されている方法は、基材および表面を有する埋め込み可能なステントを形成することと、コーティング組成物を表面の少なくとも一部に施すことによって基材の表面上にコーティングを形成することとを含む埋め込み型コーティング・ステントを製作する方法を含む。基材は、中に複数の微細孔を有する放出不可能な金属酸化物であり、コーティング組成物は、パクリタキセル、ならびに酸化チタンと酢酸塩の付加体を含む放出可能な金属酸化物を含む。それに加えて、コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない。
【0059】
さらに他の実施形態では、埋め込み型コーティング・ステントを製作する方法は、表面を有する基材を備える埋め込み可能なステントを形成することと、放出可能な金属酸化物の一部でない合成ポリマーを含まないコーティングを表面の少なくとも一部に形成することと、からなる。コーティングを形成することは、放出可能な金属酸化物の溶液または懸濁液を表面の少なくとも一部に塗布する工程と、第1のコーティング組成物を表面の少なくとも一部に形成するためにステントを熱源に曝す工程と、第2のコーティング組成物を第1のコーティング組成物の少なくとも一部の上に施す工程とを含む。金属酸化物の溶液または懸濁液は、酸化チタンと酢酸塩の付加体を含むことができる。第1のコーティング組成物は、酸化チタンからなる放出不可能な金属酸化物であり、複数の微細孔が、放出不可能な金属酸化物中にある。これに加えて、第2のコーティング組成物は、パクリタキセル、および酸化チタンと酢酸塩の付加体からなる放出可能な金属酸化物を含む。
(多孔質基材の作製)
基材の微細孔は、限定はしないが、焼結、共蒸着、マイクロラフィング、レーザー切断、ドリル穴開け、化学エッチング、またはこれらの組合せを含む、当業者に知られている任意の方法によって形成することができる。例えば、多孔質構造は、蒸着条件に調整を加えたスパッタリングなどの蒸着工程、反応性プラズマを使用したマイクロラフィング、イオン衝撃、電解質エッチング、またはこれらの組合せによって形成され得る。他の方法としては、限定はしないが、合金メッキ、物理的気相蒸着法、化学的気相蒸着法、焼結、またはこれらの組合せが挙げられる。
【0060】
これに加えて、微細孔は、基材を形成するために使用される放出不可能な金属酸化物からスペーサー基などの二次材料を除去することによって形成できる。特に、基材は、放出不可能な金属酸化物および二次材料を含む組成物から形成される。その後、二次材料が除去される。二次材料を除去する技術は、限定はしないが、脱合金または陽極酸化処理工程、あるいはベーキングまたは加熱による二次材料の除去を含む。二次材料は、放出不可能な金属酸化物から除去できる限りどのような材料であってもよい。例えば、二次材料は、放出不可能な金属酸化物に比べて電気化学的活性がより強いものとすることができる。また、スペーサー基または二次材料は、上述のような放出可能な金属酸化物に結合されている有機基であってもよい。
【0061】
治療薬が微細孔内に配置される実施形態では、治療薬は、限定はしないが、ディッピング、スプレー・コーティング、スピンコーティング、プラズマ蒸着、凝縮、電気化学的方法、静電気を用いた方法、蒸発、プラズマ気相蒸着、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、流動床の使用、またはこれらの組合せを含む当業者に知られている方法によって基材の微細孔内に分散され得る。治療薬を基材の微細孔内に分散させるのに適した方法は、好ましくは、治療薬の治療特性を変化させたり、または治療薬の治療特性に悪影響を及ぼしたりしない。治療薬を微細孔内に配置させやすくするために、治療薬を溶媒もしくは担体を含む溶液もしくは懸濁液中に入れるとよい。例えば、治療薬を含む溶液を形成し、医療器具をその溶液中に浸漬し、治療薬を微細孔内に配置することができる。
(コーティング組成物の使用)
コーティング組成物は、好ましくは、所望の成分を含む溶液もしくは懸濁液を施すことによって形成される。例えば、放出可能な金属酸化物を含むコーティング組成物を形成するために、そのような酸化物を溶媒中に溶解もしくは懸濁させることが可能である。好適な溶媒としては、限定はしないが、メタノール、水、アセトン、エタノン、ブタノン、およびTHFが挙げられる。溶液もしくは懸濁液は、治療薬を含むこともできる。
【0062】
これらの溶液もしくは懸濁液は、限定はしないがディッピング、従来のノズルまたは超音波ノズルなどによる噴霧、ラミネート加工、加圧、刷毛塗り、スワッビング、ディッピング、圧延、静電沈着、塗装、電気メッキ、蒸発、プラズマ気相蒸着、エアー・サスペンションなどのバッチ法、パン・コーティングまたは超音波ミスト噴霧、陰極アーク蒸着、スパッタリング、イオン注入、静電気を使用した方法、電気メッキ、電気化学的方法、および生体分子を表面に固定化する化学的方法、またはこれらの組合せを含む、当業者に知られている方法によって基材の表面または他のコーティング組成物の少なくとも一部に塗布され得る。好ましくは、コーティング組成物は、噴霧、ディッピング、ラミネート加工、加圧、またはこれらの組合せによって施される。
(複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなるコーティング組成物の調製)
上述のように、コーティング組成物は、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなるものとすることができる。放出不可能な金属酸化物中の微細孔は、限定はしないが、基材を形成するために使用される放出不可能な金属酸化物中の微細孔の形成と関連して上で説明されている方法を含む当業者に知られている任意の方法によって形成できる。例えば、微細孔は、コーティング組成物中の放出不可能な金属酸化物からスペーサー基などの二次材料を除去することによって形成され得る。特に、コーティング組成物は、金属酸化物と二次材料とを含む。コーティング組成物が基材または他のコーティング組成物に施された後、二次材料が除去されて、金属酸化物中に微細孔が形成される。他の実施形態では、微細孔は、金属酸化物が医療器具の表面または他のコーティング組成物に施されるときに形成され得る。
【0063】
1実施形態では、複数の微細孔を有する放出不可能な金属酸化物は、放出可能な金属酸化物の溶液または懸濁液を使用することによって形成される。溶液または懸濁液が表面またはコーティング組成物に施され、次いで、熱源もしくはエネルギー源に曝され、複数の微細孔を有する放出不可能な金属酸化物が形成される。いくつかの実施形態では、表面またはコーティング組成物に施された溶液または懸濁液は、最大約900℃まで加熱されるが、それよりも低い温度も、必要なアニーリングもしくは空隙率もしくは結晶相の程度または除去されるスペーサー基の種類に応じて使用できる。また、いくつかの場合において、放出可能な金属酸化物が金属酸化物と有機基との付加体である場合、熱源もしくはエネルギー源への曝露は、有機基の除去に十分であり、その結果、微細孔が形成される。使用される有機基の種類を変えることによって、微細孔のサイズを変えることができる。さらに、基材の微細孔内に治療薬を配置することに関連して上で説明されている方法により、治療薬が微細孔内に配置され得る。
【0064】
以下の実施例は、例示することを目的としており、制限することを目的としていない。
【実施例1】
【0065】
以下の表1で説明されているように、9つのステンレス鋼切り取り試片を作製した。
【0066】
【表1】
国際公開第2005/049520号で説明されている方法に従って、チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩を調製した。可溶性のTiO2/TFA材料をパクリタキセルのエタノール溶液と1:1の割合で反応させることによってパクリタキセル:TiO2/TFAの50:50(w/w)溶液を調製し、表面誘導体化酸化チタン(IV)パクリタキセル材料を固体状態で単離し、ブタノン中に再溶解させた(固形物10%/ブタノン90%)。他の溶媒も潜在的に使用可能である。
【0067】
コーティングされた切り取り試片をpH7.4の0.05%(w/v)のツイン20で食塩緩衝液中に留置した。UVによるHPLC検出を使用して、時間の経過とともにそれぞれの切り取り試片から緩衝溶液中に放出されるパクリタキセルの量を測定した。下の表2は、時間の経過とともにそれぞれの切り取り試片から放出されるパクリタキセルの量を示している。
【0068】
図6A〜6Bは、時間の経過とともに切り取り試片のそれぞれから放出されるパクリタキセルの量のグラフである。
【0069】
【表2】
【実施例2】
【0070】
コーティングを伴うステントは、以下のように作製できる。酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩のブタノン溶液組成物(例えば、コーティング1回につき100g/L、0.3cm3)をスピンコーティングすることができる(例えば、約500rpmから約3000rpmの回転速度)。この組成物が上に配置されているステントを、800℃で、またはそれより低い温度で、2時間かけてアニールする。その後、ステントを室温で60時間かけてパクリタキセルの1%エタノール溶液中に浸すことができる。次いで、ステントを外気中で乾燥させることができる。その後、ステントを50:50(w/w)の酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸とパクリタキセルのブタノン溶液(例えば、TiO2/TFA 0.5g、パクリタキセル0.5g、ブタノン5cm3)でコーティングし、コーティングを形成できる。
【実施例3】
【0071】
コーティングを伴うステントは、以下のように作製できる。酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩のブタノン溶液組成物(例えば、コーティング1回につき100g/L、0.3cm3)をスピンコーティングすることができる(例えば、約500rpmから約3000rpmの回転速度)。この組成物が上に配置されているステントを、800℃で、またはそれより低い温度で、2時間かけてアニールする。次いで、ステントを、スピンコーティング(例えば、約500rpmから3000rpmの回転速度)を使用して、パクリタキセル:TiO2/TFA=50:50(w/w)のブタノン溶液(例えば、ブタノン5cm3中パクリタキセル0.5g、TiO2/TFA0.5gで、0.3cm3溶液)によりコーティングする。次いで、ステントを2時間かけて70℃に加熱し、コーティングを形成することができる。
【実施例4】
【0072】
コーティングを伴うステントは、以下のように作製できる。酸化チタン(IV)トリフルオロ酢酸塩のブタノン溶液組成物(例えば、コーティング1回につき100g/L、0.3cm3)をスピンコーティングすることができる(例えば、約500rpmから約3000rpmの回転速度)。この組成物が上に配置されているステントを、270℃で2時間かけてアニールする。次いで、ステントを、スピンコーティング(例えば、約500rpmから3000rpmの回転速度)を使用して、パクリタキセル:TiO2/TFA=50:50(w/w)のブタノン溶液(例えば、ブタノン5cm3中パクリタキセル0.5g、TiO2/TFA 0.5gで、0.3cm3溶液)によりコーティングする。次いで、ステントを2時間かけて70℃に加熱し、コーティングを形成することができる。ステントは、限定はしないが、ローラー・コーティング、浸漬コーティング、およびスプレー・コーティングなどのさまざまな技術を使用してコーティングできることに留意すべきである。また、乾燥速度を変える必要がある場合には、沸点の高い、または低い他の溶媒を使用することもできる。
【0073】
本明細書に記載した説明は、いくつかの実施形態の個別の態様の単一の例示として意図されている説明されている特定の実施形態により範囲を制限されないものとする。本明細書で説明されている方法、組成物、および器具は、単独で、または本明細書で説明されている他の(複数の)特徴と組み合わせて、本明細書で説明されている特徴を備えることができる。実際、本明細書に示され、説明されているものに加えて、さまざまな修正形態が、当業者にとって通常の実験だけで前記の説明および付属の図面から明らかになるであろう。このような修正形態および同等の形態は、付属の請求項の範囲内にあることが意図されている。
【0074】
本明細書で言及されているすべての刊行物、特許、および特許出願は、それぞれの個別の刊行物、特許、または特許出願が、本願明細書に援用されることが具体的にまた個別に指示されている場合と同じ程度にその全体が本願明細書に援用される。本明細書でなされている参照の引用または説明は、そのような参照が従来技術のものであることを認めたと解釈されないものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)第1の放出可能な金属酸化物および第1の治療薬からなる前記表面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物を含み、かつ、前記表面の少なくとも一部に配置されているコーティングとを備え、該コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項2】
前記コーティングは、前記放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まない請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記放出可能な金属酸化物は、金属酸化物と有機基との付加体からなる請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記付加体の前記金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化イリジウムのいずれか一方を含む請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記付加体の前記有機基は、酢酸塩、リン酸塩およびポリエチレングリコールのいずれかを含む請求項3に記載のステント。
【請求項6】
前記付加体の前記金属酸化物は酸化チタンを含み、前記付加体の前記有機基は酢酸塩を含む請求項3に記載のステント。
【請求項7】
前記付加体は、前記金属酸化物および前記有機基のいずれか一方に水素結合されている第2の治療薬をさらに含む請求項3に記載のステント。
【請求項8】
前記第1の治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記第1の治療薬は、平滑筋細胞増殖を阻害する抗増殖剤を含む請求項1に記載のステント。
【請求項10】
前記第1の治療薬は、パクリタキセルを含む請求項1に記載のステント。
【請求項11】
前記第1の治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムスおよびエベロリムスのいずれかを含む請求項1に記載のステント。
【請求項12】
前記コーティングは、第2の放出可能な金属酸化物からなる、前記表面上に配置された第2のコーティング組成物をさらに含み、該第2のコーティング組成物は、前記表面と前記第1のコーティング組成物との間に配置される請求項1に記載のステント。
【請求項13】
前記第1および第2の放出可能な金属酸化物は、同じである請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記第2のコーティング組成物は、前記表面上に配置されるときに治療薬を含まない請求項12に記載のステント。
【請求項15】
前記第2のコーティング組成物は、第2の治療薬を含む請求項12に記載のステント。
【請求項16】
前記第1のコーティング組成物は、約1マイクロメートルから約30マイクロメートルの厚さを有する層の形態をなす請求項1に記載のステント。
【請求項17】
前記基材は、複数のストラットおよび開口部を中に備えるステント側壁構造を含む請求項1に記載のステント。
【請求項18】
前記コーティングは、前記開口部が保たれるように前記ステント側壁の形状に適合する請求項17に記載のステント。
【請求項19】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)前記表面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)パクリタキセルと、酸化チタンおよび酢酸塩の付加体からなる第1の放出可能な金属酸化物とを含み、かつ、前記表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記付加体からなり、かつ、前記表面上に配置されるときに治療薬を含まない、前記表面と前記第1のコーティング組成物との間に配置される第2のコーティング組成物と、からなるコーティングとを備え、
該コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項20】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)前記表面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる、前記表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物の少なくとも一部に配置される放出可能な金属酸化物からなる第2のコーティング組成物と、からなるコーティングとを備え、
該コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項21】
前記コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まない請求項20に記載のステント。
【請求項22】
前記放出不可能な金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化イリジウムのいずれか一方を含む請求項20に記載のステント。
【請求項23】
前記放出可能な金属酸化物は、金属酸化物と有機基との付加体からなる請求項20に記載のステント。
【請求項24】
前記付加体の金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化イリジウムのいずれか一方を含む請求項23に記載のステント。
【請求項25】
前記付加体の有機基は、酢酸塩、リン酸塩、およびポリエチレングリコールのいずれかを含む請求項23に記載のステント。
【請求項26】
前記付加体の金属酸化物は、酸化チタンからなり、前記付加体の有機基は、酢酸塩からなる請求項23に記載のステント。
【請求項27】
前記付加体は、前記金属酸化物および前記有機基のいずれか一方に水素結合されている治療薬をさらに含む請求項23に記載のステント。
【請求項28】
前記放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置される治療薬をさらに含む請求項20に記載のステント。
【請求項29】
前記微細孔は、前記第2のコーティング組成物が前記第1のコーティング組成物上に配置される前は、治療薬を含まない請求項20に記載のステント。
【請求項30】
前記第2のコーティング組成物は、治療薬をさらに含む請求項20に記載のステント。
【請求項31】
前記第2のコーティング組成物は、治療薬を含まない請求項20に記載のステント。
【請求項32】
前記放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置される第1の治療薬をさらに含み、前記第2のコーティング組成物は、第2の治療薬をさらに含む請求項20に記載のステント。
【請求項33】
前記第1および第2の治療薬は、同じである請求項32に記載のステント。
【請求項34】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項30に記載のステント。
【請求項35】
前記治療薬は、平滑筋細胞増殖を阻害する抗増殖剤を含む請求項30に記載のステント。
【請求項36】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項30に記載のステント。
【請求項37】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムスおよびエベロリムスのいずれかを含む請求項30に記載のステント。
【請求項38】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項28に記載のステント。
【請求項39】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)前記表面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)酸化チタンを含み、かつ、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる、前記表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置されているパクリタキセルと、
(iii)パクリタキセルと、前記第1のコーティング組成物の少なくとも一部に配置される、酸化チタンおよび酢酸塩の付加体からなる放出可能な金属酸化物とを含む第2のコーティング組成物と、からなるコーティングとを備え、
前記コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項1】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)第1の放出可能な金属酸化物および第1の治療薬からなる前記表面の少なくとも一部に配置された第1のコーティング組成物を含み、かつ、前記表面の少なくとも一部に配置されているコーティングとを備え、該コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項2】
前記コーティングは、前記放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まない請求項1に記載のステント。
【請求項3】
前記放出可能な金属酸化物は、金属酸化物と有機基との付加体からなる請求項1に記載のステント。
【請求項4】
前記付加体の前記金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化イリジウムのいずれか一方を含む請求項3に記載のステント。
【請求項5】
前記付加体の前記有機基は、酢酸塩、リン酸塩およびポリエチレングリコールのいずれかを含む請求項3に記載のステント。
【請求項6】
前記付加体の前記金属酸化物は酸化チタンを含み、前記付加体の前記有機基は酢酸塩を含む請求項3に記載のステント。
【請求項7】
前記付加体は、前記金属酸化物および前記有機基のいずれか一方に水素結合されている第2の治療薬をさらに含む請求項3に記載のステント。
【請求項8】
前記第1の治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項1に記載のステント。
【請求項9】
前記第1の治療薬は、平滑筋細胞増殖を阻害する抗増殖剤を含む請求項1に記載のステント。
【請求項10】
前記第1の治療薬は、パクリタキセルを含む請求項1に記載のステント。
【請求項11】
前記第1の治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムスおよびエベロリムスのいずれかを含む請求項1に記載のステント。
【請求項12】
前記コーティングは、第2の放出可能な金属酸化物からなる、前記表面上に配置された第2のコーティング組成物をさらに含み、該第2のコーティング組成物は、前記表面と前記第1のコーティング組成物との間に配置される請求項1に記載のステント。
【請求項13】
前記第1および第2の放出可能な金属酸化物は、同じである請求項12に記載のステント。
【請求項14】
前記第2のコーティング組成物は、前記表面上に配置されるときに治療薬を含まない請求項12に記載のステント。
【請求項15】
前記第2のコーティング組成物は、第2の治療薬を含む請求項12に記載のステント。
【請求項16】
前記第1のコーティング組成物は、約1マイクロメートルから約30マイクロメートルの厚さを有する層の形態をなす請求項1に記載のステント。
【請求項17】
前記基材は、複数のストラットおよび開口部を中に備えるステント側壁構造を含む請求項1に記載のステント。
【請求項18】
前記コーティングは、前記開口部が保たれるように前記ステント側壁の形状に適合する請求項17に記載のステント。
【請求項19】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)前記表面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)パクリタキセルと、酸化チタンおよび酢酸塩の付加体からなる第1の放出可能な金属酸化物とを含み、かつ、前記表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記付加体からなり、かつ、前記表面上に配置されるときに治療薬を含まない、前記表面と前記第1のコーティング組成物との間に配置される第2のコーティング組成物と、からなるコーティングとを備え、
該コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項20】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)前記表面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる、前記表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記第1のコーティング組成物の少なくとも一部に配置される放出可能な金属酸化物からなる第2のコーティング組成物と、からなるコーティングとを備え、
該コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【請求項21】
前記コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではないポリマーを含まない請求項20に記載のステント。
【請求項22】
前記放出不可能な金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化イリジウムのいずれか一方を含む請求項20に記載のステント。
【請求項23】
前記放出可能な金属酸化物は、金属酸化物と有機基との付加体からなる請求項20に記載のステント。
【請求項24】
前記付加体の金属酸化物は、酸化チタンおよび酸化イリジウムのいずれか一方を含む請求項23に記載のステント。
【請求項25】
前記付加体の有機基は、酢酸塩、リン酸塩、およびポリエチレングリコールのいずれかを含む請求項23に記載のステント。
【請求項26】
前記付加体の金属酸化物は、酸化チタンからなり、前記付加体の有機基は、酢酸塩からなる請求項23に記載のステント。
【請求項27】
前記付加体は、前記金属酸化物および前記有機基のいずれか一方に水素結合されている治療薬をさらに含む請求項23に記載のステント。
【請求項28】
前記放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置される治療薬をさらに含む請求項20に記載のステント。
【請求項29】
前記微細孔は、前記第2のコーティング組成物が前記第1のコーティング組成物上に配置される前は、治療薬を含まない請求項20に記載のステント。
【請求項30】
前記第2のコーティング組成物は、治療薬をさらに含む請求項20に記載のステント。
【請求項31】
前記第2のコーティング組成物は、治療薬を含まない請求項20に記載のステント。
【請求項32】
前記放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置される第1の治療薬をさらに含み、前記第2のコーティング組成物は、第2の治療薬をさらに含む請求項20に記載のステント。
【請求項33】
前記第1および第2の治療薬は、同じである請求項32に記載のステント。
【請求項34】
前記治療薬は、抗血栓症薬、血管新生阻害薬、抗増殖剤、抗生物質、抗再狭窄剤、増殖因子、免疫抑制剤および放射化学薬剤のいずれかを含む請求項30に記載のステント。
【請求項35】
前記治療薬は、平滑筋細胞増殖を阻害する抗増殖剤を含む請求項30に記載のステント。
【請求項36】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項30に記載のステント。
【請求項37】
前記治療薬は、シロリムス、タクロリムス、ピメクロリムス、ゾタロリムスおよびエベロリムスのいずれかを含む請求項30に記載のステント。
【請求項38】
前記治療薬は、パクリタキセルを含む請求項28に記載のステント。
【請求項39】
埋め込み型コーティング・ステントであって、
(a)表面を有する基材と、
(b)前記表面の少なくとも一部に配置されるコーティングであって、
(i)酸化チタンを含み、かつ、複数の微細孔を中に有する放出不可能な金属酸化物からなる、前記表面の少なくとも一部に配置される第1のコーティング組成物と、
(ii)前記放出不可能な金属酸化物の微細孔内に配置されているパクリタキセルと、
(iii)パクリタキセルと、前記第1のコーティング組成物の少なくとも一部に配置される、酸化チタンおよび酢酸塩の付加体からなる放出可能な金属酸化物とを含む第2のコーティング組成物と、からなるコーティングとを備え、
前記コーティングは、放出可能な金属酸化物の一部ではない合成ポリマーを含まない、埋め込み型コーティング・ステント。
【図1A】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【公表番号】特表2010−534109(P2010−534109A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518211(P2010−518211)
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/008901
【国際公開番号】WO2009/014696
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月22日(2008.7.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/008901
【国際公開番号】WO2009/014696
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]