説明

泡立ち点圧力調整を伴うインク圧力調整器

【課題】優れたインク圧力調整器を得る。
【解決手段】インクジェット印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するためのインク圧力調整器は、インクラインを介して上記印字ヘッドと流体連通するためのインク出口を有するインクチャンバと、大気に開口するエアー入口と、上記チャンバ内へと気泡を泡立てるための気泡出口であって上記各気泡がインクの膜または本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す当該気泡出口と、上記エアー入口と上記気泡出口とを接続するエアーチャネルと、を備えており、上記気泡出口は、上記印字ヘッドへインクを供給する結果として上記チャンバ内へ引き込まれる気泡のラプラス圧を制御することによりインクの静圧を調整するように寸法付けされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ用の圧力調整器に関する。本発明は、主に、印字ヘッドノズルへインクを供給するインク供給システム内で負の静圧を生成するために開発された。
【背景技術】
【0002】
上記相互参照文献に記載されるインクジェット印字ヘッドは、一般に一連のノズルを備えており、各ノズルは、ノズルチャンバの天部に画成されるノズル開口からインクを射出するための関連するインク射出アクチュエータを有している。インクカートリッジまたは他のリザーバからのインクは上記チャンバへと供給され、このチャンバでは、印字のために射出アクチュエータがノズル開口を通じてインク滴を押し出す。一般に、インクカートリッジは、インクジェットプリンタにおいて交換可能な消耗品である。
【0003】
インクは、各液滴射出後に生み出される吸引力によって、また、親水性の表面(例えば、二酸化珪素表面)を有するインク供給チャネルの毛管作用によって各ノズルチャンバ内へ引き込むことができる。非作動期間中、インクは、各ノズル開口の周縁にわたって留められるインクメニスカスの表面張力によってノズルチャンバ内に保持される。インク圧が制御されない場合には、おそらくインクの熱膨張によって、あるいは、ノズルの高さよりも上側にインクを上昇させるプリンタのチッピングによって、インク圧が外部の大気圧に対してプラスになる場合がある。この場合、インクが印字ヘッド表面上に溢れる。また、能動的印字中、インク供給チャネルを通じて供給されるインクは、印字が停止するとノズルから流出して印字ヘッド面に溢れる十分なモーメントを有する。印字ヘッド面溢れは、これらのシナリオのいずれにおいても明らかに望ましくない。
【0004】
この問題を扱うため、多くの印字ヘッドインク供給システムは、ノズルでのインクの静圧が大気圧未満となるように設計される。これにより、ノズル開口にわたるメニスカスが凹状になり或いは内側に引き込まれる。非作動期間中においては、メニスカスがノズル開口に留められ、インクはノズルから自由に流れることができない。また、インク流出の結果としての面溢れが最小限に抑えられる。
【0005】
チャンバ内の負圧の大きさは2つの要因によって制限される。負圧は、チャンバをデプライムする(すなわち、チャンバからインクを吸引してカートリッジへ戻す)に足る強さを有することができない。しかしながら、負圧が非常に弱い場合、特に印字ヘッドが揺り動かされれば、ノズルがインクを印字ヘッド面上へ漏出させる可能性がある。何らかの形態の改善(例えば、印字ヘッドメンテナンスまたはリプライミング)を要するこれらの2つの悲惨な出来事の他、次善最適なインク静圧は、一般に、印字中に印字品質のかなりの損失を伴って一連の画像欠陥を引き起こす。したがって、インクジェットプリンタは、インク供給システムの圧力調整器によって達成されなければならないインク静圧の比較的狭いウインドウを有する場合がある。
【0006】
一般に、インクカートリッジは、それから供給されるインクの静圧を調整するための何らかの手段を組み込むように設計される。負圧を形成するために、一部のカートリッジはフレキシブルバッグ形態を使用する。カートリッジの部品は、インク格納量を増大させる方向へ付勢されるフレキシブルバッグまたは壁部を有する。特許文献1および特許文献2は、このタイプのカートリッジの例である。これらのカートリッジは、負圧を与えることができるが、フレキシブルバッグにおける内部リーフスプリングの優れた製造公差に依存する傾向がある。また、フレキシブルバッグにおける内部付勢手段の要件は、かなりの製造困難性を与える。
【0007】
インクカートリッジを介して負のインク圧を生み出す他の手段が図25に示されている。一片の発泡体または多孔質材料2が出口3の上側のカートリッジ1内に配置される。発泡体2は、インク4で飽和される部分と、インクで湿らされてもよいが飽和されない部分5とを有している。カートリッジ1の上端は、エアー迷路7を通じて大気に通気される。毛管作用(矢印6によって表わされる)がインクを飽和部分4から非飽和部分5内へと引き込む。これは、増大される静圧の負荷によって或いは毛管作用6によって上方へ引き上げられるインクの「頭部」によってインクが釣り合わされるまで続く。飽和部分4の上端の静圧は、非飽和部分5内への毛管作用に起因して大気圧未満である。そこから、静圧は、出口3へ向かって増大し、印字ヘッド(図示せず)に接続される場合にはノズル開口に至るまで増大し続ける(ノズル開口が印字ヘッドの最下点であると仮定した場合)。ノズルでのインクの静圧が大気圧未満となるように非飽和発泡体に対する飽和発泡体の割合を設定することにより、インクメニスカスが内側に生じる。
【0008】
しかしながら、発泡挿入体を備えるインクカートリッジは、一般に、最大1600dpiで印字する出願人のページ幅印字ヘッドを使用する高速印字(例えば、1〜2秒毎に1ページの印字速度)に適さない。そのような高速プリンタには、従来の走査プリンタよりも高い発射速度を有する多数のノズルがある。したがって、カートリッジからのインク流量は、走査印字ヘッドのそれよりもかなり大きい。発泡挿入体によって引き起こされる液圧抵抗は、ノズルを不足状態にする可能性があり、また、チャンバ再充填速度を遅らせる可能性がある。多孔性の高い発泡体は、液圧抵抗が低いが、毛管力もかなり低い。更に、正確な圧力制御は、内部空間寸法にわたって正確な制御を同様に必要とするが、これは、殆どの発泡体材料の確率的に形成される空隙構造によって達成するのが困難である。したがって、多孔質発泡挿入体は、高いインク流量でインク圧を制御するための実行可能な手段であると見なされていない。
【0009】
一体の圧力調整器を有するインクカートリッジに代わる(に加える)手段として、インク供給システムは、印字ヘッドとインクリザーバとの間のインクラインに圧力調整器を備えていてもよい。参照によりその内容が本明細書に組み込まれる本出願人の既に出願された、特許文献3および特許文献4は、ダイヤフラムおよび付勢機構を備えるインライン圧力調整器について記載している。この機械的な装置は、印字ヘッドで負のインク静圧を生成するために使用される。しかしながら、このタイプの機械的な圧力調整器は、ダイヤフラムの上流側および下流側のインク圧の変動に応じてダイヤフラムを開閉させるスプリングに関して極めて細かい製造公差を必要とするという欠点を有している。実際に、圧力制御のこの機械的なシステムは、一定の負のインク静圧を比較的狭い圧力範囲内に維持することが必要とされるインク供給システムでの実施を困難にする。
【0010】
したがって、インク静圧を比較的狭い圧力範囲内に維持するのに適した圧力調整器を提供することが望ましい。また、比較的高いインク流量での使用に適する圧力調整器を提供することが望ましい。更に、構造が簡単で且つ高い許容誤差で製造される過剰な可動部品を必要としない圧力調整器を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願第11/014764号
【特許文献2】米国特許出願第11/014769号
【特許文献3】米国特許出願第11/293806号(2005年12月5日に出願)
【特許文献4】米国特許出願第11/293842号(2005年12月5日に出願)
【発明の概要】
【0012】
第1の態様において、本発明は、インクジェット印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するためのインク圧力調整器であって、
インクラインを介して上記印字ヘッドと流体連通するためのインク出口を有するインクチャンバと、
大気に開口するエアー入口と、
上記チャンバ内に収容されるインク中へとエアーを泡立てるように位置された気泡出口と、
上記エアー入口と上記気泡出口とを接続するエアーチャネルと、
を備え、
上記印字ヘッドへインクを供給することで上記チャンバ内へ引き込まれる気泡、のラプラス圧を制御するために、上記気泡出口は寸法付けられており、これにより、上記インクの静圧を調整する、
インク圧力調整器を提供する。
【0013】
場合により、上記インクチャンバがプリンタ用のインクリザーバである。
【0014】
場合により、上記インクチャンバは、インクリザーバと流体連通するためのインク入口ポートを有する。
【0015】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも10mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0016】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも100mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0017】
場合により、上記気泡出口は、該気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する重要寸法を有している。
【0018】
場合により、上記気泡出口が円形の開口として構成され、上記円形の開口の半径が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0019】
場合により、上記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、上記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0020】
場合により、上記スロットの幅が200ミクロン未満である。
【0021】
場合により、上記エアーチャネルの各断面寸法がスロットの幅よりも大きく、それにより、エアーチャネル内の流れ抵抗が最小限に抑えられる。
【0022】
場合により、上記エアーチャネルは、エアー入口を通じたインク損失を最小にするために湾曲している或いは曲がりくねっている。
【0023】
場合により、上記エアーチャネルは、上記チャネル内のインクの最大毛管容量が約0.1mL未満となるように寸法付けられている。
【0024】
場合により、上記チャンバの1つの壁が吸気プレートを備え、上記プレートがエアー入口、エアーチャネル、および、気泡出口を備える。
【0025】
場合により、上記プレートが複数の重ね合わされた層を備え、上記層が協働してエアー入口、エアーチャネル、および、気泡出口を画成する。
【0026】
場合により、上記プレートは、
エアー入口開口が貫通して画成されるとともに、その第1の面に細長い凹部が形成され、上記凹部が上記エアー入口開口から末端まで長手方向に延びる第1の層と、
上記第1の面に積層され、気泡通気開口が貫通して画成される第2の層と、
を備え、
上記気泡通気開口が上記末端と流体連通するように位置されている。
【0027】
場合により、上記末端へ向かう上記凹部の深さが上記気泡出口の重要寸法を画成し、上記重要寸法が上記気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する。
【0028】
場合により、上記凹部が上記末端に浅い部分を有し、上記浅い部分が上記エアーチャネル内に狭窄部を形成する。
【0029】
場合により、上記末端が上記気泡通気開口よりも大きい直径を有する円形凹部によって画成され、それにより、環状スロットにより形成される気泡出口が設けられる。
【0030】
場合により、上記第1の面には囲繞部が画成され、上記囲繞部は、第1および第2の層の積層中に上記凹部を接着剤から保護する。
【0031】
更なる態様においては、上記チャンバ内のインクの上側のヘッドスペース内の過度の圧力を解放するための排気弁を更に備える圧力調整器が提供される。
【0032】
第2の態様において、本発明は、
インクジェット印字ヘッドと、
インクリザーバと、
上記印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するためのインク圧力調整器であって、
インク出口を有するインクチャンバと、
大気に開口するエアー入口と、
上記チャンバ内へと気泡を泡立てるための気泡出口であり、各気泡がインクの膜または本体内に捕捉されるエアーキャビティを成し、印字ヘッドへインクを供給する結果として上記チャンバ内へ引き込まれる気泡のラプラス圧を制御することによりインクの静圧を調整するように寸法付けられている、気泡出口と、
エアー入口と気泡出口とを接続するエアーチャネルと、
を備えるインク圧力調整器と、
上記インク出口と上記印字ヘッドの入口チャネルとの間を流体連通させる第1のインクラインと、
を備える印字ヘッドインク供給システムを提供する。
【0033】
場合により、上記インクリザーバが上記インクチャンバによって画成される。
【0034】
場合により、上記インク圧力調整器が交換可能なインクカートリッジである。
【0035】
更なる態様では、上記インクリザーバを画成するインクカートリッジを更に備えるインク供給システムが提供され、上記インクカートリッジは、上記インクチャンバのインク入口ポートと流体連通するインク供給ポートを有する。
【0036】
更なる態様では、上記印字ヘッドの出口チャネルと上記インクリザーバの戻し入口との間を流体連通する第2のインクラインを更に備えるインク供給システムが提供され、上記インク供給システムがループを成すようになっている。
【0037】
場合により、上記戻し入口は、戻されたインクをフィルタ処理するためのインクフィルタを備える。
【0038】
場合により、上記印字ヘッドの上流側の上記第1のインクライン内には第1のポンプが位置されている。
【0039】
場合により、上記第1のポンプは印字中に開放して休止しており、それにより、上記圧力調整器が印字中に印字ヘッド内のインクの静圧を決定する。
【0040】
場合により、上記印字ヘッドの下流側の上記第2のインクライン内には第2のポンプが位置されている。
【0041】
場合により、上記第1および第2のポンプは、プライミング動作、デプライミング動作、パージ動作、印字動作のために独立に構成可能である。
【0042】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも10mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0043】
場合により、上記気泡出口は、該気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する重要寸法を有している。
【0044】
場合により、上記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、上記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0045】
場合により、上記スロットの幅が200ミクロン未満である。
【0046】
場合により、気泡出口は、チャンバ内に収容されるインク中へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す。
【0047】
更なる態様では、上記チャンバ内のインクの上側のヘッドスペース内の過度の圧力を解放するための排気弁を更に備える圧力調整器が提供される。
【0048】
場合により、上記エアーチャネルは、エアー入口を通じたインク損失を最小にするために湾曲している或いは曲がりくねっている。
【0049】
場合により、気泡出口は、上記チャンバ内に収容されるインクの上側のヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの膜内に捕捉される気泡を成す。
【0050】
更なる態様では、インクチャンバ内に収容されるインクと流体連通する毛管チャネルを更に備え、上記毛管チャネルが毛管作用によってチャンバから気泡出口へインクを供給する圧力調整器が提供される。
【0051】
第3の態様において、本発明は、インクジェット印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するためのインク圧力調整器であって、
インクラインを介して上記印字ヘッドと流体連通するためのインク出口を有するインクチャンバと、
大気に開口するエアー入口と、
上記チャンバのヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように位置され、上記各気泡がインクの膜内に捕捉されるエアーキャビティを成す、気泡出口と、
上記インクチャンバ内に収容されるインクと流体連通し、毛管作用によって上記チャンバから上記気泡出口へインクを供給する毛管チャネルと、
上記エアー入口と上記気泡出口とを接続するエアーチャネルと、
を備え、
上記気泡出口は、上記印字ヘッドへインクを供給する結果として上記チャンバ内へ引き込まれる気泡のラプラス圧を制御することによりインクの静圧を調整するように寸法付けられている、
インク圧力調整器を提供する。
【0052】
場合により、上記インクチャンバがプリンタ用のインクリザーバである。
【0053】
場合により、上記インクチャンバは、インクリザーバと流体連通するためのインク入口ポートを有する。
【0054】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも10mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0055】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも100mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0056】
場合により、上記気泡出口は、該気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する重要寸法を有している。
【0057】
場合により、上記気泡出口が円形の開口として構成され、上記円形の開口の半径が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0058】
場合により、上記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、上記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0059】
場合により、上記スロットの幅寸法が200ミクロン未満である。
【0060】
更なる態様では、上記気泡出口に隣接する気泡通気口を更に備え、上記気泡通気口が上記ヘッドスペース内へ開口する、圧力調整器が提供される。
【0061】
場合により、上記気泡出口および上記気泡通気口は、各気泡が上記気泡出口にわたって留められたインクのメニスカスによって壊れ且つ上記気泡通気口を介して上記チャンバ内へ通気するように協働する。
【0062】
場合により、上記チャンバの1つの壁が吸気プレートを備え、上記プレートがエアー入口、エアーチャネル、気泡出口、および、気泡通気口を備える。
【0063】
場合により、上記プレートが複数の重ね合わされた層を備え、上記層が協働してエアー入口、エアーチャネル、気泡出口、および、気泡通気口を画成する。
【0064】
場合により、上記プレートは、
エアー入口開口が貫通して画成されるとともに、その第1の面に細長い凹部が画成され、上記凹部が上記エアー入口開口の基端から先端まで長手方向に延びる第1の層と、
上記第1の面に積層され、毛管入口開口および気泡通気開口が貫通して画成される第2の層と、
を備え、
上記毛管入口開口が上記凹部の上記先端へ向けて位置されるとともに、上記気泡通気開口が上記凹部の上記基端へ向けて位置される。
【0065】
場合により、前期基端の上記凹部の深さが上記気泡出口の重要寸法を画成し、上記重要寸法が上記気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する。
【0066】
場合により、上記気泡通気開口は、表面張力によって開口にわたってインクのメニスカスを留めるように寸法付けられる。
【0067】
場合により、上記気泡通気開口が上記気泡出口に隣接する。
【0068】
場合により、上記凹部は、上記先端から上記基端へインクの柱を立ち上げる十分な毛管圧を与えるように寸法付けられる。
【0069】
第4の態様において、本発明は、インクジェット印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するためのインク圧力調整器であって、
インクラインを介して上記印字ヘッドと流体連通するためのインク出口を有するインクチャンバと、
大気に開口するエアー入口と、
上記チャンバ内へと気泡を泡立てるための気泡出口であり、上記各気泡がインクの膜または本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す、気泡出口と、
上記エアー入口と上記気泡出口とを接続するエアーチャネルと、
を備え、
上記気泡出口は、上記印字ヘッドへインクを供給する結果として上記チャンバ内へ引き込まれる気泡のラプラス圧を制御することによりインクの静圧を調整するように寸法付けられている、
インク圧力調整器を提供する。
【0070】
場合により、上記インクチャンバがプリンタ用のインクリザーバである。
【0071】
場合により、上記インクチャンバは、インクリザーバと流体連通するためのインク入口ポートを有する。
【0072】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも10mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0073】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも100mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0074】
場合により、上記気泡出口は、該気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する重要寸法を有している。
【0075】
場合により、上記気泡出口が円形の開口として構成され、上記円形の開口の半径が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0076】
場合により、上記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、上記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0077】
場合により、上記スロットの幅が200ミクロン未満である。
【0078】
場合により、気泡出口は、チャンバ内に収容されるインク中へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す。
【0079】
更なる態様では、上記チャンバ内のインクの上側のヘッドスペース内の過度の圧力を解放するための排気弁を更に備える圧力調整器が提供される。
【0080】
場合により、上記エアーチャネルは、エアー入口を通じたインク損失を最小にするために湾曲している或いは曲がりくねっている。
【0081】
場合により、気泡出口は、上記チャンバ内に収容されるインクの上側のヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの膜内に捕捉される気泡を成す。
【0082】
更なる態様では、インクチャンバ内に収容されるインクと流体連通する毛管チャネルを更に備え、上記毛管チャネルが毛管作用によってチャンバから気泡出口へインクを供給する圧力調整器が提供される。
【0083】
更なる態様では、上記気泡出口に隣接する気泡通気口を更に備え、上記気泡通気口が上記ヘッドスペース内へ開口する、圧力調整器が提供される。
【0084】
第5の態様において、本発明は、インクジェット印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するのに適するインクカートリッジであって、
インクラインを介して上記印字ヘッドと流体連通するためのインク出口を有するインクチャンバと、
大気に開口するエアー入口と、
上記チャンバ内へと気泡を泡立てるための気泡出口であり、上記各気泡がインクの膜または本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す、気泡出口と、
上記エアー入口と上記気泡出口とを接続するエアーチャネルと、
を備え、
上記気泡出口は、上記印字ヘッドへインクを供給する結果として上記チャンバ内へ引き込まれる気泡のラプラス圧を制御することによりインクの静圧を調整するように寸法付けられている、
インクカートリッジを提供する。
【0085】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも10mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0086】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも100mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0087】
場合により、上記気泡出口は、該気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する重要寸法を有している。
【0088】
場合により、上記気泡出口が円形の開口として構成され、上記円形の開口の半径が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0089】
場合により、上記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、上記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0090】
場合により、上記スロットの幅が200ミクロン未満である。
【0091】
場合により、気泡出口は、チャンバ内に収容されるインク中へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す。
【0092】
更なる態様では、上記チャンバ内のインクの上側のヘッドスペース内の過度の圧力を解放するための排気弁を更に備えるインクカートリッジが提供される。
【0093】
場合により、上記エアーチャネルは、エアー入口を通じたインク損失を最小にするために湾曲している或いは曲がりくねっている。
【0094】
場合により、気泡出口は、上記チャンバ内に収容されるインクの上側のヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの膜内に捕捉される気泡を成す。
【0095】
更なる態様では、インクチャンバ内に収容されるインクと流体連通する毛管チャネルを更に備え、上記毛管チャネルが毛管作用によってチャンバから気泡出口へインクを供給するインクカートリッジが提供される。
【0096】
更なる態様では、上記気泡出口に隣接する気泡通気口を更に備え、上記気泡通気口が上記ヘッドスペース内へ開口する、インクカートリッジが提供される。
【0097】
更なる態様では、交換可能または使い捨て可能なインクカートリッジであるインクカートリッジが提供される。
【0098】
更なる態様では、印字ヘッドからインクを受けるためのインク入口を更に備えるインクカートリッジが提供される。
【0099】
更なる態様では、受けたインクをフィルタ処理するためのインクフィルタを更に備えるインクカートリッジが提供される。
【0100】
第6の態様において、本発明は、インクジェット印字ヘッドへ供給されるインクの静圧を調整する方法であって、
所定量のインクをインクチャンバから引き出すと同時に、気泡出口を介して気泡を上記チャンバ内へと泡立てることにより引き出された量のインクと釣り合わせ、各気泡がインクの膜または本体によって捕捉されるエアーキャビティによって画成され、
気泡出口は、気泡のラプラス圧を制御することによりインクの静圧を調整するように寸法付けられている、
方法を提供する。
【0101】
場合により、上記インクチャンバがプリンタ用のインクリザーバである。
【0102】
場合により、上記インクチャンバは、インクリザーバと流体連通するためのインク入口ポートを有する。
【0103】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも10mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0104】
場合により、上記気泡出口は、チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも100mmHO低くなるように寸法付けられる。
【0105】
場合により、上記気泡出口は、該気泡出口から出る気泡のラプラス圧を制御する重要寸法を有している。
【0106】
場合により、上記気泡出口が円形の開口として構成され、上記円形の開口の半径が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0107】
場合により、上記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、上記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている。
【0108】
場合により、上記スロットの幅寸法が200ミクロン未満である。
【0109】
場合により、気泡出口は、チャンバ内に収容されるインク中へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す。
【0110】
場合により、気泡出口は、上記チャンバ内に収容されるインクの上側のヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように位置され、各気泡がインクの膜内に捕捉される気泡を成す。
【0111】
場合により、毛管チャネルが毛管作用によってチャンバから気泡出口へとインクを供給する。
【0112】
場合により、上記気泡出口に隣接する気泡通気口が上記気泡を上記ヘッドスペース内へと通気する。
【0113】
場合により、上記量のインクは、上記チャンバのインク出口と流体連通する印字ヘッドのポンプ作用によって引き出される。
【0114】
第7の態様では、インクジェット印字ヘッドのためのインクリザーバであって、
周囲圧力未満の圧力で所定量のインクを維持するための容器と、
印字ヘッドに対してシール状態で流体接続するためのインク入口と、
容器内部と大気との間の所定の圧力差で容器内へのエアーの流入を許容する圧力調整器を有するエアー入口と、
を備えるインクリザーバが提供される。
【0115】
場合により、圧力調整器がリリーフバルブである。
【0116】
場合により、圧力調整器は、大気に露出するための第1の面と、容器内のインクと接触するための第2の面とを有する多孔質部材であり、使用中、第1の面のエアーが第2の面へと移動して気泡を形成する。
【0117】
場合により、圧力調整器は、インク出口位置に対して僅かに持ち上げられる。
【0118】
場合により、多孔質部材が膜である。
【0119】
場合により、多孔質部材がメッシュである。
【0120】
場合により、多孔質部材が連続気泡発泡体ブロックである。
【0121】
場合により、閾値圧力が10mmHOよりも大きい。
【0122】
場合により、印字ヘッドがページ幅印字ヘッドであり、閾値圧力が300mmHOよりも大きい。
【0123】
場合により、多孔質部材が互いに離間される一対の対向する膜であり、それにより、これらの膜がリザーバ内のエアー空間内に配置される場合にインクが膜間に保持される。
【0124】
場合により、多孔質部材がリザーバの側壁における膜であり、上記膜が内壁に隣接して位置され、それにより、インクレベルが膜の下側に下降するときに毛管作用によって上記壁と上記膜との間にインクが保持される。
【0125】
場合により、内壁が膜から約1mm離れている。
【0126】
場合により、内壁が親水性材料から形成される。
【0127】
場合により、インクリザーバは、毛管作用を高めるために、壁と膜との間に灯心材料を更に備える。
【0128】
場合により、灯心材料が織物、メッシュ、または、微粒子材料である。
【0129】
場合により、インクリザーバが出口を覆うフィルタを更に備える。
【0130】
場合により、リザーバは、インクジェットプリンタ中に取り付けるための取り外し可能なインクカートリッジである。
【0131】
場合により、周囲圧力が大気圧である。
【0132】
場合により、エアー入口は、大気から圧力調整器へ向かう曲がりくねったエアー流路を更に備える。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】針状の気泡出口を有する本発明に係る圧力調整器の概略側断面図である。
【図2】図1に示される気泡出口の拡大図である。
【図3A】スロット形状の気泡出口の概略斜視図である。
【図3B】破片によって部分的に閉塞された図3Aの気泡出口を示している。
【図4】スロット形状の気泡出口を有する本発明に係る圧力調整器の概略側断面図である。
【図5】図4に示される気泡出口の拡大図である。
【図6】図4に示される吸気プレートの分解斜視図である。
【図7】保護囲繞部を有する他の吸気プレートの斜視図である。
【図8】他の3層吸気プレートの分解斜視図である。
【図9】別個のインクカートリッジに接続される図4に示される圧力調整器の概略側断面図である。
【図10】ヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように気泡出口が位置された圧力調整器の概略側断面図である。
【図11】気泡形成中の図10に示される気泡出口の拡大図である。
【図12】休止期間中の図10に示される気泡出口の拡大図である。
【図13】ヘッドスペースがプラスに加圧された後に通気している瞬間の図10に示される気泡出口の拡大図である。
【図14】図10に示される吸気プレートの分解斜視図である。
【図15】本発明にしたがったインク供給を概略的に示している。
【図16】インク漏れが最小となるように構成された圧力調整器およびインクカートリッジの概略斜視図である。
【図17】本発明に係る他のインクカートリッジの概略断面図である。
【図18】図17に示されるインクカートリッジの代替物の部分概略断面図である。
【図19】図17に示されるインクカートリッジの代替物の部分概略断面図である。
【図20】二重膜カートリッジの概略断面図である。
【図21】異なる方向における二重膜カートリッジの概略断面図である。
【図22】単一の膜と親水性内壁とを有するカートリッジの概略断面図である。
【図23】図22に示されるカートリッジの代替物の部分概略断面図である。
【図24】曲がりくねったエアー入口流路の可能な形態を示す本発明に係るカートリッジの概略斜視断面図である。
【図25】発泡挿入体を組み込む従来技術のインクカートリッジの概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
ここで、添付図面を参照して、本発明の任意的な実施形態を一例として説明する。
円形の気泡出口を有する圧力調整器
図1は、圧力調整器の基本的な動作原理を説明する目的で、本発明の最も簡単な形態を示している。図1には、インク出口102とエアー入口103とを有するインクチャンバ101を備える圧力調整器100が示されている。インクチャンバ101はその他の点ではシールされている。インク出口102は、インクライン106を介してインク104を印字ヘッド105へ供給するためのものである。エアー入口103にはエアーチャネル108を介して気泡出口107が接続されている。
【0135】
インク104が印字ヘッド105によってインクチャンバ101から引き出されるときには、インクの移動量を、エアー入口103を介してチャンバ内へ引き込まれるエアーの等価な量と釣り合わせなければならない。インクの液面の下側に位置される気泡出口107は、エアーが気泡109の形態でチャンバ101内に入るようにする。気泡出口107の寸法は、チャンバ101に入る気泡109のサイズを決定する。
【0136】
図2に示されるように、エアーチャネル108は単純な円筒チャネルの形態を成しており、それにより、気泡出口107は、円筒チャネルの一端の円形の開口によって画成される。したがって、チャネルを通過する任意のエアーは、ある時点で、チャネルの内径よりも大きくない曲率半径を有する液面によって拘束される。
【0137】
印字中、印字ヘッド105のノズルは、液滴射出の度にインクチャンバ101からインクを引き出すポンプとしての役目を効果的に果たす。インクチャンバが通気孔を用いて大気に対して自由に開口したままであった場合(一部の従来技術のインクカートリッジの場合のように)、印字ヘッドに供給されるインクのインク静圧は、単に、印字ヘッドの上側または下側のインクリザーバの高度によって決定される。しかしながら、インクチャンバ101においては、微少量のインクがチャンバ101から引き出される度に、インク静圧は、気泡出口107で生じる気泡109内の圧力を乗り越えなければならない。ノズルのポンプ作用が気泡出口107で生じる気泡109内の圧力と一致する十分な圧力を生成すると、気泡は、インク104のリザーバ内へ逃げ込むことができるとともに、インク出口102を介してチャンバ101から流れることができる。
【0138】
したがって、気泡出口107で生じる気泡109は、印字ヘッドノズルのポンプ作用に抗する背圧を与える。すなわち、気泡出口107の作用は、インク供給システム内に負のインク静圧を生成することである。
【0139】
球状の気泡109内の圧力は、周知の以下のラプラス方程式によって決定される。
【0140】
ΔP=2γ/r
ここで、
ΔPは、気泡内部とインクとの間の圧力差であり、
rは、気泡の半径であり、
γは、インク−エアー界面の表面張力である。
【0141】
気泡109のサイズは、気泡出口107の寸法を変えることによって変化させることができる。したがって、気泡出口107の寸法は、印字ヘッド105に対して供給されるインクの所定の負の静圧を定める手段を与える。小さい気泡出口寸法は、高いラプラス圧を有する小さい気泡を生成することによって大きい負のインク静圧を与える。
【0142】
前述した圧力調整器100において、エアーチャネル108は、気泡出口107を画成する円形開口を有する小口径シリンダ(例えば、皮下注射器)である。しかしながら、この形態に伴う重大な問題は、円形の気泡出口107が非常に小さい面積(約0.01mm程度)を有し且つインク中の汚染物質によって詰まり易いということである。気泡出口107の面積を増大させることにより、インク中に汚染物質が存在する場合であっても、気泡出口をより健全なものとすることが望ましい。
【0143】
スロット形状の気泡出口を有する圧力調整器
図3Aに示されるように、改良された形態の気泡出口107は、円形の開口とは対照的に、スロット110を使用する。スロットは、長さ寸法Lおよび幅寸法Wを有する。スロットから抜け出る気泡109は、一般に、スロットの長さにわたって延びる円筒状の前面を有する。後述するように、スロットから出る気泡109の曲率、したがって、気泡のラプラス圧は、主に幅寸法によって決定される。
【0144】
非球状の気泡において、ラプラス圧は、以下の式によって与えられる。
【0145】
ΔP=γ/r+γ/r
ここで、
ΔPは、気泡内部とインクとの間の圧力差であり、
は、気泡の幅寸法の半径であり、
は、気泡の長さ寸法の半径であり、
γは、インク−エアー界面の表面張力である。
【0146】
実際には、スロットの長さは幅よりも十分に大きく(r>>r)、そのため、スロットから出る円筒状の前面を有する気泡のラプラス圧は以下のようになる。
【0147】
ΔP=γ/rまたは2γ/W(W=2r
したがって、スロット110の幅が、スロットから出る気泡109のラプラス圧を制御する唯一の重要寸法(critical dimension)であることは言うまでもない。
【0148】
図3Bは、一片の破片111がスロット110に貼り付いた仮想的シナリオを示している。しかしながら、円形の開口の場合とは異なり、スロット110は、依然として、スロットから出る気泡の重要な曲率を制御することができる。図3Bに示されるように、円筒状の前面を有する気泡109は、依然としてスロット110から抜け出ることができる。したがって、スロット110は、インク静圧の優れた制御を依然として維持しつつ、気泡出口107のためのより健全な形態を与える。
【0149】
これまで説明した実施形態では、エアーチャネル108の寸法は、気泡出口107の寸法を反映する。これは、調整器の必須の特徴ではなく、実際には、特に高い流量で調整器の効果に悪影響を与える場合がある。エアーの固有粘度は、著しい流れ抵抗または液圧抗力をエアーチャネル108内に引き起こす可能性がある。Pouiseilleの方程式によれば、流量は、パイプ半径rとr関係を有している。そのため、非常に小さい半径を有するチャネルでは、流れ抵抗の問題が悪化される。
【0150】
本発明において、気泡出口107の重要寸法は、場合により約200ミクロン未満、または、場合により約150ミクロン未満、または、場合により約100ミクロン未満、または、場合により約75ミクロン未満、または、場合により約50ミクロン未満である。場合により、気泡出口の重要寸法は、10〜50ミクロンまたは15〜40ミクロンの範囲であってもよい。「重要寸法」とは、気泡の曲率、したがって、気泡のラプラス圧を決定する気泡出口の寸法を意味している。
【0151】
そのような寸法は、場合により少なくとも10mmHO、または、場合により少なくとも30mmHO、または、場合によりフォトサイズの印字ヘッドのための少なくとも50mmHOである所望の負のインク静圧を与えるために必要である。A4サイズの印字ヘッドにおいて、所望の負のインク静圧は、場合により少なくとも100mmHO、または、場合により少なくとも200mHO、または、場合により少なくとも300mmHOである。場合により、負の静圧は、100〜500mmHO、または、150〜450mmHOの範囲であってもよい。
【0152】
例えば200ミクロン未満の幅を有するエアーチャネル108は、チャネルに入るエアーのためのかなりの流れ抵抗を形成する。インクが印字ヘッド105へ供給されるときにエアーが同じ流速でチャネル108を通過できなければ、印字ヘッドの悲惨なデプライムが高い印字速度で生じる。
【0153】
したがって、エアーチャネルの各断面寸法が気泡出口107の重要寸法よりも大きくなるようにエアーチャネル108を構成することが望ましい。そのため、図3Aに示されるスロット形状の気泡出口107において、エアーチャネル108は、場合により、スロット110の幅Wよりも大きい各断面寸法を有しているべきである。
【0154】
しかしながら、エアーチャネル108の容積はあまり大きくないことが重要である。印字ヘッド105が休止している場合に、インクが毛管作用によってエアーチャネル108を上昇することがある。この量のインクは、気泡109がインクチャンバ101内に引き込まれて印字に最適なインク静圧に達する前に印字ヘッド105によってエアーチャネル108を通じて吸い込まれなければならない。そのため、休止期間中に毛管作用によってエアーチャネル108内に引き込まれる量のインクは、最適な印字品質で印字できないため、無駄に使われる。
【0155】
インクの毛管量は、エアーチャネルの半径と共に増大する。したがって、場合により、エアーチャネル108の断面寸法(例えば、半径)は、最大毛管量が事実上はインクのデッドボリュームであるインクの約0.1mLを越えるような大きさであってはならない。場合により、エアーチャネル内のインクの最大毛管量は、約0.08mL未満、または、場合により約0.05mL未満、または、場合により約0.03mL未満である。
【0156】
図4は、前述した設計検討事項が考慮に入れられたエアーチャネル208および気泡出口207を有する他のインク圧力調整器200を示している。圧力調整器200は、インク出口102を有するインクチャンバ201を備えている。インクチャンバ201の1つの側壁は、第1および第2の平面層211,212を備える積層吸気プレート210によって画成される。第1および第2の層211,212は、協働してエアー入口203、エアーチャネル208、および、気泡出口207を画成する対応する第1および第2の面221,222を有する。エアー入口203は、場合により、インクチャンバ201内に引き込まれるエアーからの微粒子をフィルタ処理するためのエアーフィルタ(図示せず)を備えていてもよい。
【0157】
また、インクチャンバ201は、通常は圧力調整器200の動作中に閉じられる一方向排気弁219も備えている。弁219は、例えば典型的な日中/夜間温度の変動中におけるヘッドスペース内に捕捉される所定量のエアーの熱膨張によって生じる場合があるインク104の上側のヘッドスペース240内の任意の正の圧力を解放するように構成される。ヘッドスペース240内の正の圧力は、それがインクをエアーチャネル208内で押し上げてエアー入口203から出させ、それにより、チャンバ201からのかなりのインク損失をもたらすため、望ましくない。
【0158】
図6を参照すると、吸気プレート210の第1の層211には、エアー入口開口213が貫通して画成されるとともに、溝の形態を成す細長い凹部214が第1の面221に形成されている。細長い凹部214は、エアー入口開口213から凹状の末端領域へと延びている。凹状の末端領域は、細長い凹部214と比べて比較的浅い深さを有する円形凹部216を備える。更に図6を参照すると、第2の層212には気泡通気開口217が貫通して画成されている。図4および図6から分かるように、第1および第2の面221,222が互いに重ね合わされると、凹部および開口が協働してエアー入口203、エアーチャネル208、および、気泡出口207を形成する。
【0159】
図5は、吸気プレート210の気泡出口領域220を詳しく示している。細長い凹部214よりも浅い円形凹部216は、エアーチャネル108内に狭窄部218を画成する。円形凹部216の深さによって第1の面221に画成されるこの狭窄部218は、気泡出口207のための重要な幅寸法を規定する。したがって、気泡出口207は環状スロットの形態をとる。この場合、スロットの長さは、第2の層212の気泡通気開口217の外周によって画成される。
【0160】
環状スロットを有する利点は、それがスロットの長さを最大にし、それにより、粒子状汚染物に対する気泡出口207の健全性が向上されるという点である。比較的深い細長い凹部214を有する利点は、それが凹部214と第2の面222との協働によって画成されるエアーチャネル108内の流れ抵抗を最小限に抑えるという点である。一般に、細長い凹部214は、0.2〜1mmまたは0.2〜0.5mmの範囲の深さと、0.5〜2mmまたは0.7〜1.3mmの範囲の幅とを有する。
【0161】
更に図5を参照すると分かるように、気泡通気開口217の内面231は、気泡出口207から気泡を最適に逃がすように面取りされている。
【0162】
図7を参照すると、吸気プレート210の第1の層211には、囲繞部230が画成されていてもよい。囲繞部230は、第1の層211に画成される特徴部を取り囲み、また、重要なことには、積層プロセス中に細長い凹部214および円形凹部216を任意の接着剤から保護する。第1および第2の面221,222間での任意の過剰な接着剤のウィッキングは、毛管作用がこれまで寸法を減少させる構造体の領域のみへ液体を運ぶことができ且つ囲繞部を横切る任意の経路が寸法を増大させる領域を含むため、囲繞部230によって引き止められる。これは、2つの層の積層によって画成されるエアー入口チャネル208または気泡出口開口207の遮断を防止する。そのため、囲繞部230は、吸気プレート210の製造を容易にする特徴である。
【0163】
無論、吸気プレートが多くの様々な形態をとってもよく、また、例えば3つ以上の積み重ねられた層の協働によって吸気プレートが画成されてもよいことは言うまでもない。図8は、3つの層の協働によって画成される吸気プレート250を示している。第1の層251にはエアー入口開口252が貫通して画成され、第2の層253には気泡通気開口254が貫通して画成され、また、第1および第2の層間に第3の膜層255が挟まれている。膜層255にはエアーチャネル開口256が貫通して画成され、それにより、3つの層が互いに積層されると、流体経路がエアー入口から気泡通気開口へと形成される。膜層255の厚さは、エアーチャネルの深さを画成するとともに、エアーチャネルの末端の気泡出口の重要寸法を画成する。
【0164】
以下の表1〜表4は、図4〜図6に示される圧力調整器200における測定されたインク静圧を示している。4つの圧力調整器は、気泡出口207の異なる重要寸法を有して構成された。様々な流量で動圧測定が行なわれ、また、インクの流れを止めることにより静圧測定が行なわれた。動圧損失は、動的調整圧と静的調整圧との間の差である。
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


インク圧の優れた制御は、気泡出口の寸法を変えるだけで達成できた。
【0165】
また、ラプラス方程式にしたがって気泡が生成されることが圧力測定によって確認された。平均静的調整圧が以下の方程式に従うことが分かった。
【0166】
P=−0.0067/W+18.3
ここで、
Pは、水頭の平均静的調整圧(ミリメートル)であり、
Wは、気泡出口の幅(ミクロン)であり、また、
18.3は、チャンバ内のインクの液位に起因するオフセット圧である。
【0167】
最初の項をラプラス方程式に代入すると、インクの表面張力γが33.5mN/mとして計算された。インクの独立の表面張力測定は、この計算された数と密接に関連がある。
【0168】
圧力調整器を備えるインクカートリッジ
図4に示されるように、圧力調整器200は、印字ヘッドのためのインクリザーバを画成するインクチャンバ201を備えている。圧力調整器200の単純さ及び低コスト製造に起因して、圧力調整器は、インクジェットプリンタのための交換可能なインクカートリッジとして構成されてもよい。そのため、インクカートリッジが交換される度に、圧力調整器が交換される。この構造の利点は、プリンタの寿命中に圧力調整器が定期的に交換されるため、圧力調整器200の長期汚染が回避されるという点である。
【0169】
圧力調整器に接続される交換可能なインクカートリッジ
代替的実施形態では、圧力調整器がプリンタの永久部品であってもよい。この代替的実施形態において、圧力調整器は、交換可能なインクカートリッジに対して接続できるように構成される。そのため、図9に示される実施形態において、圧力調整器200は、一対のコネクタを介して、交換可能なインクカートリッジ280に対して接続される。インクコネクタ281は、インクカートリッジ280のインク供給ポート282をインクチャンバ201のインク入口ポート283と接続する。インク供給ポート282および対応するインク入口ポート283は、カートリッジ内に蓄えられるインク104の使用を最大にするため、インクカートリッジ280およびインクチャンバ201のそれぞれのベースへ向けて位置されている。
【0170】
均圧コネクタ285は、インクチャンバ201のヘッドスペース240内およびインクカートリッジ280のヘッドスペース241内の圧力を均等にするように位置されている。対応する均圧ポート286,287は、インクチャンバ201およびインクカートリッジ280のそれぞれの根元へ向けて位置されている。
【0171】
インクカートリッジ280が空になると、インクカートリッジは、インクコネクタ281および均圧コネクタ285から取り外されるとともに、プリンタから除去される。その後、逆のプロセスによって新たなインクカートリッジをプリンタ内に取り付けることができる。図9には単に概略的に示されているが、容易に分かるように、インクカートリッジ280は、インクカートリッジがプリンタ内に取り付けられるときにインクコネクタ281および均圧コネクタ285のそれぞれとシール係合するように構成される適切な接続ポート282,287を有していてもよい。そのようなシール係合に適した接続ポートは当分野において周知である。
【0172】
図9に示されるように、インク入口ポート283および均圧ポート286は、吸気プレート210と反対側のインクチャンバ201の側壁に画成される。しかしながら、無論、ポート283,286は、圧力調整器200の構造を簡略化するために吸気プレート210に形成されてもよい。
【0173】
ヘッドスペース内に位置される気泡出口
図4に描かれる圧力調整器において、気泡出口207は、インクチャンバ201内に収容されるインク104の本体中へと気泡209を泡立てるように位置される。一般に、気泡出口207は、最適な静圧でのインク使用を最大にするためにチャンバ201のベースへ向けて位置される。この場合、エアー入口203はチャンバの根元へ向けて位置される。この配置に伴う問題は、温度変動の結果として休止期間中にチャンバ201内に収容されたインク104がエアーチャネル208を容易く上昇して逃げてエアー入口203から出る可能性があり、それにより、ヘッドスペース240内の加熱エアーがヘッドスペース圧力を増大させてインクをエアーチャネル208内で押し上げてエアー入口203から出させるということである。そのような温度変動を避けることはできず、それにより、かなりのインクが消耗され得る。
【0174】
既に前述したように、この問題を扱う1つの手段は、インクチャンバ201内へ排気弁219を組み込むことである。この弁219は、ヘッドスペース240内の任意の正圧を解放するように構成されている。しかしながら、このタイプの弁は、圧力調整器のコストおよび複雑さをかなり増大させる。そのため、排気弁219は、圧力調整器200を、使い捨て可能なインクカートリッジに組み込むのにあまり適さなくする。
【0175】
したがって、温度変動中に多量のインクを浪費するとともに排気弁を必要とせず、したがって、使い捨て可能なインクカートリッジに組み込むのに適するインク圧力調整器を提供することが望ましい。
【0176】
図10は、前述した基準を満たすインク圧力調整器300を示している。インク圧力調整器は、図4に示される構造に類似する構造であり、依然としてインクチャンバに入る気泡のラプラス圧の制御に依存する。しかしながら、チャンバ内に収容されるインクの本体中へと気泡を泡立てるのではなく、気泡は、インクの本体の上側のヘッドスペースを介してチャンバ内へ入る。この構造により、以下で更に詳しく説明するように、休止期間中にヘッドスペース内の任意の過度の圧力をエアー入口を通じて放出することができる。
【0177】
図10を参照すると、インク圧力調整器300は、インク出口302を有するインクチャンバ301を備える。インクチャンバ301の1つの側壁は、第1および第2の平面層311,312を備える積層吸気プレート310によって画成されており、第1および第2の平面層311,312は、協働して、エアー入口303、気泡出口307、気泡通気口305、エアーチャネル308、毛管チャネル315、および、毛管入口316を形成する。気泡出口307および気泡通気口305は、気泡309が気泡通気口を介してチャンバのヘッドスペース340に入るようにチャンバ301内のインクの液位よりも上側に位置されている。気泡出口307は、エアーチャネル308を介してエアー入口303に接続される。気泡出口307は、一般に、スロット形状であり、インクがインク出口302から引き出されるときに気泡309のラプラス圧を制御するように厳格に寸法付けられる。
【0178】
しかしながら、先の実施形態とは異なり、気泡309は、図11に更に明示されるように、気泡出口307にわたって留められ且つ気泡通気口305に隣接するインクのメニスカスをエアーが突破することによって形成される。気泡出口307から出現するそのようにして形成される気泡309は、気泡通気口305を通じてインクチャンバ301のヘッドスペース340内へと逃げる。エアーはインクメニスカスを突破しなければならないため、気泡309は、インクの本体全体ではなくインクの膜の内側に捕捉されるエアーキャビティによって画成される。それにもかかわらず、前述したように、同じラプラス圧制御を依然として達成できる。
【0179】
毛管入口316は、チャンバ301内のインク104の本体と2つの層311,312間に画成される毛管チャネルとの間を流体連通させる。毛管チャネル315は、インクの柱304が少なくとも気泡出口307と同じ高さまでチャネルを立ち上がるように十分な毛管圧力を与えるべく構成されており、それにより、エアーがインクのメニスカスを突破することによる気泡309の形成が確保される。毛管圧力は、各気泡309がヘッドスペース340内へ放出した後に気泡出口307および気泡通気口305にわたってメニスカスを再形成できるように十分に高い。
【0180】
気泡通気口305は、図11および図12に示されるように、インクの柱304がメニスカスを表面張力によって通気口にわたって留めさせるように寸法付けられる。しかしながら、気泡通気口305は、粒子による閉塞を起こし易くなるほど小さくすべきではない。約1mm程度の直径を有する気泡通気口305が適していることが分かった。
【0181】
実際には、インクチャンバ301のヘッドスペース340内の圧力が大きくない休止期間中、インクの柱304は、図12に示されるように、気泡出口307よりも上側に上昇し、一般にエアーチャネル308の入口にわたって留まる。
【0182】
本実施形態の重大な利点が図13に明示されている。図13は、休止期間中にヘッドスペース340内に正圧が形成される状況を示している。加圧されたエアーがエアーチャネル308からの任意のインクを押し退け、エアーがエアー入口303を介してチャンバ301から逃げる。したがって、温度上昇に起因してヘッドスペース304が加圧されると、微少量のインクだけがチャンバ301から逃げる。
【0183】
本実施形態の更なる利点は、エアーチャネル308が比較的短く、それにより、エアーチャネル内の任意の流れ抵抗が最小限に抑えられ、最適な圧力制御を伴ってチャンバ301からのインクの流量を高くすることができるという点である。したがって、任意の流れ抵抗問題(例えば、図4に示される実施形態に関連して前述した問題)が回避される。
【0184】
インク供給システム
容易に分かるように、本明細書に記載される圧力調整器は、インクジェットプリンタのためのインク供給システム中に組み込まれてもよい。本出願人は、一対の蠕動ポンプを備える循環インク供給システムを既に開発した。これらのポンプは、プライミング動作、デプライミング動作、および、印字ヘッドパージ動作できるように構成可能である。このインク供給システムは、その内容が参照により本明細書に組み込まれる米国出願第11/415,819号に記載されている。
【0185】
図15は、本発明に係るインク圧力調整器を組み込む循環インク供給システムを概略的に示している。図15に示されるように、インク圧力調整器300は、インクコネクタ281および均圧コネクタ285を介して、交換可能なインクカートリッジ280に対して接続される。しかしながら、無論、既に前述したように、インク圧力調整器300が交換可能なインクカートリッジ内に組み込まれてもよいことは言うまでもない。
【0186】
インク供給システムは、上流ポンプ150および下流ポンプ151に接続される印字ヘッド105を備える。インクカートリッジ280およびインク圧力調整器300が回路を完成させる。
【0187】
通常の印字中、上流ポンプ150は開かれたままであり、また、インク圧力調整器300がシステム内のインク静圧を制御する。
【0188】
保管中においては、印字ヘッド105を分離させるために両方のポンプ150,151が停止される。印字ヘッド105のプライミングは、上流ポンプ150を使用して印字ヘッドへとインクを圧送することによって達成できる。同様に、印字ヘッド105のデプライミングは、下流ポンプ151を使用してインクを印字ヘッドから元のインクカートリッジ280へ圧送することによって達成できる。インクカートリッジ280は、一般に、下流ポンプ151によってそれに対して戻される任意のインクをフィルタ処理するためのフィルタを備えている。
【0189】
また、印字ヘッド105は、逆止弁153を開放して下流ポンプ151を逆方向にポンプ動作させることによって、エアー入口152から供給されるエアーでパージされてもよい。エアーパージは、印字ヘッド面にインクの発泡体またはあぶくを生成し、これは、その内容が参照することにより本明細書に組み込まれる本発明者らの同時係属の米国出願第11/495,815号、第11/495,816号、および、第11/495,817号に記載されるようにメンテナンス動作のために使用される。
【0190】
最小限のインク漏れ
以上から分かるように、圧力調整器及び/又はインクカートリッジは、複数の開口またはポート(例えば、気泡出口、排気弁、インク戻し入口など)を有している必要がある。これらのそれぞれは、特に圧力調整器及び/又はインクカートリッジが傾けられる場合に、インクにおける潜在的な漏れ点に相当する。印字ヘッドへのインクの供給以外のインクの任意の漏れは明らかに望ましくない。
【0191】
したがって、圧力調整器及び/又はインクカートリッジは、例えば気泡出口を介した望ましくない漏れを最小限に抑えるように設計されなければならない。特定の設計基準は不変である。すなわち、気泡出口がインク中へとエアーを泡立てる場合には、気泡出口がインクチャンバのベースへ向けて位置されなければならず、インク出口もインクチャンバのベースへ向けて位置されなければならないとともに、圧力解放出口がインクチャンバの根元へ向けて位置されなければならない。
【0192】
図16は、図15に示されるインク供給システムでの使用に適する図9に示されるタイプの圧力調整器/インクカートリッジ組み合わせシステムを概略的に示している。システムは、インクチャンバ201と、インクカートリッジ280と、吸気プレート210とを備える。使用時、吸気プレート210がインクチャンバ201に対して固定されるとともに、インクカートリッジ280が吸気プレートと係脱可能に係合される。
【0193】
インクは、インクチャンバ201からインク出口202を介して供給され、また、インクは、インク戻し入口290を介してインクカートリッジ280へ戻される。インク戻し入口290は、吸気プレート210のインク戻し開口291へインクを供給するとともに、インクカートリッジ280のヘッドスペース241内で長手方向に延びる戻し管路292内へと供給する。インク戻し管路292に隣接する均圧管路293は、均圧ポート286,287を介して、インクチャンバ内のヘッドスペース241と連通する。インクは、インクカートリッジ280から、インクチャンバの対応するインク入口ポート283と連通するインク出口ポート282を介して、インクチャンバ201へ供給される。インク供給管路294は、インクカートリッジのベースに沿って長手方向に延びており、インクをインク出口ポート282へ供給する。インクカートリッジにおいて長手方向管路294,293,292を使用すると、カートリッジが傾けられる際のインク漏れが最小限に抑えられる。
【0194】
吸気プレート210は、第1の角部に気泡出口207を備えるとともに、反対側の第2の角部に排気弁219を備える。気泡出口207を介したインク漏れを最小にするため、エアー入口203が第2の角部に位置されるとともに、エアーチャネル208が第2の角部へ向けて曲げられる。同様に、圧力解放出口296が第1の角部に位置されるとともに、排気弁219と連通する圧力解放チャネル297が第1の角部へ向けて曲げられる。
【0195】
他の泡立ち点圧力調整
図17〜図24は、泡立ち点圧力調整を使用する本発明の他の実施形態を示している。
【0196】
図17では、膜1016がカートリッジ1001の床面1012の近傍に位置される。静圧は、膜1016の泡立ち点によって設定される。当業者であれば分かるように、多孔質材料の泡立ち点は、浸漬側の最も大きい湿った孔から液体を押し退けるために一方側に印加される必要があるガス圧である。
【0197】
カートリッジが取り付けられると、ノズルは、カートリッジ内の圧力を下げるためにブロッタ等へ向けて発射することができる。制御レベル1013の圧力が泡立ち点まで降下すると、小さい気泡1015が膜1016の内面上に生じてヘッドスペース1014内へと上昇する。これがカートリッジ内の圧力を僅かに増大させ、また、気泡1015が膜1016上で生じるのが止む。気泡が膜1016の内側で生じ始めると、制御レベル1013での静圧が判明する。同様に、異なる圧力調整器が使用される場合には、印字ヘッドが最初に必要とされる負圧を確立すると、制御レベル1013が一定の静圧(調整器閾値圧力に等しい)を保つ。
【0198】
インクが印字ヘッドによって消費される際には、制御レベル1013(したがって、出口1003)の負圧が効果的に一定を保つ。無論、インクレベルが制御レベル1013を下回って降下すると、膜1016がもはやインクによって覆われず、カートリッジが大気に通気する。これを回避するため、プリンタは、インクレベルが制御レベルに達する前に印字を停止すべきである。しかしながら、膜がヘッドスペース1014のエアーに晒されるときに膜を濡れたままの状態に維持するための方法がある。以下、これらについて詳しく説明する。
【0199】
図18に示される実施形態は、先の実施形態の膜1016の代わりに、密度の高い連続気泡発泡体の小さいブロック1017を使用する。発泡体の泡立ち点が制御レベル1013の静圧を設定し、また、カートリッジ1001が膜の実施形態のように作用する。
【0200】
発泡体は、幾つかの従来技術のカートリッジで使用されるものよりも密度が高く、それにより、泡立ち点は、必要とされる負圧を生成できるように十分に高い。しかしながら、発泡体は、いくらかのインクを吸収し、それがヘッドスペース内のエアーに晒される場合に(少なくとも一時的に)湿った状態を保つ。言うまでもなく、発泡体は、印字ヘッドが移動され或いは搬送されるときにカートリッジ内のエアーに容易に晒され得る。
【0201】
本発明のこれらの実施形態では、エアー入口1007がエアー迷路構造を有している。たまたまインクが多孔質材料(図17の膜1016および図18の発泡体要素1017)を通じて浸透する場合には、インクがカートリッジの外側へ漏れない。インク出口1003は、気泡がノズルへ到達しないように覆うフィルタ1023を有していてもよい。しかしながら、フィルタは、インクのための著しい流れ制限を生み出すべきではない。出口1003は、発泡挿入体によって閉塞されず、そのため、高い流量でインクを供給できる。既に述べたように、高速ページ幅印字ヘッドは高いインク流量を必要とする。
【0202】
図19に示される実施形態は、それが入口エアー迷路1007または膜、メッシュ或いは発泡体要素によって覆われる内部通路を必要としないという意味でかなり簡単である。その代わり、カートリッジの壁中の圧力解放弁1018が、制御レベル1013の静圧を設定する閾値圧力で開く。また、弁の内側がカートリッジ内のエアーに晒される場合には、弁は乾燥膜または発泡体のように大気に通気しない。弁は、圧力差が所定の閾値に達するときに開き、したがって、インクが制御レベル1013を下回って降下した後であってもカートリッジ内の負圧を維持する(しかしながら、出口1003の圧力は、液位が弁1018の下側へ降下すると僅かに減少する)。
【0203】
圧力解放弁1018は、単位コストを最小に維持するため、その座部へ付勢される簡単なボールタイプの逆止弁であってもよい。圧力解放弁は、膜または発泡体要素よりも安くなる可能性は低いが、最初にカートリッジにインクを充填するための都合の良い手段を与えるとともに、カートリッジを非常にコンパクトにすることができる。
【0204】
膜の実施形態を参照すると、図20,21は、前述した膜乾燥の問題の解決策を示している。単一の膜の代わりに、一対の膜1019,1020が使用される。これらの膜は、膜がヘッドスペース1014のエアー中にある(図21参照)ようにカートリッジが位置される場合に膜間のインクが流出しないように密着される。外側膜1019の内面が湿った状態を保つ限り、カートリッジ1001は大気に通気しない。
【0205】
図22および図23は、膜乾燥問題も回避する膜の実施形態の他の変形例を示している。図22のカートリッジは、カートリッジ1001の壁に膜1016を有している。膜1016の内面には内壁1021が接近して隣り合っている。水性インクの場合には、内壁1021が膜から約1mm離間しなければならない。内壁1021は親水性材料から形成されており、そのため、インクの液位が膜の下側に下降すると、インクが毛管作用によって壁と膜1016との間に保持される。膜16を通じて浸透する非常に小さい気泡1015が壁1021に保持されたインクを通じてエアースペース1014内へと上昇する。
【0206】
図23では、毛管作用を高めるために、灯心材料1022が壁1021と膜1016との間に配置される。灯心材料は、織物、メッシュ、または、微粒子材料であってもよい。毛管作用を高めることによって、インクの液位は、膜の内面が乾燥する前に膜の下側へ更に下降することができる。また、灯心材料は、さもなければ膜1016と壁1021との間からインクを除去する場合がある印字ヘッドに対する任意の衝撃またはインパクトも減衰させる。
【0207】
本発明に係るカートリッジは、本出願人の様々なページ幅印字ヘッドと共に使用するのに特に適している。これらの印字ヘッドは、一般に、走査型印字ヘッドによって生成されるものよりも十分に高い1200mmHOの吸気圧力/色を生成する。本発明がカートリッジ内に負圧を形成するように印字ヘッドを使用すると、強い吸引力によって、透気材料の弁の閾値圧力を比較的高くすることができ、それにより、カートリッジ内の負圧を更に強力にすることができる。カートリッジ内の負圧が更に強くなると、ノズル、特にページ幅印字ヘッドの水平方向に移動される最も下側のノズルの漏れ傾向が低下する。また、前述したように、閉塞されていない出口は、ノズルへの高いインク流量を可能にする。
【0208】
図24は、エアー入口迷路が実際にどのように機能し得るのかを示している。容器1008は、所定量のインク1010を保持するとともに、入口迷路1026、エアー膨張チャンバ1027、入口膜1016、および、出口フィルタ1023を取り囲む。入口開口1025は大気に開放しており、また、出口1003は、カートリッジが取り付けられるときに印字ヘッドとシール流体接続を形成する。カートリッジは、上端壁の拡大縮小可能な充填穴1028を通じて充填される。容器1008全体が硬質であってもよく、あるいは、材料コストを下げるために、容器の一部が柔軟材料であってもよい。例えば、大きい側壁1030,1031は、硬質壁中央領域の外周に対してシールされるエアーインク不浸透膜であってもよい。
【0209】
エアー入口チューブ1026は、膜1016へ向かって曲がりくねった経路を辿る。曲がりくねった経路は方向が不規則に変化しており、そのため、輸送中にカートリッジが異なる方向にわたって回転される場合であっても、チューブ1026に浸透する任意のインクが入口開口1025から漏れ出す可能性は非常に低い。チューブ1026の下側領域のインクが開口1025に達するためには、カートリッジが異なる方向の正確な一連の回転を経る必要がある。輸送中および取り扱い中の偶然のこのハプニングの危険は極わずかである。
【0210】
エアー入口チューブ1026はエアー膨張チャンバ1027を組み込んでいる。カートリッジは、幅広い範囲の温度(約35℃)に晒されることが予期される。ライン1026内に捕捉される任意のインクは、増大されたエアー圧力によって開口1025へと押し進められる可能性がある。エアー膨張チャンバ1027は、チューブ1026に比べて比較的大きく、そのため、膨張するガスを収容できる大きい容積を有する。
【0211】
入口膜1016および関連するチャンバ1029は、インク出口の膜およびチャンバ(それぞれ1023,1024)よりも小さい。これは、出口1003を通じて出るインクをフィルタ処理しつつ、ページ幅インクジェット印字ヘッドによって必要とされる高いインク供給速度をもたらす。大径フィルタ1023および関連するチャンバ1024により、フィルタ表面積が高くなるため、フィルタは、インク供給における過度な流れ狭窄を伴うことなく、有害な汚染物質の全てを除去するために小さい孔径を維持することができる。
【0212】
曲がりくねったエアー入口経路1026およびエアー膨張チャンバ1027は、付加される複雑さ及びコストを最小限に抑えつつ、輸送中および取り扱い中にインク漏れを効果的に防止する。膜がカートリッジの床面にあり、そのため、消費されたインク1010の量とは無関係に、出口1003における負のインク圧が膜の泡立ち点となる。また、インクの大部分は、膜が大気に晒されて内部を大気に通気させる前に消費される。この時点でカートリッジを交換する必要があるが、カートリッジが処分されるときには少量のインクしかカートリッジ内に残存しない。
【0213】
無論、本発明は単なる一例として記載されており、添付の特許請求の範囲によって画定される本発明の範囲内で詳細の変更がなされてもよいことは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印字ヘッドに対して供給されるインクの静圧を調整するためのインク圧力調整器において、
インクラインを介して前記印字ヘッドと流体連通するためのインク出口を有するインクチャンバと、
大気に開口するエアー入口と、
前記チャンバ内へと気泡を泡立てるための気泡出口であって、前記各気泡がインクの膜または本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す、気泡出口と、
前記エアー入口と前記気泡出口とを接続するエアーチャネルと、
を備え、
前記印字ヘッドへインクを供給することで前記チャンバ内へ引き込まれる気泡、のラプラス圧を制御するために、前記気泡出口は寸法付けられており、これにより、前記インクの静圧を調整する、インク圧力調整器。
【請求項2】
前記インクチャンバがプリンタ用のインクリザーバである請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項3】
前記インクチャンバが、インクリザーバと流体連通するためのインク入口ポートを有する請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項4】
前記気泡出口が、エアーチャネルの端部、多孔質膜、メッシュ、および連続気泡発泡体ブロック、を含むグループのうちのいずれか1つによって形成される請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項5】
前記気泡出口が、前記チャンバ内のインクの静圧が大気圧よりも少なくとも100mmHO低くなるように寸法付けられる請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項6】
前記気泡出口が長さ寸法と幅寸法とを有するスロットとして構成され、前記幅寸法が気泡のラプラス圧を制御するようになっている請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項7】
前記スロットの幅寸法が200ミクロン未満である請求項6に記載の圧力調整器。
【請求項8】
前記気泡出口が、前記チャンバ内に収容されるインク中へと気泡を泡立てるように位置され、前記各気泡がインクの本体内に捕捉されるエアーキャビティを成す請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項9】
前記気泡出口が、前記チャンバ内に収容されるインクの上側のヘッドスペース内へと気泡を泡立てるように位置され、前記各気泡がインクの膜内に捕捉される気泡を成す請求項1に記載の圧力調整器。
【請求項10】
前記圧力調整器は、さらに、
前記インクチャンバ内に収容されるインクと流体連通する毛管チャネル、を備え、
前記毛管チャネルが、毛管作用によって前記チャンバから前記気泡出口へインクを供給する、請求項9に記載の圧力調整器。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公表番号】特表2010−503547(P2010−503547A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518678(P2009−518678)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【国際出願番号】PCT/AU2007/000676
【国際公開番号】WO2008/006139
【国際公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(303024600)シルバーブルック リサーチ ピーティワイ リミテッド (150)
【Fターム(参考)】