説明

波長変換素子および波長変換装置

【課題】不等間隔に配置された複数入力光波長を変換することができ、かつ変換効率の低下の小さな波長変換素子を提供する。
【解決手段】波長変換素子の非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する。さらに、非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換素子および波長変換装置に関し、より詳細には、不等間隔に配置された複数の入力光の波長を変換することができる波長変換素子および波長変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、可視光領域から中赤外光領域まで様々な波長領域において、光を出力することができる半導体レーザが研究開発されている。しかしながら、例えば波長500〜600nmの可視光領域、または波長2〜5μmの近赤外から中赤外の波長領域では、室温で簡易に使用できる光源が実現されていないのが現状である。そこで、このような光源から直接光を発生することが困難な波長領域においては、非線形光学効果を用いた波長変換を利用した光源が用いられている。
【0003】
様々な形態の波長変換素子が知られているが、実用的な観点から、非線形光学定数を周期的に変調した擬似位相整合を用いる導波路型の波長変換素子が最も有望である。周期的な変調構造を形成するには、非線形定数の符号を交互に反転するか、非線形光学定数が大きい部分と小さい部分をほぼ交互に配置する方法が考えられる。LiNbOなどの強誘電体結晶では、非線形定数(d定数)の正負は自発分極の極性に対応するので、自発分極を反転することにより非線形定数の符号を反転することができる。
【0004】
図1に、従来の波長変換素子を用いた光源の構成を示す。波長変換素子は、周期的に分極反転されたLiNbO基板11に形成された光導波路12からなる。2つの半導体レーザから、波長λの信号光と波長λの励起光とを合波器13で合波し、光導波路12に入射する。非線形光学効果による差周波発生により、光導波路12から波長をλの変換光が出力される。ここでは、差周波発生を利用しているが、和周波発生または第二高調波発生を用いて、短波長の変換光を得る光源を構成することもできる。
【0005】
差周波発生の場合には、信号光(第1の入射光)の波長λ、変換光(アイドラ光)の波長λ、励起光(第2の入射光)の波長λとすると、3つの波長の間には以下の関係がある。
1/λ=1/λ+1/λ (1)
【0006】
例えば、2つの入射光を1.55μmと1.06μmとすれば、変換光として3.35μmを発生させることができ、2つの入射光を1.55μmと0.94μmとすれば、変換光として2.39μmを発生させることができる。なお、和周波発生の場合は、信号光(第1の入射光)の波長λ、励起光(第2の入射光)の波長λ、変換光(アイドラ光)の波長λとして式(1)を適用し、第二高調波発生の場合は、入射光の波長λ(=λ)、変換光(アイドラ光)の波長λとして式(1)を適用する。
【0007】
非線形光学材料の信号光波長λにおける屈折率をn、変換光波長λにおける屈折率をn、励起光波長λにおける屈折率をn、非線形定数の変調周期をΛとすると、位相不整合量Δβは、
Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ) (2)
となる。波長変換素子の導波路の長さLとすると、変換効率ηは、
【0008】
【数1】

【0009】
となる。式(3)より変換効率ηは、位相不整合量Δβが2π/Λの時最大となる。
【0010】
例えば、励起光波長λを固定すると、位相不整合量Δβ=2π/Λとなる擬似位相整合条件を満たす信号光波長は、非線形光学材料の屈折率の波長分散に依存し、変調周期Λを決定すると実質的に一意に決定される。励起波長λを、擬似位相整合条件を満たす波長(擬似位相整合波長)から変化させると、式(2)および(3)に従って変換効率が減少してしまう。
【0011】
図2に、位相不整合量に対する変換効率の変化を示す。図2は、変換効率ηの最大値を1として規格化してある。変換効率ηが最大値の半分となる位相不整合量の帯域は、波長変換素子として長さ50mmのLiNbO基板を用いた場合、3.35μm帯の変換波長に換算すると、約9.3nm程度と狭い。信号光波長λを任意の波長λ2’へと変換するためには、式(1)から明らかなように、複数の異なる励起光波長を用いる必要がある。しかし、一定周期の非線形光学定数の変調構造では、信号光波長に対する許容範囲が狭いために、信号光波長を大幅に変化させることができない。例えば、種々のガスの吸収を測定してガスのセンシング行うガス測定装置に応用する場合、複数のガスの吸収を測定するためには、いくつかの波長領域において波長掃引を行えることが望ましい。しかしながら、従来の波長変換素子を用いた光源では、このような応用に用いることができない。
【0012】
一方、変換光と信号光との間、変換光と励起光との間で群速度整合の条件がとれている場合には、波長の変化に伴う伝播定数の変化が相殺され、式(2)の位相不整合量の変化が緩やかになるため、広い波長域に渡って位相整合がとれることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。しかしながらこの方法は、使用する非線形光学材料の分散に依存するため、ある特殊な波長の組み合わせにおいてしか利用することができない。また、擬似位相整合型の波長変換素子において非線形光学定数の変調周期をチャープさせる方法が知られている(例えば、非特許文献2参照)。この方法は、任意の波長帯域で広帯域な波長変換素子を実現することができるが、変換効率が帯域に反比例して低減する。このため、広範囲に高出力を得ようとする場合には、励起光または信号光の強度を大きくする必要があり、光ファイバ増幅器などを補助的に付加することが必要となる。
【0013】
【特許文献1】特開2004−20870号公報
【特許文献2】特開2004−233534号公報
【非特許文献1】T.Yanagawa, et al., Applied Physics Letters, Vol.86, p.161106, 2005
【非特許文献2】T.Suhara, et al., IEEE J. of Quantum Electronics, Vol.26, p.1265, 1990
【非特許文献3】Y.Nishida, et al., Electronics Letters Vol.39, p.609, 2003
【非特許文献4】H.Ishii, Optical Fiber Communication Conference 2005 Technical Digest., Vol.2, p.91, 2005
【非特許文献5】M.Notomi, IEEE Photonics Technology Letters, Vol.2, p.85, 1990
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
連続的な波長波長掃引が必ずしも必要ではない場合には、広い波長域に渡って位相整合をとる必要は無く、複数の励起光波長に対応する複数の位相整合ピークを得ることができればよい。そこで、非線形光学定数の周期Λの変調構造に、異なる周期Λphの連続的な位相変調または周期変調を付加した構造とすることが知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、周期的な位相不整合量において変換効率が極大となるように、位相変調または周期変調を最適化することが知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、位相不整合量Δβ=2π/Λである波長を中心にして、位相不整合量にして2π/Λphだけ離れた波長に周期的に複数のピークを有する。連続的に位相整合曲線を広帯域化する手法に較べて、それぞれのピークにおける変換効率を大きくすることができる。
【0015】
しかしながら、上述したガス測定装置に応用する場合、測定対象出力として必要な波長が等間隔に並んでいるとは限らない。全ての測定対象の波長にピークを有するように最適化を行っても、測定に不必要なピークを生じてしまい、結果として必要な波長を発生するのに必要な位相整合ピークにおける変換効率を小さくしてしまう。従って、波長従来の位相変調または周期変調を付加するだけでは、等間隔ではない複数の波長を効率的に波長変換することができないという問題があった。
【0016】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、不等間隔に配置された複数入力光波長を変換することができ、かつ変換効率の低下の小さな波長変換素子および出力波長可変の波長変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)または2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子において、前記非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有することを特徴とする。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造は、前記非線形光学媒質の周期Λごとの変調曲線を変化させ、光の進行方向の位置zにおける非線形光学定数の空間変化d(z)を計算し、前記空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率η(i)を求め、所望の変換効率η(i)を用いて以下に与える評価関数Tを計算し、
【0019】
【数2】

【0020】
前記評価関数Tの値が最小となるように構成されていることを特徴とする。
【0021】
前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に周期が変化し、異なる周期Λの連続的な周期変調が付加された変調構造であってもよい。
【0022】
また、前記非線形光学媒質は、LiNbO、KNbO、LiTaO、LiNb(x)Ta(1−x)(0≦x≦1)、Li(x)(1−x)Ta(y)Nb(1−y)、KTiOPOのいずれかであり、またはこれらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有していることを特徴とする。
【0023】
請求項6に記載の発明は、波長を可変することができ、波長λ1の信号光を出力する信号光光源と、波長λまたはλの励起光を出力する励起光光源と、前記信号光と前記励起光とを合波する合波器と、前記合波器に接続され、1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子とを備え、前記非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有することを特徴とする。
【0024】
なお、1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λの変換光を出力する波長変換装置とすることもできる。また、前記信号光光源は、複数のDFB−LDと、前記DFB−LDの各々の出力光を結合する光カプラと、前記光カプラの出力に接続された半導体光増幅器とを含むこともできる。
【0025】
請求項9に記載の発明は、1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)または2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子の作製方法において、前記非線形光学媒質の周期Λごとの位相変調曲線を変化させる工程と、光の進行方向の位置zにおける非線形光学定数の空間変化d(z)を計算する工程と、前記空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率η(i)を求め、所望の変換効率η(i)を用いて以下に与える評価関数Tを計算する工程と、
【0026】
【数3】

【0027】
前記評価関数Tの値が最小となるように、前記位相変調曲線を変化させる工程とを備えたことを特徴とする。
【0028】
前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に周期が変化し、異なる周期Λの連続的な周期変調が付加された変調構造であってもよい。
【発明の効果】
【0029】
以上説明したように、本発明によれば、非線形媒質は、変換効率がピークとなる複数の位相不整合量Δβのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有するので、不等間隔に配置された複数入力光波長を変換することができ、かつ変換効率の低下を抑えることが可能となる。
【0030】
また、本発明によれば、光源として、光増幅器を用いなくとも実用的な出力を得ることができ、さらに、比較的安価な通信波長帯の波長可変光源を用いることができるので、高性能で安価な波長変換装置を提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、非線形光学定数の周期Λの変調構造に、異なる周期Λphの連続的な位相変調または周期変調を付加した構造とすることに加えて、変調曲線を評価関数Tが最小となるように設定することにより不等間隔な複数の位相整合ピークが得られ、かつ高効率な波長変換素子が実現可能であることを見出した。
【0032】
以下、位相変調の場合を例として、位相変調曲線の設定方法について説明する。非線形光学媒質に形成された光導波路における光の伝播方向上の位置zにおける非線形定数をd(z)とする。非線形光学媒質がz=0からz=Lまで存在しているとすると、非線形光学媒質を、励起光と信号光が伝播した後(z=L)の変換効率は、位相不整合量Δβに対して次式で与えられる。
【0033】
【数4】

【0034】
この式から非線形光学定数の空間的な変化d(z)を与え、フーリエ変換を行うことで位相不整合量Δβに対する変換効率の変化を計算することができる。
【0035】
図3に、従来の波長変換素子の周期的な変調構造を示す。非線形光学媒質として強誘電体結晶材料であるLiNbOを用いて、分極を反転することにより非線形定数の符号を反転する。図3(a)は、変調構造の一部を示し、非線形光学定数の長さ方向の変化を示す。一定の周期Λで非線形定数を反転するが、周期ごとに始まる位相を変化させている。図3(b)に、図3(a)の各周期ごとの位相変化を示す。このような位相変調を加えた周期変調構造は、図3(c)に示すように、周期Λの変調構造に、異なる周期Λphの連続的な位相変調を付加した構造である。
【0036】
図4に、従来の波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す。変換効率は、位相変調がない同じ長さの非線形光学媒質を用いた場合の効率を1として規格化して示す。例えば、図4(a)の位相変調曲線のとき、図4(b)に示す位相整合曲線となる。図4(c)の位相変調曲線のとき、図4(d)に示す位相整合曲線となる。すなわち、2π/Λを中心に2π/Λphごとに離れた位相整合量Δβ(=2π/Λ,2π/Λ±2π/Λph,2π/Λ±4π/Λph,・・・)において、変換効率のピークを持つようになる。従来技術においてはこのような周期的な変調を施しているため、図4に見られるように周期的に変換効率がピークとなる位相不整合量Δβが現れる。説明の便宜上、位相不整合量Δβが2π/Λ+2πi/Λph(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)のとき得られる変換効率のピークを、i次のピークと定義する。
【0037】
次に、−1次、0次、3次の不等間隔でピークを最大にする場合を例にとって説明する。最初に、非線形光学媒質の周期変調構造ごとに位相変調曲線を変化させて、非線形光学定数の空間変化d(z)を計算する。空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率を求め、所望の各ピークにおける変換効率を用いて、以下に与える評価関数Tを計算する。最後に、評価関数Tの値が最小になるように逐次計算を行って最適化する。
【0038】
【数5】

【0039】
ここでη(j)はj番目のピークにおける効率、η(j)はj番目のピークにおける目標効率であり、ここでは、目標効率を以下のように設定した。
η(−4)=0
η(−3)=0
η(−2)=0
η(−1)=ηnorm/3
η(0)=ηnorm/3
η(1)=0
η(2)=0
η(3)=ηnorm/3
η(4)=0
ηnormは、長さが同じで位相変調をもたない場合の波長変換素子の効率である。
【0040】
図5に、本実施形態にかかる波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す。変換効率は、位相変調がない同じ長さの非線形光学媒質を用いた場合の効率を1として規格化して示す。例えば、図5(a)の位相変調曲線のとき、図5(b)に示す位相整合曲線となる。周期的で連続的な位相変調を用いているにも関わらず、不必要な位相整合ピークの効率を抑えることにより、不等間隔に配置したピークの効率のみを大きくすることができる。ここでは、位相変調を施した場合を例にとり説明したが、非線形光学定数の変調周期に加えて、異なる周期の連続的な周期変調を施した場合であっても、同様の最適化を行うことにより、不等間隔に配置したピークの効率のみを大きくすることができる。
【0041】
なお、非線形光学媒質として、LiNbOに限らず、KNbO、LiTaO、LiNb(x)Ta(1−x)(0≦x≦1)、Li(x)(1−x)Ta(y)Nb(1−y)、KTiOPOのいずれかを用いることができ、また、これら化合物にMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物としてもよい。
【実施例1】
【0042】
実施例1では、信号光として1.55μm帯、励起光として1.07μmの波長を用いて、差周波発生により3.4μm帯の変換光を得る。波長変換素子の作製方法は、例えば、非特許文献3に開示されたウエハ接合法により作製する。
【0043】
最初に、LiNbO基板のZ面にレジストを塗布し、フォトリソグラフィ技術を用いて変調構造をパターン化する。基板のレジストを塗布した面に電極を蒸着し、基板の両面に電界液を接触させる。電界液を介して基板の両面に電界を印加すると、レジストのない部分は、電極がLiNbO基板に直接触れており、この部分の分極が反転する。
【0044】
このとき分極反転するドメインの幅は電極の幅より若干広くなるので、その広がりを考慮してフォトリソグラフィに用いるマスクを設計しておく必要がある。このようにして、光導波路のコアとなるLiNbO基板に、周期的な分極反転構造を形成する。次に、ウエハ接合法により、LiTaO基板と、分極反転構造が形成されたLiNbO基板とを貼り合わせ、LiNbO基板を所定の厚さに研磨する。最後に、LiNbO基板をダイシングして、光導波路を作製する。波長変換素子の長さLは48mmである。
【0045】
周期的な分極反転構造と位相整合特性の詳細を説明する。実施例1では、分極反転構造は、基本周期Λ=28.5μmの変調構造とし、周期Λph=12.11mmで連続的な位相変調を付加した。付加された位相変調の1周期あたりに配置される分極反転構造の周期は425周期となる。式(5)に示した評価関数Tにおいて、−3次、0次、+1次のピークにおける目標効率をηnorm/3とし、その他のピークにおける目標効率を0に設定する。評価関数Tの値が最小になるように逐次計算を行って、位相変調を最適化することにより、−3次、0次、+1次のピークにおいて最大の変換効率が得られる。
【0046】
図6(a)に、実施例1にかかる波長変換素子の位相変調曲線を示す。励起光の波長を1.07μmに固定し、1.55μm帯の波長可変光源から信号光を入射する。図6(b)に、信号光波長を掃引することによって得られる差周波発生の変換効率の波長依存性を示す。横軸は信号光の波長を示す。実施例1では、波長1565.5,1572.0,1590.5nmの不等間隔において、それぞれ3つのピークを得ることができる。波長1572.0nmに得られるピークは、位相変調を行わない場合に得られる0次のピークに相当し、1565.5nmに得られるピークは、位相変調によって得られる+1次のピーク、1590.5nmに得られるピークは、位相変調によって得られる−3次のピークに相当する。
【0047】
実施例1では、差周波発生によりそれぞれ3380.6nm(2958cm−1),3350.7nm(2984.5cm−1),3269.6nm(3058.5cm−1)を発生することができる。これらの波長において吸収を有する複数ガスを検出するのに有効である。それぞれのピークの信号光の波長帯域は2nm程度である。これは、それぞれのピークにおいて信号光波長を微調することにより、変換光を8.3cm−1程度波長掃引できることに相当する。
【0048】
実施例1に用いた波長変換素子の3つのピークにおける変換効率は約20%/Wである。信号光として10mW、励起光として40mWを素子に入力すると、80μWの出力が得られる。ガス測定装置の光源に応用する場合、光増幅器を用いなくともガスの検出に十分な出力を得ることができる。
【実施例2】
【0049】
実施例1では周期的な分極反転構造に位相変調を付加して、不等間隔な複数の信号光波長により差周波発生を可能にした。実施例2では、周期的な分極反転構造に周期変調を付加する。信号光として1.55μm帯、励起光として1.07μmの波長を用いて、差周波発生により3.4μm帯の変換光を得る点は、実施例1と同じである。波長変換素子の作製方法も、実施例1と同じである。
【0050】
実施例2では、分極反転構造は、基本周期Λ=28.5μmの変調構造とし、周期Λ=12.11mmで連続的な周期変調を付加した。付加された周期変調の1周期あたりに配置される分極反転構造の周期は425周期となる。式(5)に示した評価関数Tにおいて、−3次、0次、+1次のピークにおける目標効率をηnorm/3とし、その他のピークにおける目標効率を0に設定する。評価関数Tの値が最小になるように逐次計算を行って、周期変調を最適化することにより、−3次、0次、+1次のピークにおいて最大の変換効率が得られる。
【0051】
図7(a)に、実施例2にかかる波長変換素子の周期変調曲線を示す。励起光の波長を1.07μmに固定し、1.55μm帯の波長可変光源から信号光を入射する。図7(b)に、実施例2にかかる波長変換素子の位相整合曲線を示す。実施例2においても、波長1565.5,1572.0,1590.5nmの不等間隔において、それぞれ3つのピークを得ることができる。変換効率は、長さL=48mm、基本周期Λ=28.5μmの変調構造を有する波長変換素子の効率を1として規格化して示してある。従って、周期変調を付加しない波長変換素子と比較した場合、実施例2の波長変換素子の変換効率は約30%である。
【0052】
実施例2では、周期変調を用いて実施例1と同様の出力を得ることができ、複数ガスを検出するのに有効である。実施例1に用いた波長変換素子の3つのピークにおける変換効率は約20%/Wである。信号光として10mW、励起光として40mWを素子に入力すると、80μWの出力が得られる。ガス測定装置の光源に応用する場合、光増幅器を用いなくともガスの検出に十分な出力を得ることができる。
【実施例3】
【0053】
実施例1,2では、周期的な分極反転構造に位相変調または周期変調を付加して、−3次、0次、+1次の位相整合ピークを得た。実施例3では、周期的な分極反転構造に位相変調を付加して、実施例1,2とは異なる次数のピークを得る。実施例3でも、信号光として1.55μm帯、励起光として1.07μmの波長を用いて、差周波発生により3.4μm帯の変換光を得る。波長変換素子の作製方法も、実施例1と同じである。
【0054】
実施例3では、分極反転構造は、基本周期Λ=28.5μmの変調構造とし、周期Λph=12.11mmで連続的な位相変調を付加した。位相変調の1周期あたりに配置される分極反転構造の周期は425周期となる。式(5)に示した評価関数Tにおいて、−2次、0次、+3次のピークにおける目標効率をηnorm/3とし、その他のピークにおける目標効率を0に設定する。評価関数Tの値が最小になるように逐次計算を行って、位相変調を最適化することにより、−2次、0次、+3次のピークにおいて最大の変換効率が得られる。
【0055】
図8(a)に、実施例3にかかる波長変換素子の位相変調曲線を示す。励起光の波長を1.07μmに固定し、1.55μm帯の波長可変光源から信号光を入射する。図8(b)に、実施例3にかかる波長変換素子の位相整合曲線を示す。実施例3においては、1552.5,1572.0,1584.3nmの不等間隔において、それぞれ3つのピークを得ることができる。変換効率は、長さL=48mm、基本周期Λ=28.5μmの変調構造を有する波長変換素子の効率を1として規格化して示す。従って、周期変調を付加しない波長変換素子と比較した場合、実施例2の波長変換素子の変換効率は約27%である。
【0056】
実施例3では、位相変調を用いて実施例1と同様の出力を得ることができ、複数ガスを検出するのに有効である。実施例1に用いた波長変換素子の3つのピークにおける変換効率は約18%/Wである。信号光として10mW、励起光として40mWを素子に入力すると、72μWの出力が得られる。ガス測定装置の光源に応用する場合、光増幅器を用いなくともガスの検出に十分な出力を得ることができる。このようにして、位相変調または周期変調の関数を所望のピークが得られるように最適化することにより、位相整合ピークを不等間隔で、様々な波長に設定することができる。
【実施例4】
【0057】
図9に、実施例4にかかる波長変換装置の構成を示す。波長変換素子20は、周期的に分極反転されたLiNbO基板21に形成された光導波路22からなる。合波器23は、励起光光源24からの励起光と信号光光源25からの信号光とを合波し、光導波路22に入射する。励起光光源24は1.07μmの励起光を出力し、信号光光源25は1.55μm帯の信号光を出力し、非線形光学効果による差周波発生により、波長変換装置は、複数の3.4μm帯の変換光を出力することができる。
【0058】
信号光光源25は、1.55μm帯の波長可変光源であり、TLA(Tunable Laser Array)を用いる(例えば、非特許文献4参照)。信号光光源25は、複数のDFB−LD(Distributed Feedback-Laser Diode)31と、DFB−LD31の各々の出力光を結合する光カプラ32と、光カプラ32の出力に接続された半導体光増幅器(SOA)33を備えている。信号光光源25は、光半導体集積回路であり、DFB−LD31を選択することにより出力波長を高速に切り替えることができる。
【0059】
波長変換素子20の作製方法は、実施例1と同じである。実施例4では、分極反転構造は、基本周期Λ=28.5μmの変調構造とし、周期Λph=12.11mmで連続的な位相変調を付加した。付加された周期変調の1周期あたりに配置される分極反転構造の周期は425周期となる。式(5)に示した評価関数Tにおいて、−3次、0次、+1次のピークにおける目標効率をそれぞれηnorm/4、ηnorm/4、ηnorm/2とし、その他のピークにおける目標効率を0に設定する。評価関数Tの値が最小になるように逐次計算を行って、位相変調を最適化することにより、+1次のピークが、−3次、0次のピークよりも大きな変換効率が得られる。
【0060】
図10(a)に、実施例4にかかる波長変換素子の位相変調曲線を示す。励起光の波長を1.07μmに固定し、1.55μm帯の波長可変光源から信号光を入射する。図10(b)に、実施例4にかかる波長変換素子の位相整合曲線を示す。実施例4では、1565.5,1572.0,1590.5nmの不等間隔において、それぞれ3つのピークを得ることができる。−3次、0次、+1次のピークの変換効率の比率は、全体の総和を100%としたとき、それぞれ25%、25%、50%となる。変換効率は、長さL=48mm、基本周期Λ=28.5μmの変調構造を有する波長変換素子の効率を1として規格化して示す。
【0061】
変換効率は、−3次、0次、+1次のピークにおいてそれぞれ13%/W、14%/W、28%/Wである。信号光としてTLAから得られる10mW、励起光として40mWを素子に入力すると、変換光波長3269.6nm(3058.5cm−1)、3350.7nm(2984.5cm−1)、3380.6nm(2958cm−1)に対して、それぞれ56μW、56μW、112μWの出力が得られる。
【0062】
また、実施例4では、信号光の波長を高速に切り替えることにより、それぞれの波長において特徴的な吸収を有する複数のガスを、時系列的にほぼ同時に検出することができる。具体的には、メタン、エタン、エチレンなどの炭化水素ガスに特徴的な吸収線を同時に測定することができる。さらに、3380.6nmにおける光源の出力を強調してあるため、この波長における吸収が他に波長に比べて小さい場合でも、S/N比の劣化を抑えることができる。
【0063】
このように、本実施形態では、特定のピークを強調して変換効率を大きくすることもできる。実施例4で用いたような波長可変レーザは、1.55μm帯等の光通信波長帯では比較的安価であり、波長を高速に切り替えることができる。その他の波長帯域では、例えば、非特許文献5に示すように、半導体レーザに外部グレーティングを結合させた構造の光源が市販されている。この種の光源では、グレーティングを機械的に回転するなどの動きにより波長可変を実現するために、波長可変のスピードに限界があり、高価な装置となる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本実施形態では、非線形光学材料の分散に関係なく、任意の励起光波長または信号光波長の組み合わせを用いて、複数の波長を変換することができる。上述したように、比較的安価で高性能な光通信用波長可変レーザを用いることができ、ガス計測装置などに適用する波長変換装置または光源を安価に構成することができる。
【0065】
さらに、複数の半導体レーザが集積化された光源を用いることにより、ガス計測装置においては、複数のガスの吸収線にあった複数波長の光を高速に切り替えることにより複数ガスを同時に観測することも可能になる。特定の波長を発生する位相整合ピークを、他のピークより大きくすることもできるので、複数ガスの中で吸収の弱いガスの測定に用いる波長の出力を強調し、SN比を大きくすることも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】従来の波長変換素子を用いた光源の構成を示す図である。
【図2】位相不整合量に対する変換効率の変化を示す図である。
【図3】従来の波長変換素子の周期的な変調構造を示す図である。
【図4】従来の波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す図である。
【図5】本実施形態にかかる波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す図である。
【図6】実施例1にかかる波長変換素子の位相変調曲線と差周波発生の変換効率の波長依存性を示す図である。
【図7】実施例2にかかる波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す図である。
【図8】実施例3にかかる波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す図である。
【図9】実施例4にかかる波長変換装置の構成を示す図である。
【図10】実施例4にかかる波長変換素子の位相変調曲線と変換効率の位相不整合量に対する依存性を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
11,21 LiNbO基板
12,22 光導波路
13,23 合波器
20 波長変換素子
24 励起光光源
25 信号光光源
31 DFB−LD
32 光カプラ
33 半導体光増幅器(SOA)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)または2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子において、
前記非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有することを特徴とする波長変換素子。
【請求項2】
前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造は、前記非線形光学媒質の周期Λごとの変調曲線を変化させ、光の進行方向の位置zにおける非線形光学定数の空間変化d(z)を計算し、前記空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率η(i)を求め、所望の変換効率η(i)を用いて以下に与える評価関数Tを計算し、
【数1】

前記評価関数Tの値が最小となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の波長変換素子。
【請求項3】
1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)または2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に周期が変化し、異なる周期Λの連続的な周期変調が付加された変調構造を有する波長変換素子において、
前記非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、前記周期変調の変調曲線を変化させた変調構造を有することを特徴とする波長変換素子。
【請求項4】
前記周期変調の変調曲線を変化させた変調構造は、前記非線形光学媒質の周期Λごとの変調曲線を変化させ、光の進行方向の位置zにおける非線形光学定数の空間変化d(z)を計算し、前記空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率η(i)を求め、所望の変換効率η(i)を用いて以下に与える評価関数Tを計算し、
【数2】

前記評価関数Tの値が最小となるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の波長変換素子。
【請求項5】
前記非線形光学媒質は、LiNbO、KNbO、LiTaO、LiNb(x)Ta(1−x)(0≦x≦1)、Li(x)(1−x)Ta(y)Nb(1−y)、KTiOPOのいずれかであり、またはこれらにMg、Zn、Sc、Inからなる群から選ばれた少なくとも一種を添加物として含有していることを特徴とする請求1ないし4のいずれかに記載の波長変換素子。
【請求項6】
波長を可変することができ、波長λの信号光を出力する信号光光源と、
波長λまたはλの励起光を出力する励起光光源と、
前記信号光と前記励起光とを合波する合波器と、
前記合波器に接続され、1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子とを備え、
前記非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有することを特徴とする波長変換装置。
【請求項7】
波長を可変することができ、波長λの信号光を出力する信号光光源と、
前記信号光光源に接続され、1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子とを備え、
前記非線形媒質は、波長λ、λ、λに対する屈折率を各々n、n、nとすると、Δβ=2π(n/λ−n/λ−n/λ)で表される位相不整合量Δβが、2π/Λ+2πi/Λ(i=m,m+1,・・・,n:m,nは正または負の整数)で与えられる複数の変換効率のピークのうち、不等間隔に並んだ少なくとも3つのピークの変換効率が極大となるように、前記位相変調の変調曲線を変化させた変調構造を有することを特徴とする波長変換装置。
【請求項8】
前記信号光光源は、
複数のDFB−LDと、
前記DFB−LDの各々の出力光を結合する光カプラと、
前記光カプラの出力に接続された半導体光増幅器と
を含むことを特徴とする請求項6または7に記載の波長変換装置。
【請求項9】
1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)または2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に位相が変化し、異なる周期Λphの連続的な位相変調が付加された変調構造を有する波長変換素子の作製方法において、
前記非線形光学媒質の周期Λごとの位相変調曲線を変化させる工程と、
光の進行方向の位置zにおける非線形光学定数の空間変化d(z)を計算する工程と、
前記空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率η(i)を求め、所望の変換効率η(i)を用いて以下に与える評価関数Tを計算する工程と、
【数3】

前記評価関数Tの値が最小となるように、前記位相変調曲線を変化させる工程と
を備えたことを特徴とする波長変換素子の作製方法。
【請求項10】
1/λ=1/λ+1/λの関係を有する波長のうち1つ(λ=λ)または2つ(λ、λまたはλ、λ)の入射光を非線形光学媒質に入力し、波長λまたはλの変換光を出力する波長変換素子であって、前記非線形媒質は、光の進行方向に周期Λの非線形光学定数の変調構造であって、周期Λごとに連続的に周期が変化し、異なる周期Λの連続的な周期変調が付加された変調構造を有する波長変換素子の作製方法において、
前記非線形光学媒質の周期Λごとの周期変調曲線を変化させる工程と、
光の進行方向の位置zにおける非線形光学定数の空間変化d(z)を計算する工程と、
前記空間変化d(z)のフーリエ変換を行って、各々のピークにおける変換効率η(i)を求め、所望の変換効率η(i)を用いて以下に与える評価関数Tを計算する工程と、
【数4】

前記評価関数Tの値が最小となるように、前記周期変調曲線を変化させる工程と
を備えたことを特徴とする波長変換素子の作製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−89762(P2008−89762A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268360(P2006−268360)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】