説明

法医学試料における生体物質用収集/抽出容器

固体の法医学試料(2)を収集するための、及び/又は、それらの固体の法医学試料(2)から生体物質を抽出するための収集/抽出容器(1)、並びにその使用に関する。容器(1)は、固体の法医学試料(2)を挿入するための上部開口(3)を有する。容器(1)は、バスケット(7)と、分解/溶解及び抽出の間、固体の法医学試料(2)を保持するための基本的に水平の中間床(8)とを備え、該中間床(8)は、流体に対して透過性があり、内部チャンバ(5)を上部試料空間(9)及び下部流体空間(10)に分割する。発明による容器は、試料空間(9)を通り流体空間(10)へピペット操作ニードル(12)の挿入を可能にすることを達成する、基本的に垂直な流路(11)を備えること、流路(11)が容器(1)の上部開口(3)の近くに位置する上部オリフィス(13)を有すること、及び、流路(11)が底部オリフィス(14)における中間床(8)を貫通することを特徴とし、容器(1)はまた、少なくとも部分的に流路(11)を囲み、上部試料空間(9)から後者を分離する間仕切壁(15)を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体の法医学試料を収集するための、及び/又は、それらの法医学試料から生体物質を抽出するための収集/抽出容器に関する。この容器は、法医学試料を挿入するための上部開口を有する。基本的に垂直な壁で底面によって深さが制限される内部チャンバを囲む壁にて、上部開口は囲まれる。容器の壁及び底面は、流体を通さない。容器は、またバスケット、及び、洗浄つまり分解/溶解、抽出の間、固体の法医学試料を保存するための基本的に水平の中間床を備える。中間床は、流体に対して透過性があり、内部チャンバを上部試料空間及び下部流体空間に分割する。
【背景技術】
【0002】
遺伝暗号を決定するために核酸を含む試料の収集は、重要性において現在ますます増加している。犯罪との闘いに関して、「遺伝子指紋」の意味において遺伝子試料の収集は、2つの点においてますます重要になってきている。即ち、第1に、遺伝暗号は、既に逮捕された犯罪者から得られるべきものであり、第2に、得られたデータは、例えば犯罪現場で見つかった未知の証拠と比較されるべきものである。第1の場合、新鮮で明らかな試料がデータバンクを構築するために用いられ、それは第2のケースにおいてアクセス可能である。しかしながら第2のケースでは、集めた試料は、多くの場合、不完全で、汚れて、及び損損しており、法医学作業を複雑にする。さらに、個々の国々は、入国するすべての個人の、あるいはその国のすべての住民の遺伝暗号を予防的に得るために生体サンプルを既に集め始めている。
【0003】
「法医学」の属性は、法的又は犯罪学的特性を有するいずれのものにも言及する。したがって用語は、刑法(例えば法医学)の分野に制限されるだけでなく、むしろいずれの法的手続き内のいかなる専門的行為をも含む。法廷に関して適切な試料は、また蛋白質(例えばクロイツフェルト・ヤコブ症候群、牛海綿状脳症、あるいはBSEをそれぞれ引き起こすプリオン)、ウィルス、バクテリア、及び他の微生物、ヒト又は動物の体液(例えば血液、唾液、糞便、精液、及び尿)、及び単細胞(口腔粘膜細胞及び毛包のような)を含む。
【0004】
ヒトのデオキシリボ核酸(DNA)リボ核酸(RNA)を分離し分析する方法は、先行技術(例えば、Molecular Diagnostics, Isolation and Analysis of Human Genomic DNA, 1998年, Promega Notes No. 68, 20頁)から知られている。これらの方法は、試料の産量を増し、それにて分析感度を増すことに関してそれ自身有名なPCR(PCR=ポリメラーゼ連鎖反応)方法を備える。
【0005】
試料を収集し、及び集められた分析用あるいはPCR反応用の試料を手動で準備するための容器は、WO 2004/105949 A1から知られている。収集を実行しその後の現場におけるPCR反応を実行するための容器は、米国2004/0214200 A1から知られている。しかしながら、既知の方法は、非常に複雑であり、容器は、試料を自動的に及び/又はロボットで処理するのに不適切に思われる。
【0006】
自動化された核酸分離は、例えば米国5,863,801から知られている。しかしながら、この特許に記載された装置は、スタンド・アロンの装置として用いられるように設計されており、TECANの自動化された液体処理システム(TECAN Schweiz AG、Seestrasse 103、CH-8708 Mannedorf、スイス)のような、科学捜査及び研究実験室で一般的に使用される既存の自動化機器と共に動作しない。それらの処理を有効にするため、そのような実験室で要求される手段が与えられ、それらの有効化された手動プロセスをほぼ模倣し、既存の機器で使用可能である消耗品を有することが重要な価値である。
【0007】
固体支持体上でDNA試料の培養、遠心分離、及び分離用の装置は、PROMEGA社(2800Woods Hollow Road, Madison, WI 53711 アメリカ)からのSlicprep(TM)96装置のように知られている。この装置は、ポリプロピレンから作られ、96の深いウエル・マイクロプレート、96のスピンバスケット・ユニット、及びバスケットを上げるためのカラーに基づく。培養方法において、固体支持体あるいは法医学試料(例えば、乾燥した口腔綿棒)は、深いウエル・プレートへ完全に挿入されるバスケットに置かれる。分解緩衝液又は溶解緩衝液が試料を覆うするために加えられ、密封されたユニットが所望の温度で培養される。その後、バスケットが上げられ、揺動プレートローターにおける遠心分離が固体支持体あるいは法医学試料から抽出物、つまりDNA含有溶液を除去するように、カラーが差し込まれる。96の回転バスケット・ユニット及びカラーを除去した後、深いウエル・プレートは、DNA精製用のワークステーションに配置可能である。この装置は、法医学試料からのDNA抽出をより自動的に互換可能にするように設計されたが、カラーを加え、その後カラー及びバスケットユニットを除去するための手動の手続き工程が未だ必要である。
【0008】
上述したものと同様に実行され、また、処理中にかなりの手動工程を必要とする核酸分離がFITZCO社(4300 Shoreline Drive, Spring Park, MN 55384、アメリカ)から知られている。そのFITZCO Spin-eze (TM) 装置は、バスケット・ユニット及びエッペンドルフ型受け入れチューブからなる単一チューブ装置である。最初の抽出工程において、DNAを含む固体支持体(つまり綿棒)は、バスケット内に設けられ、その後、それはエッペンドルフ型受け入れチューブへ差し込まれる。分解又は溶解の緩衝液が法医学試料を覆うために加えられ、密封されたユニットは、培養され、その後、DNAを含む溶液をバスケットからチューブへ流すために遠心分離される。その後、バスケットは、手動で除去され、チューブは、DNAを精製するためワークステーションに配置可能である。
【0009】
TECANから知られる別のシステムは、2本のチューブから成り、それらは、処理のためにそれらの間に配置される「フィルター」と共に端と端とを接続して取り付け可能である。試料チューブは、綿棒又は他のDNA含有法医学材料を含んでいる。初期処理のため、緩衝液が試料チューブに加えられ、受け入れチューブは、試料チューブの上部へ上下逆さまで取り付けられる。そのような「2重管」のアレイを有するラックは、「反転」装置へ移動され、該装置は、後に続く遠心分離の間、液体が現在上側試料チューブからフィルタを介して下部受け入れチューブ内へ流れることができるように、2つの接続されたチューブを回転する。その後、チューブは、分離可能である。また、このシステムは、手動操作を必要とし、さらに、チューブを反転するための特別な装置を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO 2004/105949 A1
【特許文献2】米国2004/0214200 A1
【特許文献3】米国特許5,863,801号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、核酸のような結合された分子を処理可能で、かつ口腔綿棒のような固体支持体から完全に自動的に除去可能とする代替の装置及び/又は代替の方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、第1態様によれば、請求項1の特徴により、固体の法医学試料を収集するための、及び/又は、法医学試料から生体物質を抽出するための収集/抽出容器によって達成される。容器は、法医学試料の挿入のための上部開口を有する。上部開口は、基本的に垂直な壁によって囲まれ、該壁は、底面によって深さが制限される内部チャンバを囲む。壁及び底面は、流体を通さない。容器は、洗浄中、つまり分解/溶解、及び抽出の間、固体の法医学試料を保持するためのバスケット、及び基本的に水平な中間床を備え、中間床は、流体に対して透過性があり、内部チャンバを上部試料空間及び下部流体空間に分割する。
【0013】
本発明による容器は、基本的に垂直な流路を備えることを特徴とし、該流路が、試料空間を通り流体空間へピペット操作ニードルの挿入を可能にすることを達成し、また、容器の上部開口の近くに位置する上部オリフィスを有することを特徴とし、また、底部オリフィスにおける中間床を貫通することを特徴とする。ここで、上記容器は、また、少なくとも部分的に流路を囲み、上部試料空間から後者を分離する間仕切壁を備える。
【0014】
この目的は、法医学試料から生体物質を抽出する方法が提案されている請求項17の特徴による第2の態様に従い達成される。本発明による上記方法は、以下の工程を備える。即ち、
(a) アクセス可能な上部開口3、バスケット7を有する上部試料空間9、流体空間10、及び流路11を備えた少なくとも1つの容器1を設け;
(b) 少なくとも1つの容器1の上部試料空間9においてバスケット7内へ上部開口3を通して固体の法医学試料2を収納し;
(c) 容器1の下部流体空間10が満たされ、かつ上部試料空間9も法医学試料2を覆うために十分に満たされるように、バスケット7内へ分解/溶解緩衝液を加え;
(d) 装置1の全体を密閉し、次に、抽出工程が生じることを可能にするため培養を可能とし;
(e) 培養後、装置1を開封つまり開いて、基本的に垂直な流路11を通り下部流体空間10の底面にアクセスすることにより分解緩衝液を除去し;
(f) 遠心分離機に装置1を収納し、固体の法医学試料2に残っているいずれの緩衝液も内部チャンバ5の底へ下に集まるように回転させ;
(g) 遠心分離により下部流体空間10の底に集まった、残っている分解緩衝液を、基本的に垂直な流路11を通りアクセスすることにより除去し、
ここで、固体の法医学試料2は、工程(c)から工程(g)のすべての工程間で、少なくとも1つの容器1の試料空間9におけるバスケット7に保持される。
【0015】
好ましくは、除去された体積は、以前に除去された体積と合わされる。この合わされた試料は、市販のキットを使用して核酸を精製する状態になる。
【0016】
本発明による追加の好ましい特徴は、従属請求項に由来する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の利点は、以下の点を含む。即ち、
− 例えば、固体の法医学試料の表面からの生体物質の抽出に用いられるのと同じ容器が分野内の上記法医学試料の収集にも用いることができる。
− 容器は、固体の法医学試料を含むバスケットの除去を必要とせずに、ピペット先端が容器の底面へアクセス可能にするポート又は流路を提供する。
− 容器は、処理中に部品を組み立て、分解する必要がないように、例えば6×8チューブアレイへ配置され、完全に自動化が可能である。したがって、遠心分離機、ロボットアーム、PCRサーモスタットテーブル等のような普通の自動装置が使用可能である。
− チューブを含むチューブ又はラックを反転するための特別の装置の必要がない。
− IDタグで容器をラベリングすることは、特定の法医学試料、及びこの固体の法医学試料から抽出された生体物質の明瞭な識別を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明による容器の4つの異なった実施形態を有する2つの異なるラックを貫く垂直方向の部分断面であり、バスケットが摩擦で嵌合して挿入された、平らな底面の容器を示す図である。
【図1B】本発明による容器の4つの異なった実施形態を有する2つの異なるラックを貫く垂直方向の部分断面であり、PCRチューブのような形状の容器、及び2つの部分からなる容器を示す図である。
【図2A】図1の2つのラックの水平方向の部分断面であり、摩擦で嵌合する挿入バスケットを有する収集ラックを示す図である。
【図2B】図1の2つのラックの水平方向の部分断面であり、保持手段によって適所に保持される容器を有する抽出ラックを示す図である。
【図3】本発明による容器の2つの異なった実施形態を有するラックを貫く垂直方向の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、例示的な実施形態、及び概略図に基づいて、より詳しく説明されるだろう。これらは、本発明の権利範囲を制限するものではない。
図1は、本発明による容器1の4つの異なった実施形態を有する2つの異なるラックを貫く垂直方向の部分断面を示している。図1Aは、バスケットが摩擦で嵌合して挿入された、平らな底面の容器を示している。示された両方の容器は、固体の法医学試料2を収集するための、及び/又は、これらの法医学試料2から生体物質を抽出するための収集/抽出容器1である。固体の法医学試料2は、下記のグループから一般的に選択される。該グループは、ガーゼ・パッド又は口腔綿棒; 発見物; フィルター紙、又はWHATMAN FTA紙(それぞれ、Whatman plc., 27 Great West Road, Brentford、Middlesex、TW8 9BW、英国); 固体、核酸又は調製ゲル及びセルロース膜のような他の生物分子を吸収するためのシート状材料; 及び、織物片である。ほとんどの場合、抽出される生体物質試料は、体液、細胞、DNA、RNA、蛋白質、微生物、及びウィルスを含むグループから選択される。しかしながら、口腔綿棒によりDNA及び/又はRNAのような核酸物質を収集し、かつ発明の容器1内で上記口腔綿棒から核酸物質を抽出することが好ましい。
【0020】
各容器1は、固体の法医学試料2を挿入するための上部開口3を有する。該上部開口3は、底面6によって深さを制限される内部チャンバ5を囲む、基本的に垂直な壁4によって囲まれる。壁4及び底面6は、流体を通さない。各容器1は、バスケット7、及び、洗浄中、つまり分解/溶解、抽出の間、固体の法医学試料2を保持するための、基本的に水平な中間床8を備える。中間床8は、流体に対して透過性があり、内部チャンバ5を上部試料空間9及び下部流体空間10に分割する。
【0021】
本発明の文脈において、「流体」は、液体、ガス、あるいは液体/ガス混合物として理解されるべきである。「固体」は、流体以外の、硬い又は軟質の物質として解釈される。「試料」は、好ましくは固体の法医学試料であるが、しかし、それは生体物質を含む他の試料でありえる。「発見物」は、犯罪現場で発見されたもの、あるいは抽出可能な生体物質を含む他のいずれの不特定の固体物質のような、人工品又はケースワークの試料でありえる。
【0022】
発明による容器1は、基本的に垂直な流路11を含む。該流路11は、試料空間9を通り流体空間10へピペット操作ニードル12が差し込まれることを可能にすることを達成する。これは、容器1の上部開口3の近くに位置する上部オリフィス13を流路11が有し、また、流路11が底部オリフィス14における中間床8を貫通することで達成される。容器1は、また少なくとも部分的に流路11を囲み、上部試料空間9から後者を分離する間仕切壁15を備える。
【0023】
好ましくは、容器1の壁4は、少なくとも上部試料空間9の領域において基本的に円筒状である。上部試料空間9内へ導入可能でバスケット7により維持可能である固体の法医学試料2に関して、できるだけ大きいスペースを残すために、流路11は、中心から外れて配置され、壁4及び間仕切壁15により部分的に形成されるのが好ましい。容器1のバスケット7は、口腔綿棒に適応するようにサイズが決められるのが特に好ましい。
【0024】
好ましくは、流路11は、中心から外れて配置されるので、基本的に中心から外れた垂直の軸40が形成される。よって、底面6、及び/又は壁4の下部区域17は、流体収集領域21を形成するように好ましくは仕上げられる。流体収集領域21は、下部レベルで、容器1の底面6の残り部分に位置し、基本的に中心から外れた垂直の軸40上にある。
【0025】
図1Aに示されるように、バスケット7は、容器1の内部チャンバ5内へ挿入される高分子材料の単一の射出成形品として仕上げられても良い。また、図1B(その右側を参照)に示されるように、バスケット7は、壁4の上部区域16の一部分として仕上げられ、高分子材料の単一の射出成形品として壁4の上部区域16とともに形成される。壁4の下部区域17は、上端部18で、壁4の上部区域16の下端部20が密閉的に挿入可能なソケット19を有利に備える。また、図1B(その左側を参照)に示されるように、少なくとも下部流体空間10の領域において、容器1は、PCRチューブのように形作られてもよい。
【0026】
容器1の底面6は、壁4あるいは壁4の下部区域17とともに高分子材料の単一の射出成形品を形成して仕上げられるのが好ましい。発明による容器1の部品の射出成形用の好ましい高分子材料は、ポリプロピレンである。代わりに、容器1の底面6は、壁4あるいは壁4の下部区域17に接着あるいは溶着されるフィルム構造27として仕上げられる(例えば図1A、左側を参照)。
【0027】
底面6は、好ましくはその外側に平坦領域22を備え、該平坦領域22上又は平坦領域22内には、情報タグ23が設置される(例えば、図1B、右側参照)。情報タグ23は、1−Dバーコード、2−Dバーコード、RFIDトランスポンダー、及びRuBeeトランシーバーを含むグループから有利に選択される。1−Dバーコード及び2−Dバーコードの原理は、当業者に良く知られており、ハイコントラスト識別マーキングの光学走査に基づく。そのような識別の利点は、比較的単純な物理的原理であることであるが、しかしながら、走査装置と情報タグとが視野に入らねばならない。
【0028】
RFIDトランスポンダーもそれ自体知られており、高周波(HF、例えば900MHz)あるいは極超短波(UHF)で動作する。それらは、無線信号を送受信する。一方、より新しいRuBeeトランシーバーは、450kHzより下の波長で動作し、信号の送受を行い、主として磁性に基づく。受動的なRFIDトランスポンダーは、毎秒およそ100(HF)あるいは150−200(UHF)のメッセージを受信することができる。対照的に、能動的なRuBeeトランシーバーは、毎秒およそ10のメッセージのみを受信可能である。つまり、いずれの場合も、視覚的なコンタクトは必要ない。よって、使用される情報タグ23のタイプは、データ転送の密度及び視覚的なコンタクトの存在の、とりわけ関数である。図1Bの場合、RFIDトランスポンダーあるいはRuBeeトランシーバーは、容器1の垂直の壁4に位置し(左側を参照)、一方、2−Dバーコードは、底面6の平坦領域22に位置している(右側を参照)。バーコード及びRFIDトランスポンダーあるいはRuBeeトランシーバーのいかなる任意の組み合わせも考えられ、これは、特に、例えば、現場での収集の間では、法医学試料を識別するために単純な1−Dのバーコードが使用され、法医学研究所の高スループットのワークステーションにて、関連する生体物質の自動抽出の間では、RFIDトランスポンダーあるいはRuBeeトランシーバーが利用される場合である。
【0029】
容器1は、好ましくは上部開口3用の閉鎖部材24を含む。好ましくは使用部分によって、閉鎖部材24は、栓25、カバー26、及びフィルム27を含むグループから選択される。実施例として、収集セット28が図1Aに示されている。この収集セット28は、発明による少なくとも1つの収集/抽出容器1を有する。収集セット28は、容器を受け入れるためのコンパートメント30を有する収集ラック29を備える。
【0030】
好ましくは、この収集ラック29のコンパートメント30は、上部及び底部にて開いている。その結果、容器1は、上方あるいは下方からコンパートメント30内へ挿入可能であり、また、このコンパートメントから下方へ又は上方へ排出可能である。収集ラック29がマイクロプレートの規格寸法を有することは特に好ましい。マイクロプレートの寸法に関する規格は、ANSI(アメリカ規格協会)から正式に公表されている。これらの規格は、the Foodprint Dimensions (ANSI/SBS 1−2004)、the Height Dimensions (ANSI/SBS 2−2004)、Bottom Outside Flange Dimensions (ANSI/SBS 3−2004)、the Well Positions (ANSI/SBS 4−2004)により、マイクロプレートを規定している。しかしながら、1列において6つあるいは8つのコンパートメントを備えたストリップ・ラックも法医学試料を収集するために選択可能である。
【0031】
収集セット28が、元々、個々の閉鎖部材の無い試料チューブあるいは容器1をそれぞれ含んでいる場合、上部と同様に底面に、収集ラック29全体を覆うフィルム27が好ましい(図1A、左、参照)。よって、いかなる汚染もない完全に清浄な容器が法医学試料を収集する現場で提供される。容器1のバスケット7内へ新鮮な試料2が入れられるとすぐに、容器1の上部開口3を完全に閉じるために、栓25が装着可能である(図1A、右、参照)。栓25は、容器1内の個々の法医学試料2を識別するバーコード(ここには示されない)を含むことができる。
【0032】
代替物として、収集セット28は、元来、個々の閉鎖部材25を有する、試料チューブあるいは容器1を含むことができる。この場合、収集ラック29の上端の少なくともフィルム27は無くて済ますことができる。また、コンパートメント30の底面がフィルム27にて覆われていない場合、バーコードは、容器底面6(ここでは示していない)の平坦領域22上に供給することができる。結局、バーコードを用いることができない場合には、RFIDトランスポンダーあるいはRuBeeトランシーバーだけで容器が分類される。このようなインテリジェントなラベルは、また試料収集及びすべての更なる処理に先立って、あるいはその間に入力されて、専用装置で判読可能な追加のデータを含むことができる。
【0033】
実験室において、試料は収集ラック29にて処理することができる。しかしながら、異なる収集ラック29から容器を集め、それらを一若しくは複数の抽出ラック33へ入れることが好ましい。そのような抽出ラック33は、マイクロプレート・ロボットによりそれらの抽出ラック33を搬送し、実験室のワークステーションのマイクロプレート・ハンドリングステーションでそれらの抽出ラック33を取り扱うことを可能にするために、標準マイクロプレートの形状及びサイズを有するのが好ましい。一つの抽出ラック33、及びこのラックのコンパートメント30に挿入された少なくとも1つの容器1は、抽出セット32を形成する。
【0034】
固体の法医学試料2を有する容器1は、そのような抽出ラック33の任意のコンパートメント30内へロボット(図示せず)によって挿入されてもよい。これを達成するために、収集ラック29及び抽出ラック33の両方が互いに一致するように、両方のラック29,33は、互いの上端に配置される。2つのラックのどちらか一つが他方の上端にあることにより、ロボットツールは、抽出ラック33のコンパートメントに容器1をその上方からその下方から押し込むために用いられる。この動作は、ラック29,33の両タイプが、上端及び底面で開いているコンパートメント30を有することにおいて非常に容易になり、その結果、容器1は、底面又は上端からコンパートメント30へ挿入可能であり、このコンパートメント30から下方へ又は上方へ取り出すことが可能である。
【0035】
容器1の処理がラック29,33にて実行されるのが好ましい場合でさえ、ロボットによる各容器1の個々の処理がまた可能である。すなわち、自動化された方法で処理されるために、容器1は必ずしもラックに入れられなくても良い。実際に、例えばTECAN装置は、いわゆる「ピック・アンド・プレイス アーム」を使用して個々のチューブを移動可能である。実際に、法医学調査におけるケースワーク試料に関し、むしろ少数の試料(例えば、1〜8)を同時に処理し、そして96の試料を待つのが好ましい。少数の試料でさえ、自動化は、より高い再現性、「加工・流通過程の管理」、時間にとらわれない(walk away time)というような利点を提供する。
【0036】
図2における2つのラック29、33の水平方向の部分断面に示されるように、容器1は、保持手段35を用いて、ラック29、33のコンパートメント30に好ましくは保持される(図2Bを参照)。しかしながら、容器1は、摩擦嵌合のみによってコンパートメントに位置することができる(図2Aを参照)。容器1は、有利に同一の外径を有する上部フランジ36及び下部肉厚領域37を有するのが好ましい。この直径は、収集又は抽出ラック29,33の2つの平行な中間壁34の間の距離よりもわずかに大きい。よって、容器の挿入は、この容器及び4つの隣接した中間壁34をわずかに変形させ、また、この上部フランジ36及び下部肉厚領域37と中間壁34の内面との間の摩擦は、コンパートメント30の内部に容器を維持する。
【0037】
図2A及び図2Bは、図1に示すような2つのラック29、33の水平方向の部分断面である。図1Aの右のコンパートメント、及び図1Bの左のコンパートメントにおいて、挿入された容器1の底面6(図1Aを参照)又は壁4の下部区域17(図1Bを参照)は、流体収集領域21を形成して仕上げられている。流体収集領域21は、容器1の下部レベルで底面6の残り部分である。この流体収集領域21は、基本的に垂直な中心から外れた軸40上にある。挿入されたバスケット7(図1A、左を参照)又は統合されたバスケット7(図1B、右を参照)に関する2つの互いの容器の相対的な位置は、関心がないのに対し、流体収集領域21を有する2つの容器の流路11の相対的な位置は、重要である。バスケット7、流路11、及び容器1の底面6におけるそれぞれの収集領域21の正確な相対的な位置を規定するために、バスケットは、好ましくは基本的に垂直な配向バー41を装備している。容器は、上部試料空間9の領域に、バスケット7の配向バー41を収容するように形作られた、基本的に垂直な配向溝42を含む。この配向バー及び溝41,42の設計により、バスケット7の所望の位置が、容器の高さつまり容器1の底面6からのその距離とともに、容器1の中心軸43のまわりのその配向を規定することができる。
【0038】
ここに示されるような正方形の開口を有する中間床8の実施形態からは外れるが、本発明の思想からは外れることなく、中間床は、正方形以外の他のいずれの形状による貫通開口により液体透過性にて作製可能である。バスケット7及び/又は容器1を成型するために用いられるポリマーとは異なる材料を中間床8用に使用可能である。そのような材料は、フィルター紙及び織物を備え、自然及び/又は合成繊維、及び/又は金属ワイヤを備える。しかしながら、バスケット7と同様に容器1も好ましくは廉価な消耗品として設計されるように、容器及びバスケットの全体を一つの材料のみを使用して作製するのが特に好ましい。
【0039】
容器1の底面6からの距離に関するバスケット7の所望の位置は、また、壁4の内面に肩部44が形成されることでも規定することができる。上部試料空間9の内径が容器1の下部流体空間10の内径よりも大きい場合において、肩部44が形成される。したがって、バスケット7の外径は、下部流体空間10の内径よりも大きく、バスケット7は、肩部44上に載っている(図1A、左を参照)。
【0040】
図3は、本発明による容器1の2つの異なる実施形態を有する抽出ラック33の垂直部分断面を示す。断面及び図示の方向は、図2Bに矢印にて示されている。また、これらの容器1は、同じ外径を有する上部フランジ36及び下部肉厚領域37を有するのが好ましい。この上部フランジ36及び下部肉厚領域37は、保持手段35を有する摩擦ロックを生成し、好ましくはコンパートメント30の隅に位置し、コンパートメント30の全高を基本的に超えて延在する。この摩擦ロックのおかげで、容器は、コンパートメント30にしっかりと保持され、自然に落ちないようにすることができる。さらに、これらの保持手段35は、第1及び第2の突起38、39を有することができ、コンパートメント30への挿入にて、それらの間に容器1の下部肉厚領域37が係合し、その結果、コンパートメント30における容器1の特定の高さ位置が予め規定され、この規定された位置への保持がさらに強化される。容器1が挿入された状態での摩擦ロックは、それらの保持手段35の正確な寸法によって規定可能であるが、また、それらの柔軟性の範囲によっても規定可能である。
【0041】
図3の左側のコンパートメントにおける容器1は、図1Bの右側のコンパートメントのものと同一であるが、壁4の下部区域17の上端部18でのソケット19の位置及びサイズは異なる。つまり、ソケットの位置はより低く、ソケット19の高さはより高い。両方の場合において、しかしながら、中間床8は、壁4の上部区域16とワンピースにて一体的に製作されるクモの巣状の格子のように形成される。壁4の2つの区域間のシールを行う能力は、ソケット19のサイズにより増加する。
【0042】
容器1は、好ましくは上部開口3用の閉鎖部材24を備える。使用現場に便利なように、この閉鎖部材24は、栓25、カバー26、及びフィルム27を備えるグループから選択される。実施例として、収集セット28が図1Aに示されている。この収集セット28は、発明による少なくとも1つの収集/抽出容器1を有する。この収集セット28は、容器を受け入れるためのコンパートメント30を有する収集ラック29を備える。
【0043】
固体試料に液体を自動的に加えることができるために、ピペット操作ニードル12が流路11を通して液体空間10へ導入可能であり(図1B、左を参照)、あるいは、ディスペンサー・ニードルを固体の法医学試料2の上方に位置することができる(図3を参照)。また、液体空間10から液体を自動的に取り除くために、ピペット操作ニードル12が流路11を通して導入可能である(図1B、左を参照)。すべての場合において、容器1の上部開口3を通してアクセスが必要である。上部開口3は、法医学試料を収集した後に装着された、あるいは研究所のワークステーションにおける2つの準備工程の間において容器に置かれた栓25によって、完全に閉じることができる(図1Bの右を参照)。また、上部開口3は、試料空間9だけを部分的にカバーし、流路11を開けたままとするカバー26によって部分的に閉じることもできる(図1B及び図2B、左を参照)。容器1が上部試料空間9の領域にバスケット7の配向バー41を収容するために形作られた基本的に垂直な配向溝42を含む場合、カバー26は、好ましくはまた配向バー41を備える(図2B、左を参照)。
【0044】
すべての栓25及びカバー26は、それらの上端に好ましくは把持チューブ31を備え(例えば、図1B参照)、該把持チューブ31は、栓25又はカバー26を除去するため、あるいは容器1にそれらを適切に取り付けるために、ロボット(図示せず)によって把持可能である。示された実施形態からは外れるが、しかし本発明の思想からは逸脱せず、栓25又はカバー26を人が容易に除去し開けることを可能にするある種のつまみ(例えば「エッペンドルフ」チューブ、示していない)が代わりの解決案として利用可能である。ユーザーは、自動化システムにそれらを置く前に容器1を手動で開くことができる。
再び、一回試料がバスケット内に設けられるように、別の実施形態では、バスケット7及び/又は流路11の上方に貫通可能な隔壁とともに栓25又はカバー26を含むことができ、栓25又はカバー26は、除去される必要がなく、試料空間9及び/又は流路11には、栓25又はカバー26の隔壁を貫通することでアクセス可能である(図示せず)。
【0045】
本発明は、また、固体の法医学試料2から生体物質を抽出する方法を提供する。発明によるこの方法は以下のことを備える。即ち、
(a) アクセス可能な上部開口3、バスケット7を有する上部試料空間9、流体空間10、及び流路11を有する、発明による少なくとも1つの容器1を設け;
【0046】
(b) 少なくとも1つの容器1の上部試料空間9におけるバスケット7内へ、上部開口3を通して、核酸を含む、一般的に綿棒ヘッド、布、WHATMAN FTA紙、あるいは他の材料である固体の法医学試料2を置き;
【0047】
(c) 容器1の下部流体空間10が満たされ、かつ上部試料空間9もまた法医学試料2を十分に覆うよう満たされるように、バスケット7内へ十分な分解/溶解緩衝液{一般的なプロテイナーゼK溶液;市販の例として、PROMEGA DNA IQ Lysis Buffer, QIAGEN プロテイナーゼ K (QIAGEN AG, Garstligweg 8, CH-8634 Hombrechtikon, スイス) and INVITROGEN ChargeSwitch<(R)> Lysis Buffer L13 (Invitrogen Corp., 1600 Faraday Avenue, Carlsbad, CA 92008, 米国}を加える。
【0048】
実際の量は、装置のサイズに依存するだろう。つまり、異なるサイズの固体の法医学試料2用の異なるサイズの装置に依存するだろう。1つの実施態様において、容器1は、約1.25mlの容積を含むであろうバスケットを有する典型的な2mlの微小遠心管と同様の寸法になるであろう。そのような実施形態は、この工程にて約1〜1.25mlの緩衝液を加えることを必要とするだろう。
【0049】
(d) フィルムシール27、閉鎖部材24、栓25、あるいは他の手段で装置全体を密閉し、抽出工程を可能にするように培養を可能とする。溶解緩衝液の製造者により推奨された培養時間及び温度(1時間まで、あるいはそれ以上の時間範囲で、56℃、70℃、及び95℃の温度がしばしば使用される)が用いられるだろう。
【0050】
(e) 培養後、装置の開封あるいは開口を行い、基本的に垂直な流路11を通り下部流体空間10の底面にアクセスすることにより、分解緩衝液を取り出す。取り出された量は、回収可能な全量になり得るが、上部試料空間9と、固体の法医学試料2に吸収された液体の量とを加えた体積以上でなければならない。緩衝液のこの回収された量は、後の処理に関する、ユーザー選択の別の小瓶/チューブ/などに取っておくべきである。
【0051】
(f) 遠心分離機へ装置1を置き、固体の法医学試料に残っているどの緩衝液も内部チャンバ5の底に、好ましくは流体収集領域21に集まるように、回転される。遠心分離機は、固体の法医学試料から流体の回収を最大にする速度及び時間にセットされるべきである。
【0052】
(g) 遠心分離によって、下部流体空間10の底に、好ましくは流体収集領域21に集められた分解緩衝液の残量を、基本的に垂直な流路11を通りアクセスすることで取り出す。取り出された量は、以前に取り出された量と統合される。この試料は、例えばPROMEGA、INVITROGEN、QIAGEN、及び他の会社から市販されている商用の核酸精製キットを用いて核酸の精製ができる状態になっている。
【0053】
この装置1において、固体の法医学試料2を「洗い落とした」核酸を含む溶解緩衝液の体積は、液体が除去可能で固体試料2が後に残るように「アクセス流路」11を通り回収される。よって、発明によれば、溶解緩衝液の取り出しは、固体の法医学試料を含むバスケット7を除去することを要さずに、ピペット操作ニードルによって行なうことが可能である。特にこの特徴は、密閉/開封、及び遠心分離用の装置(これらの機器での典型的なオプション)を含むTECAN式のワークステーションのような完全自動化ワークステーションにおいて容器1の利用を大いに容易にする。
【0054】
発明による容器を用いることにおいて、以下のA又はBを行うことは任意である。即ち、
A 抽出液体、及び流路11へ挿入され試料空間9を通り流体空間10へ到達するピペット操作ニードル12で抽出された生体物質を取り出し、抽出された生体物質の増幅及び/又は分析を容器1の外部で行うこと、又は
B 容器1の流体空間10において、抽出された生体物質の増幅を行なうこと。
【0055】
いずれの場合でも、しかしながら、培養工程は、工程(d)の中で行われるのが好ましく、また、容器1は、工程(e)の1つを行なった後に遠心分離機にかけられる。
【0056】
固体の法医学試料から抽出されるべき生体物質は、生体物質のようないずれのものでもなり得る。しかしながら、体液、細胞、DNA、RNA、蛋白質、微生物、及びウィルスを含むグループからこの生体物質を選択するのが好ましい。特に、核酸又はヌクレオチドの形態における生体物質が好ましい。
【0057】
発明による方法をワークステーションで実行可能にするために、そのようなワークステーションは、ロボットと、例えば、化学か生化学の化合物及び/又は物質が潜在的な医薬の効果に関して定期的に化学分析されているところの薬学研究において扱っている液体の分野において本来知られているような対応のコントロールシステムとを装備しているのが好ましい。
【0058】
そのような既知の自動化システムでは、「ワークステーション」と呼ばれるような特別の装置によって、容器の搬送及び操作は行われる。これらのワークステーションは、手動で個々に操作可能か、あるいは自動化されたシステムとともに接続可能である。自動化システムにより、ユーザーは、個々の処理のすべての方法を実行する必要がないし、備える必要もない。そのような既知のシステムを結合する別の一般的な要因は、試料が標準化されたマイクロプレートにてしばしば処理されるという事実にある。そのようなマイクロプレートは、あらゆる構成で得ることができるが、一般的に、中心間で9mmの間隔で規則的な8×12ラスター(ANSI規格による)にて配列された96の試料容器又は「ウエル」を備える。この数の倍数、あるいはその一部だけのウエルを有するマイクロプレートもまた使用される。異なったワークステーションがマイクロプレートを運ぶために一若しくは複数のロボットに接続されてもよい。直角座標のシステムに従って好ましくは移動する一若しくは複数のロボットが作業台の上端で使用されてもよい。これらのロボットは、プレートあるいは他の試料容器、及びまた流体を運ぶことができる。中央制御システム又はコンピュータは、それらの既知のシステムを監視及び制御し、その顕著な長所は、作業過程の完全な自動化にある。結果として、このようなシステムは、いずれの人の介在を要さずに、数時間あるいは数日、続けて操作可能である。
【0059】
アレイにおいて容器1を取り上げるためのラックは、規格マイクロプレートの寸法を有するのが好ましく、その結果、ラックは、例えばマイクロプレート・ハンドリングロボットを用いて自動的に把持され、搬送され、マイクロプレート貯蔵部あるいはマイクロプレート処理ステーションに置かれる。マイクロプレート寸法を有するラックにおいて試料アリコートを提供するためのハンドリングシステムは、特許EP 0 904 841B1から既知である。そこに用いられるラックは、周辺フレーム、並びに上面及び底面を有する。それらのラックは、格子状の隔壁あるいは中間壁を備え、これらは複数のくぼみあるいはキャビティを形成し、それらの各々は、試料チューブ又は容器を受け入れることができる。特別の保持手段は、上方へ又は下方へ除去可能であり、また、上端あるいは底面から挿入可能である試料チューブがそれらのキャビティから落ちるのを防止する。
【0060】
本願明細書に開示された個々の実施形態の特徴のいかなる組み合わせも、本発明の範囲に属する。同じ参考符号は、各ケースにおいて明細書内でそれらが特に注意を向けていない場合でさえ、図面に示された同じ特徴部分に付している。
【符号の説明】
【0061】
1 収集/抽出容器、 2 固体の法医学試料、 3 上部開口、 4 基本的に垂直の壁、 5 内部チャンバ、 6 底面、 7 バスケット、 8 中間床、 9 上部試料空間、 10 下部流体空間、 11 基本的に垂直の流路、 12 ピペット操作ニードル、 13 上部オリフィス、 14 底部オリフィス、 15 間仕切壁、 16 壁の上部断面、 17 壁の下部断面、 18 下部区域の上部端、 19 ソケット、 20 上部区域の下部端、 21 流体収集領域、 22 平坦領域、 23 情報タグ、 24 閉鎖部材、 25 栓、 26 カバー、 27 フィルム、フィルム構造、 28 収集セット、 29 収集ラック、 30 コンパートメント、 31 把持チューブ、 32 抽出セット、 33 抽出ラック、 34 中間壁、 35 保持手段、 36 上部フランジ、 37 下部肉厚領域、 38 第1突起、 39 第2突起、 40 中心から外れた軸線、 41 配向バー、 42 配向溝、 43 中心軸、 44 肩部、 50。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体の法医学試料(2)を収集し、及び/又はそれらの法医学試料(2)から生体物質を抽出するための収集/抽出容器(1)であって、この収集/抽出容器(1)は、法医学試料(2)を挿入するための上部開口(3)を有し、上部開口(3)は、底面(6)により深さが制限される内部チャンバ(5)を囲む基本的に垂直の壁(4)にて囲まれ、壁(4)及び底面(6)は、流体を通さず、ここで上記容器(1)は、バスケット(7)と、分解/溶解及び抽出の間、固体の法医学試料(2)を保持するための基本的に水平の中間床(8)とを備え、中間床(8)は、流体に対して透過性であり、内部チャンバ(5)を上部試料空間(9)と下部流体空間(10)とに分割し、
上記収集/抽出容器(1)は、基本的に垂直な流路(11)を備え、該流路(11)は、試料空間(9)を通り流体空間(10)へピペット操作ニードル(12)を挿入可能とし、かつ容器(1)の上部開口(3)の近くに位置する上部オリフィス(13)を有し、かつ底部オリフィス(14)にて中間床(8)を貫通し、上記容器(1)は、また、少なくとも部分的に流路(11)を囲み上部試料空間(9)から後者を分離する間仕切壁(15)を備えることを特徴とする収集/抽出容器。
【請求項2】
容器(1)の壁(4)は、基本的に円筒状であり、流路(11)は、中心から外れて配置され、上部試料空間(9)内へ導入可能でありバスケット(7)にてここに維持される固体の法医学試料(2)用の空間をできるだけ大きくするために、壁(4)及び間仕切壁(15)によって部分的に形成されることを特徴とする、請求項1記載の収集/抽出容器。
【請求項3】
容器(1)のバスケット(7)は、口腔綿棒を収容するようにサイズが決定されることを特徴とする、請求項1又は2記載の収集/抽出容器。
【請求項4】
バスケット(7)は、高分子材料の単一の射出成形品として完成され、容器(1)の内部チャンバ(5)内へ差し込まれることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項5】
バスケット(7)は、壁(4)の上部区域(16)の一部として完成され、高分子材料の単一の射出成形品として壁(4)の上部区域(16)と共に形成されることを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項6】
容器(1)の底面(6)は、高分子材料の単一の射出成形品として壁(4)あるいは壁(4)の下部区域(17)と共に形成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項7】
壁(4)の下部区域(17)は、その上部端(18)に、壁(4)の上部区域(16)の下部端(20)が密閉して挿入可能なソケット(19)を備えることを特徴とする、請求項6記載の収集/抽出容器。
【請求項8】
底面(6)、及び/又は壁(4)の下部区域(17)は、容器(1)の下部レベルにて底面(6)の残りである流体収集領域(21)を形成して完成され、流体収集領域(21)は、容器(1)の基本的に垂直な流路(11)にて規定される基本的に垂直な軸(40)上に存在することを特徴とする、請求項1から7のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項9】
容器(1)の底面(6)は、壁(4)あるいは壁(4)の下部区域(17)に接着され又は溶着されるフィルム構造(27)として完成されることを特徴とする、請求項1から5のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項10】
底面(6)は、その外側にて、情報タグ(23)がその上あるいはその中に位置する平坦領域(22)を備え、情報タグ(23)は、1−Dバーコード、2−Dバーコード、RFIDトランスポンダー、及びRuBeeトランシーバーを含むグループから選択されることを特徴とする、請求項1から9のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項11】
法医学試料(2)は、ガーゼ・パッド又は口腔綿棒、発見物、フィルター紙又はWHATMAN FTA紙、及び織物片を含むグループから選択されることを特徴とする、請求項1から10のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項12】
上部開口(3)用の閉鎖部材(24)を備え、該閉鎖部材(24)は、栓(25)、カバー(26)、及びフィルム(27)を含むグループから選択されることを特徴とする、請求項1から11のいずれかに記載の収集/抽出容器。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の少なくとも一つの収集/抽出容器(1)を有する収集セット(28)であって、容器(1)を受け入れるためのコンパートメント(30)を有する収集ラック(29)を備えたことを特徴とする収集セット。
【請求項14】
請求項1から12のいずれかに記載の少なくとも一つの収集/抽出容器(1)を有する抽出セット(32)であって、容器(1)を受け入れるためのコンパートメント(30)を有する抽出ラック(33)を備えたことを特徴とする抽出セット。
【請求項15】
請求項13に記載の収集セット(28)又は請求項14に記載の抽出セット(32)であって、収集又は抽出ラック(29、32)のコンパートメント(30)は、上端及び底面で開いており、容器(1)は、コンパートメント(30)内へ上方又は下方から挿入可能であり、このコンパートメントから下方へ又は上方へ取り出し可能であることを特徴とする収集セット又は抽出セット。
【請求項16】
収集ラック(29)又は抽出セット(32)は、標準マイクロプレートの寸法を有することを特徴とする請求項13から15のいずれかに記載の収集セット又は抽出セット。
【請求項17】
固体の法医学試料(2)から生体物質を抽出する方法であって、該方法は、
(a) アクセス可能な上部開口(3)、バスケット(7)を有する上部試料空間(9)、流体空間(10)、及び流路(11)を有する、請求項1から12のいずれかに記載の少なくとも1つの容器(1)を設けること;
(b) 少なくとも1つの容器の上部試料空間(9)におけるバスケット(7)内へ上部開口(3)を通して固体の法医学試料(2)を置くこと;
(c) 容器(1)の下部流体空間(10)が満たされ、及び、上部試料空間(9)も法医学試料(2)を覆うのに十分に満たされるように、バスケット(7)内へ分解/溶解緩衝液を加えること;
(d) 装置(1)の全体を密閉し、次に、抽出工程が可能なように培養を可能にすること;
(e) 培養後、装置(1)を開封あるいは開口し、基本的に垂直な流路(11)を通り下部流体空間(10)の底面にアクセスすることにより、分解緩衝液量を取り出すこと;
(f) 遠心分離機に装置(1)を置き、固体の法医学試料(2)において残っているいずれの分解/溶解緩衝液も内部チャンバ(5)の底へ集まるように回転すること;
(g) 遠心分離により下部流体空間(10)の底に集められた分解/溶解緩衝液の残量を、基本的に垂直な流路(11)を通してアクセスすることにより取り出すこと;
を備え、
ここで固体の法医学試料(2)は、ステップ(c)からステップ(g)の全ての間、少なくとも1つの容器(1)の試料空間(9)におけるバスケット(7)に保持される、
ことを特徴とする抽出方法。
【請求項18】
(i) 流路(11)へ挿入され、試料空間(9)を通り流体空間(10)内へ到達するピペット操作ニードル(12)により、分解/溶解緩衝液、及び抽出された生体物質を取り出すこと;及び
(ii) 少なくとも1つの容器(1)の外部で、抽出された生体物質の増幅及び/又は分析を行うこと、
をさらに備えた、請求項17記載の抽出方法。
【請求項19】
分解/溶解緩衝液は、内部チャンバ(5)の底面の流体収集領域(21)において固体の法医学試料(2)から下へ集まることを特徴とする、請求項17又は18に記載の抽出方法。
【請求項20】
固体の法医学試料から抽出される生体物質は、体液、細胞、DNA、RNA、蛋白質、微生物、及びウィルスを備えるグループから選択されることを特徴とする、請求項17から19のいずれかに記載の抽出方法。
【請求項21】
ロボット、及び対応するコントロールシステムを装備したワークステーションにて自動的に行なわれることを特徴とする、請求項17から20のいずれかに記載の抽出方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−534324(P2010−534324A)
【公表日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517275(P2010−517275)
【出願日】平成19年7月23日(2007.7.23)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057561
【国際公開番号】WO2009/012808
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(501442699)テカン・トレーディング・アクチェンゲゼルシャフト (26)
【氏名又は名称原語表記】TECAN Trading AG
【Fターム(参考)】