説明

泥水式シールド掘削機の発進方法

【課題】コンパクトに構築した発進立坑から泥水式シールド掘削機を発進させることを可能にして、発進立坑の構築コストを低減することのできる泥水式シールド掘削機の発進方法を提供する。
【解決手段】シールド本体11の内部に配置された送泥水管18及び排泥水管19に、外殻体28の後部外周面から操作口29a,29bを介して操作可能な手動式の開閉バルブ30a,30bを設けておき、開閉バルブ30a,30bを開閉しつつ、シールド本体11のみを発進立坑14から発進させて操作口29a,29bよりも前方部分を地中に掘進させる工程と、これによって形成されたシールド本体11の後方のスペース31に、泥水バルブユニット27を有する第1後続管12aを後続して、シールド本体11と第1後続管12aとを一体として発進立坑14から地中に掘進させる工程とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、泥水式シールド掘削機の発進方法に関し、特に、掘削カッター、隔壁、及び泥水室を備えるシールド本体と、該シールド本体の直後に連設する、内部に泥水バルブユニットを配置した第1後続管とを含む泥水式シールド掘削機を、地中に設けた発進立坑から発進させる泥水式シールド掘削機の発進方法に関する。
【背景技術】
【0002】
泥水式シールド掘削機として、例えば泥水式シールド掘進機を用いた泥水推進工法は、配線用の布設管、下水道管、ガス管、水道管等を埋設管として地中に設置する際に用いられる工法であり、発進立坑に元押しジャッキを設置し、先端に掘削部を有する泥水式シールド掘進機を先導管として、この先導管の後方に埋設管を順次継ぎ足しながら、発進立坑に向けて押し出してゆくことにより埋設管を地中に設置する工法である。
【0003】
また、泥水推進工法では、泥水式シールド掘進機の先端の掘削部の泥水室内に、加圧した泥水を送り込み、切羽面に不透水性の泥水膜を形成させて、この泥水膜を介して切羽面の水圧や土圧に対抗する泥水圧を保持することにより切羽面の安定を図ると共に、泥水を循環させて掘削土砂を流体輸送する工法である。したがって、先導管としての泥水式シールド掘進機やこれに後続する埋設管の内側には、地上に設置した泥水処理プラントと接続して泥水を循環させるための送泥管や排泥管が配設されることになる。
【0004】
さらに、泥水式シールド掘進機は、先端の掘削部として掘削カッター、隔壁、泥水室等を備えたシールド本体と、このシールド本体に後続して設けられた、各種の配管類や制御装置等を備える複数の後続管とからなり、シールド本体の直後には、泥水の循環を開閉制御するための泥水バルブユニットを配置した第1後続管が連設することになる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平3−100300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、泥水式シールド掘進機等の泥水式シールド掘削機を発進立坑から発進させる場合、シールド本体及び後続管を含む泥水式シールド掘削機の全体を据え付けた後に発進立坑から発進させることが望ましいが、これだと掘進方向に長い大きな発進立坑を構築する必要を生じて不経済である。このため、泥水の循環を開閉制御する泥水バルブユニットを備える第1後続管のみをシールド本体に接続した状態で発進立坑に設置して、これらを地中に掘進させ、掘進によって形成された後方の発進立坑内のスペースにおいて、後続する後続管を順次接続しながら泥水式シールド掘削機を発進立坑から発進させる方法が一般的に採用されている。
【0006】
しかしながら、上記従来の発進方法を採用した場合でも、シールド本体の発進時に、泥水バルブユニットを備える第1後続管を一体として発進立坑に設置しなければならないため、第1後続管の分、発進立坑の掘進方向の長さ(幅)を大きくする必要がある。したがって、よりコンパクトに構築した発進立坑から発進させることを可能にして、発進立坑の構築コストをさらに低減することを可能にする新たな技術の開発が望まれている。
【0007】
本発明は、このような従来の課題に着目してなされたもので、よりコンパクトに構築した発進立坑から泥水式シールド掘削機を発進させることを可能にして、工事用の敷地の確保を容易にすると共に、発進立坑の構築コストをさらに低減することのできる泥水式シールド掘削機の発進方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、掘削カッター、隔壁、及び泥水室を備えるシールド本体と、該シールド本体の直後に連設する、内部に泥水バルブユニットを配置した第1後続管とを含む泥水式シールド掘削機を、地中に設けた発進立坑から発進させる泥水式シールド掘削機の発進方法において、前記シールド本体の内部に配置された送泥水管及び排泥水管に、外殻体の後部外周面から操作口を介して操作可能な手動式の開閉バルブを設けておき、前記発進立坑に設置した前記シールド本体の送泥水管及び排泥水管に、地上に設置した泥水処理プラントと接続する送泥水接続管及び排泥水接続管を接続し、前記開閉バルブを開閉制御して、泥水を循環させつつ前記シールド本体の前記操作口よりも前方の部分を前記発進立坑から地中に掘進させる工程と、前記操作口を介して前記開閉バルブを閉塞した後、前記送泥水接続管及び前記排泥水接続管を取り外す工程と、前記発進立坑の前記シールド本体の後方のスペースに前記第1後続管を後続して設置し、前記シールド本体の内部の送泥水管及び排泥水管を前記泥水バルブユニットに接続すると共に、前記泥水バルブユニットに送泥水接続管及び排泥水接続管を接続する工程と、前記操作口を介して前記開閉バルブを開放すると共に、前記泥水バルブユニットを開閉制御して、泥水を循環させつつ前記シールド本体と前記第1後続管とを一体として前記発進立坑から地中に掘進させる工程とを含む泥水式シールド掘削機の発進方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
また、本発明の泥水式シールド掘削機の発進方法によれば、前記泥水式シールド掘削機が、泥水推進工法に用いる外径が400〜700mmの泥水式シールド掘進機であることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の泥水式シールド掘削機の発進方法によれば、よりコンパクトに構築した発進立坑から泥水式シールド掘削機を発進させることを可能にして、工事用の敷地の確保を容易にすると共に、発進立坑の構築コストをさらに低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の好ましい一実施形態に係る泥水式シールド掘削機の発進方法は、図1に示すように、泥水式シールド掘削機として、好ましくは外径が400〜700mm程度の泥水式シールド掘進機10を用いた泥水推進工法において採用されたものである。すなわち、泥水推進工法は、地中に埋設するべき埋設管15として、例えば外径が540mm程度の大きさのヒューム管を、泥水式シールド掘進機10の後方に順次接続しつつ、泥水式シールド掘進機10と共に発進立坑14から到達立坑(図示せず。)に向けて押し出してゆくことによって地中に設置する工法である。なお、外径が700mmを超える泥水式シールド掘進機の場合、掘進機の内部から後述する開閉バルブを操作することも可能であることから、本発明は、特に掘進機の内部から開閉バルブを操作することのできない外径が700mm以下の泥水式シールド掘進機10の発進方法において有効に採用することができる。
【0012】
また、本実施形態では、泥水推進工法として、埋設管15に先行して、内部に送泥水管や排泥水管等の管体が予め取り付けられて軸方向に当接状態で継ぎ足すだけで複数の管体を同時に接合させて連通できるように構成した公知の推進工法用仮管16を地中に設置した後に、最後部の推進工法用仮管16に埋設管15を接続してさらに押し出し、埋設管15を推進工法用仮管16と置換することによって埋設管12を地中に設置する、仮管を用いた推進工法が採用されている。
【0013】
ここで、泥水式シールド掘進機10は、泥水式推進工法に用いる公知のものであり、先端に掘削部13として掘削カッター、隔壁、泥水室等を備えたシールド本体11と、シールド本体11に後続して設けられた、各種の配管類や制御装置等を備える複数の後続管12a,12b,12cとからなる。本実施形態では、泥水式シールド掘進機10は、最後部の後続管11cの後端部に推進工法用仮管16を接続し、発進立坑14に設置した元押しジャッキ17の伸縮駆動によって、掘削部13で切羽面を切削しながら、後方に推進工法用仮管16を順次継ぎ足しつつ推進工法用仮管16と共に到達立坑に向けて押し出されてゆくことになる。
【0014】
また、泥水推進工法は、泥水式シールド掘進機10の先端の掘削部13の泥水室内に加圧した泥水を送り込み、切羽面に不透水性の泥水膜を形成させて、この泥水膜を介して切羽面の水圧や土圧に対抗する泥水圧を保持することにより切羽面の安定を図ると共に、泥水を循環させて掘削土砂を流体輸送する工法であり、先導管としての泥水式シールド掘進機10には、泥水を循環させるための送泥水管18や排泥水管19が配設されることになる。
【0015】
さらに、本実施形態では、発進立坑14に設置した元押しジャッキ17の推力によって押し出される押し輪部20の前面側の部分には、圧入ピース21が設けられている。図2(a)〜(d)に示すように、この圧入ピース21を介在させることにより、泥水式シールド掘進機10や推進工法用仮管16は、地上に設置した泥水処理プラント22との間で泥水を循環させつつ、元押しジャッキ17によって地中に押し出すことができるようになっている。すなわち、圧入ピース21は、図3(a),(b)に示すように、内部に曲り管23a,23bを配設したピース部材であって、押し輪部20の中央部分に、両側を元押しジャッキ17によって挟まれるようにして配置される。圧入ピース21の前面側に開口する送泥水管用曲り管23aのピース開口24aや排泥水管用曲り管23bのピース開口24bに、泥水式シールド掘進機10や推進工法用仮管16に配設された送泥水管18や排泥水管18を各々接続することにより、これらの送泥水管18や排泥水管19を介してシールド本体11に送り出したりシールド本体11から送られてきた泥水を、曲り管23a,23bを介して側方や上方に向けて方向転換した後、送泥水接続管25や排泥水接続管26を経て地上の泥水処理プラント22から取り込んだり地上の泥水処理プラント22に送り出したりすることができるようになっている。
【0016】
そして、本実施形態の泥水式シールド掘削機の発進方法は、掘削カッター、隔壁、及び泥水室を備えるシールド本体11と、シールド本体11の直後に連設する、内部に泥水バルブユニット27を配置した第1後続管12aとを含む泥水式シールド掘進機10を、地中に設けた発進立坑14から発進させる発進方法において、図4(a),(b)に示すように、シールド本体11の内部に配置された送泥水管18及び排泥水管19に、外殻体28の後部外周面から操作口29a,29bを介して操作可能な手動式の開閉バルブ30a,30bを設けておき、図2(a)〜(d)に示すように、発進立坑14に設置したシールド本体11の送泥水管18及び排泥水管19に、地上に設置した泥水処理プラント22と接続する送泥水接続管25及び排泥水接続管26を接続し、開閉バルブ30a,30bを開閉制御して、泥水を循環させつつシールド本体11の操作口29a,29bよりも前方部分を発進立坑14から地中に掘進させる工程(図2(a),(b)参照)と、操作口29a,29bを介して開閉バルブ30a,30bを閉塞した後、送泥水接続管25及び排泥水接続管26を取り外す工程(図2(b)参照)と、発進立坑14のシールド本体11の後方のスペース31に第1後続管12aを後続して設置し、シールド本体11の内部の送泥水管18及び排泥水管19を泥水バルブユニット27に接続すると共に、泥水バルブユニット27に送泥水接続管25及び排泥水接続管26を接続する工程(図2(b),(c)参照)と、操作口29a,29bを介して開閉バルブ30a,30bを開放すると共に、泥水バルブユニット27を開閉制御して、泥水を循環させつつシールド本体11と第1後続管12aとを一体として発進立坑14から地中に掘進させる工程(図2(c)参照)とを含んでいる。
【0017】
本実施形態では、発進立坑14は、例えば地表面から下方に向けて地盤を掘削しながら、掘削壁面をコルゲート管等によって防護する公知の工法によって、例えば2.5m程度の内径の円形断面を有する縦穴として、埋設管15が設置される所定の深さを備えるように構築される。また、発進立坑14の底部には、コンクリート等を用いて底盤部41(図3(b)参照)が形成されると共に、この底盤部41の上方には、例えば推進工法に用いるジャッキとして公知の、例えば1500KN程度の推力を備え、1350mm程度のストローク長を有する油圧ジャッキからなる元押しジャッキ17や、上述の押し輪部20及び圧入ピース21、或いは押し輪部20を掘進方向にスライド移動させる発進架台32(図3(b)参照)等が設置される。
【0018】
また、本実施形態では、シールド本体11の内部に配置される送泥水管18及び排泥水管19に、外殻体28の後部外周面から操作口29a,29bを介して操作可能な手動式の開閉バルブ30a,30bが取付けられる。すなわち、本実施形態では、図4(a),(b)に示すように、送泥水管18及び排泥水管19は、シールド本体11の内部において、例えば支持ブラケット33によって支持されて、外殻体28の両側部内側面に沿って高さ方向中央部分に配置される。また、送泥水管18及び排泥水管19には、シールド本体11の後端に近接する部分に、例えばボールバルブからなる開閉バルブ30a,30bが、ハンドル係止部34を上方に突出配置して各々設けられている。さらに、開閉バルブ30a,30bのハンドル係止部34の直上部分には、操作口29a,29bが、上端部を外殻体28の外周面に開口させて各々設けられている。
【0019】
操作口29a,29bは、外殻体28に溶着されて内側に垂下する円筒形状のソケット部35と、このソケット部35の内部に着脱可能に配置される六角穴付沈みプラグ36とからなる。ソケット部35に六角穴付沈みプラグ36が装着された状態で、発進立坑14にシールド本体11を据え付けてこれの前方部分を発進立坑14から地中に掘進させる。しかる後に、開閉バルブ30a,30bを操作する際には、ソケット部35から六角穴付沈みプラグ36を取り外して、図5に示すように、バルブ開閉ハンドル37の回動係止部38を開閉バルブ30a,30bのハンドル係止部34に各々係合することにより、外殻体28の外側からバルブ開閉ハンドル37を介して、開閉バルブ30a,30bの手動による開閉操作を容易に行うことが可能になる。
【0020】
なお、開閉バルブ30a,30bの手動による開閉操作を終了して、シールド本体11をさらに地中に掘進させる際には、ソケット部35に六角穴付沈みプラグ36を装着し直すと共に、六角穴付沈みプラグ36の上方の空隙部分にパテ詰め39を行う(図4(a)参照)。また、図4(a),(b)において、符号40で示される部分は、シールド本体11とこれに後続する第1後続管12aとを接合一体化するための、接合ボルトが締着されるボルトボックスである。
【0021】
そして、本実施形態の発進方法によって、泥水式シールド掘進機10を発進立坑14から発進させるには、図2(a)〜(d)に示すように、先ず、発進立坑14に設置したシールド本体11の送泥水管18及び排泥水管19に、地上に設置した泥水処理プラント22と接続する送泥水接続管25及び排泥水接続管26を接続して、泥水を循環させつつシールド本体11の操作口29a,29bよりも前方部分を発進立坑14から地中に掘進させる(図2(a),(b)参照)。
【0022】
すなわち、シールド本体11の操作口29a,29bよりも前方部分を発進立坑14から地中に掘進させる工程では、発進立坑14内の掘進方向前方側の内側面と、元押しジャッキ17を収縮した状態の押し輪部20との間のスペースに、例えば1695mmの長さを有するシールド本体11を据え付ける。またシールド本体11の内部に配設された送泥水管18及び排泥水管19の後端部を、圧入ピース21に設けられた曲り管23a,23bのピース開口24a,24bに各々接続することにより、これらの曲り管23a,23bを介して泥水処理プラント22と接続する送泥水接続管25及び排泥水接続管26と各々接続する。また、送泥水管18及び排泥水管19に取り付けた開閉バルブ30a,30bは、開放状態となっており、したがって、シールド本体11と泥水処理プラント22との間で泥水を循環させつつ、元押しジャッキ17を伸長してシールド本体11を地中に掘進させることが可能になる。
【0023】
シールド本体11の前方部分を地中に掘進させたら、次に、操作口29a,29bを介して開閉バルブ30a,30bを閉塞した後、送泥水接続管25及び排泥水接続管26を取り外す(図2(b)参照)。
【0024】
すなわち、開閉バルブ30a,30bを閉塞して送泥水接続管25及び排泥水接続管26を取り外す工程では、発進立坑14内に残置されたシールド本体11の後端部分の外周面に露出する操作口29a,29bから六角穴付沈みプラグ36を取り外し、外殻体28の外側からバルブ開閉ハンドル37を用いて開閉バルブ30a,30bを手動操作により閉塞する。また、送泥水管18及び排泥水管19の圧入ピース21の曲り管23a,23bへの接続を開放することによって、送泥水接続管25及び排泥水接続管26を送泥水管18及び排泥水管19から取り外す。さらに、元押しジャッキ17を収縮して押し輪部20を掘進方向後方側に後退させる。
【0025】
元押しジャッキ17を収縮して押し輪部20を掘進方向後方側に後退させたら、次に、発進立坑14のシールド本体11の後方のスペース31に第1後続管12aを後続して設置し、シールド本体11の内部の送泥水管18及び排泥水管19を泥水バルブユニット27に接続すると共に、泥水バルブユニット27に送泥水接続管25及び排泥水接続管26を接続する(図2(b),(c)参照)。
【0026】
すなわち、発進立坑14に第1後続管12aを設置して泥水バルブユニット27に送泥水管18及び排泥水管19や、送泥水接続管25及び排泥水接続管26を接続する工程では、発進立坑14内に残置されたシールド本体11の後端部分と、後退させた押し輪部20との間のスペースに、例えば843mmの長さを有する第1後続管12aを据え付ける。またシールド本体11の内部に配設された送泥水管18及び排泥水管19の後端部を、泥水バルブユニット27の前端部の各接続口に各々接続する。さらに、元押しジャッキ17を伸長して押し輪部20を適宜前進させた状態で、泥水バルブユニット27の後端部の各接続口を、圧入ピース21に設けられた曲り管23a,23bのピース開口24a,24bに各々接続することにより、これらの曲り管23a,23bを介して泥水処理プラント22と接続する送泥水接続管25及び排泥水接続管26と泥水バルブユニット27の各接続口とを各々接続する。
【0027】
第1後続管12aの泥水バルブユニット27に送泥水管18及び排泥水管19や、送泥水接続管25及び排泥水接続管26を接続したら、操作口29a,29bを介して開閉バルブ30a,30bを開放すると共に、泥水バルブユニット27を開閉制御して、シールド本体11と第1後続管12aとを一体として発進立坑14から地中に掘進させる(図2(c)参照)。
【0028】
すなわち、開閉バルブ30a,30bを開放すると共に、シールド本体11と第1後続管12aとを一体として発進立坑14から地中に掘進させる工程では、発進立坑14内に残置されたシールド本体11の後端部分の外周面に露出する操作口29a,29bを介して、外殻体28の外側からバルブ開閉ハンドル37を用いて開閉バルブ30a,30bを手動操作により開放する。また泥水バルブユニット27を遠隔操作によって開放制御すれば、シールド本体11と泥水処理プラント22との間で泥水を循環させることが可能になるので、元押しジャッキ17を伸長しつつシールド本体11と第1後続管12aとを一体として地中に掘進させることが可能になる。
【0029】
シールド本体11と第1後続管12aとを一体として地中に掘進させたら、従来の、シールド本体11及び第1後続管12aを一体として発進立坑14に据え付ける方法と同様に、図2(d)に示すように、第1後続管12aの後方に、第2後続管12b、第3後続管12c、及び推進工法用仮管16を順次接続しつつ、泥水式シールド掘進機10の全体を推進工法用仮管16と共に地中に発進させてゆくことになる。
【0030】
そして、上述の構成を備える本実施形態の発進方法によれば、よりコンパクトに構築した発進立坑14から泥水式シールド掘進機10を発進させることを可能にして、工事用の敷地の確保を容易にすると共に、発進立坑14の構築コストをさらに低減することが可能になる。
【0031】
すなわち、本実施形態の発進方法によれば、シールド本体11に配置された送泥水管18及び排泥水管19に、操作口29a,29bを介して操作可能な手動式の開閉バルブ30a,30bを設けておき、シールド本体11のみを発進立坑14から発進させて操作口29a,29bよりも前方部分を地中に掘進させる工程と、これによって形成されたシールド本体11の後方のスペース31に第1後続管12aを後続して、シールド本体11と第1後続管12aとを一体として発進立坑14から地中に掘進させる工程とを含んでいるので、シールド本体11と第1後続管12aとを一体として据え付けた後に発進立坑14からこれらを発進させる必要がなくなり、第1後続管12aを同時に据え付ける必要がなくなる分、発進立坑14をコンパクトに構築することが可能になって、工事用の敷地を小さくすることが可能になると共に、発進立坑14の構築コストを大幅に低減することが可能になる。
【0032】
実際に、上述の実施形態と同様の大きさの泥水式シールド掘進機10を発進させる際に、従来の、シールド本体11と第1後続管12aとを一体として発進立坑に据え付ける方法では、例えば4.4m程度の内径の円形断面を有する発進立坑を構築する必要があったのに対し、本実施形態の発進方法によれば、上述のように、例えば2.5m程度の内径の円形断面を有する発進立坑14から、泥水式シールド掘進機10をスムーズに発進させることが可能である。
【0033】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明の発進方法は、泥水推進工法に用いるその他の泥水式シールド掘進機を発進させる場合の他、泥水シールド工法等のその他の泥水工法に用いる種々の泥水式シールド掘削機を発進立坑から発進させる際にも採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好ましい一実施形態に係る泥水式シールド掘削機の発進方法が採用される泥水推進工法を説明する略示縦断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、本発明の好ましい一実施形態に係る泥水式シールド掘削機の発進方法の作業工程を説明する略示縦断面図である。
【図3】押し輪部及び圧入ピースの(a)は上面図、(b)は正面図である。
【図4】(a)は、開閉バルブの取付け位置を説明するシールド本体の部分切欠き側面図、(b)は(a)のA−Aに沿った断面図である。
【図5】開閉バルブを開閉操作する状況を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 泥水式シールド掘進機(泥水式シールド掘削機)
11 シールド本体
12a 第1後続管
12b 第1後続管
12c 第1後続管
13 掘削部
14 発進立坑
15 埋設管
16 推進工法用仮管
17 元押しジャッキ
18 送泥水管
19 排泥水管
20 押し輪部
21 圧入ピース
22 泥水処理プラント
23a,23b 曲り管
24a,24b 曲り管のピース開口
25 送泥水接続管
26 排泥水接続管
27 泥水バルブユニット
28 外殻体
29a,29b 操作口
30a,30b 開閉バルブ
31 発進立坑のシールド本体の後方のスペース
34 開閉バルブのハンドル係止部
37 バルブ開閉ハンドル
38 バルブ開閉ハンドルの回動係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削カッター、隔壁、及び泥水室を備えるシールド本体と、該シールド本体の直後に連設する、内部に泥水バルブユニットを配置した第1後続管とを含む泥水式シールド掘削機を、地中に設けた発進立坑から発進させる泥水式シールド掘削機の発進方法において、
前記シールド本体の内部に配置された送泥水管及び排泥水管に、外殻体の後部外周面から操作口を介して操作可能な手動式の開閉バルブを設けておき、
前記発進立坑に設置した前記シールド本体の送泥水管及び排泥水管に、地上に設置した泥水処理プラントと接続する送泥水接続管及び排泥水接続管を接続し、前記開閉バルブを開閉制御して、泥水を循環させつつ前記シールド本体の前記操作口よりも前方の部分を前記発進立坑から地中に掘進させる工程と、
前記操作口を介して前記開閉バルブを閉塞した後、前記送泥水接続管及び前記排泥水接続管を取り外す工程と、
前記発進立坑の前記シールド本体の後方のスペースに前記第1後続管を後続して設置し、前記シールド本体の内部の送泥水管及び排泥水管を前記泥水バルブユニットに接続すると共に、前記泥水バルブユニットに送泥水接続管及び排泥水接続管を接続する工程と、
前記操作口を介して前記開閉バルブを開放すると共に、前記泥水バルブユニットを開閉制御して、泥水を循環させつつ前記シールド本体と前記第1後続管とを一体として前記発進立坑から地中に掘進させる工程とを含む泥水式シールド掘削機の発進方法。
【請求項2】
前記泥水式シールド掘削機が、泥水推進工法に用いる外径が400〜700mmの泥水式シールド掘進機である請求項1に記載の泥水式シールド掘削機の発進方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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