説明

治療薬持続放出型腔内インプラント

少なくとも1つの眼症状を治療するための少なくとも1つの治療薬を含む、腔内インプラントを本明細書に説明する。本明細書に説明されるインプラントは、眼組織に固定されず、むしろ、眼の前房内に存在する流れおよび重力によって定位置に保持される。インプラントは、好ましくは、ポリマー性で生分解性であり、小柱網および関連する眼組織ならびに眼の前房内の流体の両方への少なくとも1つの治療薬の持続放出を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2010年1月22日に出願の米国特許仮出願61/297,660号の利益を主張し、その全体の開示は、この具体的な参照によって本明細書に組み込まれる。
本発明は、腔内持続放出インプラント、ならびにそれを作製および使用する方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
眼内系および眼症状を治療するための方法を本明細書に説明する。特に、眼房の眼内圧亢進を治療するための眼の前房および/または前部硝子体腔への持続放出治療薬送達システムの局所薬を説明する。
【0003】
さらに、少なくとも1つの治療薬を含有する、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを提供するステップと、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを、眼の前房内に埋入するステップと、眼症状を治療するステップとを含み、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約1ヶ月を超える期間の間、1日あたり約100ngの少なくとも1つの生物活性剤を放出する、眼症状を治療するための方法を、本明細書に説明する。
【0004】
さらには、少なくとも1つの治療薬を含有する、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを提供するステップと、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを、眼の前房内に埋入するステップと、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが下角内に沈降するために十分な時間放置するステップと、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが少なくとも1つの治療薬を放出するために十分な時間放置するステップと、緑内障を治療するステップとを含み、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約1ヶ月を超える期間の間、1日あたり約100ngの少なくとも1つの生物活性剤を放出する、眼の緑内障を治療するための方法を、本明細書に説明する。
【0005】
一実施形態では、眼症状は、緑内障および/または眼内圧亢進である。持続放出インプラントは、最初の1ヶ月にわたり、少なくとも1つの治療薬の約70%を放出することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの治療薬は、約30%の少なくとも2つの分解性持続放出インプラントを含むことができ、ラタノプロスト、ビマトプロスト、およびトラボプロスト、ならびにそれらの塩、エステル、およびプロドラッグから成る群から選択される。
【0006】
別の実施形態では、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約5%〜約70%のポリ(D,L−ラクチド)を含む。他の実施形態では、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約5%〜約40%のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含む。さらに他の実施形態では、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約5%〜約40%のポリエチレングリコールを含む。
【0007】
さらに他の実施形態では、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約30%の治療薬、65%のポリ(D,L−ラクチド)、および5%のポリエチレングリコール、または約20%の治療薬、55%のポリ(D,L−ラクチド)、10%のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、および5%のポリエチレングリコールを含む。
【0008】
インプラント自体は、適切なアプリケータを使用して眼組織内に挿入することができる。埋入されると、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、前房内への埋入の24時間以内に下角に沈降することができる。
【0009】
一実施形態では、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが少なくとも1つの治療薬を放出するための十分な時間は、約42日を超える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】両方とも虹彩角膜角内に位置する、前房からの房水の流出のための2つの異なる経路を例示する。
【図2】前房からの房水流出の位置における、本明細書に説明されるインプラントの留置を例示する。
【図3】眼の前房内に位置する流れ、ならびに本明細書に説明される1つまたは複数のインプラントの可能な位置を例示する。
【図4】本説明のインプラントの放出プロファイルを図式的に例示する。
【図5】本説明のインプラントの放出プロファイルを図式的に例示する。
【図6】本説明に従う、インプラントの留置を例示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
〔用語の定義〕
「約」という用語は、それによって修飾されている、数、パラメータ、または特性の前後10パーセントを意味する。
【0012】
「生分解性ポリマー」は、インビボで分解する1つまたは複数のポリマーを意味し、経時的な1つまたは複数のポリマーの侵食が、治療薬の放出と同時に、またはそれに続いて起こる。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または2つを超える異なるポリマー単位を含むポリマーであり得る。ポリマーは、ゲルまたはヒドロゲル型ポリマー、ポリ乳酸、もしくはポリ(乳酸−コ−グリコール)酸、もしくはポリエチレングリコールポリマー、またはその混合物もしくは誘導体であることができる。
【0013】
「眼症状」は、眼球領域を冒す、またはそれに係る、疾患、病気、または病態を意味する。大まかにいうと、眼は、眼球、ならびに眼球を構成する組織および流体、眼周囲筋(斜紋筋および直筋等)、ならびに眼球内またはそれに隣接する視神経の一部を含む。
【0014】
前眼症状は、眼周囲筋肉、瞼、または水晶体嚢もしくは毛様筋の前壁から後壁に位置する眼球組織もしくは流体等の前(すなわち、眼の前方)眼球領域または部位を冒す、またはそれに係る、疾患、病気、または病態である。したがって、前眼症状は、主に、結膜、角膜、前房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体嚢の後壁の前方)、水晶体または水晶体嚢、ならびに前眼球領域または部位を新生または支配する血管および神経を冒すか、またはそれに係わる。
【0015】
したがって、前眼症状は、例えば、無水晶体、偽水晶体、乱視、眼瞼痙攣、白内障、結膜疾患、結膜炎、角膜疾患、角膜潰瘍、乾性眼症候群、眼瞼疾患、涙器疾患、涙道閉塞、近視、老眼、瞳孔障害、屈折障害、および斜視等の疾患、病気、または病態を含むことができる。緑内障はまた、緑内障治療の臨床目的が、眼の前房内の房水の高圧を低下させる(すなわち、眼内圧力を低下させる)ことであり得るため、前眼症状であるとみなすことができる。
【0016】
後眼症状は、主に、脈絡膜もしくは強膜(水晶体嚢の後壁面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(すなわち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生または刺激する血管および神経等の後眼領域または部位を冒す、またはそれに係る疾患、病気、または病態である。
【0017】
したがって、後眼症状は、例えば、急性黄斑視神経網膜症、ベーチェット病、脈絡膜血管新生、糖尿病性ブドウ膜炎、ヒストプラズマ症、感染症(真菌またはウイルス性感染症等)、黄斑変性症(急性黄斑変性症、非滲出性加齢性黄斑変性症、および滲出性の加齢性黄斑変性症等)、浮腫(黄斑浮腫、嚢胞様黄斑浮腫、および糖尿病性黄斑浮腫等)、多病巣性脈絡膜炎、後眼部位または位置を冒す眼外傷、眼腫瘍、網膜障害(網膜中心静脈閉塞症、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉塞性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患、交感性眼炎、フォークト・小柳・原田(VKH)症候群、ブドウ膜拡散、眼レーザー治療によって生じた、または影響を受けた後眼症状、光線力学的療法によって生じた、または影響を受けた後眼症状、光凝固、放射線網膜症、網膜上膜障害、網膜静脈分枝閉塞症、前部虚血性視神経障害、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、網膜炎、色素変性症、および緑内障等の疾患、病気、または病態を含むことができる。緑内障は、治療目的が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または喪失による視力低下を防止または視力低下の発生を減少させること(すなわち、神経防護作用)であるため、後眼症状とみなすことができる。
【0018】
「眼領域」または「眼部位」は、目の前部および後部を含む、眼球のあらゆる領域を意味し、それには、一般的に、眼内に見られるあらゆる機能的(例えば、視力)または構造的組織、または眼球の内部もしくは外部を部分的もしくは完全に覆う組織もしくは細胞層が挙げられるが、これらに限定されない。眼領域内の眼領域の具体的な例には、前眼(眼)房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜上腔、角膜内腔、角膜上腔、強膜、経毛様体扁平部、外科的に誘発された無血管領域、黄斑、および網膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0019】
「持続放出」または「制御された放出」は、規定の速度でのインプラントからの少なくとも1つの治療用生物活性剤または薬物の放出を意味する。持続放出は、具体的に行うことを意図しないかぎり、治療用生物活性剤が、予期できない様式でインプラントから散発的に放出されることがなく、生物環境との接触時にインプラントから「バースト」しないことを意味する(本明細書において、一次の速度則とも称される)。しかしながら、本明細書に使用される「持続放出」という用語は、展開に関連する「バースト現象」を除外しない。本説明に従ういくつかの例示的実施形態では、少なくとも1つの治療薬の初期のバーストは望ましく、その後、より漸進的な放出が続いてもよい。放出速度は、定常状態(一般に、「除放」またはゼロ次速度論と称される)であってもよく、すなわち、少なくとも1つの治療薬が規定時間にわたって(初期のバースト相を伴って、または伴わずに)、均等量で放出されるか、または漸進的な放出であってもよい。例えば、持続放出は、実質的に、局所投与と比較すると、治療薬送達において変動を有さないようにすることができる。
【0020】
「治療的有効量」は、眼症状を治療するか、または眼もしくは眼の領域に、重大な負の、もしくは有害な副作用を引き起こすことなく、眼障害もしくは損傷を減少させるか、もしくは防止するために必要な薬剤のレベルまたは量を意味する。上述を考慮して、ラタノプロスト等の治療薬の治療的有効量は、眼症状の少なくとも1つの症状を減少させるのに有効である量である。
【0021】
少なくとも1つの治療薬を含む、腔内インプラントを、本明細書に説明する。本明細書に説明されるインプラントは、眼の前房内に留置されるが、眼組織に固定されない。むしろ、インプラントは、眼の前房内に存在する流れおよび重力によって定位置に維持される。インプラントは、好ましくは、ポリマー性生分解性であり、小柱網(TM)および関連する眼組織ならびに埋入された眼の前房内の流体の両方への、少なくとも1つの治療薬の持続放出を提供する。
【0022】
本明細書に説明される、持続放出インプラントまたは治療薬送達システムの直接腔内または前硝子体内投与は、本明細書に記載される数々の眼症状を治療するのに有効である。かかる病態の1つは、眼内圧亢進を特徴とする緑内障であり、ロバスト強膜薬物クリアランス機構(例えば、局所的点眼)を回避することによって、本明細書に記載されるように治療することができる。
【0023】
眼内圧(IOP)の変動が、緑内障損傷の独立した危険因子であると思われる。眼高圧または緑内障を治療するための従来の療法は、IOPを低下させるための抗高圧局所的点眼薬の使用である。残念ながら、局所的点眼薬でのボーラス投薬は、経時的にIOP制御の変化をもたらすピーク値およびトラフ値を有する前房治療薬レベルをもたらす。このIOPの変動は、特に、進行した緑内障を罹患する患者において、緑内障の視野進行をもたらす場合がある。医学療法を必要とする眼高圧または緑内障を罹患する患者において、この満たされていない必要性へ対処するのが、本明細書に説明される持続放出腔内インプラントである。インプラントは、局所点眼が不都合な昼夜を通して、少ないIOPの変動を確立することができる。夜間のIOPスパイクは、開放隅角緑内障を罹患する患者において、午後11時〜午前6時の間に生じ、これは、一部の患者において、進行性の視野喪失の原因となる場合がある。局所療法のさらなる制限は、多くの患者において、夜間のIOP亢進を制御しないボーラス投薬での、前房内の薬物濃度の定常状態の欠如である。本明細書に説明されるインプラントは、夜間を通して、少ないIOPの変動を確率し、それによって、夜間時の局所投与の複雑性を緩和する。
【0024】
眼高圧または緑内障を治療するための、1滴または数滴の局所点眼を含む、医療レジメンにおけるノンコンプライアンスは、50%を超える患者に生じ、これは、点眼が定期的スケジュールで使用されないとき、日中のIOP変動の原因となる場合がある。本明細書に説明されるインプラントは、そのようなコンプライアンスを必要とせず、したがって、より患者に優しい。
【0025】
治療薬の連続放出を提供し、それによって、局所投薬により房水内に生じ得るピークおよびトロフ治療薬レベルを回避する、治療薬持続放出型腔内インプラントを本明細書に説明する。本明細書に説明されるインプラントにより、房水内で達成される定常状態の薬物濃度は、従来の局所薬物投与とは異なり、昼夜のIOP変動を有意に減少させることができる。
【0026】
眼の前眼房および後眼房は、血液と同様のイオン組成を有する毛様体によって主に分泌される流体である、房水で満たされている。房水の機能は、1)水晶体および角膜等の眼の無血管構造に栄養素を供給すること、2)IOPをその生理学的範囲内に維持することの二重機能である。IOPの維持、および前部への栄養素の供給は、正常な視力を維持するために重要な因子である。
【0027】
房水が、主に、毛様体の毛様体突起によって、眼の後眼房に分泌され、房水産生の副次機構は、動脈血からの限外ろ過を介する(図1)。次いで、房水は、瞳孔を横断することによって前房に到達し、虹彩に隣接する房水の流れが上方であり、角膜に隣接する房水の流れが下方に流動する対流が存在する(図2)。
【0028】
2つの異なる房水流出経路が存在し、両方とも、眼の虹彩角膜角内に位置する(図1)。ブドウ膜強膜または非従来的経路は、毛様体筋線維中の細胞間隙を介する拡散によって前房を出る房水を指す。これは、ヒトにおいて、少数の流出経路であるように見えるが、ブドウ膜強膜または非従来的経路は、細胞外マトリックスの再構成を介して、この経路の機能性を増大させる、高脂血症等の特異的な抗高圧症薬の標的である。
【0029】
房水は、ヒトにおいて、最初に、10〜30ミクロンを下回る範囲の細孔径を有する、小柱網内に360度排水される。房水は、シュレム管を通って排水され、25〜30のコレクターチャネルを通って、眼から、房水静脈内、および最終的に、上強膜血管および眼窩静脈内に出る(図3を参照)。図3は、概略図であり、矢印は、眼の前房内の房水対流を示す。少なくとも1つの治療薬を放出する、本明細書に説明されるインプラントを、下方に留置して示す。インプラントから溶出した遊離治療薬は、房水対流(矢印)に進入する。次いで、治療薬は、前房にわたって分散され、虹彩根部領域を通って、小柱網および毛様体領域等の標的組織に進入する。
【0030】
腔内注入および本明細書に説明される生分解性インプラントの留置の利点とは、前房が身体内の免疫学的特権部位であり、ポリマー性治療薬送達システム等の外来物質と反応する可能性が低いことである。これは、外来物質への炎症反応が一般的である、サブテノン間隙には当てはまらない。免疫特権を与える免疫調節因子を含有する、前房に加えて、30ミクロンを超える直径を有する粒子は、免疫原性が少なく、眼球炎症を引き起こす傾向がより少ない。眼の在住マクロファージは、異物または感染性病原菌との防御の第一線である。しかしながら、30ミクロンを超える粒子は、貪食することが困難である。したがって、30ミクロンを超える粒子は、マクロファージ活性化およびそれに続く炎症カスケードになりにくい。この炎症反応の低下は、患者にとって有益である。
【0031】
ポリマー性放出システムを用いる、房水への治療薬または薬物の送達の有効性は、サブテノンの適用と比較するとき、腔内位置が原因でより高い。したがって、サブテノン間隙において送達された治療薬の1%未満は、房水に進入するが、腔内で放出された薬物の100%は、房水に進入する。したがって、より低い治療薬の負荷は、サブテノンの適用と比較して、本明細書に説明される腔内薬物送達システムに必要である。
【0032】
したがって、治療薬への結膜の暴露は少なく、その結果、プロスタグラジンおよびプロスタミン等の局所治療薬が送達されるとき、結膜充血を生じる傾向が低い。最後に、治療薬は、腔内埋入の後に、直接、房水静脈を介して結膜/上強膜血管に進入する。これは、結膜の血管外間隙内に拡散して存在する高濃度の治療薬により、多くの血管が拡大の危険性がある、サブテノン注入と比較して、例えば、プロスタグランジン類似体により、結膜充血を最小限化する。直接腔内埋入はまた、局所点眼で使用されるとき、眼表面を刺激する可能性がある防腐剤への必要性をなくす。
【0033】
本明細書に説明されるインプラントは、虹彩角膜角へのインプラントの最大の接近を提供するために、ポリマー性材料から作製される。加えて、約0.1mm〜約1mmの直径、幅または断面の範囲であり、約0.1mm〜約6mmの長さのインプラントのサイズは、約22G〜約30Gの範囲の小さいゲージ針を有するアプリケータを使用して、インプラントが前房内に挿入されることが可能になる。
【0034】
本明細書に説明されるインプラントを形成するために使用されるポリマー材料は、経時的に、眼の流出システム内への治療薬の持続放出を提供する、ポリ乳酸、グリコール酸、および/またはポリエチレングリコールの任意の組み合わせであることができる。高脂血症のための他のポリマーベースの持続放出治療薬送達システムもまた、IOPを低下するために、腔内で使用することもできる。
【0035】
本明細書に説明される腔内インプラントは、種々の期間にわたって、治療薬負荷を放出することができる。腔内または前硝子体内に挿入されるとき、インプラントは、長期間の間、少なくとも1つの治療薬の治療レベルを提供する。長期間は、約1週間、約6週間、約6ヶ月、約1年、またはそれを上回ることができる。
【0036】
インプラントに使用するための好適なポリマー性材料または組成物には、眼の機能性または生理機能と実質的な干渉を起こさないように、眼と適合性である、すなわち、生体適合性である材料が挙げられる。かかる材料は、好ましくは、少なくとも部分的、およびより好ましくは、実質的に生分解性または生体内分解性である。
【0037】
一実施形態では、有用なポリマー性材料の例には、分解されたとき、生理学的に許容される分解産物をもたらすモノマーを含む、有機エステルおよび有機エーテルに由来する、および/またはそれらを含む材料が挙げられるが、これらに限定されない。また、無水物、アミド、オルトエステル、および同等物に由来する、および/またはそれらを含む、ポリマー性材料もまた、それら自体で、または他のモノマーと組み合わせて、使用され得る。ポリマー性材料は、付加または縮合ポリマー、有利に、複数のポリマーであり得る。ポリマー性材料はまた、架橋または非架橋、例えば、架橋されているポリマー性材料の約5%未満、または約1%未満など、せいぜい軽度に架橋され得る。大半の部分では、炭素および水素以外に、ポリマーは、酸素および窒素のうちの少なくとも1つ、有利には、酸素を含む。酸素は、オキシ、例えば、ヒドロキシまたはエーテル、カルボニル、例えば、非−オキソ−カルボニル(カルボン酸エステル等)、および同等物として存在し得る。
【0038】
一実施形態では、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)、および多糖は、インプラントにおいて有用である。ポリエステルには、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ乳酸、グリコール酸、ポリカプロラクト、およびそれらの組み合わせのポリマーを挙げることができる。一般的には、L−乳酸またはD−乳酸を採用することによって、徐々に侵食するポリマーまたはポリマー性材料が達成されるが、侵食は、乳酸ラセミ体で実質的に強化される。有用な多糖およびポリエーテルには、ポリエチレングリコール(PEG)、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロース、特に、例えば、水不溶性であり、かつ約5kD〜約500kDの分子量を有することを特徴とする、カルボキシメチルセルロースエステルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
関心対象の他のポリマーには、ポリビニルアルコール、ポリエステル、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されず、それらは、生体適合性であり、かつ生分解性および/または生体内分解性であり得る。本発明のインプラントに使用するためのポリマーまたはポリマー性材料のいくつかの好ましい特性には、生体適合性、選択された治療薬との適合性、本明細書に説明される治療薬送達システムを作製する際のポリマーの使用の簡便性、生理学的環境における所望の半減期、および水不溶性が挙げられ得る。
【0040】
一実施形態では、本発明に従う腔内インプラントは、30%の治療薬、45%のR203Sポリ(D,L−ラクチド)、20%のR202Hポリ(D,L−ラクチド)、および5%のPEG3350の製剤を有する。別の実施形態では、製剤は、20%の治療薬、45%のR203Sポリ(D,L−ラクチド)、10%のR202Hポリ(D,L−ラクチド)、20%のRG752Sポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、および5%のPEG3350である。使用することができる、構成要素の濃度範囲は、約5%〜約40%の治療薬、約10%〜約60%のR203S、約5%〜約20%のR202H、約5%〜約40%のRG752S、および0〜約15%のPEG3350である。治療薬放出速度を調節するために、具体的なポリマーが除去され、他の種類が追加され得る。使用されるポリマーは、市販されている。
【0041】
インプラントを形成するために使用されるポリマーは、埋入されると、組み合わされたとき、少なくとも1つの治療薬の持続放出に必要とされる特性を提供する、それらに関連する独立した特性を有する。例えば、R203Sポリ(D,L−ラクチド)は、約0.25〜約0.35dl/gの固有粘度または平均粘度を有し、R202Hポリ(D,L−ラクチド)は、約0.16〜約0.24dl/gのより低い固有粘度を有する。したがって、本明細書に説明されるポリマー組成物は、より高い分子量およびより低い分子量のポリ(D,L−ラクチド)の混合物を有することができる。同様に、RG752Sポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)は、約73:27〜約77:23のD,L−ラクチド:グリコリドのモル比、および約0.16〜約0.24dl/gの固有粘度を有する。本明細書に使用されるポリエチレングリコールは、例えば、約3,000〜約3,500g/mol、好ましくは、約3,350g/molの分子量を有することができる。異なる固有粘度および/または分子量を有するポリマーは、特定の治療薬または薬剤の持続放出に適切なポリマー性組成物に到達するように、組み合わせることができる。
【0042】
インプラントのポリマー性マトリックスを形成するために含まれる、生分解性ポリマー性材料は、好ましくは、酵素的または加水分解的不安定性を受ける。水溶性ポリマーは、加水分解性または生分解性の不安定な架橋によって架橋され、有用な水不溶性ポリマーを提供し得る。安定度は、ホモポリマーまたはコポリマーを採用するかどうかのモノマーの選択、ポリマーの混合採用、およびポリマーが末端酸基を含むかどうかに依って、大幅に異なる場合がある。
【0043】
インプラントに採用されるポリマー性組成物の相対的平均分子量は、ポリマーの生分解の制御、したがって、インプラントの長期の放出プロファイルと同様に重要である。異なる分子量の同一または異なるポリマー性組成物は、少なくとも1つの治療薬の放出プロファイルを調整するために含み得る。
【0044】
本明細書に説明されるインプラントは、モノリシックであることができる、すなわち、ポリマー性マトリックスにわたって均一に分散されるか、または治療薬のリザーバがポリマー性マトリックスによってカプセル化される、カプセル化された少なくとも1つの治療薬を有する。加えて、治療薬は、マトリックス内で、不均一パターンで分散され得る。例えば、インプラントは、少ない濃度を有し得るインプラントの第2の部分に対して、治療薬のより高い濃度を有する一部分を含み得る。
【0045】
インプラントの総重量は、前房の容積および治療薬の活性または溶解度に依る。しばしば、治療薬の用量は、一般的に、用量あたり約0.1mg〜約200mgのインプラントである。例えば、インプラントは、組み込まれた治療薬を含み、約1mg、約3mg、約5mg、約8mg、約10mg、約100mg、約150mg、約175mg、約200mgの重量であり得る。
【0046】
インプラントに関連する治療薬の負荷は、それに関連する持続放出特性またはプロファイルを有する。例えば、埋入後の最初の30日間にわたり、本明細書に説明されるインプラントは、約1μg/日〜約20μg/日を放出することができる。インプラントの寿命にわたり、約100ng/日〜約900ng/日を放出することができる。他の実施形態では、約300ng/日、約675ng/日、または約700ng/日の治療薬が放出される。
【0047】
治療薬、ポリマー、および任意の他の調整剤の比率は、異なる平均比率を有するいくつかのインプラントバッチを実験的に製剤することによって決定し得る。放出速度は、例えば、無限のシンク方法を使用して推測することができ、重量決定されたインプラントのサンプルは、水中に0.9%のNaClを含有する、測定された容量の溶液に追加され、それは、放出後の治療薬濃度が5%を下回る飽和であるような溶液容量である。混合物を、37℃に維持し、ゆっくりと攪拌する。時間関数として、溶解された治療薬の出現は、吸収が一定になるか、または90%を上回る治療薬が放出されるまで、分光光度法、HPLC、質量分析法、および同等物等の当該技術分野において既知の種々の方法に従い得る。
【0048】
本明細書に説明されるインプラントとともに使用することができる治療薬は、プロスタグラジン、プロスタグランジン類似体、およびプロスタミドである。例には、プロスタグランジンE(アルプロスタジル)、プロスタグランジンE(ジノプロストン)、ラタノプロスト、およびトラボプロストを含む、プロスタグランジン受容体作動薬が挙げられる。ラタノプロストおよびトラボプロストは、プロスタグランジンプロドラッグ(すなわち、プロスタグランジンのl−イソプロピルエステル)であるが、それらは、1−カルボン酸に加水分解された後に、プロスタグランジンF受容体に作用するため、プロスタグラジンと称される。プロスタミド(プロスタグランジン−エタノールアミドとも称される)は、プロスタグランジンと薬理学的に一意的な(すなわち、プロスタミドが、プロスタグラジンが作用するよりも、異なる細胞受容体[プロスタミド受容体]に作用するため)、プロスタグランジン類似体であり、内在性カンナビノイド(アナンドアミド等)のシクロ−オキシゲナーゼ−2(「COX−2」)酵素酸素化の産物として形成された中性脂肪である。加えて、プロスタミドは、原位置で、1−カルボン酸に加水分解しない。プロスタミドの例は、ビマトプロスト(合成的に作製された、17−フェニルプロスタグランジンF2αのエチルアミド)およびプロスタミドF2αある。治療薬として使用することができる他のプロスタグランジン類似体には、ウノプロストンおよびEP/EP受容体作動薬が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
本明細書に使用される、プロスタグラジンには、1つまたは複数の種類のプロスタグランジン誘導体、プロスタグランジン類似体(プロスタミドおよびプロスタミド誘導体を含む)、プロドラッグ、それら塩、およびそれらの混合物も挙げられる。あるインプラントでは、プロスタグランジンは、構造:
【化1】

を有する化合物を含む。
式中、点線の結合は、シスまたはトランス構造であることができる、単一または二重結合を表し、Aは、2個〜6個の炭素原子を有するアルキレンまたはアルケニレンラジカルであり、ラジカルは、1個または複数個のオキシドラジカルによって中断され、1個または複数個のヒドロキシ、オキソ、アルキルオキシ、またはアルキルカルボキシ基で置換され得、アルキルラジカルは、1個〜6個の炭素原子を含み、Bは、4個〜10個の炭素原子を有するヒドロカルビルアリールおよびヘテロアリールラジカルから選択される、3個〜7個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカルであり、ヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子から選択され、Xは、−ORまたは−N(Rであり、Rは、水素、1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルから選択され、
【化2】

式中、Rは、1個〜6個の炭素原子を有する低級アルキルラジカルであり、Zは、=0であり、又は2個の水素ラジカルを表し、RおよびRのうちの1つは、=0、−OH、または−O(CO)R基であり、他方は、−OHまたは−O(CO)Rであるか、またはRは、=0であり、Rは、水素であり、Rは、約1個〜約20個の炭素原子を有する飽和もしくは不飽和非環式炭化水素基、または−(CH2)であり、mは、0、または1〜10の整数であり、Rは、上述の通り、3個〜7個の炭素原子を有するシクロアルキルラジカル、またはヒドロカルビルアリールもしくはヘテロアリールラジカル、またはそれらの薬学的に許容される塩である。
【0050】
説明される化合物の薬学的に許容される酸添加塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、もしくは重硫酸塩、リン酸塩もしくは過リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、サッカラート、およびp−トルエンスルホン酸塩等の薬学的に許容されるアニオンを含有する、非毒性の添加塩を形成する酸から形成されたものである。
【0051】
一例示的実施形態では、インプラントは、構造:
【化3】

を有するプロスタグランジンを含む。式中、yは、0または1であり、xは、0または1であり、xおよびyの両方が、1ではなく、Yは、アルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、チオール、ヒドロキシ、アルキルオキシ、アルキルカルボキシ、およびハロで置換されたアルキルから成る群から選択され、アルキルラジカルは、1個〜6個の炭素原子を含み、nは、0、または1〜3の整数であり、Rは、=0、−OH、またはO(CO)Rである。
【0052】
さらなる例示的実施形態では、プロスタグランジンは、式:
【化4】

〔式中、斜線は、α構造を示し、立体三角形は、β構造を示す〕
を有する。
【0053】
本明細書に説明されるいくつかのインプラントでは、プロスタグランジンは、式:
【化5】

〔式中、Yは、Clまたはトリフルオロメチルである〕
を有する。
【0054】
他のプロスタグラジンは、以下の式:
【化6】

およびその9−、11−、および/または15エステルを有することができる。
【0055】
一例示的実施形態では、プロスタグランジンの構成要素は、式:
【化7】

を有する化合物を含む。
【0056】
この化合物はまた、ビマトプロストとも知られ、LUMIGAN(登録商標)(Allergan,Inc.,Irvine,CA)の商標名で、局所用眼科用溶液で公的に入手可能である。
【0057】
眼内インプラントの別の例示的実施形態では、プロスタグランジンは、
【化8】

の構造を有する化合物を含む。
【0058】
このプロスタグランジンは、ラタノプロストとして知られ、XALATAN(登録商標)の商標名で、局所用の眼科用溶液で公的に入手可能である。したがって、インプラントは、ラタノプロスト、その塩、異性体、プロドラッグ、またはそれらの混合物から典型的に成る、またはそれらから成る、少なくとも1つの治療的生物活性剤を含み得る。
【0059】
プロスタグランジンの構成要素は、粒子または粉末形態であり得、生分解性ポリマーマトリックスによって捕捉され得る。通常、プロスタグランジン粒子は、約3000ナノメートル未満の有効な平均粒径を有する。あるインプラントでは、粒子は、約3000ナノメートルより1桁小さい有効な平均粒径を有してもよい。例えば、粒子は、約500ナノメートル未満の有効な平均粒径を有してもよい。付加的なインプラントでは、粒子は、約400ナノメートル未満の有効な平均粒径を有し、さらなる実施形態では、約200ナノメートル未満の粒径を有してもよい。
【0060】
本明細書に説明される腔内インプラントに有用な他の治療薬には、β−アドレナリン受容体作動薬(毛様体によって房水産生を減少する、チモロール、ベタキソロール、レボベタキソロール、アルテオロール、レボブノロール、およびプロパノロール)、α−アドレナリン受容体作動薬(ブリモニジンおよびアプラクロニジン(アイオピジン)(房水産生を減少させ、ブドウ膜強膜流出を増加させる、二重機構によって作用する)等)、選択性の少ない交感神経様作動薬(エピネフリンおよびジペベフリン(おそらく、β2−作動作用によって、小柱網を通り、おそらく、ブドウ膜強膜流出経路を通る、房水の流出を増加するように作用する)、炭素脱水酵素阻害薬(ドルゾラミド、ブリンゾラミド、アセタゾールアミド等(毛様体内で炭素脱水酵素を阻害することによって房水の分泌を減少させる))、rho−キナーゼ阻害薬(小柱網のアクチン細胞骨格をかく乱することによって、IOPを低下させる)、バプタン(バソプレッシン−受容体作動薬)、酢酸アネコルタブおよび類似体、エタクリン酸、カンナビノイド、コリン作用作動薬(直接作用するコリン作用作動薬(縮瞳薬、副交感神経様作動薬)(カルバコール、塩酸ピロカルピン等)を含む)、ピロカルビン硝酸、およびピロカルピン(小柱網を締め付け、房水の流出の増加を可能にする、毛様筋の収縮によって作用)、コリンエステラーゼ阻害薬(デメカリウム、エコチオフェート、およびフィゾスチグミン等)、グルタミン酸拮抗薬、カルシウムチャンネル遮断薬(メマンチン、アマンタジン、リマンタジン、ニトログリセリン、デキストロファン、デトロメトルファン、ジヒドロピリジン、ベラパミル、エモパミル、ベンゾチアゼピン、ペプリジル、ジフェニルブチルピペラジン、ジフェニルピペラジン、フルスピレン、エリプロジル、イフェンプロジル、チバロシン、フルナリジン、ニカルジピン、ニフェジピン、ニモジピン、バルニジピン、ベラパミル、リドフラジン、乳酸プレニラミン、およびアミロリドを含む)、プロスタミド(ビマトプロスト、または薬学的に許容される塩もしくはそのプロドラッグ等)、ならびにプロスタグラジン(トラボプロスト、クロプロステノール、フルプロステノール、13,14−ジヒドロ−クロプロステノール、イソプロピルウノプロストン、およびラタノプロストを含む)、AR−I02(Aerie Pharmaceuticals,Inc.から入手可能なプロスタグランジンFP作動薬)、AL−3789(Alconから入手可能な酢酸アネコルタブ、血管形成抑制ステロイド)、AL−6221(トラボプロストトラバタン)プロスタグランジンFP作動薬)、PF−03187207(Pfizerから入手可能な酸化窒素供与性プロスタグランジン)PF−04217329(これも、Pfizerから入手可能)、INS1 15644(Inspire Pharmaceuticalsから入手可能なラトランクリンB化合物)、ならびにINS1 17548(これもInspire Pharmaceuticalsから入手可能なRho−キナーゼ阻害薬)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0061】
β阻害剤およびプロスタグランジン/プロスタミド類似体等の眼球の降圧剤の組み合わせもまた、本明細書に説明される送達システムに使用することができる。これらには、ビマトプロスト/チモロール、トラボプロスト/チモロール、ラタノプロスト/チモロール、ブリモニジン/チモロール、およびドルゾラミド/チモロールが挙げられる。IOPを低下させる治療薬と組み合わせて、神経防護作用をもたらす薬剤も、送達システム内に留置することもでき、それは、メマンチンおよびセロトニン作動[例えば、S−(+)−I−(2−アミノプロピル1)−インダゾール−6−01]等に制限されない、5−HT.sub.2作動薬]を含む。
【0062】
眼降圧薬の分類以外の他の治療薬を腔内インプラントとともに使用して、種々の眼症状を治療することができる。例えば、抗VEGFおよび他の抗血管新生化合物を使用して、血管新生緑内障を治療することができる。別の例は、ブドウ膜炎および角膜移植拒絶反応等の疾患を治療するために使用することができる、コルチコステロイドまたはカルシニューリン阻害薬の使用である。これらのインプラントもまた、結膜下腔内、および硝子体内に留置することができる。
【0063】
加えて、インプラントを作製するための新規方法を本明細書に説明する。本発明のインプラントの治療薬は、好ましくは、インプラントの約1重量%〜約90重量%である。より好ましくは、治療薬は、インプラントの約5重量%〜約30重量%である。好ましい実施形態では、治療薬は、降圧薬であり、インプラントの約15重量%(例えば、約5重量%〜約30重量%)を含む。別の実施形態では、降圧薬は、インプラントの約20重量%または約30重量%を含む。
【0064】
治療薬に加えて、本明細書に説明されるインプラントは、有効量の緩衝剤、防腐剤、および同等物を含む組成物に含むことができるか、または組成物中に提供され得る。好適な水溶性緩衝剤には、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、リン酸塩、重炭素塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩、および同等物が挙げられるが、これらに限定されない。これらの薬剤は、システムのpHを、約2〜約9、より好ましくは、約4〜約8の間に維持するのに十分な量で存在することができる。したがって、緩衝剤は、インプラント全体の約5%重量%ほどであり得る。好適な水溶性防腐剤には、重亜硫酸ナトリウム、重硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、および同等物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。これらの薬剤は、インプラントの約0.001重量%〜約5重量%、好ましくは、約0.01重量%〜約2重量%の量で存在し得る。
【0065】
一実施形態では、塩化ベンジルアルコニウム等の防腐剤は、インプラントに提供される。別の実施形態では、インプラントは、塩化ベンジルアルコニウムおよびビマトプロストの両方を含むことができる。さらに別の実施形態では、ビマトプロストは、ラタノプロストで交換される。
【0066】
種々の技術を採用して、本明細書に説明されるインプラントを産生し得る。有用な技術には、自己乳化法、超臨界流体法、溶媒蒸発法、相分離法、噴霧乾燥法、研削法、界面法、成形法、射出成形法、それらの組み合わせ、および同等物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0067】
一実施形態では、インプラントを作製するための方法は、適切なポリマーおよび治療薬を溶媒中に溶解することを伴う。溶媒選択は、選択されたポリマーおよび治療薬に依る。本明細書に説明されるインプラントでは、ラタノプロスト等の治療薬を含む、ジクロロメタン(DCM)が適切な溶媒である。ポリマーおよび治療薬が溶解されると、得られた混合物は、適切な形状の型打ち機内で成形される。
【0068】
次いで、成形されると、ポリマーおよび治療薬を溶解するために使用された溶媒は、約20℃〜約30℃、好ましくは、約25℃の温度で蒸発する。ポリマーは、室温、または、さらには真空で乾燥することができる。例えば、治療薬を含む成形ポリマーを、真空蒸発によって乾燥することができる。
【0069】
溶解および成形ステップは、インプラントを形成し、それは、ポリマー粘度、したがって、分子量、ポリマーの疎水性/親水性、治療薬の分子量、治療薬の疎水性/親水性、および同等物等の特性に基づき、ポリマーおよび治療薬の溶解によって、システムが自然に区分され、その最も自然な構造に形成することが可能になるためである。
【0070】
成形ポリマーが乾燥されると、それらは、加工するための当該技術に既知の任意の方法を使用して、インプラントに加工される。一例示的実施形態では、乾燥した成形ポリマーは、小片に切断され、約50℃〜約120℃の間、好ましくは、約90℃の温度で円形または四角形のロッド型構造に押し出すことができる。別の例示的実施形態では、フィルムは、押出なく、容易に成形することができる。
【0071】
他の方法は、乾燥ポリマー粉末、および乾燥または液体治療薬の押出しを伴う。インプラントは、押し出され、乾燥粉末自体に依って、構成要素の物理的特性に基づかずに、ランダム配列に形成される。ラタノプロスト等のプロスタグラジンは、それらが、一般的に、加熱されたときに、プロスタグランジンを発散するため、ホットメルト押出インプラントに組み込むことが非常に困難である。したがって、押出温度は、プロスタグランジンの喪失および分解を回避するように、できるだけ低く維持される。これは、プロスタグランジンと適合する、適切な分子量ポリマーおよび(ポリエチレングリコール)PEG等の可塑剤の選択的組み合わせを使用して達成することができる。プロスタグランジンおよびPEGは、プロスタグランジンが分解または喪失しない温度で、混合物が押し出される程度まで、ポリマーを可塑化する。
【0072】
本明細書に説明されるインプラントを含有する治療薬を使用して、緑内障および/またはIOPの増加に加えて、以下の症状等の他の眼症状を治療することができる:黄斑/網膜変性:黄斑変性症(加齢性黄斑変性症(ARMD)(非滲出性加齢性黄斑変性症および滲出性加齢性黄斑変性症等)を含む)、脈絡膜血管新生、網膜症(糖尿病性網膜症、急性および慢性黄斑視神経網膜症、中心性漿液性脈絡網膜症を含む)、ならびに黄斑浮腫(嚢胞様黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫を含む)。ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:急性多巣性小板状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、ブドウ膜炎(中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)および前部ブドウ膜炎を含む)、多巣性脈絡膜炎、多発消失性白点症候群(MEWDS)、眼球サルコイドーシス、後部強膜炎、蛇行状脈絡膜炎、網膜下線維症、ブドウ膜炎症候群、およびフォークト・小柳・原田症候群。血管疾患/滲出性疾患:網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉塞症、播種性血管内凝固障害、網膜静脈分枝閉塞症、高血圧性眼底変化、眼冠動脈症候群、網膜動脈細動脈瘤、コーツ病、傍中心窩毛細血管拡張症、半側網膜静脈閉塞、乳頭血管炎症、網膜中心動脈閉塞、網膜動脈分枝閉塞、頚動脈疾患(CAD)、霜状分枝血管炎、鎌状赤血球網膜症、および他の異常血色素症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症、イールズ病、外傷性/外科性:交感性目炎、ブドウ網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、術中の低かん流、放射線網膜症、骨髄移植網膜症、増殖性障害:増殖性硝子体網膜症および網膜上膜症、増殖性糖尿病性網膜症。感染性疾患:眼ヒストプラズマ症、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラズマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラズマ症、HIV感染に関連する網膜疾患、HIV感染に関連する脈絡膜疾患、HIV感染に関連するブドウ疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外層網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、亜急性視神経網膜炎、およびハエウジ症。遺伝性障害:網膜炎色素変性症、網膜ジストロフィーに関連する全身性障害、先天停止性夜盲、錐体ジストロフィー、スターガルト病、および黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー、X連鎖性網膜分離症、ソースビー黄斑変性症、良性中心性黄斑症、ビエッティ水晶体ジストロフィー、弾性繊維性仮性黄色腫。網膜裂傷/円孔:網膜剥離、黄斑円孔、大きな網膜裂傷。腫瘍:腫瘍に関連する網膜疾患、RPEの先天性肥大、後ブドウ膜メラノーマ、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の組み合わされた過誤腫、網膜芽腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ腫瘍。混合型:点状脈絡膜内層症、急性後部多巣性小板状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、および同等物。
【0073】
一例示的実施形態では、PLA、PEG、およびPLGAを含み、降圧薬を含むインプラントを使用し、それは、かかる構成要素のインプラントが、腔内または前部硝子体投与時に、有意に少ない炎症(例えば、角膜充血が少ない)をもたらすからである。別の実施形態は、同一のインプラントの異なるセグメント内に含有された複数の降圧薬を有する治療薬送達システムを含むことができる。例えば、インプラントの1つのセグメントは、ムスカリン性降圧薬を含有することができ、インプラントの第2のセグメントは、降圧性プロスタグランジンを含有することができ、インプラントの第3のセグメントは、降圧性β阻害剤を含有することができる。かかるインプラントを注入して、小柱網を通る房水流出を強化し、ブドウ膜強膜流を強化し、房水産生を減少することができる。異なる作用機構を有する複数の降圧薬は、単剤療法、すなわち、単一タイプの降圧薬の使用よりも、IOPを低下させるのにより有効であることができる。複数のセグメント化されたインプラントは、使用される各別個の治療薬の用量を、単剤療法で必要とされる用量よりも減少させ、それによって、使用される各治療剤の副作用を減少させる利点を有する。
【0074】
一実施形態では、複数のセグメント化されたインプラントを使用するとき、各セグメントは、約2mmを超えない長さを有する。好ましくは、22G〜25Gの直径の針穴を通って投与されるセグメントの合計は、約4つである。27Gの直径の針を使用して、針穴または管腔内のセグメントの長さの合計は、最大約12mmであることができる。
【0075】
TMの液体取り込み作用は、適切な形状を有するインプラントが前房の周囲に浮遊し、視力低下をもたらさないように十分に活用することができる。重力は、これらのインプラントを、約6時の位置、例えば、約20度前後まで下げ、インプラントは、この位置で安定(不動)する。合計約6〜8mmを超えない長さを有する、22G〜30Gの直径の針によって眼内的に投与することができるインプラントは、眼内のインプラントの不動性をもたらし、視力低下をもたらさない、TMの流体取り込み機構を利用するのに最も好ましい。したがって、TMの流体取り込み効果によって、前房内の6時の位置に固定されるにもかかわらず、インプラントは、TMクリアランス速度を超えない、放出速度を有することができ、これにより、インプラントによって放出された治療薬が迅速に前房を充填し、360度の分散パターンで標的組織内にうまく分散されることが可能になる。隅角鏡検査法を用いる前房の角度のインプラントの検査は、カプセル化またはインプラントの付近の炎症組織がないことを示した。
【0076】
眼球の前面(前房)への治療薬の送達は、眼内圧(IOP)を低下させ、経強膜バリアの侵攻性クリアランスを回避することができる。経毛様体扁平部を通る、本明細書に説明されるインプラントの腔内注入(すなわち、前房への直接注入)およびインプラントの前部硝子体注入は、経強膜バリアを有効に回避し、眼の降圧化合物の有効性を向上する。重要なことには、本発明のインプラントは、特定の物理的特長を有する新規持続放出治療薬送達システムの開発を必要とし、前房の独自の生体構造および生理機能により、治療的有効性が必要とした。
【0077】
一例示的実施形態では、ビマトプロストを、本明細書に説明されるインプラントに使用することができる。ビマトプロストは、プロスタミド受容体によって媒介された小柱網(TM)を通る房水流出を向上し得る。ヒトの眼では、主要の流出路は、小柱または従来の流出経路である。この組織は、3つの分化した層を含む。内部から最も外部の部分までの、前房に最も近傍の組織層は、虹彩および毛様体実質から生じる接続組織の延長によって形成され、内皮細胞によって被覆されたブドウ膜網である。この層は、細胞内間隙が大きいため、房水流出に対する高い抵抗を提供しない。角膜強膜網として既知の次の層は、基底膜上の内皮細胞のような細胞によって被覆されるラメラの存在を特徴とする。ラメラは、糖タンパク質、コラーゲン、ヒアルロン酸、および弾性線維によって形成される。角ブドウ膜網に対して、膜強膜網のより高い組織体、ならびにそれらの内皮細胞間隙は、流動抵抗の増加に関与する。シュレム管からの内皮細胞の内壁と直接接触している、第3の層は、小管近傍網である。それは、密集した細胞外マトリックス内に包埋された細胞によって形成され、胞水流動に抵抗する組織の大半は、その狭い細胞間間隙により、この層の中にあると仮定される。シュレム管からの内皮細胞の層は、房水を管内に運搬し、全抵抗の約10%を占める、拡張可能な円孔を有する。房水は、2つの異なる機構(内皮細胞の間に形成された分岐点を通る細胞間路、およびその細胞の細胞内の拡張可能な円孔を通る経細胞経路)によって、シュレム管の内皮細胞内壁を横断すると考えられている。シュレム管に進入すると(図2)、胞水は、静脈の上強膜および結膜網で吻合する、コレクター管および房水静脈に直接流出する。小柱経路を介する房水流出は、IOP依存性であり、通常、房水流出率として測定され、1ミリメートルの水銀あたり1分間あたりマイクロリットルで表現される。
【0078】
上強膜静脈圧は、コレクターチャネルを通る流出を制御し、眼内圧に寄与する一因である。頸動脈−海綿静脈洞瘻およびスタージ・ウェーバー症候群で見られるような、上強膜静脈圧の上昇は、緑内障を処置することが困難になる場合がある。頸動脈−海綿静脈洞瘻を治療する等、疾患状態において上強膜静脈圧を低下することによって、上強膜静脈圧を正常化し、眼内圧を低下することができる。流出チャネルおよび血管を標的として、薬物療法で上強膜静脈圧を低下させることで、IOPを低下し得る。
【実施例】
【0079】
〔実施例1〕
本明細書に説明されるように、ビマトプロスト点眼薬または腔内持続放出ビマトプロストインプラントのいずれかで治療された動物グループにおいて、経時的なIOPの変動を比較して、一連の3つの実験を実施した。IOPを、経時的に記録し、投薬後に、各動物に対するIOPの平均値を計算した。平均値の標準偏差(SD)を使用して、各動物に対するIOP制御の変化を比較し、すべてのSD平均値の平均を計算した。例えば、低い数は、少ないIOP変動に相当する。局所投与されたグループ内のすべての動物に対してこの最終SD値を計算し、また、腔内インプラントを受けたすべての動物に対しても計算し、値を比較して、IOP変動を減少させる上で、腔内インプラントがより有効であったかどうかを判定した。
【0080】
実験1:
6匹の健康なビークル犬に、毎日、一滴のビマトプロスト0.03%の点眼液(LUMIGAN(登録商標)を左眼に点眼した。午前約10時に、空気眼圧計を用いてIOPの記録を行った。表1は、毎日ビマトプロストの点眼を受けた6匹のイヌにおける、1ヶ月間の週毎の間隔でのmmHGのIOP記録を表す。各動物に対するSDの平均値の平均は、1.38mmHgである。
【表1】

【0081】
実験2:
30%の治療薬、45%のR203S、20%のR202H、および5%のPEG3350を含有する製剤を有するビマトプロストインプラントを、900μg(薬物負荷270μg)のインプラント総重量で製造した。このインプラントのインビトロ放出速度を、図4で図式的に例示する。このインプラントは、最初の30日間にわたり、約70%放出した。270μgの薬物負荷を有するインプラントは、最初の30日間にわたり、189μgまたは1日あたり6.3μgを放出するであろう。インプラントの残り(81μg)は、次の4ヶ月間にわたり、放出される(例えば、1日あたり675ng)。
【0082】
健康なビーグル犬に、一般的な麻酔を与え、3mm幅の網膜刃を使用して、右眼の前房に進入した。ビマトプロストインプラントを前房内に留置し、24時間以内に下角に沈降させた。IOP結果を表2に示す。SDの最初の一ヶ月の平均値が0であるイヌ#4との、各動物に対するDSの平均値の平均は、0.57mmHgである。
【表2】

【0083】
実験3:
20%の治療薬、45%のR203S、10%のR202H、20%のRG752S、および5%のPEG3350製剤を有する付加的なビマトプロストインプラント製剤を、約300μg(約60μgの薬物負荷)のインプラントの総重量で製造した。インプラントの重量を表3に示し、各動物は2つのインプラントを受けた。このインプラントのインビトロ放出速度を図5に示す。表3は、実験3のためのイヌに使用されたインプラントの重量および薬物負荷を示す。各動物は、片方の眼に2つの腔内インプラントを受けた。インプラントは、最初の1ヶ月にわたり、薬物負荷の約15%を放出する。60μgの薬物負荷を有するインプラントは、最初の30日間にわたり9μg、または1日あたり300ngを放出するであろう。言い換えると、インプラントは、60日間にわたり約50μg、または約700ng/日放出する。
【表3】

【0084】
インプラントを、25G UTW針を有する特注のアプリケータに装荷した。一般的な麻酔下で、健康なビーグル犬に、透明な角膜を通して右前房にインプラントを挿入し、創傷は、自己閉鎖した。各動物(n=3)は、右眼に2つのインプラントを受けた。インプラントは、臨床的に炎症を示さず、前房内のインプラントの代表的な写真は、図6で確認することができる。最初の1ヶ月にわたるIOP結果およびSDの平均値は、表2で確認することができる。ビマトプロストインプラントで治療された、実験2および3からの4匹(合計)のイヌの表2のSDの平均値の平均は、0.57mmHgであった。
【0085】
最終SD値によって測定された、ビマトプロスト点眼液が投薬された実験1のイヌのIOPの変動は、1.38mmHgであった。対照的に、持続放出ビマトプロストインプラントでの最終SDは、0.57mmHgであった。約3倍の最終SD値の減少であり、それは、本明細書に説明される持続放出ビマトプロストインプラントが、経時的に、IOP変動を減少させるのに、局所的ビマトプロストでのボーラス投薬よりも優れていることを示した。
【0086】
特に記載がないかぎり、本明細書および請求項に使用される、成分の量、分子量等の特性、反応条件、およびその他等を表すすべての数字は、「約」という用語によってすべての例において変更されることを理解されたい。故に、特に記載がない限り、本明細書および付属の請求項に記載する数値パラメータは、本発明によって得られると考えられる所望の特性によって異なり得る近似値である。最低限でも、また、均等論の適用を請求項の範囲に制限する試みとしてでなく、各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を考慮して、かつ通常の丸め技術を適用することによって、解釈されなければならない。そのため、本発明の広範囲を記載される数値範囲およびパラメータは、近似値であるにもかかわらず、本実施例に記載される数値は、できる限り正確に報告される。しかしながら、任意の数値は、そのそれぞれの試験測定に見出される標準偏差から必然的に生じるある誤差を本質的に含む。
【0087】
本発明を説明する文脈において(特に、以下の請求項の文脈において)使用される、「a」、「an」、「the」、および同様の指示対象は、本明細書において特に記載がない限り、または明かに文脈と矛盾しない限り、単数形および複数形の両方に及ぶものと解釈される。本明細書において、数値範囲の具陳は、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図している。本明細書において特に記載がない限り、各値のそれぞれは、個々に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に説明されるすべての方法は、本明細書において特に記載がない限り、または明かに文脈と矛盾しない限り、任意の好適な順番で実施することができる。本明細書において提供される、任意のおよびすべての実施例、または例示的な言い回し(例えば、「等」)は、特に主張しない限り、単に本発明をよりよく説明することだけを意図し、本発明の範囲に対する制限を設けるものではない。本明細書におけるいかなる言い回しも、本発明の実施に不可欠である請求項に記載されてない要素を示すものとは解釈されないものとする。
【0088】
本明細書に開示される本発明の代替的要素および実施形態のグループ分けは、制限として解釈されない。各グループのメンバーは、単独に、または本明細書に見出されるグループの他のメンバーまたは他の要素との任意の組み合わせと称され、請求され得る。グループの1つまたは複数のメンバーが、利便性および/または特許性の理由のため、グループ内に含まれるか、またはそこから削除され得ると予想される。任意のかかる包含または削除が生じるとき、本明細書は、変更されたグループを含み、したがって、付属の請求項において使用されるすべてのマーカッシュグループの書面の説明を満たすとみなされる。
【0089】
本発明を実行するための発明者に既知の最良の態様を含む、本発明のある実施形態を本明細書に説明する。もちろん、これらの説明される実施形態の変化は、先述の説明を読めば当業者には明らかになるであろう。発明者は、当業者が、適切な場合にかかる変更を採用することを期待し、発明者は、本明細書に具体的に説明されない限り、本発明が実践されることを意図する。故に、本発明は、適用法によって許可されるように、本明細書に付属の請求項に記載される要旨のすべての変更および等価物を含む。その上、そのすべての考えられる変更における上述の要素の任意の組み合わせは、本明細書において特に記載がない限り、または明らかに内容と矛盾しない限り、本発明によって包含される。
【0090】
さらに、本明細書にわたり、特許および印刷された発刊物への数値言及がなされている。上述の言及のそれぞれ、および印刷された発刊物は、個々に、参照によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0091】
最後に、本明細書に開示される本発明の実施形態は、本発明の原則の例示であることを理解されたい。採用され得る他の変更は、本発明の範囲内である。したがって、制限ではなく、例として、本発明の代替的構造は、本明細書の教示にしたがい用いられ得る。故に、本発明は、正確に示し、説明されるものに制限されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼症状を治療するための方法であって、
少なくとも1つの治療薬を含有する、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを提供するステップと、
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを、眼の前房に埋入するステップと、
前記眼症状を治療するステップと、を含み、
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約1ヶ月を超える期間の間、1日あたり約100ngの前記少なくとも1つの生物活性剤を放出する方法。
【請求項2】
前記眼症状は、緑内障である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記眼症状は、眼内圧亢進である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記持続放出インプラントは、最初の1ヶ月にわたり、前記少なくとも1つの治療薬の約70%を放出する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの治療薬は、ラタノプロスト、ビマトプロスト、およびトラボプロスト、ならびにそれらの塩、エステル、およびプロドラッグから成る群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約30%の治療薬を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約5%〜約70%のポリ(D,L−ラクチド)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約5%〜約40%のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約5%〜約40%のポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約30%の治療薬、65%のポリ(D,L−ラクチド)、および5%のポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約30%の治療薬、65%のポリ(D,L−ラクチド)、および5%のポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約20%の治療薬、55%のポリ(D,L−ラクチド)、10%のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、および5%のポリエチレングリコールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記埋入するステップは、アプリケータを使用して達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、前記前房内への埋入の24時間以内に下角に沈降する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
眼の緑内障を治療するための方法であって、
少なくとも1つの治療薬を含有する、少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを提供するステップと、
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントを前記眼の前房内に埋入するステップと、
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが下角に沈降するために十分な時間放置するステップと、
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが前記少なくとも1つの治療薬を放出するために十分な時間放置するステップと、
緑内障を治療するステップと、を含み、
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、1ヶ月を超える期間の間、1日あたり約100ngの前記少なくとも1つの生物活性剤を放出する方法。
【請求項16】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが前記少なくとも1つの治療薬を放出するための前記十分な時間は、約42日を超える、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくとも1つの治療薬は、ラタノプロスト、ビマトプロスト、およびトラボプロスト、ならびにそれらの塩、エステル、およびプロドラッグから成る群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約30%の治療薬、65%のポリ(D,L−ラクチド)、および5%のポリエチレングリコールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントは、約20%の治療薬、55%のポリ(D,L−ラクチド)、10%のポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、および5%のポリエチレングリコールを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくとも2つの生分解性持続放出インプラントが下角に沈降するための前記十分な時間は、約24時間である、請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−518049(P2013−518049A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550135(P2012−550135)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/021971
【国際公開番号】WO2011/091205
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】