説明

泥土圧シールド掘進機の回転カッター

【課題】巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能で、短工期・省力化と相俟って、施工の低コスト化を実現することができる泥土圧シールド掘進機の回転カッターを提供する。
【解決手段】ハブ部12と、ハブ部から放射状に延びる複数のスポーク部16と、これらスポーク部の先端部同士を連結する外周リング18とを有する泥土圧シールド掘進機の回転カッター2において、スポーク部の間からカッターチャンバー内へ取り込まれる礫の大きさを規制するために、当該スポーク部の中途部同士を連結する中間リング17及び中間リングに制限用突起19を設けると共に、切羽に散在している礫を割って破砕するためにスポーク部に切羽に面して、ローラーカッター15やフェースビット14を設けかつ外周リングに外周ビット31を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能で、短工期・省力化と相俟って、施工の低コスト化を実現することができる泥土圧シールド掘進機の回転カッターに関する。
【背景技術】
【0002】
泥土圧シールド工法は概略的には、シールドジャッキでシールド掘進機を推進し、この推進と共に、当該シールド掘進機前面の回転カッターで地山の切羽を掘削する。掘削した土砂は、回転カッター後方のカッターチャンバー内及びカッターチャンバー内から排土するためのスクリューコンベアに充満させる。
【0003】
この際、回転カッターの前面やカッターチャンバ内に添加材を注入する。添加材は、掘削土砂に練り混ぜられて、土砂を、塑性流動性(自由に変形・移動できる性質)に富み、不透水性を発揮する泥土に変換する。
【0004】
泥土は、カッターチャンバー内からスクリューコンベア内にわたって充満されていて、シールドジャッキの推進力により、当該泥土には、切羽の土圧及び地下水圧(以下、「切羽土圧」という)に対抗する泥土圧が発生する。
【0005】
この泥土圧と切羽土圧との平衡を保つように、シールド掘進機の推進量とスクリューコンベアによる排土量のバランスを図ることによって、切羽の安定を保ちつつ掘進していくようになっている。
【0006】
掘削土砂に添加材を添加して塑性流動性と不透水性を持つ泥土を作成することにより、スクリューコンベアによる円滑な排土が確保されると共に、スクリューコンベア内にプラグゾーン(止水領域)が形成されて地下水の噴発が防止される。
【0007】
泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧シールド掘進機の回転カッターは例えば、特許文献1に開示されている。特許文献1の「シールド掘進機」では、カッタースポークと中間ビームを接合する接合部分の形状が単純になり、製作及び溶接がしやすいシールド掘進機の提供を課題として、シールドフレームの前端部に丸断面のカッタースポークを有するカッターフレームを配置し、前記シールドフレーム内の隔壁に回転リングを有する回転駆動部を設け、前記回転リングと前記カッタースポークを丸断面又は角断面の中間ビームを介して連結したシールド掘進機において、前記カッタースポークと前記中間ビームを接合部材を介して溶接接合するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−53535号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、地山が、巨礫、例えば外形寸法がφ500を超えるような巨礫が多く散在し、その他に玉石や礫を含むような地質である場合、特にこのような巨礫は、回転カッターで切羽から掘り出されてそのままカッターチャンバー内へ取り込まれてしまうと、スクリューコンベアによる排出はきわめて困難であることは勿論のこと、当該カッターチャンバー内で閉塞を発生させるおそれがあった。そして、多数の巨礫が次々に掘り出される場合には、閉塞が頻繁に発生し、工期が長期化すると共に、閉塞の解消に要する労力も多大であって、施工コストが嵩むという課題があった。また、このような巨礫を破砕する場合、回転カッターに設けている切削ビットの損耗も激しく、回転カッターのメンテナンスに多大な時間と労力を要し、この面からも施工コストがアップしてしまうという課題もあった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑みて創案されたものであって、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することが可能で、短工期・省力化と相俟って、施工の低コスト化を実現することができる泥土圧シールド掘進機の回転カッターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の回転カッターは、ハブ部と、該ハブ部から放射状に延びる複数のスポーク部と、これらスポーク部の先端部同士を連結する外周リングとを有し、回転駆動されることにより、切羽から掘削し破砕してカッターチャンバー内に充満させた掘削土砂の泥土圧で切羽土圧に対抗させる泥土圧シールド掘進機の回転カッターにおいて、上記スポーク部の間から上記カッターチャンバー内へ取り込まれる礫の大きさを規制するために、当該スポーク部の中途部同士を連結する中間リング及び該中間リングに制限用突起を設けると共に、切羽に散在している礫を割って破砕するために上記スポーク部に切羽に面して、ローラーカッターやフェースビットを設けかつ上記外周リングに外周ビットを設けたことを特徴とする。
【0012】
前記スポーク部に、切羽に散在している礫を叩き出すために切羽に面して、半球状のヒッティングビットを設けたことを特徴とする。
【0013】
前記フェースビット及び前記外周ビットの少なくともいずれかに、摩耗検知手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の回転カッターにあっては、巨礫が多く散在する地山であっても、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することができ、短工期・省力化と相俟って、施工の低コスト化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の回転カッターの好適な一実施形態を示すための、泥土圧シールド掘進機の概略側断面図である。
【図2】本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の回転カッターを示す正面図である。
【図3】図2の回転カッターに適用されるフェースビットの正面図である。
【図4】図3に示したフェースビットの平面図である。
【図5】図2の回転カッターに備えられる摩耗検知手段を示す概略構成図である。
【図6】図2の回転カッターに適用される外周ビットの側面図である。
【図7】図6に示した外周ビットの平面図である。
【図8】図2の回転カッターに適用されるヒッティングビットの正面図である。
【図9】図8に示したヒッティングビットの平面図である。
【図10】本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の回転カッターを適用して好適な地山の粒径加積曲線を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる泥土圧シールド掘進機の回転カッターの好適な一実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。図1には泥土圧シールド工法に用いられる泥土圧シールド掘進機1の一例を示す概略側断面図が示されていると共に、図2には本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1の回転カッター2の正面図が示されている。
【0017】
泥土圧シールド掘進機1は主に、中空円筒体状のスキンプレート3と、スキンプレート3の前端側に設けられた隔壁4と、隔壁4から前方に間隔を隔てて設けられ、回転駆動手段(図示せず)で回転駆動されて地山の切羽Zを掘削する回転カッター2と、回転カッター2と隔壁4との間に形成され、掘削され破砕された土砂が取り込まれるカッターチャンバー5と、取り込まれた掘削土砂が充満するカッターチャンバー5内に設けられ、取り込まれた土砂と注入された薬材とを混合撹拌する撹拌装置(図示せず)と、スキンプレート3内に隔壁4よりも後方に位置させて設けられ、セグメント6に反力をとって、スキンプレート3と共に回転カッター2を前進させる推進力を発生するシールドジャッキ7と、隔壁4を貫通してカッターチャンバー5内に取り込み端部8aが位置され、排出端部8bがスキンプレート3後方へ、斜め上向きに延出されて、カッターチャンバー5内から土砂を排土するスクリューコンベア8とから構成される。また、シールド掘進機1後方の後続台車9には、シールド掘進機1の運転室10が設けられ、この運転室10から運転手がシールド掘進機1の運転制御を行うようになっている。
【0018】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1は、特に、カッターチャンバー5へ取り込むことが好ましくない巨礫Xが混在し得る玉石混じり砂礫や玉石層からなる地山の切羽Zを掘削する場合に、好適に適用される。勿論、このような巨礫Xを含まない玉石混じり砂礫や玉石層、通常の砂礫層などに対しても、適用することが可能である。
【0019】
回転カッター2は図2に示すように、スポークタイプで構成される。回転カッター2は、当該回転カッター2の中央に位置され、センタビット11が取り付けられたハブ部12と、ハブ部12から回転カッター2の外周縁に向かって放射状に延ばされた6本のスポーク部16と、これらスポーク部16の先端部同士を連結する外周リング18とを備えると共に、さらに、外周リング18の内側でスポーク部16の中途部同士を連結する中間リング17と、中間リング17に設けた制限用突起19を備えて構成される。
【0020】
中間リング17は、円環状に形成され、各スポーク部16のカッターチャンバー5側背面に接合して取り付けられる。あるいは、中間リング17は、弧状に形成された分割ピースの両端が各スポーク部16の背面に接合して取り付けられ、全体として回転カッター2の周方向に沿う円環状に形成される。
【0021】
中間リング17には、スポーク部16とスポーク部16のほぼ中間に位置させて、上述した大きな外形寸法の巨礫Xや玉石等がスポーク部16の間からカッターチャンバー5内へ取り込まれることを規制するために、制限用突起19が設けられる。制限用突起19は、ブロック状で、中間リング17からハブ部12側及び外周リング18側へ迫り出すように設けられる。
【0022】
これら制限用突起19及び中間リング17を備えることにより、回転カッター2には、ハブ部12周りに、スポーク部16、制限用突起19を有する中間リング17及び外周リング18で規定して、想定以上の大きさを有する巨礫Xが回転カッター2からカッターチャンバー5内へそのまま取り込まれることを規制する巨礫取り込み制限区画Rが形成される。
【0023】
図2に示すように、回転カッター2の6本のスポーク部16にはすべて、それらの先端部側に位置させて、切羽Zに迫り出すなどして散在している礫を割って破砕するローラーカッター15が設けられる。ローラーカッター15は、6本のスポーク部16のうち、1本おきに3本のスポーク部16では、正面から切羽Zに面して取り付けられ、他の3本のスポーク部16では、回転カッター2の外周縁側へ向く斜め配置で、切羽Zに面して取り付けられる。
【0024】
ローラーカッター15はよく知られていて、略述すると、箱抜き部15aに回転支軸15bで回転自在に取り付けた円盤状の切り刃15cを有し、回転駆動される回転カッター2の回転作用で切羽Zに切り込んで掘削を行うと共に、切り込む際に、礫や巨礫Xに割りを入れ、さらにはこれらを破砕するようになっている。
【0025】
ローラーカッター15として、切羽Zに対して正面を向いているものと、外向き斜めに向いているものを備えていて、回転速度の速い回転カッター2の外周縁付近で、効率よく切羽Zを掘削し、かつ礫を破砕するようになっている。
【0026】
回転カッター2の6本のスポーク部16のうち、1本おきに3本のスポーク部16には、切羽Zに面して、フェースビット14が配設される。フェースビット14は、ハブ部12から外周リング18へ向けて、スポーク部16の長さ方向に間隔を隔てて複数設けられる。各フェースビット14は、スポーク部16の長さ方向に幅狭で、かつ、スポーク部16の幅方向に長く形成され、これにより、回転カッター2の回転方向に向かって切り込む鋭利な刃先が形成される。
【0027】
各フェースビット14は図3及び図4に示すように、スポーク部16に接合固定するためのシートピース14aと、底板14bに縦壁14cを複数並設して構成され、シートピース14aに接合されるビット本体14dと、ビット本体14dに、縦壁14cを挟むようにして複数取付固定された超硬チップ14eとから構成される。
【0028】
これらフェースビット14はローラーカッター15と同様に、回転駆動される回転カッター2の回転作用で切羽Zに切り込んで掘削を行うと共に、切り込む際に、散在している礫や巨礫Xに割りを入れ、さらにはこれらを破砕するようになっている。フェースビット14は、スポーク部16に接合固定される固定タイプであって、比較的回転速度の遅い回転カッター2の径方向中間位置で、剛強に礫に割りを入れて破砕するようになっている。
【0029】
複数のフェースビット14のうち、幾つかには、図4のD−D線矢視断面に対応する図5に示すように、摩耗検知手段30が設けられる。摩耗検知手段30は、ビット本体14dの縦壁14cに穿設されたキリ孔30aと、このキリ孔30aにオイルを満たすポンプなどのオイル供給手段30bとから構成される。超硬チップ14e及び縦壁14cが摩耗・損耗すると、キリ孔30aからオイルが漏れ出すので、このオイルの漏れ出しによってフェースビット14の摩耗、すなわちその交換時期が検知される。
【0030】
回転カッター2の外周リング18には、周方向に適宜間隔を隔てて外周ビット31が配設される。図示例にあっては外周ビット31は、スポーク部16とスポーク部16の間に、2つずつ設けられている。各外周ビット31も、外周リング18の幅方向に幅狭で、かつ、外周リング18の周方向に長く形成され、これにより、回転カッター2の回転方向に向かって切り込む鋭利な刃先が形成される。
【0031】
各外周ビット31は図6及び図7に示すように、フェースビット14と同様に、シートピース31aと、底板31bに縦壁31cを複数並設して構成され、シートピース31aに接合されるビット本体31dと、ビット本体31dに、縦壁14cを挟むようにして複数取付固定された超硬チップ31eとから構成される。外周ビット31については、外周リング18の前端面18aから内周面18bに沿うL字状のベースブロック32にシートピース31aを接合固定することで、外周リング18に取り付け固定されるようになっている。
【0032】
これら外周ビット31も、回転駆動される回転カッター2の回転作用で切羽Zに切り込んで掘削を行うと共に、切り込む際に、礫や巨礫Xに割りを入れ、さらにはこれらを破砕するようになっている。外周ビット31は、外周リング18に接合固定される固定タイプであって、回転速度の速い回転カッター2の外周縁で、効率よく切羽Zを掘削し、かつ散在している礫を破砕するようになっている。
【0033】
複数の外周ビット31のうち、幾つかには、図7のE−E線矢視断面にも対応する図5に示すように、摩耗検知手段30が設けられ、外周ビット31の摩耗、すなわちその交換時期が検知される。
【0034】
さらに、フェースビット14を設けた3本のスポーク部16以外の他の3本のスポーク部16には、切羽Zに面して、ヒッティングビット13が配設される。ヒッティングビット13も、フェースビット14と同様に、ハブ部12から外周リング18へ向けて、スポーク部16の長さ方向に間隔を隔てて複数設けられる。各ヒッティングビット13は、スポーク部16から切羽Z側へ向かって隆起する半球状に形成される。
【0035】
各ヒッティングビット13は図8及び図9に示すように、スポーク部16に埋め込まれるシャフトボディ33に接合固定されるシートピース13aと、底板13bに縦壁13cを複数並設して構成され、シートピース13aに接合されるビット本体13dと、ビット本体13dに、縦壁13cを挟むようにして複数取付固定された超硬チップ13eとから構成される。
【0036】
ヒッティングビット13は特に、回転駆動される回転カッター2の回転作用で切羽Zに叩き付けられ、その際に、切羽Zに迫り出している礫や巨礫Xを叩き、さらには叩き出すようになっている。ヒッティングビット13も、スポーク部16に接合固定される固定タイプであって、比較的回転速度の遅い回転カッター2の径方向中間位置で、剛強に礫を叩き出すようになっている。
【0037】
ヒッティングビット13についても、幾つかには、図9のF−F線矢視断面にも対応する図5に示すように、摩耗検知手段30が設けられ、ヒッティングビット13の摩耗、すなわちその交換時期が検知される。
【0038】
泥土圧シールド工法では、薬材を、回転カッター2で掘削した土砂に添加し、撹拌装置で撹拌混合することにより、掘削土砂を塑性流動性と不透水性を持つ泥土に変換する。そして、この泥土をカッターチャンバー5内及びスクリューコンベア8内に充満させ、シールドジャッキ7の推進力によりカッターチャンバー5内等に充満した泥土を加圧して泥土圧を発生させ、この泥土圧で切羽土圧に対抗させて、切羽Zを安定させるようになっている。
【0039】
泥土圧シールド掘進機1の推進に際しては、切羽Zの安定を維持するために、例えば、回転カッター2の回転速度を一定にして、シールドジャッキ7の伸長速度やスクリューコンベア8の回転速度を調整し、隔壁4に設けた土圧計(図示せず)によって測定されるカッターチャンバー5内の泥土圧を常時一定の圧力に保つようにして、掘進するようにしている。
【0040】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、細砂や粗砂、礫に混ざって、玉石、そしてさらには巨礫Xが散在している地山の切羽Zを掘進するにあたり、カッターチャンバー5内の泥土の状態を好適化する泥土調整手段が設けられる。
【0041】
泥土調整手段は、回転カッター2のスポーク部16やハブ部12の適宜位置に設けられて、回転カッター2前方の切羽Zへ向けて薬材を注入する第1注入手段20、隔壁4の中央部付近に設けられて、カッターチャンバー5内へ向けて薬材を注入する第2注入手段21、並びに、隔壁4の周縁部の適宜位置に設けられて、スキンプレート3の外回りやカッターチャンバー5内へ向けて薬材を注入する第3注入手段22を備える。
【0042】
第1及び第3注入手段20,22は、ベントナイト系添加材などの作泥土材を注入する。第2注入手段21は、気泡材を注入する。作泥土材を注入する注入手段20,22及び気泡材を注入する注入手段21の具体的構成は、従来周知である。
【0043】
また、本実施形態では、作泥土材を注入する注入手段20,22と気泡材を注入する注入手段21を別々に備える場合が示されているが、作泥土材と気泡材を注入口(図示せず)付近で混ぜ合わせることによって、あるいは、作泥土材の注入タイミングと気泡材の注入タイミングをずらすことによって、作泥土材用の注入手段20,22と気泡材用の注入手段21を供用するようにしてもよい。すなわち、作泥土材と気泡材は、すべての注入手段20〜22から注入するようにしてもよい。
【0044】
回転カッター2で切羽Zから掘削され破砕されたばかりの礫分を含む土砂は、回転カッター2の回転作用で、当該回転カッター2の第1注入手段20から切羽Zへ向けて注入される作泥土材や気泡材と撹拌混合されつつ、カッターチャンバー5内へ取り込まれるようになっている。また、回転カッター2で切羽Zから掘削され破砕されてカッターチャンバー5内に取り込まれた礫分を含む土砂は、カッターチャンバー5内で、隔壁4の第2及び第3注入手段21,22からカッターチャンバー5内へ向けて注入される作泥土材や気泡材と撹拌混合される。
【0045】
すなわち、回転カッター2で掘削された礫分を含む土砂は、スクリューコンベア8へ取り込まれる前に、切羽Z位置及びカッターチャンバー5内にて、作泥土材及び気泡材双方と撹拌混合される。
【0046】
また、本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、カッターチャンバー5内からスクリューコンベア8内に亘る間での土砂の閉塞を監視するために閉塞監視手段が設けられる。土砂の閉塞傾向は、撹拌等される土砂に滞留する摩擦熱に起因して、土砂温度が上昇することにより推定される。
【0047】
閉塞監視手段は、スクリューコンベア8内部に設けられ、スクリューコンベア8で搬送される礫分を含む土砂の温度(排土温度)を計測する温度センサ23と、運転室10内に設置され、温度センサ23で計測された排土温度が入力されると共に、当該排土温度を運転者に視認させるために表示する制御盤24とから構成される。
【0048】
温度センサ23で計測された排土温度は、閉塞推定用の設定温度と比較され、閉塞を未然に防ぐためのフィードフォワード制御用のデータとして制御盤24に入力される。排土温度が設定温度に向かう温度上昇傾向が判別されたとき、運転者による手動制御もしくは制御盤24による自動制御により、注入手段20〜22から注入する薬材を増量するようになっている。
【0049】
また、本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1には、噴出防止手段が設けられる。噴出防止手段は、スクリューコンベア8として、大径な礫などを搬送することが可能なリボン式スクリューコンベアを採用し、このリボン式スクリューコンベアの排出端部8bに、泥土圧が発生して止水領域となるプラグゾーンを形成し得る長さ寸法の排土管25を連結して構成される。
【0050】
本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1では、巨礫Xを破砕した大型の礫等が排土に含まれていて、軸付きスクリューコンベアでは当該礫等で閉塞を起こしやすいことから、リボン式スクリューコンベア8が用いられる。
【0051】
排土管25は、リボン式スクリューコンベア8の排出端部8bから、後続台車9に組み込まれるズリ搬出台車26まで延設され、スクリューコンベア8からの排土を、ズリ搬出台車26に排出する。排土管25は、その内部を排土が移動する際の圧力損失によって、止水性を得るプラグゾーンを形成し、これにより地下水圧等に起因する土砂の噴出を防止するようになっている。
【0052】
次に、上記実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1を例示して、回転カッター2の作用について説明する。本発明にかかる泥土圧シールド掘進機1の回転カッター2は具体的には、図10に示す粒径加積曲線(粒径2mm未満の細粒(砂分)が20%を超えず、粒径2mm以上の礫石(礫分)が80%を超える)を有する地山を対象として開発され、台湾の大南湾近郊のトンネル掘削に、守秘状態で、実際に採用されたものである。
【0053】
泥土圧シールド工法は基本的には、カッターチャンバー5からスクリューコンベア8に亘って充満する泥土に薬材を添加して塑性流動性や不透水性を確保した上で、シールドジャッキ7の推進力で切羽土圧に拮抗する泥土圧を発生させ、この泥土圧で切羽Zを安定に維持しつつ、カッターチャンバー5内から排土するスクリューコンベア8の回転速度とシールドジャッキ7の伸長速度とを適正に調整して掘進を進めていく。
【0054】
回転カッター2は、スポーク部16に切羽Zに面して、ローラーカッター15やフェースビット14を有すると共に、外周リング18に外周ビット31を有していて、これらの相互作用により、切羽Zを掘削すると共に、その際に、効率的に礫を割って破砕することができる。また、スポーク部16には、半球状のヒッティングビット13が設けられていて、これにより、切羽Zから礫を叩き出すことができる。
【0055】
例えば、回転カッター1の一回転で、3本のスポーク部16のヒッティングビット13が、切羽Zから迫り出しているような巨礫Xを複数回にわたり叩き、そして叩き出すと、叩き出された巨礫Xは、回転カッター2の外周縁付近であれば、ローラーカッター15や外周ビット31を主体として、また、回転カッター2の前面ではフェースビット14を主体として、またヒッティングビット13も協働して、割られ、そしてさらに破砕される。
【0056】
このように、各種ビット13,14,15,31等によって巨礫Xを効率的に割って破砕することができる。破砕した巨礫Xについては通常は、掘削土砂と共に、回転カッター2後方のカッターチャンバー5へと取り込まれる。
【0057】
他方、巨礫取り込み制限区画Rを形成する回転カッター2の中間リング17と制限用突起19は、依然として外形の大きな巨礫Xがそのままカッターチャンバー5内へ取り込まれることを阻止する。
【0058】
取り込みが阻止された巨礫Xは、回転カッター2の前面に滞留し、回転する回転カッター2の各種ビット13,14,31やローラーカッター15でさらに破砕される。破砕により、巨礫取り込み制限区画Rよりも小さくなることで初めて、その礫はカッターチャンバー5内へと取り込まれるので、閉塞が発生するような大きさの礫が当該カッターチャンバー5内へ取り込まれることを阻止することができる。
【0059】
巨礫Xの破砕の程度は、巨礫取り込み制限区画Rの大きさ程度であるので、必要以上に細かく破砕する必要はなく、巨礫Xを経済的に破砕しつつ掘進作業を進めることができる。
【0060】
以上説明したように、本実施形態にかかる泥土圧シールド掘進機1の回転カッター2にあっては、スポーク部16の間からカッターチャンバー5内へ取り込まれる礫の大きさを規制するために、当該スポーク部16の中途部同士を連結する中間リング17及び中間リング17に制限用突起19を設けると共に、切羽Zに散在している礫を割って破砕するためにスポーク部16に切羽Zに面して、ローラーカッター15やフェースビット14を設けかつ外周リング18に外周ビット31を設けたので、そしてまた、スポーク部16に、切羽Zに散在している礫を叩き出すために切羽Zに面して、半球状のヒッティングビット13を設けたので、巨礫Xが多く散在する地山であっても、中間リング17と制限用突起19によって、カッターチャンバー5内で閉塞を発生させるおそれのある巨礫Xの取り込みを的確に阻止できると共に、ローラーカッター15やフェースビット14、外周ビット31の組み合わせ、さらにはヒッティングビット13の適用により、効率よく地山を掘削しつつ巨礫Xも適切に破砕することができ、通常一般の砂礫層等を掘削するのと遜色なく掘進作業を遂行することができると共に、閉塞防止及び必要最小限の巨礫Xの破砕プロセスにより、短工期・省力化と相俟って、施工の低コスト化を実現することができる。
【0061】
また、フェースビット14や外周ビット31、ヒッティングビット13に、摩耗検知手段30を備えたので、これらビット13,14,31の摩耗、交換時期を的確に検知でき、スムーズに掘進作業を進めることができる。
【0062】
回転カッター2で掘削した土砂は、以下のように処理される。泥土圧シールド掘進機1の掘進作業にあたっては、本実施形態にかかる泥土圧シールド工法では、薬材としてベントナイト系添加材などの作泥土材及び気泡材を併用して、これら薬材を第1〜第3注入手段20〜22から、回転カッター2前方の切羽Zに向かって、そしてまたカッターチャンバー5内に向けて、注入する。
【0063】
本実施形態では、カッターチャンバー5へ取り込むことが好ましくない巨礫Xが混在し得る玉石混じり砂礫や玉石層からなる地山の切羽Zを掘削する場合を対象としていて、ベントナイト系添加材に代表される作泥土材は、通常一般に認識されている細粒分の補充という意味合いから、土砂の塑性流動性や不透水性を高めるという作用に加えて、巨礫Xを破砕した礫や玉石等の礫分を含む掘削土砂に関し、当該礫分を掘削土砂と共に包み込んで当該礫分が土砂から分離してしまうことを抑制し、これら土砂と礫分との一体性を向上するようにしている。これにより、気泡材の難点である、土砂の粒子同士の付着結合を妨げる等の分離作用を抑制することができる。
【0064】
また、気泡材は、上記作泥土材と組み合わせて使用することで、通常一般に認識されている塑性流動性や不透水性の向上に関し、細粒分である作泥土材との相乗作用で、ベアリング効果をもつ塑性流動性や不透水性を発揮して礫分を含む土砂の回転カッター2や隔壁4への付着を抑制することができると共に、作泥土材では得られない気泡材のクッション作用により、掘削土砂や作泥土材の圧縮性を高めて、カッターチャンバー5内やスクリューコンベア8内で礫分が転がり移動することを妨げ、また転がり移動したとしてもそのクッション作用で泥土圧の急激な変動を抑制することができる。
【0065】
従って、薬材として、作泥土材及び気泡材を併用することにより、泥土圧を安定化することができて切羽Zを安定的に維持することができると共に、スクリューコンベア8による礫分の排土を円滑化して閉塞の発生を防止できると共に、噴出が発生することも防ぐことができる。
【符号の説明】
【0066】
1 泥土圧シールド掘進機
2 回転カッター
5 カッターチャンバー
12 ハブ部
13 ヒッティングビット
14 フェースビット
15 ローラーカッター
16 スポーク部
17 中間リング
18 外周リング
19 制限用突起
30 摩耗検知手段
31 外周ビット
X 巨礫
Z 切羽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブ部と、該ハブ部から放射状に延びる複数のスポーク部と、これらスポーク部の先端部同士を連結する外周リングとを有し、回転駆動されることにより、切羽から掘削し破砕してカッターチャンバー内に充満させた掘削土砂の泥土圧で切羽土圧に対抗させる泥土圧シールド掘進機の回転カッターにおいて、
上記スポーク部の間から上記カッターチャンバー内へ取り込まれる礫の大きさを規制するために、当該スポーク部の中途部同士を連結する中間リング及び該中間リングに制限用突起を設けると共に、
切羽に散在している礫を割って破砕するために上記スポーク部に切羽に面して、ローラーカッターやフェースビットを設けかつ上記外周リングに外周ビットを設けたことを特徴とする泥土圧シールド掘進機の回転カッター。
【請求項2】
前記スポーク部に、切羽に散在している礫を叩き出すために切羽に面して、半球状のヒッティングビットを設けたことを特徴とする請求項1に記載の泥土圧シールド掘進機の回転カッター。
【請求項3】
前記フェースビット及び前記外周ビットの少なくともいずれかに、摩耗検知手段を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の泥土圧シールド掘進機の回転カッター。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−122260(P2012−122260A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274120(P2010−274120)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】