説明

泡消火設備の混合装置

【課題】パイロットボンベまたは加圧ボンベを開放する起動装置は、電気的な装置を使用せず、防爆エリアでも防爆構造を不要し、電気ケーブルの敷設もいらないとともに、混合器で泡原液と水が安定した所定の比例で混合することができる泡消火設備の混合装置。
【課題手段】
パイロットボンベ43の起動ガスが起動装置41の作動により放出し、その圧力が加圧ボンベ44を開放させ、上記加圧ボンベ44の加圧ガスが泡原液タンク3を加圧し、上記泡原液タンク3から泡原液が押出され、混合器7を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置100において、上記消火用水は自動弁2に仕切られて、上記起動装置41の作動は、上記自動弁2開放用の水圧で該自動弁2の開放と同時に行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泡消火設備に関し、特に泡消火薬剤の混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来石油プラントや石油備蓄のコンビナートにおいて、泡消火設備の消火薬剤は、蛋白泡消火剤を原液として大いに使用されている。最近、水性膜泡消火剤の消火能力が蛋白泡消火剤のより優れていることが判明し、多くの現場では、消火薬剤が従来の蛋白泡消火剤から、水性膜泡消火剤に切替えられることが予想される。蛋白泡消火剤の混合装置は、蛋白泡原液と水の比重が違い、原液タンク内に水が入っても水と原液とが混じにくいことを利用して、消火用水により直接に泡原液タンクを加圧し、泡原液を混合器に送り出す仕組みになっている。しかし、既設の蛋白泡消火剤の混合装置を水性膜泡消火剤の混合装置として流用すると、水の比重と概ね同等である水性膜消火剤は、泡原液タンクの中で消火用水と混じり合ってしまい、所定の混合比の泡水溶液を連続して得ることができない。
【0003】
この問題を解決するために、消火用水により泡原液タンクを加圧することの代わりに、ガスの圧力を利用して泡原液タンクを加圧し、タンク内に泡原液と消火用水とが混ざることなく泡原液を押出する方法がある。例えば、図6に示すように、従来の泡消火設備の混合装置500では、泡原液タンク3に貯蔵された泡原液を混合器7に送出するために、泡消火制御盤8は電気信号線52を介して作動信号をソレノイド51に送り、ソレノイド51が作動してパイロットボンベ43の起動ガスCO2を利用して加圧ボンベ44を開放させ、加圧ボンベ44に貯蔵された加圧ガスN2が泡原液タンク3を加圧し、そして泡原液がN2の力で泡原液タンク3から押し出され、混合器7に流れる。(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】実昭55−155536号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に開示されたパイロットボンベ43を制御するために、ソレノイド51が必要である。ソレノイド51とは、筒状の電気コイルで内部に針のようなスイッチを有し、作動信号を受けた後に針が筒に飛出し、パイロットボンベ43の封板を破って開放させる装置である。しかし、泡消火設備が通常に可燃性物質が存在する可能性が高いエリアに設置されているときに、ソレノイドのような電気的な装置を使用すると、その装置は耐圧防爆仕様の機器となり、電気配線工事においても防爆工事が必要となり、装置やケーブルが複雑かつ高価になってしまう。また、ソレノイドの作動と自動弁の開放は別々で制御されて、ガスによって泡原液の押出と水が自動弁の一次側から二次側に流れるタイミングがずれることがあるため、泡水混合の初期段階で、所定の混合比に達成できない問題点がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る泡消火設備の混合装置は、上述の問題を解決するためになされたもので、パイロットボンベの起動ガスが起動装置の作動により放出し、その圧力で加圧ボンベを開放させ、上記加圧ボンベの加圧ガスが泡原液タンクを加圧し、上記泡原液タンクから泡原液が押出され、混合器を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置において、上記消火用水は自動弁に仕切られて、上記起動装置の作動は、上記自動弁開放用の水圧で該自動弁の開放と同時に行うことを特徴とする。
【0006】
また、起動装置の作動が加圧ボンベを開放させ、上記加圧ボンベの加圧ガスが泡原液タンクを加圧し、上記泡原液タンクから泡原液が押出され、混合器を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置において、上記消火用水は自動弁に仕切られて、上記起動装置の作動は、上記自動弁開放用の水圧で該自動弁の開放と同時に行うことを特徴とする。
【0007】
また、上記自動弁開放用の水圧は、該自動弁の一次圧であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、パイロットボンベの起動ガスが起動装置の作動により放出し、その圧力で加圧ボンベを開放させ、上記加圧ボンベの加圧ガスが泡原液タンクを加圧し、上記泡原液タンクから泡原液が押出され、混合器を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置において、上記消火用水は自動弁に仕切られて、上記起動装置の作動は、上記自動弁開放用の水圧で該自動弁の開放と同時に行い、つまり電気的な装置ではないので、防爆エリアに設置しても防爆構造に必要がなくなり、また起動装置と泡消火制御盤の間にケーブルの敷設が不要となるので、設備のコストが低減でき、なお、起動装置の作動と自動弁の開放を同時に行わせるため、泡原液の押出と自動弁の一次側から二次側に水が流れるタイミングが合致することができ、泡水混合の初期段階でも安定した所定の混合比となっている泡水溶液を得ることができる。
【0009】
また、起動装置の作動が加圧ボンベを開放させ、上記加圧ボンベの加圧ガスが泡原液タンクを加圧し、上記泡原液タンクから泡原液が押出され、混合器を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置において、上記消火用水は自動弁に仕切られて、上記起動装置の作動は、上記自動弁開放用の水圧で該自動弁の開放と同時に行い、つまり電気的な装置ではないので、防爆エリアに設置しても防爆構造に必要がなくなり、また起動装置と泡消火制御盤の間にケーブルの敷設が不要となるので、設備のコストが低減でき、なお、起動装置の作動と自動弁の開放を同時に行わせるため、泡原液の押出と自動弁の一次側から二次側に水が流れるタイミングが合致することができ、泡水混合の初期段階でも安定した所定の混合比となっている泡水溶液を得ることができる。
【0010】
また、自動弁開放用の水圧は該自動弁の一次圧であるため、圧力が高く、起動装置をより安定した速さで作動することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明を実施するための実施形態1を図1に示し、実施形態2を図4に示し、以下にその構成及び動作の手順を簡単に説明する。
【0012】
実施形態1
図1に示すように、泡消火設備の混合装置100は、主に以下の4部分で構成される。
【0013】
消火用水部分:消火用水を図示しない水槽から吸上げる消火ポンプ1と、消火用水を仕切ってその流量を制御する自動弁2である。自動弁2は、泡消火制御盤8の制御に従う遠隔操作可能のモータバルブ21と、自動弁2の開閉に係わるピストンを有する加圧室23と、加圧室23へ導水用の導水管24と、自動弁2の開度を制限するリミットスイッチ22を有している。また、ここで、モータバルブ21は遠隔操作可能と説明したが、手動起動のバルブでもよい。
【0014】
泡原液部分:泡原液を貯蔵する泡原液タンク3である。泡原液タンク3の上に、安全弁31を設けている。
【0015】
起動と加圧部分:起動ガスCO2を開放する起動装置41と、起動装置41用の導水管42と、起動ガスCO2を貯蔵するパイロットボンベ43と、起動ガスCO2により起動され、泡原液タンク3に加圧する加圧ガスN2を貯蔵する加圧ボンベ44と、加圧ガスN2の圧力を調整するレギュレータ45である。
【0016】
混合部分:泡原液と消火用水を所定の比例で混合する混合器7と、混合器7に流れる前に、泡原液と消火用水の圧力は概ね同等であることを調整するために、混合器7の一次側に取付ける等圧弁6である。なお、等圧弁6の経路には、常時開の開閉弁61と、逆流を防止する逆止弁62と、オリフィス63とが設けられている。
【0017】
その他、泡消火設備全体を制御する泡消火制御盤8がある。
【0018】
図2は起動装置41の断面を示している。起動装置41は、筐体411と、スプリング412と、通常スプリング412の弾力で筐体411内に収納し、導水管42からピストン414が受ける水圧が所定の値を超えるとスプリング412の弾力を抗して筐体411から飛出す針413とで構成されている。この針413の突出によって、パイロットボンベ43の図示しない封板を破る。
【0019】
以下、図1及び図2による構成の動作につき、泡原液と消火用水との混合手順を図3に基づいて簡単に説明する。
【0020】
例えば火災が発生する場合、図示しない火災感知器などの連動手段または操作員からの操作により、泡消火制御盤8がモータバルブ21を開き(S10)、消火用水が導水管24を通して自動弁2の加圧室23に到着し水圧によって自動弁2が開放する(S11)。これと同時に、消火用水が導水管42を通して起動装置41を作動し、針413が筐体411から飛出す(S12)。飛出した針413がパイロットボンベ43の図示しない封板を破り、貯蔵されている起動ガスCO2が放出し(S13)、銅管46を介して上記放出したCO2は圧力で加圧ボンベ44を開き、貯蔵されている加圧ガスN2を放出させる(S14)。加圧ガスN2はレギュレータ45で一旦調圧され、鋼管47を介して泡原液タンク3を加圧し、そして泡原液が押出され、等圧弁6に流れる(S15)。等圧弁で泡原液が自動弁2の二次側から流れた消火用水と同圧になるように調整される(S16)。概ね同圧の泡原液と消火用水が混合器7に流入し、所定の混合比例で混合し(S17)、泡消火薬剤の泡水溶液を生成して(S18)、図示しない泡ヘッドより放出することによって消火活動を行う。
【0021】
この実施形態1によって、パイロットボンベ43を開放させる起動装置41は、消火用水の水圧(自動弁2の一次側の圧力)を利用して動作するので、ソレノイドのような従来の電気的な起動装置が不要となり、防爆エリアに設置しても装置の防爆構造が要らない。また、電気信号の処理が不要となるので、電気ケーブルの敷設が要らなくなる。そのため、コスト低減の効果を奏する。なお、モータバルブ21の起動で自動弁2の開放と起動装置41の作動が同時に働くため、水が自動弁2の一次側から二次側に流れるタイミングと、泡原液が泡原液タンク3から押出されるタイミングとは合致させることができ、混合器7での泡水は安定した所定の比例で混合することができる。さらに、起動装置41は自動弁2の一次側圧で起動されるため、圧力が高く、起動装置41がより安定した速さで作動される。
【0022】
実施形態2
図4は、実施形態2を示している。泡消火設備の混合装置200は、パイロットボンベ43を設置せず、起動装置41が直接に加圧ボンベ44aに設けられる点以外に、上記実施形態1と同様であり、また符号も同一に付与するので、ここでその構成の説明を省略する。
【0023】
図5は実施形態2における泡原液と消火用水との混合手順を示している。
【0024】
例えば泡放出試験を行う場合、操作員からの操作により、泡消火制御盤8がモータバルブ21を開き(S20)、消火用水が導水管24を通して自動弁2の加圧室23に到着し水圧によって自動弁2が開放する(S21)。これと同時に、消火用水が導水管42を通して起動装置41を作動し、針413が筐体411から飛出す(S22)。飛出した針413が加圧ボンベ44aの封板を破り、貯蔵されている加圧ガスN2放出する(S23)。加圧ガスN2はレギュレータ45で一旦調圧され、鋼管47を介して泡原液タンク3を加圧するとともに、他の加圧ボンベ44bを開放する。そして泡原液が押出され、等圧弁6に流れる(S24)。等圧弁6で泡原液が自動弁2の二次側から流れた消火用水と同圧になるように調整される(S25)。概ね同圧の泡原液と消火用水が混合器7に流入し、所定の混合比例で混合し(S26)、泡消火薬剤の泡水溶液を生成して(S27)、図示しない泡ヘッドより放出することによって泡放出試験を行う。
【0025】
この実施形態2によって、加圧ボンベ44aを開放させる起動装置41は、消火用水の水圧(自動弁2の一次側の圧力)を利用して動作するので、ソレノイドのような従来の電気的な起動装置が不要となり、防爆エリアに設置しても装置の防爆構造が要らない。また、電気信号の処理が不要となるので、電気ケーブルの敷設が要らなくなる。さらに、パイロットボンベ43も省略したので、コスト低減の効果が一層高くなる。なお、モータバルブ21の起動で自動弁2の開放と起動装置41の作動が同時に働くため、水が自動弁2の一次側から二次側に流れるタイミングと、泡原液が泡原液タンク3から押出されるタイミングとは合致することができ、混合器7での泡水は安定した所定の比例で混合することができる。さらに、起動装置41は自動弁2の一次側圧で起動されるため、圧力が高く、起動装置41がより安定した速さで作動される。
【0026】
上記実施形態1における泡消火設備の混合装置100は、パイロットボンベ43の起動ガスが起動装置41の作動により放出し、その圧力が加圧ボンベ44を開放させ、上記加圧ボンベ44の加圧ガスが泡原液タンク3を加圧し、上記泡原液タンク3から泡原液が押出され、混合器7を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置100において、上記消火用水は自動弁2に仕切られ、上記起動装置41の作動は、上記自動弁2開放用の水圧で、該自動弁2の開放と同時に行うことを特徴とする泡消火設備の混合装置100である。
【0027】
また、実施形態2における泡消火設備の混合装置200は、起動装置41の作動が直接に加圧ボンベ44を開放させ、上記加圧ボンベ44の加圧ガスが泡原液タンク3を加圧し、上記泡原液タンク3から泡原液が押出され、混合器7を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置200において、上記消火用水は自動弁2に仕切られ、上記起動装置41の作動は、上記自動弁2開放用の水圧で、該自動弁2の開放と同時に行うことを特徴とする泡消火設備の混合装置200である。
【0028】
なお、上記各実施形態のおける水圧の代わりに、空気圧を用いてもよく、コンプレッサ等による空気圧をモータバルブ21に接続すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態1に係わる泡消火設備の混合装置100系統図。
【図2】起動装置41の断面図。
【図3】実施形態1における泡原液と消火用水の混合フローチャート。
【図4】実施形態2に係わる泡消火設備の混合装置200系統図。
【図5】実施形態2における泡原液と消火用水の混合フローチャート。
【図6】従来における泡原液と消火用水の混合装置500系統図。
【符号の説明】
【0030】
1 消火ポンプ
2 自動弁
21 モータバルブ
24 導水管
3 泡原液タンク
41 起動装置
411 筐体
412 スプリング
413 針
414 ピストン
42 導水管
43 パイロットボンベ
44 加圧ボンベ
45 レギュレータ
46 銅管
47 鋼管
51 ソレノイド
52 電気信号線
6 等圧弁
7 混合器
8 泡消火制御盤
100、200 泡消火設備の混合装置

























【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロットボンベの起動ガスが起動装置の作動により放出し、その圧力で加圧ボンベを開放させ、上記加圧ボンベの加圧ガスが泡原液タンクを加圧し、上記泡原液タンクから泡原液が押出され、混合器を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置において、
上記消火用水は、自動弁に仕切られて、
上記起動装置の作動は、上記自動弁開放用の水圧で、該自動弁の開放と同時に行うことを特徴とする泡消火設備の混合装置。
【請求項2】
起動装置の作動が加圧ボンベを開放させ、上記加圧ボンベの加圧ガスが泡原液タンクを加圧し、上記泡原液タンクから泡原液が押出され、混合器を介して消火用水と混合せしめられる泡消火設備の混合装置において、
上記消火用水は、自動弁に仕切られて、
上記起動装置の作動は、上記自動弁開放用の水圧で、該自動弁の開放と同時に行うことを特徴とする泡消火設備の混合装置。
【請求項3】
上記自動弁開放用の水圧は、該自動弁の一次圧である請求項1または2記載の泡消火設備の混合装置。










【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−7129(P2007−7129A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191159(P2005−191159)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】