説明

波長変換装置及び波長変換方法

【課題】光学部品点数を低減させ、低コスト化を図ることができ、電気回路や機械的可動部分を用いないで、光学部品点数を低減させ、低コスト化を図ることができ、電磁波障害の影響を受けず、電磁波障害の原因とならず、波長選択の範囲が広い光の利用が可能となり、しかも耐久性が高く、本格的な実用化が期待される波長変換技術を提供する。
【解決手段】本波長変換装置は、特定の波長のパルス状信号光14を入射する信号光入力部12と、信号光14とは異なる波長の変換用光15を照射する変換用光光源13と、信号光14に対し吸収性を示し変換用光15に対し透過性を示す波長帯域を持ち、熱レンズ効果を示す光吸収層を有する熱レンズ形成手段11と、出射した変換用光のうち、進路を変えた偏向光である変換用光のみを変換光として出射する変換光選部を備える。熱レンズ形成光素子11の光吸収層には、信号光14と変換用光15とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換装置及び波長変換方法に関するものである。さらに詳しくは、本発明は、特に光通信分野や光情報処理分野において好ましく用いられる新規な波長変換装置及び波長変換方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光通信分野や光情報処理分野において重要な光学素子として、波長変換装置がある。この波長変換装置は、たとえばある特定の波長のパルス信号を別の波長のパルス信号に変換するものである。従来の波長変換装置の一例を図1に模式的に示す。
【0003】
図1に示す波長変換装置は、光通信の波長帯域である波長1.55μmの入射パルス光をフォトダイオード(PD)1で受光し、その出力でもってレーザダイオード(LD)2を駆動させ、波長780nmのパルス光を出射するものである。
【0004】
一方で、インターネット等の急速な普及に伴い、より高速な光ネットワークに実現が切望されている。そのために高速応答が可能な各種の光学素子の実現が望まれている。
【0005】
ところが、図1に示すような従来の波長変換装置では、光パルス⇒電気パルス変換の電子回路及び電気パルス⇒光パルス変換の電子回路へ電源を供給する必要がある、前記電子回路が電磁波障害の影響をうけやすい、前記電子回路が電磁波障害の原因に成りうる、使用できる波長がレーザダイオード(LD)等を用いているため制限がある、などの課題があり、高速光ネットワーク等の実現のためには、電磁波障害の影響を受けず、かつ、電磁波障害の原因にならず、波長選択の範囲が広い光の利用が可能となることが切望されていた。また、電気回路や機械的可動部分を用いないで、高速な波長変換が行うことができる耐久性が高い波長変換装置の実現が望まれていた。
【0006】
そこで、本発明者らは、特許文献1において、電気回路や機械的可動部分を用いないで、電磁波障害の影響を受けず、電磁波障害の原因とならず、波長選択の範囲が広い光の利用が可能となり、しかも耐久性が高い、新規な波長変換技術を提案した。
【0007】
この波長変換技術による波長変換装置は、特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層と、光吸収層に信号光と変換用光が焦点を結ぶように各々収束させて照射する手段と、前記光吸収層を含み、前記光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は収束された変換用光が通常の開き角度で出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成される場合は収束された変換用光が通常の開き角度よりも大きい開き角度で出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させる熱レンズ形成光素子と、出射した変換用光のうち、通常の開き角度よりも大きい角度で出射する変換用光のみを変換光として出射する状態と、通常の開き角度で出射する変換用光のみを変換光として出射する状態との選択を行うことができる変換光選択手段と、変換光選択手段により選択された変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする集光部を備えることを特徴とするものである。
【0008】
さらに特許文献2には、電気的又は機械的手段を採らず、制御ビームの照射でスイッチ物質の屈折率を変え、信号ビームの光路を変える光スイッチが提案されている。
【特許文献1】特開2006−139225号公報
【特許文献2】米国特許第4,585,301号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1において提案した波長変換技術によれば、電気回路や機械的可動部分を用いないで、電磁波障害の影響を受けず、電磁波障害の原因とならず、波長選択の範囲が広い光の利用が可能となったものの、依然、多くの光学部品を必要とするため、本格的な実用化のためにはさらに改善の余地があった。
【0010】
一方、特許文献2に開示されている光路切替手法をこの波長変換技術に適用することも考えられるが、その場合、偏向角をあまり大きくできず、また屈折率変化を行わせるレーザ光は大パワーが必要であるという問題があった。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、光学部品点数を低減させ、低コスト化を図ることができ、電気回路や機械的可動部分を用いないで、電磁波障害の影響を受けず、電磁波障害の原因とならず、波長選択の範囲が広い光の利用が可能となり、しかも耐久性が高く、本格的な実用化が期待される波長変換装置及び波長変換方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するものとして、第1には、特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を有する熱レンズ形成光素子と、光吸収層に信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる第1の集光部を備え、熱レンズ形成光素子は、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、信号光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、さらに、熱レンズ形成光素子より出射した出射した変換用光のうち、偏向光である変換用光のみを変換光として出射する変換光選択部と、変換光選択部からの変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする第2の集光部を備えることを特徴とする波長変換装置を提供する。
【0013】
また、第2には、特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を有する熱レンズ形成光素子と、光吸収層に信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる第1の集光部を備え、熱レンズ形成光素子は、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、信号光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、さらに、熱レンズ形成光素子より出射した出射した変換用光のうち、非偏向光である変換用光のみを変換光として出射する変換光選択部と、変換光選択部からの変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする第2の集光部を備えることを特徴とする波長変換装置を提供する。
【0014】
また、第3には、特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を有する熱レンズ形成光素子と、光吸収層に信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる第1の集光部を備え、熱レンズ形成光素子は、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、信号光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、さらに、熱レンズ形成光素子より出射した出射した変換用光のうち、偏向光として出射する変換用光のみを変換光として出射する状態と、非偏向光として出射する変換用光のみを変換光として出射する状態との選択を行うことができる変換光選択部と、変換光選択部からの変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする第2の集光部を備えることを特徴とする波長変換装置を提供する。
【0015】
また、第4には、上記第1から第3のいずれかの発明において、出射する変換光の偏光状態を、入射した信号光の偏光状態と同じ状態にするか又は異なる状態にするかを切り替える偏光状態切替手段を備えることを特徴とする波長変換装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、第5には、特定の波長のパルス状信号光に対し吸収性を示し信号光とは異なる波長の変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を含む熱レンズ形成光素子の該光吸収層に、信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させ、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、出射した変換用光のうち、偏向光である変換用光のみを変換光として出射させ、出射した変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とすることを特徴とする波長変換方法を提供する。
【0017】
また、第6には、特定の波長のパルス状信号光に対し吸収性を示し信号光とは異なる波長の変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を含む熱レンズ形成光素子の該光吸収層に、信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させ、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、出射した変換用光のうち、非偏向光である変換用光のみを変換光として選択的に出射させ、出射した変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とすることを特徴とする波長変換方法を提供する。
【0018】
また、第7には、特定の波長のパルス状信号光に対し吸収性を示し信号光とは異なる波長の変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を含む熱レンズ形成光素子の該光吸収層に、信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させ、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、出射した変換用光のうち、、偏向光である変換用光と非偏向光である変換用光のいずれか一方のみを切替選択して変換光として出射させ、出射した変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とすることを特徴とする波長変換方法を提供する。
【0019】
さらに、第8には、上記第5から第7のいずれかの発明において、出射する変換光の偏光状態を、入射した信号光の偏光状態と同じ状態又は異なる状態にするかを切り替え可能であることを特徴とする波長変換方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
この出願の第1及び第5の発明によれば、光学部品点数を低減させ、低コスト化を図ることができ、電気回路や機械的可動部分を用いないで、電磁波障害の影響を受けず、電磁波障害の原因とならず、波長選択の範囲が広い光の利用が可能となり、しかも耐久性が高く、本格的な実用化が期待される新規な波長変換技術を提供することができる。
【0021】
第2及び第6の発明によれば、上記効果に加え、入射信号と反対位相の変換光を得ることができる利点がある。
【0022】
第3及び第7の発明によれば、上記効果に加え、入射信号と同位相又は反対位相の変換光を選択して得ることができる利点がある。
【0023】
第4及び第8の発明によれば、上記効果に加え、入射信号の偏光状態と同じ偏光状態と異なる偏光状態の変換光を選択して得ることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る波長変換装置の概念図を図2に示し、図2の熱レンズ形成光素子に使用される一例の光吸収層に用いる材料(この場合、色素)の波長と吸収特性及び透過特性との関係を図3に示す。
【0025】
本実施形態の波長変換装置では、光制御型熱レンズ形成光素子11を用い、信号入力部12より任意波長Aの光パルス信号を信号光14として入射するとともに、変換用光光源13より任意波長Bの連続光を変換用光15として入射し、任意波長Bの光パルスを変換光16として出射する。信号入力部12より入射する信号光14はレーザ光源をはじめ従来から使用されている各種の光源からの光を用いることができる。また、変換用光光源13にはレーザ装置が好適に用いられるが、これに限定されない。
【0026】
熱レンズ形成光素子11には、図3に示すような波長帯域を持つ光吸収層を設ける。すなわち、この光吸収層は、波長Aに対して吸収率が大であり、波長Bに対して透過率が大で、かつ、屈折率効果(温度の変化に対して大きな屈折率変化を示す)を有するものとする。このような波長帯域の形態は、光吸収層の材料によって様々な形態をとるので、材料の選択により波長A、Bは任意に選ぶことができる。以上は、本発明者らが先に特許文献1で述べたものと同様であるが、以下に詳述する点において相違している。
【0027】
図4は本実施形態の波長変換装置の要部構成をより具体的に示した図である。この波長変換装置は図示しない変換用光光源(図2の13)を有し、この変換用光光源からの連続(CW)光である変換用光21を取り込むための入力ポート22と、変換用光21の波長とは異なる波長を有するパルス状信号光23を取り込むための入力ポート24が設けられている。入力ポート22の下流側には入射した変換用光21を平行光とするための第1のコリメートレンズ25が配置され、入力ポート24の下流側には入射した信号光23を平行光とするための第2のコリメートレンズ26が配置されている。なお、便宜上、図4には、平行光を幅を持たない直線で表してある。第1のコリメートレンズ25と第2のコリメートレンズ26の下流側には光混合器27が配置され、光混合器27は、第1のコリメートレンズ25からの平行光である変換用光21は透過させ、第2のコリメートレンズ26からの平行光である信号光23は反射しその光路を変える。光混合器27の下流側には第1の集光レンズ28、熱レンズ形成光素子29、第3のコリメートレンズ30、波長選択透過フィルター31、分岐ミラー32、第2の集光レンズ33がそれぞれ配置されている。第1の集光レンズ28は光混合器27からの変換用光21及び信号光23を熱レンズ形成光素子29の光吸収層に集光(収束)させる。ここで、第1の集光レンズ28には変換用光21と信号光23は光軸に直角な方向にずれた位置にて入射し、熱レンズ形成光素子29の光吸収層にも光軸に直角な方向にずれた位置にて入射し、集光点が分離するようになっている。
【0028】
熱レンズ形成光素子29は、変換用光21のみが入射した場合には進行方向を変えない非偏向光として出射し、変換用光21と信号光23が同時に入射した場合には熱レンズを形成し、変換用光21を進行方向を変えた偏向光として出射する。第3のコリメートレンズ30は変換用光21(非偏向光及び偏向光)と信号光23を平行光とする。波長選択透過フィルター31は、変換用光21は透過させ、信号光23はカットする。波長選択透過フィルター31の下流に設けられた分岐ミラー32は非偏向光と偏向光とを分岐し、偏向光は反射しその光路を変える。非偏向光はそのまま直進することになる。また、分岐ミラー32の図中上方には、光路を変えた偏向光の光路を更に変えるミラー34と、ミラー34からの光を集光する第3の集光レンズ35が配置されている。また、本波長変換装置は2つの出力ポート36、37を有している。出力ポート36は信号光23のオフ時に第2の集光レンズ33で集光された非偏向光の光出力を行う。出力ポート37は信号光23のオン時に分岐ミラー32及びミラー34で光路を変えられ、第3の集光レンズ35で集光された偏向光の光出力を行う。本波長変換装置では、出力ポート36から出力される非偏向光と、出力ポート37から出力される偏向光のいずれかを変換光とする。非偏向光と偏向光のいずれを変換光とするか切替選択手段を設けることができる。
【0029】
本波長変換装置においては、上述したように、変換用光21の波長は、熱レンズ形成光素子29の光吸収層に対して透過性を示す波長の光を用いる。また、信号光23の波長は、熱レンズ形成光素子29の光吸収層に対して吸収性を示す波長の光を用いる。
【0030】
本波長変換装置で使用される熱レンズ形成光素子29中の光吸収層の材料、変換用光21の波長帯域、及び信号光23の波長帯域は、例えば、先ず、信号光23の波長ないし波長帯域を決定し、次に、これを制御するのに最適な光吸収層の材料と変換用光21の波長の組み合わせを選定することができるが、これに限定されない。
【0031】
第1のコリメートレンズ25、第2のコリメートレンズ26、第3のコリメートレンズ30としては、例えば焦点距離8mmの非球面レンズを用いることができるが、焦点距離は8mmである必要はなく、より小型の波長変換装置にするためにさらに短い焦点距離を用いてもよいことは言うまでもない。また、非球面レンズである必要はないが、小型軽量にするためには非球面レンズが好ましい。
【0032】
光混合器27としては、例えば変換用光21は透過し、信号光23は反射するダイクロイックミラーなどの公知の光学部材を用いることができる。もちろん、入力ポート22と入力ポート24の位置を入れ替えて、変換用光21が反射し、信号光23が透過するように構成してもよいことは言うまでもない。
【0033】
第1の集光レンズ28、第2の集光レンズ33、第3の集光レンズ35には、例えば焦点距離8mmの非球面レンズを用いることができるが、焦点距離は8mmである必要はなく、より小型の波長変換装置にするためにさらに短い焦点距離を用いてもよいことは言うまでもない。また、非球面レンズである必要はないが、小型軽量にするためには非球面レンズが好ましい。
【0034】
本波長変換装置では、変換用光21と信号光23は、第1の集光レンズ28により、光の進行方向で熱レンズ形成光素子29の光吸収層の入射面又はその近辺において集光させる。変換用光21と信号光23とを熱レンズ形成光素子29の光吸収層の入射面近辺の同一の所に集光させると変換用光21はドーナツ状に拡がる。この状況を図5に示す。信号光23がない場合には図5(a)の写真1aのように変換用光21は丸ビームであるが、信号光23が同時に同一の所に照射されると、図5(b)の写真1bのようにドーナツ形状となる。このドーナツ形状が鮮明で大きく形成されるのが、光吸収層の入射面であると思われる。本波長変換装置において光吸収層の入射面という場合は、変換用光21と信号光23を同一の所に集光させたときにこのドーナツ形状が鮮明で大きく形成される位置に相当する面とする。もちろん、本波長変換装置で実際に用いる変換用光21と信号光23とは集光点の位置では光軸に直角な方向に25〜50μmほど離間させるので、ドーナツ形状は形成されないが、調整時には変換用光21と信号光23とを同一点に入射させ、ドーナツ形状を形成させ、その後、変換用光21と信号光23との集光点を分離させ、位置調整を行う。なお、変換用光21と信号光23との集光点間の距離が25μm未満の場合には、図5(a)に示すような丸ビームにならず、三日月型ビームになってしまう。変換用光21が三日月型ビームになると、のちに集光させ光ファイバーに入射させた場合には入射効率が減少してしまい、実用性にかけるおそれがある。また、上記距離が50μmを超えると、偏向角が低下傾向となる。
【0035】
熱レンズ形成光素子29は、図6に示したような概略構成であるが、図4では説明を容易にするため、光吸収層のみを図示してある。図6において、熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42は、色素を溶剤に溶解したものをガラス容器43に封じて用いる。溶剤に可溶性の色素としては、使用する信号光の波長領域に吸収性を示し、使用する変換用光の波長領域に吸収性がなく透過性を示す色素を使用することができる。例えばレーザ光44が透過するガラス容器43のガラスの厚みは約500μm程度、光吸収層42の厚みは200〜1000μm程度とすることができる。
【0036】
色素の具体例としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、エオシン、フロキシンBなどのキサンテン系色素、アクリジンオレンジ、アクリジンレッドなどのアクリジン系色素、エチルレッド、メチルレッドなどのアゾ色素、ポルフィリン系色素、フタロシアニン系色素、3,3’−ジエチルチアカルボシアニンヨージド、3,3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージドなどのシアニン色素、エチル・バイオレット、ビクトリア・ブルーRなどのトリアリールメタン系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素、ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド系色素、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド系色素などを好適に使用することができる。また、これらの色素を単独で、又は、2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
溶剤としては、少なくとも使用する色素を溶解するものを用いることができるが、熱レンズ形成時の温度上昇に際し、熱分解することなく、かつ、沸騰する温度(沸点)が100℃以上、好ましくは200℃以上、さらに好ましくは300℃以上のものを好適に用いることができる。具体的には、硫酸などの無機系溶剤、o−ジクロロベンゼンなどのハロゲン化芳香族炭化水素系、1−フェニル−1−キシリルエタン又は1−フェニル−1−エチルフェニルエタンなどの芳香族置換脂肪族炭化水素系、ニトロベンゼンなどのニトロベンゼン誘導体系、などの有機溶剤を好適に用いることができる。
【0038】
波長選択透過フィルター31としては、熱レンズ形成光素子41(29)をわずかに透過する信号光3を遮光し、変換用光1は透過する誘電体フィルターなどを用いることができる。熱レンズ形成光素子41(29)で実用上問題ない程度に信号光23が吸収されれば、必ずしも波長選択透過フィルター31を用いる必要はない。
【0039】
また、熱レンズ形成光素子41(29)は、基本的に上記のような吸収、透過の波長特性を持ち、熱レンズの形成可能な光吸収層を有しておればよく、光吸収を促進させる層や、伝熱層、保温層等、本発明者らの出願に係る特開2005−265986号公報に記載されているような各種の構造のものとすることができる。
【0040】
ここで、熱レンズ形成光素子41(29)における熱レンズ形成による変換用光21の偏向について説明する。
【0041】
熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層で信号光23が吸収されると、光吸収層の温度が上昇し、屈折率が変わる。温度が上昇するので、一般に屈折率は下がる方向に変化する。通常のレーザ光源から出射するレーザ光や、通常のレーザ光源から出射し光ファイバーを透過してきたレーザ光の強度分布はガウス分布である。また、前記レーザ光をレンズ等で集光した光もガウス分布をしている。よって、信号光23が照射された光吸収層での屈折率分布は、信号光23の光軸で屈折率が一番低下し、信号光23の周辺では屈折率の低下が少なくなる。また、熱伝導があるので、光の照射されていない部分でも屈折率が変化する。
【0042】
図7は、変換用光45(21)が偏向する状況を説明した図である。なお、説明を簡単にするため、図7では光吸収層と光吸収層の周りの媒質との屈折率の違いによる光の屈折は無視している。図7には、熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42に、変換用光45(21)のみが照射された場合と、変換用光45(21)と信号光46(23)が同時に照射された場合が示されている。図中、47は、信号光46(23)が照射されなかった場合の熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42を透過した変換用光である。48は、信号光46(23)が照射された場合の熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42を透過した変換用光である。また、熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42の入射面近辺での信号光の光強度分布49、及び、熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42の出射面近辺での光強度分布50が併せて示されている。
【0043】
図7aはレーザ光を集光しない場合、図7bは本波長変換装置のようにレーザ光を集光した場合のレーザ光の光路を模式的に示したものである。レーザ光を集光しない場合のレーザ光の強度分布領域49、50は、光吸収層42の入射面近辺と出射面近辺では変わらない。このことは、変換用光45(21)が光吸収層42を進むに従って、屈折率の変化の少ない領域を通過することを意味する。一方、レーザ光を集光した場合はレーザ光の強度分布領域49、50は、光吸収層42の入射面近辺と出射面近辺では大きく変わり、出射面近辺では領域が拡がっている。このことは、屈折率も徐々に拡がっていることになり、変換用光45(21)が光吸収層42を進むに従ってより大きな偏向を受ける作用が及んでくることになる。なお、屈折率変化は信号光パワーにほぼ比例して変化するので、光吸収層42を進むに従って屈折率変化は小さくなる。
【0044】
図7bでは、変換用光45(21)も熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42の入射面に集光するようにしているが、入射面近辺であってもよい。特に変換用光45(21)は、光吸収層42のもう少し出射面側に集光するようにしてもよい。また、変換用光45(21)と信号光46(23)とは光の進行方向で同一面に入射するようにしているが、全く同一面である必要はなく、多少ずれていても構わない。
【0045】
偏向角は、次の条件が変わると変化する。
【0046】
1.熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42の、変換用光45(21)と信号光46(23)の第1の集光レンズ28の集光(収束)点に対する位置
2.信号光パワー
3.信号光位置(第1の集光レンズ28の集光点での変換用光45(21)と信号光46(23)の光軸に直角方向の距離)
4.熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42の厚み
5.信号光波長及び変換用光波長
6.光吸収層42の色素濃度
これ以外にも、光吸収層42の材質、光吸収層42への信号光46(23)及び変換用光45(21)の集光角等によっても変化する。
【0047】
本波長変換装置の一例では、波長1550nmの変換用光21をコア径9.5μmのシングルモード石英光ファイバーで入力ポート22に入射させ、波長980nmの信号光23をコア径9.5μmのシングルモード石英光ファイバーで入力ポート24に入射させ、焦点距離8mmの第1のコリメートレンズ25及び第2のコリメートレンズ26で変換用光21及び信号光23をほぼ平行光にし、光吸収層の厚み500μmであって光吸収層の波長1550nmにおける透過率95%及び波長980nmにおける透過率0.2%の熱レンズ形成光素子29に、焦点距離8mmの第1の集光レンズ28で集光して入射させた。
【0048】
図8に、図4の分岐ミラー32の直前で、光軸に直角に紙面内方向に、スリット開口を持った光検出器を設けて、この光検出器を動かして測定した変換用光21の光強度分布を示す。図8において、線51(丸点を結ぶ実線)は信号光が照射されなかった場合の非偏向光、線52(四角点を結ぶ実線)は信号光パワー7.8mWが照射された場合の偏向光、線53(×点を結ぶ実線)は信号光パワー12.9mWが照射された場合の偏向光の光強度分布を示す。信号光パワー7.8mWが照射された場合の偏向光の場合51は、非偏向光の場合52と強度分布の裾のところで重なり合っておりお互いの分離が不充分であるが、信号光パワー12.9mWが照射された場合の偏向光の場合53は、非偏向光の場合52と充分に分離している。よって、分岐ミラー52で非偏向光と信号光パワー12.9mWが照射された場合の偏向光とは分離できることがわかる。なお、図8において、信号光位置(第1の集光レンズ28の集光点での変換用光21と信号光23の光軸に直角方向の距離)は35μmであり、信号光23と変換用光21は光吸収層の光入射面から約30μm進んだところに集光し、光吸収層の厚みは500μmであった。
【0049】
また、信号光パワーと偏向角との関係を図9に示す。信号光パワーが大きくなると偏向角が大きくなることがわかる。なお、図9において、信号光位置(第1の集光レンズ28の集光点での変換用光21と信号光23の光軸に直角方向の距離)は35μm、信号光23と変換用光21は光吸収層の光入射面から約60μm進んだところに集光させた。
【0050】
本波長変換装置では、図4に示す第3のコリメートレンズ30と第2の集光レンズ33及び第3の集光レンズ35の焦点距離は同じ8mmのものを用いたので、偏向角は、分岐ミラー32で分岐しなかった場合の偏向光の光軸と非偏向光の光軸とのなす角度となる。本例の場合、信号光パワー7.8mWの場合は約6.7度、信号光パワー12.9mWの場合は約10.1度、信号光パワー18mWの場合は約13.2度となった。
【0051】
図10に、図6に示した熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42への変換用光21と信号光23の集光点の入射位置(「光吸収層位置」と記す)と偏向角との関係を示す。図10において、横軸の光吸収層位置は熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42への光の入射面の位置(信号光23と変換用光21の集光点に対する位置)である。0点は信号光23と変換用光21の集光点の位置であり、図7bの状態である。マイナス方向が光の進行方向であり、プラスの位置では変換用光21と信号光23が熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42内で集光する。縦軸は偏向角である。なお、図10において、信号光パワーは約12.9mWであり、信号光位置(図4の第1の集光レンズ28の集光点での変換用光21と信号光23の光軸に対して直角方向の距離)は35μm、光吸収層42の厚みは500μmであった。
【0052】
さらに、図11に、図6に示す熱レンズ形成光素子41(29)の光吸収層42への変換用光21と信号光23の収束(集光)点の入射位置(すなわち、光吸収層位置)と非偏向光と偏向光との分離距離の測定データの例を示す。光吸収層42への入射位置が約60μmの場合は分離距離が0に近いが、これからずれると分離距離が大きくなる。図11で分離距離の正負の符号は、変換用光21の入射点を原点(すなわち0点)とし、偏向する方向を正とした。図11において、信号光パワーは15.4mW、光吸収層42の厚みは1000μmであり、信号光位置(第1の集光レンズ28の集光点での変換用光21と信号光23の光軸に直角方向の距離)は25μmであった。
【0053】
なお、偏向角は、信号光波長及び変換用光波長によっても異なる。波長が短いほど偏向角が大きくなる。
【0054】
以上、本実施形態の波長変換装置の一例を説明してきたが、本発明は上記に限定されるものではなく、種々の変形、変更が可能である。
【0055】
例えば、本発明によれば、図4の入力ポート22、24、第1のコリメートレンズ25、第2のコリメートレンズ26、光混合器27よりなる信号入力部に代えて、図12に断面図で示すような2芯光ファイバーフェルール65を用いた信号入力部としてもよい。2芯光ファイバーフェルール65は変換用光光出射ファイバー66と信号光光出射ファイバー67を並設して備えている。これらの光ファイバー66、67としては、例えば、コア9.5μmのシングルモード石英光ファイバーのクラッド層をフッ酸で所望の太さにエッチングして用いる。エッチングする部分は、光ファイバーの先端数mmだけとする。エッチングした後の光ファイバーの太さ「ω」は、光吸収層に集光した変換用光と信号光の集光点の光軸に直角方向の距離「χ」と次の関係で決めることができる。
(式1)
ω=χ/m
ここでmは、第1の集光レンズ28の結像倍率である。
【0056】
このような構成としても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる上、光入射部の構成をより簡素化できる利点がある。
【実施例】
【0057】
次に、本発明の実施例を述べる。
【0058】
図4で要部構成を示す波長変換装置において、熱レンズ形成光素子29は、信号光23に対し高い吸収性を示し変換用光21に対し高い透過性を示す波長帯域を持つ色素含有溶液を透明な光学セルに収容したものを用いた。詳しくは、熱レンズ形成光素子29の光吸収層として、色素(商品名CIR−960;日本カーリット社製:近赤外領域(780〜1500nm)に大きな吸収を示す)のテトラヒドロフラン(TFT)溶液を透明な光学セル内に収容したものを用いた。なお、この色素CIR−960の吸収及び透過の波長帯域の形態は図3のものとは異なっており、上記のような波長帯域となっている。
【0059】
図4の波長変換装置において、入力ポート24であるファイバー増幅器から波長1.55μmのパルス状信号光23を入射し、第2のコリメートレンズ26により平行光として光混合器27に送った。一方、変換用光光源であるレーザダイオードより波長650nmのレーザ光(連続光)を変換用光21として入力ポート22に取り込み、第1のコリメートレンズ25により平行光とし、光混合器27に送った。なお、変換用光22の位相、偏光状態は信号光と同じものとした。
【0060】
光混合器27で、送られてきた信号光23と変換用光21を、熱レンズ形成光素子29の光吸収層に、各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させた。
【0061】
熱レンズ形成光素子29では、パルス状の信号光23がオン(又はhigh)のときは、光吸収層が波長1.55μmの光に高い吸収性を持つため、熱レンズを形成した。このとき、変換用光21は、形成された熱レンズのため、その屈折率の特性により、進行方向を変えた偏向光の変換用光21として出射した。この変換用光21は第3のコリメートレンズ30により平行光とされ、信号光23は波長選択透過フィルター31でカットされ、分岐ミラー32で反射して向きを変えられ、ミラー34で更に反射し、第3の集光レンズ35で変換光として出力ポート37から光ファイバーに出射された。
【0062】
一方、熱レンズ形成光素子29では、パルス状の信号光23がオン(又はlow)のときは、光吸収層には信号光23が照射されないため、熱レンズは形成されない。したがって、変換用光21は、非偏向光として出力ポート36から出力され、図示しない遮断手段によりカットされる。
【0063】
したがって、信号光23のパルスのオン・オフ(あるいはhigh・low)により、熱レンズの形成の有無が繰り返され、信号光23の波長のデータが、同位相の変換光の波長のデータに変換される。熱レンズ形成光素子の応答速度は数十ナノ秒と非常に高速なため、電気回路や機械的可動部分を用いないで、応答速度が非常に高速で、種々の波長の光の利用が可能となり、しかも耐久性が高い波長変換が可能となる。また、波長変換が光だけで行われるため、電磁波障害の影響を受けず、また、電磁波障害の原因となることもない。さらに、光学部品を低減させることができるため、低コスト化を図ることができる。
【0064】
また、上記において、出力ポート36から出射する非偏向光を変換光とすると、信号光23の波長のデータが、逆位相の変換光の波長のデータに変換される。
【0065】
また、上記において、偏向光と非偏向光の利用を切り替えるための光学的切替選択手段を設けるようにしてもよい。
【0066】
さらに、上記において、偏光状態を変化させる部材を変換用光21の途中、例えば第1のコリメートレンズ22と光混合器27の間に設け、偏光状態を変化させない状態と偏光状態を変化させた状態の変換光を得るようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】従来の波長変換装置の一例を模式的に示す図である。
【図2】この出願の発明の波長変換装置の一実施形態の概念図である。
【図3】熱レンズ形成光素子に使用される一例の光吸収層に用いる材料の波長と吸収 特性及び透過特性との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る波長変換装置の要部構成を模式的に示す図である。
【図5】熱レンズ形成光素子の光吸収層へ変換用光と信号光とを同一の所に集光させるときに、信号光がない場合と信号光がある場合の変換用光の出射の状況を示す図である。
【図6】熱レンズ形成光素子の概略構成を示す断面図である。
【図7a】集光しない場合の変換用光が偏向する状況の説明図である。
【図7b】集光した場合の変換用光が偏向する状況の説明図である。
【図8】信号光を照射しない場合と、信号光のパワーを変えて照射した場合の光強度分布を示す図である。
【図9】信号光パワーと偏向角との関係を示すグラフである。
【図10】光吸収層の位置と偏向角との関係を示すグラフである。
【図11】非偏向光と偏向光の分離距離の関係を示すグラフである。
【図12】本発明の別例の波長変換装置で用いる光スイッチの2芯光ファイバーフェルールの概念図である。
【符号の説明】
【0068】
11 熱レンズ形成光素子
12 信号入力部(ファイバー増幅器)
13 変換用光光源(レーザダイオード)
14 信号光
15 変換用光
16 変換光
21 変換用光
22、24 入力ポート
23 信号光
25、26、30 コリメートレンズ
27 分離器
34 ミラー
28、33、35 集光レンズ
29 熱レンズ形成光素子
31 波長選択透過フィルター
32 分岐ミラー
36、37 出力ポート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、
信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、
信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を有する熱レンズ形成光素子と、
光吸収層に信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる第1の集光部を備え、
熱レンズ形成光素子は、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、信号光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、
さらに、熱レンズ形成光素子より出射した出射した変換用光のうち、偏向光である変換用光のみを変換光として出射する変換光選択部と、
変換光選択部からの変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする第2の集光部を備えることを特徴とする波長変換装置。
【請求項2】
特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、
信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、
信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を有する熱レンズ形成光素子と、
光吸収層に信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる第1の集光部を備え、
熱レンズ形成光素子は、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、信号光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、
さらに、熱レンズ形成光素子より出射した出射した変換用光のうち、非偏向光である変換用光のみを変換光として出射する変換光選択部と、
変換光選択部からの変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする第2の集光部を備えることを特徴とする波長変換装置。
【請求項3】
特定の波長のパルス状信号光を入射する信号光入力部と、
信号光とは異なる波長の変換用光を照射する変換用光光源と、
信号光に対し吸収性を示し変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を有する熱レンズ形成光素子と、
光吸収層に信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させる第1の集光部を備え、
熱レンズ形成光素子は、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、信号光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、
さらに、熱レンズ形成光素子より出射した出射した変換用光のうち、偏向光として出射する変換用光のみを変換光として出射する状態と、非偏向光として出射する変換用光のみを変換光として出射する状態との選択を行うことができる変換光選択部と、
変換光選択部からの変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とする第2の集光部を備えることを特徴とする波長変換装置。
【請求項4】
出射する変換光の偏光状態を、入射した信号光の偏光状態と同じ状態にするか又は異なる状態にするかを切り替える偏光状態切替手段を備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の波長変換装置。
【請求項5】
特定の波長のパルス状信号光に対し吸収性を示し信号光とは異なる波長の変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を含む熱レンズ形成光素子の該光吸収層に、信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させ、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、
出射した変換用光のうち、偏向光である変換用光のみを変換光として出射させ、
出射した変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とすることを特徴とする波長変換方法。
【請求項6】
特定の波長のパルス状信号光に対し吸収性を示し信号光とは異なる波長の変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を含む熱レンズ形成光素子の該光吸収層に、信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させ、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、
出射した変換用光のうち、非偏向光である変換用光のみを変換光として選択的に出射させ、
出射した変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とすることを特徴とする波長変換方法。
【請求項7】
特定の波長のパルス状信号光に対し吸収性を示し信号光とは異なる波長の変換用光に対し透過性を示す波長帯域を持つ光吸収層を含む熱レンズ形成光素子の該光吸収層に、信号光と変換用光とを各々集光点を光軸に対して直角方向で異ならせて集光させ、光吸収層が信号光を吸収した領域及びその周辺領域に起こる温度上昇に起因して可逆的に生ずる屈折率の分布に基づいた熱レンズを用いることによって、信号光が照射されず熱レンズが形成されない場合は変換用光を進行方向を変えない非偏向光として出射する状態と、制御光が照射されて熱レンズが形成された場合は変換用光を進行方向を変えた偏向光として出射する状態とを、信号光の照射の有無に対応させて実現させ、
出射した変換用光のうち、偏向光である変換用光と非偏向光である変換用光のいずれか一方のみを切替選択して変換光として出射させ、
出射した変換光を集光して、信号光とは異なる波長のパルス状変換光とすることを特徴とする波長変換方法。
【請求項8】
出射する変換光の偏光状態を、入射した信号光の偏光状態と同じ状態又は異なる状態にするかを切り替え可能であることを特徴とする請求項5から7のいずれか一項に記載の波長変換方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−250170(P2008−250170A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93920(P2007−93920)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18年独立行政法人科学技術振興機構「全光データ配信システムの開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(000002820)大日精化工業株式会社 (387)
【Fターム(参考)】