説明

治療薬デリバリー用ドラッグ放出生分解性繊維

【課題】治療薬のデリバリーに使用される薬物放出生分解性繊維の提供。
【解決手段】少なくとも一の繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
関連出願とのクロスリファレンス
この出願は、1999年8月6日出願の米国仮出願第60/147827号の優先権を主張して2000年8月4日に出願した出願第09/632457号の一部継続である。
【0002】
発明の背景
1.発明の分野
この発明は医薬品及び組織工学の分野に係り、特に治療薬のデリバリーに使用される薬物放出生分解性繊維に関する。
【0003】
2.関連技術の説明
組織工学は、動物又はヒトにおける傷害、疾患又は先天異常の結果として失われた細胞を補充するのに生細胞を使用する学問分野である。これらの補充細胞は自家、同種間又は異種間でありうる。組織工学の分野は医学の新しい分野であり、最適な手順がまだ解明されなければならない。
【0004】
現在、組織の設計には幾つかの手段がある。一つの手段は、健康なドナー、好ましくは同じ個体から、又は少なくとも同じ種の適切なドナーから細胞を収集し、その細胞をインビトロでスカフォールド(足場)上で成長させることである。このスカフォールドは、典型的には、しばしば生分解性繊維から構成された三次元ポリマー網目構造である。ポリマー網目構造に付着した細胞をついで典型的には増殖するように誘導される。この細胞を満たしたスカフォールドを、細胞がその生理学的機能を実施して、宿主免疫系による破壊を避ける目的で障害を被った宿主中に移植することができる。このためには、非自己免疫細胞の導入は強い宿主免疫攻撃をアップレギュレートしうるので、精製された細胞系統を用いることが重要である。このアプローチ法の困難な点は、酸素及び栄養素の供給源から数ミリ以上離れて細胞は生存することができないので、スカフォールドは小さくなければならないことである。従って、大きなスカフォールドは、スカフォールドが内部領域の細胞を救うのに十分に遅れないで血管新生化することにならないので、使用することができない。
【0005】
他のアプローチ法では、宿主の身体からの細胞の正しい型を誘導してポリマースカフォールド中に移入させる目的で、空で三次元の生分解性ポリマーを患者に直接移植する。利点は、血管新生がマトリックス中への細胞の移入と同時に血管新生が起こりえることである。主要な問題は、適切な細胞型スカフォールド中に確実に移入せしめ、患者の生理学的必要性をもたらすために機械的及び生物学的性質を維持する方法が現在は存在しないことである。
【0006】
上記のアプローチ法の双方において、スカフォールドは生分解性であり得、これは、経時的にそれが化学的かつ機械的に崩壊されることを意味する。この崩壊が生じると、細胞はそれ自身の細胞外マトリックスを分泌し、それが細胞生存と機能に重要な役割を果たしている。正常組織では、組織の構成細胞とそれを囲む細胞外マトリックスの間で活性で動的な相互の交換がある。細胞外マトリックスは細胞の形態学的性質と表現型特色を調節する化学的シグナルを提供し、分裂、分化又は更には細胞死を誘導しうる。加えて、細胞はまた細胞外マトリックスを常に再編成している。細胞は細胞外マトリックスを分解しまた再構築し、それ自身によって又はその領域に移入しうる他の細胞によって後で使用されることになるマトリックス中に化学物質を分泌する。細胞外マトリックスは発生学的環境における最も重要な成分の一つであることがまた発見されている。先駆細胞は従う細胞が適切な最終表現型に分化することを助ける化学的シグナルを分泌する。例えば、そのような化学的シグナルは神経冠細胞の軸索、平滑筋細胞又はニューロンへの分化を引き起こす。
【0007】
細胞外マトリックスと組織細胞間の総合関係は細胞外マトリックスが組織工学における重要なパラメータであることを確証する。細胞が特定の形で挙動することが望まれる場合、細胞外マトリックスはその細胞型に対してその挙動を誘導するために適切な環境と適切な化学的/生物学的シグナルを提供しなければならない。現在、生物学的に活性な細胞外マトリックスを忠実に再生することはできない。従って、ある研究者等は外因性マトリックスが分解すると細胞がそれ自身の細胞外マトリックスをつくり出すようにする生分解性マトリックスを使用している。
【0008】
組織工学に対する上述のアプローチ法において、ポリマースカフォールドは機械的支持体ばかりでなく、新しい組織又は器官に望まれる三次元形状もまた提供する。細胞は生存し機能するためには酸素と栄養素の供給源の近くになければならないので、主要な現在の制約は血液供給の制約である。最も新しい方法はポリマーマトリックス中へまたその全体にわたって血管を導入することを活発に補助する特定の手段を提供しない。これはポリマーマトリックスの物理的サイズと形状に制約を与える。広く臨床的に使用されるようになっている現在唯一の組織工学装置(デバイス)は人工皮膚であり、これは当然、限られた厚みのものである。本発明は、設計された細胞外マトリックス中への適切な細胞型の定方向移入を促進する構成体と方法を提供する。特異的な三次元細胞遊走及び機能パターンを方向付けることによって、定方向血管新生を誘導することができ、これはポリマー移植片の形状とサイズに対する現在の制約を解消する。またそれは、適切な細胞型がマトリックス内の特定の位置に物理的に位置することを確かなものにする。構成体と方法は表現型の発現を時間と空間の双方の関数として調節するために提供される。
【0009】
ポリマー薬物充填ビヒクルからのドラッグデリバリーの殆どは次の形態に基づいている:ミクロスフィア、ナノ粒子、フォーム、フィルム、リポソーム、ポリマーミセル、又はウイルスパッケージである。上述の形態には多くの固有の欠点がある。上述のドラッグデリバリー形態の幾つかは、移植後に所定位置に残らない。その結果、移植片の修復は移植片への有害反応の場合は可能ではない。また、これらの形態は単位容積当たり高い表面積を示し、これは速やかな薬物放出時間に至り、これはドラッグデリバリーの目標に相反する特徴である。更に、上述の形態中に充填することができる薬剤量は些か制約を受ける。これらの形態の幾つかは、ドラッグデリバリーに加えて機械的支持をまた必要とする条件では使用することができない。
【0010】
本発明は従来技術において知られているドラッグデリバリー形態の不具合を有していない繊維構成体を提供する。
【0011】
発明の概要
本発明はゲル又はヒドロゲルを含む繊維構成体に関する。本発明は更にゲル又はヒドロゲルを充填した生分解性繊維の構成体及びそのような繊維を製造する方法に関する本発明は更に細胞の成長のための三次元マトリックスがインビトロ及びインビボ用途のために調製される組織工学及びドラッグデリバリー構成体及び方法を提供する。本発明はまた双方の生分解性ポリマー特性を変え並びに導入されたゲル又はヒドロゲルの特性を改変することによって治療剤の放出速度を操作する方法に関する。
【0012】
本発明の一実施態様は、少なくとも一の繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体を提供する。本発明の他の実施態様は、繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材が水であり、更に上記水が内方コアとして存在する構成体を提供する。本発明の更なる実施態様は、繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が本質的にゲル又はヒドロゲルからなるエマルションを含む構成体を提供する。本発明の一実施態様は、繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材を含み、上記第一構成材がゲル又はヒドロゲルであり、更に上記繊維が中空孔部を含む構成体を提供する。本発明の一実施態様は、一又は複数の繊維を含むスカフォールド構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体を提供する。本発明の実施態様は、また本発明の繊維の製造方法を提供する。
【0013】
例示的実施態様の説明
本発明の一実施態様は、少なくとも一の繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体を提供する。本発明の他の実施態様は、繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材が水であり、更に上記水が内方コアとして存在する構成体を提供する。本発明の更なる実施態様は、繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が本質的にゲル又はヒドロゲルからなるエマルションを含む構成体を提供する。本発明の一実施態様は、繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材を含み、上記第一構成材がゲル又はヒドロゲルであり、更に上記繊維が中空孔部を含む構成体を提供する。本発明の一実施態様は、一又は複数の繊維を含むスカフォールド構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体を提供する。本発明の実施態様は、また本発明の繊維の製造方法を提供する。
【0014】
本発明の一実施態様は、繊維の内方孔部、つまり繊維の内径側にゲル又はヒドロゲルを含み、繊維の外壁は生分解性ポリマーを含む二構成材繊維を提供する。ここで使用される「ゲル」という用語は少なくとも一相が弾性固体として作用する連続した三次元網目構造を形成する少なくとも二相を有するコロイド系を意味する。ここで使用される「ヒドロゲル」という用語は、分散した相(コロイド)が連続相(水)と組み合わされて粘性ゼリー状生成物をつくり出すコロイドを意味する。
本発明の他の実施態様は、上記の逆のもの、つまり外壁がゲル又はヒドロゲルを含み、内方孔部が生分解性ポリマー繊維を含むものを提供する。
本発明の他の実施態様は、ヒドロゲル又はゲルが生分解性ポリマー層の全体に無作為に分散しているモノフィラメント繊維を提供する。この構造は、生分解性ポリマー繊維が連続相を構成し、ゲル又はヒドロゲルが分散相を構成する明確な相分離を生じる。ここで使用される「連続相」とは、固体が懸濁し又は他の液体の液滴が分散している分散系中の液体を意味する。ここで用いられる「分散相」は、他の系の全体に分散した一の系の粒子又は液滴からなる分散系の相を意味する。
【0015】
ある実施態様では、ゲル又はヒドロゲル濃度がゼロの場合、水-孔部繊維、つまり繊維の内径側に水が存在している繊維が提供される。この場合、他の物質と組み合わせてもよい水は繊維の内方コアを構成し、生分解性ポリマー繊維は繊維の囲撓シースを構成する。他の実施態様では、生分解性ポリマー繊維シースはゲル又はヒドロゲルの分散物を含んでなる。他の実施態様では、生分解性ポリマー繊維シースはゲル又はヒドロゲルの代わりに水の分散物を含んでなる。他の実施態様では、生分解性ポリマー繊維シースはゲル及びヒドロゲルの分散物と共に水の分散物を含んでなる。
本発明の一実施態様では、上述した繊維は同様の構成体の繊維と組み合わせられる。他の実施態様では、異なるタイプの繊維と構成体が組み合わされる。
【0016】
一実施態様では、治療薬が、個々に又は組み合わせて存在する上述の繊維の一又は複数に導入される。他の実施態様では、薬剤が、個々に又は組み合わせて存在する上述の繊維の一又は複数に導入される。
本発明のある実施態様では、繊維の層は隣接する内方繊維に外接する。内方繊維は外方繊維内にほぼ中心を置く。ある実施態様では、外接繊維の層の一又は複数は繊維の壁部又は繊維の孔部にヒドロゲル又はゲルを含む。更なる実施態様では、ゲル又はヒドロゲルが繊維の一又は複数の層の生分解性ポリマー内に分散相として取り込まれる。本発明の更なる実施態様は、各層がゲル、ヒドロゲル及び治療剤の様々な組成物を含む多層繊維を提供する。本発明のある実施態様は、その一又は複数の層内に一種を越える治療剤を含む繊維を提供する。
【0017】
本発明は更に双方の生分解性ポリマー特性を変え並びに導入されたゲル又はヒドロゲルの特性を改変することによって治療剤の放出速度を操作する方法に関する。治療剤が充填された繊維は、治療剤デリバリービヒクルとして使用される単一のストランドとして、又は組織工学、創傷治癒、再生医療、又は他の医学関連用途に使用するための繊維ベースのスカフォールドの形成のための、(同様のタイプか異なったタイプの)他の繊維と一緒に動物又はより好ましくはヒトに移植するのに適している。これら繊維はまた細胞培養、組織培養、又はインビトロ器官形成のためのスカフォールドをつくるために体の外で使用することもでき、これらの繊維の特定の三次元構造は、また、複合三次元スカフォールドの形成のために織り、編み、束ね、不織網として使用され、又は平行、非平行の捻れた又は無作為のアレイとして維持されうる。上記繊維スカフォールド内の各繊維には異なった治療剤が充填され、それぞれが異なった放出速度特性を有しているかもしれないので、スカフォールドの特定の領域に特定の細胞成長を誘導することができる。これは、繊維スカフォールド内の特定の位置に特定の繊維をわざと配することによって複雑な三次元生物学的構造をつくり出す能力を提供する。これらの三次元生物学的構造はその設計が生物模倣型であるか又はそうではない場合がある。同じ手段によって、細胞培養、組織培養、又は同じ試料内の他のものよりもオルガノイドへ異なった治療剤を放出することができる。
【0018】
このタイプの複合三次元繊維スカフォールドはまた動物又はヒトに移植して、同じ繊維スカフォールド内の異なった位置に特定の生物学的応答を誘導することができる。これは、特定の治療剤及び特定の放出特性を備えた繊維がスカフォールド内の特定の位置に配されるように繊維スカフォールドを設計することにより達成される。これは繊維スカフォールドからの治療剤の時間的、空間的双方のデリバリー制御を可能にする。
本出願において「決められた非均一パターン」とは、スカフォールドマトリックス内の一又は複数の治療剤の所望の三次元分布が達成されるようにスカフォールドマトリックスに特定の繊維を導入することを意味する。繊維内、おそらくはその中心内における治療剤の分布はポリマー繊維からの薬剤の放出後にマトリックススカフォールドの間質媒質中の続く空間分布を制御する。このようにして、所望の濃度勾配の空間的輪郭を、三次元スカフォールド構造内及びスカフォールドマトリックスの直ぐ周囲につくり出すことができる。時間的分布は、繊維のポリマー組成及びゲル又はヒドロゲル組成と繊維内に多層を使用することにより制御される。
【0019】
本発明の一側面は、生分解性ポリマー繊維のスカフォールドを含む生体適合性移植構成体である。本発明の様々な実施態様では、繊維間の距離は約20ミクロン、約70ミクロン、約90ミクロン、約100ミクロン、約120ミクロン、約140ミクロン、約160ミクロン、約180ミクロン、約200ミクロン、約220ミクロン、約240ミクロン、約260ミクロン、約280ミクロン、約300ミクロン、約320ミクロン、約340ミクロン、約360ミクロン、約380ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン又は約500ミクロンでありうる。様々な実施態様では、繊維間の距離は50ミクロンより少ないか又は500ミクロンより多いものであってもよい。
また、本発明の様々な実施態様では、繊維は、約20ミクロン、約40ミクロン、約60ミクロン、約80ミクロン、約100ミクロン、約120ミクロン、約140ミクロン、約160ミクロン、約180ミクロン、約200ミクロン、約220ミクロン、約240ミクロン、約260ミクロン、約280ミクロン、約300ミクロン、約320ミクロン、約340ミクロン、約360ミクロン、約380ミクロン、約400ミクロン、約450ミクロン又は約500ミクロン(間の長さを含む)の直径を有することが考えられる。様々な実施態様では、繊維の直径は、約20ミクロンより少ないか又は約500ミクロンより多いものであってもよい。また、ある実施態様では3.5cmまでの直径の太い繊維が考えられる。好ましくは、繊維の直径は約60ミクロンから約500ミクロンである。
【0020】
本発明の他の実施態様では、繊維又は繊維群(繊維サブセット)は、治療剤又は治療剤群の濃度が繊維又は繊維群の長軸に沿って変わるように一又は複数の治療剤を含む。活性剤又は活性剤群の濃度は、繊維の長軸に沿って距離の関数として線形的、指数関数的、又は任意の所望の形で変わりうる。変動は一方向性であってもよい。つまり、一又は複数の治療剤の内容量が繊維又は繊維群の第一端から繊維又は繊維群の第二端に向けて減少してもよい。内容量はまた二方向で変化してもよい。つまり、治療剤又は治療剤群の内容量は繊維又は繊維群の第一端から最大まで増加した後、繊維又は繊維群の第二端に向けて減少してもよい。
【0021】
本発明のある実施態様では、スカフォールドを含む繊維群は治療剤を含んでいなくともよい。一又は複数の治療剤を含む繊維では、薬剤又は薬剤群は、成長因子、免疫調節薬、血管形成促進剤、血管形成阻害剤、抗炎症化合物、抗生物質、サイトカイン、抗凝固剤、凝血原、走化剤、アポトーシス促進剤、アポトーシス阻害剤、分裂促進薬、放射性薬剤、造影研究のための造影剤、ウイルスベクター、ポリヌクレオチド、治療用遺伝子、DNA、RNA、ポリペプチド、グリコサミノグリカン、炭水化物、糖タンパク質を含みうる。治療剤はまた血圧、ペーシング、抗不整脈、β遮断薬、及びカルシウムチャンネル系薬剤を含む循環器系薬剤のような長期維持のために患者に投与されるものを含みうる。本発明の治療剤はまた癲癇又は他の運動障害のための抗振戦及び他の薬剤を含みうる。これらの薬剤はまた長期間の医薬、例えば避妊薬及び受精薬を含みうる。それらは神経症薬剤、例えばドーパミン及び関連薬剤並びに心理学的又は他の行動性薬剤を含みうる。治療剤はまた化学的スカベンジャー、例えばキレート剤、抗酸化剤及び栄養剤を含みうる。治療剤が血管形成を促進する場合、その薬剤は血管内皮増殖因子でありうる。治療剤は合成又は天然の薬剤、タンパク質、DNA、RNA、又は細胞(遺伝的に改変された又はされていない)でありうる。明細書及び特許請求の範囲において使用する場合、長年の特許法実務に従って、「含む」又は「有する」と組み合わせて使用する「a」及び「an」という用語は一又は複数を意味する。
【0022】
一般に、本発明は本発明の生分解性ポリマー繊維に取り込まれた任意の薬剤の使用を考慮する。ここで使用される「薬剤」という語は、生物の生理を変更又は改変する、生物に投与可能な化学物質として定義される。より好ましくは、ここで使用される「薬剤」という語句は疾患の治療又は予防での使用を意図した任意の物質として定義される。薬剤には、合成及び天然に生じる毒素及び生体影響物質並びに認知されている医薬、例えば「The Physicians Desk Reference」471版, 101-321頁;「Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics」8版(1990), 84-1614及び1655-1715頁;及び「The United States Pharmacopeia, The NationalFormulary」, USP XXII NF XVII (1990)に挙げられているものが含まれ、これら文献の化合物は出典明示によりここに取り込まれる。「薬剤」という用語はまた米国ではまだ発見されていないか入手できない示された性質を持つ化合物を含む。「薬剤」という用語は、薬剤のプロ活性、活性化、及び代謝形態を含む。次のような組織刺激因子もまた含まれる:血小板由来成長因子(PDGF)の二量体、インスリン様成長因子-1(IGF-1)、IGF-2、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、酸性FGF、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、神経成長因子(NGF)、神経栄養因子3(NT-3)、神経栄養因子4(NT-4)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、上皮細胞成長因子(EGF)、インスリン、インターロイキン1(II-1)、腫瘍壊死因子α(TNFα)、結合組織成長因子(CTGF)、トランスフォーミング成長因子α(TGFα)、及び他の全ての成長因子及びサイトカイン、並びに副甲状腺ホルモン(PTH)、プロスタグランジン、例えばプロスタグランジンE-1及びプロスタグランジンE-2、マクロファージコロニー刺激因子(MCSF)、及びコルチコステロイド、例えばデキサメサゾン、プレドニゾロン、及びコルチコステロン。
【0023】
本発明はまた線維のコア内にヒドロゲル形成物質を入れたものの使用をまた考慮する。ヒドロゲルは高度に水和されている構造的に安定な、合成ポリマー又はバイオポリマーマトリックスである。これらの物質は水中でその重量の何千倍まで吸収しうる(Hoffman, A. S., Advanced Drug delivery Reviews, 43 (2000),3-12)。ヒドロゲルは二つの広い範疇に分類できる:可逆又は物理的なものと不可逆又は化学的なものである。物理的ゲルの網目構造は分子の絡み合い及び/又はイオン性、H結合又は疎水性力を含む二次的な力によって一緒に保たれる。物理的ヒドロゲルは温度、イオン濃度、及び希釈度の関数としてレオロジー特性の有意な変化を特徴とする。永久ゲルとも呼ばれる化学的ゲルは化学的に架橋した網目構造を特徴とする。架橋されると、これらのゲルは水溶液中において架橋密度に主に依存する平衡膨潤レベルに達する。
【0024】
ヒドロゲルの調製は当業者によく知られている様々な方法によって達成することができる。物理的ゲルは、ある種のポリマー溶液(例えば冷アガロース)を加熱又は冷却し、凍結融解サイクルを使用してポリマー微結晶を形成し、溶液pHを低減させて同じ水溶液中で二つの異なるポリマー間にH結合ゲルを形成し、ポリアニオン及びポリカチオンの溶液を混合して錯体コアセルベートゲルを形成し、反対の電荷の多価イオンを持つ高分子電解質溶液をゲル化し、線形ポリマーを網状化し、天然に生じる巨大分子へ合成ポリマーをグラフトさせ、ポリカチオンをキレート化することによって、形成することができる(Hoffman, A. S. , Advanced Drug delivery Reviews, 43 (2000), 3-12)。化学的ゲルは、放射線、グルタルアルデヒドのような化学的架橋剤、又は多官能性反応性化合物を用いて溶液中で又は固体状態でポリマーを架橋させることによって製造することができる。それらはまた溶液中でモノマーと架橋剤を共重合させ、モノマーと多官能性マクロマーを共重合させ、異なった固体ポリマー内でモノマーを重合させてIPNゲルを形成するか、又は疎水性ポリマーをヒドロゲルに化学的に転換することによって製造することもできる(Hoffman, A. S. , Advanced Drug delivery Reviews, 43(2000), 3-12);Hennick, W. F. 及びvan Nostrum, C. F. , Advanced Drug Delivery Reviews,54(2002), 13-26。
【0025】
本発明は繊維の孔部内におけるヒドロゲル前駆体物質及び非ゲル化タンパク質及び多糖類の使用を考慮する。ヒドロゲル前駆体物質はヒドロゲルを形成するものと同じ物質であるが、それらは通常は物質をゲル化する薬剤又は条件にはさらされないか、又はゲルを形成するがヒドロゲルを形成しない他のタンパク質及び多糖類でありうる。例えば、アルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウムが二価カチオン、例えばカルシウムの存在下でゲル化される一方、他の物質はpH又は温度の変化を介してヒドロゲルをつくる。本発明のある実施態様は決してゲル化しない前駆体物質の使用を含む。本発明の他の実施態様は、後でゲル又はヒドロゲルを形成しうる製造方法における前駆体物質の使用を含む。繊維層中でのゲル又はヒドロゲルの形成は、繊維製造プロセスの一部として、繊維を製造した後に、又は繊維をインビトロ又はインビボに配することを含む適切なタイプの外部刺激の適用後に生じうる。ここで使用される「ゲル」又は「ヒドロゲル」という用語は形成されたゲル又はヒドロゲル並びにゲル及びヒドロゲルの形成に関与する適切な前駆体分子を含むことを意図する。
【0026】
繊維の構築に使用される生分解性ポリマーは単一のポリマー又はコポリマー又はポリマー混合物であり得、ポリ(L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ無水物、又は天然ポリマー又はポリペプチド、例えば再構成されたコラーゲン又はクモの糸及び多糖類を含みうる。
本発明の繊維は湿式又は乾式/湿式(ドライジェットウェット)紡糸法を使用して製造する。各方法は構築されている繊維の最終の特性に影響を及ぼす。湿式紡糸法は、凝固剤を含み液体浴中にポリマー物質を押出すプロセスである。凝固剤は典型的にはポリマー溶液中で溶媒と混和性であるポリマーの非溶媒からなるが、それはまた溶媒/非溶媒混合物を含みうる。ドライジェットウェット紡糸法では、ポリマー溶液が.凝固浴に入る前に空気ギャップにさらされる。
【0027】
本発明の一実施態様では、繊維は生分解性ポリマーの服すの同軸層を含む。本発明のドラッグデリバリー繊維は皮膚組織、心臓組織、軟組織、神経、骨及び眼を含む体の多くの部位中に移植することができる。眼の移植は、白内障、糖尿病により誘導された増殖性網膜症及び非増殖性網膜症、緑内障、及び黄斑変性症の治療に特定の用途を有する。
本発明の更なる側面は、一又は複数の治療剤の空間的及び時間的濃度制御を可能にする移植片を調製するための繊維スカフォールドを製造する方法である。この方法は一般に生分解性ポリマー繊維を三次元繊維のスカフォールドに形成することを含む。治療剤又は治療剤群は決められた非均一パターンに繊維スカフォールド中に分配される。
本発明のある実施態様では、繊維層中に含まれるゲル及びヒドロゲルは無限希釈濃度で存在しうる;つまり、ゲル又はヒドロゲルの濃度はゼロであり、水は、ゲル又はヒドロゲルの代わりに、治療剤を含む他の物質及び/又は活性剤と共に又はそれらなしに使用される。
【0028】
この発明の一実施態様では、繊維の孔部に含まれるヒドロゲルのための好適な物質はアルギン酸塩又は修飾されたアルギン酸塩物質である。アルギン酸塩分子は、ポリマー鎖に沿って割合と逐次分布が変化する(1−4)結合-D-マンヌロン酸(M単位)及び(α-L-グルクロン酸(G単位)モノマーからなる。アルギン酸多糖類は、二価カチオン(例えばCa2+、Sr2+、Ba2+)に対して強い親和性を有し、これら分子にさらされると安定なヒドロゲルを形成する高分子電解質系である。生分解性ポリマーはポリ(L-乳酸)(PLLA)である。一実施態様では、アルギン酸塩は内方コアとして含まれ、PLLAは外方シースである。アルギン酸塩の濃度は、0.25w/v%から100w/v%(つまり、g/100m1水)の範囲、好ましくは0.75w/v%から20w/v%の範囲、最も好ましくは1w/v%の濃度である。アルギン酸塩の供給源と組成はその使用可能な濃度に直接影響を及ぼす。
【0029】
この本発明の他の実施態様では、内方ゲル又はヒドロゲルコアを囲撓するPLLAシースは分解速度を増大させる手段として異なった分子量のPLLAポリマーのカクテルを含む。PLLAポリマーの割合とポリマー分子量の範囲は変わりうる。例示的な実施態様では、ポリマーカクテルは80重量%のMw=100000ダルトンのPLLAポリマー;15重量%のMw=2000ダルトンのポリマー;及び5重量%のMw=300000ダルトンのポリマーを含む。
他の実施態様では、内方ゲル又はヒドロゲルコアを囲撓するPLLAシースは、生分解性ポリマーを含む連続相と界面活性剤によって安定化された水相を含む分散相の二相からなる。水相は場合によっては治療剤を含んでいてもよい。分散相の量は繊維の重量に対して約0重量%から約85重量%の範囲である。好適な実施態様では、分散相の量は繊維の重量に対して約33重量%から約50重量%の範囲である。分散相の比が増加すると、ポリマーの分解速度が増加する。これにより、充填した治療剤の放出速度が増大する。
【0030】
この発明の一実施態様では、ゲル又はヒドロゲルを分解するように設計された薬剤を(上述した)繊維の生分解性ポリマー成分の分散水相中に充填する。この薬剤はゲル又はヒドロゲル中に経時的にゆっくりと放出されて、ゲル又はヒドロゲルを破壊する。これにより治療剤の放出速度が増大する。また、潜在的なゲル及びヒドロゲルの多くは動物内、より特定的にはヒト内において直接的に生分解性ではない。従って、この計画された分解は、ゲル又はヒドロゲルを、それらがもはや必要でなくなると体が除去することを助ける。
【0031】
一実施態様では、アルギン酸塩溶液に直接加えられたゲル化剤の添加によりアルギン酸塩は内的にゲル化される。典型的なゲル化剤には、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)カルシウム、又は当業者によく知られている二価カチオンを含む他の化合物が含まれる。ゲル化剤の濃度は、約5mMから約100mM、より好ましくは約12mMから約50mM、最も好ましくは約15mMから30mMの範囲である。選択される範囲は所望のヒドロゲル特性によって決定される。中性pHで直ぐに可溶性ではない場合は、ゲル化剤は典型的には溶液のpHの低下によって活性化される。この酸性化は多くの酸又はラクトンによって達成できる。このリストには、限定されるものではないが、クエン酸、塩酸、D-グルコノ-デルタ-ラクトン及び氷酢酸が含まれる。
【0032】
他の実施態様では、ゲル又はヒドロゲルは生分解性繊維中にゲル化剤源を導入することにより外的にゲル化される。あるいは、ゲル化剤源が、生分解性ポリマーの一又は複数の層中に充填される水相に添加される。このようにして、繊維が分解すると、ゲル化剤はゲル又はヒドロゲル中にゆっくりと放出される。ある実施態様では、繊維が分解し弱くより多孔部性になると、ゲルはより密に架橋されるようになる。このようにして、繊維が分解するにつれて放出速度を連続的に改変することができる。ポリマーがより多孔部性になると放出速度が増加する傾向があり、この場合、この傾向はゲルがより密に架橋するようになることによって相殺され、よって繊維が分解するにつれてゲル又はヒドロゲルを通過する放出速度を遅くさせる。
他の実施態様では、ゲル化剤がポリマー溶媒に可溶性であり、繊維製造時にポリマー溶液と混合される。この実施態様では、ゲル化剤が水相に維持されるよりもむしろ、ポリマーと分子的に混合される。繊維が分解するにつれてゲル又はヒドロゲル中にゲル化剤をゆっくり放出する同じ正味の効果がある。この実施態様は有機的に可溶性のゲル化剤供給源の使用を許容する。
【0033】
他の実施態様では、リポスフィア、ミクロスフィア、ナノ粒子又は後で活性化される他のカプセル化材料内におけるように時間が経つと活性化されるゲル化剤がアルギン酸塩溶液内に保持される。これらは時間が経つとゆっくりと活性化されるか、又はある外部の事象によって意図的に活性化されうる。これにより、強くされるか又は経時的に維持されるゲルが生じる。
本発明の他の実施態様では、ゲル又はヒドロゲルは外部シースであり、生分解性ポリマーは内部コアである。この実施態様では、ゲル化剤は凝固浴中にあり、これは外部ゲル化である。
【0034】
本発明は、単一の薬剤放出繊維をつくり出す構成体と方法並びに組織工学用途において細胞を成長させるための、不均一の、織り、編み、束ね、不織の、捻れた、平行なアレイ又は無作為の三次元繊維スカフォールドをつくり出す構成体と方法を提供する。これらのスカフォールドはインビトロ及びインビボで使用することができ、その不均一性のために、治療剤の空間的及び時間的分布の双方をつくりだすことができる。この発明において、治療剤は、薬剤、タンパク質、ペプチド、単糖類及び二糖類、多糖類、糖タンパク質、DNA、RNA、ウイルス、又は興味ある他の生物学的分子を含みうる。この発明において治療剤という用語はまた局所領域の腫瘍のような有害な組織を破壊することを助け、又は現在のステント分野におけるように健康な組織の成長を阻害するために使用される放射性物質;又は造影研究に使用されるマーカーを含む。
【0035】
A.三次元繊維スカフォールド
本発明の不均一なスカフォールドをつくりだすために、治療剤がここに記載される方法によってマトリックスの個々の繊維中に封入される。治療剤は各個々の繊維からゆっくりと制御された形で放出される。繊維形態は、ミクロスフィア、多孔部性プラグ又はパッチのような当該分野になじみのあるものに対して知られている他の遅い薬剤放出剤よりもドラッグデリバリープラットフォームとして多くの利点を有している。繊維の主な利点は、細胞が適切に機能する細胞に付着し、広がり、分化し、成熟することを可能にする、パターンを伴うか伴わないで、複雑な三次元の織られ、又は不織のスカフォールドを提供することができることである。それらはパターンを形成することができるので、特定のタイプの細胞を誘導して放出される特定の走化性因子のためにスカフォールドの特定の領域に移動させるために「洗練された(smart)スカフォールド」を製造することができる。このスカフォールドは発生学的発達中とポスト発生学的組織の双方において細胞外マトリックス物質の機能を模倣する。また、自然に似た構造を連想させない組織修復又は再構築のための成長基質を提供する独特のスカフォールドをフィラメントから形成できる。
【0036】
特定の領域に適切な細胞型を誘導するパターンを織り込む能力のため、血管の形成をファブリック中に誘導するストランドを導入することができる。これは、血管内皮増殖因子(VEGF)のような成長因子を放出する繊維を提供することによって達成することができる。VEGF含有繊維を適切な間隔にして織物パターンとすることにより、大きな組織を設計することができ、そのような組織の細胞に十分な血液供給を与えることができ、よって酸素と栄養素を受取り廃棄物質の除去を可能にする。
繊維はまたステントのような用途で短期の機械的支持体を体に提供するという利点を有しており、ポリマー繊維が、任意の筒状体の管腔、例えば動脈、静脈、管(例えば胆管、尿管、尿道、気管等々)、消化路、例えば食道、腸、大腸、及び結合組織、例えば腱、靱帯、筋肉及び骨を維持することができる。繊維は治癒過程の間、機械的強度又は引っ張り強度を支持する有用な構造を提供する。繊維はまた神経再生又は神経又は脊髄の再構築を促進するために有用であり得る。
【0037】
B.繊維形態
この発明の範囲には多数の組み合わせと変形態様が存在する。この発明は多層多構成材形態での生分解性ポリマー繊維とのゲル又はヒドロゲルの組み合わせを網羅し、ここで、各層は次の外方層内に完全に含められ、内方層は外方層内にほぼ中心を置く。これらの層は異なったゲル又はヒドロゲル、又は異なった生分解性ポリマーから構成され得る。
この発明はまた生分解性ポリマー層内における分散相としてのゲル又はヒドロゲルの使用を含み、ここで、連続相は生分解性ポリマー相である。分散相は内部又は外部の界面活性剤によって安定化されうる。
生分解性ポリマー層内の分散ゲル又はヒドロゲルの場合、及び生分解性ポリマー層の内部にあるゲル又はヒドロゲルの場合、許容可能な特別の場合は、ヒドロゲルの濃度がゼロの場合である。これは、ゲル又はヒドロゲルの代わりに(他の物質を含むか含まない)水を用いることができることを意味している。
【0038】
更なる特別の場合には、最内コアのポリマー濃度をゼロとすることができ、その場合、ポリマーと共に通常使用される溶媒が非溶媒に置き換えられる。この場合、非溶媒コアが内部凝固浴として作用する。その結果、中空繊維がつくられる。この特別な場合は、生分解性ポリマー層の外にゲル又はヒドロゲルを伴うか伴わないで、生分解性ポリマー層内に分散ゲル、ヒドロゲル又は水相を伴うか伴わないで生じうる。
これは多数の潜在的な組み合わせを生じる。基本的なタイプは内部ゲル又はヒドロゲルを持つ外部生分解性ポリマーとその逆の設計、つまり、内部コアとして生分解性ポリマーを持つ外部のゲル又はヒドロゲルである。これらの組み合わせのそれぞれにおいて、生分解性ポリマーは分散水、ゲル又はヒドロゲル相を有していても有していなくともよい。他の場合はゲル又はヒドロゲル分散相を持つモノフィラメント繊維である。
【0039】
C.個々の繊維の放出速度論
更に、治療剤の放出速度を制御し、よって治療剤の放出を時間的に制御する様々な手段がある。次の検討はポリマーシースがゲル又はヒドロゲルの内部コアを囲撓する繊維形態にのみ関する。ポリマーの制御の最初の点は、低分子量ポリマーを高分子量の繊維形成ポリマーと混合することである。このようにして、低分子量成分は迅速に分解し繊維から拡散することができ、繊維をより多孔部性にする。これにより、ゲル又はヒドロゲル内の内部治療剤へのアクセスが可能になる。繊維の放出速度を加速する第二の手段は二相繊維をつくり出すことであり、そこでは連続相が生分解性ポリマーで、分散相が界面活性剤によって安定化される水性ポケットである。分散相の濃度が増加すると、外側から内部ゲル又はヒドロゲルへの経路がつくり出され、そこでは分解されなければならない唯一のポリマーが分散水相の様々なポケット間にある。これは、より少ないポリマーを分解するようにし、ゲル又はヒドロゲルを外界に連結し、よって治療剤の放出を加速させるという効果を有する。この分散水相は同じ又は異なった薬剤又は治療剤を含むことがまたできる。この場合、分散水相中の薬剤又は治療剤が最初に放出され、続いてゲル又はヒドロゲル中の治療剤が放出される。ポリマー繊維壁部中の薬剤又は治療剤の放出速度を変更するためには、水性に対して分散相が今度はゲル又はヒドロゲルであるように上記の記述に僅かに適合させることができる。この場合、流体経路の短縮が水性分散相の場合のように存在するが、しかしながら、連結経路は今度はゲル又はヒドロゲルのポケットを通過しなければならず、そこで、治療剤の拡散が純粋に水性の経路と比較して遅延される。拡散が遅延される度合いはゲル又はヒドロゲルの対応、及び架橋のタイプ及び度合い、及びゲル又はヒドロゲルの濃度の関数である。これらのパラメータの全てが繊維を形成する者の制御内にある。また繊維の長軸に沿った距離の関数として生分解性ポリマー内の分散水性又はゲル相の濃度を制御することもできる。この手段によって、繊維の長さに沿った放出速度の決まった勾配を持たせて、繊維の一端と他端の放出速度を異なるものとできる。この放出速度の変化は治療剤濃度の勾配と組み合わされても又は組み合わされなくともよい。同じ手段によって、一端で分散相が例えば純粋に水性であり、繊維の第二端で分散相がゲル又はヒドロゲルであるようにポリマー繊維に沿った距離の関数として分散相の内容量を変化させることができる。分散相内のゲルの濃度を変化させることを含む他の勾配もまた可能である。よって、多くの制御が繊維の放出速度に利用できる。繊維のポリマー壁部のこれらの変化とは別に、治療剤を含む、繊維のコア中のゲル又はヒドロゲル内の架橋剤のタイプ、濃度、及び架橋度を変更することによってこの繊維からの放出速度を制御することもできる。
【0040】
ドラッグデリバリー期間の過程にわたってコア中に又は生分解性ポリマー内繊維内の分散相として充填されるゲル又はヒドロゲルの放出速度を動的に変化させる能力は本発明の重要な側面を構成する。これはゲル又はヒドロゲルのドラッグデリバリーの他の形態で存在することができない独特な機会を許容する。生分解性ポリマー中にゲルが充填されるために利用できる制御の第一の手段はゲルを架橋することが知られている薬剤を放出するこの薬剤の能力である。このようにして、時間が経つと、ゲルの架橋剤密度は増加し、これが治療剤の放出を遅らせる。生分解性ポリマー繊維シースからの架橋剤のこの放出は上に外接した手段によって、つまり、分子量のカクテルを使用して、又は分散水相の濃度を変化させることによってそれ自身が制御可能である。生分解性ポリマー繊維シースの特別な場合は多層で多構成材の生分解性ポリマーシースである。これにより、方向特異性、並びに生分解性ポリマー繊維シースの各層からの放出速度変化をつくり出すことが可能になる。例えば、シース内の生分解性ポリマー繊維の二層の場合を考える。最内層は繊維のゲル又はヒドロゲルを架橋させるように作用する薬剤を含み得、この層は速い分解速度を有する生分解性ポリマーから構成されうる。更に、この層は高度の分散水相を含みうる。この同じ例では、最外層は異なった分解速度を持つ異なった生分解性ポリマーと、ゼロを含む異なった濃度の分散水性(又はゲル又はヒドロゲル)分散相から構成されうる。この例は、架橋剤が経時的に繊維のコア中のゲル又はヒドロゲルに内方に向けて送達される状況をつくり、よって繊維のコア中のゲル又はヒドロゲル中に充填される治療剤の拡散係数が経時的に減少する状況をつくりだす。
【0041】
他の特別な場合は、ポリマー繊維が、繊維コア中のゲル又はヒドロゲルを分解する薬剤を含む場合である。上で説明したものと同じ論理を使用して、これもまた、コア中のゲル又はヒドロゲル中での、又は繊維内に分散した薬剤の拡散係数が経時的に連続的に変化する状況をつくる。しかし、この場合、拡散速度は経時的に増大する。この特定の場合はまた繊維が移植される動物又は好ましくはヒトの体がゲル又はヒドロゲルを分解するのに必要な他の化学的条件又は特定の酵素を有していなくともよいという利点を有する。この場合、繊維の壁部中に適切な分解薬剤を充填することによりゲル又はヒドロゲルの分解を可能にし、よって宿主からのゲル又はヒドロゲルのクリアランスを補助する。また、上述したように、分解薬剤の放出は、繊維のシース中の生分解性ポリマー層の性質を変化させることにより大きく制御可能である。
これらの方法によって、ゲル又はヒドロゲルコアからの、又は生分解性ポリマー繊維のシースに分散された治療剤の放出速度は、生分解性ポリマーシースの存在によって変更可能であることが分かる。
【0042】
ゲル又はヒドロゲルが外部層で、生分解性ポリマーが繊維コアである場合。この場合、生分解性ポリマーコアは上述の一又は複数の多構成材層からなり得、また各層は異なった濃度の分散水性又はゲル又はヒドロゲル相を含み得、これはそれ自身が治療剤を担持するか又は担持していない。繊維からの治療剤の全体的放出は、外部のゲル又はヒドロゲル、又は生分解性ポリマーコア内の何れか又は双方における治療剤の位置によって制御される。上述したものと同じ手段によって、外部ゲル又はヒドロゲルの放出速度を、生分解性ポリマー繊維コアからの架橋又は分解剤の放出によって改変されうる。これらの薬剤は生分解性ポリマー繊維コアから放出されるにつれて、それらは外部のゲル又はヒドロゲルの性質を変化させ、よって外部ゲル又はヒドロゲルからの治療剤の拡散を減少又は増加させる。生分解性ポリマーコア内の治療剤に対して、これらの薬剤の放出は二つのレベルで制御される。最初に、上で説明したように、ポリマー自体のタイプと分子量分布が、当業者によく知られているように、放出速度を変化させる。これに加えて、任意の分散水性又はゲル又はヒドロゲル相の濃度が生分解性ポリマーからの放出を変える。しかしながら、ゲル又はヒドロゲルは生分解性ポリマーを囲撓しているので、生分解性ポリマー内の全ての治療剤はゲル又はヒドロゲルを通して拡散しなければならない。従って、ゲル又はヒドロゲルを通しての治療剤の拡散に対する変化がまた繊維のコア内の治療剤の放出に直接影響を及ぼす。従って、この場合、ゲル及び生分解性ポリマーセグメントの双方を変更することにより繊維の放出速度を変化させることができる。
分散相が治療剤をまた含むゲル又はヒドロゲルである場合、その治療剤の放出は、生分解性ポリマー、分子量分布及び分散相の濃度の同じ選択手段によって制御することができる。加えて、ゲル又はヒドロゲルの性質がモノフィラメント繊維内の分散相からの治療剤の放出をまた改変する。
【0043】
D.生分解性ポリマー
本発明における使用のために好適なポリマーには、ポリ(L-乳酸)、ポリ(DL-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)又はポリ無水物の単一ポリマー、コポリマー又はポリマー混合物が含まれる。再構成コラーゲン又は天然絹のような天然に生じるモノマーもまた使用することができる。当業者であれば、これらのポリマーはこの発明に使用することができる一クラスの生分解性ポリマーマトリックスの単なる例であることを理解する。更なる生分解性マトリックスには、ポリ無水物、ポリオルトエステル、及びポリ(アミノ酸)(Peppas及びLanger, 1994)。任意のそのようなマトリックスを、この発明で使用される制御された性質を持つ生分解性ポリマーマトリックスを製造するために利用することができる。非毒性の分解生成物を製造する生分解性ポリマーの非網羅的リストを表1に列挙する。
【0044】

【0045】
E.ゲル及びヒドロゲルのタイプ
単純な説明では、ゲルは固体のように作用する液体系である。より技術的に定義すると、ゲルは、少なくとも二相を持ち、その一相が弾性固体として作用する連続した三次元網目構造を形成するコロイド系である。物理的、分子的、又は化学的結合によるゲル形成により系の非常な分子量が得られる。形成された粘弾性物質は損失係数(loss modulus)G"よりも大きい貯蔵弾性率G'を有しており、G'とG"は双方とも周波数と独立である[E. R. Morris, Polysaccharide solution properties: origin, rheological characterization and implications for food systems, Frontiers in Carbohydrate Research 1: Food Applications(R. P.Millane, J. N. BeMiller,及びR.Chandrasekaran編), Elsevier, London, 1989, p.132.]貯蔵弾性率は試料の合成を特徴付け、損失弾性率は流れに対する試料の抵抗を特徴付ける。[Damodaran, Srinivasan, Food Proteins and Their Applications, Food Science and Technology (Marcel Dekker, Inc.); New York Marcel Dekker, Inc., 1997.]例はポリマー溶液、ミセル溶液、マイクロエマルションであり、更に最近では非常に低い濃度で小有機分子の存在によってゲル化される多数の有機溶媒を用いるものまで分野は拡張されている。
【0046】
ヒドロゲルは、分散相(コロイド)が連続相(水)と組合わさって粘性のあるゼリー状生成物をつくるコロイドとして定義される[Dictionary of Chemical Terms, 4th Ed. , McGraw Hill(1989)]。ヒドロゲルは過剰の水中で迅速に膨潤し、その膨潤構造中に多容量の水を保持することができる。ヒドロゲルを含むポリマー材料は、形成されたヒドロゲルは水に不溶性で、三次元網目構造を維持しているがその重量の20%を越える水を吸収することができる[Amidon, Gordon L., Transport Processes in Pharmaceutical Systems, Drugs and the Pharmaceutical Sciences ; v. 102 New York Marcel Dekker,Inc., 2000]。それらは通常は化学的結合か又はイオン生相互作用、水素結合、又は疎水性相互作用のような他の結合力の何れかによって架橋した親水性ポリマー分子から構成されている[J. I.Kroschwitz, Concise Encyclopedia of Polymer Science and Engineering, New York, Wiley,XXIX, p1341,1990.]。
ヒドロゲルは、非常に長い時間変形した後でさえ系が戻る記憶された参照形状が存在するという意味で弾性的固体である。
【0047】
オルガノゲルは織り混ざったポリマー成分を持つ有機相として定義される。好適な溶媒には、限定するものではないがジメチルスルホキシド(DMSO)、鉱油及び植物性油を含む非毒性の有機溶媒が含まれる。「オルガノゲル」という用語は油中水逆相マイクロエマルションのゼラチン溶液によるゲル化の特定の概念を記述するために最初は使用された(Luisi等 Colloid & Polymer Science, 1990, vol.268, p. 356-374を参照)。その用語はホスファチジルコリンで富まされたレシチン中で安定化され通常は水素化された二つの非混和性相を含む(油中水)ゲル化系まで最近拡張されている(Williman等 Journal of Pharmaceutical Sciences, 1992, vol. 81, p. 871-874, 及びSchchipunov等, Colloid Journal, 1995, vol.57, p.556-560を参照のこと)。これらのエマルションはラメラ相を有し、ゲル化剤のない場合でさえゲルの形態、よってエマルションの配向に拘わらず(油中水又は水中油)このタイプのエマルションを示す名称オルガノゲルの形態である。
本発明において使用されるゲル物質のタイプには、多糖類、限定されるものではないがアミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、ヒアルロナート、コンドロイチン、ヘパリン、デキストリン、イヌリン、マンナン、キチン、ガラクトース、グアーガム、カラギーナン、寒天、フルセララン、キサンタンガム、他の親水コロイドガム、ペクチン、ローカストビーンガム、アカシア、ガッティガム、ペントサン、アラビノガラクタン、その合成誘導体、及びその混合物が含まれる。
【0048】
ヒドロゲルを形成することができる物質の例には、天然及び合成多糖類及び他の天然及び合成ポリマー及びその誘導体、及びこれらの組み合わせが含まれる。好適な多糖類及びポリマーには、限定するものではないが、アミロース、アミロペクチン、グリコーゲン、セルロース、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリン、デキストリン、イヌリン、マンナン、キチン、ガラクトース、グアーガム、カラギーナン、寒天、フルセララン、キサンタンガム、他の親水コロイドガム、ペクチン酸及びペクチン、ローカストビーンガム、アカシア、ガッティガム、ペントサン、アラビノガラクタン、アルギン酸塩及びアルギン酸塩誘導体、ジェラン、ジェランガム、グルコース、コラーゲン(及びゼラチン)、セルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びメトキシセルロース、フィブリン、キサンタン及びキサンタンガム、アガロース、キトサン(ポリカチオン性多糖類ポリマー)、アルブミン、ヒトγグロブリン、プルラン、カラギーナン(ポリアニオン性多糖類ポリマー)、デキストリン、デキストラン、デキストラン硫酸、ケラチン、イヌリン、デキストロース、アミロース、グリコーゲン、アミロペクチン、ポリリジン及び他のポリアミノ酸、ポリエステル、例えばポリヒドロキシブチラート及びポリホスファジン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(アルキレンオキシド)、特にポリ(エチレンオキシド)、ポリエチレングリコール(PEO-PPO-PEO及びプルロニック(登録商標)のような類似のブロックコポリマーを含む)、ポリ(アリルアミン)(PAM)、ポリ(アクリレート)、変性スチレンポリマー、プルロン(pluronic)ポリオール、ポリオキサマー、ポリプロピレン、ポリウレタン、ポリ(ウロン酸)、ポリ塩化ビニル、ポリ(ビニルピロリドン)及びコポリマー、グラフトコポリマー、合成誘導体、上記のものの混合物及び他の混合物が含まれる。多糖類はこの発明の好適なポリマーである。例えばアルギン酸塩は生体適合性のある非毒性、非発癌性、非炎症性及び非免疫原性であり、よって使用のための良好な候補である。
【0049】
F.ポリマー材料のタイプ
例示的な天然ポリマーには、天然に生じる多糖類、例えば、アラビナン、フラクタン、フカン、ガラクタン、ガラクツロナン、グルカン、マンナン、キシラン(例えばイヌリン)、レバン、フコイダン、カラギーナン、ガラトカロロース(galatocarolose)、ペクチン酸、ペクチン、アミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、グルコース、ポリグルコース、ポリデキストロース、ポスツラン、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマルタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンタンガム、デンプン及び様々な他の天然ホモポリマー又はヘテロポリマー、例えば次のアルドース、ケトース、酸又はアミンの一又は複数を含むもの:エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、デキストロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、グルクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、及びノイラミン酸、及びその天然に生じる誘導体が含まれる。従って、適切なポリマーには、例えばアルブミンのようなタンパク質が含まれる。
【0050】
例示的な半合成ポリマーには、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、及びメトキシセルロースが含まれる。例示的な半合成ポリマーには、ポリホスファゼン、ポリエチレン(例えば、ポリエチレングリコール(BASF, Parsippany, N.J.から市販のプルロニック(Pluronics)(登録商標)と称される化合物クラスを含む)、ポリオキシエチレン、及びポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン(例えば、ポリプロピレングリコール)、ポリウレタン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニル及びポリビニルピロリドン、ナイロンを含むポリアミド、ポリスチレン、ポリ乳酸、フッ素化炭化水素ポリマー、フッ素化炭素ポリマー(例えばポリテトラフルオロエチレン)、アクリレート、メタクリレート、及びポリメチルメタクリレート、及びその誘導体が含まれる。
ポリマー材料は、生理学的pHへの変化、カルシウムイオン(アルギン酸塩)又はホウ酸塩イオン(ポリビニルアルコール)のポリマー中への拡散、又は体温(37EC)への温度変化によって、単独で、又は添加された触媒の存在下で、重合できるか又は外因性手段の適用、例えば光、超音波、放射線、又はキレート化によってその粘度がインビボで改変できる物質から選択される。
【0051】
G.血管形成を促進する薬剤
本発明のポリマー繊維に封入される治療剤の一クラスは、血管形成を促進する治療剤である。新しい組織の成功裏の工学には血管網目構造の樹立が必要となる。血管形成の誘導は、様々な因子によって媒介され、この何れかは本発明と併用される(FolkmanおよびKlagsbrun,1987,及びそこに引用された文献で、それぞれが出典明示によりここに取り込まれる)。血管形成因子の例には、限定されるものではないが、血管内皮増殖因子(VEGF)又は血管透過性因子(VPF);酸性線維芽細胞増殖因子(aFGF)及び塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む線維芽細胞増殖因子のメンバー;インターロイキン-8(IL-8);上皮細胞成長因子(EGF);血小板由来成長因子(PDGF)又は血小板由来内皮細胞成長因子(PD-ECGF);トランスフォーミング成長因子α及びβ(TGF-α、TGF-β);腫瘍壊死因子α(TNF-α);肝細胞増殖因子(HGF);顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF);インスリン成長因子-1(IGF-1);アンジオゲニン;アンギオトロピン;アンギオテンシン;フィブリン及びニコチンアミドが含まれる(Folkman, 1986, 1995; Auerbach及びAuerbach, 1994; Fidler及びEllis, 1994; Folkman及びKlagsbrun, 1987; Nagy等, 1995)。
【0052】
H.サイトカイン
ある実施態様では、本発明のポリマー繊維に導入される特定のサイトカインの使用が考えられる。以下の表2は限定するものではないが、本発明の使用に考えられるサイトカイン及び関連因子の例である。
3.1.1.1.表2




【0053】
G.ポリヌクレオチド
本発明のポリマー繊維内に導入されるポリヌクレオチドは十分な種類の核酸分子まで拡張される。よって、核酸にはゲノムDNA、cDNA、一本鎖DNA、二本鎖DNA、三本鎖DNA、オリゴヌクレオチド、Z-DNA、mRNA、tRNA及び他のRNAが含まれる。DNAがリボザイム又はアンチセンスRNAのような治療用RNAを発現するために使用される場合でさえ、DNA分子が一般に好適である。
選択されるタンパク質又はRNAをコードする「遺伝子」又はDNAセグメントは一般に選択されるタンパク質又はRNAをコードする配列を含むが、DNAから得られる種の全ゲノムDNAから単離され、又は分離精製されるDNAセグメントを意味する。「遺伝子」及び「DNAセグメント」という用語には、DNAセグメントとそのようなセグメントのより小さい断片、また例えばプラスミド、コスミド、ファージ、レトロウイルス、アデノウイルス等々を含む組換えベクターが含まれる。
【0054】
「遺伝子」という用語は簡単のために機能性タンパク質又はペプチドコード単位を意味するために使用される。当業者には理解されるように、この機能的用語にはゲノム配列とcDNA配列の双方が含まれる。「他のコード化配列から実質的に単離された」とは、対象の遺伝子がDNAセグメントのコード領域の有意な一部を形成し、DNAセグメントが大部分の天然に生じるコード化DNA、例えば大きな染色体断片又は他の機能性遺伝子又はcDNAコード領域を含んでいないことを意味する。もちろん、これは元々単離されたDNAセグメントを意味し、遺伝子又はコード領域、例えばヒトの手によって後でセグメントに加えられるリーダーペプチド又は標的配列をコードする配列を排除しない。
本発明は、用いられるコードセグメントが選択されたタンパク質又はRNAをコードし、標的細胞に有意な悪い影響を持たないコード又は調節配列を含まない限り、高度に精製されたDNA又はベクターを用いることを必要としない。従って、有用な核酸配列は更なる残基、例えばコード領域の5'又は3'部分の何れかに隣接する更なる非コード配列を含むか、又は様々な内部配列、つまり、遺伝子内に生じることが知られているイントロンを含みうる。
【0055】
多くの適切なDNAセグメントを、市販供給源を含む既存の供給源から得ることができる。当業者に一般に知られている様々な分子生物学的方法の一又は複数を使用して対象のタンパク質をコードする新しいDNAセグメントをまた取得できる。例えば、設計された配列を持つブライマー又はプローブを使用してcDNA又はゲノムライブラリーをスクリーニングすることができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)をまた用いて対象のタンパク質をコードするDNA断片を産生することができる。
適切に選択された遺伝子又はDNA分子を同定した後、当該分野において現在知られている多くのベクターの何れかにそれを挿入することができ、その結果、それが標的細胞に導入されると選択されたタンパク質の発現と産生を指示する。組換え発現ベクターにおいて、DNAセグメントのコード部分はプロモータ/エンハンサエレメントの制御下に位置せしめる。プロモータは、例えば組換えクローニング及び/又はPCR技術を使用してコードセグメント又はエキソンの上流に位置した5'非コード配列を単離することによって得ることができるように、選択された遺伝子に天然に付随するプロモータの形態であってもよい。
【0056】
他の実施態様では、コード化DNAセグメントを組換え又は異種性プロモータの制御下に位置させることによって、ある利点が獲得されることが考えられる。ここで使用されるところでは、組換え又は異種性プロモータはその天然環境において選択された遺伝子に通常には付随していないプロモータを意味するものである。そのようなプロモータには他の選択された遺伝子に通常付随するもの、及び/又は任意の他の細菌、ウイルス、真核生物、又は哺乳動物細胞から単離されたプロモータが含まれうる。当然ながら、選択された標的細胞においてDNAセグメントの発現を効果的に指示するプロモータを用いることが重要である。
タンパク質の発現を達成するための組換えプロモータの使用は分子生物学の分野の当業者に一般に知られており、例えば、Sambrook等(1989; 出典明示によりここに取り込む)を参照のこと。用いられるプロモータは構成的か又は誘導的であってもよく、適切な条件下で使用して導入DNAセグメントの高レベル又は調節された発現を指示することができる。構成的プロモータの制御下での遺伝子の発現は遺伝子発現を誘導する特異的基質の存在を必要とはせず、細胞成長のあらゆる条件下で生じる。これに対して、誘導的プロモータによって制御された遺伝子の発現は誘導薬剤の有無の影響を受ける。
【0057】
哺乳動物細胞で成長するウイルスのゲノムから単離されたプロモータ、例えばRSV、ワクシニアウイルス7.5K、SV40、HSV、アデノウイルスMLP、MMTV LTR及びCMVプロモータ、並びに組換えDNA又は合成技術によって製造されたプロモータをここで用いることができる。現在好ましいプロモータはCMV、RSV LTRのようなもの。SV40プロモータ単独、及びSV40エンハンサと組み合わせたSV40プロモータである。
組織特異的プロモータ/エンハンサエレメント及び組織特異性を示す転写制御領域の例には、限定するものではないが、膵腺房細胞において活性のあるエラスターゼI遺伝子コントロール領域;膵臓細胞において活性のあるインスリン遺伝子制御領域;リンパ球様細胞において活性のある免疫グロブリン遺伝子制御領域;肝臓において活性のあるアルブミン、1-抗トリプシン及び-フェトプロテイン遺伝子制御領域;骨髄性細胞において活性のある-グロビン遺伝子制御領域;脳のオリゴデンドロサイト細胞において活性のあるミエリン塩基性タンパク質遺伝子制御領域;骨格筋において活性のあるミオシン軽鎖-2遺伝子制御領域;及び視床下部において活性のある性腺刺激放出ホルモン遺伝子制御領域が含まれる。
【0058】
特異的開始シグナルは挿入されたタンパク質コード配列の十分な翻訳にまた必要とされうる。これらのシグナルには、ATG開始コドン及び隣接配列が含まれる。開始コドンと隣接配列を含む全コード配列が適切な発現ベクター中に挿入される場合、更なる転写制御シグナルは必要とされない。しかしながら、コード配列の一部だけが挿入される場合、ATG開始コドンを含む外因性転写制御シグナルが提供されなければならない。開始コドンは挿入断片全体の翻訳を確実にするためにタンパク質コード配列の読み枠と一致させなければならない。これら外因性転写制御シグナル及び開始コドンは天然と合成の双方の様々な由来がありうる。発現の効率と制御は転写減衰配列、エンハンサエレメント等の含有によって高められうる。
【0059】
限定されるものではないが、組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又はコスミドDNAから誘導されたものを含む様々なベクターを使用することができる。例えば、pBR322、pUC19/18、pUC118、119のようなプラスミドベクター及びM13mpシリーズのベクターを用いることができる。バクテリオファージベクターにはgt10、gt11、gtl8-23、ZAP/R及びEMBLシリーズのバクテリオファージベクターが含まれうる。使用することができるコスミドベクターには、限定されるものではないが、pJB8、pCV103、pCV107、pCV108、pTM、pMCS、pNNL、pHSG274、COS202、COS203、pWE15、WE16及びカロミド(charomid)9シリーズのベクターが含まれる。SP6ベクターのようなRNAのインビトロ転写を可能にするベクターもまたマトリックス内に導入できる多量のRNAを製造するために使用することができる。
【0060】
選択された遺伝子及びDNAセグメントはまた例えば組換えヘルペスウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス又はウシパピローマウイルスのような組換えウイルスのゲノム内に位置するDNA挿入断片の形態であってもよい。統合ベクターを使用することができるが、多くの世代に対して娘細胞に遺伝子産物を移さない非統合系がしばしば好ましい。このようにして、遺伝子産物は決まった生物学的プロセス、例えば創傷治癒プロセス中に発現され、遺伝子が子孫世代で希釈されると、発現される遺伝子産物の量が減少する。
そのような実施態様では、標的細胞に遺伝子を接触させるには、遺伝子挿入断片をそのゲノムが含む組換えウイルス粒子を調製し、本発明のポリマー線維からの放出を介して標的細胞又は組織を接触させ、それによってウイルスが細胞に観戦し、遺伝子物質を移送する。
【0061】
文献に記載されたものとは変わる配列を持つ遺伝子もまた、改変され又は修飾された遺伝子が所望の(直接又は間接的)形で標的細胞に影響を及ぼすように機能するタンパク質をなおコードする限り、本発明における使用が考慮される。これらの配列には点変異によって引き起こされるもの、遺伝子コードの縮重によるもの又は天然に生じるアレル変異体、更には遺伝子工学によって、つまりヒトの手によって導入された修飾が含まれる。
コード化されたタンパク質又はポリペプチドの機能的性質を改変するために設計されるヌクレオチド配列に変化を導入する方法は当該分野でよく知られている。そのような修飾には、塩基の欠失、挿入又は置換、よってアミノ酸配列の変化が含まれる。変化を実施してタンパク質の活性を増加させ、その生物学的安定性又は半減期を増加させ、そのグリコシル化パターンを変化させ、温度感受性を付与し、又はタンパク質の発現パターンを改変させる等ができる。ヌクレオチド配列に対するそのような修飾の全てがこの発明に包含される。
【0062】
一又は一を超える選択遺伝子を遺伝子転移方法及び組成物において使用することができることが本発明の利点である。核酸移送法はよって1、2、3又はそれ以上の選択遺伝子の投与を必要としうる。適用されうる遺伝子の最大数は、実際の考慮によってのみ、例えば多数の遺伝子コンストラクトを同時に調製する際の努力又は悪い細胞毒性を誘発する可能性によって制限される。遺伝子の特定の組み合わせは同じ又は異なった生化学経路を改変するために選択することができる。例えば、成長因子遺伝子をホルモン遺伝子と組み合わせることができる;又は第一ホルモン及び/又は成長因子遺伝子を第一遺伝子のポリペプチド産物と相互作用可能な細胞表面レセプターをコードする遺伝子と組み合わせることができる。
【0063】
複数の遺伝子を使用する際、それらを一又は複数のプロモータの制御下で単一の遺伝子コンストラクトに組み合わせることができ、又はそれらは異なったタイプの同じものの別個のコンストラクトとして調製することができる。よって、異なった遺伝子及び遺伝子コンストラクトの殆ど再現のない組み合わせを用いることができる。ある種の遺伝子の組み合わせは細胞刺激及び組織成長への相乗効果を達成するために設計し、又は相乗効果を生じるように使用することができ、そのような組み合わせの任意のもの及び全てが本発明の範囲内に入ることが意図される。確かに、多くの相乗効果が科学文献に記載されており、当業者は相乗効果が生じそうな遺伝子の組み合わせ又は遺伝子-タンパク質の組み合わせさえも同定することができるであろう。
所望される場合、核酸セグメント又は遺伝子は、例えばタンパク質又はポリペプチド又は様々な薬学的に活性な薬剤のような更なる薬剤と組み合わせて投与できることがまた理解される。遺伝子材料が蘇生物の一部を構成している限り、更なる薬剤が標的細胞又は組織との接触時に顕著に悪影響を生じないならば、また含めることができる他の成分に実際に制限はない。よって、核酸は、例えば米国特許第5270300号に開示され、出典明示によりここに取り込まれる血管形成因子を投与することを望むある種の実施態様では、様々な他の薬剤とともに送達させることができる。
【0064】
遺伝子の化学的性質、つまりヌクレオチドのストリングは本質的に不変であるので、また遺伝子転移及び発現のプロセスが基本的に同じであるので、本発明の繊維マトリックスによって移される遺伝子のタイプは実際に限りがないことが理解される。これは、DNAワクチン接種における使用のための抗原性又は免疫原性断片を発現する遺伝子材料の混合物の移送から、創傷治癒におけるように細胞機能の刺激まで;腫瘍抑制遺伝子、アンチセンス発癌遺伝子又はアポトーシス誘導遺伝子の癌細胞への移送におけるような細胞死滅の観点まで拡張される。
単に例として挙げると、本発明によって提供される遺伝子には、限定されるものではないが、ホルモン、成長因子、成長因子レセプター、インターフェロン、インターロイキン、ケモカイン、サイトカイン、コロニー刺激因子及び走化因子、転写及び伸長因子、キナーゼとホスファターゼを含む細胞分裂制御タンパク質、DNA修復タンパク質、アポトーシス誘導遺伝子;アポトーシス阻害遺伝子、発癌遺伝子、アンチセンス発癌遺伝子、癌抑制遺伝子;血管形成及び抗血管形成タンパク質;免疫応答刺激及び調節タンパク質;細胞表面レセプター、補助シグナル伝達分子及び輸送タンパク質;酵素;及び抗菌及び抗ウイルスタンパク質が含まれる。
【0065】
H.キット
本発明の様々な態様に必要な必須の材料及び試薬はキットとして組み合わせることができる。また、本発明のキットは、典型的には、例えば所望のバイアルが中に保持される射出又は中空成形プラスチック容器のような、商業的販売のために厳重に閉じこめて所望の部品を含むバイアルを収容する手段を含む。容器の数やタイプにかかわらず、本発明のキットは典型的にはキット部品の使用のための指示書とともに包装される。
【0066】
実施例
次の実施例は本発明の好適な実施態様を実証するために含めるもので、決して本発明の範囲を制限することを意図するものではない。次の実施例に開示された技術は本発明の実施において良好に機能する本発明によって発見された技術を表し、よってその実施のための好適な形態を構成するものと考えることができることは当業者には理解されるはずである。しかしながら、当業者であれば、本明細書に鑑みて、開示された特定の実施例に対して多くの変更を行うことができ、本発明の精神と範囲から逸脱しないで同様の又は類似の結果をなおも得ることができることを理解するはずである。
【0067】
実施例1
3.2. ゲル又はヒドロゲル孔部繊維の押出し
本発明の一実施例では、次の手順を使用してゲル又はヒドロゲル孔部薬剤放出繊維をつくりだす。使用される装置は、鈍い端部の皮下注射針が中心に位置する小径皮下注射チューブを通じて凝固剤孔部流体が供給される繊維紡糸ノズル(スピナレット)の詳細を示している図7に示される。しかし、大規模な形式のもの及び特別に製作された装置を含む任意の類似の構造も本発明の範囲内に含まれる。この構造により、水系ゲル又はヒドロゲルによって穿孔されたポリマー環が紡糸ノズルを通過して流れるようにできる。先ず、生分解性ポリマー、例えばポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(DL-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ無水物、又はこれらの又は他の生分解性ポリマーのコポリマー又は混合物を、ポリマーのタイプに応じて5から30重量%の範囲の濃度で、所定の適切な溶媒(A)に溶解するが、200kDの分子量のPLLAの場合は10重量%が好ましい。この実施例では、溶媒(A)は水と低混和性であり、凝固浴溶媒(B)とは非常に混和性であるが、孔部のゲル又はヒドロゲル中の水とはそうではない。水は溶媒としては機能せず又はこの出願では非溶媒である。溶媒(A)の好適な選択はクロロホルムと塩化メチレンを含む。ひとたびポリマーが選択された溶媒に溶解したところで、典型的には、非溶媒(溶媒C)を、溶媒系の溶媒和力を低下させないが溶液をその曇り点にする適切な濃度でポリマー溶液に添加する。この非溶媒は溶媒(A)及び溶媒(B)と非常に混和性であり、ある場合には、溶媒(B)と同じであってもよい。典型的な選択は、イソ-オクタン、シクロヘキサン及びヘキサンである。この非溶媒が溶液中のポリマーをその曇り点近くにする結果、溶液は、凝固浴の溶媒(B)中に押し出されると、より速やかに沈殿して繊維を形成する。
【0068】
ゲル又はヒドロゲルは当業者に知られた標準的な手順を使用して調製する。一例を挙げると、内部でゲル化したアルギン酸塩の孔部流体では、アルギン酸ナトリウム粉末を最初に蒸留した脱イオン水に溶解して0.5から50重量%の範囲の濃度とするが、1重量%がこの例では望ましい。溶解したところで、溶液を滅菌濾過して、ゲル押出プロセス用の適切な原料を得る。アルギン酸塩の内部ゲル化を促進するために、適切な量の炭酸カルシウムCaCOを溶液に加え、ボルテックス、超音波、又はホモジナイズによって十分に混合する。炭酸カルシウムは中性pHで水に可溶性ではないので、粉末は最終的にはアルギン酸塩溶液に懸濁する。この溶液に、適切な量のD-グルコノ-デルタ-ラクトン(GDL)を加えて、溶液pHをゆっくりと低下させ、これがCaCOから遊離Ca++の放出を開始させ、アルギン酸塩中でグルクロン酸残基を架橋させて、ヒドロゲルを形成する。ゲル化速度とゲルの性質は、CaCO濃度と溶液中での使用されたCaCOに対するGDLの割当量によって制御することができる。
【0069】
ついで、調製されたゲル溶液とポリマー溶液を、図示した紡糸ノズル装置を通して、ポリマーが、ゲル又はヒドロゲルと、所望の場合にはゲルに溶解されるかナノスフィア又はリポソームに封入されてゲルに懸濁された選択薬剤を含む中央チューブの回りを流れるように、溶媒(B)を含む凝固浴中に押出す。ポリマー溶液とゲル又はヒドロゲルコアは、繊維が通常は引けないので、所望の繊維のサイズに従って紡糸ノズルを通して凝固浴中に押出され、最終の繊維サイズは紡糸ノズルサイズに近い。内部のゲル又はヒドロゲルの直径に対する外部の環の最適割当量は実験的に決定することが必要である。例えば、外径がおよそ500μmである繊維を得るために、発明者等の研究室では、孔部流体のための24又は25ゲージの内方管と18ゲージの外方管を用いた。任意の水系ゲル、前駆体ヒドロゲル成分又はヒドロゲルを、中央チューブを通して送達できる。しばしば、内部ゲル又はヒドロゲルは有機溶媒と非相容である薬剤を担持しているか、又はゲル又はヒドロゲルが有機溶媒の存在を許容しない。従って、ゲル又はヒドロゲルのための溶媒(一般には水)が溶媒(A)、(B)及び(C)と不混和性であることが一般に好ましい。溶媒(B)は溶媒(A)及び(C)と高度に混和性で、孔部流体の水成分と不混和性でなければならず、ポリマーに対する非溶媒でなければならない;ヘキサンとペンタンが最も典型的な選択であるが、上記の基準に適合しポリマー溶液から溶媒を速やかに抜き出す任意の溶媒が理論的には作用する。しかして、添加する非溶媒としてイソ-オクタンを用いて、クロロホルムとペンタンが溶媒と凝固浴の良好な組み合わせを構成する。溶媒(A)は凝固浴溶媒(B)と高度に混和性であるので、それはポリマー溶液流から自由に拡散して凝固浴中に入り、ポリマー溶液の溶媒力を曇り点以下に低下させ、それがポリマーを沈殿させ始めて固体ポリマーシースを形成する。時折、ポリマーシースは内部管に流れるゲル又はヒドロゲルにさらされる際の応力を受ける前に沈殿し始め形成されなければならない。このためには、内部管の軸方向の位置が、外部環の出口より下に(発明者の実験室では典型的には0−2mm)突出し、ゲル又はヒドロゲル孔部流体がポリマーに接触する直前にポリマー溶液が凝固剤浴に確実にさらされることが必要である。ポリマー溶液に導入される非溶媒(C)は沈殿プロセスを加速する。溶媒(A)も(B)も何れも孔部流体中には自由に拡散しないので、ポリマーが紡糸ノズルを出るときに一つの凝固剤先端だけがつくられ、孔部ゲル又はヒドロゲルを封入する。繊維が凝固浴中に落下する距離は繊維の形成とその最終の性質に重要であり、典型的には10−30cmである。発明者の実験室では、繊維を自由に落下させ、凝固浴容器の底部に集めた;しかしながら、凝固浴から繊維を引き出すことを含む他の設計もこの発明の一部として含まれる。押出された繊維を後加工し、充填される生分子の推奨される保存条件とゲル又はヒドロゲルの性質に応じて、凍結乾燥、凍結又は絶対(オーブン)乾燥、及びデシケーター又はフリーザーに配することを含む多くの方法で保存する。
【0070】
実施例2
3.3.ゲル被覆ポリマー繊維の押出加工
本発明の他の実施例では、ヒドロゲルが被覆されたPLLA又は他の生分解性ポリマー繊維をつくる。押出プロセスは、使用される凝固剤浴がヒドロゲルのための凝固剤又は架橋剤を含むことを除いて、記載したものと同様である。ポリマーとヒドロゲルを先に記載したものと同様の紡糸ノズルを通して押出し、ポリマー溶液(場合によっては分散水性又はゲル相に薬剤を含む)を紡糸ノズルの内方孔部を通して押出し、ゲル又はヒドロゲル(場合によっては薬剤を含む)溶液を紡糸ノズルの外部環を通して押出す。溶液を、記載されたようにして又は当業者に知られた他の方法で調製し、紡糸ノズルを通して同時に押出す。二重管紡糸ノズルの場合、ポリマー溶液は凝固剤に直接さらさないで押出す。この場合、ポリマー溶媒は後処理工程によって除去されなければならず、あるいは特段の理由がない限り、凝固浴が、少なくとも一つが水とポリマー溶媒の双方に混和性である溶媒混合物を含みうる;その例はイソプロピルアルコール、アセトン等である。これにより、ポリマー溶媒(典型的にはクロロホルム又は塩化メチレン)は水混和性溶媒によって担持されているゲル又はヒドロゲル外部層を通って離れる。凝固剤浴はまたゲル又はヒドロゲルを架橋し又は形成等する当業者に知られた溶液を含む。アルギン酸塩ヒドロゲルの場合、凝固剤浴は適切なCaClの濃縮水溶液でありうる。ポリマー溶液とアルギン酸塩溶液が紡糸ノズルから流れ出ると、アルギン酸塩溶液(これは上に記したようにCaCOとGDLを含みうる)が凝固剤と接触し、溶液中のカルシウムイオンによって架橋される。ポリマー凝固剤が使用される場合、ポリマー/エマルション中の溶媒が凝固剤中に拡散し、ポリマーが繊維を形成する。凝固剤が使用されない場合は、ポリマー溶液は、迅速に架橋するアルギン酸塩溶液によって封入され、アルギン酸塩の殻で覆われた繊維が形成される。ポリマー内に残留する溶媒は適切な後処理技術によって除去することができる。
【0071】
実施例3
凝固剤の孔部流体を使用するゲル又はヒドロゲル外方中空繊維の押出
本発明の一実施例では、次の手順を使用してゲル又はヒドロゲルが外部にある中空繊維をつくる。装置は、三重管紡糸ノズルを含み、これはまた3基のポンプを意味する。凝固剤浴は、一端を凝固剤浴に浸漬し、他端を隔膜で密封して垂直に取り付けられたガラス管からなる。凝固剤は、針で隔壁に孔部をあけ大容積のシリンジで管中の空気を抜き出すことによってリザーバから管中に引き抜きされる。満たされたところで、シリンジ針を取り除き、隔膜で管を密封する。実施例2と同様に、凝固剤はゲル又はヒドロゲルの外部層をゲル化する手段を含まなければならない。また、例えばアルギン酸塩の場合、塩化カルシウム溶液が適している。ゲル又はヒドロゲル溶液は最外管を通って流れ、生分解性ポリマーは内部管を通って、上述のポリマー用の凝固剤は最内管を通って流れる。繊維は決まった速度で凝固浴から引き抜かれる。実験室では、発明者等はその角速度を維持することができる改造した可変速度旋盤に付設した円筒を使用した。ついで、引き抜き押し出された繊維を円筒から、また繊維を壊さないで繊維の中心の凝固剤を除去した。残留凝固剤と水を、推奨された保存条件に応じて、凍結乾燥、凍結又は絶対(オーブン)乾燥、及びデシケーター又はフリーザーに配する。
【0072】
実施例4
孔部流体として水を使用する中空繊維の押出(水孔部繊維)
本発明の一実施例では、次の手順を使用して水孔部薬物放出繊維をつくる。装置は実施例1に使用するものと同様である。この構造により、水系流体が孔部にある紡糸ノズルを通してポリマー環が流れるようにする。先ず、生分解性ポリマー、例えばポリ(L-乳酸)(PLLA)、ポリ(DL-乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(グリコール酸)、ポリ無水物又はこれらの又は他の生分解性ポリマーのコポリマー又は混合物を、ポリマーのタイプに応じて、5から30重量%の範囲の濃度である適切な溶媒(A)に溶解させるが、10重量%が200kDの分子量のPLLA2は好適である。この実施例では、溶媒(A)は水と低混和性であり、凝固浴溶媒(B)と非常に混和性であるが、孔部中の水とは混和性ではない。水はこの出願では溶媒又は非溶媒としては機能しない。溶媒(A)の好適な選択はクロロホルムと塩化メチレンを含む。ポリマーが選択された溶媒に溶解したところで、非溶媒がポリマーの溶媒系の溶媒和力を低減するが、溶液をその曇り点にしない適切な濃度でポリマー溶液に加えられる。この非溶媒(溶媒C)は溶媒(A)及び溶媒(B)と非常に混和性である。典型的な選択はイソ-オクタン、シクロヘキサン及びヘキサンを含む。この非溶媒は溶液中のポリマーをその凝固点近くにした結果、溶液は凝固浴中に押し出されるとき繊維をより速やかに形成する。
【0073】
ついで、ポリマー溶液は、ポリマーが水と、望まれるならば、水に溶解されるか又はナノスフィア又はリポソームに封入され水に懸濁される選択薬剤を含む中央管の回りを流れるように紡糸ノズル装置を通過して、溶媒(B)を含む凝固浴中に押し出される。ポリマー溶液は16ゲージから27ゲージまでのサイズ範囲の分配端を通して凝固浴中に押し出され、ここで、皮下注射管は選択された分配端内にほぼ嵌入するサイズの水孔部流体を含む。任意の水系流体を中央管を通して送達することができるが、但し、この溶液は溶媒(A)と非混和性である。溶媒(B)は溶媒(A)及び(C)と高度に混和性でなければならならず、ポリマーの非溶媒でなければならない;ヘキサンとペンタンは最も典型的な選択であるが、ポリマーに対する非溶媒であり溶媒(A)及び(C)に高度に混和性である任意の溶媒がこの用途に対して作用するが、但しそれはポリマー溶液から溶媒を速やかに引き抜く。例えば、ペンタンはクロロホルムとイソ-オクタンに非常に混和性であるが、ポリマーの非溶媒である。従って、クロロホルムとイソ-オクタンとペンタンが良好な溶媒、非溶媒、凝固浴の組み合わせを構成する。溶媒(A)は凝固浴溶媒(B)と高度に混和性であるので、それはポリマー溶液流から凝固浴中に自由に拡散する。内部の皮下注射管と分配端の間の軸方向の相対位置は、水孔部がポリマーに接触する前にポリマー溶液の環が凝固浴に確実にさらされるように調節される。ポリマー溶液中に導入される非溶媒は、孔部溶液を細くするポリマーに殻が形成されるように、沈殿過程を促進する。溶媒(A)も(C)も何れも孔部流体中に拡散しないので、ポリマーが紡糸ノズルを出るときに一つの凝固剤先端だけがつくられる。また、孔部と溶媒の非混和性はそれとその内容物を保護する。この出願に使用される凝固剤浴は250ml以上のフラスコからなり、繊維は凝固するとその中に落下しスプールに巻きつく。液滴の高さは繊維の形成に重要であり、典型的には10−30cmである。押出された繊維はフラスコから除去され、推奨される保存条件に応じて、凍結乾燥、凍結又は絶対(オーブン)乾燥、及びデシケーター又はフリーザーに配される。
【0074】
3.4.実施例5
親水性繊維に対する実施例1の代替製造法
唯一の差異は、低分子量(典型的には200から600ダルトンの範囲)のポリ(エチレングリコール)(PEG)のような分子を凝固浴として使用することである。この分子はクロロホルムと塩化メチレンとは混和性であるがPLLAのようなポリマーの非溶媒である。従って、それは凝固浴として適しているが、この独特の凝固浴は繊維の壁部にPEGの相互貫入網目構造をつくり、水性環境にさらしたときにそれらを親水性にする。これは移植に対して興味ある意味を持ち得、繊維に対する細胞応答を変えうる。
【0075】
神経組織工学
本発明のこの側面では、繊維の平行アレイを管に充填し、軸索成長のためにニューロトロフィンを充填する。管はこの発明において記載された構成体の繊維の非常に大きな形態であり、ゲル又はヒドロゲルコアはゼロ濃度を持ち得、あるいは別法として、ゲル又はヒドロゲルの外部シース、生分解性ポリマーからなる中間層を持つゲル又はヒドロゲルの多構成材内部コアを持つように設計してもよい。最内ゲル又はヒドロゲルはゼロの濃度を有していてもよく、生分解性ポリマー層に、分散相に又はポリマーと直接混合して治療剤を充填してもよい。外部ゲル又はヒドロゲルはまた内部ゲル又はヒドロゲルのように治療剤を含んでいてもよい。管内には、その構成体がこの発明又は我々の前の発明によって記載されたものでもそうでなくてもよい繊維の平行アレイがある。この実施例では、管か又は少なくとも一の繊維の少なくとも一の構成体がこの発明に記載した構成体でなければならない。管内のこの繊維アレイを切断された末梢又は中枢神経に位置させる。治療剤は、線形又はある他の適切な勾配で、それらが充填される装置のあらゆる部材中(ここに記載した任意のかつ全ての可能な構成体における管の外部ゲル又はヒドロゲル、中間生分解性ポリマー層、又は管の最内コア、並びに管内の個々の繊維)に充填することができるが、勾配は所望される装置内における場合ごとに異なりうる。この装置は神経スタンプの末端間のギャップを架橋して移植される。装置が、ニューロトロフィン、抗炎症剤、血管形成因子、特異的走化又は化学反発剤等々からなりうるその治療剤を放出すると、軸索、脈管構造、及び他の支持細胞及び組織が傷害を移動し始める。軸索が遠位端に達したところで、案内キューがシュワン又はグリア細胞によって提供され、ついで再連結をなすことができる。軸索はこれらの繊維束による接触性案内を受け、非充填繊維を使用するラット座骨神経切除において少なくとも1.8cm移動することができることが過去に見いだされている。管中の未充填繊維の最適な密度はラット座骨神経成長に対して1.5mm直径の約32繊維である。
【0076】
実施例7
ポリマー繊維ステントの調製と使用
他の実施例では、繊維に対象の薬剤を充填し、機械的強度が必要とされるステント又は端医療装置に使用することができる。ステントは、機械的性質に必要ならば充填した繊維が未充填の繊維と混ざるようにして織ることができる。
繊維はまた配置部位に薬剤を送達するために市販のステントと併せて使用することができる。この場合、繊維は機械的支持をもたらすのではなく、単にドラッグデリバリーリザーバとなる。
【0077】
実施例8
創傷被覆材の調製と使用
他の実施例では、ガーゼ又は包帯をこれらの繊維から製造することができる。この包帯は二つの側面を有し得、上面が再上皮形成のために分子を放出しこれらの細胞の基質を提供する。底面は皮膚組織の再生を促進する。この包帯は、火傷、全層皮膚創傷及び慢性又は非治癒創傷及び痛みを含む皮膚創傷治癒のために設計される。各繊維は他成分、多層の構造を持ち、皮膚創傷治癒の三段階に大まかに対応する薬剤又は因子の時間的放出をもたらし得る。
一例として、外傷の患者に設計された包帯の場合、放出される最初の化学物質は出血を停止させるのに役立つ凝血促進剤でありうる。ついで、次の層は創傷治癒の次の段階のために好中球及びマクロファージの補充に役立つサイトカインを放出しうる。最後に、過剰な瘢痕組織を低減するのに役立ち、特に火傷患者を何もできない状態にする収縮を阻害する因子の放出がある。
【0078】
3.5.実施例9
人工動脈の製造
ここに記載した技術を使用して人工動脈を構築することができる。一連の中空で同芯の円筒状部分を、様々な生物学的薬剤を充填した繊維を用いて編み、織り、束ね又は製造することができる。最内円筒が好ましくは密に織られ、無傷の内皮細胞層の移動、伸展及び機能を促進する薬物又は薬剤を含む。次の円筒は、内部円筒の回りに主に周方向に巻回された繊維を持つ織られた又は編まれた構造からなる。この層は平滑筋繊維の遊走と増殖を誘導し、エラスチンの発現を促進して内部弾性媒体をつくる。次の円筒は、編まれた又は不織の繊維からなり、線維芽細胞、マクロファージの成長と細胞外マトリックスの形成を促進する薬剤を含む。最後の層は、VEGF放出繊維又は他の血管形成促進剤によってつくりだされる人工栄養血管を介して動脈細胞の脈管化を促進する縦走繊維を構成する。
【0079】
3.6.実施例10
3.7.ドラッグデリバリースカフォールド
他の応用実施例では、これらの繊維は繊維形態が適切な場所におけるドラッグデリバリースカフォールドに使用することができる。例えば、ミクロスフィア又は他の形態は患者の視界を妨げる可能性がある眼の中では、繊維を連結して視野に浮かばせない。繊維はミクロスフィア又は他の形態、例えばナノ粒子、ヒドロゲル等よりも所定位置によく留まることができる。
【0080】
3.8.実施例11
3.9.方向性インサイツ血管形成
この実施例では、VEGF、bFGF、アンギオテンシン又は血管形成を誘導することが知られている他のもののような血管形成因子のファミリーの一又は複数を含む一又は複数の繊維を、方向性血管形成が所望される経路に沿って体内に配される。繊維が血管形成因子を放出し始めると、周囲の脈管構造からの内皮細胞が誘導されて、正常な血管形成に類似したプロセスに従って、繊維に向けて遊走する。使用される繊維はこの発明において記載した構成体の一又は複数を有するか、又は内側にVEGF又は内皮細胞に対して走化性である類似の成長因子を、外側に平滑筋に対する異なった因子を持つ管であってもよい。このようにして、つくられる血管のサイズを決定することができる。この用途では、細胞は、細胞特異的成長因子によって最初は細胞がないスカフォールド中に案内される。
【0081】
3.10.実施例12
3.11.骨折治癒
他の創傷治癒の実施例では、骨折治癒を向上させることが知られているタンパク質が繊維中に充填される。ついで、この繊維を骨折部位の骨の回りに巻くことができ、成長因子を放出して骨折修復速度を向上させる。
これらの繊維は螺旋構造(一重螺旋又は多重螺旋)であり得、又はそれらは緩い解放された織物に織られてもよい。螺旋又は織物形態の何れでも、繊維は骨の断片の回りに配され、その成長因子を放出しながらそれらを所定位置に保持する。
骨折部位へ血液供給が失われ又は乏しくなったことが原因である非治癒骨折の場合には、VEGF又はその均等物を含む繊維又は繊維群を用いて、骨折領域への血液供給を高めることができる。
この実施例では、骨折は非治療骨折と比較して加速された速度で治癒することができ、ある場合には癒着不能を治癒できる。
更に第三の骨治癒用途では、痛み軽減薬剤を放出する骨折の局所領域に使用することができる。この場合、繊維は、板、ネジ又は他の矯正装置が移植され、又は骨の他の外科的処置が実施される場合に使用することができる。局所的痛み軽減により患者は骨折に負荷を早く与えることになり得、より強くかつより速やかな修復に至り、また患者の生活をより快適なものにしうる。
【0082】
3.12.実施例13
3.13.皮膚潰瘍治癒
皮膚創傷治癒の一形態を記載した実施例8と同様に、この技術の他の重要な実施例は様々な由来の慢性的皮膚潰瘍、例えば糖尿病性足部潰瘍、静脈性潰瘍及び一般的な床ずれを治癒する潜在性である。これらの症状及び潜在的に他の同様の症状は、皮膚創傷治癒を促進することが知られている因子、例えば血小板由来増殖因子(PDGF)、トランスフォーミング成長因子β(TGF-β)、及びVEGF又は類似のタンパク質を放出する繊維の不織網の製作に基づいて治癒することができる。この不織網は潰瘍又は創傷中に直接挿入又は充填することができ、そこでこれら成長因子が創傷治癒過程を加速するのに役立ちうる。これらの包帯は皮膚の痛み及び潰瘍を治癒するために設計することができる。この場合、出血を低減させる必要性は殆どない;むしろ、これらの患者、特に糖尿病性潰瘍を持つ患者の最も大きな必要性の一つは創傷部位に対する血管供給の欠如である。従って、血管形成を誘導する因子は循環を増加させ、痛み又は潰瘍の部位の組織を回復させるのに役立ちうる。
各包帯は、放出される生体分子及びそれらが放出される速度を変更することによって様々なタイプの創傷又は痛みの特定の必要性に照らして設計することができる。
【0083】
3.14.実施例14
3.15.筋移植
他の実施例では、繊維の平行アレイを筋肉幹細胞に充填することができる。これらの幹細胞が心筋、平滑筋又は骨格筋由来でありうる。これらの筋肉幹細胞が繊維アレイに播種されると、繊維は、インビトロで機械的に伸ばされ、これら細胞が整列し適切に分化することを助けうる。整列はまた非常に小径の繊維を使用して達成することもできる。軸索での我々の経験では、50μm径のオーダーの繊維の場合、細胞が繊維の軸に平行に整列することを助ける傾向があることが示されている。この繊維束の他の繊維は血管形成因子を放出して筋細胞のために血管を供給することができる。骨格筋又は平滑筋組織の場合には、神経成長のための繊維をまた含めて、神経筋接合部の形成を誘導することができる。これらの幹細胞を集め、単離し、再生し分化させるために使用される様々な実験条件は当業者に知られており、この特許の一部ではない。
【0084】
実施例15
緑内障の治療
実施例10に記載した眼へのドラッグデリバリーと、実施例6に簡単に記載した神経ステントと同様に、緑内障は、視神経に適用される神経治療と眼内ドラッグデリバリーを組み合わせることによって治療することができる。細胞が眼の中と視神経の経路に沿って支援されると細胞が生存できると仮定される。NT-4、BDNF、CNTFのような成長因子を放出する繊維束を視神経の外部に局所的に塗布することができる。同時に、アポトーシス阻害剤又は網膜神経節細胞を支援する因子を放出する繊維が眼の中に移植される。この組み合わされた試みが緑内障を被っているものの視力を長くし又は救うことができる。
前の実施例からわかるように、基本的な生理学的構造が理解されれば、他の組織、器官、又は構造を織ることができる。これは、消化系、筋骨格系、泌尿器系、循環器系、及び神経系の器官まで拡張することができる。
【0085】
実施例16
分散した水相を含む生分解性ポリマーシース中におけるゲル又はヒドロゲルコアの形成
本発明の他の実施例では、ゲル孔部繊維は生分解性ポリマー繊維壁内に分散した水性、ゲル又はヒドロゲル相中に治療剤をまた含みうる。装置と押出条件は、ここに記す点を除いて実施例1と同様である。
ポリマーが溶媒(A)に溶解したところで、対象の生体分子と界面活性剤の双方を含む水溶液又はゲル又はヒドロゲル(前駆体を含む)をポリマー溶液に添加する。また、界面活性剤を溶媒(A)に加えることができる。水相の濃度は典型的にはポリマー溶液の1から70v/v%の範囲であり、4−20%がゲル又はヒドロゲル充填PLLA繊維の場合に最も典型的である。界面活性剤は当業者になじみの深い物質の一つ又は組み合わせであり、例えばウシ血清アルブミン(BSA)、ポリ(ビニルアルコール)、プルロニック、又はリン脂質ファミリーのような生物学的界面活性剤である。ここに特に記載しないが当業者には知られている他の界面活性剤も拡張して含まれる。典型的な場合には、BSAが対象の生物学的分子よりも約10倍から100倍高い濃度で界面活性剤として使用され、典型的な濃度は水相の2重量%から50重量%の範囲である。発明者等の経験ではゲル又はヒドロゲルの場合には高タンパク質濃度は難しく、よって選択される界面活性剤は分散相のタイプに依存しうることに留意のこと。
【0086】
ある種の機械的エネルギー、例えば超音波分解、ボルテックス処理、又は液体を小オリフィスに強制的に通すことにより生じた剪断力を使用して、油中水型エマルションを水相と有機相間で形成する。ポリマー溶液に対する水溶液の容積に応じて、全容量がポリマー溶液中に導入されるまで水相の部分添加を使用して、段階的に達成できる。このエマルションは押出過程を通じてエマルションの均一性を保証するために押出に必要とされる時間より遙かに過剰な時間、安定でなければならない。分散水相の液滴のサイズは主に界面活性剤の品質と、エマルションの形成において系に加えられた機械的エネルギーの全量に依存する。水相サイズは、放出速度と繊維の機械的性質の双方において重要な変数である。ついで、このエマルションはポリマー溶液として使用され、全ての他の詳細は実施例1において説明したものと同じである。
【0087】
実施例17
繊維壁部内に分散した水性ゲル又はヒドロゲル相を含む生分解性ポリマー繊維コアを有するゲル又はヒドロゲル外部繊維の製作
この実施例は、分散相を実施例16に記載したポリマー溶液に添加している点を除いて全詳細が実施例2と同様である。
【0088】
実施例18
繊維壁部内に分散した水性ゲル又はヒドロゲル相があるゲル又はヒドロゲル外部中空繊維の製作
この実施例は、分散相を実施例16に記載したポリマー溶液に添加している点を除いて全詳細が実施例3と同様である。
【0089】
実施例19
繊維の壁部内に分散した水性ゲル又はヒドロゲル相がある水-孔部繊維の製作
この実施例は、分散相を実施例16に記載したポリマー溶液に添加している点を除いて全詳細が実施例4と同様である。
【0090】
ここに開示されクレームされた構成体と方法の全てが本明細書に照らして過度の実験を行わないで製造し実施することができる。本発明の構成体と方法を好適な実施態様によって説明したが、本発明の概念、精神及び範囲を逸脱しないでここに記載された構成体及び方法及び方法の工程又は工程の連続に変更を適用することができることは当業者には明らかであろう。より詳細には、化学的にも物理的にも関連している所定の薬剤を、同じ又は類似の結果を達成しながらここに記載した薬剤と置き換えることができることは明らかであろう。当業者に明白な全てのそのような類似の置き換え及び変形は添付の特許請求の範囲に記載された発明の精神、範囲及び概念内にあるものと思料される。
【0091】
文献
次の文献は、それがここに記載した事項の補足となる例示的な手順又は他の詳細事項を提供する限りにおいて、出典明示によりここに特に取り込まれる。
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【0092】
次の図面は本明細書の一部を構成し、本発明の所定の側面を更に実証するために含められる。本発明はここに提供される特定の実施態様の詳細な説明と組み合わせてこれらの図面の一又は複数を参照することによってよりよく理解されうる。図面は本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】図1Aは水の孔部(10)と疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図1Bは水の孔部(10)と疎水性ポリマー(20)及び水エマルション(30)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図1Cは水の孔部(10)と疎水性ポリマー(20)及びゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図1Dは水の孔部(10)と疎水性ポリマー(20)及び水とゲル又はヒドロゲル双方のエマルション(50)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。
【図2】図2Aはゲル又はヒドロゲルの孔部(60)と疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部を有する二構成材繊維を示す。図2Bはゲル又はヒドロゲルの孔部(60)と疎水性ポリマー(20)及び水エマルション(30)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図2Cはゲル又はヒドロゲルの孔部(60)と疎水性ポリマー(20)及びゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図2Dはゲル又はヒドロゲルの孔部(60)と疎水性ポリマー(20)及び水とゲル又はヒドロゲル双方のエマルション(50)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。
【図3】図3Aはゲル又はヒドロゲルの孔部(60)と薬物(70)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図3Bはゲル又はヒドロゲルの壁部(90)によって囲撓されたポリマー孔部(80)を有する二構成材繊維を示す。図3Cはゲル又はヒドロゲルの壁部(90)によって囲撓された水エマルション(30)を含むポリマー孔部(80)を有する二構成材繊維を示す。図3Dはゲル又はヒドロゲルの壁部(90)によって囲撓されたゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含むポリマー孔部(80)を有する二構成材繊維を示す。
【図4】図4Aはゲル又はヒドロゲルの壁部(90)によって囲撓された水エマルション及びゲル又はヒドロゲルエマルション(50)を含むポリマー孔部(80)を有する二構成材繊維を示す。図4Bは二つの疎水性ポリマー壁部(20及び100)によって囲撓されたゲル又はヒドロゲルの孔部(60)を有する多構成材繊維を示し、外方のポリマー壁部は水エマルション(30)を含んでなり、内方ポリマー壁部はゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含んでなる。図4Cは疎水性ポリマー(100)とゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含んでなるモノフィラメント繊維を示す。図4Dは疎水性ポリマー(100)と水とゲル又はヒドロゲルエマルション(50)を含んでなるモノフィラメント繊維を示す。
【図5】図5Aは、疎水性ポリマーの孔部(90)と、ゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図5Bは、疎水性ポリマーの孔部(90)と水エマルション及びゲル又はヒドロゲルエマルション(50)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図5Cは、水エマルション(30)を含む疎水性ポリマーの孔部(90)とゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図5Dは、ゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含んでなる疎水性ポリマーの孔部(90)とゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。
【図6】図6Aは、水エマルション及びゲル又はヒドロゲルエマルション(50)を含んでなる疎水性ポリマーの孔部(90)とゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図6Bは、水エマルション(30)を含んでなる疎水性ポリマーの孔部(90)と水エマルション及びゲル又はヒドロゲルエマルション(50)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図6Cは、ゲル又はヒドロゲルエマルション(40)を含んでなる疎水性ポリマーの孔部(90)と水エマルション及びゲル又はヒドロゲルエマルション(50)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部とを有する二構成材繊維を示す。図6Dは、水とゲル又はヒドロゲル双方のエマルション(50)を含む疎水性ポリマー孔部(90)と水とゲル又はヒドロゲル双方のエマルション(50)を含む疎水性ポリマー(20)を含んでなる壁部を有する二構成材繊維を示す。
【図7】本発明の繊維を押し出すのに使用される湿式押出装置を示す。
【図8】本発明において使用される紡糸ノズルを示す。
【図9】本発明の繊維の押出に使用される三重紡糸ノズルを示す。
【図10】多構成材複合繊維の製造に使用される三重紡糸ノズルを示す。
【図11】エマルション充填繊維の壁部を通しての治療剤の流れを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一の繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体。
【請求項2】
上記第一構成材が繊維孔部に存在し、上記第二構成材が繊維壁部に存在している、請求項1に記載の構成体。
【請求項3】
上記第二構成材が繊維孔部に存在し、上記第一構成材が繊維壁部に存在している、請求項1に記載の構成体。
【請求項4】
少なくとも一の更なる繊維を更に含み、該更なる繊維が隣接する内方繊維に外接している、請求項1に記載の構成体。
【請求項5】
上記隣接する内方繊維は外方繊維内にほぼ中心を置く、請求項4に記載の構成体。
【請求項6】
治療剤がゲル又はヒドロゲル中に充填される、請求項1に記載の構成体。
【請求項7】
治療剤が成長因子である、請求項6に記載の構成体。
【請求項8】
上記成長因子が血管形成のプロモータである、請求項7に記載の構成体。
【請求項9】
上記成長因子が神経再生を促進する、請求項7に記載の構成体。
【請求項10】
治療剤がウイルスである、請求項6に記載の構成体。
【請求項11】
治療剤が、タンパク質、酵素、転写因子、シグナル伝達分子、内部メッセンジャー、二次メッセンジャー、キナーゼ、プロテアーゼ、サイトカイン、ケモカイン、構造タンパク質、インターロイキン、ホルモン、抗凝固剤、凝血原、抗炎症剤、抗生物質、血管形成促進剤、血管形成阻害剤、成長因子、免疫調節薬、走化剤、アポトーシス促進剤、アポトーシス阻害剤、及び分裂促進薬からなる群から選択される、請求項6に記載の構成体。
【請求項12】
上記ゲル又はヒドロゲルが前駆体ゲル又は前駆体ヒドロゲルである、請求項1に記載の構成体。
【請求項13】
上記生分解性ポリマー繊維が疎水性薬剤を含む、請求項1に記載の構成体。
【請求項14】
上記ゲル又はヒドロゲルが放射性物質を含む、請求項1に記載の構成体。
【請求項15】
少なくとも一の繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材が水であり、更に上記水が内方コアとして存在する構成体。
【請求項16】
少なくとも一の更なる繊維を更に含み、該更なる繊維が隣接する内方繊維に外接する、請求項15に記載の構成体。
【請求項17】
上記隣接する内方繊維が外方繊維内にほぼ中心を置く、請求項16に記載の構成体。
【請求項18】
上記生分解性ポリマー繊維が疎水性薬剤を含む、請求項15に記載の構成体。
【請求項19】
繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が本質的にゲル又はヒドロゲルからなるエマルションを含む構成体。
【請求項20】
繊維を含むドラッグデリバリー構成体であって、上記繊維が第一構成材を含み、上記第一構成材がゲル又はヒドロゲルであり、更に上記繊維が中空孔部を含む構成体。
【請求項21】
一又は複数の繊維を含むスカフォールド構成体であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される構成体。
【請求項22】
上記第一構成材が繊維孔部に存在し、上記第二構成材が繊維壁部に存在している、請求項21に記載の構成体。
【請求項23】
上記第二構成材が繊維孔部に存在し、上記第一構成材が繊維壁部に存在している、請求項21に記載の構成体。
【請求項24】
少なくとも一の更なる繊維を更に含み、該更なる繊維が隣接する内方繊維に外接する、請求項21に記載の構成体。
【請求項25】
上記隣接する内方繊維が外方繊維内にほぼ中心を置く、請求項24に記載の構成体。
【請求項26】
治療剤がゲル又はヒドロゲル中に充填される、請求項21に記載の構成体
【請求項27】
治療剤が成長因子である、請求項26に記載の構成体。
【請求項28】
上記成長因子が血管形成のプロモータである、請求項27に記載の構成体。
【請求項29】
上記成長因子が神経再生を促進する、請求項27に記載の構成体。
【請求項30】
治療剤がウイルスである、請求項26に記載の構成体。
【請求項31】
治療剤が、タンパク質、酵素、転写因子、シグナル伝達分子、内部メッセンジャー、二次メッセンジャー、キナーゼ、プロテアーゼ、サイトカイン、ケモカイン、構造タンパク質、インターロイキン、ホルモン、抗凝固剤、凝血原、抗炎症剤、抗生物質、血管形成促進剤、血管形成阻害剤、成長因子、免疫調節薬、走化剤、アポトーシス促進剤、アポトーシス阻害剤、及び分裂促進薬からなる群から選択される、請求項26に記載の構成体。
【請求項32】
上記ゲル又はヒドロゲルが前駆体ゲル又は前駆体ヒドロゲルである、請求項21に記載の構成体。
【請求項33】
上記生分解性ポリマー繊維が疎水性薬剤を含む、請求項21に記載の構成体。
【請求項34】
上記ゲル又はヒドロゲルが放射性物質を含む、請求項21に記載の構成体。
【請求項35】
繊維の製造方法であって、上記繊維が第一構成材と第二構成材を含み、上記第一構成材が生分解性ポリマーであり、上記第二構成材がゲルとヒドロゲルからなる群から選択される方法。
【請求項36】
繊維の製造方法であって、上記繊維が本質的にゲル又はヒドロゲルからなるエマルションを含む方法。
【請求項37】
繊維の製造方法であって、上記繊維が第一構成材を含み、上記第一構成材がゲル又はヒドロゲルであり、更に上記繊維が中空孔部を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−131817(P2012−131817A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−46180(P2012−46180)
【出願日】平成24年3月2日(2012.3.2)
【分割の表示】特願2006−513446(P2006−513446)の分割
【原出願日】平成16年4月29日(2004.4.29)
【出願人】(500039463)ボード・オブ・リージエンツ,ザ・ユニバーシテイ・オブ・テキサス・システム (115)
【Fターム(参考)】