波長多重励起ラマンアンプ、波長多重励起ラマンアンプの制御方法および制御プログラム
【課題】効率的にラマン増幅器を制御すること。
【解決手段】波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプにおいて、信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行う制御手段を備える。
【解決手段】波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプにおいて、信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行う制御手段を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の信号光の増幅が可能なラマン増幅器において所望の利得プロファイルを実現するために、複数波長からなる励起光の強度を決定する方法を与える。
【背景技術】
【0002】
光増幅器は、長距離大容量の光通信システムを実現するためには欠くことのできないものである。また、メトロ/アクセス系などにおいて光信号強度の低下を補償する手段としても有効であり、種々の光通信システムに広く用いられている。
【0003】
EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)などの希土類添加光ファイバ増幅器はこの代表的なもので、主にエルビウム添加光ファイバの増幅帯域である1.55μm帯の信号帯域に適用されてきた。しかし、近年、光通信システムに求められる伝送容量は急激に増加し、信号帯域の大幅な拡大が必要となっている。そのため希土類添加光ファイバ増幅器だけでは十分な信号帯域の確保が困難になっており、より広帯域の光信号に適用可能な光増幅器が求められている。
【0004】
ラマン増幅器は、石英系ファイバに導入された励起光がひきおこす誘導ラマン散乱を利用したものである。そのため励起光波長を変えることで増幅波長を自由に設定し、複数波長からなる励起光の出力分布を調節することで所望の利得波長特性を実現することができる。これらは広帯域波長多重伝送に用いる光増幅器として希土類添加光ファイバ増幅器にはない有利な特徴である。
【0005】
これらラマン増幅器の特徴を活かしたものとして、複数波長からなる励起光出力を任意に変化させて利得波長特性を調節するもの(特許文献1)や、複数の各励起波長間隔を適正化して平坦な利得波長特性を実現するもの(特許文献2)などが提案されている。
【0006】
一方、ラマン増幅器を広く実用に供するためには、所望の利得波長特性を得られるよう自動的に、かつ迅速に適切な各励起光出力を得る必要がある。しかし、上記の技術では所望の利得波長特性を実現するための各励起光出力を決定することができない。これは、励起光パワーを決定するには逆問題を解かなければならず、そのために非線形最適化手法を用いれば解の収束性は初期値に依存するためである。より広範囲の初期値に対して最適値に収束させるには、複雑な最適化アルゴリズムが必要とされる。
【0007】
このようなアルゴリズムの例として、信号間ラマンを無視し、遺伝的アルゴリズムを用いた励起光波長・パワーの自動決定法を用いたもの(非特許文献1)がある。なお、より簡便に励起光出力を決定するものとして、予想される利得波長プロファイルを実現する各励起波長の光出力をメモリしておき、所望のプロファイルに近い条件をメモリから取り出して制御を行うもの(特許文献3)がある。また、増幅波長帯を拡張、縮小する際、励起光源の増減による過渡的な励起状態の変動を防ぐ制御方法について示したもの(特許文献4)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,115,174号明細書
【特許文献2】米国特許第6,292,288号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2001/0050802号明細書
【特許文献4】特開2002−303896号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Victor E. Perlin, et al., (2002), “Efficient design method for multi-pump flat-gain fiber Raman amplifiers”, OFC2002, TuJ1, p.57
【発明の概要】
【0010】
本発明は効率的にラマン増幅器の制御を実現すべく筆者らによって考案されたもので、これによれば、より簡便な構成にて正確に所望の利得波長特性を満足するよう、各励起光出力を制御することができる。
【0011】
これによれば、まず、信号光と励起光の非線形伝播方程式から両者の変動量について線形になるよう近似を行う。ここで得られる両者の関係を示す係数行列式は両者の光伝送路上のパワー分布についての関数となっているが、光伝送路の微小区間においては定数行列式として扱うことができる。しかもこれらの定数は既知であるので、これらを利用すれば励起光と信号光の変動量は光伝送路の長手方向の位置に対する関数として数値的に、容易に求めることができる。
【0012】
所望の条件までの変動量が大きい場合は、線形近似であることから、その解の最適解との誤差が生じる。従って中間的な仮条件を設定し、段階を踏んで所望の条件に近づける手法を用いる。段階を踏むには既知のパワー分布が必要なので、前回のステップで求まった結果をもとの既知のパワー分布に加え、それを新たな既知のパワー分布として更新する。ステップ幅は所望の条件に合うように決定する。この方法により、既知の条件から大きく隔たった条件についても最適解に近い値を容易に得ることができ、線形計算のみであることから高速に解が得られる。この手法は特に予測制御、調節において有効である。
【0013】
また、既知のパワー分布を求めるために非線形伝播方程式を解いてもよい。この手法により、精度良く最適解が得られる。この手法は特にアンプ設計において有効である。
【0014】
以上の操作を適宜選び用いることにより、線形近似によって所望の条件を満足する最適解を導ける非常に高速のプロセスが得られる。
【0015】
また、これによれば、ラマン増幅器からの出力モニタ数が実際の信号光波長数より少ない場合においても、出力モニタ結果と初期の設計値など各信号光波長での出力レベルが既知の条件を用い、直接測定ができない波長の信号光強度を本発明の補間方法により導く。これによって、全ての信号光波長の光出力を精度良く測定することができる。なお、この方法による全信号光波長の光出力測定結果を用いることにより、ラマン増幅器からの信号光出力波長特性が全信号光波長において所望の値になるように各励起光出力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1図は、前方励起一波のラマン増幅器の構成図である。
【図2】第2図は、信号光、励起光の長手方向のパワー分布と何らかの影響で変動したときのパワー分布を示したものである。
【図3】第3図は、後方励起一波のラマン増幅器の構成図である。
【図4】第4図は、前方励起光、後方励起光計n波構成のラマン増幅器によりWDM信号光m波を増幅するものである。
【図5】第5図は、信号光パワーの変動量の長手分布の概略である。
【図6】第6図は、設計時における最適入力パワー決定の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第7図は、設計時における最適入力パワー決定の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第8図は、設計時における最適入力パワー決定の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第9図は、出力信号変動を抑える制御手順を示すフローチャートである。
【図10】第10図は、制御装置を含んだ後方励起型ラマン増幅器の基本的な構成図である。
【図11】第11図は、励起光源の構成図である。
【図12】第12図は、その他の波長合波器を使用した励起光源の一例を示す構成図である。
【図13】第13図は、偏波合成器と波長合波器を使用した励起光源の構成図である。
【図14】第14図は、光分岐器、バンドパスフィルタ、受光器で構成される受光部の図である。
【図15】第15図は、光分波器、受光器で構成される受光部の図である。
【図16】第16図は、その他の光分波器と、受光器で構成される受光部の図である。
【図17】第17図は、後方励起型ラマン増幅器が縦列に2つ接続された構成図である。
【図18】第18図は、等分された波長域の、ある代表波長の信号光のみ選択して各受光器に入力可能な透過帯域をもったバンドパスフィルタの概念図である。
【図19】第19図は、等分された波長域の、複数の波長の信号光を各受光器に入力可能な透過帯域をもったバンドパスフィルタの概念図である。
【図20】第20図は、等分された波長域の、波長域内の全ての波長の信号光を各受光器に入力可能な透過帯域をもったバンドパスフィルタの概念図である。
【図21】第21図は、正常時と故障時それぞれの出力信号光パワーの概念図である。
【図22】第22図は、等分された波長域の代表波長となる信号光パワーのみモニタし、ラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間方法を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図23】第23図は、全信号光パワーをモニタした場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図24】第24図は、モニタする波長が信号光チャネル1chのみではない場合について誤差を最小限にし補間を行う方法を示した概念図である。
【図25】第25図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、ラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間方法を用いて、さらに繰り返し法を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図26】第26図は、信号パワーの決定処理手順をフローチャートとして示している。
【図27】第27図は、実施例1におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図28】第28図は、実施例2におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図29】第29図は、実施例3におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図30】第30図は、実施例4におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図31】第31図は、実施例5におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図32】第32図は、実施例6におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図33】第33図は、実施例7におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図34】第34図は、実施例8における励起光波長と設計前の励起光パワーを示している。
【図35】第35図は、実施例8における3種類の手法で求めたラマンゲインの波長特性を示している。
【図36】第36図は、実施例8における設計前、線形近似のみで収束後、最終段階で非線形の式を解く手法で収束後、の励起光パワーを示している。
【図37】第37図は、実施例9における励起光波長と設計前の励起光パワーを示している。
【図38】第38図は、実施例9における設計前の励起光パワーで非線形伝搬方程式を解いて得られたラマンゲインを示している。
【図39】第39図は、実施例9における測定値、並びに逆問題を解いて得られた励起光パワーから計算したラマンゲインの波長依存性を示す。
【図40】第40図は、実施例9における測定値、並びに逆問題を解いて得られた励起光パワーを示している。
【図41】第41図は、信号光1波が伝送され、光伝送路において後方励起光1波によって信号光が増幅される系を示している。
【図42】第42図は、制御の一段階目に相当する入力信号変動量の推定の過程を、信号光パワーの長手方向の分布で示したものである。
【図43】第43図は、制御の二段階目に相当する励起光パワー決定の過程を信号光パワー、励起光パワーの長手方向の分布で示したものである。
【図44】第44図は、実施例10における設計時の励起光波長とパワーを示したものである。
【図45】第45図は、実施例10におけるラマン増幅器のシステムの概略を示したものである。
【図46】第46図は、実施例10における前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定したときの信号出力パワーを示している。
【図47】第47図は、実施例10における前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定したときに、制御した信号出力パワーと故障前の信号出力パワーとの偏差を示している。
【図48】第48図は、実施例10における励起光波長と、制御前の励起光パワー、制御後の励起光パワーを示したものである。
【図49】第49図は、実施例11における設置前、すなわち設計段階の励起光波長とパワーを示している。
【図50】第50図は、実施例11における設計段階の入力信号パワーと出力信号パワーの波長特性を表している。
【図51】第51図は、実施例11における励起光波長と調整前の励起光パワー、調整後の励起光パワーを示している。
【図52】第52図は、実施例11における信号出力パワーの移り変わりを示している。それぞれ設計時の出力、設置時の実際の出力、励起光パワー調整後の出力を示している。
【図53】第53図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、ラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間方法を用いたが、繰り返し法はおこなわなかった場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図54】第54図は、等分された波長域の代表波長となる信号光パワーのみモニタし、近傍補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図55】第55図は、等分された波長域の代表波長となる信号光パワーのみモニタし、線形補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図56】第56図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、近傍補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図57】第57図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、線形補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図58】第58図は、故障時の出力信号光パワーに関して、分割した波長域内の局所的な傾向を、正常時の出力信号光パワーから予測した場合の、信号光パワーを示している。
【図59】第59図は、実施例17で示した補間方法を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図60】第60図は、「故障時標準偏差」を各補間方法によって求めた値をプロットしたものである。
【図61】第61図は、本発明によるラマン増幅器を使用した光伝送システムの一例である。
【図62】第62図は、本発明によるラマン増幅器を使用した光伝送システムのその他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1図に前方励起のラマン増幅器の構成について示す。信号光は図中、矢印の方向に光伝送路中を伝搬し、途中に設けられた光合波器を介して励起光源から出射された励起光が光伝送路に導入される。励起光と合波された信号光は増幅媒体を通じてラマン増幅され、出射端から出力される。ここで増幅媒体は、分布型ラマン増幅器においては光伝送路自身であり、集中型増幅器においては分散補償ファイバ(DCF)など、非線形性の高いものが使用される。
【0018】
このラマン増幅器において、所望の信号光出力特性を満足する励起光入力条件を得るために、本発明による線形近似の手法を適用した演算プロセスについて示す。なお、本発明においては、ラマン増幅器の動作に関連した応用例を、設計、制御、調整の3つに分類する。
【0019】
設計とは、目的とする仕様(出力信号光パワー、ラマンゲイン、ネットゲインなど)を満足するために、最適な励起光パワーを決定することを示す。
制御とは、入力信号の変化や線路状況の変化により信号出力が変化した場合、その出力を仕様によって要求される範囲に保つ、または、復帰させるように励起光パワーを変化させることを示す。
調整とは、出力が仕様値とずれている場合、出力を仕様値に近づけるべく、励起光パワーを変更することを示す。仕様値を変更する場合も、その変更する値に近づけるべく、励起光パワーを変更することを示す。
【0020】
基本式の詳細
線形近似の考え方(2波)
最も単純なラマン増幅器の系として、前述と同様に図1の系を考える。レイリー散乱項、Amplified Spontaneous Emission (ASE) 項の影響を無視した伝搬方程式は以下のように書ける。
【0021】
【数1】
【数2】
【0022】
ここで、PS = PS(z) は信号光パワーの長手分布、PP = PP(z) は励起光パワーの長手分布、αS、αPはそれぞれ信号光、励起光の吸収係数、gSPは信号光と励起光間のラマンゲイン効率を表す。gPSはgPS = gSP×νP/νSで表され、νP、νSはそれぞれ励起光、信号光の周波数である。但しzはファイバ長手方向で位置座標である。ある任意の条件で設計した時の信号光、励起光パワーをそれぞれPS = PS0(z)、PP = PP0(z)とおき、(1)、(2)に代入すると
【0023】
【数3】
【数4】
となる。ここで、PS0、PP0の解は少なくとも数値的に既知である。ここで、ある設計した状態からパワーが変動した状態を考える。この結果、
【0024】
【数5】
【数6】
【0025】
となったとする。第2図は信号光、励起光の長手方向のパワー分布と何らかの影響で変動したときのパワー分布を示したものである。(5)、(6)を(1)、(2)に代入する。
【数7】
【数8】
(3)、(4)より
【数9】
【数10】
【0026】
ここでε、ηがPS0、PP0に比べて小さいと考えてε×ηの項を無視すると、(9)、(10)は以下の微分方程式になる。
【数11】
【数12】
【0027】
これをベクトル表示すると(13)式のようになる。
【数13】
【0028】
行列Fの中にはPS0(z), PP0(z)といったzの関数があるので解析的に解くことは不可能である。しかし、光伝送路の長手方向をn個の微小区間に分けて、i番目と(i+1)番目の間ではPS0(z), PP0(z)を近似的に定数と仮定して解くことができる。
【0029】
nが多いほうが精度は上がるが、時間を要するので適度なnを決めてやればよい。分布型ラマンの本実施例では0.5km刻みになるようにnを決めている。PS0(z), PP0(z)は微小区間の中心の値を線形補間して求めている。但し、パワーをいったん対数スケールに変換して線形補間、あるいはラグランジュ補間など、他の補間方法を用いてもよい。
(13)式の両辺の左から、ある行列P-1をかける。但し、P-1FP = Bで、Bは対角行列である。
【0030】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【0031】
従って
【数18】
となり、ε、ηはそれぞれzの関数として表せた。従ってz = ziとz = zi+1の関係式が以下のように導ける。
【数19】
さらに入力端においてε=ε(0)、η=η (0)、出力端においてε=ε(L)、η=η(L)とすると、入力端と出力端の関係式が以下のように導ける。但し、Lはファイバ長である。
【数20】
ここで、Aは2行2列の行列で、αS、αP、gSP、gPS、PS0(z)、PP0(z)を含んでおり、最初の設計状態において全て既知の値である。
【0032】
この行列Aに含まれる信号、励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得ても良いし、測定によって得ても良い。また前記測定はOTDRによって行ってもよい。
【0033】
また、前記行列要素を直接測定によって得てもよい。その方法としては例えば、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から行列要素を計算する。
【0034】
つまり、この関係式においてε(0)、η(0)、ε(L)、η(L)の4つのパラメータ、すなわち、信号光入力変動量、励起光入力変動量、信号光出力変動量、励起光出力変動量のうち2つを決定すれば、残りの2つも自動的に決定されることになる。図3は後方励起光一波構成のラマン増幅器により信号光一波を増幅するものである。ここまでの議論は第3図の構成にも同様に適用可能である。
【0035】
線形近似の考え方(3波以上に拡張)
これまでの考え方は任意の光の数に拡張可能である。信号光がm波、励起光がn波とする。また励起光は前方も後方も含めてよいとする。そのときの構成図は第4図である。第4図は前方励起光、後方励起光の計n波構成のラマン増幅器によりWDM信号光m波を増幅するものである。ここで各励起光源は複数の励起LDから構成されており、各励起LDからの出射光は波長合波器によって合波される。また、各波長の励起LDは波長合波前もしくは後に、偏波合成やデポラライザによって利得の偏波依存性を解消するように構成されてもよい。図中のλは各波長を表しており、添字の一つ目のS、Pはそれぞれ信号光、励起光を示しており、添字の二つ目はそれぞれ信号光、励起光の番号を示している。必ずしもm = nである必要はなく、一般にWDM伝送ではm>nであることが多い。(15)式は以下のように拡張できる。
【0036】
【数21】
【0037】
信号光、励起光の変動量をそれぞれε,ηとしている。Aは(m+n)×(m+n)の行列である。(16)式は、入力励起光パワー、出力励起光パワー、入力信号光パワー、出力信号光パワーの4つの変動量の組のうち、2つの組がわかれば残りを決定できる事を示している。但し、決定すべき未知量の数が条件数を超えてはならない。条件数が多い場合は線形最小二乗法で未知量を決定する。本実施例では最小二乗法を用いているが、偏差の四乗和を最小にする方法など、目標値からのずれを小さくする目的であれば他の手法を用いてもよい。
【0038】
線形近似の応用方法
ここで、後方励起光で入力信号パワーが変わらないとして、出力信号パワーをある目標値まで変動させたい場合に、それに応じた励起光パワー変動量を求める場合を例として説明する。但し、信号光、励起光ともに一波として考える。(15)式を用いてη(L)を導き、励起光パワーをPP0(L)+η(L)と変換して非線形のパワー伝搬方程式を解けば、目標の信号出力が得られると仮定している。しかし実際は線形近似をおこなっていることから、目標の信号出力との誤差が生じる。(9)式から誤差の程度を推定すると、誤差は目標信号出力への変動量の二乗にほぼ比例することがわかる。よって誤差を小さくするためには出力信号変動量をある程度小さくする必要がある。すなわち出力信号を目標値に近づけるまでに仮目標値を設定し、段階的に目標値に近づける方法を用いることよって、線形近似による予測の精度を高めることができる。
【0039】
この手法において段階を踏んでいくためには、1ステップごとに行列Aを更新する必要がある。行列Aを精度良く決定するためには、変動前の励起光、並びに信号光パワーの長手分布が正確にわかっていなければならない。
そこで変動前の励起光、並びに信号光パワーの長手分布の更新方法として以下の三つをあげる。
【0040】
(1)1ステップごとにPS0(z)→PS0(z)+ε(z), PP0(z)→PP0(z)+η(z)と最新の予測解に更新して収束させる。但し、ε(z), η(z)は線形近似によって求められており既知である。この手法は非線形の式を解かないので非常に計算時間が速い。線形近似による誤差がステップごとに加わっていくので、目標値との最終誤差を許容範囲に収まるようにステップ幅を設定する必要がある。この手法は高速におこなえることから、主にラマン増幅器の制御、調整に有効である。また、初期段階に非線形の式を解いているが、変動前の長手分布パワー情報が必要なだけなのでこの情報が既にわかっていれば、完全に線形計算のみで解が導ける。
【0041】
(2)上記(1)の方法で収束したのちに、レイリー散乱項、ASE項を含んだパワー伝搬方程式を解いてPS0(z), PP0(z)を正確な解に更新し、その値を用いて(15)式を用いてパワー変動量を決定する作業を繰り返す。非線形の式を解いて目標値との差を毎回確認できるため、確実に最適値に収束する。この手法は精度が非常に良いことから、主にラマン増幅器の設計に有効である。
【0042】
(3)毎回のステップごとに変動前の長手方向パワー分布を、パワー伝搬方程式を解いて正確な解に更新する。最終的に得られる値としては(2)と原理的に同じであり、主にラマン増幅器の設計に有効である。このときのステップ幅は2dB以内であれば十分である。2dBと決定した理由は後述する。
【0043】
既知の条件から次の仮目標値までのステップ間隔は予測を行う条件によって、種々の形態を取り得る。例えば、本発明実施例ではステップ間隔の設定をdB単位で一定となるように行ったが、基準となる光出力に対する比が一定となるように間隔を設定してもよい。また、光出力(単位:W)での間隔が一定になるように設定することも可能である。さらに、このステップ間隔は必ずしも一定値でなくてもよい。例えば、予測誤差が発生しやすい条件下では細かく、比較的誤差の少ない条件下では粗めにしてレスポンスを向上させてもよい。これらは、要求される予測精度と速度を両立する好適な組合わせとするのが望ましい。
【0044】
(3)の手法において2dBと決定した理由について説明する。出力信号パワーに関して、「変動前の値と仮目標値の差」と「変動後の値と仮目標値の差」を比較する。もし「変動後の値と仮目標値の差」のほうが大きければ繰り返し作業をおこなっても発散してしまう危険性がある。これは(9)(10)式における非線形項を無視していることから生じる。よって「変動後の値と仮目標値の差」のほうが小さくなるようなアルゴリズムが必要である。(9)式右辺第一項〜第三項はε、ηに関して線形項である。第四項はε、ηに関して非線形項である。線形近似ではこの第四項を無視している。第5図に関して線形近似によってεS(L) = εTを目指しているが、実際はεNLが誤差として現れる。第5図は信号光パワーの変動量の長手分布の概略である。εNL, εTそれぞれを(9)式から書き下すと以下のようになる。
【0045】
【数22】
【数23】
【0046】
ここでεT>εNLであれば元の値よりも目標値に近づく。αSが十分に小さいと考えて(9)式右辺第一項を無視すると(18)式は以下のように書き表せる。
【数24】
ΣT >εNLになるためには(17)(19)式より
【数25】
【0047】
となればよい。この系ではPP0、ηは正なのでPS0>εであれば上式は成り立つ。従って仮目標値との差が3dB以内であれば、元の値より仮目標値に近づく。
【0048】
本実施例では上式で省略したロスの影響を考慮し、この値を2dBと設定した。
即ち目標値との差が2dB以上であれば、目標値に2dB近づけた値を仮目標値と決定する。2dB以内であれば仮目標値を立てず、目標値になるように(15)式を解く。もちろん個々の状況に合わせて、目標値に近づける速さや安全性を考慮した上適正な数値を見出すことにより、2dB以外の値を設定してもよい。
なお、ここまでの手法は3波以上の場合についても、同様に適用することができる。
【0049】
ここまでの手法は入力信号一定、出力信号を目標値にするために励起光パワーを決定する説明であった。他にも、入力信号と出力信号が逆の立場の場合や、出力信号と励起光パワーの変動量が既知で入力信号を推定する場合など、(16)式における4つの組の変動量のうち、二つが既知で残りの二つを決定する目的であれば、ここまでの応用方法は適用できる。
【0050】
また、ここまでの議論ではPS0(z)、PP0(z)の真値を求めるために非線形方程式を解く、あるいは、線形近似によって求まった変動量を加えているが、代わりに実システムに適用し測定を行って数値を求めても構わない。また、測定値をベースにして求めた値を用いても構わない。例えば、前記測定はOTDRによって行われる。
【0051】
第6図〜第8図は、設計における最適入力パワーを決定するフローチャートであり、第6図では、非線形伝播方程式を解いて、信号パワー、励起パワーの長手分布を求めているのに対し、第7図では、テーブルから信号パワー、励起パワーの長手分布を取得するようにしている。また、第6図および第7図では、仮の目標値に到達しなかった場合、求めた変動量長手分布を、もとの長手分布に足して新たなパワーの長手分布に設定しているのに対し、第8図は、仮の目標値に到達しなかった場合に、求めた励起光入力変動量よび励起光出力変動量から入力信号パワー、入力励起パワーを設定し、その都度非線形伝播方程式を解いて、新たなパワーの長手分布を求めるようにしている。また、第9図は、出力信号変動を抑える制御手順を示すフローチャートである。
【0052】
ここで、出力信号の検知を含めた具体的な構成について説明する。
第10図に、ラマン増幅器1の構成について示す。信号光2は画面左側からラマン増幅器1の入射端3 (z = 0) よりラマン増幅器1に入射する。一方、励起光12は励起光源11から出力されたのちに光伝送用ファイバ4の後方から光合波器5を介して入力される。信号光2は増幅媒体として作用する光伝送用ファイバ4中にて励起光12が発生させる誘導ラマン散乱によって光増幅された後、出射端 (z = L) から出力される。第1図に示されるラマン増幅器の構成においては、出射端は光合波器5と同一である。増幅媒体は、本実施の形態のような分布型ラマン増幅器においては光伝送路自身であり、集中型ラマン増幅器においては分散補償ファイバ(DCF)など、非線形性の高いものが使用される。
【0053】
励起光源11は第11図に示すように、複数のレーザ素子21a〜21nから出射された励起光が合波器22によって合波され出力用ファイバ23から出射するように構成される。合波器22としては、レーザ素子の波長や出力光の偏波状態を決めるファイバの種類によって、単数もしくは複数の波長合波器や偏波合成器などが組み合わされ、異なる波長や偏波状態を持った励起光が合波される。なお、複数のレーザ素子の出力光は、各レーザ素子の出力端もしくは合波器の出力端に設置されたデポラライザ24によって無偏光化した後に光合波器をへて光伝送用ファイバに入力されてもよい。たとえば第11図に示した励起光源11の場合、複数のレーザ素子21a〜21nの出力ファイバは偏波保持ファイバであり、それぞれデポラライザ24を経て合波器22に接続される。この場合、合波器22としては波長合波器(WDMカプラ)が使用され、これには単一の合波器で3波以上の合波も可能なマッハツェンダ型のものや、第12図に示すように、誘電体多層膜によって2波長の光を合波するように構成されたWDMカプラ22a〜22hを複数組合わせたものなどがある。また、その他の励起光源11の形態として第13図に示すようなものがある。まず、それぞれが直交する偏波状態を持った励起光源26aと26bを偏波合成器25bで合波し、同様に励起光源26cと26dを偏波合成器25cで合波する。その後両者の出力ファイバは波長合波器25aで波長合成された後に出力される。これらの構成は、ラマン増幅器が持つ光増幅の偏波依存性を解消し、かつ、所望の利得波長帯域をカバーすることを目的としている。そのため、この目的に沿うものであれば、本実施の形態で例示されたものに限られない。なお、励起光源11を構成する複数のレーザ素子はファブリペロー型の共振器構造を持つ半導体レーザチップをモジュール化しファイバ出力を得るようにしたものでも良いし、このようなレーザ素子(モジュール)にFBG(Fiber Bragg Grating)などの外部共振器を用い、波長を安定化させたものでもよい。またFBGの代わりに、半導体レーザチップ自体に波長安定化を目的とした共振器構造を構成しても構わない。これらの波長安定化手段を用いることで、各レーザ素子からの出力励起光パワーを調節しても波長が安定するため、本発明による利得調整の精度がさらに向上するというメリットがある。
【0054】
このように、励起光源11を構成する複数のレーザ素子が複数の波長からなる場合、各励起光の強度を調節することにより、任意の利得波長プロファイルを得ることができる。制御装置14は以下のようにして各波長の励起光制御を行う。ここで制御とは、入力信号の変化や線路状況の変化により出力信号が変化した場合、その出力を仕様によって要求される範囲に保つ、または、復帰させるように励起光パワーを変化させることを示す。
【0055】
まず、第14図に示すように、光増幅され出力された信号光7の一部は光分岐器6によって分岐され、その後受光部13に導入される。受光部13に導入された信号光の一部はモニタ光8として更に光分岐器30によってほぼ等パワーになるよう、複数のポートに分岐される。この分岐数は、制御装置14がラマン利得の制御のために必要とする数によって決定される。分岐された信号光は全信号チャネルの波長を含むため、BPF(Band Pass Filter)31a〜31mなどによりモニタに必要な波長成分以外はカットされ、各分岐ごとに異なる波長域のみが抽出されたのちに複数の受光器32a〜32mに入力する。受光器としては、PD(Photo Diode)が使用されることが多い。制御装置14は、複数の受光器32a〜32mから得られる各信号光波長ごとの強度情報をラマン増幅器の利得波長特性とし、これが所望の強度分布になるように各波長の励起光強度の制御を行う。
【0056】
なお、受光部13は第15図に示すように、マッハツェンダ型の波長分波器33と受光器を組み合わせて用いてもよい。このような構成にすることで、より構成を簡略化するだけでなく、必要な波長光だけを低損失で抽出し、より正確な制御に反映させることができる。また、マッハツェンダ型以外には、第16図に示すように誘電体多層膜フィルタを用いた波長合分波器34a〜34mを複数組み合わせてマッハツェンダ型の波長分波器33のかわりとし、各受光器のそれぞれに、信号光増幅帯域の別々の波長が入力されるように構成してもよい。
また、波長分波器33は、AWGで構成してもよいし、ファイバ型カプラで構成してもよい。
【0057】
本実施の形態では、第17図に示すように、第10図で示した後方励起型ラマン増幅器が縦列に2つ接続されたものについて、前段側のラマン増幅器100aにおける励起光源11aを構成するレーザ素子のうち1つが故障した場合の制御について述べる。故障したレーザ素子は、短波長側から5番目(1451nm)のものとする。なお、信号光出力のモニタおよび制御については、後段側のラマン増幅器100bの出力側でモニタし、後段側のラマン増幅器100bの励起光源11bを制御するものとする。前段側でのモニタや制御は行わないので、図中これらは割愛している。なお、信号光、前、後段のファイバ4aおよび4b、励起光、Net Gainなどの条件は以下のようにする。
【0058】
信号光:1530-1604nm、100GHz間隔、90ch、入力信号光パワー= 0dBm/ch
ファイバ(前後段とも):DSF(Dispersion Shifted Fiber)、100km
励起光(前後段とも):後方10波
Net Gain:0dB
【0059】
これらの条件を満足する各励起光波長とそれらに必要なパワーは表1のようになる。
【表1】
【0060】
本実施の形態では、受光部13のモニタ数を励起光波長数と同一としている。この理由については後述する。すなわち、励起光源11a、11bから出力された、励起光12a、12bが発生する利得波長帯域を複数の受光器32a〜32mと同数になるように分割し、複数の各受光器にはある特定の選択された信号光波長数のみが入力されるよう構成されている。具体的な数値については、表2のとおりである。
【0061】
【表2】
【0062】
より具体的には、励起光12a、12bが発生する利得波長帯域を周波数軸上で等分し、複数の受光器32a〜32mで利得波長特性をモニタしている。このとき、各受光器32a〜32mに入力する信号光の波長選択は、2通りの方法で行った。
【0063】
第一の方法は第18図に示すように、等分された波長域のある代表波長の信号光のみ選択して各受光器に入力する方法である。受光部13は例えば第14図に示すような構成となる。受光器32a〜32mにおいては、BPF31a〜31mの透過帯域を狭くし、究極的には信号1チャネルのみをモニタの対象とするように設定される。本実施例においては、各波長域の中央付近にある波長を対象とした。この方法は信号光出力と波長の関係が明確になるため、測定精度が高められるという利点がある。
【0064】
一方、第一の方法ではパワーが小さくなるために感度がとりにくく、BPFの透過波長精度への要求もより高いために実現が難しい場合がある。そのような場合、第二の方法が有効である。第二の方法は第19図に示すように、等分された波長域に含まれる信号チャネルのうち、複数のパワーを受光器でモニタする方法である。例えば第14図のような構成をもつ受光部13の各受光器において、BPF31a〜31mの透過帯域を広めに取ることによって構成される。また、これら第一、第二の方法において受光部13を第15図、第16図のいずれに示すような構成としてもよい。この場合は、光分波器33の各ポートへの透過帯域を調整することで同様のことが実現される。これにより複数の信号チャネルを含み、受光感度が高めに取れる他、BPF31a〜31mや波長分波器33などに対する波長精度についての要求などが緩くなるなどの利点がある。ただし、モニタされたパワーの情報と実際の各信号光波長におけるパワーの関係が若干不明瞭になるため、後述の繰返し法などにて必要な精度に応じ最適値を探す必要がある。このように、実際に帯域を指定する場合は感度と測定精度を両立する条件が選定されるべきであることは言うまでもない。本実施の形態ではこの複数のパワーをモニタする方法として、第20図に示すように等分された波長域に含まれる信号チャネル全てに対し、ほぼ同程度の透過率を有する誘電体多層膜フィルタを用いた。
【0065】
各BPF31a〜31mや波長分波器33の透過波長帯の選定は、本実施の形態のように、信号光の利得波長帯域を周波数上で等分してもよいし、波長で同様のことを行っても良い。また、励起光11を構成する各レーザ素子、例えば第11図では21a〜21nのそれぞれのピーク波長もしくはRMS(Root Mean Square)波長から100nm程度長波長側を含むように設定したり、この波長を各受光器の感度が最良となる波長と略一致するように設定してもよい。これはラマン利得のピークが励起光波長から約100nm(周波数で約13THz)長波長側にあるためで、このピーク近傍にBPF31a〜31mの透過波長帯を合わせることで各受光器32a〜32mの感度を良好に得ることができる。
【0066】
しかし実際には信号チャネル数が90chあるため、本実施例のように10箇所のみのモニタでは、全体の利得波長特性を測定するのには不十分である。そのため、各チャネルの信号光出力分布を正確に補間する必要がある。本発明はこの補間の方法について与えるものであり、本発明によれば、各励起光のラマン利得効率スペクトルの重ね合わせの原理を用いているため、信号光モニタが全信号光波長に対して行われなかった場合においても、その一部についての情報から全ての信号光波長の出力を正確に知ることができる。以下に具体的な方法について説明する。
【0067】
第17図に示す2台のラマン増幅器100a、100bを接続した系において、前段(添字f)における励起光 (パワーPf,j ; j = 1〜n)はn波、後段(添字b)における励起光(パワーPb,j ; j = 1〜n)もn波の励起波長がそれぞれ波長多重 (WDM;Wavelength Division Multiplexing)されており、信号光 (前段パワーSf,i ; i = 1〜m、後段パワーSb,i)はm波(チャネル)の信号光が波長多重されているものとする。
【0068】
まず前段に関してi番目の信号光の伝搬方程式は、レイリー散乱項、ASE項、シグナル間ラマン項を無視すると
【数26】
【0069】
となる。ここでαiはi番目の信号光の吸収係数、gjiはj番目の励起光とi番目の信号光間のラマンゲイン効率、zは長手方向の位置を表している。第17図において、z = 0はラマン増幅器の入力端3a、z = Lはラマン増幅器の出力端である。ラマン増幅器の場合、光伝送路を増幅媒体として用いた分布型増幅器においては入力端の定義は難しいが、概ね、当該ラマン増幅器の直前の段に接続された光増幅器の出力端のあたりか、ラマンゲインもしくは励起光パワーがおおむね0となるあたりが選ばれる。また、出力端は、第17図においては、光合波器5aがz = Lとなる。増幅用ファイバ一段あたりのファイバ長をLとすると、出力端と入力端の信号光パワーの比は以下のように表せる。
【0070】
【数27】
【0071】
上式を正常時のものとする。故障時には、その信号光パワーと励起光パワーをそれぞれSf,i’(z)、Pf,j’ (z)とすると、同様に以下のように表せる。
【0072】
【数28】
(32)÷(33)をおこなうと
【数29】
【0073】
(34)式を導いた過程と同様のことを後段に関しておこなうと、入力端3b、出力端5bで決まるファイバ長がLであることから、正常時と故障時の信号光パワーをそれぞれSb,i(z)と Sb,i’(z)、正常時と故障時の励起光パワーをそれぞれPb,j(z)と Pb,j’(z)として、
【0074】
【数30】
【0075】
従って、(35)式によって正常時と故障時の出力信号光パワーの比、つまり、モニタ位置の信号光パワーの比を表すことが可能である。(35)式をリニアスケールからログスケールに変換すると以下のようになる。
【数31】
となる。
【0076】
ここまでの議論は、信号間ラマンの効果を無視してきた。信号間ラマンにより、短波長側の信号チャネルから長波長側の信号チャネルへパワーが伝搬することにより、短波長側のゲインが減り、長波長側のゲインが増える。これによりゲインの波長依存性に勾配が生じる。これをラマンチルトと呼ぶ。これは、信号帯域にわたって大局的に勾配がかかる現象であるので、各励起光からのラマン利得効率スペクトルの重ね合わせで十分表現できる。従って以下からはDjには信号間ラマンの効果を補償する近似項を含んでいると仮定する。
【0077】
ここでまず、前述の第一の方法について述べる。1つの受光器で1つのチャネルの出力信号光パワーをモニタできるとすると、正常時と故障時の出力信号光パワーの概念は第21図に示したようなものになる。それぞれ、図中、黒丸で示されたチャネルのパワーが既知であることを示している。まず正常時においては、各励起光出力の設計時に全てのチャネルのパワーが計算されているため、全てが既知である。ここで、設計とは目的とする仕様(出力信号光パワー、ラマンゲイン、ネットゲインなど)を満足するために、最適な励起光パワーを決定することを示す。しかし、故障時においてはどの励起光が故障するかはわからないので、モニタしたチャネルのパワーのみが既知であり、それ以外のチャネルのパワーは未知となる。未知のパワーは白丸で示している。すなわち、このとき、モニタしたチャネルをI = 1, 2, …, n とすると(36)式は
【0078】
【数32】
と表すことができる。よってI = 1, 2, …, nに関して書き下すと
【数33】
となる。GIと行列gは既知なので
【数34】
とすれば、n個全てのDjが求まる。(39)式より、受光部のモニタ数が励起光波長数以上であれば、全てのチャネルの信号光パワーを導くための必要十分条件を満足し、全てのチャネルの信号光パワーを正確に予測できることがわかる。従ってこの場合、 (36)式より全信号チャネル(i = 1〜m)に関して以下の式のようにしてGiが求まり、結果的にGiの定義より、故障時の全チャネルの出力信号光パワーが求めることができる。
【0079】
【数35】
【0080】
本実施例ではラマン増幅器が二段接続された系について説明をおこなったが、ラマン増幅器が三段以上接続された系についても適用可能である。例えば、入力信号光パワーがわかっているラマン増幅器から出力をモニタしているラマン増幅器まで、ファイバ長Lのアンプがl段直列に接続されているとする。何らかの要因によりk段目(1≦k≦l)の励起光パワーの長手分布がPk,jからP’k,jとなり、それによりl段目の出力信号光パワーがSl,i(L)からS’l,i(L)へ変動した場合を考える。この場合は
【0081】
【数36】
とすればよい。但し、信号光パワーの予測を実際におこなう際には、前述の議論にあるように、上式のDjには信号間ラマンの効果の補償項が含まれるものと仮定する。
【0082】
このようにして導出された全チャネルの出力信号光パワーの数値を用い、ラマン増幅器の制御を下記の方法にて行う。
【0083】
パワーの変動量に関する非線形の伝播方程式において、変動量の2次の項を無視することにより線形微分方程式に近似できる。線形であることから入力パワー変動量と出力パワー変動量の関係式を以下のように表すことができる。
【数37】
【0084】
ここで、m波の信号光の入力端(z=0)におけるパワー変動量をε1(0)、ε2(0)、…、εm(0)、出力端(z=L)におけるパワー変動量をε1(L)、ε2(L)、…、εm(L)、n波の励起光の入力端(z=0)におけるパワー変動量をη1(0)、η2(0)、…、ηn(0)、出力端(z=L)におけるパワー変動量をη1(L)、η2(L)、…、ηn(L)としている。(41)式で示されたように、パワー変動量は上記の4つのグループに分けることができる。Aは(m+n)×(m+n)行列で、変動していない状態の信号光パワー、励起光パワー、ファイバパラメータだけで決定されるので既知である。また、WDM伝送では一般的にm>nである。この4つのグループのうち、2つを決定すれば、式(31)を用いて残りの2つは自動的に決定される。
【0085】
まず制御手法の一段階目として、出力信号光パワーの変動量ε1(L)、ε2(L)、…、εm(L)のモニタ結果として、(40)式から導かれた各信号光パワーの数値を用いる。また、入力励起光パワー変動量η1(L)、η2(L)、…、ηn(L)は全て0である。これらを式(41)に代入することにより、入力信号光パワー変動量ε1(0)、ε2(0)、…、εm(0)を推定できる。
【0086】
次に二段階目として、推定した入力信号光パワー変動量ε1(0)、ε2(0)、…、εm(0)と、出力信号光パワー変動量を全て0にして式(31)に代入すると、自動的にそれを満たすような入力励起光パワー変動量η1(L)、η2(L)、…、ηn(L)が求まる。
【0087】
このようにして求められた励起光パワーには線形近似による誤差が生じる。この誤差を軽減するため、一段階目ではモニタした出力信号光パワーに近づけるように中間的な仮目標値を立てることを繰り返して入力信号光パワーを推定する。二段階目も同様にして、入力励起光パワーを決定する。このときの仮目標値と変動前のパワーの比をステップ幅と定義している。
【0088】
上記二段階のステップを複数回繰り返すことにより、最終的に所望の信号光利得波長特性に収束させることができる。
【0089】
第22図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、本実施の形態による補間手法を用いて予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印がほぼ点線上に乗っており、故障時の出力信号光パワーが精度良く補間されていることがわかる。また、制御時の出力信号光パワーに関しても黒丸が実線上にほぼ乗っていることから、精度良い制御がおこなわれている。
【0090】
ここで、信号光90チャネル全てをモニタすることによって制御を行い、その場合の信号光出力の波長特性を測定した結果を第23図に示す。具体的には、後段出力端において信号光チャネル数と同数、すなわち90個の受光器を配置して出力信号光パワーをモニタしている。第23図には正常時を実線、故障時を点線、制御時を黒丸として、後段出力信号光パワーの波長特性が示されている。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮変動量を設定する方法を用いた。なお、90個の受光器に代替するものとして、光スペクトラムアナライザ(OSA:Optical Spectrum Analyzer) を用い、実際にラマン増幅器からの信号光出力の波長特性をモニタする方法を用いてもよい。
【0091】
この場合、正常時の出力信号光パワーの最大値と最小値の差(Max-Min)は0.378dB、故障時では1.804dBとなっている。制御時にはこのMax-Minは0.398dBとなり、正常時に非常に近い値となっている。即ち、信号光チャネル数と同数の受光器を配置することにより、全信号チャネルの出力が正確に測定され、精度の高い制御を行うことができる。
【0092】
ここで、Max-Min以外の評価パラメータとして、全チャネルに関して、制御時の出力信号光パワー[dBm]と正常時の出力信号光パワー[dBm]の差[dB]の二乗の和を全チャネル数で割り、平方根をとったものを「制御時標準偏差」と定義する。この値は0.0415であり、一方のラマン増幅器の励起波長が一部故障した場合においても、他のラマン増幅器の制御によって十分にカバーできることが確認された。
また、本実施の形態による制御時には、Max-Minは0.393dBとなり、この補間方法により、90ch全てをモニタ(0.398dB)するのと同様の精度の制御が可能であることが示され、制御時標準偏差も0.0415と、非常に良好な結果が得られた。この第一の方法によってモニタを行った場合、(31)式で仮定した近似以外の誤差は生じないため、上記の結果で示されたように高い精度での制御が可能である。
【0093】
一方、前記第一の方法においては、モニタ光のパワーが小さくなるために感度がとりにくくなったり、BPFの透過波長精度もより高いものが求められる場合がある。このような場合、モニタ波長域が複数の信号光チャネルを含むようにすることで受光感度や波長精度を緩和することができる。特に最も広くモニタ波長域を取った場合については、前述の第二の方法によって誤差を最小限にし補間を行うことができるため、以下にこの第二の方法について説明する。
【0094】
この方法の概念図を第24図に示す。本実施例においては、励起光波長数がnなのでモニタ波長域の数もnである。また、各モニタ波長域内の信号チャネル数をlとする。すなわち、本実施例においてはn=10、l=9である。また、記号を簡単にするため
【0095】
【数38】
【0096】
とする。また、各モニタ波長域内のある一つの代表波長のパワー(未知の値;本実施例では各モニタ波長域の中心波長のチャネルとした)が、各モニタ波長域内の平均パワー(モニタ値からPDの感度を考慮して換算されたパワー)と等しいとして、前述の第一の方法、すなわち代表波長の信号光からラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間を用いて、求まった故障時の出力信号光パワー(図中白丸)をqiとする。
【0097】
1つの受光器がモニタするのはJ番目のモニタ波長域内のl個のチャネルの合計パワーとすることから
【数39】
【0098】
は既知である。従って上記のqiとして求まったモニタ波長域内の代表チャネルパワーに
【数40】
【0099】
をかけたものをモニタ波長域内の新たな代表チャネルパワーとして更新(図中黒丸)して前述の第一の方法と同様の手法で再度、故障時の全信号チャネルの出力パワーを求める。この試行を繰り返し、その繰り返し回数に関して、(42)式が全てのJにおいてある範囲内に収まれば収束と判断する。本実施例においては、収束判定する範囲を0.999〜1.001と設定し、試行回数は3回となった。
【0100】
第25図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、第二の方法により予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印がほぼ点線上に乗っており、故障時の出力信号光パワーが精度良く補間されていることがわかる。また、制御時の出力信号光パワーに関しても黒丸が実線上にほぼ乗っていることから、精度良い制御がおこなわれている。制御時にはMax-Minは0.400dBとなり、90ch全てをモニタするのに非常に近い精度の制御結果が得られた。制御時標準偏差は0.0426となり、この手法でも第一の方法によるものと同等の結果が得られることが確認された。
【0101】
本実施の形態では、励起光数(n個)と同じだけのGiがわかっていれば、全信号チャネル数(m個)のGiが導けることを示した。しかし、実際には励起光数(n個)と同じだけのΣGiがわかっていれば、(36)式を拡張した以下の(43)式より、まずDjを導き、さらに全信号チャネル数(m個)のGiを導くことができる。但し、ΣGiにおいて、Giの和の個数は任意である。
【数41】
【0102】
なお、光フィルタの透過スペクトル特性によって、1つのモニタで受光する複数の信号光パワーに重み付けがされている場合(図7)は、以下の(44)式でモニタ値:Pmonitorを表現できる。但し、wiは各信号光パワーの重み係数である。n, iはそれぞれ、分割した波長域の全てまたは一部の信号チャネル数、信号チャネルの番号を示す。Piは各信号チャネルのパワーを示している。
【数42】
【0103】
上式において、wi、Pmonitorは既知であり、求めたい値はPiである。前記第二の方法と同様に、Piの初期値を決定して、繰り返しPiを更新して収束させる方法を用いる。初期値として、Pi (i = 1〜n)がすべて等しいと仮定すると(44)式より、
【数43】
となり、初期値のPiが求まる。従って、以下のようにすることで、上記第二の方法と同様の手順で全信号チャネルのパワーを求めることができる。
【0104】
(A)モニタ波長域の代表波長の信号光パワーを(15)式で求めたPiとする。正常時の出力信号光パワー(既知)とPiの差がモニタ波長域の代表波長のGiとなる。モニタ数と同じ数のGiが既知となるので、ラマンゲインの重ね合わせの原理(前記第一の方法)によって全ての信号チャネルのGiがわかる。正常時の出力信号光パワー(既知)とGiを用いて、全ての信号チャネルのPiがわかる。
【0105】
(B)但し、この段階ではPiを(44)式の右辺に代入しても、 (44)式の左辺であるモニタ値とは一致しない。従って各モニタ波長域に関して、全てのPiに係数hをかけて、モニタ値と一致させる過程を下式のようにとる。
【数44】
Pmonitor, wi, Pi は既知なので、
【数45】
とすれば、hが求まる。そしてhPiを新たなPiとして更新する。
【0106】
上記(A)〜(B)の過程を繰り返し、全信号チャネルのパワーPiを収束させる。収束判定条件としては、hが、たとえば0.999〜1.001など、ある設定した範囲に入れば収束とする。以上の手法によって、第19図で示した任意の透過帯域をもつバンドパスフィルタを用いても、モニタ数が励起光数以上あれば、全信号チャネルのパワーを精度良く予測できる。
【0107】
なお、第26図に上述した信号パワーの決定処理手順をフローチャートとして示している。
【0108】
実施例(EMBODIMENTS)
設計
ラマン増幅器の励起光パワーの設計を行う場合、設定必要なパラメータやそれに関連した状況、選択される具体的な方法等について以下のような分類ができる。但し、励起光の数と波長は既に決まっているものとする。
【0109】
i.ファイバの特徴
1.分布型
2.集中型
ii.励起方式および励起波長の組み合わせ
1.前方励起のみ
2.後方励起のみ
3.双方向励起において前方励起と後方励起が同じ波長が存在するもの
4.双方向励起において前方励起と後方励起が同じ波長が存在しないもの
iii.設計前の励起光パワーの設定
1.初期値が最適値に近い
2.励起光間のラマン効果を考慮せずゲインの重ね合わせの原理により目標のゲインが得られるように決定した各励起光パワーを初期値とする
3.各励起光パワーを全て同じにし、総励起光パワーを上記2にほぼあわせる。
4.各励起光パワーを全て同じにし、総励起光パワーをごく小さいものとする。
iv.行列Aの更新方法
1.前回のステップの線形近似手法によって求まったパワー変動量を元のパワーに足し合わせ更新する方法のみ用いる。
2.上記1に加え、状況によっては、前回のステップの線形近似手法によって求まった励起光パワーを用いて非線形伝搬方程式を解き正確なパワーを求め更新する手法をとりいれる。
v.目標値への近づけ方
1.目標値に近づけるまでに仮目標値を立てる。
2.目標値に近づけるのに仮目標値を立てない。
【0110】
本発明では上記分類のいかなる組み合わせも含む。i-2「集中型」については、ファイバ長とファイバパラメータを変更することにより、同様に扱うことができる。まず実施例1〜7ではiの条件は1、ivの条件は2に固定した組み合わせに関するものである。
【0111】
実施例1(Example1)、設計分類:i-1, ii-1, iii-1, iv-2, v-2
まず、励起光パワーの初期値が最適値に近く、前方励起のみの場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 0.1mW/ch
励起光:前方励起のみ8波
ファイバ:Single Mode Fiber (SMF), 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0112】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。励起光パワーとは伝送用光ファイバに入力されるパワーであり、以後、励起光パワーと表記するものは伝送用光ファイバに入力されるパワーを示す。第27図に出力信号パワーの移り変わりを示す。第27図の結果を見てもわかるように、Cの励起光セットでほぼ最適なゲインが得られていることがわかる。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられない。即ち、この励起光波長の組み合わせにおいて、最適な励起光パワーの組み合わせが得られたということが示された。
【0113】
実施例2(Example2)、設計分類:i-1, ii-2, iii-1, iv-2, v-2
励起光パワーの初期値が最適値に近く、後方励起のみの場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
励起光:後方励起のみ8波
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0114】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。第28図に出力信号パワーの移り変わりを示す。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられない。すなわち、後方励起のみの系に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0115】
実施例3(Example3)、設計分類:i-1, ii-3, iii-1, iv-2, v-2
励起光パワーの初期値が最適値に近く、双方向励起の場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0116】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。後方励起8波の波長は実施例2と同じ波長を用い、その短波長側4つと同じ波長の前方励起を加えてやり、計12波のポンプセットを考える。設計には、前方、後方どちらのパワーも動かすと一意に決められないので前方の励起光パワーはあらかじめ固定しておく。第29図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第29図の結果を見てもわかるように、Cのポンプセットで十分最適なゲインが得られていることがわかる。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられず、収束したといえる。すなわち、双方向励起の系に関して前方励起光パワーを固定して最適な後方励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0117】
実施例4(Example4)、設計分類:i-1, ii-4, iii-1, iv-2, v-2
励起光パワーの初期値が最適値に近く、実施例3と同様に双方向励起の場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0118】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。励起光を8波とし、その波長は実施例2と同じ波長を用いる。そのうち前方励起を3波、後方励起を5波とする。全て異なる波長なので、全ての励起光パワーを変動させて設計する。第30図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第30図の結果を見てもわかるように、Cのポンプセットで十分良いゲイン特性が得られていることがわかる。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられず、収束したといえる。すなわち、双方向励起の系に関して最適な前方励起光パワーと後方励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0119】
実施例5(Example5)、設計分類:i-1, ii-2, iii-2, iv-2, v-1
励起光間のラマン効果を考慮せずゲインの重ね合わせの原理により目標のゲインが得られるように決定した各励起光パワーを初期値とした場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0120】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。また、目標値に2dBずつ近づけるように仮目標値を立てる方法を用いる。即ち目標値と2dB以上離れている信号チャンネルは2dB目標値に近づくように、2dB以内のチャンネルは目標値に一気に近づくようにする。設計前の励起光パワーは励起光間のラマン効果を無視しているので、出力信号の波長特性が大きくチルトがかかることが予想される。第31図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第31図の結果を見てもわかるように、Eのポンプセットで最適なゲインが得られていることがわかる。Eからさらに繰り返し計算をおこなっても改善はみられない。即ち、このように設計前では大きくチルトがかかっている系に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0121】
実施例6(Example6)、設計分類:i-1, ii-2, iii-3, iv-2, v-2
励起光間のラマン効果を考慮せずゲインの重ね合わせの原理により目標のゲインが得られるように決定した総励起光パワーを各励起光に等しく配分したものを初期値とした場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0122】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。また、仮目標値を立てずに目標値に一気に近づけることとする。第32図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第32図の結果を見てもわかるように、Cのポンプセットで十分最適なゲインが得られていることがわかる。Eからさらに繰り返し計算をおこなっても改善はみられない。即ち、このように設計前で総励起光パワーが最適値に近く、各励起光パワーを等しくした場合に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0123】
実施例7(Example7)、設計分類:i-1, ii-2, iii-4, iv-2, v-1
各励起光パワーをごく小さくしたものを初期値とした場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0124】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。また、目標値に2dBずつ近づけるように仮目標値を立てる方法を用いる。設計前の励起光数、波長は実施例5と同じで、その各パワーはすべて10mWとしている。第33図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。A→Dが全チャンネルに関して目標値に2dB近づけているのに対し、D→Gは全チャンネルに関して一気に目標値へ近づけている。Gよりさらに繰り返し計算をおこなっても改善はみられない。即ち、このように設計前で各励起光パワーが最適値に比べ大きく離れている場合に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0125】
実施例8(Example8)、スーパーポジションとの一致
励起光間のラマン効果を無視し、各励起波長から現れるラマンゲインスペクトルを重ね合わせの原理によって重ね、最適に平坦化されたプロファイルを考える。設計においてこれに近い値が得られればある複数の励起波長の組に対して、最適な励起光パワーが得られたと判断できる。
【0126】
分布型でDispersion Shifted Fiber (DSF)、ファイバ長100 km、信号波長域1530〜1610 nm、100GHz間隔で総チャンネル数97ch、入力信号光パワー0dBm/ch、励起光は後方10波、励起波長は決定済とし、ラマンゲイン20dBを実現するように励起光パワーを自動的に求めることとする。各励起光パワーの初期値を10mWとした。第34図は設計前の励起光波長とパワーを表している。このとき得られるラマンゲインは平均約2dBであり、目標値と18dBの違いがある。第35図に3種類の手法で求めたラマンゲインの波長特性を示す。黒三角は初期状態からゲインを1dBずつ上げるように仮目標値を設定して、途中で用いる行列Aは線形近似の結果を用いて計算しながら、ステップを踏んでいく手法、黒四角はその手法で収束したのち誤差を軽減するために非線形方程式を用いて得たAの値を用いて、1回繰り返して精度を上げた結果である。これらの手法で得られた結果を、ゲインの重ね合わせの原理を用いて得た実線でしめされるプロファイル(Superposition)と比較した。線形近似のみの手法により、約0.6dBの誤差で目標のゲインプロファイルが得られ、高速に最適なポンプパワーに近い値が得られることが示された。この違いは仮目標値の設定により、小さくできる事が、実施例9に示される。また非線形の式を最終段階で解く手法の結果と理想的なプロファイルの最大値と最小値の差は、それぞれ0.180dB、0.137dBであり、この手法によって精度良く最適なポンプパワーが決定できることが示された。第36図はそれぞれ設計前、線形近似のみで収束後、最終段階で非線形の式を解く手法で収束後、の励起光パワーを示している。
【0127】
実施例9(Example9)、実測値との一致
ここでは、実験値と逆問題を解いた結果得られた励起光パワーを比較し、その決定能力について述べる。そこで、実測されたラマンゲインを目標として励起光パワーを決定した。実験条件は、ファイバがTrue Wave(登録商標) RS Fiber (TW-RS) , (OFS社製Non-zero dispersion fiber (NZDF)) 77.8 km、励起光数は9、増幅帯域は1530〜1605 nmでASE光源を用いており、その帯域にわたってラマンゲイン約10dBになるように励起光の波長とパワーを設定している。設計条件はその帯域にわたって信号を100GHz間隔で立て、総入力信号光パワーを0dBmとした。実験の励起光パワーで非線形伝播方程式を解いてラマンゲインを求めたところ、実測値と最大0.2dBのずれが生じた。これはシミュレーションにおけるファイバパラメータのずれなどに起因すると考えられる。
【0128】
設計前の各励起光パワーは42mWでありその総パワーは実験の励起光総パワーにほぼ等しい。第37図は励起波長と設計前の励起光パワーを示している。その励起光パワーで非線形方程式を解いて得られたラマンゲインを第38図に示す。測定値と比較するとその差は最大3dBである。第39図に測定値、並びに逆問題を解いて得られた励起光パワーから計算したラマンゲインの波長依存性を示す。設計結果は、線形近似のみによってステップ幅をそれぞれ2dB、1dB、0.5dBとして逆問題を解き目標値に収束させたものと、ステップ幅0.5dBで収束したのちに非線形の式を解いて収束させた結果を示す。ステップ幅が小さくなるにつれ実測値との誤差が小さくなることがわかる。また線形近似のみでステップ幅0.5dBの結果は、最終的に非線形の式を解いた結果と区別がつかない。従ってこの系に関してはステップ幅0.5dBにすれば高速に、なおかつ精度良く最適励起光パワーが得られることが示された。
【0129】
またそれぞれの励起光パワーを第40図に示している。最終的に非線形の式を解く手法で求まった励起光パワーは、実験の励起光パワーと比較して総パワーで2mW、各励起光パワーで最大6mWのずれとなったが、このずれが目的とするラマンゲインに与える影響は小さく、十分に実験の励起光パワーを再現したといえる。このように、ある目標信号出力を実現するために励起光パワーを決定する逆問題を解く目的において、線形近似による手法が有効であることが示された。ちなみに、この場合非線形の式を解く計算時間は線形の場合の60倍であった。
【0130】
制御
線形近似を用いた励起光パワー決定法をラマン増幅器の制御に応用する例について述べる。制御とは、入力信号の変化や線路状況の変化により信号出力が変化した場合、その出力を仕様によって要求される範囲に保つ、または、復帰させるように励起光パワーを変化させることを示す。以下に本実施例で用いる制御手法について簡単に説明する。
【0131】
第41図は信号光1波が伝送され、光伝送路において後方励起光1波によって信号光が増幅される系を示している。また、出射端にディテクターを配置し出力信号をモニターし、制御装置によって後方励起の励起光パワーを制御可能である。ディテクターにはフォトダイオードなどを用いる。
【0132】
入力信号パワーが変動し、その影響で出力信号パワーが変動したと仮定する。この場合は、二段階のプロセスからなる。
【0133】
まず一段階目として、出力信号変動量f(L)をモニターして入力信号変動量f(0)を推定する。第42図はこの推定の過程を、信号光パワーの長手方向の分布で示したものである。この過程において後方励起光入力の変動量η(L)は0である。出力信号変動量が十分小さい場合は(15)式において、ε(L) = f(L)、η(L) = 0としてやれば自動的に入力信号変動量が求まる。出力信号変動量が大きい場合は、推定後の入力信号変動量に線形近似による誤差が生じるので仮目標値を立ててモニターした出力信号変動量へ近づけていく方法が有効である。制御では高速の計算が求められるので、行列Aの更新には前回ステップの結果を用いるほうが良い。
【0134】
次に二段階目として、一段階目で求められた入力信号変動量の推定結果を用い、出力信号を仕様値に戻すために必要な励起光パワーを求める。第43図はこの過程を信号光パワー、励起光パワーの長手方向の分布で示したものである。二段階目の初期設定値には故障前の設計値を用いても良いし、一段階目で推定したパワー変動量を設計値に足し合わせた値を用いても良いが、本実施例では前者でおこなう。一段階目で推定した入力信号変動量f(0)が十分に小さい場合は(15)式において、ε(0) = f(0)、ε(L) = 0として励起光パワー変動量を決定すればよい。入力信号変動量が大きい場合は、線形近似による誤差を軽減するため、仮目標値を立てて推定した入力信号変動量へ近づけていく方法が有効である。二段階目についても行列Aの更新には前回ステップの結果であるパワー変動量を元のパワーに足し合わせる方法が良い。
【0135】
上記の制御においては簡単の説明のため、信号光、励起光とも1波ずつの場合について示した。しかしこの手法は、信号光および励起光波長が複数の場合においても同様に適用することができる。例えば、制御において、一段階目の入力信号変動量の推定に関しては(16)式におけるε(L)、η(L)が既知であり、かつ(m+n)個のパラメータがわかっていることから、ε(0)のm個の要素は一意に導かれる。二段階目に関しては全てのパラメータが一意には決定できないため、最小二乗法などの目標値に対する偏差を最小にするアルゴリズムを用いればよい。
【0136】
実際の制御方法として、以下に述べる手法の組合せによる制御も有効である。例えば、制御の途中段階で計算機によって並行して非線形の式を解いておき、その値を用いて最新の行列Aの値を得ることにより予測精度を高めることができる。また、最初は計算時間を短くするためにステップ幅を大きくして予測結果を収束させておき、その間により小さいステップ幅の予測値を計算しておいてあとで入れ替えてもよい。このようにすれば、最初のレスポンスを短時間にし、かつ最終的に精度の高い予測結果を得るという相反する要求を満足させることができる。さらに、ラマン増幅器の制御ユニットがあらかじめ初期設計の情報だけを持っているのではなく、例えば数dBごとの条件等についての情報を前もってテーブルとしていれておく。そしてテーブルから目標値に近い条件を取り出し、そこを初期条件として制御(調整)を開始するようなアルゴリズムを構成してもよい。この方法でも、短時間のレスポンスと高精度の予測とを両立することができる。
【0137】
ここでは後段のみで制御をおこなったが、前段・後段両方の励起光パワーを制御してもよい。当然、3段以上にわたった場合にも拡張できる。
【0138】
実施例10(Example10)
制御対象はDSF 100km、信号光は1530〜1610 nm、97ch、100GHz間隔、入力信号光パワー0dBm/ch、励起光は後方10波、Net Gain 0dBを実現するように波長とパワーを設計した系を二段繋ぎ、それぞれを前段、後段とする。設計時の励起光波長とパワーを第44図に示す。上記システムの概略を示した図が第45図である。前段の励起光源が1つ故障し、その影響で後段の入力信号、および出力信号が設計値からずれた状態を考え、後段のラマンユニットの励起光パワーを制御装置によって制御して出力信号光パワーを設計値に戻す。まず出力信号をディテクターでモニターして入力信号変動量を推定し、次にその導かれた入力信号と設計時の出力信号を実現する励起光パワー変動量を導く。ここでは仮目標値を立てステップを踏んで目標値へ近づく手法を用い、制御においては高速におこなえる線形近似のみの手法が有効なので、行列Aを線形近似の結果によって計算して、励起光パワーの変動量を予測した。前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定したときに制御した結果の信号出力パワー、故障前の信号出力パワーとの偏差をそれぞれ第46図、第47図に示す。故障時の後段における入力信号は2.5dB、出力信号は2.0dB以上パワーが下がっている。制御後ではステップなし、ステップ幅1dB、0.5dBとなるにつれ、設計値との誤差が小さくなる結果となった。最大値と最小値の差は設計時が0.499dB、ステップ幅0.5dBの制御時は0.535dBとなった。またそれぞれの励起光パワーを第48図に示している。以上より、線形近似のみの手法によって十分制御が可能であることが示された。
【0139】
また、実施例10は前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定した場合であるが、短波長側から5番目以外の励起光源が故障した場合にもこの制御手法は有効である。
【0140】
また、実施例10では後方励起光のみの制御であるが、前方励起光で制御をおこなえばさらにNoise Figureを改善できる。
また、実施例では示さないが、この手法は入力信号が変動しても出力信号を一定に保つような操作にも応用できる。手法が上記手法二段階目と全く同じであることから、その有効性は実施例10で実証済である。
【0141】
調整
線形近似を用いた励起光パワー決定法をラマン増幅器の調整に応用する例について述べる。調整とは、出力が仕様値とずれている場合、出力を仕様値に近づけるべく、励起光パワーを変更することを示す。また、仕様値を変更する場合も、その変更する値に近づけるべく、励起光パワーを変更することも含む。
実施例11は、設計したラマン増幅器を設置した場合に、仕様の信号出力パワーが得られていないときに、そのパワーを元に戻す例である。
【0142】
実施例11(Example11)
実際に設置してみると、仕様の信号出力パワーが得られない場合があるとする。この原因としては、ファイバの吸収係数・ラマンゲイン係数、ファイバ長、励起光の波長・パワーのずれなどが考えられる。本例では、いかなる原因にも関わらず励起光パワーによって信号出力パワーを調整する。調整には、信号入力パワーが変動と仮定した方法を用いる。つまり、制御で用いた手法と全く同じである。ここでは仮目標値を立てて段階を踏む方法を用いていない。
【0143】
まず設計段階では以下のようになっているとする。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
励起光:後方励起のみ、8波
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0144】
第49図は設計段階の励起光波長とパワーを表している。第50図は設計段階の入力信号パワーと出力信号パワーの波長特性を表している。
【0145】
設計値との特性ずれの例に関しては、ファイバの吸収係数・ラマンゲイン係数がずれたと仮定する。本例では、実際のファイバがSMFにDSFのファイバ特性が5%加わっているとした。第51図は励起光波長と調整前と調整後の励起光パワーを示している。第52図は信号出力パワーの移り変わりを示している。それぞれ設計時の出力、設置時の実際の出力、励起光パワー調整後の出力を示している。出力パワーの最大値と最小値の差はそれぞれ0.252dB、0.487dB、0.263dBであった。このように不明な原因にも関わらず、線形近似を用いた励起光パワー決定法によって、信号出力パワーを仕様値に戻すことが可能であることが示された。
【0146】
実施例では示さないが、線形近似による励起光パワー決定法を用いた調整例として、信号帯域を変えずに信号のチャンネル数を増減させるような仕様に変更したいときに、仕様の信号出力パワーを保つ場合について説明する。信号チャンネル数を増やす場合は(16)式における行列Aの要素数を増やさなければならないが、これを行うことは困難である。この対策として、例えばチャンネル数が倍になる場合、つまりチャンネル間隔が半分になる場合は、各チャンネルの信号光パワーが倍になったと仮定する。(16)式においては、ε(0)は入力信号光パワーを倍にするように、ε(L)は出力信号光パワーを倍にするように決定する。それに合うようにη(0)あるいはη(L)、つまり、励起光パワーの変動量を最小二乗法によって決定すればよい。また、増減するチャンネル数によって、仮目標値を立てるかどうか、ステップ幅をどの程度にすればよいか判断すればよい。
【0147】
実施例12(Example 12)
上記実施の形態と同様、信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割する。この波長域数は励起光数と等しくする。各波長域に対し、その帯域に含まれる9ch全ての合計パワーをモニタするものとする。10箇所しかモニタしていないため、未知の出力変動量を10箇所のモニタ値から補間によって推定する必要がある。
【0148】
本実施例においては、前述の実施の形態と同様、ラマンゲイン効率スペクトルの重ね合わせの原理を用いる。ここでは、モニタ波長域内の平均パワーを、その波長域の中央にあるチャネルのパワーとし、前述の実施形態、第一の方法と同様の補間をおこなったが、第二の方法である繰り返し法はおこなっていない。
【0149】
第53図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印がほぼ点線上に乗っており、故障時の出力信号光パワーが精度良く補間されていることがわかる。また、制御時の出力信号光パワーに関しても黒丸が実線上にほぼ乗っていることから、精度良い制御がおこなわれている。制御時にはMax-Minは0.433dBとなり、90ch全てをモニタした値(0.398dB)に非常に近い精度の制御結果が得られた。制御時標準偏差は0.0713となり、この手法でも良好な結果が得られた。
【0150】
実施例13(Example 13)
上記実施の形態と同様、信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割する。この波長域数は励起光数と等しくする。各波長域に対し、その波長帯の中で波長に関して中心の位置にあるチャネルの出力信号光パワーをモニタする。結局、10個の受光器を用いて、信号光10ch分のパワーをモニタすることになる。しかし10chしかモニタしていないため、残り80chのパワー変動量をモニタされた10chのパワー変動量の値から補間によって推定する必要がある。
【0151】
本実施例では、ある1つの波長域内の各チャネルのパワー全てを、モニタしたチャネルのパワーと同一にした(近傍補間)。具体的には、その波長域の中央にあるチャネルのパワーをモニタしている。
【0152】
第54図に後段における出力信号光パワーを示す。正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸としている。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印が点線上にほとんど乗っておらず、故障時の出力信号光パワーの全体的な傾向は再現されているものの、その局所的な特性が予測されていない。制御時の出力信号光パワーに関しては黒丸が実線に近い値を示している。
【0153】
信号光出力のMax-Minは0.659dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.122である。90個のPDを用いた場合(0.0415)に比べ、約3倍になる。前述の実施形態による結果と比較した場合、大きめではあるが、より簡便な方法で実用に適用可能な結果を得ることができる。
【0154】
実施例14(Example 14)
実施例13と同様に10個の受光器を用いて、信号光10ch分のパワーをモニタする。補間方法としては、モニタした信号光パワーを直線で結び、残りのチャネルの信号光パワーを推定する方法を用いた(線形補間)。本実施例ではログスケールで線形補間をおこなったが、リニアスケールでおこなってもよい。最も短波長側の4ch、あるいは最も長波長側の4chは最も波長が近い2つのパワーを結んだ直線で外挿補間している。第55図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸としている。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0155】
本実施例による制御の結果として、信号光出力のMax-Minは0.664dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.121である。
【0156】
実施例15(Example 15)
実施例13、14と同様、励起光数と同じ数、つまり10個の受光器を用いる。そして信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割し、各波長域毎にそこに含まれる9chの信号光パワーの合計をモニタする。10個の値しかモニタしていないことから、その10個の値を用いて未知の数値を補間し、全90chのパワー変動量を推定する必要がある。
【0157】
ここでは、波長域内の平均パワーを、その波長域内の中心波長のチャネルのパワーと等しいとして、実施例2と同様に近傍補間した。第56図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0158】
本実施例による制御の結果として、信号光出力のMax-Minは0. 645dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.111である。この結果は、ある波長域内の任意のチャネル(中央付近の波長など)を1つの受光器でモニタする実施例13の場合よりも改善されている。
【0159】
実施例16(Example 16)
実施例15と同様、励起光数と同じ数、つまり10個の受光器を用いる。そして信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割し、各波長域毎にそこに含まれる9chの信号光パワーの合計をモニタする。10個の値しかモニタしていないことから、その10個の値を用いて未知の数値を補間し、全90chのパワー変動量を推定する必要がある。
【0160】
ここでは、波長域内の平均パワーを、波長域内の中心波長のチャネルのパワーと等しいとして、実施例3と同様に線形補間した。第57図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0161】
本実施例による制御の結果として、信号光出力のMax-Minは0. 623dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.115である。
【0162】
実施例17(Example 17)
実施例13〜16のモニタ方法は信号帯域全体のパワー変動量の傾向は再現できるものの、分割した波長域内の局所的なパワー変動量の傾向は予測できない。本実施例では、これを予測する方法について説明する。
【0163】
まず実施例14と同様に、10個の受光器を用いて信号光10ch分のパワーをモニタし、残り80chのパワーは線形補間する。この際、実施例16のように1つの受光器がモニタできるチャネル数を増やしてもよい。本実施例では1つの受光器で1chをモニタする。このときの線形補間した故障時出力信号光パワー(qi ; i = 1〜90)を第58図の点線で表す。また、正常時出力信号光パワー(Pi)を第58図の黒丸で、それを故障時と同様に線形補間したもの(pi)を実線で表す。
【0164】
予測する故障時出力信号光パワー(Qi)を
【数46】
【0165】
と近似する。これを第58図の三角印で表す。この手法は近似したことによる誤差を含むが、局所的なパワー変動量を簡単に予測するのに有効である。
【0166】
第59図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0167】
本実施例による制御の結果としてMax-Minは0.493dBとなり、近傍補間のみ、あるいは線形補間のみの補間方法に比べ、大幅に改善された。また、制御時標準偏差も0.0723となり、大幅に改善された。
【0168】
実施例12〜17間の詳細な比較
これまでに示したモニタ方法をまとめて比較・評価する。その評価パラメータとして、以下の三つを設定する。
【0169】
○Max-Min [dB]:制御時出力信号光パワーの最大値と最小値の差
○制御時標準偏差 [dB]:全チャネルに関して、制御時の出力信号光パワー[dBm]と正常時の出力信号光パワー[dBm]の差[dB]の二乗の和を全チャネル数で割り、平方根をとったもの
○故障時標準偏差 [dB]:全チャネルの故障時出力信号光パワーに関して、モニタから補間した予測値[dBm]と真値[dBm]の差[dB]の二乗の和を全チャネル数で割り、平方根をとったもの
【0170】
各モニタ方法に対して、上記評価パラメータの値をとった表を以下に示す。
【表3】
【0171】
まずMax-Minに注目すると正常時の値は0.378である。OSAを用いて全チャネルをモニタできれば0.398となり非常に精度の良い制御がなされている。10個のPDを用いた場合、近傍補間、線形補間は0.6〜0.7の範囲となり正常時の約2倍の値となる。それに対し、ゲインの重ね合わせによる補間をおこなうと正常時に非常に近い値が得られる。また、前記第二の方法で繰り返し回数が増えるにつれ、その値が小さくなる様子がわかる。
同様のことが制御時標準偏差にもいえる。
【0172】
故障時標準偏差に関しては、ゲインの重ね合わせによる補間をおこなうと0.01以下になり、その制御した値も正常値に非常に近いものが得られている。従ってこのケースでは、故障時標準偏差が0.01以下のオーダーになれば、制御に対して、非常に良い精度で故障時出力信号光パワーが予測されていると判断できる。
【0173】
実施例18(Example 18)
実施例17までは、第17図のような構成で、前段において短波長側から5番目の励起光源(1451nm)が故障したケースでの制御について示した。本実施例においては、本発明による方法の適用能力を確認するために、前段において最も長波長側の励起光源(1501nm)が故障したケースに対して、故障時出力信号光パワーを予測した結果を示す。
【0174】
受光器には10個のPDを用い、1つのPDがモニタするのはモニタ波長域に含まれる全てのチャネルの合計パワーとして、線形補間、ゲインの重ね合わせによる補間それぞれの方法で、故障時出力信号光パワーを予測した。そのときの故障時標準偏差を、短波長側から5番目の励起光源が故障したケースを含めて、第60図に示す。このように最も長波長側の励起光源が故障した場合でも、利得波長帯域の中間近辺で故障が起こった場合と同様、全チャネルの信号光パワーを正確に予測し、制御できることが確認された。また、線形補間や、重ね合わせ補間の繰り返しをおこなわないものに比べて、発明の好ましい態様、第二の方法により繰り返し回数を増やしていくと、標準偏差が小さくなるのがわかる。5番目の励起光源が故障したケースと同じ収束判定条件では2回で収束したが、図中では3回繰り返した値まで示している。このケースでは、利得波長帯域の中間近辺で故障が起こった場合と同様、繰り返し回数が2回でほぼ標準偏差が収束し、真の全チャネルの故障時出力信号光パワーを予測できている。
【0175】
実施例19(Example 19)
第61図に、本発明による制御機能を有するラマン増幅器を使用した光伝送システム200を示す。光送信装置(Tx)で電気/光変換をしたのちに出力された光信号2は、光伝送用ファイバ4の伝送中に発生したロスをラマン増幅器100b1〜100bpで補償しながら、光受信装置(Rx)で受信され、電気信号に再生される。ラマン増幅器100b1〜100bpはそれぞれ、第17図に示されたラマン増幅器100bと同様の構成を持つ。そのため、これらのラマン増幅器100b1〜100bpは本発明の各実施形態で説明したように、その前段に接続されたラマン増幅器の励起光源を構成するレーザ素子の一部が故障などをした場合でも、故障した励起光波長を特定し、自らの励起光パワーを調節して所望の利得波長特性を維持する機能を有している。すなわち、光伝送システム200において、本発明によるラマン増幅器を縦列に接続すれば、ラマン増幅器100b1〜100bp のいずれが故障した場合においても、その後段のラマン増幅器が自動的に故障したレーザ素子による利得の変動を補償し、光伝送システム200からの信号光出力の変動を最小限に抑えることができる。
【0176】
実施例20(Example 20)
第62図に、本発明による制御機能を有するラマン増幅器を使用した、その他の光伝送システム201を示す。図示されたシステム201において、ラマン増幅器100a11〜100ap3が組み合わされているほかは、光伝送システム200と同一である。従って、重複する説明については割愛する。ラマン増幅器100b1〜100bpはそれぞれ実施例8と同様、本発明による制御機能を有したラマン増幅器である。一方、ラマン増幅器100a11〜100ap3はそれぞれ、利得の制御機能はもっていない。このような光伝送システム201において、ラマン増幅器100a11〜100ap3の励起光源を構成するいずれかのレーザ素子が故障した場合の動作について以下に説明する。
【0177】
まずラマン増幅器100a11〜100a12のいずれかに故障が発生した場合、ラマン増幅器100b1が故障を検知し、ラマン増幅器100b1からの出力が一定に維持されるよう制御する。そのため、それより後段側にあるラマン増幅器および光受信装置Rxへの影響は防ぐことができる。
【0178】
次にラマン増幅器100ap1〜100ap3のいずれかに故障が発生した場合は、ラマン増幅器100bp がそこで発生した損失を補償するように利得波長特性を変化させカバーする。なお、例えば、ラマン増幅器100b1などで故障が発生した場合には、その後段で最も近接した、ラマン増幅器100 b2がその損失をカバーするように働く。
【0179】
このように、制御機能を持たないラマン増幅器のいずれかに故障が発生した場合、それより後段側にあり最も近接したラマン増幅器が損失を補償するように働く。反面、制御機能を持つラマン増幅器はそれより前段側で発生した損失を補償するだけの励起光パワーを発生させなければならない。そのため、前段に何台の制御機能を持たないラマン増幅器を接続するかは、制御機能を有するラマン増幅器の増幅能力によって決定される。
以上のようなシステム構成とすることにより、光伝送システム201を構成するラマン増幅器の全てが制御機能を有するラマン増幅器であるという必要はなくなり、制御機能を持ちつつもコストを抑えたシステムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
以上のように、本発明に係る波長多重励起ラマンアンプの制御装置、制御方法およびその制御プログラムでは、広帯域の信号光の増幅が可能なラマン増幅器において所望の利得プロファイルを実現するために、複数波長からなる励起光の強度を決定するようにしているので、ラマン増幅器単体およびこれを用いた波長多重通信システムに適している。
【技術分野】
【0001】
本発明は、広帯域の信号光の増幅が可能なラマン増幅器において所望の利得プロファイルを実現するために、複数波長からなる励起光の強度を決定する方法を与える。
【背景技術】
【0002】
光増幅器は、長距離大容量の光通信システムを実現するためには欠くことのできないものである。また、メトロ/アクセス系などにおいて光信号強度の低下を補償する手段としても有効であり、種々の光通信システムに広く用いられている。
【0003】
EDFA(Erbium Doped Fiber Amplifier)などの希土類添加光ファイバ増幅器はこの代表的なもので、主にエルビウム添加光ファイバの増幅帯域である1.55μm帯の信号帯域に適用されてきた。しかし、近年、光通信システムに求められる伝送容量は急激に増加し、信号帯域の大幅な拡大が必要となっている。そのため希土類添加光ファイバ増幅器だけでは十分な信号帯域の確保が困難になっており、より広帯域の光信号に適用可能な光増幅器が求められている。
【0004】
ラマン増幅器は、石英系ファイバに導入された励起光がひきおこす誘導ラマン散乱を利用したものである。そのため励起光波長を変えることで増幅波長を自由に設定し、複数波長からなる励起光の出力分布を調節することで所望の利得波長特性を実現することができる。これらは広帯域波長多重伝送に用いる光増幅器として希土類添加光ファイバ増幅器にはない有利な特徴である。
【0005】
これらラマン増幅器の特徴を活かしたものとして、複数波長からなる励起光出力を任意に変化させて利得波長特性を調節するもの(特許文献1)や、複数の各励起波長間隔を適正化して平坦な利得波長特性を実現するもの(特許文献2)などが提案されている。
【0006】
一方、ラマン増幅器を広く実用に供するためには、所望の利得波長特性を得られるよう自動的に、かつ迅速に適切な各励起光出力を得る必要がある。しかし、上記の技術では所望の利得波長特性を実現するための各励起光出力を決定することができない。これは、励起光パワーを決定するには逆問題を解かなければならず、そのために非線形最適化手法を用いれば解の収束性は初期値に依存するためである。より広範囲の初期値に対して最適値に収束させるには、複雑な最適化アルゴリズムが必要とされる。
【0007】
このようなアルゴリズムの例として、信号間ラマンを無視し、遺伝的アルゴリズムを用いた励起光波長・パワーの自動決定法を用いたもの(非特許文献1)がある。なお、より簡便に励起光出力を決定するものとして、予想される利得波長プロファイルを実現する各励起波長の光出力をメモリしておき、所望のプロファイルに近い条件をメモリから取り出して制御を行うもの(特許文献3)がある。また、増幅波長帯を拡張、縮小する際、励起光源の増減による過渡的な励起状態の変動を防ぐ制御方法について示したもの(特許文献4)などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,115,174号明細書
【特許文献2】米国特許第6,292,288号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2001/0050802号明細書
【特許文献4】特開2002−303896号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Victor E. Perlin, et al., (2002), “Efficient design method for multi-pump flat-gain fiber Raman amplifiers”, OFC2002, TuJ1, p.57
【発明の概要】
【0010】
本発明は効率的にラマン増幅器の制御を実現すべく筆者らによって考案されたもので、これによれば、より簡便な構成にて正確に所望の利得波長特性を満足するよう、各励起光出力を制御することができる。
【0011】
これによれば、まず、信号光と励起光の非線形伝播方程式から両者の変動量について線形になるよう近似を行う。ここで得られる両者の関係を示す係数行列式は両者の光伝送路上のパワー分布についての関数となっているが、光伝送路の微小区間においては定数行列式として扱うことができる。しかもこれらの定数は既知であるので、これらを利用すれば励起光と信号光の変動量は光伝送路の長手方向の位置に対する関数として数値的に、容易に求めることができる。
【0012】
所望の条件までの変動量が大きい場合は、線形近似であることから、その解の最適解との誤差が生じる。従って中間的な仮条件を設定し、段階を踏んで所望の条件に近づける手法を用いる。段階を踏むには既知のパワー分布が必要なので、前回のステップで求まった結果をもとの既知のパワー分布に加え、それを新たな既知のパワー分布として更新する。ステップ幅は所望の条件に合うように決定する。この方法により、既知の条件から大きく隔たった条件についても最適解に近い値を容易に得ることができ、線形計算のみであることから高速に解が得られる。この手法は特に予測制御、調節において有効である。
【0013】
また、既知のパワー分布を求めるために非線形伝播方程式を解いてもよい。この手法により、精度良く最適解が得られる。この手法は特にアンプ設計において有効である。
【0014】
以上の操作を適宜選び用いることにより、線形近似によって所望の条件を満足する最適解を導ける非常に高速のプロセスが得られる。
【0015】
また、これによれば、ラマン増幅器からの出力モニタ数が実際の信号光波長数より少ない場合においても、出力モニタ結果と初期の設計値など各信号光波長での出力レベルが既知の条件を用い、直接測定ができない波長の信号光強度を本発明の補間方法により導く。これによって、全ての信号光波長の光出力を精度良く測定することができる。なお、この方法による全信号光波長の光出力測定結果を用いることにより、ラマン増幅器からの信号光出力波長特性が全信号光波長において所望の値になるように各励起光出力を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1図は、前方励起一波のラマン増幅器の構成図である。
【図2】第2図は、信号光、励起光の長手方向のパワー分布と何らかの影響で変動したときのパワー分布を示したものである。
【図3】第3図は、後方励起一波のラマン増幅器の構成図である。
【図4】第4図は、前方励起光、後方励起光計n波構成のラマン増幅器によりWDM信号光m波を増幅するものである。
【図5】第5図は、信号光パワーの変動量の長手分布の概略である。
【図6】第6図は、設計時における最適入力パワー決定の処理手順を示すフローチャートである。
【図7】第7図は、設計時における最適入力パワー決定の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】第8図は、設計時における最適入力パワー決定の他の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】第9図は、出力信号変動を抑える制御手順を示すフローチャートである。
【図10】第10図は、制御装置を含んだ後方励起型ラマン増幅器の基本的な構成図である。
【図11】第11図は、励起光源の構成図である。
【図12】第12図は、その他の波長合波器を使用した励起光源の一例を示す構成図である。
【図13】第13図は、偏波合成器と波長合波器を使用した励起光源の構成図である。
【図14】第14図は、光分岐器、バンドパスフィルタ、受光器で構成される受光部の図である。
【図15】第15図は、光分波器、受光器で構成される受光部の図である。
【図16】第16図は、その他の光分波器と、受光器で構成される受光部の図である。
【図17】第17図は、後方励起型ラマン増幅器が縦列に2つ接続された構成図である。
【図18】第18図は、等分された波長域の、ある代表波長の信号光のみ選択して各受光器に入力可能な透過帯域をもったバンドパスフィルタの概念図である。
【図19】第19図は、等分された波長域の、複数の波長の信号光を各受光器に入力可能な透過帯域をもったバンドパスフィルタの概念図である。
【図20】第20図は、等分された波長域の、波長域内の全ての波長の信号光を各受光器に入力可能な透過帯域をもったバンドパスフィルタの概念図である。
【図21】第21図は、正常時と故障時それぞれの出力信号光パワーの概念図である。
【図22】第22図は、等分された波長域の代表波長となる信号光パワーのみモニタし、ラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間方法を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図23】第23図は、全信号光パワーをモニタした場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図24】第24図は、モニタする波長が信号光チャネル1chのみではない場合について誤差を最小限にし補間を行う方法を示した概念図である。
【図25】第25図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、ラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間方法を用いて、さらに繰り返し法を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図26】第26図は、信号パワーの決定処理手順をフローチャートとして示している。
【図27】第27図は、実施例1におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図28】第28図は、実施例2におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図29】第29図は、実施例3におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図30】第30図は、実施例4におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図31】第31図は、実施例5におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図32】第32図は、実施例6におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図33】第33図は、実施例7におけるNet Gain 0dBに収束するまでの出力信号パワーの波長特性の移り変わりを示している。
【図34】第34図は、実施例8における励起光波長と設計前の励起光パワーを示している。
【図35】第35図は、実施例8における3種類の手法で求めたラマンゲインの波長特性を示している。
【図36】第36図は、実施例8における設計前、線形近似のみで収束後、最終段階で非線形の式を解く手法で収束後、の励起光パワーを示している。
【図37】第37図は、実施例9における励起光波長と設計前の励起光パワーを示している。
【図38】第38図は、実施例9における設計前の励起光パワーで非線形伝搬方程式を解いて得られたラマンゲインを示している。
【図39】第39図は、実施例9における測定値、並びに逆問題を解いて得られた励起光パワーから計算したラマンゲインの波長依存性を示す。
【図40】第40図は、実施例9における測定値、並びに逆問題を解いて得られた励起光パワーを示している。
【図41】第41図は、信号光1波が伝送され、光伝送路において後方励起光1波によって信号光が増幅される系を示している。
【図42】第42図は、制御の一段階目に相当する入力信号変動量の推定の過程を、信号光パワーの長手方向の分布で示したものである。
【図43】第43図は、制御の二段階目に相当する励起光パワー決定の過程を信号光パワー、励起光パワーの長手方向の分布で示したものである。
【図44】第44図は、実施例10における設計時の励起光波長とパワーを示したものである。
【図45】第45図は、実施例10におけるラマン増幅器のシステムの概略を示したものである。
【図46】第46図は、実施例10における前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定したときの信号出力パワーを示している。
【図47】第47図は、実施例10における前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定したときに、制御した信号出力パワーと故障前の信号出力パワーとの偏差を示している。
【図48】第48図は、実施例10における励起光波長と、制御前の励起光パワー、制御後の励起光パワーを示したものである。
【図49】第49図は、実施例11における設置前、すなわち設計段階の励起光波長とパワーを示している。
【図50】第50図は、実施例11における設計段階の入力信号パワーと出力信号パワーの波長特性を表している。
【図51】第51図は、実施例11における励起光波長と調整前の励起光パワー、調整後の励起光パワーを示している。
【図52】第52図は、実施例11における信号出力パワーの移り変わりを示している。それぞれ設計時の出力、設置時の実際の出力、励起光パワー調整後の出力を示している。
【図53】第53図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、ラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間方法を用いたが、繰り返し法はおこなわなかった場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図54】第54図は、等分された波長域の代表波長となる信号光パワーのみモニタし、近傍補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図55】第55図は、等分された波長域の代表波長となる信号光パワーのみモニタし、線形補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図56】第56図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、近傍補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図57】第57図は、等分された波長域内の全ての信号光パワーの合計をモニタし、線形補間を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図58】第58図は、故障時の出力信号光パワーに関して、分割した波長域内の局所的な傾向を、正常時の出力信号光パワーから予測した場合の、信号光パワーを示している。
【図59】第59図は、実施例17で示した補間方法を用いた場合の、正常時・故障時・制御時の出力信号光パワーを示している。
【図60】第60図は、「故障時標準偏差」を各補間方法によって求めた値をプロットしたものである。
【図61】第61図は、本発明によるラマン増幅器を使用した光伝送システムの一例である。
【図62】第62図は、本発明によるラマン増幅器を使用した光伝送システムのその他の例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
第1図に前方励起のラマン増幅器の構成について示す。信号光は図中、矢印の方向に光伝送路中を伝搬し、途中に設けられた光合波器を介して励起光源から出射された励起光が光伝送路に導入される。励起光と合波された信号光は増幅媒体を通じてラマン増幅され、出射端から出力される。ここで増幅媒体は、分布型ラマン増幅器においては光伝送路自身であり、集中型増幅器においては分散補償ファイバ(DCF)など、非線形性の高いものが使用される。
【0018】
このラマン増幅器において、所望の信号光出力特性を満足する励起光入力条件を得るために、本発明による線形近似の手法を適用した演算プロセスについて示す。なお、本発明においては、ラマン増幅器の動作に関連した応用例を、設計、制御、調整の3つに分類する。
【0019】
設計とは、目的とする仕様(出力信号光パワー、ラマンゲイン、ネットゲインなど)を満足するために、最適な励起光パワーを決定することを示す。
制御とは、入力信号の変化や線路状況の変化により信号出力が変化した場合、その出力を仕様によって要求される範囲に保つ、または、復帰させるように励起光パワーを変化させることを示す。
調整とは、出力が仕様値とずれている場合、出力を仕様値に近づけるべく、励起光パワーを変更することを示す。仕様値を変更する場合も、その変更する値に近づけるべく、励起光パワーを変更することを示す。
【0020】
基本式の詳細
線形近似の考え方(2波)
最も単純なラマン増幅器の系として、前述と同様に図1の系を考える。レイリー散乱項、Amplified Spontaneous Emission (ASE) 項の影響を無視した伝搬方程式は以下のように書ける。
【0021】
【数1】
【数2】
【0022】
ここで、PS = PS(z) は信号光パワーの長手分布、PP = PP(z) は励起光パワーの長手分布、αS、αPはそれぞれ信号光、励起光の吸収係数、gSPは信号光と励起光間のラマンゲイン効率を表す。gPSはgPS = gSP×νP/νSで表され、νP、νSはそれぞれ励起光、信号光の周波数である。但しzはファイバ長手方向で位置座標である。ある任意の条件で設計した時の信号光、励起光パワーをそれぞれPS = PS0(z)、PP = PP0(z)とおき、(1)、(2)に代入すると
【0023】
【数3】
【数4】
となる。ここで、PS0、PP0の解は少なくとも数値的に既知である。ここで、ある設計した状態からパワーが変動した状態を考える。この結果、
【0024】
【数5】
【数6】
【0025】
となったとする。第2図は信号光、励起光の長手方向のパワー分布と何らかの影響で変動したときのパワー分布を示したものである。(5)、(6)を(1)、(2)に代入する。
【数7】
【数8】
(3)、(4)より
【数9】
【数10】
【0026】
ここでε、ηがPS0、PP0に比べて小さいと考えてε×ηの項を無視すると、(9)、(10)は以下の微分方程式になる。
【数11】
【数12】
【0027】
これをベクトル表示すると(13)式のようになる。
【数13】
【0028】
行列Fの中にはPS0(z), PP0(z)といったzの関数があるので解析的に解くことは不可能である。しかし、光伝送路の長手方向をn個の微小区間に分けて、i番目と(i+1)番目の間ではPS0(z), PP0(z)を近似的に定数と仮定して解くことができる。
【0029】
nが多いほうが精度は上がるが、時間を要するので適度なnを決めてやればよい。分布型ラマンの本実施例では0.5km刻みになるようにnを決めている。PS0(z), PP0(z)は微小区間の中心の値を線形補間して求めている。但し、パワーをいったん対数スケールに変換して線形補間、あるいはラグランジュ補間など、他の補間方法を用いてもよい。
(13)式の両辺の左から、ある行列P-1をかける。但し、P-1FP = Bで、Bは対角行列である。
【0030】
【数14】
【数15】
【数16】
【数17】
【0031】
従って
【数18】
となり、ε、ηはそれぞれzの関数として表せた。従ってz = ziとz = zi+1の関係式が以下のように導ける。
【数19】
さらに入力端においてε=ε(0)、η=η (0)、出力端においてε=ε(L)、η=η(L)とすると、入力端と出力端の関係式が以下のように導ける。但し、Lはファイバ長である。
【数20】
ここで、Aは2行2列の行列で、αS、αP、gSP、gPS、PS0(z)、PP0(z)を含んでおり、最初の設計状態において全て既知の値である。
【0032】
この行列Aに含まれる信号、励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得ても良いし、測定によって得ても良い。また前記測定はOTDRによって行ってもよい。
【0033】
また、前記行列要素を直接測定によって得てもよい。その方法としては例えば、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から行列要素を計算する。
【0034】
つまり、この関係式においてε(0)、η(0)、ε(L)、η(L)の4つのパラメータ、すなわち、信号光入力変動量、励起光入力変動量、信号光出力変動量、励起光出力変動量のうち2つを決定すれば、残りの2つも自動的に決定されることになる。図3は後方励起光一波構成のラマン増幅器により信号光一波を増幅するものである。ここまでの議論は第3図の構成にも同様に適用可能である。
【0035】
線形近似の考え方(3波以上に拡張)
これまでの考え方は任意の光の数に拡張可能である。信号光がm波、励起光がn波とする。また励起光は前方も後方も含めてよいとする。そのときの構成図は第4図である。第4図は前方励起光、後方励起光の計n波構成のラマン増幅器によりWDM信号光m波を増幅するものである。ここで各励起光源は複数の励起LDから構成されており、各励起LDからの出射光は波長合波器によって合波される。また、各波長の励起LDは波長合波前もしくは後に、偏波合成やデポラライザによって利得の偏波依存性を解消するように構成されてもよい。図中のλは各波長を表しており、添字の一つ目のS、Pはそれぞれ信号光、励起光を示しており、添字の二つ目はそれぞれ信号光、励起光の番号を示している。必ずしもm = nである必要はなく、一般にWDM伝送ではm>nであることが多い。(15)式は以下のように拡張できる。
【0036】
【数21】
【0037】
信号光、励起光の変動量をそれぞれε,ηとしている。Aは(m+n)×(m+n)の行列である。(16)式は、入力励起光パワー、出力励起光パワー、入力信号光パワー、出力信号光パワーの4つの変動量の組のうち、2つの組がわかれば残りを決定できる事を示している。但し、決定すべき未知量の数が条件数を超えてはならない。条件数が多い場合は線形最小二乗法で未知量を決定する。本実施例では最小二乗法を用いているが、偏差の四乗和を最小にする方法など、目標値からのずれを小さくする目的であれば他の手法を用いてもよい。
【0038】
線形近似の応用方法
ここで、後方励起光で入力信号パワーが変わらないとして、出力信号パワーをある目標値まで変動させたい場合に、それに応じた励起光パワー変動量を求める場合を例として説明する。但し、信号光、励起光ともに一波として考える。(15)式を用いてη(L)を導き、励起光パワーをPP0(L)+η(L)と変換して非線形のパワー伝搬方程式を解けば、目標の信号出力が得られると仮定している。しかし実際は線形近似をおこなっていることから、目標の信号出力との誤差が生じる。(9)式から誤差の程度を推定すると、誤差は目標信号出力への変動量の二乗にほぼ比例することがわかる。よって誤差を小さくするためには出力信号変動量をある程度小さくする必要がある。すなわち出力信号を目標値に近づけるまでに仮目標値を設定し、段階的に目標値に近づける方法を用いることよって、線形近似による予測の精度を高めることができる。
【0039】
この手法において段階を踏んでいくためには、1ステップごとに行列Aを更新する必要がある。行列Aを精度良く決定するためには、変動前の励起光、並びに信号光パワーの長手分布が正確にわかっていなければならない。
そこで変動前の励起光、並びに信号光パワーの長手分布の更新方法として以下の三つをあげる。
【0040】
(1)1ステップごとにPS0(z)→PS0(z)+ε(z), PP0(z)→PP0(z)+η(z)と最新の予測解に更新して収束させる。但し、ε(z), η(z)は線形近似によって求められており既知である。この手法は非線形の式を解かないので非常に計算時間が速い。線形近似による誤差がステップごとに加わっていくので、目標値との最終誤差を許容範囲に収まるようにステップ幅を設定する必要がある。この手法は高速におこなえることから、主にラマン増幅器の制御、調整に有効である。また、初期段階に非線形の式を解いているが、変動前の長手分布パワー情報が必要なだけなのでこの情報が既にわかっていれば、完全に線形計算のみで解が導ける。
【0041】
(2)上記(1)の方法で収束したのちに、レイリー散乱項、ASE項を含んだパワー伝搬方程式を解いてPS0(z), PP0(z)を正確な解に更新し、その値を用いて(15)式を用いてパワー変動量を決定する作業を繰り返す。非線形の式を解いて目標値との差を毎回確認できるため、確実に最適値に収束する。この手法は精度が非常に良いことから、主にラマン増幅器の設計に有効である。
【0042】
(3)毎回のステップごとに変動前の長手方向パワー分布を、パワー伝搬方程式を解いて正確な解に更新する。最終的に得られる値としては(2)と原理的に同じであり、主にラマン増幅器の設計に有効である。このときのステップ幅は2dB以内であれば十分である。2dBと決定した理由は後述する。
【0043】
既知の条件から次の仮目標値までのステップ間隔は予測を行う条件によって、種々の形態を取り得る。例えば、本発明実施例ではステップ間隔の設定をdB単位で一定となるように行ったが、基準となる光出力に対する比が一定となるように間隔を設定してもよい。また、光出力(単位:W)での間隔が一定になるように設定することも可能である。さらに、このステップ間隔は必ずしも一定値でなくてもよい。例えば、予測誤差が発生しやすい条件下では細かく、比較的誤差の少ない条件下では粗めにしてレスポンスを向上させてもよい。これらは、要求される予測精度と速度を両立する好適な組合わせとするのが望ましい。
【0044】
(3)の手法において2dBと決定した理由について説明する。出力信号パワーに関して、「変動前の値と仮目標値の差」と「変動後の値と仮目標値の差」を比較する。もし「変動後の値と仮目標値の差」のほうが大きければ繰り返し作業をおこなっても発散してしまう危険性がある。これは(9)(10)式における非線形項を無視していることから生じる。よって「変動後の値と仮目標値の差」のほうが小さくなるようなアルゴリズムが必要である。(9)式右辺第一項〜第三項はε、ηに関して線形項である。第四項はε、ηに関して非線形項である。線形近似ではこの第四項を無視している。第5図に関して線形近似によってεS(L) = εTを目指しているが、実際はεNLが誤差として現れる。第5図は信号光パワーの変動量の長手分布の概略である。εNL, εTそれぞれを(9)式から書き下すと以下のようになる。
【0045】
【数22】
【数23】
【0046】
ここでεT>εNLであれば元の値よりも目標値に近づく。αSが十分に小さいと考えて(9)式右辺第一項を無視すると(18)式は以下のように書き表せる。
【数24】
ΣT >εNLになるためには(17)(19)式より
【数25】
【0047】
となればよい。この系ではPP0、ηは正なのでPS0>εであれば上式は成り立つ。従って仮目標値との差が3dB以内であれば、元の値より仮目標値に近づく。
【0048】
本実施例では上式で省略したロスの影響を考慮し、この値を2dBと設定した。
即ち目標値との差が2dB以上であれば、目標値に2dB近づけた値を仮目標値と決定する。2dB以内であれば仮目標値を立てず、目標値になるように(15)式を解く。もちろん個々の状況に合わせて、目標値に近づける速さや安全性を考慮した上適正な数値を見出すことにより、2dB以外の値を設定してもよい。
なお、ここまでの手法は3波以上の場合についても、同様に適用することができる。
【0049】
ここまでの手法は入力信号一定、出力信号を目標値にするために励起光パワーを決定する説明であった。他にも、入力信号と出力信号が逆の立場の場合や、出力信号と励起光パワーの変動量が既知で入力信号を推定する場合など、(16)式における4つの組の変動量のうち、二つが既知で残りの二つを決定する目的であれば、ここまでの応用方法は適用できる。
【0050】
また、ここまでの議論ではPS0(z)、PP0(z)の真値を求めるために非線形方程式を解く、あるいは、線形近似によって求まった変動量を加えているが、代わりに実システムに適用し測定を行って数値を求めても構わない。また、測定値をベースにして求めた値を用いても構わない。例えば、前記測定はOTDRによって行われる。
【0051】
第6図〜第8図は、設計における最適入力パワーを決定するフローチャートであり、第6図では、非線形伝播方程式を解いて、信号パワー、励起パワーの長手分布を求めているのに対し、第7図では、テーブルから信号パワー、励起パワーの長手分布を取得するようにしている。また、第6図および第7図では、仮の目標値に到達しなかった場合、求めた変動量長手分布を、もとの長手分布に足して新たなパワーの長手分布に設定しているのに対し、第8図は、仮の目標値に到達しなかった場合に、求めた励起光入力変動量よび励起光出力変動量から入力信号パワー、入力励起パワーを設定し、その都度非線形伝播方程式を解いて、新たなパワーの長手分布を求めるようにしている。また、第9図は、出力信号変動を抑える制御手順を示すフローチャートである。
【0052】
ここで、出力信号の検知を含めた具体的な構成について説明する。
第10図に、ラマン増幅器1の構成について示す。信号光2は画面左側からラマン増幅器1の入射端3 (z = 0) よりラマン増幅器1に入射する。一方、励起光12は励起光源11から出力されたのちに光伝送用ファイバ4の後方から光合波器5を介して入力される。信号光2は増幅媒体として作用する光伝送用ファイバ4中にて励起光12が発生させる誘導ラマン散乱によって光増幅された後、出射端 (z = L) から出力される。第1図に示されるラマン増幅器の構成においては、出射端は光合波器5と同一である。増幅媒体は、本実施の形態のような分布型ラマン増幅器においては光伝送路自身であり、集中型ラマン増幅器においては分散補償ファイバ(DCF)など、非線形性の高いものが使用される。
【0053】
励起光源11は第11図に示すように、複数のレーザ素子21a〜21nから出射された励起光が合波器22によって合波され出力用ファイバ23から出射するように構成される。合波器22としては、レーザ素子の波長や出力光の偏波状態を決めるファイバの種類によって、単数もしくは複数の波長合波器や偏波合成器などが組み合わされ、異なる波長や偏波状態を持った励起光が合波される。なお、複数のレーザ素子の出力光は、各レーザ素子の出力端もしくは合波器の出力端に設置されたデポラライザ24によって無偏光化した後に光合波器をへて光伝送用ファイバに入力されてもよい。たとえば第11図に示した励起光源11の場合、複数のレーザ素子21a〜21nの出力ファイバは偏波保持ファイバであり、それぞれデポラライザ24を経て合波器22に接続される。この場合、合波器22としては波長合波器(WDMカプラ)が使用され、これには単一の合波器で3波以上の合波も可能なマッハツェンダ型のものや、第12図に示すように、誘電体多層膜によって2波長の光を合波するように構成されたWDMカプラ22a〜22hを複数組合わせたものなどがある。また、その他の励起光源11の形態として第13図に示すようなものがある。まず、それぞれが直交する偏波状態を持った励起光源26aと26bを偏波合成器25bで合波し、同様に励起光源26cと26dを偏波合成器25cで合波する。その後両者の出力ファイバは波長合波器25aで波長合成された後に出力される。これらの構成は、ラマン増幅器が持つ光増幅の偏波依存性を解消し、かつ、所望の利得波長帯域をカバーすることを目的としている。そのため、この目的に沿うものであれば、本実施の形態で例示されたものに限られない。なお、励起光源11を構成する複数のレーザ素子はファブリペロー型の共振器構造を持つ半導体レーザチップをモジュール化しファイバ出力を得るようにしたものでも良いし、このようなレーザ素子(モジュール)にFBG(Fiber Bragg Grating)などの外部共振器を用い、波長を安定化させたものでもよい。またFBGの代わりに、半導体レーザチップ自体に波長安定化を目的とした共振器構造を構成しても構わない。これらの波長安定化手段を用いることで、各レーザ素子からの出力励起光パワーを調節しても波長が安定するため、本発明による利得調整の精度がさらに向上するというメリットがある。
【0054】
このように、励起光源11を構成する複数のレーザ素子が複数の波長からなる場合、各励起光の強度を調節することにより、任意の利得波長プロファイルを得ることができる。制御装置14は以下のようにして各波長の励起光制御を行う。ここで制御とは、入力信号の変化や線路状況の変化により出力信号が変化した場合、その出力を仕様によって要求される範囲に保つ、または、復帰させるように励起光パワーを変化させることを示す。
【0055】
まず、第14図に示すように、光増幅され出力された信号光7の一部は光分岐器6によって分岐され、その後受光部13に導入される。受光部13に導入された信号光の一部はモニタ光8として更に光分岐器30によってほぼ等パワーになるよう、複数のポートに分岐される。この分岐数は、制御装置14がラマン利得の制御のために必要とする数によって決定される。分岐された信号光は全信号チャネルの波長を含むため、BPF(Band Pass Filter)31a〜31mなどによりモニタに必要な波長成分以外はカットされ、各分岐ごとに異なる波長域のみが抽出されたのちに複数の受光器32a〜32mに入力する。受光器としては、PD(Photo Diode)が使用されることが多い。制御装置14は、複数の受光器32a〜32mから得られる各信号光波長ごとの強度情報をラマン増幅器の利得波長特性とし、これが所望の強度分布になるように各波長の励起光強度の制御を行う。
【0056】
なお、受光部13は第15図に示すように、マッハツェンダ型の波長分波器33と受光器を組み合わせて用いてもよい。このような構成にすることで、より構成を簡略化するだけでなく、必要な波長光だけを低損失で抽出し、より正確な制御に反映させることができる。また、マッハツェンダ型以外には、第16図に示すように誘電体多層膜フィルタを用いた波長合分波器34a〜34mを複数組み合わせてマッハツェンダ型の波長分波器33のかわりとし、各受光器のそれぞれに、信号光増幅帯域の別々の波長が入力されるように構成してもよい。
また、波長分波器33は、AWGで構成してもよいし、ファイバ型カプラで構成してもよい。
【0057】
本実施の形態では、第17図に示すように、第10図で示した後方励起型ラマン増幅器が縦列に2つ接続されたものについて、前段側のラマン増幅器100aにおける励起光源11aを構成するレーザ素子のうち1つが故障した場合の制御について述べる。故障したレーザ素子は、短波長側から5番目(1451nm)のものとする。なお、信号光出力のモニタおよび制御については、後段側のラマン増幅器100bの出力側でモニタし、後段側のラマン増幅器100bの励起光源11bを制御するものとする。前段側でのモニタや制御は行わないので、図中これらは割愛している。なお、信号光、前、後段のファイバ4aおよび4b、励起光、Net Gainなどの条件は以下のようにする。
【0058】
信号光:1530-1604nm、100GHz間隔、90ch、入力信号光パワー= 0dBm/ch
ファイバ(前後段とも):DSF(Dispersion Shifted Fiber)、100km
励起光(前後段とも):後方10波
Net Gain:0dB
【0059】
これらの条件を満足する各励起光波長とそれらに必要なパワーは表1のようになる。
【表1】
【0060】
本実施の形態では、受光部13のモニタ数を励起光波長数と同一としている。この理由については後述する。すなわち、励起光源11a、11bから出力された、励起光12a、12bが発生する利得波長帯域を複数の受光器32a〜32mと同数になるように分割し、複数の各受光器にはある特定の選択された信号光波長数のみが入力されるよう構成されている。具体的な数値については、表2のとおりである。
【0061】
【表2】
【0062】
より具体的には、励起光12a、12bが発生する利得波長帯域を周波数軸上で等分し、複数の受光器32a〜32mで利得波長特性をモニタしている。このとき、各受光器32a〜32mに入力する信号光の波長選択は、2通りの方法で行った。
【0063】
第一の方法は第18図に示すように、等分された波長域のある代表波長の信号光のみ選択して各受光器に入力する方法である。受光部13は例えば第14図に示すような構成となる。受光器32a〜32mにおいては、BPF31a〜31mの透過帯域を狭くし、究極的には信号1チャネルのみをモニタの対象とするように設定される。本実施例においては、各波長域の中央付近にある波長を対象とした。この方法は信号光出力と波長の関係が明確になるため、測定精度が高められるという利点がある。
【0064】
一方、第一の方法ではパワーが小さくなるために感度がとりにくく、BPFの透過波長精度への要求もより高いために実現が難しい場合がある。そのような場合、第二の方法が有効である。第二の方法は第19図に示すように、等分された波長域に含まれる信号チャネルのうち、複数のパワーを受光器でモニタする方法である。例えば第14図のような構成をもつ受光部13の各受光器において、BPF31a〜31mの透過帯域を広めに取ることによって構成される。また、これら第一、第二の方法において受光部13を第15図、第16図のいずれに示すような構成としてもよい。この場合は、光分波器33の各ポートへの透過帯域を調整することで同様のことが実現される。これにより複数の信号チャネルを含み、受光感度が高めに取れる他、BPF31a〜31mや波長分波器33などに対する波長精度についての要求などが緩くなるなどの利点がある。ただし、モニタされたパワーの情報と実際の各信号光波長におけるパワーの関係が若干不明瞭になるため、後述の繰返し法などにて必要な精度に応じ最適値を探す必要がある。このように、実際に帯域を指定する場合は感度と測定精度を両立する条件が選定されるべきであることは言うまでもない。本実施の形態ではこの複数のパワーをモニタする方法として、第20図に示すように等分された波長域に含まれる信号チャネル全てに対し、ほぼ同程度の透過率を有する誘電体多層膜フィルタを用いた。
【0065】
各BPF31a〜31mや波長分波器33の透過波長帯の選定は、本実施の形態のように、信号光の利得波長帯域を周波数上で等分してもよいし、波長で同様のことを行っても良い。また、励起光11を構成する各レーザ素子、例えば第11図では21a〜21nのそれぞれのピーク波長もしくはRMS(Root Mean Square)波長から100nm程度長波長側を含むように設定したり、この波長を各受光器の感度が最良となる波長と略一致するように設定してもよい。これはラマン利得のピークが励起光波長から約100nm(周波数で約13THz)長波長側にあるためで、このピーク近傍にBPF31a〜31mの透過波長帯を合わせることで各受光器32a〜32mの感度を良好に得ることができる。
【0066】
しかし実際には信号チャネル数が90chあるため、本実施例のように10箇所のみのモニタでは、全体の利得波長特性を測定するのには不十分である。そのため、各チャネルの信号光出力分布を正確に補間する必要がある。本発明はこの補間の方法について与えるものであり、本発明によれば、各励起光のラマン利得効率スペクトルの重ね合わせの原理を用いているため、信号光モニタが全信号光波長に対して行われなかった場合においても、その一部についての情報から全ての信号光波長の出力を正確に知ることができる。以下に具体的な方法について説明する。
【0067】
第17図に示す2台のラマン増幅器100a、100bを接続した系において、前段(添字f)における励起光 (パワーPf,j ; j = 1〜n)はn波、後段(添字b)における励起光(パワーPb,j ; j = 1〜n)もn波の励起波長がそれぞれ波長多重 (WDM;Wavelength Division Multiplexing)されており、信号光 (前段パワーSf,i ; i = 1〜m、後段パワーSb,i)はm波(チャネル)の信号光が波長多重されているものとする。
【0068】
まず前段に関してi番目の信号光の伝搬方程式は、レイリー散乱項、ASE項、シグナル間ラマン項を無視すると
【数26】
【0069】
となる。ここでαiはi番目の信号光の吸収係数、gjiはj番目の励起光とi番目の信号光間のラマンゲイン効率、zは長手方向の位置を表している。第17図において、z = 0はラマン増幅器の入力端3a、z = Lはラマン増幅器の出力端である。ラマン増幅器の場合、光伝送路を増幅媒体として用いた分布型増幅器においては入力端の定義は難しいが、概ね、当該ラマン増幅器の直前の段に接続された光増幅器の出力端のあたりか、ラマンゲインもしくは励起光パワーがおおむね0となるあたりが選ばれる。また、出力端は、第17図においては、光合波器5aがz = Lとなる。増幅用ファイバ一段あたりのファイバ長をLとすると、出力端と入力端の信号光パワーの比は以下のように表せる。
【0070】
【数27】
【0071】
上式を正常時のものとする。故障時には、その信号光パワーと励起光パワーをそれぞれSf,i’(z)、Pf,j’ (z)とすると、同様に以下のように表せる。
【0072】
【数28】
(32)÷(33)をおこなうと
【数29】
【0073】
(34)式を導いた過程と同様のことを後段に関しておこなうと、入力端3b、出力端5bで決まるファイバ長がLであることから、正常時と故障時の信号光パワーをそれぞれSb,i(z)と Sb,i’(z)、正常時と故障時の励起光パワーをそれぞれPb,j(z)と Pb,j’(z)として、
【0074】
【数30】
【0075】
従って、(35)式によって正常時と故障時の出力信号光パワーの比、つまり、モニタ位置の信号光パワーの比を表すことが可能である。(35)式をリニアスケールからログスケールに変換すると以下のようになる。
【数31】
となる。
【0076】
ここまでの議論は、信号間ラマンの効果を無視してきた。信号間ラマンにより、短波長側の信号チャネルから長波長側の信号チャネルへパワーが伝搬することにより、短波長側のゲインが減り、長波長側のゲインが増える。これによりゲインの波長依存性に勾配が生じる。これをラマンチルトと呼ぶ。これは、信号帯域にわたって大局的に勾配がかかる現象であるので、各励起光からのラマン利得効率スペクトルの重ね合わせで十分表現できる。従って以下からはDjには信号間ラマンの効果を補償する近似項を含んでいると仮定する。
【0077】
ここでまず、前述の第一の方法について述べる。1つの受光器で1つのチャネルの出力信号光パワーをモニタできるとすると、正常時と故障時の出力信号光パワーの概念は第21図に示したようなものになる。それぞれ、図中、黒丸で示されたチャネルのパワーが既知であることを示している。まず正常時においては、各励起光出力の設計時に全てのチャネルのパワーが計算されているため、全てが既知である。ここで、設計とは目的とする仕様(出力信号光パワー、ラマンゲイン、ネットゲインなど)を満足するために、最適な励起光パワーを決定することを示す。しかし、故障時においてはどの励起光が故障するかはわからないので、モニタしたチャネルのパワーのみが既知であり、それ以外のチャネルのパワーは未知となる。未知のパワーは白丸で示している。すなわち、このとき、モニタしたチャネルをI = 1, 2, …, n とすると(36)式は
【0078】
【数32】
と表すことができる。よってI = 1, 2, …, nに関して書き下すと
【数33】
となる。GIと行列gは既知なので
【数34】
とすれば、n個全てのDjが求まる。(39)式より、受光部のモニタ数が励起光波長数以上であれば、全てのチャネルの信号光パワーを導くための必要十分条件を満足し、全てのチャネルの信号光パワーを正確に予測できることがわかる。従ってこの場合、 (36)式より全信号チャネル(i = 1〜m)に関して以下の式のようにしてGiが求まり、結果的にGiの定義より、故障時の全チャネルの出力信号光パワーが求めることができる。
【0079】
【数35】
【0080】
本実施例ではラマン増幅器が二段接続された系について説明をおこなったが、ラマン増幅器が三段以上接続された系についても適用可能である。例えば、入力信号光パワーがわかっているラマン増幅器から出力をモニタしているラマン増幅器まで、ファイバ長Lのアンプがl段直列に接続されているとする。何らかの要因によりk段目(1≦k≦l)の励起光パワーの長手分布がPk,jからP’k,jとなり、それによりl段目の出力信号光パワーがSl,i(L)からS’l,i(L)へ変動した場合を考える。この場合は
【0081】
【数36】
とすればよい。但し、信号光パワーの予測を実際におこなう際には、前述の議論にあるように、上式のDjには信号間ラマンの効果の補償項が含まれるものと仮定する。
【0082】
このようにして導出された全チャネルの出力信号光パワーの数値を用い、ラマン増幅器の制御を下記の方法にて行う。
【0083】
パワーの変動量に関する非線形の伝播方程式において、変動量の2次の項を無視することにより線形微分方程式に近似できる。線形であることから入力パワー変動量と出力パワー変動量の関係式を以下のように表すことができる。
【数37】
【0084】
ここで、m波の信号光の入力端(z=0)におけるパワー変動量をε1(0)、ε2(0)、…、εm(0)、出力端(z=L)におけるパワー変動量をε1(L)、ε2(L)、…、εm(L)、n波の励起光の入力端(z=0)におけるパワー変動量をη1(0)、η2(0)、…、ηn(0)、出力端(z=L)におけるパワー変動量をη1(L)、η2(L)、…、ηn(L)としている。(41)式で示されたように、パワー変動量は上記の4つのグループに分けることができる。Aは(m+n)×(m+n)行列で、変動していない状態の信号光パワー、励起光パワー、ファイバパラメータだけで決定されるので既知である。また、WDM伝送では一般的にm>nである。この4つのグループのうち、2つを決定すれば、式(31)を用いて残りの2つは自動的に決定される。
【0085】
まず制御手法の一段階目として、出力信号光パワーの変動量ε1(L)、ε2(L)、…、εm(L)のモニタ結果として、(40)式から導かれた各信号光パワーの数値を用いる。また、入力励起光パワー変動量η1(L)、η2(L)、…、ηn(L)は全て0である。これらを式(41)に代入することにより、入力信号光パワー変動量ε1(0)、ε2(0)、…、εm(0)を推定できる。
【0086】
次に二段階目として、推定した入力信号光パワー変動量ε1(0)、ε2(0)、…、εm(0)と、出力信号光パワー変動量を全て0にして式(31)に代入すると、自動的にそれを満たすような入力励起光パワー変動量η1(L)、η2(L)、…、ηn(L)が求まる。
【0087】
このようにして求められた励起光パワーには線形近似による誤差が生じる。この誤差を軽減するため、一段階目ではモニタした出力信号光パワーに近づけるように中間的な仮目標値を立てることを繰り返して入力信号光パワーを推定する。二段階目も同様にして、入力励起光パワーを決定する。このときの仮目標値と変動前のパワーの比をステップ幅と定義している。
【0088】
上記二段階のステップを複数回繰り返すことにより、最終的に所望の信号光利得波長特性に収束させることができる。
【0089】
第22図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、本実施の形態による補間手法を用いて予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印がほぼ点線上に乗っており、故障時の出力信号光パワーが精度良く補間されていることがわかる。また、制御時の出力信号光パワーに関しても黒丸が実線上にほぼ乗っていることから、精度良い制御がおこなわれている。
【0090】
ここで、信号光90チャネル全てをモニタすることによって制御を行い、その場合の信号光出力の波長特性を測定した結果を第23図に示す。具体的には、後段出力端において信号光チャネル数と同数、すなわち90個の受光器を配置して出力信号光パワーをモニタしている。第23図には正常時を実線、故障時を点線、制御時を黒丸として、後段出力信号光パワーの波長特性が示されている。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮変動量を設定する方法を用いた。なお、90個の受光器に代替するものとして、光スペクトラムアナライザ(OSA:Optical Spectrum Analyzer) を用い、実際にラマン増幅器からの信号光出力の波長特性をモニタする方法を用いてもよい。
【0091】
この場合、正常時の出力信号光パワーの最大値と最小値の差(Max-Min)は0.378dB、故障時では1.804dBとなっている。制御時にはこのMax-Minは0.398dBとなり、正常時に非常に近い値となっている。即ち、信号光チャネル数と同数の受光器を配置することにより、全信号チャネルの出力が正確に測定され、精度の高い制御を行うことができる。
【0092】
ここで、Max-Min以外の評価パラメータとして、全チャネルに関して、制御時の出力信号光パワー[dBm]と正常時の出力信号光パワー[dBm]の差[dB]の二乗の和を全チャネル数で割り、平方根をとったものを「制御時標準偏差」と定義する。この値は0.0415であり、一方のラマン増幅器の励起波長が一部故障した場合においても、他のラマン増幅器の制御によって十分にカバーできることが確認された。
また、本実施の形態による制御時には、Max-Minは0.393dBとなり、この補間方法により、90ch全てをモニタ(0.398dB)するのと同様の精度の制御が可能であることが示され、制御時標準偏差も0.0415と、非常に良好な結果が得られた。この第一の方法によってモニタを行った場合、(31)式で仮定した近似以外の誤差は生じないため、上記の結果で示されたように高い精度での制御が可能である。
【0093】
一方、前記第一の方法においては、モニタ光のパワーが小さくなるために感度がとりにくくなったり、BPFの透過波長精度もより高いものが求められる場合がある。このような場合、モニタ波長域が複数の信号光チャネルを含むようにすることで受光感度や波長精度を緩和することができる。特に最も広くモニタ波長域を取った場合については、前述の第二の方法によって誤差を最小限にし補間を行うことができるため、以下にこの第二の方法について説明する。
【0094】
この方法の概念図を第24図に示す。本実施例においては、励起光波長数がnなのでモニタ波長域の数もnである。また、各モニタ波長域内の信号チャネル数をlとする。すなわち、本実施例においてはn=10、l=9である。また、記号を簡単にするため
【0095】
【数38】
【0096】
とする。また、各モニタ波長域内のある一つの代表波長のパワー(未知の値;本実施例では各モニタ波長域の中心波長のチャネルとした)が、各モニタ波長域内の平均パワー(モニタ値からPDの感度を考慮して換算されたパワー)と等しいとして、前述の第一の方法、すなわち代表波長の信号光からラマン利得効率スペクトルの重ね合わせによる補間を用いて、求まった故障時の出力信号光パワー(図中白丸)をqiとする。
【0097】
1つの受光器がモニタするのはJ番目のモニタ波長域内のl個のチャネルの合計パワーとすることから
【数39】
【0098】
は既知である。従って上記のqiとして求まったモニタ波長域内の代表チャネルパワーに
【数40】
【0099】
をかけたものをモニタ波長域内の新たな代表チャネルパワーとして更新(図中黒丸)して前述の第一の方法と同様の手法で再度、故障時の全信号チャネルの出力パワーを求める。この試行を繰り返し、その繰り返し回数に関して、(42)式が全てのJにおいてある範囲内に収まれば収束と判断する。本実施例においては、収束判定する範囲を0.999〜1.001と設定し、試行回数は3回となった。
【0100】
第25図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、第二の方法により予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印がほぼ点線上に乗っており、故障時の出力信号光パワーが精度良く補間されていることがわかる。また、制御時の出力信号光パワーに関しても黒丸が実線上にほぼ乗っていることから、精度良い制御がおこなわれている。制御時にはMax-Minは0.400dBとなり、90ch全てをモニタするのに非常に近い精度の制御結果が得られた。制御時標準偏差は0.0426となり、この手法でも第一の方法によるものと同等の結果が得られることが確認された。
【0101】
本実施の形態では、励起光数(n個)と同じだけのGiがわかっていれば、全信号チャネル数(m個)のGiが導けることを示した。しかし、実際には励起光数(n個)と同じだけのΣGiがわかっていれば、(36)式を拡張した以下の(43)式より、まずDjを導き、さらに全信号チャネル数(m個)のGiを導くことができる。但し、ΣGiにおいて、Giの和の個数は任意である。
【数41】
【0102】
なお、光フィルタの透過スペクトル特性によって、1つのモニタで受光する複数の信号光パワーに重み付けがされている場合(図7)は、以下の(44)式でモニタ値:Pmonitorを表現できる。但し、wiは各信号光パワーの重み係数である。n, iはそれぞれ、分割した波長域の全てまたは一部の信号チャネル数、信号チャネルの番号を示す。Piは各信号チャネルのパワーを示している。
【数42】
【0103】
上式において、wi、Pmonitorは既知であり、求めたい値はPiである。前記第二の方法と同様に、Piの初期値を決定して、繰り返しPiを更新して収束させる方法を用いる。初期値として、Pi (i = 1〜n)がすべて等しいと仮定すると(44)式より、
【数43】
となり、初期値のPiが求まる。従って、以下のようにすることで、上記第二の方法と同様の手順で全信号チャネルのパワーを求めることができる。
【0104】
(A)モニタ波長域の代表波長の信号光パワーを(15)式で求めたPiとする。正常時の出力信号光パワー(既知)とPiの差がモニタ波長域の代表波長のGiとなる。モニタ数と同じ数のGiが既知となるので、ラマンゲインの重ね合わせの原理(前記第一の方法)によって全ての信号チャネルのGiがわかる。正常時の出力信号光パワー(既知)とGiを用いて、全ての信号チャネルのPiがわかる。
【0105】
(B)但し、この段階ではPiを(44)式の右辺に代入しても、 (44)式の左辺であるモニタ値とは一致しない。従って各モニタ波長域に関して、全てのPiに係数hをかけて、モニタ値と一致させる過程を下式のようにとる。
【数44】
Pmonitor, wi, Pi は既知なので、
【数45】
とすれば、hが求まる。そしてhPiを新たなPiとして更新する。
【0106】
上記(A)〜(B)の過程を繰り返し、全信号チャネルのパワーPiを収束させる。収束判定条件としては、hが、たとえば0.999〜1.001など、ある設定した範囲に入れば収束とする。以上の手法によって、第19図で示した任意の透過帯域をもつバンドパスフィルタを用いても、モニタ数が励起光数以上あれば、全信号チャネルのパワーを精度良く予測できる。
【0107】
なお、第26図に上述した信号パワーの決定処理手順をフローチャートとして示している。
【0108】
実施例(EMBODIMENTS)
設計
ラマン増幅器の励起光パワーの設計を行う場合、設定必要なパラメータやそれに関連した状況、選択される具体的な方法等について以下のような分類ができる。但し、励起光の数と波長は既に決まっているものとする。
【0109】
i.ファイバの特徴
1.分布型
2.集中型
ii.励起方式および励起波長の組み合わせ
1.前方励起のみ
2.後方励起のみ
3.双方向励起において前方励起と後方励起が同じ波長が存在するもの
4.双方向励起において前方励起と後方励起が同じ波長が存在しないもの
iii.設計前の励起光パワーの設定
1.初期値が最適値に近い
2.励起光間のラマン効果を考慮せずゲインの重ね合わせの原理により目標のゲインが得られるように決定した各励起光パワーを初期値とする
3.各励起光パワーを全て同じにし、総励起光パワーを上記2にほぼあわせる。
4.各励起光パワーを全て同じにし、総励起光パワーをごく小さいものとする。
iv.行列Aの更新方法
1.前回のステップの線形近似手法によって求まったパワー変動量を元のパワーに足し合わせ更新する方法のみ用いる。
2.上記1に加え、状況によっては、前回のステップの線形近似手法によって求まった励起光パワーを用いて非線形伝搬方程式を解き正確なパワーを求め更新する手法をとりいれる。
v.目標値への近づけ方
1.目標値に近づけるまでに仮目標値を立てる。
2.目標値に近づけるのに仮目標値を立てない。
【0110】
本発明では上記分類のいかなる組み合わせも含む。i-2「集中型」については、ファイバ長とファイバパラメータを変更することにより、同様に扱うことができる。まず実施例1〜7ではiの条件は1、ivの条件は2に固定した組み合わせに関するものである。
【0111】
実施例1(Example1)、設計分類:i-1, ii-1, iii-1, iv-2, v-2
まず、励起光パワーの初期値が最適値に近く、前方励起のみの場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 0.1mW/ch
励起光:前方励起のみ8波
ファイバ:Single Mode Fiber (SMF), 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0112】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。励起光パワーとは伝送用光ファイバに入力されるパワーであり、以後、励起光パワーと表記するものは伝送用光ファイバに入力されるパワーを示す。第27図に出力信号パワーの移り変わりを示す。第27図の結果を見てもわかるように、Cの励起光セットでほぼ最適なゲインが得られていることがわかる。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられない。即ち、この励起光波長の組み合わせにおいて、最適な励起光パワーの組み合わせが得られたということが示された。
【0113】
実施例2(Example2)、設計分類:i-1, ii-2, iii-1, iv-2, v-2
励起光パワーの初期値が最適値に近く、後方励起のみの場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
励起光:後方励起のみ8波
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0114】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。第28図に出力信号パワーの移り変わりを示す。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられない。すなわち、後方励起のみの系に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0115】
実施例3(Example3)、設計分類:i-1, ii-3, iii-1, iv-2, v-2
励起光パワーの初期値が最適値に近く、双方向励起の場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0116】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。後方励起8波の波長は実施例2と同じ波長を用い、その短波長側4つと同じ波長の前方励起を加えてやり、計12波のポンプセットを考える。設計には、前方、後方どちらのパワーも動かすと一意に決められないので前方の励起光パワーはあらかじめ固定しておく。第29図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第29図の結果を見てもわかるように、Cのポンプセットで十分最適なゲインが得られていることがわかる。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられず、収束したといえる。すなわち、双方向励起の系に関して前方励起光パワーを固定して最適な後方励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0117】
実施例4(Example4)、設計分類:i-1, ii-4, iii-1, iv-2, v-2
励起光パワーの初期値が最適値に近く、実施例3と同様に双方向励起の場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0118】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。励起光を8波とし、その波長は実施例2と同じ波長を用いる。そのうち前方励起を3波、後方励起を5波とする。全て異なる波長なので、全ての励起光パワーを変動させて設計する。第30図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第30図の結果を見てもわかるように、Cのポンプセットで十分良いゲイン特性が得られていることがわかる。Dから線形近似を施してもこれ以上の改善はみられず、収束したといえる。すなわち、双方向励起の系に関して最適な前方励起光パワーと後方励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0119】
実施例5(Example5)、設計分類:i-1, ii-2, iii-2, iv-2, v-1
励起光間のラマン効果を考慮せずゲインの重ね合わせの原理により目標のゲインが得られるように決定した各励起光パワーを初期値とした場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0120】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。また、目標値に2dBずつ近づけるように仮目標値を立てる方法を用いる。即ち目標値と2dB以上離れている信号チャンネルは2dB目標値に近づくように、2dB以内のチャンネルは目標値に一気に近づくようにする。設計前の励起光パワーは励起光間のラマン効果を無視しているので、出力信号の波長特性が大きくチルトがかかることが予想される。第31図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第31図の結果を見てもわかるように、Eのポンプセットで最適なゲインが得られていることがわかる。Eからさらに繰り返し計算をおこなっても改善はみられない。即ち、このように設計前では大きくチルトがかかっている系に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0121】
実施例6(Example6)、設計分類:i-1, ii-2, iii-3, iv-2, v-2
励起光間のラマン効果を考慮せずゲインの重ね合わせの原理により目標のゲインが得られるように決定した総励起光パワーを各励起光に等しく配分したものを初期値とした場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0122】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。また、仮目標値を立てずに目標値に一気に近づけることとする。第32図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。第32図の結果を見てもわかるように、Cのポンプセットで十分最適なゲインが得られていることがわかる。Eからさらに繰り返し計算をおこなっても改善はみられない。即ち、このように設計前で総励起光パワーが最適値に近く、各励起光パワーを等しくした場合に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0123】
実施例7(Example7)、設計分類:i-1, ii-2, iii-4, iv-2, v-1
各励起光パワーをごく小さくしたものを初期値とした場合について設計可能である例を示す。以下のような条件で、励起光パワーを決定する。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0124】
行列Aの更新には、非線形伝搬方程式を解き正確な信号光・励起光パワーを求める手法のみ用いる。また、目標値に2dBずつ近づけるように仮目標値を立てる方法を用いる。設計前の励起光数、波長は実施例5と同じで、その各パワーはすべて10mWとしている。第33図にNet Gain 0dBになるまでの出力信号パワーの移り変わりを示す。A→Dが全チャンネルに関して目標値に2dB近づけているのに対し、D→Gは全チャンネルに関して一気に目標値へ近づけている。Gよりさらに繰り返し計算をおこなっても改善はみられない。即ち、このように設計前で各励起光パワーが最適値に比べ大きく離れている場合に関して最適な励起光パワーの組み合わせが得られたことが示された。
【0125】
実施例8(Example8)、スーパーポジションとの一致
励起光間のラマン効果を無視し、各励起波長から現れるラマンゲインスペクトルを重ね合わせの原理によって重ね、最適に平坦化されたプロファイルを考える。設計においてこれに近い値が得られればある複数の励起波長の組に対して、最適な励起光パワーが得られたと判断できる。
【0126】
分布型でDispersion Shifted Fiber (DSF)、ファイバ長100 km、信号波長域1530〜1610 nm、100GHz間隔で総チャンネル数97ch、入力信号光パワー0dBm/ch、励起光は後方10波、励起波長は決定済とし、ラマンゲイン20dBを実現するように励起光パワーを自動的に求めることとする。各励起光パワーの初期値を10mWとした。第34図は設計前の励起光波長とパワーを表している。このとき得られるラマンゲインは平均約2dBであり、目標値と18dBの違いがある。第35図に3種類の手法で求めたラマンゲインの波長特性を示す。黒三角は初期状態からゲインを1dBずつ上げるように仮目標値を設定して、途中で用いる行列Aは線形近似の結果を用いて計算しながら、ステップを踏んでいく手法、黒四角はその手法で収束したのち誤差を軽減するために非線形方程式を用いて得たAの値を用いて、1回繰り返して精度を上げた結果である。これらの手法で得られた結果を、ゲインの重ね合わせの原理を用いて得た実線でしめされるプロファイル(Superposition)と比較した。線形近似のみの手法により、約0.6dBの誤差で目標のゲインプロファイルが得られ、高速に最適なポンプパワーに近い値が得られることが示された。この違いは仮目標値の設定により、小さくできる事が、実施例9に示される。また非線形の式を最終段階で解く手法の結果と理想的なプロファイルの最大値と最小値の差は、それぞれ0.180dB、0.137dBであり、この手法によって精度良く最適なポンプパワーが決定できることが示された。第36図はそれぞれ設計前、線形近似のみで収束後、最終段階で非線形の式を解く手法で収束後、の励起光パワーを示している。
【0127】
実施例9(Example9)、実測値との一致
ここでは、実験値と逆問題を解いた結果得られた励起光パワーを比較し、その決定能力について述べる。そこで、実測されたラマンゲインを目標として励起光パワーを決定した。実験条件は、ファイバがTrue Wave(登録商標) RS Fiber (TW-RS) , (OFS社製Non-zero dispersion fiber (NZDF)) 77.8 km、励起光数は9、増幅帯域は1530〜1605 nmでASE光源を用いており、その帯域にわたってラマンゲイン約10dBになるように励起光の波長とパワーを設定している。設計条件はその帯域にわたって信号を100GHz間隔で立て、総入力信号光パワーを0dBmとした。実験の励起光パワーで非線形伝播方程式を解いてラマンゲインを求めたところ、実測値と最大0.2dBのずれが生じた。これはシミュレーションにおけるファイバパラメータのずれなどに起因すると考えられる。
【0128】
設計前の各励起光パワーは42mWでありその総パワーは実験の励起光総パワーにほぼ等しい。第37図は励起波長と設計前の励起光パワーを示している。その励起光パワーで非線形方程式を解いて得られたラマンゲインを第38図に示す。測定値と比較するとその差は最大3dBである。第39図に測定値、並びに逆問題を解いて得られた励起光パワーから計算したラマンゲインの波長依存性を示す。設計結果は、線形近似のみによってステップ幅をそれぞれ2dB、1dB、0.5dBとして逆問題を解き目標値に収束させたものと、ステップ幅0.5dBで収束したのちに非線形の式を解いて収束させた結果を示す。ステップ幅が小さくなるにつれ実測値との誤差が小さくなることがわかる。また線形近似のみでステップ幅0.5dBの結果は、最終的に非線形の式を解いた結果と区別がつかない。従ってこの系に関してはステップ幅0.5dBにすれば高速に、なおかつ精度良く最適励起光パワーが得られることが示された。
【0129】
またそれぞれの励起光パワーを第40図に示している。最終的に非線形の式を解く手法で求まった励起光パワーは、実験の励起光パワーと比較して総パワーで2mW、各励起光パワーで最大6mWのずれとなったが、このずれが目的とするラマンゲインに与える影響は小さく、十分に実験の励起光パワーを再現したといえる。このように、ある目標信号出力を実現するために励起光パワーを決定する逆問題を解く目的において、線形近似による手法が有効であることが示された。ちなみに、この場合非線形の式を解く計算時間は線形の場合の60倍であった。
【0130】
制御
線形近似を用いた励起光パワー決定法をラマン増幅器の制御に応用する例について述べる。制御とは、入力信号の変化や線路状況の変化により信号出力が変化した場合、その出力を仕様によって要求される範囲に保つ、または、復帰させるように励起光パワーを変化させることを示す。以下に本実施例で用いる制御手法について簡単に説明する。
【0131】
第41図は信号光1波が伝送され、光伝送路において後方励起光1波によって信号光が増幅される系を示している。また、出射端にディテクターを配置し出力信号をモニターし、制御装置によって後方励起の励起光パワーを制御可能である。ディテクターにはフォトダイオードなどを用いる。
【0132】
入力信号パワーが変動し、その影響で出力信号パワーが変動したと仮定する。この場合は、二段階のプロセスからなる。
【0133】
まず一段階目として、出力信号変動量f(L)をモニターして入力信号変動量f(0)を推定する。第42図はこの推定の過程を、信号光パワーの長手方向の分布で示したものである。この過程において後方励起光入力の変動量η(L)は0である。出力信号変動量が十分小さい場合は(15)式において、ε(L) = f(L)、η(L) = 0としてやれば自動的に入力信号変動量が求まる。出力信号変動量が大きい場合は、推定後の入力信号変動量に線形近似による誤差が生じるので仮目標値を立ててモニターした出力信号変動量へ近づけていく方法が有効である。制御では高速の計算が求められるので、行列Aの更新には前回ステップの結果を用いるほうが良い。
【0134】
次に二段階目として、一段階目で求められた入力信号変動量の推定結果を用い、出力信号を仕様値に戻すために必要な励起光パワーを求める。第43図はこの過程を信号光パワー、励起光パワーの長手方向の分布で示したものである。二段階目の初期設定値には故障前の設計値を用いても良いし、一段階目で推定したパワー変動量を設計値に足し合わせた値を用いても良いが、本実施例では前者でおこなう。一段階目で推定した入力信号変動量f(0)が十分に小さい場合は(15)式において、ε(0) = f(0)、ε(L) = 0として励起光パワー変動量を決定すればよい。入力信号変動量が大きい場合は、線形近似による誤差を軽減するため、仮目標値を立てて推定した入力信号変動量へ近づけていく方法が有効である。二段階目についても行列Aの更新には前回ステップの結果であるパワー変動量を元のパワーに足し合わせる方法が良い。
【0135】
上記の制御においては簡単の説明のため、信号光、励起光とも1波ずつの場合について示した。しかしこの手法は、信号光および励起光波長が複数の場合においても同様に適用することができる。例えば、制御において、一段階目の入力信号変動量の推定に関しては(16)式におけるε(L)、η(L)が既知であり、かつ(m+n)個のパラメータがわかっていることから、ε(0)のm個の要素は一意に導かれる。二段階目に関しては全てのパラメータが一意には決定できないため、最小二乗法などの目標値に対する偏差を最小にするアルゴリズムを用いればよい。
【0136】
実際の制御方法として、以下に述べる手法の組合せによる制御も有効である。例えば、制御の途中段階で計算機によって並行して非線形の式を解いておき、その値を用いて最新の行列Aの値を得ることにより予測精度を高めることができる。また、最初は計算時間を短くするためにステップ幅を大きくして予測結果を収束させておき、その間により小さいステップ幅の予測値を計算しておいてあとで入れ替えてもよい。このようにすれば、最初のレスポンスを短時間にし、かつ最終的に精度の高い予測結果を得るという相反する要求を満足させることができる。さらに、ラマン増幅器の制御ユニットがあらかじめ初期設計の情報だけを持っているのではなく、例えば数dBごとの条件等についての情報を前もってテーブルとしていれておく。そしてテーブルから目標値に近い条件を取り出し、そこを初期条件として制御(調整)を開始するようなアルゴリズムを構成してもよい。この方法でも、短時間のレスポンスと高精度の予測とを両立することができる。
【0137】
ここでは後段のみで制御をおこなったが、前段・後段両方の励起光パワーを制御してもよい。当然、3段以上にわたった場合にも拡張できる。
【0138】
実施例10(Example10)
制御対象はDSF 100km、信号光は1530〜1610 nm、97ch、100GHz間隔、入力信号光パワー0dBm/ch、励起光は後方10波、Net Gain 0dBを実現するように波長とパワーを設計した系を二段繋ぎ、それぞれを前段、後段とする。設計時の励起光波長とパワーを第44図に示す。上記システムの概略を示した図が第45図である。前段の励起光源が1つ故障し、その影響で後段の入力信号、および出力信号が設計値からずれた状態を考え、後段のラマンユニットの励起光パワーを制御装置によって制御して出力信号光パワーを設計値に戻す。まず出力信号をディテクターでモニターして入力信号変動量を推定し、次にその導かれた入力信号と設計時の出力信号を実現する励起光パワー変動量を導く。ここでは仮目標値を立てステップを踏んで目標値へ近づく手法を用い、制御においては高速におこなえる線形近似のみの手法が有効なので、行列Aを線形近似の結果によって計算して、励起光パワーの変動量を予測した。前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定したときに制御した結果の信号出力パワー、故障前の信号出力パワーとの偏差をそれぞれ第46図、第47図に示す。故障時の後段における入力信号は2.5dB、出力信号は2.0dB以上パワーが下がっている。制御後ではステップなし、ステップ幅1dB、0.5dBとなるにつれ、設計値との誤差が小さくなる結果となった。最大値と最小値の差は設計時が0.499dB、ステップ幅0.5dBの制御時は0.535dBとなった。またそれぞれの励起光パワーを第48図に示している。以上より、線形近似のみの手法によって十分制御が可能であることが示された。
【0139】
また、実施例10は前段で短波長側から5番目の励起光源が故障したと仮定した場合であるが、短波長側から5番目以外の励起光源が故障した場合にもこの制御手法は有効である。
【0140】
また、実施例10では後方励起光のみの制御であるが、前方励起光で制御をおこなえばさらにNoise Figureを改善できる。
また、実施例では示さないが、この手法は入力信号が変動しても出力信号を一定に保つような操作にも応用できる。手法が上記手法二段階目と全く同じであることから、その有効性は実施例10で実証済である。
【0141】
調整
線形近似を用いた励起光パワー決定法をラマン増幅器の調整に応用する例について述べる。調整とは、出力が仕様値とずれている場合、出力を仕様値に近づけるべく、励起光パワーを変更することを示す。また、仕様値を変更する場合も、その変更する値に近づけるべく、励起光パワーを変更することも含む。
実施例11は、設計したラマン増幅器を設置した場合に、仕様の信号出力パワーが得られていないときに、そのパワーを元に戻す例である。
【0142】
実施例11(Example11)
実際に設置してみると、仕様の信号出力パワーが得られない場合があるとする。この原因としては、ファイバの吸収係数・ラマンゲイン係数、ファイバ長、励起光の波長・パワーのずれなどが考えられる。本例では、いかなる原因にも関わらず励起光パワーによって信号出力パワーを調整する。調整には、信号入力パワーが変動と仮定した方法を用いる。つまり、制御で用いた手法と全く同じである。ここでは仮目標値を立てて段階を踏む方法を用いていない。
【0143】
まず設計段階では以下のようになっているとする。
信号光:1530-1610nm, 0.1THz間隔, 97ch, 1mW/ch
励起光:後方励起のみ、8波
ファイバ:SMF, 50km
目標値:Net Gain 0dB
【0144】
第49図は設計段階の励起光波長とパワーを表している。第50図は設計段階の入力信号パワーと出力信号パワーの波長特性を表している。
【0145】
設計値との特性ずれの例に関しては、ファイバの吸収係数・ラマンゲイン係数がずれたと仮定する。本例では、実際のファイバがSMFにDSFのファイバ特性が5%加わっているとした。第51図は励起光波長と調整前と調整後の励起光パワーを示している。第52図は信号出力パワーの移り変わりを示している。それぞれ設計時の出力、設置時の実際の出力、励起光パワー調整後の出力を示している。出力パワーの最大値と最小値の差はそれぞれ0.252dB、0.487dB、0.263dBであった。このように不明な原因にも関わらず、線形近似を用いた励起光パワー決定法によって、信号出力パワーを仕様値に戻すことが可能であることが示された。
【0146】
実施例では示さないが、線形近似による励起光パワー決定法を用いた調整例として、信号帯域を変えずに信号のチャンネル数を増減させるような仕様に変更したいときに、仕様の信号出力パワーを保つ場合について説明する。信号チャンネル数を増やす場合は(16)式における行列Aの要素数を増やさなければならないが、これを行うことは困難である。この対策として、例えばチャンネル数が倍になる場合、つまりチャンネル間隔が半分になる場合は、各チャンネルの信号光パワーが倍になったと仮定する。(16)式においては、ε(0)は入力信号光パワーを倍にするように、ε(L)は出力信号光パワーを倍にするように決定する。それに合うようにη(0)あるいはη(L)、つまり、励起光パワーの変動量を最小二乗法によって決定すればよい。また、増減するチャンネル数によって、仮目標値を立てるかどうか、ステップ幅をどの程度にすればよいか判断すればよい。
【0147】
実施例12(Example 12)
上記実施の形態と同様、信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割する。この波長域数は励起光数と等しくする。各波長域に対し、その帯域に含まれる9ch全ての合計パワーをモニタするものとする。10箇所しかモニタしていないため、未知の出力変動量を10箇所のモニタ値から補間によって推定する必要がある。
【0148】
本実施例においては、前述の実施の形態と同様、ラマンゲイン効率スペクトルの重ね合わせの原理を用いる。ここでは、モニタ波長域内の平均パワーを、その波長域の中央にあるチャネルのパワーとし、前述の実施形態、第一の方法と同様の補間をおこなったが、第二の方法である繰り返し法はおこなっていない。
【0149】
第53図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印がほぼ点線上に乗っており、故障時の出力信号光パワーが精度良く補間されていることがわかる。また、制御時の出力信号光パワーに関しても黒丸が実線上にほぼ乗っていることから、精度良い制御がおこなわれている。制御時にはMax-Minは0.433dBとなり、90ch全てをモニタした値(0.398dB)に非常に近い精度の制御結果が得られた。制御時標準偏差は0.0713となり、この手法でも良好な結果が得られた。
【0150】
実施例13(Example 13)
上記実施の形態と同様、信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割する。この波長域数は励起光数と等しくする。各波長域に対し、その波長帯の中で波長に関して中心の位置にあるチャネルの出力信号光パワーをモニタする。結局、10個の受光器を用いて、信号光10ch分のパワーをモニタすることになる。しかし10chしかモニタしていないため、残り80chのパワー変動量をモニタされた10chのパワー変動量の値から補間によって推定する必要がある。
【0151】
本実施例では、ある1つの波長域内の各チャネルのパワー全てを、モニタしたチャネルのパワーと同一にした(近傍補間)。具体的には、その波長域の中央にあるチャネルのパワーをモニタしている。
【0152】
第54図に後段における出力信号光パワーを示す。正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸としている。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。図中では三角印が点線上にほとんど乗っておらず、故障時の出力信号光パワーの全体的な傾向は再現されているものの、その局所的な特性が予測されていない。制御時の出力信号光パワーに関しては黒丸が実線に近い値を示している。
【0153】
信号光出力のMax-Minは0.659dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.122である。90個のPDを用いた場合(0.0415)に比べ、約3倍になる。前述の実施形態による結果と比較した場合、大きめではあるが、より簡便な方法で実用に適用可能な結果を得ることができる。
【0154】
実施例14(Example 14)
実施例13と同様に10個の受光器を用いて、信号光10ch分のパワーをモニタする。補間方法としては、モニタした信号光パワーを直線で結び、残りのチャネルの信号光パワーを推定する方法を用いた(線形補間)。本実施例ではログスケールで線形補間をおこなったが、リニアスケールでおこなってもよい。最も短波長側の4ch、あるいは最も長波長側の4chは最も波長が近い2つのパワーを結んだ直線で外挿補間している。第55図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸としている。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0155】
本実施例による制御の結果として、信号光出力のMax-Minは0.664dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.121である。
【0156】
実施例15(Example 15)
実施例13、14と同様、励起光数と同じ数、つまり10個の受光器を用いる。そして信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割し、各波長域毎にそこに含まれる9chの信号光パワーの合計をモニタする。10個の値しかモニタしていないことから、その10個の値を用いて未知の数値を補間し、全90chのパワー変動量を推定する必要がある。
【0157】
ここでは、波長域内の平均パワーを、その波長域内の中心波長のチャネルのパワーと等しいとして、実施例2と同様に近傍補間した。第56図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0158】
本実施例による制御の結果として、信号光出力のMax-Minは0. 645dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.111である。この結果は、ある波長域内の任意のチャネル(中央付近の波長など)を1つの受光器でモニタする実施例13の場合よりも改善されている。
【0159】
実施例16(Example 16)
実施例15と同様、励起光数と同じ数、つまり10個の受光器を用いる。そして信号光全90chを短波長側から9chずつ、計10個の波長域に分割し、各波長域毎にそこに含まれる9chの信号光パワーの合計をモニタする。10個の値しかモニタしていないことから、その10個の値を用いて未知の数値を補間し、全90chのパワー変動量を推定する必要がある。
【0160】
ここでは、波長域内の平均パワーを、波長域内の中心波長のチャネルのパワーと等しいとして、実施例3と同様に線形補間した。第57図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0161】
本実施例による制御の結果として、信号光出力のMax-Minは0. 623dBとなり、信号光全90チャネルをモニタする場合(0.398dB)に比べ、モニタ数を1/9にしたにもかかわらず、Max-Minは2倍以下に抑えられた。また、制御時標準偏差は0.115である。
【0162】
実施例17(Example 17)
実施例13〜16のモニタ方法は信号帯域全体のパワー変動量の傾向は再現できるものの、分割した波長域内の局所的なパワー変動量の傾向は予測できない。本実施例では、これを予測する方法について説明する。
【0163】
まず実施例14と同様に、10個の受光器を用いて信号光10ch分のパワーをモニタし、残り80chのパワーは線形補間する。この際、実施例16のように1つの受光器がモニタできるチャネル数を増やしてもよい。本実施例では1つの受光器で1chをモニタする。このときの線形補間した故障時出力信号光パワー(qi ; i = 1〜90)を第58図の点線で表す。また、正常時出力信号光パワー(Pi)を第58図の黒丸で、それを故障時と同様に線形補間したもの(pi)を実線で表す。
【0164】
予測する故障時出力信号光パワー(Qi)を
【数46】
【0165】
と近似する。これを第58図の三角印で表す。この手法は近似したことによる誤差を含むが、局所的なパワー変動量を簡単に予測するのに有効である。
【0166】
第59図に後段出力信号光パワーに関して、正常時の波長特性を実線、故障時の波長特性を点線、予測した故障時を三角、その制御時を黒丸で示す。制御には、1dBずつ目標値に近づけるように仮目標値を設定する方法を用いた。
【0167】
本実施例による制御の結果としてMax-Minは0.493dBとなり、近傍補間のみ、あるいは線形補間のみの補間方法に比べ、大幅に改善された。また、制御時標準偏差も0.0723となり、大幅に改善された。
【0168】
実施例12〜17間の詳細な比較
これまでに示したモニタ方法をまとめて比較・評価する。その評価パラメータとして、以下の三つを設定する。
【0169】
○Max-Min [dB]:制御時出力信号光パワーの最大値と最小値の差
○制御時標準偏差 [dB]:全チャネルに関して、制御時の出力信号光パワー[dBm]と正常時の出力信号光パワー[dBm]の差[dB]の二乗の和を全チャネル数で割り、平方根をとったもの
○故障時標準偏差 [dB]:全チャネルの故障時出力信号光パワーに関して、モニタから補間した予測値[dBm]と真値[dBm]の差[dB]の二乗の和を全チャネル数で割り、平方根をとったもの
【0170】
各モニタ方法に対して、上記評価パラメータの値をとった表を以下に示す。
【表3】
【0171】
まずMax-Minに注目すると正常時の値は0.378である。OSAを用いて全チャネルをモニタできれば0.398となり非常に精度の良い制御がなされている。10個のPDを用いた場合、近傍補間、線形補間は0.6〜0.7の範囲となり正常時の約2倍の値となる。それに対し、ゲインの重ね合わせによる補間をおこなうと正常時に非常に近い値が得られる。また、前記第二の方法で繰り返し回数が増えるにつれ、その値が小さくなる様子がわかる。
同様のことが制御時標準偏差にもいえる。
【0172】
故障時標準偏差に関しては、ゲインの重ね合わせによる補間をおこなうと0.01以下になり、その制御した値も正常値に非常に近いものが得られている。従ってこのケースでは、故障時標準偏差が0.01以下のオーダーになれば、制御に対して、非常に良い精度で故障時出力信号光パワーが予測されていると判断できる。
【0173】
実施例18(Example 18)
実施例17までは、第17図のような構成で、前段において短波長側から5番目の励起光源(1451nm)が故障したケースでの制御について示した。本実施例においては、本発明による方法の適用能力を確認するために、前段において最も長波長側の励起光源(1501nm)が故障したケースに対して、故障時出力信号光パワーを予測した結果を示す。
【0174】
受光器には10個のPDを用い、1つのPDがモニタするのはモニタ波長域に含まれる全てのチャネルの合計パワーとして、線形補間、ゲインの重ね合わせによる補間それぞれの方法で、故障時出力信号光パワーを予測した。そのときの故障時標準偏差を、短波長側から5番目の励起光源が故障したケースを含めて、第60図に示す。このように最も長波長側の励起光源が故障した場合でも、利得波長帯域の中間近辺で故障が起こった場合と同様、全チャネルの信号光パワーを正確に予測し、制御できることが確認された。また、線形補間や、重ね合わせ補間の繰り返しをおこなわないものに比べて、発明の好ましい態様、第二の方法により繰り返し回数を増やしていくと、標準偏差が小さくなるのがわかる。5番目の励起光源が故障したケースと同じ収束判定条件では2回で収束したが、図中では3回繰り返した値まで示している。このケースでは、利得波長帯域の中間近辺で故障が起こった場合と同様、繰り返し回数が2回でほぼ標準偏差が収束し、真の全チャネルの故障時出力信号光パワーを予測できている。
【0175】
実施例19(Example 19)
第61図に、本発明による制御機能を有するラマン増幅器を使用した光伝送システム200を示す。光送信装置(Tx)で電気/光変換をしたのちに出力された光信号2は、光伝送用ファイバ4の伝送中に発生したロスをラマン増幅器100b1〜100bpで補償しながら、光受信装置(Rx)で受信され、電気信号に再生される。ラマン増幅器100b1〜100bpはそれぞれ、第17図に示されたラマン増幅器100bと同様の構成を持つ。そのため、これらのラマン増幅器100b1〜100bpは本発明の各実施形態で説明したように、その前段に接続されたラマン増幅器の励起光源を構成するレーザ素子の一部が故障などをした場合でも、故障した励起光波長を特定し、自らの励起光パワーを調節して所望の利得波長特性を維持する機能を有している。すなわち、光伝送システム200において、本発明によるラマン増幅器を縦列に接続すれば、ラマン増幅器100b1〜100bp のいずれが故障した場合においても、その後段のラマン増幅器が自動的に故障したレーザ素子による利得の変動を補償し、光伝送システム200からの信号光出力の変動を最小限に抑えることができる。
【0176】
実施例20(Example 20)
第62図に、本発明による制御機能を有するラマン増幅器を使用した、その他の光伝送システム201を示す。図示されたシステム201において、ラマン増幅器100a11〜100ap3が組み合わされているほかは、光伝送システム200と同一である。従って、重複する説明については割愛する。ラマン増幅器100b1〜100bpはそれぞれ実施例8と同様、本発明による制御機能を有したラマン増幅器である。一方、ラマン増幅器100a11〜100ap3はそれぞれ、利得の制御機能はもっていない。このような光伝送システム201において、ラマン増幅器100a11〜100ap3の励起光源を構成するいずれかのレーザ素子が故障した場合の動作について以下に説明する。
【0177】
まずラマン増幅器100a11〜100a12のいずれかに故障が発生した場合、ラマン増幅器100b1が故障を検知し、ラマン増幅器100b1からの出力が一定に維持されるよう制御する。そのため、それより後段側にあるラマン増幅器および光受信装置Rxへの影響は防ぐことができる。
【0178】
次にラマン増幅器100ap1〜100ap3のいずれかに故障が発生した場合は、ラマン増幅器100bp がそこで発生した損失を補償するように利得波長特性を変化させカバーする。なお、例えば、ラマン増幅器100b1などで故障が発生した場合には、その後段で最も近接した、ラマン増幅器100 b2がその損失をカバーするように働く。
【0179】
このように、制御機能を持たないラマン増幅器のいずれかに故障が発生した場合、それより後段側にあり最も近接したラマン増幅器が損失を補償するように働く。反面、制御機能を持つラマン増幅器はそれより前段側で発生した損失を補償するだけの励起光パワーを発生させなければならない。そのため、前段に何台の制御機能を持たないラマン増幅器を接続するかは、制御機能を有するラマン増幅器の増幅能力によって決定される。
以上のようなシステム構成とすることにより、光伝送システム201を構成するラマン増幅器の全てが制御機能を有するラマン増幅器であるという必要はなくなり、制御機能を持ちつつもコストを抑えたシステムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0180】
以上のように、本発明に係る波長多重励起ラマンアンプの制御装置、制御方法およびその制御プログラムでは、広帯域の信号光の増幅が可能なラマン増幅器において所望の利得プロファイルを実現するために、複数波長からなる励起光の強度を決定するようにしているので、ラマン増幅器単体およびこれを用いた波長多重通信システムに適している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプにおいて、
信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項2】
前記関係式は、連立一次方程式であることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項3】
前記関係式は、パワーの変動量で記述された非線形伝搬方程式の2次の項を削除した線形近似式であることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項4】
前記関係式は、対象ファイバにおける一定長の分布情報を定数と仮定した区間内近似であることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項5】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に増幅媒体となる対象ファイバのパラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項6】
前記対象ファイバのパラメータは、ロスパラメータ、ラマンゲインパラメータであることを特徴とする請求項5に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項7】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に現在得られている信号パワーおよび/または励起パワーの長手方向の分布を含むことを特徴とする請求項2に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項8】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得られるものであることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項9】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項10】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項9に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項11】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、所定のテーブルにデータとしてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項12】
前記行列要素は、予め行われる測定によって得られるものであることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項13】
前記行列要素は、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から計算されるものであることを特徴とする請求項12に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項14】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項15】
前記関係式に前記第1変動量および前記第2変動量を代入し、前記第3変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項16】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項17】
前記制御手段は、現在求められた値と最終的な目標値との間の値を仮目標値とし該仮目標を満足する前記他の2つの変動量を算出する中間演算処理を行い、この中間演算処理によって算出された値を前記現在求められた値として前記中間演算処理を繰り返し行って、前記最終的な目標値を得ることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項18】
前記制御手段は、前記中間演算処理時に、対象ファイバの長手方向の分布に関する情報を更新することを特徴とする請求項17に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項19】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、更新前の長手方向分布の値に、今回求まった前記他の2つの変動量の長手方向分布の値を加えることによって行われることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項20】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、非線形伝播方程式を解くことによって行われることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項21】
信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項22】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項21に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項23】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得の対数値であることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項24】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で0.5dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項25】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で1dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項26】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で2dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項27】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で3dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項28】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、該中間演算処理毎および/または信号チャネル毎に異ならせることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項29】
波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプの制御方法において、
信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行うことを
特徴とする波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項30】
前記関係式は、連立一次方程式であることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項31】
前記関係式は、パワーの変動量で記述された非線形伝搬方程式の2次の項を削除した線形近似式であることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項32】
前記関係式は、対象ファイバにおける一定長の分布情報を定数と仮定した区間内近似であることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項33】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に増幅媒体となる対象ファイバのパラメータを含むことを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項34】
前記対象ファイバのパラメータは、ロスパラメータ、ラマンゲインパラメータであることを特徴とする請求項33に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項35】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に現在得られている信号パワーおよび/または励起パワーの長手方向の分布を含むことを特徴とする請求項30に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項36】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得られるものであることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項37】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項38】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項37に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項39】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、所定のテーブルにデータとしてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項40】
前記行列要素は、予め行われる測定によって得られるものであることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項41】
前記行列要素は、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から計算されるものであることを特徴とする請求項40に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項42】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項43】
前記関係式に前記第1変動量および前記第2変動量を代入し、前記第3変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項44】
前記関係式に前記第3変動量および前記第4変動量を代入し、前記第1変動量および前記第2変動量を求めることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項45】
現在求められた値と最終的な目標値との間の値を仮目標値とし該仮目標を満足する前記他の2つの変動量を算出する中間演算処理を行い、この中間演算処理によって算出された値を前記現在求められた値として前記中間演算処理を繰り返し行って、前記最終的な目標値を得ることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項46】
前記中間演算処理時に、対象ファイバの長手方向の分布に関する情報を更新することを特徴とする請求項45に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項47】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、更新前の長手方向分布の値に、今回求まった前記他の2つの変動量の長手方向分布の値を加えることによって行われることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項48】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、非線形伝播方程式を解くことによって行われることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項49】
信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項50】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項49に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項51】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得の対数値であることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項52】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で0.5dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項53】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で1dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項54】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で2dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項55】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で3dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項56】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、該中間演算処理毎および/または信号チャネル毎に異ならせることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項57】
波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプの制御プログラムにおいて、
信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し、前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行うことを
特徴とする波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項58】
前記関係式は、連立一次方程式であることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項59】
前記関係式は、パワーの変動量で記述された非線形伝搬方程式の2次の項を削除した線形近似式であることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項60】
前記関係式は、対象ファイバにおける一定長の分布情報を定数と仮定した区間内近似であることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項61】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に増幅媒体となる対象ファイバのパラメータを含むことを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項62】
前記対象ファイバのパラメータは、ロスパラメータ、ラマンゲインパラメータであることを特徴とする請求項61に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項63】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に現在得られている信号パワーおよび/または励起パワーの長手方向の分布を含むことを特徴とする請求項58に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項64】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得られるものであることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項65】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項66】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項65に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項67】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、所定のテーブルにデータとしてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項68】
前記行列要素は、予め行われる測定によって得られるものであることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項69】
前記行列要素は、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から計算されるものであることを特徴とする請求項68に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項70】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項71】
前記関係式に前記第1変動量および前記第2変動量を代入し、前記第3変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項72】
前記関係式に前記第3変動量および前記第4変動量を代入し、前記第1変動量および前記第2変動量を求めることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項73】
現在求められた値と最終的な目標値との間の値を仮目標値とし該仮目標を満足する前記他の2つの変動量を算出する中間演算処理を行い、この中間演算処理によって算出された値を前記現在求められた値として前記中間演算処理を繰り返し行って、前記最終的な目標値を得ることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項74】
前記中間演算処理時に、対象ファイバの長手方向の分布に関する情報を更新することを特徴とする請求項73に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項75】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、更新前の長手方向分布の値に、今回求まった前記他の2つの変動量の長手方向分布の値を加えることによって行われることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項76】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、非線形伝播方程式を解くことによって行われることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項77】
信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項78】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項77に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項79】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得の対数値であることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項80】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で0.5dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項81】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で1dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項82】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で2dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項83】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で3dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項84】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、該中間演算処理毎および/または信号チャネル毎に異ならせることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項1】
波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプにおいて、
信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行う制御手段を備えたことを特徴とする波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項2】
前記関係式は、連立一次方程式であることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項3】
前記関係式は、パワーの変動量で記述された非線形伝搬方程式の2次の項を削除した線形近似式であることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項4】
前記関係式は、対象ファイバにおける一定長の分布情報を定数と仮定した区間内近似であることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項5】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に増幅媒体となる対象ファイバのパラメータを含むことを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項6】
前記対象ファイバのパラメータは、ロスパラメータ、ラマンゲインパラメータであることを特徴とする請求項5に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項7】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に現在得られている信号パワーおよび/または励起パワーの長手方向の分布を含むことを特徴とする請求項2に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項8】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得られるものであることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項9】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項10】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項9に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項11】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、所定のテーブルにデータとしてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項12】
前記行列要素は、予め行われる測定によって得られるものであることを特徴とする請求項7に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項13】
前記行列要素は、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から計算されるものであることを特徴とする請求項12に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項14】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項15】
前記関係式に前記第1変動量および前記第2変動量を代入し、前記第3変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項16】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項17】
前記制御手段は、現在求められた値と最終的な目標値との間の値を仮目標値とし該仮目標を満足する前記他の2つの変動量を算出する中間演算処理を行い、この中間演算処理によって算出された値を前記現在求められた値として前記中間演算処理を繰り返し行って、前記最終的な目標値を得ることを特徴とする請求項1に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項18】
前記制御手段は、前記中間演算処理時に、対象ファイバの長手方向の分布に関する情報を更新することを特徴とする請求項17に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項19】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、更新前の長手方向分布の値に、今回求まった前記他の2つの変動量の長手方向分布の値を加えることによって行われることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項20】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、非線形伝播方程式を解くことによって行われることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項21】
信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項22】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項21に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項23】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得の対数値であることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項24】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で0.5dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項25】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で1dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項26】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で2dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項27】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で3dB以下であることを特徴とする請求項23に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項28】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、該中間演算処理毎および/または信号チャネル毎に異ならせることを特徴とする請求項18に記載の波長多重励起ラマンアンプ。
【請求項29】
波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプの制御方法において、
信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行うことを
特徴とする波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項30】
前記関係式は、連立一次方程式であることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項31】
前記関係式は、パワーの変動量で記述された非線形伝搬方程式の2次の項を削除した線形近似式であることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項32】
前記関係式は、対象ファイバにおける一定長の分布情報を定数と仮定した区間内近似であることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項33】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に増幅媒体となる対象ファイバのパラメータを含むことを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項34】
前記対象ファイバのパラメータは、ロスパラメータ、ラマンゲインパラメータであることを特徴とする請求項33に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項35】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に現在得られている信号パワーおよび/または励起パワーの長手方向の分布を含むことを特徴とする請求項30に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項36】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得られるものであることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項37】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項38】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項37に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項39】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、所定のテーブルにデータとしてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項40】
前記行列要素は、予め行われる測定によって得られるものであることを特徴とする請求項35に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項41】
前記行列要素は、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から計算されるものであることを特徴とする請求項40に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項42】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項43】
前記関係式に前記第1変動量および前記第2変動量を代入し、前記第3変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項44】
前記関係式に前記第3変動量および前記第4変動量を代入し、前記第1変動量および前記第2変動量を求めることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項45】
現在求められた値と最終的な目標値との間の値を仮目標値とし該仮目標を満足する前記他の2つの変動量を算出する中間演算処理を行い、この中間演算処理によって算出された値を前記現在求められた値として前記中間演算処理を繰り返し行って、前記最終的な目標値を得ることを特徴とする請求項29に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項46】
前記中間演算処理時に、対象ファイバの長手方向の分布に関する情報を更新することを特徴とする請求項45に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項47】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、更新前の長手方向分布の値に、今回求まった前記他の2つの変動量の長手方向分布の値を加えることによって行われることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項48】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、非線形伝播方程式を解くことによって行われることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項49】
信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項50】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項49に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項51】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得の対数値であることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項52】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で0.5dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項53】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で1dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項54】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で2dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項55】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で3dB以下であることを特徴とする請求項51に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項56】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、該中間演算処理毎および/または信号チャネル毎に異ならせることを特徴とする請求項46に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御方法。
【請求項57】
波長多重信号光に対して任意の信号利得/出力特性を設定制御することができる波長多重励起ラマンアンプの制御プログラムにおいて、
信号入力端における現在の信号光パワー変動量である第1変動量と、励起光入力端における現在の励起光パワー変動量である第2変動量と、信号出力端における現在の信号光パワー変動量である第3変動量と、励起光出力端における現在の励起光パワー変動量である第4変動量とを関係付ける関係式をもとに、第1〜第4変動量の任意の2つの変動量を予め決定しておくことによって他の2つの変動量を決定し、前記関係式を満足する各励起光パワーを決定する制御を行うことを
特徴とする波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項58】
前記関係式は、連立一次方程式であることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項59】
前記関係式は、パワーの変動量で記述された非線形伝搬方程式の2次の項を削除した線形近似式であることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項60】
前記関係式は、対象ファイバにおける一定長の分布情報を定数と仮定した区間内近似であることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項61】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に増幅媒体となる対象ファイバのパラメータを含むことを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項62】
前記対象ファイバのパラメータは、ロスパラメータ、ラマンゲインパラメータであることを特徴とする請求項61に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項63】
前記連立一次方程式の係数行列は、その行列要素に現在得られている信号パワーおよび/または励起パワーの長手方向の分布を含むことを特徴とする請求項58に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項64】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、非線形伝播方程式を解くことによって得られるものであることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項65】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項66】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項65に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項67】
前記信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、所定のテーブルにデータとしてあらかじめ保管されていることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項68】
前記行列要素は、予め行われる測定によって得られるものであることを特徴とする請求項63に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項69】
前記行列要素は、励起パワーを1つずつ順次変動させその影響によるゲイン変動量を順次測定し、その測定値から計算されるものであることを特徴とする請求項68に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項70】
前記関係式に前記第1変動量および前記第3変動量を代入し、前記第2変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項71】
前記関係式に前記第1変動量および前記第2変動量を代入し、前記第3変動量および前記第4変動量を求めることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項72】
前記関係式に前記第3変動量および前記第4変動量を代入し、前記第1変動量および前記第2変動量を求めることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項73】
現在求められた値と最終的な目標値との間の値を仮目標値とし該仮目標を満足する前記他の2つの変動量を算出する中間演算処理を行い、この中間演算処理によって算出された値を前記現在求められた値として前記中間演算処理を繰り返し行って、前記最終的な目標値を得ることを特徴とする請求項57に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項74】
前記中間演算処理時に、対象ファイバの長手方向の分布に関する情報を更新することを特徴とする請求項73に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項75】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、更新前の長手方向分布の値に、今回求まった前記他の2つの変動量の長手方向分布の値を加えることによって行われることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項76】
前記対象ファイバの長手方向の分布に関する情報の更新は、非線形伝播方程式を解くことによって行われることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項77】
信号および/または励起パワーの長手方向の分布は、対象ファイバ内の各パワー分布の測定によって得られるものであることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項78】
前記測定は、OTDRによって行われることを特徴とする請求項77に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項79】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得の対数値であることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項80】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で0.5dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項81】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で1dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項82】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で2dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項83】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、信号光利得で3dB以下であることを特徴とする請求項79に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【請求項84】
前記中間演算処理時の仮目標の刻み幅は、該中間演算処理毎および/または信号チャネル毎に異ならせることを特徴とする請求項74に記載の波長多重励起ラマンアンプの制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
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【図58】
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【図62】
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【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【公開番号】特開2010−160514(P2010−160514A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76319(P2010−76319)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2005−502941(P2005−502941)の分割
【原出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【分割の表示】特願2005−502941(P2005−502941)の分割
【原出願日】平成16年2月27日(2004.2.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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