説明

注入器

【課題】従来技術における欠点を取り除き、特に簡単に保管および操作することができる注入器を提案する。
【解決手段】注入器(1)は、内部空間(3)および該内部空間(3)に接続された先端部(4)を有する注入器本体(2)と、長手方向にスライド可能に前記内部空間(3)を案内されたピストンロッド(5)とを備える。注入器前置フィルタ(6)は先端部(4)に固定可能であり、閉鎖キャップ(7)は注入器前置フィルタ(6)に固定可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部空間および該内部空間に接続された先端部を有する注入器本体と、長手方向にスライド可能に内部空間を案内されたピストンロッドとを備える注射器に関する。本発明は、特に医療で用いられる、ガスタンポナーデの使用準備済システムに関する。タンポナーデは、例えば加齢による水晶体収縮により自然に生じた空洞、または、例えば水晶体切除術により生じた空洞を充填するために用いられる。
【背景技術】
【0002】
人間の寿命が延びるにつれて、加齢による疾患、例えば網膜変化や網膜剥離、緑内障や白内障、また加齢による黄斑や糖尿病による網膜症などが増加している。これらの疾患やそのほかの眼の疾患を治療するためには、多くの場合には水晶体切除術(水晶体除去)が不可避的である。水晶体空胞の崩壊を阻止するためには、生じた空胞を再び充填する必要がある。このような目的でSF、CまたはCなどの「高密度ガス」が使用される。高密度ガスとは、一般に通常の室内空気に比べて著しく高い密度を有するガスである。
【0003】
治療効果は多くの場合はガス自体によってではなく、むしろガス−液体界面によって生じる。このような界面に生じる表面張力は、網膜円孔を通ってガスが網膜下腔に入り込むことを防ぎ、さらに網膜円孔を弛緩させ、網膜下腔に液体がさらに浸入することを防止する。
【0004】
高密度ガスの注入後、血液から眼内へのOおよびCOの拡散が始まり、これにより、発泡性ガスの容積が増大する。数時間後、OおよびCOの拡散平衡は調整されるが、Nの拡散平衡は、数日後にようやく調整される。
【0005】
高密度ガスは、脈絡膜を介して網膜を透過して取り込まれ、タイプに応じて1〜2週間以内に眼から排出される。
【0006】
外科手術で使用されるガスは、多くの場合には、手術中にスチールシリンダーから使用媒体に直接に移し替えられる。
【0007】
特許文献1(米国特許第6866142号明細書)には、既にガス充填された一回使い切りタイプの注入器を有するシステムが開示されており、注入器は、良好なガス密性のために、一回使い切り注入器と同じガスを充填した容器に保管される。
【0008】
上記構成のシステムは全て以下のような複数の欠点を有する:
−全てのシステムでは、部分的にかなりの量のSF、CおよびCが周辺環境に排出される。これらのガスは最もよく知られた温室効果ガスであり、例えば1kgのSFは、22.2tのCOと同じ効果を有する。[規則(EG) No.842/2006]
−スチールシリンダーは、圧力容器のための特殊なスチール製ロッカーに保管する必要があるので、手術室でスチールシリンダーからガスタンポナーデを移し替えることは許可されていない。
−市販の一回量は、外科医が使用できるまでには複数のステップで準備する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6866142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、内部空間および該内部空間に接続された先端部を有する注入器本体と、長手方向にスライド可能に内部空間を案内されたピストンロッドとを備える注入器において、従来技術における上記欠点を取り除き、特に簡単に保管および操作することができる注入器を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、注入器前置フィルタが、内部空間に接続された先端部に固定可能であり、閉鎖キャップが注入器前置フィルタに固定可能であることにより解決される。
【0012】
本発明の有利な改良形態が従属請求項に記載されている。
【0013】
本発明は、有利には50mlの一回使い切り注入器、ガス容器としての役割を果たすルーア・ロック・アダプター、両端にルーア・ロック・コネクタを備え、注入器にねじ込み可能な注入器前置フィルタ、およびルーア栓を備えるシステムに関する。
【0014】
組み立てたシステム(一回使い切り注入器および注入器前置フィルタ)は、それぞれのガスを数ミリリットルだけ充填され、ルーア栓によって閉鎖される。
【0015】
このシステムは、有利には次のようなラベルを備える。すなわち、SF(ガス20%/空気80%)、C(ガス16%/空気84%)またはC(ガス12%/空気88%)について混合比を色分けしており、また混合比を調整するためにピストンを引き出す必要のある、および/または引き出してもよい最大値に目印が付けられているラベルである。閉鎖されたシステムは、有利には滅菌バッグに封入され、次いで、有利には蒸気オートクレーブで滅菌される。
【0016】
本発明のさらなる詳細、特徴および利点が図面に基づいた以下の実施例の説明から明らかである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、従来技術における欠点を取り除き、特に簡単に保管および操作することができる注入器が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明による注入器の第1実施形態を示す概略図である。
【図2】本発明による注入器の第2実施形態を示す、図1と同様な概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本発明による注入器1の第1実施形態が示されている。注入器1は、内部空間3を有する円筒形の注入器本体2を備える。
【0020】
内部空間3は先端部4に接続されており、内部空間3には、ピストンロッド5が長手方向にスライド可能に案内されている。
【0021】
図1から明らかなように、先端部4には注入器前置フィルタ6が固定されている。システム全体は、さらに閉鎖キャップ7によってガス密に閉鎖されており、閉鎖キャップ7は、注入器前置フィルタ6の外端部に固定可能である。
【0022】
特に好ましい実施形態では、注入器前置フィルタ6は、先端部4に取り付けるための第1の固定部8と、閉鎖キャップ7を固定するための第2の固定部9とを有している。
【0023】
有利には、注入器前置フィルタ6および閉鎖キャップ7はそれぞれ1つのねじ結合部10または11によって固定可能である。特に好ましい実施形態では、ねじ結合部10および11は、それぞれルーア・ロック・コネクタとして構成されている。
【0024】
図1からさらに明らかなように、ピストンロッド5は、内部空間3に配置された終端領域12に、有利にはシリコン被覆されたゴム栓13を備える。
【0025】
図2に示した実施形態は、図1に示した実施形態に広範囲に対応しており、相互に対応する全ての部分には図1と同じ符号を付す。
【0026】
図2に示す注入器の実施形態は、注入器本体2にラベル14が取り付けられている点で優れている。図2から明らかなように、ラベル14は、高密度ガス19と吸着空気との異なる混合比のためのマーキング15,16および17を備える。さらにマーキング18が最大ピストンストロークのために設けられている。
【0027】
冒頭で既に述べたように、注入器1は一回使い切り注入器として構成されていてもよい。
【0028】
好ましくは、注入器本体2の内部空間3に充填されるガスは、特にSF、CまたはCである。
【0029】
本発明の前述の書面による開示内容の他に、図面による説明を明示的に指摘しておく。
【符号の説明】
【0030】
1 注入器
2 注入器本体
3 内部空間
4 注入器
5 ピストンロッド
6 注入器前置フィルタ
7 閉鎖キャップ
8 固定部
9 固定部
10,11 ねじ結合部
13 ゴム栓
14 ラベル
15,16,17 マーキング
19 ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間(3)および該内部空間(3)に接続された先端部(4)を有する注入器本体(2)と、長手方向にスライド可能に前記内部空間(3)を案内されたピストンロッド(5)とを備える注入器(1)において、
注入器前置フィルタ(6)が前記先端部(4)に固定可能であり、
閉鎖キャップ(7)が前記注入器前置フィルタ(6)に固定可能であることを特徴とする注入器。
【請求項2】
請求項1に記載の注入器において、
前記注入器前置フィルタ(6)が、前記先端部(4)に取り付けるための第1の固定部(8)と、前記閉鎖キャップ(7)を固定するための第2の固定部(9)とを備えることを特徴とする注入器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の注入器において、
前記注入器前置フィルタ(6)および前記閉鎖キャップ(7)が、それぞれ1つのねじ結合部(10,11)によって固定可能であることを特徴とする注入器。
【請求項4】
請求項3に記載の注入器において、
前記ねじ結合部(10,11)が、ルーア・ロック・コネクタとして構成されていることを特徴とする注入器。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の注入器において、
前記ピストンロッド(5)が、前記内部空間(3)に配置された終端領域(12)にゴム栓(13)を備えることを特徴とする注入器。
【請求項6】
請求項5に記載の注入器において、
前記ゴム栓(13)がシリコン被覆されていることを特徴とする注入器。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の注入器において、
前記注入器本体(2)に、混合比を印したマーキング(15,16,17)および最大ピストンストロークのためのマーキング(18)を有するラベル(14)が取付け可能であることを特徴とする注入器。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の注入器において、
一回使い切り注入器として構成されたことを特徴とする注入器。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の注入器において、
前記注入器本体(2)に高密度ガス(19)が充填可能であることを特徴とする注入器。
【請求項10】
請求項9に記載の注入器において、
前記高密度ガス(19)が、SF、CまたはCであることを特徴とする注入器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−101796(P2011−101796A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249794(P2010−249794)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(510137490)フルオロン ゲーエムベーハー (3)
【Fターム(参考)】