波長選択スイッチ
【課題】分散素子による偏波依存性損失を低減でき、出力される光信号のS/Nを向上できる波長選択スイッチを提供する。
【解決手段】 入力ポート10a−10dと、入力光を分散する第1分散部30a,30bと、分散される光を偏向する偏向部50と、偏向部50で偏向された光を波長多重する第2分散部32と、波長多重された光を出力する出力ポート10eと、を備え、第1分散部30は、入力ポート10a−10dからの光を分散する第1分散素子31a,31bを備え、第2分散部32は、偏向部50により偏向された光を分散して出力ポート10eに入射させる第2分散素子33を有し、第2分散素子33は、第1分散素子31a,31bの偏光特性を相殺するような偏光特性を有する。
【解決手段】 入力ポート10a−10dと、入力光を分散する第1分散部30a,30bと、分散される光を偏向する偏向部50と、偏向部50で偏向された光を波長多重する第2分散部32と、波長多重された光を出力する出力ポート10eと、を備え、第1分散部30は、入力ポート10a−10dからの光を分散する第1分散素子31a,31bを備え、第2分散部32は、偏向部50により偏向された光を分散して出力ポート10eに入射させる第2分散素子33を有し、第2分散素子33は、第1分散素子31a,31bの偏光特性を相殺するような偏光特性を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の波長選択スイッチとして、例えば特許文献1に開示のものが知られている。図8は、特許文献1に開示された波長選択スイッチを示すものである。図8において、入力ポート101から入力される波長多重された光信号は、集光レンズ102を経て反射型の分散素子103により波長毎の光信号に分散されて反射される。分散素子103により分散された光信号は、集光レンズ102により各光信号の波長に対応する偏向素子104−1−104−nに集光されてそれぞれ独立して偏向される。そして、再び集光レンズ102を経て分散素子103により波長多重されて、集光レンズ102を経て入力ポート101とともに紙面垂直方向に配列された図示しない出力ポートから出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,381,387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分散素子は、一般に、P偏光成分とS偏光成分とで波長に対する透過率や反射率(回折格子では回折効率)が異なる偏光特性を有している。そのため、図8に示した波長選択スイッチにおけるように、入力ポート101から入力されて出力ポートに出力する光信号が、分散素子103により往路と復路とで分散作用を受ける場合、全体としての偏光特性は2回分が重畳されたものとなる。例えば、分散素子103が、図9Aに示すような波長λに対する反射率Rの偏光特性を有する場合、全体としての偏光特性は、図9Bに示すように、図9Aの偏光特性が往復の2回分積み重なったものとなる。
【0005】
その結果、分散素子103によるP偏光成分とS偏光成分との効率差が大きく生じることになる。これにより、光信号の偏波依存性損失(PDL: Polarization Depending Loss)が増大することが懸念される。このような現象は、透過型の分散素子を用いて、往路と復路とで分散素子を透過させる場合も、分散素子がP偏光成分とS偏光成分とで透過率(回折格子では回折効率)が異なる偏光特性を有するため、同様に生じるものである。
【0006】
したがって、かかる観点に鑑みてなされた本発明の目的は、分散素子による偏波依存性損失を低減できる波長選択スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する波長選択スイッチの発明は、
少なくとも一つの入力ポートと、
該入力ポートから入力される光を分散する第1分散部と、
該第1分散部により分散される光を偏向する偏向部と、
該偏向部で偏向された光を波長多重する第2分散部と、
該第2分散部で波長多重された光を出力する少なくとも一つの出力ポートと、を備え、
前記第1分散部は、前記入力ポートからの光を分散する第1分散素子を備え、前記第2分散部は、前記偏向部により偏向された光を波長多重して前記出力ポートに入射させる第2分散素子を備え、前記第2分散素子は、前記第1分散素子の偏光特性を相殺するような偏光特性を有する、
ことを特徴とするものである。
【0008】
前記第1および第2分散素子は、同一の基板上に設けられている、のが好ましい。
【0009】
前記第1および第2分散素子は、同一の光学部材に形成されている、のが好ましい。
【0010】
前記第1および第2分散素子は、透過型の分散素子からなり、
前記第1および第2分散部は、透過型の前記分散素子と反射素子とを備え、前記分散素子により分散される光を前記反射素子により反射させて再び前記分散素子に入射させるリットマン・メトカルフ構造からなる、のが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、入力ポートからの光を分散する第1分散部の第1分散素子における偏光特性を、偏向部により偏向された光を波長多重する第2分散部の第2分散素子の偏光特性によって相殺、つまり打ち消されるので、分散素子による偏波依存性損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の第1実施の形態に係る波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向から見た概略構成図である。
【図1B】図1Aの波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向と直交する方向から見た概略構成図である。
【図2】図1Aの第1および第2分散部、集光レンズおよび偏向部の部分の概略斜視図である。
【図3A】図1Aの第1分散部の第1分散素子における回折効率の偏光特性を示す図である。
【図3B】図1Aの第2分散部の第2分散素子における回折効率の偏光特性を示す図である。
【図3C】図1Aの第1および第2分散素子による往復の回折効率の偏光特性を示す図である。
【図4A】図1Aの第1および第2分散部の好適構成の一例を示す斜視図である。
【図4B】図1Aの第1および第2分散部の好適構成の他の例を示す斜視図である。
【図5A】本発明の第2実施の形態に係る波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向から見た概略構成図である。
【図5B】図5Aの波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向と直交する方向から見た概略構成図である。
【図6】図5Aの第1および第2分散部、集光レンズおよび偏向部の部分の概略斜視図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。
【図8】従来の技術を説明するための図である。
【図9A】図8の分散素子の偏光特性を示す図である。
【図9B】図8の分散素子により2回分散される場合の偏光特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る波長選択スイッチについて、図を参照して説明する。
【0014】
(第1実施の形態)
図1Aおよび図1Bは、本発明の第1実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。この波長選択スイッチは、4つの入力ポート10a−10d、1つの出力ポート10e、第1分散部30a,30b、第2分散部32、集光レンズ40、偏向部50を備え、4つの入力ポート10a−10dから入力されるそれぞれ異なる波長の光信号を選択的に多重して、1つの出力ポート10eから出射するものである。以下、説明の便宜上、入力ポート10a−10dおよび出力ポート10eを、適宜、入出力ポート10a−10eとまとめて表記する。
【0015】
入出力ポート10a−10eは、出力ポート10eを中央としてY方向に直線状に配列されている。入出力ポート10a−10eは、対応する光ファイバ11a−11eとそれらの後段に配置されたマイクロレンズアレイ12とを備える。マイクロレンズアレイ12は、光ファイバ11a−11eと対応する球面または非球面のマイクロレンズを備える。
【0016】
入力ポート10cの光ファイバ11cから入力される光信号(入力光)は、対応するマイクロレンズにより平行光に変換されて対応する第1分散部30bに入射される。第1分散部30bは、例えば透過型回折格子からなる第1分散素子31bを有し、入力ポート10cからの入力光を波長に応じて分散する。なお、入力ポート10dから光信号が入力される場合も、同様にして第1分散部30bの第1分散素子31bにより分散される。また、他の入力ポート10a,10bから光信号が入力される場合は、同様に、第1分散部30aの例えば透過型回折格子からなる第1分散素子31aにより波長に応じて分散される。図1Bは、第1分散部30bが、5つの波長の光信号を分散可能な場合を例示している。
【0017】
集光レンズ40は、その前側焦点位置が第1分散部30a,30bの分散基点にほぼ一致するように配置されて、第1分散部30a,30bで波長分散された光信号を偏向部50に集光する。ここで、入力光が複数の離散的な波長で波長分割多重されている場合は、波長分散された光信号は、偏向部50に波長毎に分離して集光する。また、集光レンズ40により集光される複数の光信号は、波長分散方向に対して垂直な方向から見たときに、偏向部50に対してほぼ垂直に入射することが好ましい。すなわち、集光レンズ40は、像側テレセントリックレンズとして構成されていることが好ましい。
【0018】
偏向部50は、第1分散部30a,30bの波長分散方向に直線状に配列された複数の偏向素子を備える。本実施形態では、偏向部50は、5つの偏向素子51a−51eを備える場合を例示しているがこの数に限定されない。偏向素子51a−51eは、第1分散部30a,30bにより分散されて集光される5波長に対応しており、各々独立して駆動可能に構成されている。これにより、偏向部50に入射する波長毎の光信号がそれぞれ偏向される。このようなアレイ状の偏向素子51a−51eを備える偏向部50は、例えば、MEMSミラー、液晶素子、光学結晶などを用いて構成される。
【0019】
偏向部50により偏向された波長毎の光信号は、集光レンズ40を経て第2分散部32に入射される。第2分散部32は、例えば透過型回折格子からなる第2分散素子33を有し、偏向部50により偏向された光信号を波長多重させて出力ポート10eに入射させる。これにより、4つの入力ポート10a−10dから入力されるそれぞれ異なる波長の光信号が選択的に1つの出力ポート10eから出力光として出力される。
【0020】
図1Aは、第1分散部30a,30bによる波長分散方向(X方向)から見た図であり、図1Bは、波長分散方向と直交する方向(Y方向)から見た図である。また、図中、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向を示している。
なお、現実の波長選択スイッチの光路中に、図示しないミラー、プリズム等の偏向部材が光路を折り曲げるために配置されている場合には、X方向及びY方向との説明は、このような偏向部材が無いものとした仮想的な光学系を前提として用いられることとする。
【0021】
次に、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32について、さらに詳細に説明する。図2は、第1分散部30a,30b、第2分散部32、集光レンズ40および偏向部50の部分の概略斜視図である。第1分散部30aは、入力ポート10a,10bに対応する第1分散素子31aを有する。第1分散部30bは、入力ポート10c,10dに対応する第1分散素子31bを有する。第2分散部32は、出力ポート10eに対応する第2分散素子33を有する。そして、入力ポート10a,10bからの入力光は、往路において第1分散部30aの第1分散素子31aで分散される。同様に、入力ポート10c,10dからの入力光は、往路において第1分散部30bの第1分散素子31bで分散される。また、偏向部50により偏向された光は、復路において第2分散部32の第2分散素子33で波長多重される。
なお、図2は、模式図であり、実際には、光が直線的に進行するわけではない。すなわち、XZ面内において、光は、第1分散部30a,30bに斜めに入射し、斜めに出射される。同様に、XZ面内において、光は、第2分散部32に斜めに入射し、斜めに出射される。
【0022】
ここで、第1分散部30a,30bの第1分散素子31a,31bは、例えば、図3Aに示すような波長λに対する回折効率Eの偏光特性を有する。また、第2分散部32の第2分散素子33は、第1分散素子31a,31bの偏光特性を相殺あるいは補償するような、すなわち打ち消すような、図3Bに示す偏光特性を有する。これにより、第1分散素子31aまたは31bと第2分散素子33とによる往復(合計)での偏光特性は、図3Cに示すようになり、使用波長帯域において、P偏光成分とS偏光成分との回折効率差を小さくでき、偏波依存性損失(PDL)を低減できる。
【0023】
このような第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33を有する第1分散部30a,30bおよび第2分散部32は、好ましくは、例えば、図4Aまたは図4Bに示すように構成される。図4Aは、同一の透明基板34上に、第1分散素子31a,31bと、第2分散素子33とを接着等により貼付して、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32を構成した場合を例示している。
【0024】
また、図4Bは、同一の光学部材35に第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33をリソグラフィー等により一体に形成して、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32を構成した場合を例示している。なお、第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33の偏光特性は、例えば格子の深さやデューティー比,格子材料の組成を変える等の公知の手法により、偏光特性を制御することが可能である。また、第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33は、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32が同じ分散量を持つように、格子溝間隔が同一になるように構成されている。この点については、他の実施形態でも同様である。
【0025】
本実施の形態に係る波長選択スイッチによると、偏向部50により偏向された光を分散する第2分散部33の第2分散素子33が、入力ポートからの光を分散する第1分散部30a,30bの第1分散素子31a,31bの偏光特性を相殺するような偏光特性を有するので、偏波依存性損失を低減できる。また,回折格子の製造上のバラつき等により、回折格子の偏光特性にもバラつきが生じる場合がある.図4Aに示す構成ではバラついた偏光特性の回折格子の内からより良い組み合わせの第1分散素子31a,31bと第2分散素子33を選択できる。このため,回折格子を製造する際、製造上のバラつきの影響を受けにくいという利点がある.
【0026】
なお、図1Aには、4つの入力ポート10a−10dと1つの出力ポート10eとが例示されているが、出力ポート10eが入力ポートとなり、入力ポート10a−10dが出力ポートとなる場合もある。また、入力ポートおよび出力ポートの数は、例示に限らず適宜設定される。これらの点については、他の実施形態でも同様である。つまり、本発明に係る波長選択スイッチは、上述したように、波長毎の複数の入力光を分割多重して出力する場合に限らず、波長分割多重された入力光を波長毎に分散して出力するように使用される場合もある。また,図1Bには,偏向部50に5つの偏向素子51a−51eが例示されているが,実際には偏向素子の数は,伝播される信号の周波数間隔(チャネル間隔)および周波数帯域幅(チャネル数)により決められる.この点については、他の実施形態でも同様である。
【0027】
また、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32において、入力光と出力光とを確実に分離できるように、入力ポートと出力ポートとのポート間隔を変えてもよい。例えば、図1Aにおいて、入力ポート10a,10bの間隔および入力ポート10c,10dの間隔をそれぞれd1とし、入力ポート10bと出力ポート10eとの間隔および入力ポート10cと出力ポート10eとの間隔をそれぞれd2とするとき、d2≧d1とすることができる。
【0028】
(第2実施の形態)
図5Aおよび図5Bは、本発明の第2実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。この波長選択スイッチは、図1Aおよび図1Bに示した構成において、4つの入力ポート10a−10dおよび1つの出力ポート10eに代えて、4つの出力ポート15a−15dおよび1つの入力ポート15eを備え、入力ポート15eが一端に位置するようにY方向に直線状に配列されている。これら出力ポート15a−15dおよび入力ポート15eは、第1実施の形態と同様に、対応する光ファイバ11a−11eとそれらの端面に配置されたマイクロレンズアレイ12とを備える。また、出力ポート15a−15dに対応する一つの第1分散部30と、入力ポート15eに対応する一つの第2分散部32とを備える。
【0029】
図6は、第1分散部30、第2分散部32、集光レンズ40および偏向部50の部分の概略斜視図である。第1実施の形態の場合と同様に、入力ポート15eに対応する第1分散部30は、第1分散素子31を有する。また、出力ポート15a−15dに対応する第2分散部32は、第2分散素子33を有する。そして、第2分散素子33は、第1分散素子31の偏光特性を相殺あるいは補償するような、すなわち打ち消すような偏光特性を有する。これらの第1分散素子31を有する第1分散部30および第2分散素子33を有する第2分散部32は、図4Aや図4Bと同様に構成される。なお、図5Aは、図1Aと同様に、第1分散素子31による波長分散方向(X方向)から見た図であり、図5Bは、図1Bと同様に、波長分散方向と直交する方向(Y方向)から見た図である。その他の構成は、図1Aおよび図1Bと同様であるので、同一作用をなす構成要素には、同一参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
かかる構成において、入力ポート15eから入力される波長多重された光信号(入力光)は、往路において、第1分散部30の第1分散素子31で波長分散された後、集光レンズ40により偏向部50の波長に対応する偏向素子51a−51eに入射して偏向される。そして、偏向部50により偏向された波長毎の光信号は、復路において、集光レンズ40を経て第2分散部32の第2分散素子33で分散される。この際、第1実施の形態の場合と同様に、往路における偏光特性が相殺される。そして、第2分散素子33により波長多重された光信号が、出力ポート15a−15dから選択的に出力される。なお、図5Aは、1つの出力ポート15cに光信号が入射される場合を例示している。
【0031】
したがって、本実施の形態に係る波長選択スイッチにおいても、第1実施の形態の場合と同様に、偏波依存性損失を低減できる。また、本実施の形態では、第1実施の形態と比較して、第1分散部30および第2分散部32がそれぞれ一つで済むので、構成を簡単にでき、コストダウンが図れる利点がある。なお、図5Aには、4つの出力ポート15a−15dと1つの入力ポート15eとが例示されているが、入力ポート15eが出力ポートとなり、出力ポート15a−15dが入力ポートとなる場合もある。
【0032】
(第3実施の形態)
図7は、本発明の第3実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。この波長選択スイッチは、紙面垂直方向(Y方向)に直線状に配列された、少なくとも一つの入力ポートと少なくとも一つの出力ポートとを有する。ここでは、説明の便宜上、第2実施の形態に示した4つの出力ポート15a−15dおよび1つの入力ポート15eを備え、入力ポート15eが一端に位置するようにY方向に配列されているものとする。
【0033】
入力ポート15eから入力される波長多重された光信号(入力光)は、往路において、一次集光レンズ60により集光された後、集光レンズ40により第1分散部30に入射される。集光レンズ40は、その前側焦点位置が一次集光レンズ60による集光点に位置するように配置される。
【0034】
第1分散部30は、透過型回折格子を有する第1分散素子31と、反射素子である折返しミラー36とを備え、第1分散素子31による分散光を折返しミラー36により反射させて再び第1分散素子31に入射させるリットマン・メトカルフ構造を有している。第1分散素子31は、その分散基点が、集光レンズ40の後側焦点位置近傍に位置するように配置される。
【0035】
集光レンズ40により第1分散部30に入射される入力ポート15eからの光信号は、第1分散素子31で分散された後、折返しミラー36で反射されて再び第1分散素子31で分散されて第1分散部30から出射される。第1分散部30から出射された光信号は、集光レンズ40により偏向部50の波長に対応する偏向素子51a−51eに集光されて、各々独立して偏向される。偏向部50は、集光レンズ40に関して、第1分散部30と反対側、つまり入出力ポート15a−15eと同一側に配置されている。
【0036】
そして、偏向部50により各々独立して偏向された光信号は、復路において、集光レンズ40を経て第2分散部32に入射される。第2分散部32は、透過型回折格子を有する第2分散素子33(図示せず)と、第1分散部30とともに使用される折返しミラー36とを備える。このように、折返しミラー36は、第1分散部30および第2分散部32に共用される。第2分散素子は、第1分散素子31の偏光特性を相殺するような偏光特性を有し、第1分散素子31とともに、図7の紙面垂直方向において、図4Aや図4Bと同様に構成される。そして、偏向部50により偏向された光信号は、第2分散部32の第2分散素子33および折返しミラー36によりXZ平面において往路と逆順に作用して波長多重される。その後、光信号は、集光レンズ40および一次集光レンズ60を経て、所望の出力ポート15a−15dに出力光として出力される。なお、図7は、第1分散素子31による波長分散方向(X方向)と直交する方向から見た図であり、第1分散素子31により3つの波長に分散された場合を例示している。
【0037】
本実施の形態に係る波長選択スイッチによれば、上記実施の形態と同様に、偏波依存性損失を低減することができる。しかも、第1分散部30および第2分散部32は、折返しミラー36を有するリットマン・メトカルフ構造を有しているので、大きな分散を得ることができ、波長選択スイッチを小型化することが可能となる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形または変更が可能である。例えば、分散素子は、透過型のものに限らず、反射型のものや、Grism、スーパープリズム等を用いる構成でも本発明を有効に適用することができる。
また、各実施の形態において、マイクロレンズアレイ12は、必ずしも配置されなくても構わない。
また、集光レンズ40および一次集光レンズ60は、集光作用を奏すればよく、集光ミラーや、回折型集光素子等を用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
10a−10d 入力ポート
10e 出力ポート
11a−11e 光ファイバ
12 マイクロレンズアレイ
15a−15d 出力ポート
15e 入力ポート
30,30a,30b 第1分散部
31,31a,31b 第1分散素子
32 第2分散部
33 第2分散素子
34 透明基板
35 光学部材
36 折返しミラー
40 集光レンズ(集光素子)
50 偏向部
51a−51e 偏向素子
60 一次集光レンズ
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長選択スイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の波長選択スイッチとして、例えば特許文献1に開示のものが知られている。図8は、特許文献1に開示された波長選択スイッチを示すものである。図8において、入力ポート101から入力される波長多重された光信号は、集光レンズ102を経て反射型の分散素子103により波長毎の光信号に分散されて反射される。分散素子103により分散された光信号は、集光レンズ102により各光信号の波長に対応する偏向素子104−1−104−nに集光されてそれぞれ独立して偏向される。そして、再び集光レンズ102を経て分散素子103により波長多重されて、集光レンズ102を経て入力ポート101とともに紙面垂直方向に配列された図示しない出力ポートから出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第6,381,387号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、分散素子は、一般に、P偏光成分とS偏光成分とで波長に対する透過率や反射率(回折格子では回折効率)が異なる偏光特性を有している。そのため、図8に示した波長選択スイッチにおけるように、入力ポート101から入力されて出力ポートに出力する光信号が、分散素子103により往路と復路とで分散作用を受ける場合、全体としての偏光特性は2回分が重畳されたものとなる。例えば、分散素子103が、図9Aに示すような波長λに対する反射率Rの偏光特性を有する場合、全体としての偏光特性は、図9Bに示すように、図9Aの偏光特性が往復の2回分積み重なったものとなる。
【0005】
その結果、分散素子103によるP偏光成分とS偏光成分との効率差が大きく生じることになる。これにより、光信号の偏波依存性損失(PDL: Polarization Depending Loss)が増大することが懸念される。このような現象は、透過型の分散素子を用いて、往路と復路とで分散素子を透過させる場合も、分散素子がP偏光成分とS偏光成分とで透過率(回折格子では回折効率)が異なる偏光特性を有するため、同様に生じるものである。
【0006】
したがって、かかる観点に鑑みてなされた本発明の目的は、分散素子による偏波依存性損失を低減できる波長選択スイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する波長選択スイッチの発明は、
少なくとも一つの入力ポートと、
該入力ポートから入力される光を分散する第1分散部と、
該第1分散部により分散される光を偏向する偏向部と、
該偏向部で偏向された光を波長多重する第2分散部と、
該第2分散部で波長多重された光を出力する少なくとも一つの出力ポートと、を備え、
前記第1分散部は、前記入力ポートからの光を分散する第1分散素子を備え、前記第2分散部は、前記偏向部により偏向された光を波長多重して前記出力ポートに入射させる第2分散素子を備え、前記第2分散素子は、前記第1分散素子の偏光特性を相殺するような偏光特性を有する、
ことを特徴とするものである。
【0008】
前記第1および第2分散素子は、同一の基板上に設けられている、のが好ましい。
【0009】
前記第1および第2分散素子は、同一の光学部材に形成されている、のが好ましい。
【0010】
前記第1および第2分散素子は、透過型の分散素子からなり、
前記第1および第2分散部は、透過型の前記分散素子と反射素子とを備え、前記分散素子により分散される光を前記反射素子により反射させて再び前記分散素子に入射させるリットマン・メトカルフ構造からなる、のが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、入力ポートからの光を分散する第1分散部の第1分散素子における偏光特性を、偏向部により偏向された光を波長多重する第2分散部の第2分散素子の偏光特性によって相殺、つまり打ち消されるので、分散素子による偏波依存性損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の第1実施の形態に係る波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向から見た概略構成図である。
【図1B】図1Aの波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向と直交する方向から見た概略構成図である。
【図2】図1Aの第1および第2分散部、集光レンズおよび偏向部の部分の概略斜視図である。
【図3A】図1Aの第1分散部の第1分散素子における回折効率の偏光特性を示す図である。
【図3B】図1Aの第2分散部の第2分散素子における回折効率の偏光特性を示す図である。
【図3C】図1Aの第1および第2分散素子による往復の回折効率の偏光特性を示す図である。
【図4A】図1Aの第1および第2分散部の好適構成の一例を示す斜視図である。
【図4B】図1Aの第1および第2分散部の好適構成の他の例を示す斜視図である。
【図5A】本発明の第2実施の形態に係る波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向から見た概略構成図である。
【図5B】図5Aの波長選択スイッチを第1および第2分散部による波長分散方向と直交する方向から見た概略構成図である。
【図6】図5Aの第1および第2分散部、集光レンズおよび偏向部の部分の概略斜視図である。
【図7】本発明の第3実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。
【図8】従来の技術を説明するための図である。
【図9A】図8の分散素子の偏光特性を示す図である。
【図9B】図8の分散素子により2回分散される場合の偏光特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る波長選択スイッチについて、図を参照して説明する。
【0014】
(第1実施の形態)
図1Aおよび図1Bは、本発明の第1実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。この波長選択スイッチは、4つの入力ポート10a−10d、1つの出力ポート10e、第1分散部30a,30b、第2分散部32、集光レンズ40、偏向部50を備え、4つの入力ポート10a−10dから入力されるそれぞれ異なる波長の光信号を選択的に多重して、1つの出力ポート10eから出射するものである。以下、説明の便宜上、入力ポート10a−10dおよび出力ポート10eを、適宜、入出力ポート10a−10eとまとめて表記する。
【0015】
入出力ポート10a−10eは、出力ポート10eを中央としてY方向に直線状に配列されている。入出力ポート10a−10eは、対応する光ファイバ11a−11eとそれらの後段に配置されたマイクロレンズアレイ12とを備える。マイクロレンズアレイ12は、光ファイバ11a−11eと対応する球面または非球面のマイクロレンズを備える。
【0016】
入力ポート10cの光ファイバ11cから入力される光信号(入力光)は、対応するマイクロレンズにより平行光に変換されて対応する第1分散部30bに入射される。第1分散部30bは、例えば透過型回折格子からなる第1分散素子31bを有し、入力ポート10cからの入力光を波長に応じて分散する。なお、入力ポート10dから光信号が入力される場合も、同様にして第1分散部30bの第1分散素子31bにより分散される。また、他の入力ポート10a,10bから光信号が入力される場合は、同様に、第1分散部30aの例えば透過型回折格子からなる第1分散素子31aにより波長に応じて分散される。図1Bは、第1分散部30bが、5つの波長の光信号を分散可能な場合を例示している。
【0017】
集光レンズ40は、その前側焦点位置が第1分散部30a,30bの分散基点にほぼ一致するように配置されて、第1分散部30a,30bで波長分散された光信号を偏向部50に集光する。ここで、入力光が複数の離散的な波長で波長分割多重されている場合は、波長分散された光信号は、偏向部50に波長毎に分離して集光する。また、集光レンズ40により集光される複数の光信号は、波長分散方向に対して垂直な方向から見たときに、偏向部50に対してほぼ垂直に入射することが好ましい。すなわち、集光レンズ40は、像側テレセントリックレンズとして構成されていることが好ましい。
【0018】
偏向部50は、第1分散部30a,30bの波長分散方向に直線状に配列された複数の偏向素子を備える。本実施形態では、偏向部50は、5つの偏向素子51a−51eを備える場合を例示しているがこの数に限定されない。偏向素子51a−51eは、第1分散部30a,30bにより分散されて集光される5波長に対応しており、各々独立して駆動可能に構成されている。これにより、偏向部50に入射する波長毎の光信号がそれぞれ偏向される。このようなアレイ状の偏向素子51a−51eを備える偏向部50は、例えば、MEMSミラー、液晶素子、光学結晶などを用いて構成される。
【0019】
偏向部50により偏向された波長毎の光信号は、集光レンズ40を経て第2分散部32に入射される。第2分散部32は、例えば透過型回折格子からなる第2分散素子33を有し、偏向部50により偏向された光信号を波長多重させて出力ポート10eに入射させる。これにより、4つの入力ポート10a−10dから入力されるそれぞれ異なる波長の光信号が選択的に1つの出力ポート10eから出力光として出力される。
【0020】
図1Aは、第1分散部30a,30bによる波長分散方向(X方向)から見た図であり、図1Bは、波長分散方向と直交する方向(Y方向)から見た図である。また、図中、Z方向は、X方向およびY方向と直交する方向を示している。
なお、現実の波長選択スイッチの光路中に、図示しないミラー、プリズム等の偏向部材が光路を折り曲げるために配置されている場合には、X方向及びY方向との説明は、このような偏向部材が無いものとした仮想的な光学系を前提として用いられることとする。
【0021】
次に、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32について、さらに詳細に説明する。図2は、第1分散部30a,30b、第2分散部32、集光レンズ40および偏向部50の部分の概略斜視図である。第1分散部30aは、入力ポート10a,10bに対応する第1分散素子31aを有する。第1分散部30bは、入力ポート10c,10dに対応する第1分散素子31bを有する。第2分散部32は、出力ポート10eに対応する第2分散素子33を有する。そして、入力ポート10a,10bからの入力光は、往路において第1分散部30aの第1分散素子31aで分散される。同様に、入力ポート10c,10dからの入力光は、往路において第1分散部30bの第1分散素子31bで分散される。また、偏向部50により偏向された光は、復路において第2分散部32の第2分散素子33で波長多重される。
なお、図2は、模式図であり、実際には、光が直線的に進行するわけではない。すなわち、XZ面内において、光は、第1分散部30a,30bに斜めに入射し、斜めに出射される。同様に、XZ面内において、光は、第2分散部32に斜めに入射し、斜めに出射される。
【0022】
ここで、第1分散部30a,30bの第1分散素子31a,31bは、例えば、図3Aに示すような波長λに対する回折効率Eの偏光特性を有する。また、第2分散部32の第2分散素子33は、第1分散素子31a,31bの偏光特性を相殺あるいは補償するような、すなわち打ち消すような、図3Bに示す偏光特性を有する。これにより、第1分散素子31aまたは31bと第2分散素子33とによる往復(合計)での偏光特性は、図3Cに示すようになり、使用波長帯域において、P偏光成分とS偏光成分との回折効率差を小さくでき、偏波依存性損失(PDL)を低減できる。
【0023】
このような第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33を有する第1分散部30a,30bおよび第2分散部32は、好ましくは、例えば、図4Aまたは図4Bに示すように構成される。図4Aは、同一の透明基板34上に、第1分散素子31a,31bと、第2分散素子33とを接着等により貼付して、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32を構成した場合を例示している。
【0024】
また、図4Bは、同一の光学部材35に第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33をリソグラフィー等により一体に形成して、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32を構成した場合を例示している。なお、第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33の偏光特性は、例えば格子の深さやデューティー比,格子材料の組成を変える等の公知の手法により、偏光特性を制御することが可能である。また、第1分散素子31a,31bおよび第2分散素子33は、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32が同じ分散量を持つように、格子溝間隔が同一になるように構成されている。この点については、他の実施形態でも同様である。
【0025】
本実施の形態に係る波長選択スイッチによると、偏向部50により偏向された光を分散する第2分散部33の第2分散素子33が、入力ポートからの光を分散する第1分散部30a,30bの第1分散素子31a,31bの偏光特性を相殺するような偏光特性を有するので、偏波依存性損失を低減できる。また,回折格子の製造上のバラつき等により、回折格子の偏光特性にもバラつきが生じる場合がある.図4Aに示す構成ではバラついた偏光特性の回折格子の内からより良い組み合わせの第1分散素子31a,31bと第2分散素子33を選択できる。このため,回折格子を製造する際、製造上のバラつきの影響を受けにくいという利点がある.
【0026】
なお、図1Aには、4つの入力ポート10a−10dと1つの出力ポート10eとが例示されているが、出力ポート10eが入力ポートとなり、入力ポート10a−10dが出力ポートとなる場合もある。また、入力ポートおよび出力ポートの数は、例示に限らず適宜設定される。これらの点については、他の実施形態でも同様である。つまり、本発明に係る波長選択スイッチは、上述したように、波長毎の複数の入力光を分割多重して出力する場合に限らず、波長分割多重された入力光を波長毎に分散して出力するように使用される場合もある。また,図1Bには,偏向部50に5つの偏向素子51a−51eが例示されているが,実際には偏向素子の数は,伝播される信号の周波数間隔(チャネル間隔)および周波数帯域幅(チャネル数)により決められる.この点については、他の実施形態でも同様である。
【0027】
また、第1分散部30a,30bおよび第2分散部32において、入力光と出力光とを確実に分離できるように、入力ポートと出力ポートとのポート間隔を変えてもよい。例えば、図1Aにおいて、入力ポート10a,10bの間隔および入力ポート10c,10dの間隔をそれぞれd1とし、入力ポート10bと出力ポート10eとの間隔および入力ポート10cと出力ポート10eとの間隔をそれぞれd2とするとき、d2≧d1とすることができる。
【0028】
(第2実施の形態)
図5Aおよび図5Bは、本発明の第2実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。この波長選択スイッチは、図1Aおよび図1Bに示した構成において、4つの入力ポート10a−10dおよび1つの出力ポート10eに代えて、4つの出力ポート15a−15dおよび1つの入力ポート15eを備え、入力ポート15eが一端に位置するようにY方向に直線状に配列されている。これら出力ポート15a−15dおよび入力ポート15eは、第1実施の形態と同様に、対応する光ファイバ11a−11eとそれらの端面に配置されたマイクロレンズアレイ12とを備える。また、出力ポート15a−15dに対応する一つの第1分散部30と、入力ポート15eに対応する一つの第2分散部32とを備える。
【0029】
図6は、第1分散部30、第2分散部32、集光レンズ40および偏向部50の部分の概略斜視図である。第1実施の形態の場合と同様に、入力ポート15eに対応する第1分散部30は、第1分散素子31を有する。また、出力ポート15a−15dに対応する第2分散部32は、第2分散素子33を有する。そして、第2分散素子33は、第1分散素子31の偏光特性を相殺あるいは補償するような、すなわち打ち消すような偏光特性を有する。これらの第1分散素子31を有する第1分散部30および第2分散素子33を有する第2分散部32は、図4Aや図4Bと同様に構成される。なお、図5Aは、図1Aと同様に、第1分散素子31による波長分散方向(X方向)から見た図であり、図5Bは、図1Bと同様に、波長分散方向と直交する方向(Y方向)から見た図である。その他の構成は、図1Aおよび図1Bと同様であるので、同一作用をなす構成要素には、同一参照符号を付して詳細な説明を省略する。
【0030】
かかる構成において、入力ポート15eから入力される波長多重された光信号(入力光)は、往路において、第1分散部30の第1分散素子31で波長分散された後、集光レンズ40により偏向部50の波長に対応する偏向素子51a−51eに入射して偏向される。そして、偏向部50により偏向された波長毎の光信号は、復路において、集光レンズ40を経て第2分散部32の第2分散素子33で分散される。この際、第1実施の形態の場合と同様に、往路における偏光特性が相殺される。そして、第2分散素子33により波長多重された光信号が、出力ポート15a−15dから選択的に出力される。なお、図5Aは、1つの出力ポート15cに光信号が入射される場合を例示している。
【0031】
したがって、本実施の形態に係る波長選択スイッチにおいても、第1実施の形態の場合と同様に、偏波依存性損失を低減できる。また、本実施の形態では、第1実施の形態と比較して、第1分散部30および第2分散部32がそれぞれ一つで済むので、構成を簡単にでき、コストダウンが図れる利点がある。なお、図5Aには、4つの出力ポート15a−15dと1つの入力ポート15eとが例示されているが、入力ポート15eが出力ポートとなり、出力ポート15a−15dが入力ポートとなる場合もある。
【0032】
(第3実施の形態)
図7は、本発明の第3実施の形態に係る波長選択スイッチの概略構成図である。この波長選択スイッチは、紙面垂直方向(Y方向)に直線状に配列された、少なくとも一つの入力ポートと少なくとも一つの出力ポートとを有する。ここでは、説明の便宜上、第2実施の形態に示した4つの出力ポート15a−15dおよび1つの入力ポート15eを備え、入力ポート15eが一端に位置するようにY方向に配列されているものとする。
【0033】
入力ポート15eから入力される波長多重された光信号(入力光)は、往路において、一次集光レンズ60により集光された後、集光レンズ40により第1分散部30に入射される。集光レンズ40は、その前側焦点位置が一次集光レンズ60による集光点に位置するように配置される。
【0034】
第1分散部30は、透過型回折格子を有する第1分散素子31と、反射素子である折返しミラー36とを備え、第1分散素子31による分散光を折返しミラー36により反射させて再び第1分散素子31に入射させるリットマン・メトカルフ構造を有している。第1分散素子31は、その分散基点が、集光レンズ40の後側焦点位置近傍に位置するように配置される。
【0035】
集光レンズ40により第1分散部30に入射される入力ポート15eからの光信号は、第1分散素子31で分散された後、折返しミラー36で反射されて再び第1分散素子31で分散されて第1分散部30から出射される。第1分散部30から出射された光信号は、集光レンズ40により偏向部50の波長に対応する偏向素子51a−51eに集光されて、各々独立して偏向される。偏向部50は、集光レンズ40に関して、第1分散部30と反対側、つまり入出力ポート15a−15eと同一側に配置されている。
【0036】
そして、偏向部50により各々独立して偏向された光信号は、復路において、集光レンズ40を経て第2分散部32に入射される。第2分散部32は、透過型回折格子を有する第2分散素子33(図示せず)と、第1分散部30とともに使用される折返しミラー36とを備える。このように、折返しミラー36は、第1分散部30および第2分散部32に共用される。第2分散素子は、第1分散素子31の偏光特性を相殺するような偏光特性を有し、第1分散素子31とともに、図7の紙面垂直方向において、図4Aや図4Bと同様に構成される。そして、偏向部50により偏向された光信号は、第2分散部32の第2分散素子33および折返しミラー36によりXZ平面において往路と逆順に作用して波長多重される。その後、光信号は、集光レンズ40および一次集光レンズ60を経て、所望の出力ポート15a−15dに出力光として出力される。なお、図7は、第1分散素子31による波長分散方向(X方向)と直交する方向から見た図であり、第1分散素子31により3つの波長に分散された場合を例示している。
【0037】
本実施の形態に係る波長選択スイッチによれば、上記実施の形態と同様に、偏波依存性損失を低減することができる。しかも、第1分散部30および第2分散部32は、折返しミラー36を有するリットマン・メトカルフ構造を有しているので、大きな分散を得ることができ、波長選択スイッチを小型化することが可能となる。
【0038】
なお、本発明は、上記実施の形態にのみ限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変形または変更が可能である。例えば、分散素子は、透過型のものに限らず、反射型のものや、Grism、スーパープリズム等を用いる構成でも本発明を有効に適用することができる。
また、各実施の形態において、マイクロレンズアレイ12は、必ずしも配置されなくても構わない。
また、集光レンズ40および一次集光レンズ60は、集光作用を奏すればよく、集光ミラーや、回折型集光素子等を用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
10a−10d 入力ポート
10e 出力ポート
11a−11e 光ファイバ
12 マイクロレンズアレイ
15a−15d 出力ポート
15e 入力ポート
30,30a,30b 第1分散部
31,31a,31b 第1分散素子
32 第2分散部
33 第2分散素子
34 透明基板
35 光学部材
36 折返しミラー
40 集光レンズ(集光素子)
50 偏向部
51a−51e 偏向素子
60 一次集光レンズ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの入力ポートと、
該入力ポートから入力される光を分散する第1分散部と、
該第1分散部により分散される光を偏向する偏向部と、
該偏向部で偏向された光を波長多重する第2分散部と、
該第2分散部で波長多重された光を出力する少なくとも一つの出力ポートと、を備え、
前記第1分散部は、前記入力ポートからの光を分散する第1分散素子を備え、前記第2分散部は、前記偏向部により偏向された光を波長多重して前記出力ポートに入射させる第2分散素子を備え、前記第2分散素子は、前記第1分散素子の偏光特性を相殺するような偏光特性を有する、
ことを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記第1および第2分散素子は、同一の基板上に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記第1および第2分散素子は、同一の光学部材に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記第1および第2分散素子は、透過型の分散素子からなり、
前記第1および第2分散部は、透過型の前記分散素子と反射素子とを備え、前記分散素子により分散される光を前記反射素子により反射させて再び前記分散素子に入射させるリットマン・メトカルフ構造からなる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の波長選択スイッチ。
【請求項1】
少なくとも一つの入力ポートと、
該入力ポートから入力される光を分散する第1分散部と、
該第1分散部により分散される光を偏向する偏向部と、
該偏向部で偏向された光を波長多重する第2分散部と、
該第2分散部で波長多重された光を出力する少なくとも一つの出力ポートと、を備え、
前記第1分散部は、前記入力ポートからの光を分散する第1分散素子を備え、前記第2分散部は、前記偏向部により偏向された光を波長多重して前記出力ポートに入射させる第2分散素子を備え、前記第2分散素子は、前記第1分散素子の偏光特性を相殺するような偏光特性を有する、
ことを特徴とする波長選択スイッチ。
【請求項2】
前記第1および第2分散素子は、同一の基板上に設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項3】
前記第1および第2分散素子は、同一の光学部材に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の波長選択スイッチ。
【請求項4】
前記第1および第2分散素子は、透過型の分散素子からなり、
前記第1および第2分散部は、透過型の前記分散素子と反射素子とを備え、前記分散素子により分散される光を前記反射素子により反射させて再び前記分散素子に入射させるリットマン・メトカルフ構造からなる、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の波長選択スイッチ。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4A】
【図4B】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【公開番号】特開2012−168288(P2012−168288A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27833(P2011−27833)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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