説明

波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器

【課題】基板の帯電を防止可能な波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供する。
【解決手段】波長可変干渉フィルター5は、固定基板51と、可動基板52と、固定基板51に設けられた固定反射膜54と、可動基板52に設けられ、固定反射膜54と反射膜間ギャップG1を介して対向する可動基板52と、固定基板51に設けられた固定帯電防止電極565と、可動基板52に設けられ、固定電極561と電極間ギャップG2を介して対向する可動電極562と、固定電極561の外周縁に沿い、かつ固定電極561と非接触に設けられ、接地され固定帯電防止電極565と、可動電極562の外周縁に沿い、かつ可動電極562と非接触に設けられ、接地された可動帯電防止電極566と、を具備した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の基板の互いに対向する面に、それぞれ反射膜を所定のギャップを介して対向配置した波長可変干渉フィルターが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の波長可変干渉フィルターは、2枚の光学基板の互いに対向する面に、それぞれ反射層(反射膜)が設けられている。また、これらの光学基板の間には、複数のアクチュエーターが配置され、光学基板間の距離を変化させることが可能となっている。さらに、この波長可変干渉フィルターには、2枚の光学基板の互いに対向する面に、それぞれ容量電極が設けられ、容量電極に保持される電荷に基づいて、基板間の間隔を把握することが可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−277758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のような波長可変干渉フィルターでは、容量電極に保持された電荷を測定することで、基板間の間隔を測定可能となる。この場合、容量電極間に微弱な電圧を印加して、各容量電極に電荷を保持させる必要がある。しかしながら、この容量電極に保持された電荷が各基板表面や反射膜に逃げることで、基板の互いに対向する面が帯電する場合がある。
上記のように容量電極の電荷が各基板表面や反射膜に逃げる理由として、一般的には、次の3つの理由が考えられる。1つ目の理由は、基板表面が帯電しやすい材質である場合に、容量電極の端部から発生する電界により静電誘電が起こり、この静電誘電により基板表面が帯電するためである。2つ目の理由は、基板表面の絶縁性が低い場合に、リーク電流が容量電極から基板表面を流れ、基板表面が帯電するためである。また、リーク電流が反射膜に流れることで、反射膜が帯電されることが考えられる。3つ目の理由は、反射膜と容量電極が近い場合に、容量電極と反射膜との間で容量結合は発生し、容量結合を通じて反射膜が帯電するためである。
このように、互いに対向する基板が帯電すると、基板間にクーロン力が作用し、当該反射膜間の距離の制御が困難となるという課題がある。
【0006】
本発明は、上記のような課題に鑑みて、基板の帯電を防止もしくは低減する波長可変干渉フィルター、光学フィルターデバイス、光学モジュール、及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極と、前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極と、を具備したことを特徴とする。
【0008】
本発明では、第一電極及び第二電極間に電圧を印加することで、静電引力により基板間の間隔を調整することができる。ここで、第一電極や第二電極に電圧を印加すると、これらの電極に電荷が保持され、これらの電荷が基板上に移動してしまうことが考えられる。
これに対して、本発明では、第一基板及び第二基板には、それぞれ、第一電極及び第二電極の外周縁に沿って、これらの第一電極や第二電極と非接触となる第三電極及び第四電極が設けられている。
このような構成では、第一電極に保持された電荷が、当該第一電極が設けられる第一基板上に移動した場合でも、第三電極により当該移動した電荷を逃がすことができる。これにより、第一基板の帯電を防止することができる。つまり、第一基板が帯電しやすい材質であっても、第一電極の端部から発生する電界により静電誘電が発生した場合でも、接地された第三電極から電荷が逃げることで第一基板の帯電を抑制できる。また、基板表面の絶縁性が低く、リーク電流が発生した場合でも、当該リーク電流を第三電極から逃がすことができ、第一基板の帯電を抑制できる。さらに、第一電極と第一反射膜との位置が近い場合であっても、第一電極の外周縁に沿って接地された第三電極が設けられることで、第一電極と第一反射膜の間に接地された第三電極が介在する構成となる。このため、第一電極及び第一反射膜の容量結合が発生せず、容量結合を通じて第一反射膜が帯電する不都合をも抑制することが可能となる。
第二基板に対しても同様であり、第四電極により、第二電極から第二基板上に移動した電荷を除去することができるため、第二基板の帯電を防止することができる。
以上により、第一基板や第二基板の帯電が防止されるため、基板間に作用するクーロン力の発生を防止できる。したがって、第一電極及び第二電極間に電圧を印加して反射膜間ギャップを調整する際に、クーロン力の影響を受けず、容易に、かつ精度よくギャップ調整を実施することができる。
【0009】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第二基板は、可動部、及び前記可動部よりも厚み寸法が小さく、前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部を備え、前記第二反射膜及び前記第二電極は、前記可動部に設けられたことが好ましい。
第二基板を第一基板に撓ませる場合、基板全体を撓ませると、第二反射膜までが撓み、第一反射膜及び第二反射膜の平行関係を維持することが困難となる。
これに対して、本発明では、第二基板に、厚み寸法が大きい可動部と、可動部よりも厚み寸法が小さく、可動部を保持する保持部とが設けられており、可動部に第二反射膜や第二電極が設けられている。
このような構成では、保持部を撓ませることで、可動部を第一基板に対して進退させ、反射膜間ギャップを変化させる。この時、可動部の厚み寸法が保持部よりも大きく形成されているため、保持部の撓み量に比べて、可動部の撓み量が小さくなる。したがって、このような可動部に第二反射膜を設けることで、第二反射膜の撓みも抑制することができる。
また、厚み寸法が小さく撓みやすい保持部に第二電極を設けると、第二電極の膜応力により保持部に撓みが生じる場合がある。このような膜応力により保持部が撓むと、可動部が傾斜して、第一反射膜と第二反射膜との平行関係を維持できなくなり、分解能が低下するおそれがある。また、第一電極及び第二電極間に電圧を印加しない初期状態において、保持部が第一基板側に撓むと、反射膜間ギャップの初期寸法が小さくなり、測定可能な波長域が狭くなる。
これに対して、可動部に第二電極を設けることで、保持部の撓みを抑制することができ、分解能の低下や、測定可能波長域の狭域化を防止することができる。
【0010】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第四電極は、前記可動部に設けられることが好ましい。
本発明では、可動部上に第四電極が設けられている。これにより、第四電極の膜応力が第二基板に及ぼす影響を軽減させることができ、第二基板の撓みを防止することができる。
【0011】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第四電極は、前記保持部の前記第一基板に対向する面全体に設けられたことが好ましい。
本発明では、第四電極が保持部全体を覆って設けられている。つまり、可動部を変位させる際に撓む部分であり、クーロン力等の影響により最も撓み易い部分となる。このような保持部を覆って第四電極を設けることで、保持部における帯電をより確実に防止することができ、クーロン力による保持部の撓みをより確実に防止することができる。
【0012】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第四電極は、前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記保持部が露出する開口部を複数有し、これらの開口部が前記保持部の前記第一基板に対向する面全体において均等に配置されていることが好ましい。
ここで、「開口部が前記保持部の前記第一基板に対向する面全体において均等に配置されている」構成とは、例えば、可動部と同一中心点を有する複数のリング形状の電極が等間隔に配置され、各電極間に開口部が形成される構成や、網目状の電極により開口部が複数設けられるメッシュ構成などを挙げることができる。
本発明では、膜応力に対して影響を受けやすい保持部に対して、複数の開口部を有する第四電極を設けている。このため、例えば、保持部の第一基板に対向する面全体を覆う第四電極を設ける場合に比べて、保持部に対する膜応力の影響を軽減させることができ、膜応力による保持部の撓みを抑制することができる。
【0013】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第三電極は、前記第一反射膜に接続され、前記第四電極は、前記第二反射膜に接続されたことが好ましい。
このような構成では、第一反射膜が第三電極に接続され、第二反射膜が第四電極に接続されているため、これらの第一反射膜及び第二反射膜の帯電をより確実に防止することができる。また、第一反射膜及び第二反射膜がいずれも接地され、同電位(0電位)となるため、反射膜間でのクーロン力による影響を確実に防止することができる。
さらに、第三電極及び第四電極は、接地されており、第一反射膜及び第二反射膜が0電位となるため、空気中の浮遊電荷(帯電物質)の付着を抑制することができる。
【0014】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記第一反射膜に接続された第一検出電極と、前記第二反射膜に接続された第二検出電極と、を備え、前記第三電極は、前記第一検出電極の外周縁に沿って、かつ前記第一検出電極と非接触に設けられ、前記第四電極は、前記第二検出電極の外周縁に沿って、かつ前記第二検出電極と非接触に設けられたことが好ましい。
ここで、第一検出電極及び第二検出電極は、例えば、反射膜間ギャップを測定するための容量検出電極を例示できる。このような容量検出電極を用いる場合、第一検出電極及び第二検出電極間に微弱な電圧を印加して、第一反射膜及び第二反射膜に電荷を保持させ、反射膜間ギャップを変化させた際の各反射膜の電荷保持量を検出することで、反射膜間ギャップを測定することが可能となる。
本発明では、このような第一検出電極の外周縁に沿って第三電極が設けられ、第二検出電極の外周縁に沿って第四電極が設けられている。このため、これらの第一検出電極や第二検出電極から、第一基板や第二基板への電荷の移動を防止でき、第一基板及び第二基板の帯電によるクーロン力の発生を防止することができる。
【0015】
本発明の波長可変干渉フィルターでは、前記反射膜間ギャップの寸法は、前記第一電極及び前記第二電極の間に電圧を印加することにより変更されることが好ましい。
本発明によれば、第一電極及び第二電極の間に電圧を印加することで、静電引力により、容易に反射膜間ギャップの寸法を変更することができる。また、このような電圧印加により第一電極及び第二電極が帯電するが、上述したように、第一電極や第二電極の電荷が基板上に移動した場合でも、第三電極及び第四電極から逃がすことができる。
【0016】
本発明の波長可変干渉フィルターは、基板と、前記基板に設けられた反射部と、前記基板に設けられた電極と、前記電極の外周縁に沿い、かつ前記電極と非接触に設けられ、接地された接地電極と、を具備したことを特徴とする。
本発明によれば、上述した発明と同様に、電極から基板上に移動した電荷を、接地電極から逃がすことができる。したがって、基板の帯電を防止することができる。
【0017】
本発明の波長可変干渉フィルターは、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、基準電位に固定された第三電極と、前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、前記基準電位に固定された第四電極と、を具備したことを特徴とする。
【0018】
本発明では、第三電極及び第四電極は、それぞれ基準電位に固定されている。このような構成でも、第一電極や第二電極から基板上に移動した電荷を、第三電極及び第四電極から逃がすことができる。また、第三電極及び第四電極が同電位となるため、これらの間に静電引力等のクーロン力が作用せず、第一電極及び第二電極により、正確な反射膜間ギャップの設定を実施することができる。
【0019】
本発明の光学フィルターデバイスは、第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜、前記第一基板に設けられた第一電極、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極、前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極、及び、前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極を備えた波長可変干渉フィルターと、前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
本発明では、上述した発明と同様に、接地された第三電極及び第四電極により、第一電極や第二電極から移動した電荷を逃がすことができ、クーロン力の影響を防止することができる。したがって、第一電極及び第二電極により、容易に、かつ精度よく反射膜間ギャップの調整を実施することができる。
また、波長可変干渉フィルターが筐体内に収納されているため、外部からの衝撃が波長可変干渉フィルターに伝わりにくく、破損を防止することができる。
【0021】
本発明の光学モジュールは、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極と、前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極と、前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出された光を検出する検出部と、を備えたことを特徴とする。
【0022】
本発明では、上述した発明と同様に、接地された第三電極及び第四電極により、第一電極や第二電極から移動した電荷を逃がすことができ、クーロン力の影響を防止することができる。したがって、第一電極及び第二電極により、容易に、かつ精度よく反射膜間ギャップの調整を実施することができる。
また、第一基板及び第二基板の間、第一反射膜及び第二反射膜の間にクーロン力が作用しないため、反射膜間ギャップを精度よく調整することができ、所望の目的波長の光を波長可変干渉フィルターから取り出すことができる。したがって、検出部においてその光の光量を検出することで、目的波長の正確な光量を精度よく検出することができる。
【0023】
本発明の電子機器は、第一基板と、前記第一基板に対向する第二基板と、前記第一基板に設けられた第一反射膜と、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、前記第一基板に設けられた第一電極と、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極と、前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極と、備えたことを特徴とする。
【0024】
本発明では、上述した発明と同様に、接地された第三電極及び第四電極により、第一電極や第二電極から移動した電荷を逃がすことができ、クーロン力の影響を防止することができる。したがって、第一電極及び第二電極により、容易に、かつ精度よく反射膜間ギャップの調整を実施することができる。
したがって、電子機器において、例えば、第一反射膜及び第二反射膜による光干渉により取り出された目的波長の光を検出し、その光量に基づいて、各種処理を実施する場合、目的波長の光の光量を正確に検出することができるため、各種処理の処理精度も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る第一実施形態の測色装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す平面図。
【図3】第一実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図4】第一実施形態の固定基板を可動基板側から見た平面図。
【図5】第一実施形態の可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図6】第一実施形態の固定基板の製造工程を示す図。
【図7】第一実施形態の可動基板の製造工程を示す図。
【図8】第二実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図9】第二実施形態の固定基板を可動基板側から見た平面図。
【図10】第二実施形態の可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図11】第三実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図12】第三実施形態の可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図13】第四実施形態の波長可変干渉フィルターの概略構成を示す断面図。
【図14】第四実施形態の固定基板を可動基板側から見た平面図。
【図15】第四実施形態の可動基板を固定基板側から見た平面図。
【図16】第五実施形態の光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図。
【図17】他の実施形態における波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置を示す概略図。
【図18】図17のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図。
【図19】他の実施形態における波長可変干渉フィルターを備えた食物分析装置の概略構成を示す図。
【図20】他の実施形態における分光カメラの概略構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第一実施形態]
以下、本発明に係る第一実施形態を図面に基づいて説明する。
〔1.測色装置の概略構成〕
図1は、本実施形態の測色装置1(電子機器)の概略構成を示すブロック図である。
測色装置1は、図1に示すように、検査対象Aに光を射出する光源装置2と、測色センサー3(光学モジュール)と、測色装置1の全体動作を制御する制御装置4とを備える。そして、この測色装置1は、光源装置2から射出される光を検査対象Aにて反射させ、反射された検査対象光を測色センサー3にて受光し、測色センサー3から出力される検出信号に基づいて、検査対象光の色度、すなわち検査対象Aの色を分析して測定する装置である。
【0027】
〔2.光源装置の構成〕
光源装置2は、光源21、複数のレンズ22(図1には1つのみ記載)を備え、検査対象Aに対して白色光を射出する。また、複数のレンズ22には、コリメーターレンズが含まれてもよく、この場合、光源装置2は、光源21から射出された白色光をコリメーターレンズにより平行光とし、図示しない投射レンズから検査対象Aに向かって射出する。なお、本実施形態では、光源装置2を備える測色装置1を例示するが、例えば検査対象Aが液晶パネルなどの発光部材である場合、光源装置2が設けられない構成としてもよい。
【0028】
〔3.測色センサーの構成〕
測色センサー3は、図1に示すように、波長可変干渉フィルター5と、波長可変干渉フィルター5を透過する光を受光する検出部31と、波長可変干渉フィルター5で透過させる光の波長を可変する電圧制御部32とを備える。また、測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5に対向する位置に、検査対象Aで反射された反射光(検査対象光)を、内部に導光する図示しない入射光学レンズを備えている。そして、この測色センサー3は、波長可変干渉フィルター5により、入射光学レンズから入射した検査対象光のうち、所定波長の光を分光し、分光した光を検出部31にて受光する。
検出部31は、複数の光電交換素子により構成されており、受光量に応じた電気信号を生成する。そして、検出部31は、制御装置4に接続されており、生成した電気信号を受光信号として制御装置4に出力する。
【0029】
(3−1.波長可変干渉フィルターの構成)
図2は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す平面図であり、図3は、波長可変干渉フィルター5の概略構成を示す断面図である。
波長可変干渉フィルター5は、図2に示すように、例えば平面正方形状の板状の光学部材である。この波長可変干渉フィルター5は、図3に示すように、本発明の第一基板である固定基板51、および本発明の第二基板である可動基板52を備えている。これらの固定基板51及び可動基板52は、それぞれ例えば、ソーダガラス、結晶性ガラス、石英ガラス、鉛ガラス、カリウムガラス、ホウケイ酸ガラス、無アルカリガラスなどの各種ガラスや、水晶などにより形成されている。そして、これらの固定基板51及び可動基板52は、外周部近傍に形成される第一接合部513、第二接合部523が、例えばシロキサンを主成分とするプラズマ重合膜531,532などにより構成された接合膜53により接合されることで、一体的に構成されている。
【0030】
固定基板51には、本発明の第一反射膜及び反射部を構成する固定反射膜54が設けられ、可動基板52には、本発明の第二反射膜及び反射部を構成する可動反射膜55が設けられている。これらの固定反射膜54および可動反射膜55は、反射膜間ギャップG1を介して対向配置されている。
波長可変干渉フィルター5には、固定反射膜54および可動反射膜55の間の反射膜間ギャップG1の寸法を調整するのに用いられる静電アクチュエーター56が設けられている。この静電アクチュエーター56は、固定基板51に設けられた本発明の第一電極及び電極を構成する固定電極561と、可動基板52に設けられた本発明の第二電極及び電極を構成する可動電極562とにより構成されている。ここで、これらの電極561,562は、それぞれ固定基板51及び可動基板52の基板表面に直接設けられる構成であってもよく、他の膜部材を介して設けられる構成であってもよい。
また、波長可変干渉フィルター5を固定基板51(可動基板52)の基板厚み方向から見た図2に示すような平面視において、固定基板51及び可動基板52の平面中心点Oは、固定反射膜54及び可動反射膜55の中心点と一致し、かつ後述する可動部521の中心点と一致する。なお、以降の説明に当たり、固定基板51または可動基板52の基板厚み方向から見た平面視、つまり、固定基板51、接合膜53、及び可動基板52の積層方向から波長可変干渉フィルター5を見た平面視を、フィルター平面視と称する。
【0031】
(3−1−1.固定基板の構成)
図4は、本実施形態の固定基板51を可動基板52側から見た平面図である。
固定基板51は、厚みが例えば1mmに形成されるガラス基材を加工することで形成される。具体的には、図3に示すように、固定基板51には、エッチングにより電極配置溝511および反射膜設置部512(図3参照)が形成されている。この固定基板51は、可動基板52に対して厚み寸法が大きく形成されており、固定電極561および可動電極562間に電圧を印加した際の静電引力や、固定電極561の内部応力による固定基板51の撓みはない。
また、固定基板51の頂点C3(図2、図4参照)には、切欠部514が形成されており、波長可変干渉フィルター5の固定基板51側に、後述する可動電極パッド564Pが露出する。
【0032】
電極配置溝511は、フィルター平面視で、固定基板51の平面中心点Oを中心とした環状に形成されている。反射膜設置部512は、前記平面視において、電極配置溝511の中心部から可動基板52側に突出して形成される。ここで、電極配置溝511の溝底面は、固定電極561が配置される電極設置面511Aとなる。また、反射膜設置部512の突出先端面は、反射膜設置面512Aとなる。
また、固定基板51には、電極配置溝511から、固定基板51の外周縁の各頂点C1,C2,C3,C4に向かって延出する電極引出溝511Bが設けられている。
【0033】
電極設置面511Aには、固定電極561が形成されている。この固定電極561は、電極設置面511Aのうち、反射膜設置部512側に設けられた固定内側電極561Aと、固定内側電極561Aよりも外周側に、固定内側電極561Aと接触せずに設けられた固定外側電極561Bとを備えている。
これらの固定内側電極561A、及び固定外側電極561Bは、それぞれ略C字形状に形成されており、例えば頂点C1に近接する一部にC字開口部が設けられる。
【0034】
また、固定基板51には、固定内側電極561A及び固定外側電極561BのC字開口部分の端部から延出する固定内側引出電極563A、固定外側引出電極563Bが設けられている。
固定内側引出電極563Aは、図4に示すように、固定内側電極561AのC字開口部分の端部から径外側に延出し、さらに、その延出端部から電極設置面511Aの外周縁に沿って頂点C2に対応した電極引出溝511Bまで延出し、さらに、その延出端部から電極引出溝511Bに沿って頂点C2まで延出する。そして、固定内側引出電極563Aの延出先端部(固定基板51の頂点C2に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される固定内側電極パッド563APを構成する。
固定外側引出電極563Bは、図4に示すように、固定外側電極561BのC字開口部分の端部から径外側に延出し、さらに、その延出端部から電極設置面511Aの外周縁に沿って頂点C4に対応した電極引出溝511Bまで延出し、さらに、その延出端部から電極引出溝511Bに沿って頂点C4まで延出する。そして、固定外側引出電極563Bの延出先端部(固定基板51の頂点C4に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される固定外側電極パッド563BPを構成する。
これらの固定電極561、固定内側引出電極563A,固定外側引出電極563Bとしては、導電性膜であれば、いかなる電極材料を用いてもよく、例えば、ITOや、Cr/Au積層電極などを用いることができる。
なお、この固定電極561上には、固定電極561および可動電極562の間の絶縁耐圧を確保するために、絶縁膜が積層される構成としてもよい。
【0035】
そして、固定基板51には、さらに、本発明の第三電極及び接地電極である第一帯電防止電極を構成する固定帯電防止電極565が設けられている。この固定帯電防止電極565は、固定電極561の外周縁に沿って、固定電極561と非接触となるように形成されている。
具体的には、固定帯電防止電極565は、固定内側電極561Aの内径側(反射膜設置部512側)に設けられる環状の固定内側帯電防止電極565Aと、固定外側電極561Bの外径側に設けられるC字形状の固定外側帯電防止電極565Bと、固定電極561のC字開口部分を通る固定帯電防止引出電極565Cとを備えている。
ここで、固定内側帯電防止電極565Aは、環内周部に固定反射膜54が積層されている。
また、固定帯電防止引出電極565Cは、固定内側帯電防止電極565Aと固定外側帯電防止電極565Bとを接続し、さらに平面中心点Oから離れる径外方向に延びている。そして、この固定帯電防止引出電極565Cは、頂点C1に対応する電極引出溝511Bから、固定基板51の頂点C1まで延出される。固定帯電防止引出電極565Cの延出先端部(固定基板51の頂点C2に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される固定帯電防止電極パッド565Pを構成する。また、電圧制御部32は、固定帯電防止電極パッド565PをGND回路に接続している。これにより、固定帯電防止電極565は、接地され、0電位に維持されている。
【0036】
反射膜設置部512は、上述したように、電極配置溝511と同軸上で、電極配置溝511よりも小さい径寸法となる略円柱状に形成され、当該反射膜設置部512の可動基板52に対向する反射膜設置面512Aと、反射膜設置部512の外周面を構成する側面部512Bと、を備えている。ここで、電極配置溝511、及び反射膜設置部512は、固定基板51をエッチングすることで形成されるものであるため、図3に示すように、側面部512Bは、サイドエッチングの影響で基板厚み方向に対して傾斜した曲面となる。
この反射膜設置部512には、図2〜図4に示すように、固定反射膜54が設けられている。この固定反射膜54は、反射膜設置面512Aから電極引出溝511Bの内周側の一部に亘って形成されており、前述したように、外周部が固定内側帯電防止電極565Aの環内周部に積層される。これにより、固定反射膜54及び固定帯電防止電極565が電気的に接続される。
この固定反射膜54としては、例えばAg等の金属膜や、Ag合金等の合金膜を用いることができる。また、例えば高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜を用いてもよい。固定反射膜54として誘電体多層膜を用いる場合は、固定内側帯電防止電極565Aとの導通をとるために、表層面に別途金属膜や合金膜を積層した構成とすることが好ましい。
また、本実施形態の固定反射膜54は、固定帯電防止電極565に接続するために、図3に示すように、反射膜設置部512全体を覆って形成されることになる。ここで、側面部512Bは、基板厚み方向に対して傾斜しているため、例えば反射膜を蒸着等により成膜した場合、この側面部512B上にも形成されることとなる。このため、この側面部512Bを通る光路上に配置された固定反射膜54及び可動反射膜55により取り出された光は、反射膜設置面512Aを通る光路上に配置された固定反射膜54及び可動反射膜55により取り出された光とは波長が異なる。したがって、このような側面部512Bを通る光が検出部31により検出されるのを防ぐために、固定反射膜54及び可動反射膜55の光干渉領域を規定する図示略のアパーチャーを設けることが好ましい。このアパーチャーとしては、例えば、固定帯電防止電極565が非透光性の導電膜により形成される場合であれば、固定内側帯電防止電極565Aの環内周縁を用いてもよい。この場合、固定内側帯電防止電極565Aの内周縁が反射膜設置面512A内となるように、固定帯電防止電極565を形成すればよい。また、アパーチャーとしては、その他、可動基板52に設けられる可動内側帯電防止電極566Aの内周縁を用いてもよく、固定基板51や可動基板52の外側面(固定反射膜54や可動反射膜55が設けられていない面)に、遮光部を設けることでアパーチャーを形成してもよい。更には、波長可変干渉フィルター5の外部において、例えば測色センサー3内の光路上にアパーチャーを設ける構成としてもよい。
【0037】
また、固定基板51の光入射面(固定反射膜54が設けられない面)には、固定反射膜54に対応する位置に反射防止膜を形成してもよい。この反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、固定基板51の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させる。
【0038】
(3−1−2.可動基板の構成)
図5は、第一実施形態の可動基板を固定基板側から見た平面図である。
可動基板52は、厚みが例えば600μmに形成されるガラス基材をエッチングにより加工することで形成されている。
具体的には、可動基板52は、図2、図5に示すようなフィルター平面視において、平面中心点Oを中心とした円形状の可動部521と、可動部521と同軸であり可動部521を保持する保持部522と、を備えている。
また、可動基板52には、図2、図5に示すように、頂点C1,C2,C4に対応して、切欠部524が形成されており、波長可変干渉フィルター5を可動基板52側から見た際に、固定内側電極パッド563AP,固定外側電極パッド563BP,固定帯電防止電極パッド565Pが露出する。
【0039】
可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく形成され、例えば、本実施形態では、可動基板52の厚み寸法と同一寸法に形成されている。この可動部521は、フィルター平面視において、少なくとも固定外側帯電防止電極565Bの外周縁の径寸法よりも大きい径寸法に形成されている。そして、この可動部521には、可動電極562、可動帯電防止電極566、及び可動反射膜55が設けられている。
なお、固定基板51と同様に、可動部521の固定基板51とは反対側の面には、反射防止膜が形成されていてもよい。このような反射防止膜は、低屈折率膜および高屈折率膜を交互に積層することで形成することができ、可動基板52の表面での可視光の反射率を低下させ、透過率を増大させることができる。
【0040】
可動電極562は、電極間ギャップG2(G2>G1)を介して固定電極561に対向する。この可動電極562は、固定内側電極561Aと同一形状で、固定内側電極561Aに対向する可動内側電極562A、及び、固定外側電極561Bと同一形状で、固定外側電極561Bに対向する可動外側電極562Bを備えている。ここで、固定内側電極561A及び可動内側電極562Aが対向する状態(固定外側電極561B及び可動外側電極562Bが対向する状態)とは、フィルター平面視において、これらの固定内側電極561A及び可動内側電極562A(固定外側電極561B及び可動外側電極562B)が重なっていることを意味する。
また、可動基板52には、可動内側電極562A内において、固定内側電極561A及び可動内側電極562Aを接続し、かつ平面中心点Oから離れる径外方向に延出する可動引出電極564を備えている。この可動引出電極564は、可動基板52の頂点C3に向かって延出する。そして、可動引出電極564の延出先端部(可動基板52の頂点C3に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される可動電極パッド564Pを構成する。
【0041】
また、可動基板52には、本発明の第四電極及び接地電極である第二帯電防止電極を構成する可動帯電防止電極566が設けられる。この可動帯電防止電極566は、可動面521A内において、固定内側帯電防止電極565Aに対向する可動内側帯電防止電極566Aと、固定外側帯電防止電極565Bに対向する可動外側帯電防止電極566Bと、固定帯電防止引出電極565Cに対向する可動帯電防止引出電極566Cとを備えている。
可動内側帯電防止電極566Aは、固定内側帯電防止電極565Aと同様に、環内周部に可動反射膜55が積層されて重なっており、可動反射膜55及び可動内側帯電防止電極566Aが電気的に接続される。
また、可動帯電防止引出電極566Cは、固定内側帯電防止電極565A及び固定外側帯電防止電極565Bを接続するとともに、可動面521Aから頂点C1に向かう径外方向に延出する。そして、この可動帯電防止引出電極566Cの延出先端部(可動基板52の頂点C2近傍)は、可動帯電防止電極パッド566Pを構成し、この可動帯電防止電極パッド566Pは、例えばAgペースト等の導電性部材58(図2参照)により、固定帯電防止電極パッド565Pに電気的に接続されている。これにより、固定帯電防止電極565は、電圧制御部32のGND回路により接地され、0電位に維持されている。
【0042】
可動反射膜55は、上述した固定反射膜54と同一の構成の反射膜が用いられる。また、可動反射膜55は、前述したように、外周部が可動内側帯電防止電極566Aの環内周部に積層される。これにより、可動反射膜55及び可動帯電防止電極566が電気的に接続される。
なお、この可動反射膜55として、誘電体多層膜を用いる場合は、可動内側帯電防止電極566Aとの導通をとるために、表層面に別途金属膜や合金膜を積層した構成とすることが好ましい。
【0043】
保持部522は、可動部521の周囲を囲うダイアフラムであり、例えば厚み寸法が30μmに形成され、可動部521よりも厚み方向に対する剛性が小さく形成されている。
このため、保持部522は可動部521よりも撓みやすく、僅かな静電引力により固定基板51側に撓ませることが可能となる。この際、可動部521は、保持部522よりも厚み寸法が大きく、剛性が大きくなるため、静電引力により可動基板52を撓ませる力が作用した場合でも、可動部521の撓みはほぼなく、可動部521に形成された可動反射膜55の撓みも防止できる。
なお、本実施形態では、ダイアフラム状の保持部522を例示するが、これに限定されず、例えば、平面中心点Oを中心として、等角度間隔で配置された梁状の保持部が設けられる構成などとしてもよい。
【0044】
(3−2.電圧制御手段の構成)
電圧制御部32は、固定内側電極パッド563AP,固定外側電極パッド563BP,可動電極パッド564P,固定帯電防止電極パッド565Pに接続される。そして、電圧制御部32は、制御装置4からの入力される制御信号に基づいて、固定内側電極パッド563AP,固定外側電極パッド563BP,可動電極パッド564Pを所定の電位に設定することで、静電アクチュエーター56に電圧を印加して駆動させる。ここで、本実施形態では、固定内側電極561A及び可動内側電極562A間、固定外側電極561B及び可動外側電極562B間のそれぞれに対して、異なる電圧を印加することにより、これらにそれぞれ異なる静電引力を作用させることが可能となり、より精度の高い反射膜間ギャップG1の調整が可能となる。
また、上述したように、電圧制御部32は、GND回路を有し、固定帯電防止電極パッド565Pを接地している。これにより、固定帯電防止電極パッド565Pに接続された固定帯電防止電極565,可動帯電防止電極566は0電位に維持される。
【0045】
なお、本実施形態では、電圧制御部32に設けられたGND回路により、固定帯電防止電極パッド565Pに接続された固定帯電防止電極565,可動帯電防止電極566を接地し、0電位に保持する例を示したが、例えば一定の基準電位に維持する構成としてもよい。
この場合であっても、固定電極561や可動電極562から移動した電荷を固定帯電防止電極565,可動帯電防止電極566から逃がすことができる。また、固定帯電防止電極565及び可動帯電防止電極566が同電位(基準電位)になるため、これらの間に作用するクーロン力がなく、静電アクチュエーター56による反射膜間ギャップG1の調整を精度よく実施することができる。
【0046】
〔4.制御装置の構成〕
制御装置4は、測色装置1の全体動作を制御する。
この制御装置4としては、例えば汎用パーソナルコンピューターや、携帯情報端末、その他、測色専用コンピューターなどを用いることができる。
そして、制御装置4は、図1に示すように、光源制御部41、測色センサー制御部42、および本発明の分析処理部を構成する測色処理部43などを備えて構成されている。
光源制御部41は、光源装置2に接続されている。そして、光源制御部41は、例えば利用者の設定入力に基づいて、光源装置2に所定の制御信号を出力し、光源装置2から所定の明るさの白色光を射出させる。
測色センサー制御部42は、測色センサー3に接続されている。そして、測色センサー制御部42は、例えば利用者の設定入力に基づいて、測色センサー3にて受光させる光の波長を設定し、この波長の光の受光量を検出する旨の制御信号を測色センサー3に出力する。これにより、測色センサー3の電圧制御部32は、制御信号に基づいて、利用者が所望する光の波長のみを透過させるよう、静電アクチュエーター56への印加電圧を設定する。
測色処理部43は、検出部31により検出された受光量から、検査対象Aの色度を分析する。
【0047】
〔5.波長可変干渉フィルターの製造方法〕
次に、上記波長可変干渉フィルター5の製造方法について、図6及び図7に基づいて説明する。
波長可変干渉フィルター5を製造するためには、固定基板51及び可動基板52をそれぞれ製造し、製造された固定基板51と可動基板52とを貼り合わせる。
【0048】
(5−1.固定基板製造工程)
まず、図6(A)に示すように、固定基板51の製造素材である厚み寸法が1000μmの石英ガラス基板を用意し、この石英ガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。
【0049】
この後、固定基板51の可動基板52に対向する面にレジストを塗布して、塗布されたレジストをフォトリソグラフィ法により露光及び現像し、電極配置溝511を形成する箇所をパターニングする。
次に、図6(B)に示すように、電極配置溝511を所望の深さにエッチングする。ここでのエッチングとしては、フッ酸系を用いたウェットエッチングを行う。
【0050】
この後、電極配置溝511形成用のレジストを除去した後、反射膜設置部512を形成するためのレジストを塗布し、反射膜設置面512Aが形成される箇所をパターニングする。
そして、図6(C)に示すように、反射膜設置面512Aが所望高さとなるようにエッチングし、レジストを除去する。これにより、電極配置溝511、及び反射膜設置部512が形成された固定基板51の基板形状が決定される。
【0051】
次に、固定基板51に固定電極561を形成する電極材料を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることで、図6(D)に示すように、固定電極561及び、固定帯電防止電極565を形成する。
また、固定電極561上に絶縁層を成膜する場合、固定電極561の形成後、例えばプラズマCVD等により固定基板51の可動基板52に対向する面全体に、例えば100nm程度の厚みのSiOを成膜する。そして、電極パッド563AP,563BP,565P上のSiOを、例えばドライエッチング等により除去する。
【0052】
次に、図6(E)に示すように、反射膜設置面512A上に固定反射膜54を形成する。ここで、本実施形態では、固定反射膜54として、Ag合金を用いる。固定反射膜54として、Ag合金等の金属膜やAg合金等の合金膜を用いる場合、固定基板51の電極配置溝511や反射膜設置部512が形成された面に、固定反射膜54の膜層を形成した後、フォトリソグラフィ法などによりパターニングする。
なお、固定反射膜54として誘電体多層膜を形成する場合では、例えばリフトオフプロセスにより成膜することができる。この場合、フォトリソグラフィ法などにより、固定基板51上のミラー形成部分以外にレジスト(リフトオフパターン)を形成する。この後、固定反射膜54を形成するための材料(例えば、高屈折層をTiO、低屈折層をSiOとした誘電体多層膜)をスパッタリング法または蒸着法等により成膜する。そして、固定反射膜54を成膜した後、リフトオフにより、不要部分の膜を除去する。
この後、図6(F)に示すように、固定基板51の第一接合部513に、接合膜53を構成するポリオルガノシロキサンを主成分としたプラズマ重合膜531を、例えばプラズマCVD法等により成膜する。このプラズマ重合膜531の成膜工程では、例えば、第一接合部513に対応する位置が開口したマスクを用いて、固定基板51の第一接合部513にプラズマ重合膜531を成膜する。ここで、プラズマ重合膜531の厚みとしては、例えば10nmから1000nmとすればよい。
以上により、固定基板51が製造される。
【0053】
(5−2.可動基板製造工程)
まず、図7(A)に示すように、可動基板52の形成素材である厚み寸法が600μmの石英ガラス基板を用意し、このガラス基板の表面粗さRaが1nm以下となるまで両面を精密研磨する。そして、可動基板52の全面にレジストを塗布し、塗布されたレジストをフォトリソグラフィ法により露光及び現像して、保持部522が形成される箇所をパターニングする。
次に、石英ガラス基板をウェットエッチングすることで、図7(B)に示すように、例えば厚さ30μmの保持部522と、可動部521とを形成する。これにより、可動部521及び保持部522を有する可動基板52の基板形状が決定される。
【0054】
次に、図7(C)に示すように、可動面521Aに沿って可動電極562及び可動帯電防止電極566を形成する。
具体的に、上記固定基板51における固定電極561、可動引出電極564の形成と同様に、可動基板52上に電極材料を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングすることで、可動電極562及び可動引出電極564を形成する。
この後、図7(D)に示すように、可動面521Aに可動反射膜55を形成する。この可動反射膜55の形成は、固定反射膜54と同様の方法により形成することができる。つまり、可動反射膜55として、Ag等の金属膜やAg合金等の合金膜を用いる場合、可動基板52に、可動反射膜55の膜層を形成した後、フォトリソグラフィ法を用いてパターニングする。ここで、上述したように、可動反射膜55の外周部を可動内側帯電防止電極566Aの環内周部に積層させることで、可動反射膜55及び可動内側帯電防止電極566Aの導通がとられる。また、可動反射膜55として誘電体多層膜を形成する場合、例えばリフトオフプロセスにより成膜することができる。この場合、例えば可動反射膜55を金属膜により覆い、当該金属膜の外周部を可動内側帯電防止電極566Aの環内周部に積層させることで、可動反射膜55及び可動内側帯電防止電極566Aの導通がとられる。
この後、図7(E)に示すように、可動基板52の第二接合部523に、ポリオルガノシロキサンを主成分としたプラズマ重合膜532を、例えばプラズマCVD法等により成膜する。ここで、プラズマ重合膜532の厚みとしては、例えば10nmから1000nmとすればよい。
以上により、可動基板52が製造される。
【0055】
(5−3.接合工程)
次に、前述の固定基板製造工程及び可動基板製造工程で形成された各基板を接合する。
この接合工程では、固定基板51の第一接合部513及び可動基板52の第二接合部523に形成されたプラズマ重合膜531,532に活性化エネルギーを付与するために、Oプラズマ処理またはUV処理を行う。Oプラズマ処理の場合は、O流量30cc/分、圧力27Pa、RFパワー200Wの条件で30秒間実施する。また、UV処理の場合は、UV光源としてエキシマUV(波長172nm)を用いて測色センサー3分間処理する。
プラズマ重合膜531,532に活性化エネルギーを付与した後、固定基板51,可動基板52のアライメントを行い、プラズマ重合膜531,532を介して第一接合部513及び第二接合部523を重ね合わせる。この時、固定帯電防止電極パッド565P及び可動帯電防止電極パッド566Pの間に導電性部材58を形成し、接合時に接続されるようにする。なお、導電性部材58は、波長可変干渉フィルター5の形成後に、Agペースト等を基板側面から注入するなどしてもよい。
そして、接合部分に例えば10kgfの荷重を10分間かける。これにより、基板51,52同士が接合される。
【0056】
また、本実施形態の波長可変干渉フィルター5の製造方法では、1つのウエハー内に複数の波長可変干渉フィルター5を配置して、上記のような製造方法を用いることで、これらの複数の波長可変干渉フィルター5を同時に製造する。そして、上記の接合工程の後、ウエハーから各波長可変干渉フィルター5をチップ状態に分割する。この後、固定基板51の可動電極パッド564Pに対向する部分、及び可動基板52の固定内側電極パッド563AP,固定外側電極パッド563BP,固定帯電防止電極パッド565Pに対向する部分を、例えば折るなどして、切欠部514,切欠部524を形成し、実装端子部を露出させる。これにより、チップ単位の波長可変干渉フィルター5が製造される。
【0057】
〔6.実施形態の作用効果〕
本実施形態の波長可変干渉フィルター5では、固定基板51の固定電極561の外周縁に沿って固定帯電防止電極565が設けられ、可動基板52の可動電極562の外周縁に沿って可動帯電防止電極566が設けられる。
このため、固定電極561や、可動電極562に保持された電荷が固定基板51や可動基板52上に移動した場合でも、固定帯電防止電極565や可動帯電防止電極566により逃がすことができ、固定基板51や可動基板52の帯電、固定反射膜54や可動反射膜55の帯電を防止することができる。これにより、基板や反射膜の帯電によるクーロン力を考慮することなく、静電アクチュエーター56による反射膜間ギャップG1の調整を精度よく、かつ容易に実施することができる。
【0058】
また、可動基板52は、可動部521及び保持部522を備えており、可動反射膜55,可動電極562が可動部521の可動面521Aに設けられている。このため、外力により撓み易い保持部522に、固定反射膜54や可動反射膜55の膜応力が作用せず、初期状態(静電アクチュエーター56に電圧を印加していない状態)における可動基板52の撓みや、可動反射膜55の傾斜を防止することができる。
更に、本実施形態では、可動内側帯電防止電極566A及び可動外側帯電防止電極566Bも可動部521の可動面521Aに設けられている。このため、可動内側帯電防止電極566Aや可動外側帯電防止電極566Bの膜応力による保持部522の撓みをも防止することができる。
【0059】
そして、本実施形態では、可動内側帯電防止電極566Aの環内周部に可動反射膜55の外周部が積層されることで、可動内側帯電防止電極566A及び可動反射膜55が電気的に接続される。また、固定内側帯電防止電極565Aの環内周部に固定反射膜54の外周部が積層されることで、固定内側帯電防止電極565A及び固定反射膜54が電気的に接続される。
このため、固定反射膜54や可動反射膜55への帯電をより確実に防止することができ、更に、固定反射膜54や可動反射膜55への浮遊電荷、帯電物質の付着をも抑制することができる。また、固定帯電防止電極565や可動帯電防止電極566は接地されているため、固定反射膜54や可動反射膜55が同電位(0電位)となる。これにより、固定反射膜54及び可動反射膜55における静電引力等のクーロン力の発生をより確実に防止できる。
【0060】
[第二実施形態]
次に、本発明に第二実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、可動内側帯電防止電極566A及び可動外側帯電防止電極566Bは、可動部521の可動面521Aに設けられる構成とした。これに対して、第二実施形態では、可動外側帯電防止電極が保持部の固定基板に対向する面全体に形成される点で上記第一実施形態と相違する。
【0061】
図8は、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aの概略構成を示す断面図である。図9は、第二実施形態の固定基板51を可動基板52側から見た概略構成を示す平面図である。図10は、第二実施形態の可動基板52を固定基板51側から見た概略構成を示す平面図である。なお、以降の説明にあたり、既に説明した構成については、同符号を付し、その説明を省略または簡略する。
本実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、図8及び図9に示すように、固定帯電防止電極565の固定外側帯電防止電極565Bは、固定外側電極561Bの外周縁に沿う位置から、保持部522に対向する面に亘って設けられている。
また、可動帯電防止電極566の可動外側帯電防止電極566Bは、可動外側電極562Bの外周縁に沿う位置から、保持部522の固定基板51に対向する面全体に亘って設けられている。
なお、本実施形態では、図8〜図10に示すように、フィルター平面視において、電極配置溝511の外周縁と保持部522の外周縁とがほぼ一致する構成とし、電極設置面511Aの保持部522に対向する領域内に、固定内側引出電極563Aや固定外側引出電極563Bが配置される構成となっている。これに対して、例えば、フィルター平面視において、電極配置溝511の外周縁が保持部522の外周縁よりも径外側(平面中心点Oから離れる側)に位置するように、電極配置溝511を形成してもよい。この場合、電極設置面511Aのうち、保持部522に対向する領域全面に固定外側帯電防止電極565Bを設け、その外周に固定内側引出電極563Aや固定外側引出電極563Bを配置することができる。このような構成であれば、保持部522へのクーロン力の影響をより確実に防止することができる。
【0062】
[第二実施形態の作用効果]
上記のような第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、保持部522の固定基板51に対向する面全体に亘って可動外側帯電防止電極566Bが設けられている。可動基板52において、可動部521を固定基板51に対して進退させる際、保持部522は、静電アクチュエーター56の静電引力の作用により撓む部分であり、クーロン力の影響を受けやすい部分である。本実施形態では、このような保持部522に可動外側帯電防止電極566Bが設けられることで、保持部522の帯電を防止することができ、クーロン力による保持部522の撓みを効果的に防止することができる。
【0063】
また、可動外側帯電防止電極566Bに対向する位置に固定外側帯電防止電極565Bが設けられており、これらの固定外側帯電防止電極565B及び可動外側帯電防止電極566Bは、接地されているため、0電位に維持されている。このため、固定外側帯電防止電極565B及び可動外側帯電防止電極566B間での静電引力等の発生を防止することができ、より効果的に保持部522の撓みを防止することができる。
【0064】
[第三実施形態]
次に、本発明の第三実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第二実施形態では、保持部522の固定基板51に対向する面全体を覆う可動外側帯電防止電極566Bが形成される構成とした。これに対して、第三実施形態では、可動外側帯電防止電極566Bが複数の開口部を有する点で相違する。
すなわち、第二実施形態の波長可変干渉フィルター5Aでは、保持部522の帯電を効果的に防止することができるが、可動外側帯電防止電極566Bの膜応力により保持部522が撓むことが考えられる。これに対して、第三実施形態では、上記のような複数の開口を設けることで、可動外側帯電防止電極の膜応力による保持部の撓みを抑制する。
【0065】
図11は、第三実施形態の波長可変干渉フィルター5Bの概略構成を示す断面図である。図12は、第三実施形態の可動基板52を固定基板51側から見た概略構成を示す平面図である。なお、本実施形態では、固定基板51は、第二実施形態と同様の構成であるため、図示及びその説明を省略する。
本実施形態の波長可変干渉フィルター5Bでは、図11及び図12に示すように、可動帯電防止電極566の可動外側帯電防止電極566Bは、可動外側電極562Bの外周縁に沿う位置から、保持部522に対向する面全体に亘って設けられている。
ここで、この可動外側帯電防止電極566Bは、複数のC字形状の部分帯電防止電極566B1を有し、これらが平面中心点Oを中心とした同心円上で、均等間隔で配置されることで構成されている。すなわち、部分帯電防止電極566B1間には、保持部522が露出する開口部566B2が形成され、これらの開口部566B2が保持部522の固定基板51に対向する面において、均等に配置される構成となる。
【0066】
[第三実施形態の作用効果]
第三実施形態の波長可変干渉フィルター5Bでは、可動外側帯電防止電極566Bは、保持部522の固定基板51に対向する面に、平面中心点Oを中心とした同心円となる複数の部分帯電防止電極566B1を備え、これらの部分帯電防止電極566B1間に開口部566B2が配置される。このような構成では、保持部522全体を覆う可動外側帯電防止電極566Bが設けられる構成に比べて、可動外側帯電防止電極566Bの膜応力を小さくすることができ、膜応力による保持部522の撓みを抑制することができる。
また、開口部566B2が均等に配置されることで、保持部522の撓みバランスが均一となり、静電アクチュエーター56により静電引力を作用させた際に、保持部522をバランスよく撓ませることができ、固定反射膜54及び可動反射膜55の平行状態を維持することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、複数の開口部566B2が平面中心点Oを中心とした同心円上に均等に配置されて、開口部566B2が保持部522の固定基板51に対向する面で均等に配置される構成としたが、これに限定されない。例えば、可動外側帯電防止電極566Bが網目形状(メッシュ形状)に形成される構成としてもよい。この場合、網目開口部が保持部522の固定基板51に対向する面に均等に配置される構成となる。この場合でも、保持部522の応力バランスを崩すことなく、かつ、可動外側帯電防止電極566Bの膜応力を小さくすることで、保持部522の撓みを防止することができる。
さらに、可動外側帯電防止電極566Bとして、例えば、平面中心点Oを中心として放射状に延びる複数の部分帯電電極を備え、これらの部分帯電電極が平面中心点Oに対して等角度間隔で配置される構成などとしてもよい。
【0068】
[第四実施形態]
次に、本発明の第四実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態では、固定内側帯電防止電極565Aと固定反射膜54とが接続され、可動内側帯電防止電極566Aと可動反射膜55とが接続されることで、固定反射膜54及び可動反射膜55を0電位に維持し、静電引力の発生を防止する構成とした。これに対して、第四実施形態では、固定帯電防止電極565及び可動帯電防止電極566は、それぞれ固定反射膜54及び可動反射膜55に接続されず、固定反射膜54及び可動反射膜55に反射膜間ギャップG1を測定するための固定容量検出電極567及び可動容量検出電極568が接続される点で相違する。
【0069】
図13は、第四実施形態の波長可変干渉フィルター5Cの概略構成を示す断面図である。図14は、第四実施形態の固定基板51を可動基板52側から見た平面図である。図15は、第四実施形態の可動基板52を固定基板51側から見た平面図である。なお、図13は、図14及び図15に示す頂点C1−平面中心点O−頂点C4の位置で、波長可変干渉フィルター5Cを断面した断面図である。
本実施形態の固定基板51には、図14に示すように、電極配置溝511の外周縁から頂点C1,C2,C3,C4に向かって延出する電極引出溝511Bに加え、頂点C1及び頂点C3を結ぶ辺の中点C5方向に向かって延出する電極引出溝511Bが形成されている。
【0070】
また、上記第一実施形態では、固定内側電極561A及び固定外側電極561Bを有する二重電極の固定電極561を例示したが、本実施形態では、電極配置溝511には、単一の固定電極561Cが設けられている。この固定電極561Cは、平面中心点Oを中心としたC字形状に形成され、例えば頂点C2に近接する一部にC字開口部が設けられる。
そして、固定基板51には、固定電極561CのC字開口部分の端部から延出する固定引出電極563Cが設けられている。
固定引出電極563Cは、図14に示すように、固定電極561CのC字開口部分の端部から径外側に延出し、さらに、その延出端部から電極設置面511Aの外周縁に沿って頂点C4に対応した電極引出溝511Bまで延出し、さらに、その延出端部から電極引出溝511Bに沿って頂点C4まで延出する。そして、固定引出電極563Cの延出先端部(固定基板51の頂点C4に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される固定電極パッド563CPを構成する。
【0071】
また、固定基板51には、反射膜設置面512Aに設けられた固定反射膜54に接続される固定容量検出電極567(第一検出電極)が設けられている。
この固定容量検出電極567は、図14に示すように、固定反射膜54の外周縁から固定電極561CのC字開口部分を通り、固定基板51の頂点C2まで延出する。そして、固定容量検出電極567の延出先端部(固定基板51の頂点C2に位置する部分)は、容量検出手段(図示略)に接続される固定容量検出電極パッド567Pを構成する。
【0072】
そして、固定基板51には、固定電極561Cの外周縁、及び固定容量検出電極567の外周縁に沿って、これら固定電極561C及び固定容量検出電極567と非接触となる固定帯電防止電極565が設けられている。
この固定帯電防止電極565は、固定電極561Cの径内側(平面中心点O側)の外周縁に沿う固定内側帯電防止電極565Aと、固定電極561Cの径外側の外周縁に沿う固定外側帯電防止電極565Bと、固定電極561CのC字開口部分に設けられ、固定容量検出電極567の外周縁に沿う固定接続帯電防止電極565Dとを備えている。この固定接続帯電防止電極565Dは、固定内側帯電防止電極565A及び固定外側帯電防止電極565Bを接続している。
また、固定基板51には、固定外側帯電防止電極565Bの外周縁からは、中点C5に向かって延出する固定帯電防止引出電極565Cが設けられ、この固定帯電防止引出電極565Cは、延出先端部において、固定帯電防止電極パッド565Pを構成する。
【0073】
なお、本実施形態では、固定接続帯電防止電極565Dが、電極設置面511Aのうち、可動部521に対向する部分のみに形成される構成を例示したが、例えば、電極設置面511Aのうち、保持部522に対向する部分まで延出して形成される構成としてもよい。また、固定外側帯電防止電極565Bが第二及び第三実施形態のように、保持部522に対向する領域全体に亘って形成される構成としてもよい。
【0074】
可動基板52においても、固定基板51と同様に、可動部521には、単一の可動電極562Cが設けられている。この可動電極562Cは、平面中心点Oを中心としたC字形状に形成され、例えば頂点C1に近接する一部にC字開口部が設けられる。
そして、可動基板52には、可動電極562Cの外周縁から、頂点C3の方向に延出する可動引出電極564Cが設けられている。この可動引出電極564Cは、延出先端部(可動基板52の頂点C3に位置する部分)は、電圧制御部32に接続される可動電極パッド564Pを構成する。
【0075】
また、可動基板52には、可動反射膜55に接続される可動容量検出電極568(第二検出電極)が設けられている。
この可動容量検出電極568は、図15に示すように、可動反射膜55の外周縁から可動電極562CのC字開口部分を通り、可動基板52の頂点C1まで延出する。そして、可動容量検出電極568の延出先端部(可動基板52の頂点C1に位置する部分)は、容量検出手段(図示略)に接続される可動容量検出電極パッド568Pを構成する。
【0076】
そして、可動基板52には、可動電極562Cの外周縁、及び可動容量検出電極568の外周縁に沿って、これら可動電極562C及び可動容量検出電極568と非接触となる可動帯電防止電極566が設けられている。
この可動帯電防止電極566は、可動電極562Cの径内側(平面中心点O側)の外周縁に沿う可動内側帯電防止電極566Aと、可動電極562Cの径外側の外周縁に沿う可動外側帯電防止電極566Bと、可動電極562CのC字開口部分に設けられ、可動容量検出電極568の外周縁に沿う可動接続帯電防止電極566Dとを備えている。この可動接続帯電防止電極566Dは、可動内側帯電防止電極566A及び可動外側帯電防止電極566Bを接続している。
また、可動基板52には、可動外側帯電防止電極566Bの外周縁からは、中点C5に向かって延出する可動帯電防止引出電極566Cが設けられ、この可動帯電防止引出電極566Cは、延出先端部において、可動帯電防止電極パッド566Pを構成する。なお、可動帯電防止電極パッド566Pは、例えばAgペースト等の導電性部材により、固定帯電防止電極パッド565Pに接続される構成としてもよい。
【0077】
なお、本実施形態では、可動接続帯電防止電極566Dが、可動面521Aに形成される例を示したが、固定基板51と同様、保持部522まで延出して形成される構成としてもよい。また、可動外側帯電防止電極566Bが第二及び第三実施形態のように、保持部522に対向する領域全体に亘って形成される構成としてもよい。
【0078】
上述のような本実施形態の波長可変干渉フィルター5Cでは、固定容量検出電極567及び可動容量検出電極568により、反射膜間ギャップG1の寸法を測定することが可能となる。この場合、固定容量検出電極567及び可動容量検出電極568間に微弱な一定電圧を印加して、固定反射膜54及び可動反射膜55に電荷を保持させる。そして、静電アクチュエーター56(固定電極561及び可動電極562)により、反射膜間ギャップG1を変動させた際の固定反射膜54及び可動反射膜55の電荷保持量を計測することで、反射膜間ギャップG1の寸法を算出することが可能となる。
【0079】
[第四実施形態の作用効果]
上述したような第四実施形態では、固定反射膜54に接続された固定容量検出電極567と、可動反射膜55に接続された可動容量検出電極568とにより、反射膜間ギャップG1の寸法を測定することが可能となり、より精度よく反射膜間ギャップG1を所望寸法に調整することができる。
そして、固定基板51には、固定電極561C及び固定容量検出電極567の外周縁に沿って形成される固定帯電防止電極565が設けられ、可動基板52には、可動電極562C及び可動容量検出電極568の外周縁に沿って形成される可動帯電防止電極566が設けられる。これにより、固定電極561Cや固定容量検出電極567から固定基板51に電荷が移動した場合でも、固定帯電防止電極565によりその電荷を逃がすことができる。同様に、可動電極562Cや可動容量検出電極568から可動基板52に電荷が移動した場合でも、可動帯電防止電極566によりその電荷を逃がすことができる。このため、上述した第一から第三実施形態と同様、固定基板51や可動基板52の帯電を防止することができ、静電アクチュエーター56による反射膜間ギャップG1の調整の精度を向上させることができる。
【0080】
[第五実施形態]
次に、本発明の第五実施形態について、図面に基づいて説明する。
上記第一実施形態の測色装置1では、光学モジュールである測色センサー3に対して、波長可変干渉フィルター5が直接設けられる構成とした。この場合、測色センサー3に設けられた所定の配置位置に波長可変干渉フィルター5を設け、固定内側電極パッド563AP,固定外側電極パッド563BP,可動電極パッド564P,固定帯電防止電極パッド565Pに対して配線を実施する。しかしながら、光学モジュールとしては、複雑な構成を有するものもあり、特に小型化の光学モジュールに対して、波長可変干渉フィルター5を直接設けることが困難な場合がある。本実施形態では、そのような光学モジュールに対しても、波長可変干渉フィルター5を容易に設置可能にする光学フィルターデバイスについて、以下に説明する。
図16は、本発明の第五実施形態に係る光学フィルターデバイスの概略構成を示す断面図である。
【0081】
図16に示すように、光学フィルターデバイス600は、波長可変干渉フィルター5を収納する筐体610を備えている。
この筐体610は、底部611と、リッド612と、入射側ガラス窓613(導光部)と、射出側ガラス窓614(導光部)と、を有する。
【0082】
底部611は、例えば単層セラミック基板により構成される。この底部611には、波長可変干渉フィルター5の固定基板51が固定される。また、底部611には、波長可変干渉フィルター5の反射膜54,55に対向する領域に、光入射孔611Aが開口形成されている。この光入射孔611Aは、波長可変干渉フィルター5により分光したい入射光(検査対象光)が入射される窓であり、入射側ガラス窓613が接合されている。なお、底部611及び入射側ガラス窓613の接合としては、例えば、ガラス原料を高温で熔解し、急冷したガラスのかけらであるガラスフリットを用いたガラスフリット接合を用いることができる。
【0083】
また、底部611の上面(筐体610の内部側)には、波長可変干渉フィルター5の各電極パッド563AP,563BP,564P,565Pに対応した数の端子部616が設けられている。また、底部611は、各端子部616が設けられる位置に、貫通孔615が形成されており、各端子部616は、貫通孔615を介して、底部611の下面(筐体610の外部側)に設けられた接続端子617に接続されている。
また、底部611の外周縁には、リッド612に接合される封止部619が設けられている。
【0084】
リッド612は、図16に示すように、底部611の封止部619に接合される封止部620と、封止部620から連続し、底部611から離れる方向に立ち上がる側壁部621と、側壁部621から連続し、波長可変干渉フィルター5の可動基板52側を覆う天面部622とを備えている。このリッド612は、例えばコバール等の合金または金属により形成することができる。
このリッド612は、封止部620と、底部611の封止部619とが、例えばレーザー封止等により接合されることで、底部611に接合されている。また、リッド612の天面部622には、波長可変干渉フィルター5の各反射膜54,55に対向する領域に、光射出孔612Aが開口形成されている。この光射出孔612Aは、波長可変干渉フィルター5により分光されて取り出された光が通過する窓であり、例えばガラスフリット接合等により射出側ガラス窓614が接合されている。
【0085】
このような光学フィルターデバイス600では、筐体610により波長可変干渉フィルター5が保護されているため、外的要因による波長可変干渉フィルター5の破損を防止できる。したがって、測色センサー等の光学モジュールや電子機器に対して、波長可変干渉フィルター5を設置する際や、メンテナンス時において、他の部材との衝突等による破損を防止できる。
また、例えば工場で製造された波長可変干渉フィルター5を、光学モジュールや電子機器を組み立てる組み立てライン等まで運搬する場合に、光学フィルターデバイス600により保護された波長可変干渉フィルター5では、安全に運搬することが可能となる。
また、光学フィルターデバイス600は、筐体610の外周面に露出する接続端子617が設けられているため、光学モジュールや電子機器に対して組み込む際にも容易に配線を実施することが可能となる。
【0086】
[他の実施形態]
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0087】
例えば、上記実施形態では、固定帯電防止電極565及び可動帯電防止電極566は、それぞれ電圧制御部32において接地されることで、0電位に維持される例を示したが、これに限定されない。
つまり、固定帯電防止電極565及び可動帯電防止電極566は、固定電極561や可動電極562、固定容量検出電極567や可動容量検出電極568等の電荷を逃がして固定基板51や可動基板52の帯電を防止できればよく、例えば、上述したように、一定に維持された基準電位に設定されていればよい。ここで、固定帯電防止電極565及び可動帯電防止電極566が互いに対向して設けられているため。それぞれ同じ基準電位に設定されていれば、これらの間で静電引力等のクーロン力が作用することがなく、可動基板52の撓みを防止することができる。
【0088】
また、第一から第三実施形態において、より帯電防止効果を向上させるために、固定内側電極561A及び固定外側電極561Bの間、可動内側電極562A及び可動外側電極562Bの間にも、固定帯電防止電極565や可動帯電防止電極566を配置する構成としてもよい。このような構成では、より効果的に各基板51,52の帯電を防止することができる。また、このような構成とすることで、固定内側電極561A及び固定外側電極561Bの間でのクロストーク、可動内側電極562A及び可動外側電極562Bの間でのクロストークを防止できる。
同様に、第四実施形態では、固定容量検出電極567や可動容量検出電極568の一方の側縁に沿って固定接続帯電防止電極565Dや可動接続帯電防止電極566Dが配置される構成を例示したが、例えば、固定容量検出電極567や可動容量検出電極568の両側縁に沿って、固定接続帯電防止電極565Dや可動接続帯電防止電極566Dが設けられる構成としてもよい。
【0089】
また、上記第一から第四実施形態において、静電アクチュエーターとして機能させる固定電極561、可動電極562や、容量電極として機能させる固定容量検出電極567,可動容量検出電極568の外周縁に沿って固定帯電防止電極565や可動帯電防止電極566を配置する構成を例示したが、これに限らない。例えば波長可変干渉フィルター5の温度変化に応じた撓みを抑制するために、波長可変干渉フィルター5に温度センサーを設ける場合などでは、温度センサーへの配線電極の外周に沿って固定帯電防止電極565や固定容量検出電極567を設ける構成としてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、固定基板51側から入射した光に対して、固定反射膜54,可動反射膜55間で光干渉させ、取り出された光を可動基板52側から射出させる波長可変干渉フィルター5,5A,5B,5Cを例示したが、これに限定されない。
例えば、固定反射膜54,可動反射膜55間での光干渉により取り出された光を、再び固定基板51側に射出させる構成としてもよい。この場合、可動基板52として非透光性部材を用いてもよい。
【0091】
さらに、上記実施形態では、電極間ギャップG2の寸法が、反射膜間ギャップG1の寸法よりも大きくなる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、波長可変干渉フィルター5,5A,5B,5Cにより取り出す光の選択波長域(レンジ)などによっては、反射膜間ギャップG1の寸法が、電極間ギャップG2の寸法より大きい構成としてもよい。例えば、波長可変干渉フィルターにより、波長が長い近赤外以上の光を対象とする場合、反射膜間ギャップG1を電極間ギャップG2よりも大きくすることが考えられる。
【0092】
本発明の電子機器として、測色装置1を例示したが、その他、様々な分野により本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器を用いることができる。
例えば、特定物質の存在を検出するための光ベースのシステムとして用いることができる。このようなシステムとしては、例えば、本発明の波長可変干渉フィルターを用いた分光計測方式を採用して特定ガスを高感度検出する車載用ガス漏れ検出器や、呼気検査用の光音響希ガス検出器などのガス検出装置を例示できる。
このようなガス検出装置の一例を以下に図面に基づいて説明する。
【0093】
図17は、波長可変干渉フィルターを備えたガス検出装置の一例を示す概略図である。
図18は、図17のガス検出装置の制御系の構成を示すブロック図である。
このガス検出装置100は、図17に示すように、センサーチップ110と、吸引口120A、吸引流路120B、排出流路120C、および排出口120Dを備えた流路120と、本体部130と、を備えて構成されている。
本体部130は、流路120を着脱可能な開口を有するセンサー部カバー131、排出手段133、筐体134、光学部135、フィルター136、波長可変干渉フィルター5、および受光素子137(検出部)等を含む検出装置(光学モジュール)と、検出された信号を処理し、検出部を制御する制御部138、電力を供給する電力供給部139等から構成されている。また、光学部135は、光を射出する光源135Aと、光源135Aから入射された光をセンサーチップ110側に反射し、センサーチップ側から入射された光を受光素子137側に透過するビームスプリッター135Bと、レンズ135C,135D,135Eと、により構成されている。なお、波長可変干渉フィルター5を用いる構成を例示するが、上述した波長可変干渉フィルター5A,5B,5Cを用いる構成としてもよい。
また、図18に示すように、ガス検出装置100の表面には、操作パネル140、表示部141、外部とのインターフェイスのための接続部142、電力供給部139が設けられている。電力供給部139が二次電池の場合には、充電のための接続部143を備えてもよい。
さらに、ガス検出装置100の制御部138は、図18に示すように、CPU等により構成された信号処理部144、光源135Aを制御するための光源ドライバー回路145、波長可変干渉フィルター5を制御するための電圧制御部146、受光素子137からの信号を受信する受光回路147、センサーチップ110のコードを読み取り、センサーチップ110の有無を検出するセンサーチップ検出器148からの信号を受信するセンサーチップ検出回路149、および排出手段133を制御する排出ドライバー回路150などを備えている。
【0094】
次に、上記のようなガス検出装置100の動作について、以下に説明する。
本体部130の上部のセンサー部カバー131の内部には、センサーチップ検出器148が設けられており、このセンサーチップ検出器148でセンサーチップ110の有無が検出される。信号処理部144は、センサーチップ検出器148からの検出信号を検出すると、センサーチップ110が装着された状態であると判断し、表示部141へ検出動作を実施可能な旨を表示させる表示信号を出す。
【0095】
そして、例えば利用者により操作パネル140が操作され、操作パネル140から検出処理を開始する旨の指示信号が信号処理部144へ出力されると、まず、信号処理部144は、光源ドライバー回路145に光源作動の信号を出力して光源135Aを作動させる。光源135Aが駆動されると、光源135Aから単一波長で直線偏光の安定したレーザー光を射出される。また、光源135Aには、温度センサーや光量センサーが内蔵されており、その情報が信号処理部144へ出力される。そして、信号処理部144は、光源135Aから入力された温度や光量に基づいて、光源135Aが安定動作していると判断すると、排出ドライバー回路150を制御して排出手段133を作動させる。これにより、検出すべき標的物質(ガス分子)を含んだ気体試料が、吸引口120Aから、吸引流路120B、センサーチップ110内、排出流路120C、排出口120Dへと誘導される。
【0096】
また、センサーチップ110は、金属ナノ構造体が複数組み込まれ、局在表面プラズモン共鳴を利用したセンサーである。このようなセンサーチップ110では、レーザー光により金属ナノ構造体間で増強電場が形成され、この増強電場内にガス分子が入り込むと、分子振動の情報を含んだラマン散乱光、およびレイリー散乱光が発生する。
これらのレイリー散乱光やラマン散乱光は、光学部135を通ってフィルター136に入射し、フィルター136によりレイリー散乱光が分離され、ラマン散乱光が波長可変干渉フィルター5に入射する。そして、信号処理部144は、電圧制御部146を制御し、波長可変干渉フィルター5に印加する電圧を調整し、検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5で分光させる。この後、分光した光が受光素子137で受光されると、受光量に応じた受光信号が受光回路147を介して信号処理部144に出力される。
信号処理部144は、上記のようにして得られた検出対象となるガス分子に対応したラマン散乱光のスペクトルデータと、ROMに格納されているデータとを比較し、目的のガス分子か否かを判定し、物質の特定をする。また、信号処理部144は、表示部141にその結果情報を表示させたり、接続部142から外部へ出力したりする。
【0097】
なお、上記図17及び図18において、ラマン散乱光を波長可変干渉フィルター5により分光して分光されたラマン散乱光からガス検出を行うガス検出装置100を例示したが、ガス検出装置として、ガス固有の吸光度を検出することでガス種別を特定するガス検出装置として用いてもよい。この場合、センサー内部にガスを流入させ、入射光のうちガスにて吸収された光を検出するガスセンサーを本発明の光学モジュールとして用いる。そして、このようなガスセンサーによりセンサー内に流入されたガスを分析、判別するガス検出装置を本発明の電子機器とする。このような構成でも、本発明の波長可変干渉フィルターを用いてガスの成分を検出することができる。
【0098】
また、特定物質の存在を検出するためのシステムとして、上記のようなガスの検出に限られず、近赤外線分光による糖類の非侵襲的測定装置や、食物や生体、鉱物等の情報の非侵襲的測定装置等の、物質成分分析装置を例示できる。
以下に、上記物質成分分析装置の一例として、食物分析装置を説明する。
【0099】
図19は、波長可変干渉フィルター5を利用した電子機器の一例である食物分析装置の概略構成を示す図である。なお、ここでは波長可変干渉フィルター5を用いているが、波長可変干渉フィルター5A,5B,5Cを用いる構成としてもよい。
この食物分析装置200は、図19に示すように、検出器210(光学モジュール)と、制御部220と、表示部230と、を備えている。検出器210は、光を射出する光源211と、測定対象物からの光が導入される撮像レンズ212と、撮像レンズ212から導入された光を分光する波長可変干渉フィルター5と、分光された光を検出する撮像部213(検出部)と、を備えている。
また、制御部220は、光源211の点灯及び消灯制御、点灯時の明るさ制御を実施する光源制御部221と、波長可変干渉フィルター5を制御する電圧制御部222と、撮像部213を制御し、撮像部213で撮像された分光画像を取得する検出制御部223と、信号処理部224と、記憶部225と、を備えている。
【0100】
この食物分析装置200は、システムを駆動させると、光源制御部221により光源211が制御されて、光源211から測定対象物に光が照射される。そして、測定対象物で反射された光は、撮像レンズ212を通って波長可変干渉フィルター5に入射する。波長可変干渉フィルター5は電圧制御部222の制御により所望の波長を分光可能な電圧が印加されており、分光された光が、例えばCCDカメラ等により構成される撮像部213で撮像される。また、撮像された光は分光画像として、記憶部225に蓄積される。また、信号処理部224は、電圧制御部222を制御して波長可変干渉フィルター5に印加する電圧値を変化させ、各波長に対する分光画像を取得する。
【0101】
そして、信号処理部224は、記憶部225に蓄積された各画像における各画素のデータを演算処理し、各画素におけるスペクトルを求める。また、記憶部225には、例えばスペクトルに対する食物の成分に関する情報が記憶されており、信号処理部224は、求めたスペクトルのデータを、記憶部225に記憶された食物に関する情報を基に分析し、検出対象に含まれる食物成分、およびその含有量を求める。また、得られた食物成分および含有量から、食物カロリーや鮮度等をも算出することができる。さらに、画像内のスペクトル分布を分析することで、検査対象の食物の中で鮮度が低下している部分の抽出等をも実施することができ、さらには、食物内に含まれる異物等の検出をも実施することができる。
そして、信号処理部224は、上述のようにした得られた検査対象の食物の成分や含有量、カロリーや鮮度等の情報を表示部230に表示させる処理をする。
【0102】
また、図19において、食物分析装置200の例を示すが、略同様の構成により、上述したようなその他の情報の非侵襲的測定装置としても利用することができる。例えば、血液等の体液成分の測定、分析等、生体成分を分析する生体分析装置として用いることができる。このような生体分析装置としては、例えば血液等の体液成分を測定する装置として、エチルアルコールを検知する装置とすれば、運転者の飲酒状態を検出する酒気帯び運転防止装置として用いることができる。また、このような生体分析装置を備えた電子内視鏡システムとしても用いることができる。
さらには、鉱物の成分分析を実施する鉱物分析装置としても用いることができる。
【0103】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、電子機器としては、以下のような装置に適用することができる。
例えば、各波長の光の強度を経時的に変化させることで、各波長の光でデータを伝送させることも可能であり、この場合、光学モジュールに設けられた波長可変干渉フィルターにより特定波長の光を分光し、受光部で受光させることで、特定波長の光により伝送されるデータを抽出することができ、このようなデータ抽出用光学モジュールを備えた電子機器により、各波長の光のデータを処理することで、光通信を実施することもできる。
【0104】
また、電子機器としては、本発明の波長可変干渉フィルターにより光を分光することで、分光画像を撮像する分光カメラ、分光分析機などにも適用できる。このような分光カメラの一例として、波長可変干渉フィルターを内蔵した赤外線カメラが挙げられる。
図20は、分光カメラの概略構成を示す模式図である。分光カメラ300は、図20に示すように、カメラ本体310と、撮像レンズユニット320と、撮像部330(検出部)とを備えている。
カメラ本体310は、利用者により把持、操作される部分である。
撮像レンズユニット320は、カメラ本体310に設けられ、入射した画像光を撮像部330に導光する。また、この撮像レンズユニット320は、図20に示すように、対物レンズ321、結像レンズ322、及びこれらのレンズ間に設けられた波長可変干渉フィルター5を備えて構成されている。
撮像部330は、受光素子により構成され、撮像レンズユニット320により導光された画像光を撮像する。
このような分光カメラ300では、波長可変干渉フィルター5により撮像対象となる波長の光を透過させることで、所望波長の光の分光画像を撮像することができる。
【0105】
さらには、本発明の波長可変干渉フィルターをバンドパスフィルターとして用いてもよく、例えば、発光素子が射出する所定波長域の光のうち、所定の波長を中心とした狭帯域の光のみを波長可変干渉フィルターで分光して透過させる光学式レーザー装置としても用いることができる。
また、本発明の波長可変干渉フィルターを生体認証装置として用いてもよく、例えば、近赤外領域や可視領域の光を用いた、血管や指紋、網膜、虹彩などの認証装置にも適用できる。
【0106】
さらには、光学モジュールおよび電子機器を、濃度検出装置として用いることができる。この場合、波長可変干渉フィルターにより、物質から射出された赤外エネルギー(赤外光)を分光して分析し、サンプル中の被検体濃度を測定する。
【0107】
上記に示すように、本発明の波長可変干渉フィルター、光学モジュール、および電子機器は、入射光から所定の光を分光するいかなる装置にも適用することができる。そして、本発明の波長可変干渉フィルターは、上述のように、1デバイスで複数の波長を分光させることができるため、複数の波長のスペクトルの測定、複数の成分に対する検出を精度よく実施することができる。したがって、複数デバイスにより所望の波長を取り出す従来の装置に比べて、光学モジュールや電子機器の小型化を促進でき、例えば、携帯用や車載用の光学デバイスとして好適に用いることができる。
【0108】
その他、本発明の実施の際の具体的な構造は、本発明の目的を達成できる範囲で他の構造などに適宜変更できる。
【符号の説明】
【0109】
1…測色装置(電子機器)、3…測色センサー(光学モジュール)、5,5A,5B,5C…波長可変干渉フィルター、31…検出部、51…固定基板(第一基板)、52…可動基板(第二基板)、54…固定反射膜(第一反射膜)、55…可動反射膜(第二反射膜)、100…ガス検出装置(電子機器)、200…食物分析装置(電子機器)、300…分光カメラ(電子機器)、521…可動部、522…保持部、561…固定電極(第一電極)、562…可動電極(第二電極)、565…固定帯電防止電極(第三電極)、566…可動帯電防止電極(第四電極)、566B2…開口部、567…固定容量検出電極(第一検出電極)、568…可動容量検出電極(第二検出電極)、600…光学フィルターデバイス、610…筐体、G1…反射膜間ギャップ、G2…電極間ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基板と、
前記第一基板に対向する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極と、
前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、
前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極と、
前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極と、
を具備したことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項2】
請求項1に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第二基板は、可動部、及び前記可動部よりも厚み寸法が小さく、前記可動部を前記第一基板に対して進退可能に保持する保持部を備え、
前記第二反射膜及び前記第二電極は、前記可動部に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項3】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第四電極は、前記可動部に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項4】
請求項2に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第四電極は、前記保持部の前記第一基板に対向する面全体に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項5】
請求項4に記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第四電極は、前記第二基板を基板厚み方向から見た平面視において、前記保持部が露出する開口部を複数有し、これらの開口部が前記保持部の前記第一基板に対向する面全体において均等に配置されている
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第三電極は、前記第一反射膜に接続され、
前記第四電極は、前記第二反射膜に接続された
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記第一反射膜に接続された第一検出電極と、
前記第二反射膜に接続された第二検出電極と、を備え、
前記第三電極は、前記第一検出電極の外周縁に沿って、かつ前記第一検出電極と非接触に設けられ、
前記第四電極は、前記第二検出電極の外周縁に沿って、かつ前記第二検出電極と非接触に設けられた
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載の波長可変干渉フィルターにおいて、
前記反射膜間ギャップの寸法は、前記第一電極及び前記第二電極の間に電圧を印加することにより変更される
ことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項9】
基板と、
前記基板に設けられた反射部と、
前記基板に設けられた電極と、
前記電極の外周縁に沿い、かつ前記電極と非接触に設けられ、接地された接地電極と、
を具備したことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項10】
第一基板と、
前記第一基板に対向する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極と、
前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、
前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、基準電位に固定された第三電極と、
前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、前記基準電位に固定された第四電極と、
を具備したことを特徴とする波長可変干渉フィルター。
【請求項11】
第一基板、前記第一基板に対向する第二基板、前記第一基板に設けられた第一反射膜、前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜、前記第一基板に設けられた第一電極、前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極、前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極、及び、前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極を備えた波長可変干渉フィルターと、
前記波長可変干渉フィルターを収納する筐体と、を備えた
ことを特徴とする光学フィルターデバイス。
【請求項12】
第一基板と、
前記第一基板に対向する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極と、
前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、
前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極と、
前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極と、
前記第一反射膜及び前記第二反射膜により取り出された光を検出する検出部と、
を備えたことを特徴とする光学モジュール。
【請求項13】
第一基板と、
前記第一基板に対向する第二基板と、
前記第一基板に設けられた第一反射膜と、
前記第二基板に設けられ、前記第一反射膜と反射膜間ギャップを介して対向する第二反射膜と、
前記第一基板に設けられた第一電極と、
前記第二基板に設けられ、前記第一電極と電極間ギャップを介して対向する第二電極と、
前記第一電極の外周縁に沿い、かつ前記第一電極と非接触に設けられ、接地された第三電極と、
前記第二電極の外周縁に沿い、かつ前記第二電極と非接触に設けられ、接地された第四電極と、
を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−76779(P2013−76779A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215598(P2011−215598)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】