説明

泥水管の摩耗検知装置及びスクリューコンベアの摩耗検知装置

【課題】作業員の手が届かず計測することができない部分でも摩耗の検知が可能である泥水管の摩耗検知装置を提供する。
【解決手段】トンネル掘進機のカッタチャンバ2へ泥水を送り又はカッタチャンバ2から掘削土砂を含む泥水を排出する泥水管4の摩耗を検知する装置であって、泥水管4の外周に泥水管4の内周が泥水で摩耗する部分14を覆うように固着されたダブリングプレート11と、ダブリングプレート11の内外周を連通する貫通孔12と、貫通孔12に装着され、泥水管4の摩耗状況を貫通孔12から離間した位置で検知するための検知手段13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル掘進機のカッタチャンバへ泥水を送り又はそのカッタチャンバから掘削土砂を含む泥水を排出する泥水管の摩耗を検知する装置、及び、トンネル掘進機のカッタチャンバから掘削土砂を後方の坑内へ搬送するスクリューコンベアの摩耗を検知する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル掘進機のカッタチャンバから土砂水を排出する排泥管の屈曲部はその内部を流れる土砂水により摩耗するため、排泥管の屈曲部にダブリングを実施して、排泥管の屈曲部の管厚を大きくしていた。
【0003】
なお、トンネル掘進機に切羽を切削するために備えられるカッタビットの摩耗を検出する装置としては、カッタビットの摩耗する部分の近傍に、絶縁体でそれぞれが絶縁された複数の電導性の検出線をその検出先端から、それぞれの取り付け長さを変えて配置し、カッタビットの摩耗が進行して、順次発生する検出線の先端の露出を、検出線の相互間の地中側の電気の導通の検出により検知して、カッタビットの摩耗量を測定するようにしたものが知られている(特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−204884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、排泥管がどの程度摩耗しているかを実測するためには、超音波板厚計等で直接計測するしかないため、排泥管における作業員の手が届かない部分は計測することができない。
【0006】
そこで、本発明の目的は、作業員の手が届かず計測することができない部分でも摩耗の検知が可能である泥水管の摩耗検知装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、トンネル掘進機のカッタチャンバへ泥水を送り又はそのカッタチャンバから掘削土砂を含む泥水を排出する泥水管の摩耗を検知する装置であって、上記泥水管の外周にその泥水管の内周が泥水で摩耗する部分を覆うように固着されたダブリングプレートと、該ダブリングプレートの内外周を連通する貫通孔と、該貫通孔に装着され、上記泥水管の摩耗状況を上記貫通孔から離間した位置で検知するための検知手段とを備えたものである。
【0008】
また本発明は、トンネル掘進機のカッタチャンバから掘削土砂を後方の坑内へ搬送するスクリューコンベアの摩耗を検知する装置であって、上記カッタチャンバとその後方の坑内を連通する上記スクリューコンベアの筒状のケーシングの外周にそのケーシングの内周が掘削土砂で摩耗する部分を覆うように固着されたダブリングプレートと、該ダブリングプレートの内外周を連通する貫通孔と、該貫通孔に装着され、上記ケーシングの摩耗状況を上記貫通孔から離間した位置で検知するための検知手段とを備えたものである。
【0009】
ここで、上記検知手段は、一端が上記貫通孔に接続され他端が後方に延出されたホースと、該ホースの他端に開閉可能に設けられたバルブとを有しても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、作業員の手が届かず計測することができない部分でも摩耗の検知が可能である泥水管の摩耗検知装置を提供することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
トンネル掘進機(シールド掘進機)は、掘進機本体と、掘進機本体の前部に配設され掘進方向に沿った軸廻りに回転駆動されるカッタフレームと、掘進機本体の内部に設けられセグメントをリング状に組み立てるエレクタと、掘進機本体の内部に設けられリング状に組み立てられたセグメントに反力を取って掘進機本体を前進させるシールドジャッキとを有している。
【0013】
掘進機本体の前部に設けられ掘削土砂が取り込まれるカッタチャンバへ泥水を送り、泥水圧によって切羽の安定を図ると共に、カッタチャンバから掘削土砂を含む泥水を排出し、掘削土砂を流体輸送する泥水式のトンネル掘進機にあっては、カッタチャンバへ泥水を送る送泥管(泥水管)と、カッタチャンバから掘削土砂を含む泥水を排出する排泥管(泥水管)とを備えている。
【0014】
これら送泥管及び排泥管(泥水管)の屈曲部の内周は、泥水或いは土砂水(掘削土砂を含む泥水)により乱流が生じるなどして摩耗する。これら送泥管及び排泥管(泥水管)の摩耗を検知するための装置を図1に示す。
【0015】
図1に示すように、掘進機本体1の前部に設けられカッタチャンバ2を区画する隔壁3には、排泥管4がカッタチャンバ2内に開口させて取り付けられている。図1は、この排泥管4に摩耗検知装置10を組み込んだ例を示す。
【0016】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る摩耗検知装置10は、排泥管4の外周に排泥管4の内周が土砂水(泥水)で摩耗する部分を覆うように固着されたダブリングプレート11と、ダブリングプレート11の内外周を連通する貫通孔12と、貫通孔12に装着され、排泥管4の摩耗状況を貫通孔12から離間した位置で検知するための検知手段13とを備えている。
【0017】
本実施形態では、ダブリングプレート11は、排泥管4の屈曲部外側14を覆うように、排泥管4の外周に固着されている。土砂水による排泥管4の内周摩耗(減肉)は、乱流が生じ易く内周に掘削土砂が衝突し易い屈曲部外側14で主に生じ、乱流が生じ難い屈曲部内側15ではほとんど生じないと考えられるためである。
【0018】
また本実施形態では、ダブリングプレート11は、その四辺を溶接(隅肉溶接)することで、排泥管4の外周に固着されている。よって、土砂水による排泥管4の屈曲部外側14の内周摩耗が外周まで至り、排泥管4に穴が開いたとしても、当該排泥管4の外周にはダブリングプレート11が四辺を隅肉溶接することで固着されているので、排泥管4の外周とダブリングプレート11の内周との間の隙間がダブリングプレート11で塞がれることとなり、排泥管4に開いた穴から流出した土砂水が上記隙間(排泥管4の外周とダブリングプレート11の内周との間の隙間)から漏れることが防止される。
【0019】
また本実施形態では、ダブリングプレート11は、排泥管4と同等の摩耗性或いは排泥管4よりも高い摩耗性を有する材料からなる。
【0020】
上記の検知手段13は、一端がコネクタ17を介して貫通孔12に接続され、他端が貫通孔12から離間した位置であって作業員がアクセス可能な位置まで後方に延出されたホース18と、ホース18の他端に開閉可能に設けられたバルブ19とを有する。本実施形態では、コネクタ17としてニップルを用い、バルブ19としてボール弁を用いている。また本実施形態では、ホース18として可撓性を有するものを用いており、ホース18が貫通孔12から離間した所望の位置まで後方に引き出されている。
【0021】
本実施形態の作用を説明する。
【0022】
排泥管4の摩耗状況を確認するときには、所定距離掘進する毎に(定期的に)、貫通孔12に接続したホース18の他端に設けたバルブ19を開く。バルブ19を開いたときにホース18を通じて水が出てこないようであれば、排泥管4の屈曲部外側14の内周摩耗が外周まで至っておらず、ダブリングプレート11で覆われた排泥管14の屈曲部外側14に穴が開いていないと判断できる。
【0023】
一方、バルブ19を開いたときにホース18を通じて水が出てくるようであれば、排泥管4の屈曲部外側14の内周摩耗が外周まで至り、ダブリングプレート11で覆われた排泥管4の屈曲部外側14に穴が開いたと判断できる。その場合、現在の掘進距離及び排泥管4の管厚等から内周摩耗の進行速度を求め、求めた内周摩耗の進行速度、残りの掘進距離及びダブリングプレート11の板厚等に基づいて、残りの掘進距離を掘進すると屈曲部外側14に固着したダブリングプレート11に内周摩耗による穴が開くか否か(ダブリングプレート11の内周摩耗が外周まで至るか否か)を予想する。
【0024】
そして、残りの掘進距離を掘進するとダブリングプレート11に内周摩耗による穴が開くと予想される場合、既設のダブリングプレート11の外周に、コネクタ17或いはホース18を囲繞し且つ既設のダブリングプレート11を覆うように、貫通孔20の部分で複数に分割(例えば半割)した新たなダブリングプレート21を溶接により固着する(図2参照)。このようにすることで、排泥管4を交換することなくトンネル掘進機の掘進を継続することができる。
【0025】
本実施形態によれば、排泥管4の外周に、排泥管4の屈曲部外側14を覆うようにダブリングプレート11を固着し、そのダブリングプレート11に、ダブリングプレート11の内外周を連通する貫通孔12を設け、その貫通孔12にホース18を接続して、そのホース18を貫通孔12から離間した位置であって作業員がアクセス可能な位置まで後方に引き出して、後方まで引き出したホース18の端部にバルブ19を設けたため、排泥管4の屈曲部外側14の内周摩耗が外周まで至り当該屈曲部外側14に穴が開いたか否かをバルブ19を開いて確認できる。よって、作業員の手が届かず超音波板厚計等で直接計測することができない部分でも摩耗の検知が可能である。
【0026】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず他の様々な実施形態を採ることが可能である。
【0027】
例えば、上記の実施形態においては、排泥管4に摩耗検知装置10を組み込んだ例を示したが、送泥管(図示せず)に摩耗検知装置10を組み込むことも同様にして可能である。
【0028】
また、図示はしないが、上記のコネクタ17、ホース18及びバルブ19に代えて、上記の貫通孔12に、超音波板厚計の超音波探触子を装着するようにしても良い。
【0029】
また、土圧式のトンネル掘進機にあっては、カッタチャンバから掘削土砂を後方の坑内へ搬送するスクリューコンベア(排土装置)を備えており、当該スクリューコンベアに上記の摩耗検知装置10を組み込むことも可能である。その場合、図3に示すように、上記のダブリングプレート11は、カッタチャンバ2とその後方の坑内を連通するスクリューコンベア5の筒状のケーシング6の外周にそのケーシング6の内周が掘削土砂で摩耗する部分を覆うように固着されることとなる。図示例では、ダブリングプレート11は、ケーシング6の下半分側22を覆うように、ケーシング6の外周に固着されている。また、図示例では、ダブリングプレート11は、ケーシング6の前端部(スクリューフライト7の自由端側)に固着されているが、ダブリングプレート11をケーシング6の後端部に固着するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施形態に係る泥水管の摩耗検知装置が適用されるトンネル掘進機の要部拡大図である。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るスクリューコンベアの摩耗検知装置が適用されるトンネル掘進機の要部拡大図である。
【符号の説明】
【0031】
2 カッタチャンバ
4 排泥管(泥水管)
5 スクリューコンベア(排土装置)
6 ケーシング
10 摩耗検知装置
11 ダブリングプレート
12 貫通孔
13 検知手段
14 屈曲部外側(排泥管の摩耗する部分)
18 ホース
19 バルブ
22 下半分側(スクリューコンベアの摩耗する部分)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル掘進機のカッタチャンバへ泥水を送り又はそのカッタチャンバから掘削土砂を含む泥水を排出する泥水管の摩耗を検知する装置であって、
上記泥水管の外周にその泥水管の内周が泥水で摩耗する部分を覆うように固着されたダブリングプレートと、該ダブリングプレートの内外周を連通する貫通孔と、該貫通孔に装着され、上記泥水管の摩耗状況を上記貫通孔から離間した位置で検知するための検知手段とを備えたことを特徴とする泥水管の摩耗検知装置。
【請求項2】
上記検知手段は、一端が上記貫通孔に接続され他端が後方に延出されたホースと、該ホースの他端に開閉可能に設けられたバルブとを有する請求項1に記載の泥水管の摩耗検知装置。
【請求項3】
トンネル掘進機のカッタチャンバから掘削土砂を後方の坑内へ搬送するスクリューコンベアの摩耗を検知する装置であって、
上記カッタチャンバとその後方の坑内を連通する上記スクリューコンベアの筒状のケーシングの外周にそのケーシングの内周が掘削土砂で摩耗する部分を覆うように固着されたダブリングプレートと、該ダブリングプレートの内外周を連通する貫通孔と、該貫通孔に装着され、上記ケーシングの摩耗状況を上記貫通孔から離間した位置で検知するための検知手段とを備えたことを特徴とするスクリューコンベアの摩耗検知装置。
【請求項4】
上記検知手段は、一端が上記貫通孔に接続され他端が後方に延出されたホースと、該ホースの他端に開閉可能に設けられたバルブとを有する請求項3に記載のスクリューコンベアの摩耗検知装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate