説明

波形鋼板ウェブUコンポ橋およびその構築方法

【課題】 経済的な波形鋼板ウエブUコンポ橋およびその施工法を提供すること。
【解決手段】 U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋において、これを構成する桁を、橋脚の直上に配置されると共に橋軸方向の橋脚巾より長い長さ寸法の柱頭部セグメント45と、橋軸方向に隣り合う各柱頭部セグメント45間に配置される支間中央セグメント44とにより構成すると共に、支間中央セグメント44の下床版17に内ケーブルを配置してプレストレスを導入し、前記柱頭部直上の柱頭部セグメント45の中央下部を、橋脚上において橋軸方向一点となる支承装置43により支承する。橋脚上に配置の柱頭部セグメント45と柱頭部セグメント45間に配置の支間中央セグメント44を一体化する波形鋼板ウェブU形コンポ橋の構築方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波形鋼板ウェブを使用した波形鋼板ウェブUコンポ橋およびその構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCコンポ橋は、プレキャストコンクリート製T桁や箱桁等のプレキャストセグメントを施工現場でショートライン工法などで構築した後、該プレキャストセグメントをトラッククレーンで所定の部位に吊り上げ、支保工等を用いて支持させながら橋軸方向に接続すると共に、前記プレキャストセグメントとPC合成床版を一体化してなる合成桁橋である。このPCコンポ橋は、舗装、高欄、地覆、分離帯などの床版施工後に載荷される死荷重を除いた死荷重に対しては、プレキャストコンクリート桁の断面で抵抗し、床版施工後に載荷される死荷重および活荷重に対しては、桁と床版が一体になった合成断面で抵抗する形式の橋である。
【0003】
PCコンポ橋では、プレキャストコンクリート桁と床版が一体となって荷重に抵抗するために、桁とPC合成床版が全長にわたって適当なずれ止めで結合される。ずれ止めには、桁から突出した鉄筋を床版に埋め込む形式が用いられ、結合面に垂直に配置される。また、構造形式としては単純合成桁と連続合成桁がある。
【0004】
図20(a)にはPCコンポ橋の代表的な断面形状を示す。同図において、プレキャストコンクリート製のT桁1が所定間隔で平行に配置されており、隣り合うT桁1の頭部における係合段部2にPC板3を支持させた上、その上部に現場打ちコンクリートを打設して床版4を構成しており、プレキャストコンクリートのT桁1と床版4が一体になった合成断面で荷重に抵抗する。9はアスファルト舗装である。
【0005】
図20(b)、(c)には他の2例に係るPCコンポ橋の断面形状を示す。20図(b)において、プレキャストコンクリート製の箱桁5が所定間隔で平行に配置されており、隣り合う箱桁5の上端部における係合段部6にPC板7を支持させた上、その上部に現場打ちコンクリートを打設して床版8を構成している。図20(c)では、隣り合う箱桁5の上端部によってPC床版10を支持させてPCコンポ橋を構築している。図20(b)、(c)何れの場合もプレキャストコンクリート製の箱桁5と床版8、10が一体になった合成断面で荷重に抵抗する。
【0006】
前記のようなコンポ橋では、下記(1)〜(2)のような問題点がある。
(1)プレキャストコンクリート製のT桁や箱桁(セグメント)は、鋼橋に比べ橋体重量が大きく、地質条件の悪いところでの適用ができなかった。(2)T桁や箱桁がプレキャストコンクリート製であるので単位長当り重量が重く、運搬、架設機材、支承等のコストが増加するものであった。
【0007】
前記の問題点を改善するコンポ橋としては、図15〜図19に示すように、波形鋼板製ウエブ15の両側に下床版を一体とした断面U形のU形プレキャストセグメント12(本発明においても使用可能なセグメント)を使用したUコンポ橋11が本出願人によって出願されている。(特願平2004−67216号)
【0008】
このUコンポ橋11の構築手順としては、図16〜図19に示すように、橋脚22(図16右)上に、橋軸方向に間隔をおいて2つの仮支柱42,42を設け、前記橋軸方向の一方の仮支柱42により、橋軸方向一方のU形プレキャストセグメント12の端部(桁端部)を仮支承し、他方の仮支柱42により橋軸方向の他方のU形プレキャストセグメント12(桁端部)を仮支承するようにしていた。なお、橋軸直角方向には、少なくとも2つ以上の支承が存在するが、ここでは、橋軸方向にのみ着目し、橋軸方向の支承の配置形態に着目して説明している。
【0009】
また、前記のUコンポ橋を構築する場合は、橋脚間に上向き矢印で示す仮支柱30を設け、その支間長の桁を製作し、下記手順によりクレーンにて架設を行うもので、より経済的なUコンポ橋とすることができ、図16(a)〜(d)あるいは図17(a)(b)に示すような手順により構築される。
【0010】
図15に示す前記の断面形態の波形鋼板ウエブUコンポ橋11を構築する工程について、図16〜図18を参照して説明する。
【0011】
図16(a)、17(a)の第1工程(セグメント架設工程)では、施工現場でショートライン工法などで構築された複数のU形プレキャストセグメント12が、クレーンで吊り上げられて上向矢印で示す仮支柱30により架設されて橋軸方向に連続して配置されていると共に、連続する複数のセグメント12の両端は橋台25と橋脚22で仮支承されている。前記セグメント12は、幅員方向に所定の間隔をあけて2列平行に配置されている。
【0012】
図16(b)、図17(b)の第2工程(セグメントを接合する横桁コンクリート打設工程)では、U形プレキャストセグメント12の接合部に現場打ちコンクリートの横桁19が構築され、図19に示すように、隣り合う波形鋼板ウエブ15の透孔に挿通されると共に横桁19内に埋め込み固定される多数の連結筋62を介して隣の波形鋼板製ウエブ15と横桁19とが一体化される。
【0013】
図16(c)、図17(c)の第3工程(PC板の設置工程)では、U形プレキャストセグメント12の波形鋼板製ウエブ15の上部の間と隣の列のセグメント12の上部間にPC板13を配置する。
【0014】
図16(d)、図17(d)の第4工程(場所打ちコンクリート床版の設置工程)では、PC板13の上部に場所打ちコンクリート床版14を打設する。
【0015】
図18(a)、(b)の第5工程(外ケーブル緊張、仮支柱撤去)では、橋脚22上に本支承装置63を設置し、支間において横桁19で接合された複数のU形プレキャストセグメント12に外ケーブル27を緊張して波形鋼板ウエブUコンポ橋11の全長にプレストレスを導入し、その後、橋脚上の2つの仮支承42および仮支柱30を撤去して施工が終了する。
【0016】
前記のように、波形鋼板ウエブUコンポ橋において、プレキャストセグメントは予めヤードまたは工場において製作され、施工現場でこのプレキャストセグメントを橋軸方向に連結して橋桁が構築される。ヤード等におけるプレキャストセグメントの製作に際しては、ウエブの端部が重なり合うように配置して、この重なり部のボルト挿通孔にボルトを挿通して複数の波形鋼板ウエブを接合する。これにより所定長に設けた波形鋼板ウエブを左右平行に配置し、ウエブの下部と上部が埋設されるようにコンクリートを打設して下床版17と上床版用プレキャスト版64を構築し、上床版用プレキャスト版64から突出する上床版接合用ジベル65を埋め込むように現場打ちコンクリートによる上床版14を構築し、プレストレスを導入して該セグメントが完成する。
【0017】
なお、所定長のプレキャストセグメントの単位体を製作する工程においては、下床版と上床版を構築する前に、複数の波形鋼板ウエブの端部同士を重ねてその重なり部をボルト接合して所定長のウエブとする際に何ら問題がないが、プレキャストセグメントに組み込んだ後においは、波形鋼板ウエブの端部同士を重ねて接合するのは困難である。すなわち、セグメントを橋軸方向に接合するに際して、波形鋼板ウエブはU型断面(箱形断面)のセグメントの一端縁から突出しているため、施工現場において重量物であるセグメントを揚重設備で吊下げた状態で波形鋼板ウエブの端縁同士を重ね合わせ、その重ね部のボルト挿入孔を合致させボルトを挿入して接合するのは極め困難な作業である。
【0018】
前記のように、橋脚上端部、すなわち柱頭部において、橋軸方向一方および他方の方向からの各桁端部を仮支承装置により支承するようにすると、橋脚22上において、各U形プレキャストセグメント12の端部(桁端部)を支承する構造であり、すなわち、単径間施工とすると、1橋脚上においては、橋軸方向に2つ以上の支承装置を必要とする構造であり、Uコンポ橋のコストと施工手間が高くなるという問題がある。また、すべてのセグメントがRC構造とすると、重量が重くなるためセグメント長が決まり、支間の中間部を長くすることができないという問題がある。
【0019】
なお、橋脚直上(柱頭部)に設ける桁部材を場所打ちコンクリートによる桁部材とし、多数の縦隔壁を設ける構造も知られている。(例えば、特許文献1参照)
【0020】
前記のように橋脚直上に設ける桁部材を、多数の縦隔壁を設ける場所打ちコンクリートによる桁部材とすると、橋脚22から離れた位置では型枠および支保工を設ける必要があり施工場所が限られ、しかも施工が煩雑となると共に工期が長くなり、施工コストが高くなるという問題がある。そのため、前記のように、プレキャスト製セグメントを使用するUコンポ橋とすると、これらの欠点を解消することができる。
【特許文献1】特開2000−120018
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、前記の問題点を有利に解決することができ、プレキャストセグメントを使用する波形鋼板ウエブUコンポ橋の利点を生かしながら、橋脚直上において、U形セグメントの橋軸方向の端部を配置する形態から、U形セグメントにおける橋軸方向中間部を橋体の直上に配置する形態に変更することにより、橋脚上における橋軸方向の支承装置を本支承一つに減少させることで、より経済的な波形鋼板ウエブUコンポ橋およびその施工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
第1発明の波形鋼板ウエブU型コンポ橋では、U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋において、これを構成するU形プレキャストセグメントを備えた桁を、橋脚の直上に配置されると共に橋軸方向の橋脚巾より長い長さ寸法の柱頭部セグメントと、橋軸方向に隣り合う各柱頭部セグメント間に配置される支間中央セグメントとにより構成すると共に、支間中央セグメントの下床版に内ケーブルを配置してプレストレスを導入し、前記柱頭部直上の柱頭部セグメントの中央下部を、橋脚上において橋軸方向一点となる支承装置により支承するようにしたことを特徴とする。
【0023】
また、第2発明の波形鋼板ウエブU型コンポ橋では、U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋において、これを構成するU形プレキャストセグメントを備えた桁を、橋脚の直上に配置されると共にほぼ1径間の長さ寸法のセグメントとし、これを橋軸方向新設側に突出するように位置をずらして順次直列に連結して構成すると共に、セグメントの下床版に内ケーブルを配置してプレストレスを導入し、前記柱頭部直上のセグメントの下部を、橋脚上において橋軸方向一つの支点となる支承装置により支承するようにしたことを特徴とする。
【0024】
第3発明では、第1または第2発明の波形鋼板ウエブU型コンポ橋において、柱頭部に位置するU形プレキャストセグメントの上床版に、内ケーブルが配置されて、上床版にプレストレスが導入されていることを特徴とする。
【0025】
第4発明では、第1発明または第2発明の波形鋼板ウェブU形コンポ橋において、支間中央セグメントと、柱頭部セグメントと、これらの接続部に設けられる中間横桁とに渡って、前記中間横桁の下部を偏向部支点とするように外ケーブルが配置され、前記外ケーブルにより前記各セグメントにプレストレスが導入されていることを特徴とする。
【0026】
第5発明の波形鋼板ウェブU形コンポ橋の構築方法では、U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋の構築方法において、橋脚の直上に橋軸方向に一つの支点支持となるように支承装置を設置し、前記支承装置により、橋軸方向の橋脚巾より長い長さ寸法の柱頭部セグメントの中間下部を支持させ、前記柱頭部セグメントを保持手段により保持し、次いで柱頭部セグメント間に支間中央セグメントを配置し、柱頭部セグメントと支間中央セグメントとをこれらの間に設ける中間横桁により一体化し、支間中央セグメントの下床版に内ケーブルを配置して前記各セグメントをプレストレスを導入することを特徴とする。
【0027】
第6発明の波形鋼板ウェブU形コンポ橋の構築方法では、U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋の構築方法において、橋脚の直上に橋軸方向に一つの支点支持となるように支承装置を設置し、前記支承装置により、ほぼ1径間の長さ寸法の新設のU形プレキャストセグメントの中間下部を支持させ、かつ前記U形プレキャストセグメントを橋脚から新設側に張り出すように配置した状態で、前記新設のU形プレキャストセグメントの後端部を、既設側のU形プレキャストセグメントに連結し、支間中央部のU形プレキャストセグメントの下床版に内ケーブルを配置して前記各U形プレキャストセグメントにプレストレスを導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
第1発明によると、橋脚直上の柱頭部セグメントと、径間部の支間中央セグメントとにより、かつ支間中央セグメントの下床版に内ケーブルが配置される構成の桁とされているので、支間中央セグメントの橋軸方向の長さを長くすることができ、桁の長大化(長支間)が可能になり、桁の単純化が図れる。
また、第1発明によると、橋脚直上に、橋軸方向の橋脚巾より長い長さ寸法の柱頭部セグメントを1部材として配置するようにしているので、従来のように、一つの橋脚上に橋軸方向両側のセグメントの端部を複数の各仮支承装置により支承せずに、橋脚上においては柱頭部セグメントの中間1箇所で支承すればよくなるので、橋脚上の支承装置数を半減させることができ、施工コストおよび施工手間を減少させることができる。
【0029】
第2発明によると、略1径間のU形プレキャストセグメントのみを配置するようにしているので、従来のように、一つの橋脚上に橋軸方向両側のセグメントの端部を複数の各仮支承装置により支承せずに、橋脚上においてはU形プレキャストセグメントの中間1箇所で支承すればよくなるので、橋脚上の支承装置数を半減させることができ、施工コストおよび施工手間を減少させることができる。
【0030】
第3発明によると、上床版にプレストレスが導入されているので、上床版に負曲げモーメントによる引張り力が上床版に作用する場合に抵抗させることができる。
【0031】
第4発明によると、支間中央セグメントと、柱頭部セグメントと、これらの接続部に設けられる中間横桁とに渡って、前記中間横桁の下部を偏向部支点とするように外ケーブルが配置され、前記外ケーブルによりプレストレスが導入されているので、すなわち、支間中央セグメントの下床版には、内ケーブルにより予めプレストレスが導入されているため、支間中央セグメントの架設後に前記外ケーブルにより導入されるプレストレス力を小さくすることができる。
【0032】
第5発明によると、柱頭部セグメントを橋脚上の橋軸方向1つの支承により支承させるので、橋脚上における橋軸方向の支承装置の設置数を少なくすることができ、また、支間中央セグメントの下床版に内ケーブルを配置するので、支間中央セグメントを橋軸方向に長くしてUコンポ橋を構成する桁を単純化することができる。
【0033】
第6発明によると、ほぼ1径間にわたる長さ寸法のU形プレキャストセグメントを橋脚から新設側に張出すように架設するだけで、橋脚の直上に橋軸方向に一つの支点支持となるように支承装置を設置するだけでよくなり、また、セグメントの下床版に内ケーブルを配置するので、セグメントを橋軸方向に長くしてUコンポ橋を構成する桁を単純化することができる。また、既設側のU形プレキャストセグメントに仮支持用ブラケットを設ける場合には、新設側のセグメントを仮支持する仮支柱を別個に設ける必要がないので、仮支柱を設けることができない場所においても容易に施工することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下本発明の実施形態を図を参照して説明する。
【0035】
図1〜図3は、第1実施形態および変形形態を示し、図1は、第1実施形態に係る波形鋼板ウエブUコンポ橋の縦断正面図、図2(a)は、図1における片側のU形プレキャストセグメントの拡大図、(b)は、図2(a)の波形鋼板ウエブを単独で示す説明図、図3(a)は、横桁部位において軸方向に接合する波形鋼板ウエブの接合部を示す外側面図、図3(b)は、図3(a)のA−A線位置での切断平面説明図、図3(c)は変形形態を示す図であり、波形鋼板ウエブを備えた支間中央セグメントとコンクリート製ウエブを備えた柱頭部セグメントとの接合部を示す前記図3(b)に対応する切断平面図である。図7(a)、(b)、(c)および図8(a)、(b)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程を説明するための説明側面図である。
【0036】
各図において、波形鋼板ウエブUコンポ橋11は、幅員方向に間隔をあけて橋梁単位部材としてのU形プレキャストセグメント12を平行に配置し、各U形プレキャストセグメント12を橋軸方向(図面の表裏方向に)連結すると共に、U形プレキャストセグメント12の上部において、幅員方向と橋軸方向にPC板13および、その上部に現場打ちコンクリート上床版14を構築して構成されている。
【0037】
本発明の波形鋼板ウエブコンポ橋11は、橋梁単位部材としてU形プレキャストセグメント12を使用するが、橋脚直上に配置される柱頭部セグメント45(図7参照)として、波形鋼板ウエブ15を使用したU形プレキャストセグメント12を使用してもよく、あるいはウエブを含めて鉄筋コンクリート製でプレストレスが導入されているU形プレキャストセグメント12(図示の場合)を使用してもよく、いずれのセグメント12の場合も、柱頭部セグメント45として使用する場合には、橋脚の直上においてケーブル端部を定着させるための横桁57(図7参照)を備えていることが必要である。橋脚直上(柱頭部)以外の支間中央セグメント44では、波形鋼板ウエブ15を使用したU形プレキャストセグメント12を使用し、軽量化を図る。すなわち、支間中央に配置される支間中央セグメント44(図7参照)としては、波形鋼板ウエブ15を使用したU形プレキャストセグメント12を使用する。
【0038】
橋脚22の直上に配置される柱頭部セグメント45として、鉄筋コンクリート製U形プレキャストセグメント12とする場合には、図3(c)に示すように、コンクリート製ウエブ15bの端部に、波形鋼板ウエブ15の端部と同様な接合片15cを設けておくことで、波形鋼板ウエブ15を使用したU形プレキャストセグメント12相互の接合(図3bあるいは図4に示す構造)と同様に、波形鋼板ウエブ15を使用したU形プレキャストセグメント12からなる支間中央セグメント44と接合片15cを備えた柱頭部セグメント45とを接合することができる(詳細は後記する)。
【0039】
図2に示すように、前記各U形プレキャストセグメント12(44,45)には、両側の波形鋼板ウエブ15の上端部の間には適宜、対傾構23がコンクリート上床版14を構築するまで架設されていて最終工程で取り外される。各セグメント12(44,45)は、施工現場でショートライン工法などで構築した後、該セグメント12(44,45)をトラッククレーン等で所定の設置部位に吊り上げ、橋脚22上または仮支柱等を用いて架設しながら橋軸方向に接続すると共に、セグメント12と上床版14を一体化して合成桁橋として構成される。上床版14にはアスファルト舗装9が施工される。
【0040】
図3(a)(b)に示すように、橋軸方向に隣接する波形鋼板ウエブ15の端縁15a同士が所定の間隔をあけて配置され、該波形鋼板ウエブ15の端部近傍には上下方向に間隔をあけて複数のコンクリートジベル孔36が開設されていて、横桁19の構築予定の位置に配設された貫通鉄筋37が前記コンクリートジベル孔36に挿入されている。このように貫通鉄筋37を配設した後、現場打ちコンクリートを打設することでジベル孔26にコンクリートが廻り込み貫通鉄筋37が埋設一体化された横桁19を構築することができる。
【0041】
また、図3(c)に示すように、波形鋼板ウエブ15とコンクリート製ウエブ15bの接合片15cとなる場合も前記と同様に、接合片15cの端部に上下方向に間隔をおいて多数のコンクリートジベル孔36を設けることで、前記と同様に接合することができる。なお、図3(b)と同様な要素には同様な符号を付した。
【0042】
従って、接合構造によると、貫通鉄筋37が埋設された横桁19を介して橋軸方向に隣り合うU形プレキャストセグメント12と横桁19とが一体化し連結できるので、波形鋼板ウエブ15に作用するせん断力は貫通鉄筋37を介して確実に横桁19に伝達され、横桁19を介して隣接する波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bに伝達できる。従って、前記のような接合構造によると横桁19の部位において、波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bを橋軸方向に接合するのに手間のかかる接続作業が不要であり、作業性が向上すると共に、セグメント12の橋軸方向の連結の容易性と確実性が実現される。
【0043】
また、図3には、貫通鉄筋37と別にポストテンション方式の横締めPC鋼材38を配設して横桁コンクリートを打設し、横桁19を構築した後、開口部39を介して横締めPC鋼材38にプレストレスを導入し、定着部40にて定着した後、開口部39に目詰めコンクリート41を充填した例を示している。横締めPC鋼材38は波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bとは連結されておらず接合構造には関与しないが、PC鋼材を用いることで横桁コンクリートの強度が向上するので、鉄筋による横桁補強の点で、該鉄筋量を減少でき施工効率が上がる。
【0044】
柱頭部セグメント45または支間中央セグメント44として使用されるU形プレキャストセグメント12の下部は、左右の波形鋼板製のウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bの下端部を結合するコンクリート製でかつ内部に内ケーブル16が挿通された下床版17で構成し、下床版17と波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bとは、該ウエブ15の内側面にジベル18を溶接するか継手鉄筋(コンクリート製ウエブの場合)を設けておき、該ジベル18または継手鉄筋が埋設されるようにコンクリートを打設することで強固に一体化される。
【0045】
図4は波形鋼板ウエブを使用する形態での第2実施形態を示し、図4(a)は、軸方向に接合する波形鋼板ウエブの横桁部位における接合部を示す外側面図、図4(b)は、図4(a)のB−B線位置での切断平面説明図、図4(c)、(d)は、図4(b)のB部の上下方向の異なる位置で横切した詳細図、図5は、横桁部位における波形鋼板ウエブの接合部構造を示す斜視説明図である。
【0046】
実施形態2においては、U形プレキャストセグメント12(柱頭部セグメント44,支間中央セグメント45)の橋軸方向の連結は、該セグメント12(支間中央セグメント44)を橋脚上または仮支柱等により所定位置に架設したうえ、図4、図5のように、接合部位置に設ける現場打ちの横桁19を介して行われる。すなわち第2実施形態では橋軸方向に隣接する波形鋼板ウエブ15の端縁15a同士を突き合わせ、両ウエブ端部を仮接合用の外側連結板32と内側連結板33で挟み、外側連結板32の内面に固着した仮接合用スタッドボルト34を波形鋼板ウエブ15の端部に形成したボルト孔と内側連結板33に形成したボルト孔に挿通させたうえスタッドボルト先端のねじ部にナット35を締結することで、該外側連結板32と内側連結板33により隣接する波形鋼板ウエブ15の端部同士を仮接合する。その後、波形鋼板ウエブ15の端部内側面と内側連結板33の内側面には、図4(b)の配置で横桁接合用スタッドジベル21が横方向に複数列をなして、かつ上下方向に複数段設けられる。その後、現場打ちコンクリートによる横桁19を構築することで、横桁接合用スタッドジベル21が横桁コンクリート中に埋設される。仮接合用スタッドボルト34は予め外側連結板32に固着されており、横桁接合用スタッドジベル21は後接合で固着される。
【0047】
なお、図示を省略するが、波形鋼板ウエブを使用する形態のU形プレキャストセグメント12と、柱頭部に配置されるコンクリート製ウエブ15bを有する形態のU形プレキャストセグメント12の場合も、前記接合片15cに横桁接合用スタッドジベル21および仮接合用スタッドボルト挿通用の透孔を上下方向に間隔をおいて、図4と同様に設けることにより、場所打ちコンクリートの横桁19と一体化させると共に隣接するU形プレキャストセグメント12と接合することができる。
【0048】
前記のように、U形プレキャストセグメント12(柱頭部セグメント44,支間中央セグメント45)の橋軸方向の接合部位を現場打ちコンクリートによる横桁19とし、波形鋼板ウエブ15の横桁接合用スタッドジベル21を横桁コンクリート中に埋設することで、橋軸方向に隣り合うU形プレキャストセグメント12と横桁19とが一体化し連結できるので、波形鋼板ウエブ15に作用するせん断力は横桁接合用スタッドジベル21を介して確実に横桁19に伝達され、横桁19を介して隣接する波形鋼板ウエブ15に伝達できる。前記の接合構造により、横桁19の部位において、波形鋼板ウエブ15同士を橋軸方向に接合するに際して、手間のかかる接続作業が不要であり、作業性が向上すると共に、セグメント12の橋軸方向の連結の容易性と確実性が実現される。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0049】
図6は、第3実施形態に係る波形鋼板ウエブUコンポ橋の縦断側面図である。第3実施形態では、第1実施形態(図1に示す)におけるPC板13と現場打ちコンクリートの上床版14に代えて、プレキャストコンクリートの上床版28が、隣り合うセグメント12の上部間およびセグメントにおける両ウエブ15の間に配設されている。上床版用プレキャスト板28の上部は目地部空間とされ、目地部空間に上床版接合用スタッドジベル26が埋設されるように目地部コンクリート29が打設されていて、この目地部コンクリート29を介して波形鋼板ウエブ15と一体化されている。前記波形鋼板ウエブ15の上端部には、鋼上フランジ24が溶接等により固定され、その鋼上フランジ24に上床版接合用スタッドジベルは設けられている。
【0050】
次に、図7〜図10を参照して図1〜図6に示す波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程を説明する。
【0051】
図7〜図10に示す形態は、地上において、矢印で示す仮支柱30が設置できる場合の構築方法であり、先ず、図7(a)および図10aに示すように、各橋脚22上の橋軸方向の中央部に、仮支承ではない本支承としての支承装置(以下、本支承装置とも言う)43を橋軸方向一つの支点支持となるように設置する。また、各橋脚22から橋軸方向(左右方向)に離れた左右両側の位置に、柱頭部セグメント45の姿勢等の保持手段として、橋脚直上に橋軸方向の中間部が架設される柱頭部セグメント45を仮支持するための仮支柱30を設置する。ただし、前記の橋脚22の橋軸直角方向には、セグメントの橋軸直角方向の巾に応じて適宜数の本支承装置43が設置される。前記の柱頭部セグメント45は、幅員方向に所定の間隔をあけて2列平行に配置されている。
【0052】
また、各橋脚における橋軸方向の巾寸法以上の柱頭部セグメント45(12)が、橋脚22上の本支承装置43および左右の各仮支柱30により支承される。前記の仮支柱30ついても、橋軸直角方向には、適宜必要数の仮支柱30が設置される。(なお、図10において、波形鋼板ウエブ15を使用するU形プレキャストセグメント12に、波形鋼板ウエブ15aに代えて、コンクリート製ウエブ15bを使用する形態の正面形態は同様であるので、同図に示した。)
【0053】
次いで、図7(b)に示すように、柱頭部セグメント45の間に、柱頭部セグメント45と同様な構成の支間中央セグメント44を配置し、これらを橋軸方向の各仮支柱30により支持させる。(図10a参照)
【0054】
次いで、図7(c)および図10(b)に示すように、柱頭部セグメント45と支間中央セグメント44とを、図3あるいは図4に示すような構造の横桁19を設けて一体化する。
【0055】
横桁19との一体化構造において、前記の横桁19は、後に配置される外ケーブル27の偏向部を兼ねたもので、前記横桁19の下部には、支間中央セグメント44における下床版17に近接して外ケーブル27を配置可能なように偏向支承部が設けられる。
【0056】
前記のように、ほぼ2径間または2径間以上の複数径間(図示を省略)にわたり、一端側の柱頭部セグメント45内の横桁57の上部から他端側の柱頭部セグメント45内の横桁57に渡って外ケーブル27を配置する。
【0057】
さらに具体的に説明すると、外ケーブル27が、一端側および中間部並びに他端側の柱頭部セグメント45内の横桁57の上部に配置されるように、かつ支間中央セグメント44間を連結する横桁19の下部、支間中央セグメント44の下床版側近傍に配置されるように、前記外ケーブル27を2径間にわたり配置し、前記外ケーブル27の上部は、柱頭部セグメント45の上端部で緊張定着される曲線配置とされている。
【0058】
図示のように、この形態では、Uコンポ橋11を橋軸方向に複数に分割して施工する場合の形態であり、分割施工する径間数は、外ケーブル27の連続緊張定着が無理のない径間数に適宜選定される。
【0059】
次いで、図8(a)および図10(c)(d)に示すように、図1に示すような構造になるようにU形プレキャストセグメント12の上部にPC床版13およびその上部にこれを埋め込むように場所打ちコンクリート上床版14が構築される。
【0060】
なお、支間中央セグメント44は、その下床版17に内ケーブル16などのPC鋼材(図示を省略)によりプレテンションが導入されているものを使用すると、橋軸方向の長大化が可能になる。また、複数径間ずつ施工する分割施工径間数は、外ケーブル27の連続緊張が充分できる径間数を選定される。
【0061】
なお、図8(b)に示すように、柱頭部セグメント45の部分の横桁57には、外ケーブル27が上側配置となり、負の曲げモーメントおよび引張り力が生じるため、これに対抗させるために、各柱頭部セグメント45の上部にPC床版13およびこれを埋め込む上床版14を先行して施工し、前記各上床版14のシース内にPC鋼材58を配置し、各上床版14の端部で緊張定着すると共に前記シース内にグラウトし、後に、柱頭部セグメント45間の支間中央セグメント44および横桁19の上部に上床版14を構築するようにしてもよい。
【0062】
前記のようにして図9(b)に示すように、ある2径間に渡る部分を施工し、図9(b)に矢印で示すように、橋軸方向に離れる方向に順次施工するようにすればよい。前記の負の曲げモーメントおよび引張り力に対抗するために、図9(a)に示すように、横桁57とその両側の横桁19とに渡って、外ケーブル65を配置し、前記各横桁19に緊張定着するようにしてもよい。
【0063】
(他の施工形態)
前記の構築方法においては、地盤上において、クレーンを使用して吊り上げて、橋脚上または仮支柱上に柱頭部セグメント45あるいは支間中央セグメント44を設置してUコンポ橋を構築することができるが、河川等において仮支柱30を利用できない形態について、図11を参照して説明する。
【0064】
前記のように、仮支柱30が設けられない場合には、柱頭部セグメント45の姿勢等の保持手段として、図11(a)中央左よりに示すように、橋脚22上面における橋軸方向の両端部に、例えば、伸縮式ジャッキの上下両端部にボルト等による取付けフランジを有する鋼製仮固定装置46を伸長した状態で、その下部取付けフランジを固定すると共に、各仮固定装置46の上部取付けフランジを柱頭部セグメント45の下面に固定して、前記柱頭部セグメント45を水平等の所定の姿勢に保持するようにしてもよい。
【0065】
また、柱頭部セグメント45を所定の姿勢に保持する保持手段としては、図11(a)左よりあるいは図12〜図14に示すように、柱頭部セグメント45の橋軸方向の両端部に、それぞれPC鋼材等の斜材47の一端部を着脱可能に定着し、前記各斜材47の他端部を橋脚下部に緊張状態で定着するようにして、柱頭部セグメント45を所定に姿勢に保持するようにしてもよい。
【0066】
前記の斜材47の上下の定着構造について、さらに図12〜図14を参照して説明すると、上端部側では、U形プレキャストセグメント12における下床版17の上面に、一対の溝形鋼48のウエブが間隔をおいて背中合わせに配置されると共に橋軸方向に連続するように配置され、このような一対の溝形鋼48が下床版17の上面の橋軸直角方向に間隔をおいて平行に配置され、また下床版17には、橋軸方向および橋軸直角方向に間隔をおいて複数の鋼製シース60が橋脚下部に向かって傾斜状態で埋め込み配置されている。また、前記一対の溝形鋼48における橋軸方向の端部に、座金および支圧板59が配置されると共にこれに係合するナット等の定着具49により、斜材47の上端部は、柱頭部セグメント45の上部に定着されている。
【0067】
また、斜材47の下端部の定着構造については、図12〜図14に示すように、橋脚下部における橋軸方向の両側面に、鋼製ブラケット50における基端縦板51をアンカーボルト52により固定し、前記鋼製ブラケット50における支承板53に、支圧板54が配置されると共にこれに係合する定着具49により、斜材47の下端部は、橋脚22の下部に定着されている。
【0068】
前記のようにして仮支柱30を設けることができない場合には、橋脚22に支持させるようにして柱頭部セグメント45を設ければよい。前記のようにして柱頭部セグメント45を設けた状態で、図11(b)に示すように、地上部においては、クレーン等により支間中央セグメント44を柱頭部セグメント45の間に配置するか、柱頭部セグメント45上に配置される公知の移動式架設桁55を利用して支間中央セグメント44を柱頭部セグメント45の間に配置する。
【0069】
そして、柱頭部セグメント45と支間中央セグメント44の接合には、前記した図3〜図5に示すように、柱頭部セグメント45における波形鋼板ウエブ15の端縁15aと支間中央セグメント44における波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bの接合片15cの端縁15a同士を突合せ、両端部を仮接合用の外側連結板32と内側連結板33で挟み、外側連結板32の内面に固着した仮接合用スタッドボルト34を波形鋼板ウエブ15または接合片15cの端部に形成したボルト孔と内側連結板33に形成したボルト孔に挿通させたうえスタッドボルト先端のねじ部にナット35を締結することで、該外側連結板32と内側連結板33により隣接する波形鋼板ウエブ15とコンクリート製ウエブ15bの接合片15cの端部同士を仮接合する。
【0070】
その後、後追いで、波形鋼板ウエブ15の端部内側面と内側連結板33の内側面には、図4(b)の配置で横桁接合用スタッドジベル21が横方向に複数列をなして、かつ上下方向に複数段設けられる。その後、外ケーブル27の偏向部を兼ねた現場打ちコンクリートによる横桁19を構築することで、横桁接合用スタッドジベル21が横桁コンクリート中に埋設される。仮接合用スタッドボルト34は予め外側連結板32に固着されており、横桁接合用スタッドジベル21は後接合で固着される。
【0071】
なお、図示を省略するが、支間中央セグメント44における下床版17には、支間中央セグメント44の自重および移動式架設桁の支持できる程度のプレストレスを、前記下床版17内に配置されるプレテン方式のPC鋼材あるいは、前記下床版17のシース内に配置されるPC鋼材を柱頭部セグメント45の端部で緊張定着することにより導入される。
【0072】
図11(c)に示すように、前記のようにして全ての柱頭部セグメント45間に支間中央セグメント44を設置し、その後、U形プレキャストセグメント12に横桁57bを端部に設けた橋軸方向の一端側の基端部セグメント56における横桁57aと、橋軸方向の他端側の先端部セグメント61における横桁57b間に渡って、外ケーブル27を配置すると共に、その外ケーブル27に、これから築造する上床版14を支持できる程度に一部緊張力を導入して、外ケーブル27の端部を前記各基端部セグメント56および先端部セグメント61の横桁57a,57bに緊張定着する。
【0073】
前記のように外ケーブル27を一部緊張定着した状態で、橋軸方向の全長に渡って上床版14を施工した後、前記外ケーブル27を緊張して波形鋼板ウエブUコンポ橋11の全長に渡って緊張力を導入して、前記各端部の横桁57a、57bに定着する。その後、仮支柱30を撤去して施工が終了する。
【0074】
なお、PC板13の設置工程では、U形プレキャストセグメント12(45,44)の波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bの上部の間と隣の列のセグメント12(45,44)の上部間にPC板13を配置し、現場打ちコンクリート床版14の設置工程では、PC板13の上部に現場打ちコンクリート床版14を打設する。
【0075】
図21〜図23は、本発明の他の実施形態の波形鋼板ウェブを使用した波形鋼板ウェブUコンポ橋およびその構築方法を説明するための図であって、前記の実施形態と相違する点を主に説明すると、この形態では、図21(a)に示すように、U形プレキャストセグメント12をほぼ1径間の長さ寸法とし、既設側のU形プレキャストセグメント12(図21aの左)の先端部を新設側にインフレクションポイント付近まで橋脚22から新設側に張り出すように配置し、かつ既設側のU形プレキャストセグメント22の新設側先端下部に、新設側に向かって張り出す仮支持用ブラケット66の基端部を複数の縦PC鋼材67およびこれにねじ込み固定されるナット等によりU形プレキャストセグメント22に固定し、2径間以上の長さ桁架設用移動桁69で先端側に手延桁68を備えた手延桁付き桁架設用移動桁69を、次にU形プレキャストセグメント12を架設する径間に本体側を配置した状態で、既設側からトロリ台車70により搬送された新設のU形プレキャストセグメント12を前後一対の桁吊搬送装置71により吊上げ搬送し、U形プレキャストセグメント12を所定の位置に配置する。
【0076】
次いで、桁吊搬送装置71のウインチ72を巻き下げ運転して、新設側の橋脚22から張出すように新設のU形プレキャストセグメント12の前部側下部を支承装置43に載置すると共に、後端部を仮支持用ブラケット66に載置して支持させる。
【0077】
次いで、既設側のU形プレキャストセグメント22の先端部と、新設側のU形プレキャストセグメント12の後端部を横桁19を設けて連結し、また、既設側のU形プレキャストセグメント12の下床版17内の内ケーブル(図1の符号16相当、図示を省略)に接続するように、新設側のU形プレキャストセグメント12の下床版17に内ケーブルを配置して緊張定着してプレストレスを導入すると共に、柱頭部に位置するU形プレキャストセグメント12に上床版14を設け、新設側のU形プレキャストセグメント12に外ケーブル27(図22c参照)を配置して緊張定着する。また、各既設および新設側のU形プレキャストセグメント12の仮支持用ブラケット66を撤去して完了する。
【0078】
このような1径間にわたる所定の長さのU形プレキャストセグメント12を使用する形態では、ほぼ1径間にわたる長さのU形プレキャストセグメント12を使用するだけでよいので、施工の単純化を図ることができ、短工期で施工することができる。また、1種類のU形プレキャストセグメント12でよいので、施工も容易である。また、仮支持用ブラケット66により新設側のU形プレキャストセグメント12の後端部を仮支持するので、仮設支柱を設けることなく、新設のU形プレキャストセグメント12の後端部を支持することができる。その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、主要な部分に、同様な符号を付して説明を省略する。
【0079】
〔実施形態の作用〕
実施形態の作用を列挙すると、次ぎのとおりである。
【0080】
(1)PCコンポ橋におけるU形プレキャストセグメント12のウエブを、少なくとも支間中央セグメント44では、コンクリートウエブ15bから波形鋼板ウエブ15に変えたことにより、PCコンポ橋の重量の大幅な軽量化を達成でき、鋼橋に近い橋体重量にできる、具体的には、U形プレキャストセグメント12の単位長当り重量を、従来のU形コンポ橋の1/3程度にすることができ、運搬、架設機材、支承等のコスト縮減を図ることができ、加えて、地質条件の悪いところに適用できる。
【0081】
(2)前記に伴い支間中央セグメント44の橋軸方向のセグメント長を長くすることができるので、仮支柱間隔が大きくでき、長支間に対応可能となり、交差交通にも利用できる。
【0082】
(3)前記のように主桁であるU形プレキャストセグメント12からなる支間中央セグメント44を仮支柱30等により架設し、セグメントの接合を現場打ちコンクリートによる横桁19の位置とすることで、波形鋼板ウエブ15を橋軸方向に接合するための手間のかかる溶接やボルト締結、フープ状の連結筋の施工等を省略した。特に、コンクリートジベル孔36と貫通鉄筋37または、横桁接合用スタッドジベル21を介して隣の波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bと横桁19とを一体化したことで、接合部の施工が簡易となり施工コストの低減が可能となると共に、工期に影響を与えないようにできる。
【0083】
(4)また、U形プレキャストセグメント12、すなわち柱頭部セグメント45または支間中央セグメント44の橋軸方向の接合部を、前述の現場打ちコンクリート横桁19とすることで、接合部の縁引張応力度に対する制限値を緩和できる。さらに、現場打ちコンクリート横桁19とすることで、プレキャストセグメントの製作は、ショートライン工法でもマッチキャストする必要がない。
【0084】
(5)また、支間中央セグメント44(12)または柱頭部セグメント45(12)の下床版17はジベル18で波形鋼板ウエブ15と一体化させると共に、上床版14と波形鋼板ウエブ15は、該波形鋼板ウエブ15の上端に溶接接合した鋼上フランジ24に設けた上床版接合用スタッドジベル26で一体化されている点で、セグメント12と上床版14の連結作業も容易、確実となる。また、柱頭部セグメント45(12)をプレキャストコンクリート製とする場合には、下床版17とコンクリート製ウエブ15bが一体であるので、コンクリート製ウエブ15bの上端に鋼上フランジ24をアンカー材により固定することで、前記と同様に、上床版14と鋼上フランジ24に設けた上床版接合用スタッドジベル26との連結が可能になる。
【0085】
(6)下床版に内ケーブル16により導入するプレストレスは、プレテンション方式、プレグラウトポストテンション方式を適宜選択する。
【0086】
(7)波形鋼板ウエブ15またはコンクリート製ウエブ15bの上端に設ける鋼上フランジ24は、架設時のウエブに作用する曲げ圧縮力を負担する構造部材としている。(8)波形鋼板ウエブ15の内側は、D塗装系とすることができる。
【0087】
(9)防音壁等が設置される場合は、U形プレキャストセグメント12からなる柱頭部セグメント45または支間中央セグメント44を横桁断面端部に配置することで、床版厚を低減する。また、広幅員の場合や前記の防音壁等が設置される場合は、柱頭部セグメント45および支間中央セグメント44の配置数の増加や、ストラッドを併用することで対応することもある。
(10)既設側のU形プレキャストセグメントに仮支持用ブラケット66を設け、ほぼ1径間の長さのU形プレキャストセグメントを使用する形態では、仮支柱が不要になる点およびU形プレキャストセグメントの長さの異なる種類が少なくなる利点が得られる以外は、前記実施形態と同様な作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の第1実施形態に係る波形鋼板ウエブUコンポ橋の縦断正面図である。
【図2】(a)は、図1片方のU形プレキャストセグメントの拡大図、(b)は、波形鋼板ウエブを単体で示す説明図である。
【図3】第2実施形態を示し、(a)は、軸方向に接合する波形鋼板ウエブの横桁部位における接合部を示す外側面図、(b)は、図3(a)のA−A線位置での切断平面説明図、(c)は波形鋼板ウエブを備えた支間中央セグメントとコンクリート製ウエブを備えた柱頭部セグメントとの接合部を示す前記(b)に対応する切断平面説明図である。
【図4】(a)は、軸方向に接合する波形鋼板ウエブの横桁部位における接合部を示す側面図、(b)は、図4(a)のB−B線位置での切断平面図、(c)、(d)は、図4(a)のB部の上下に異なる位置での横桁断面詳細図である。
【図5】横桁部位における波形鋼板ウエブの接合部構造を示す斜視説明図である。
【図6】第3実施形態に係る波形鋼板ウエブUコンポ橋の縦断側面図である。
【図7】(a)、(b)、(c)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程を説明するための説明側面図である。
【図8】(a)、(b)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程を説明するための説明側面図である。
【図9】(a)、(b)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程を説明するための説明側面図である。
【図10】(a)、(b)(c)、(d)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程の正面図で、(a)は支間中央セグメントまたは図7の(a)(b)に対応する正面図、(b)は、図7の(c)に対応する正面図、(c)は図8の(a)に対応する正面図(ただし、PC床版を設け、その上に上床版を設ける前の状態)、(d)は図8に(b)に対応する正面図である。
【図11】(a)、(b)、(c)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する他の実施形態の工程を説明するための側面図である。
【図12】柱頭部セグメントの姿勢を保持するために斜材を使用して姿勢保持する形態を示す側面図である。
【図13】図12を橋軸方向から見た一部切欠拡大縦断正面図である。
【図14】図12の一部切欠拡大縦断側面図である。
【図15】U形コンポ橋の他の形態を示す縦断正面図である。
【図16】(a)、(b)(c)、(d)は、従来の波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する第1工程〜第4工程の側面図である。
【図17】(a)、(b)(c)、(d)は、図16(a)、(b)(c)、(d)に対応する正面図である。
【図18】(a)、(b)は、第5工程の側面図と正面断面図である。
【図19】(a)は、橋軸方向に接合する波形鋼板ウエブの横桁部位における接合部を示す側面図、(b)は(a)の横断平面図である。
【図20】(a)、(b)、(c)は、従来の第1例と第2例と第3例に係るPCコンポ橋の縦断正面図である。
【図21】(a)、(b)、(c)は、本発明に係るU形プレキャストセグメントを用いて波形鋼板ウエブUコンポ橋を構築する工程を説明するための説明側面図である。
【図22】移動式架設桁と、桁吊装置との関係を示す正面図である。
【図23】仮支持用ブラケット付近を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0089】
1 T桁
2 係合段部
3 PC板
4 床版
5 箱桁
6 係合段部
7 PC板
8 現場打ちコンクリート床版
9 アスファルト舗装
10 PC床版
11 波形鋼板ウエブUコンポ橋
12 U形プレキャストセグメント
13 PC板
14 現場打ちコンクリート上床版
15 波形鋼板ウエブ
15a ウエブの端縁
15b コンクリート製ウエブ
15c 接合片
16 内ケーブル
17 下床版
18 ジベル
19 現場打ちコンクリートの横桁
20 ウエブ端部の内側面
21 横桁接合用スタッドジベル
22 橋脚
23 対傾構
24 鋼上フランジ
25 橋台
26 上床版接合用スタッドジベル(または上床版接合用ジベル)
27 外ケーブル(主ケーブル)
28 プレキャストコンクリート上床版
29 目地部コンクリート
30 仮支柱
32 外側連結板
33 内側連結板
34 仮接合用スタッドボルト
35 ナット
36 コンクリートジベル孔
37 貫通鉄筋
38 横締めPC鋼材
39 開口部
40 定着部
41 目詰めコンクリート
42 仮支承
43 支承装置(本支承装置)
44 支間中央セグメント
45 柱頭部セグメント
46 仮固定装置
47 斜材
48 溝形鋼
49 定着具
50 鋼製ブラケット
51 基端縦板
52 アンカーボルト
53 支承板
54 支圧板
55 移動式架設桁
56 基端部セグメント
57 横桁
57a 横桁
57b 横桁
58 PC鋼材
59 支圧板
60 鋼製シース
61 先端部セグメント
62 連結筋
63 本支承装置
64 上床版用プレキャスト版
65 外ケーブル
66 仮支持用ブラケット
67 固定用PC鋼材
68 手延桁
69 桁架設用移動桁
70 トロリ(搬送台車)
71 桁吊装置
72 ウインチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋において、これを構成するU形プレキャストセグメントを備えた桁を、橋脚の直上に配置されると共に橋軸方向の橋脚巾より長い長さ寸法の柱頭部セグメントと、橋軸方向に隣り合う各柱頭部セグメント間に配置される支間中央セグメントとにより構成すると共に、支間中央セグメントの下床版に内ケーブルを配置してプレストレスを導入し、前記柱頭部直上の柱頭部セグメントの中央下部を、橋脚上において橋軸方向一つの支点となる支承装置により支承するようにしたことを特徴とする波形鋼板ウエブU型コンポ橋。
【請求項2】
U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋において、これを構成するU形プレキャストセグメントを備えた桁を、橋脚の直上に配置されると共にほぼ1径間の長さ寸法のU形プレキャストセグメントとし、これを橋軸方向新設側に偏位するように位置をずらして順次直列に連結して構成すると共に、U形プレキャストセグメントの下床版に内ケーブルを配置してプレストレスを導入し、前記柱頭部直上のU形プレキャストセグメントの下部を、橋脚上において橋軸方向一つの支点となる支承装置により支承するようにしたことを特徴とする波形鋼板ウエブU型コンポ橋。
【請求項3】
柱頭部に位置するU形プレキャストセグメントの上床版に、内ケーブルが配置されて、上床版にプレストレスが導入されていることを特徴とする請求項1または2に記載の波形鋼板ウエブU型コンポ橋。
【請求項4】
支間中央セグメントと、柱頭部セグメントと、これらの接続部に設けられる中間横桁とに渡って、前記中間横桁の下部を偏向部支点とするように外ケーブルが配置され、前記外ケーブルにより前記各セグメントにプレストレスが導入されていることを特徴とする請求項1または3に記載の波形鋼板ウェブU形コンポ橋。
【請求項5】
U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋の構築方法において、橋脚の直上に橋軸方向に一つの支点支持となるように支承装置を設置し、前記支承装置により、橋軸方向の橋脚巾より長い長さ寸法の柱頭部セグメントの中間下部を支持させ、前記柱頭部セグメントを保持手段により保持し、次いで柱頭部セグメント間に支間中央セグメントを配置し、柱頭部セグメントと支間中央セグメントとをこれらの間に設ける中間横桁により一体化し、支間中央セグメントの下床版に内ケーブルを配置して前記各セグメントにプレストレスを導入することを特徴とする波形鋼板ウェブU形コンポ橋の構築方法。
【請求項6】
U形プレキャストセグメントを橋軸方向に接続すると共に、ケーブルでプレストレスが導入される波形鋼板ウエブUコンポ橋の構築方法において、橋脚の直上に橋軸方向に一つの支点支持となるように支承装置を設置し、前記支承装置により、ほぼ1径間の長さ寸法の新設のU形プレキャストセグメントの中間下部を支持させ、かつ前記U形プレキャストセグメントを橋脚から新設側に張り出すように配置した状態で、前記新設のU形プレキャストセグメントの後端部を、既設側のU形プレキャストセグメントに連結し、支間中央部のU形プレキャストセグメントの下床版に内ケーブルを配置して前記各U形プレキャストセグメントにプレストレスを導入することを特徴とする波形鋼板ウェブU形コンポ橋の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2006−265976(P2006−265976A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87508(P2005−87508)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000103769)オリエンタル建設株式会社 (136)
【Fターム(参考)】