説明

注出口付き包装容器

【課題】詰替え用の包装容器であって、他の容器への詰替え時に、脈動を起さないで流動性内容物を排出できると共に、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても円滑に流動性内容物を排出できる注出口付き包装容器を提供する。
【解決手段】注出口5を上部の隅部に備えてなる詰替え用の包装容器において、当該包装容器内の流動性内容物を他の容器に詰替える時に、注出口5を開封して当該包装容器を倒立させた状態で、前記包装容器の外部から前記流動性内容物の上表面の位置よりも上方の空隙に大気を導入するための、通気管9を内蔵してなることを特徴とする注出口付き包装容器10を提供する。注出口5が周縁部のヒートシールにより形成され、通気管9の一方の端が注出口5内に配置され、通気管9の他方の端が包装容器10内の注出口5と対向する下部隅部の近傍に配置されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注出口を備えた詰替え用の包装容器に関する。さらに詳細には、詰替え用の包装容器であって、他の容器への詰替え時に、脈動を起さないで流動性内容物を排出できると共に、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても円滑に流動性内容物を排出できる注出口付き包装容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液体洗剤、シャンプー、リンス、ボディシャンプーなどのトイレタリー用品、ハウスホールド用品や加工食品などを貯蔵保管及び運搬供給するための包装には、内面にシーラント層を有する単層あるいは多層の合成樹脂フィルムの周縁部をヒートシールした可撓性の包装袋や包装容器(以下、包装袋も合わせて包装容器とする)が使用されている。
【0003】
近年、プラスチック製のボトル容器に比べて、合成樹脂の使用重量が少なくて済むことや、使用後の廃棄処理時に押し潰して、ゴミの減量化あるいはゴミの減容化が可能なことから、上記の合成樹脂フィルムを用いて構成された包装容器が、環境問題への対策方法として多く用いられるようになって来ている。手押しのポンプを備えたプラスチック製のボトル容器に、流動性内容物を詰替えるための詰替え用の包装容器としては、二つ折りにした底部の樹脂フィルムと、胴部となる表裏2枚の樹脂フィルムとを、外周端部をヒートシールして自立可能な包装容器として組み立てたスタンディングパウチが代表的である。一般的には詰替え用のパウチと呼ばれることもある。
【0004】
このような詰替え用の包装容器は、詰替え時の使い勝手を良くするために、注出口を備えている。この注出口を開封する際にはハサミなどの道具を使用せずに、手で容易に開封できるようにするため、その注出口部にノッチ(切り取り開始用の切欠き)が形成されているのが一般的になっている。また、ノッチを起点として開封する際に、より開封し易いように、開封を誘導する凹状の開封案内線が形成されていることもある。
【0005】
ところで、従来から提案されている詰替え用の包装容器では、注出口が設けられているものの、単に先端を細くしてノズル状とした注出口が設けられており、流動性内容物の流出量を絞り、急激に流出するのを制限すると共に、流動性内容物の流出方向を定めるようにしたものである(例えば、特許文献1、2を参照)。この場合、詰替え用のパウチが薄いプラスチックフィルムの貼り合せで構成されているので、容器形状には剛性が無く、詰替え用のパウチ内から流出した流動性内容物の占めていた空間に、注出口を通して外気が補給され、外気に置換されることは困難であった。
このため、手で詰替え用のパウチの表面を押し潰して、2枚の樹脂フィルムの対向距離を接近させることにより絞り出して、流動性内容物を流出させざるを得なかった。しかし、注出口において、2枚のフィルムが密着してしまうと、注出口が塞がれて流動性内容物の排出が円滑に行なえないという問題があった。
【0006】
注出口が塞がれるのを解消し、流動性内容物の排出を円滑にするために、注出口の部分にエンボス加工による成形で膨らませて注出口が塞がれるのを防止すること(例えば、特許文献3、4を参照)や、注出口部に拡管具を挿入して注出口が塞がれるのを防止すること(例えば、特許文献5を参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−183442号公報
【特許文献2】特開平10−203567号公報
【特許文献3】特開平11−11498号公報
【特許文献4】特開2002−154559号公報
【特許文献5】特開2000−190996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、注出口部の樹脂フィルムにエンボス加工を施して膨らませることや、注出口部にリングを挿入することにより、注出口が塞がれることが減少するが、注出口から流動性内容物の排出と並行して外気を容器内部に導入し、流動性内容物の自重により流動性内容物を排出させることはうまく行なわれない。このため、粘度の低い流動性内容物の場合には、注出口からの排出が比較的に円滑に行なわれるが、1つの注出口を通して、流動性内容物の排出と外気の容器内部への導入とが交互に行なわれるため、流動性内容物の排出に脈動が起きるという問題があった。
また、密閉された包装容器から流動性内容物が排出される場合、流動性内容物の排出により生じる空隙に外気が補給されないと、流動性内容物が排出されることに伴い、包装容器の内部に負圧が生じる。その結果として、包装容器を構成している表裏の樹脂フィルムが密着してしまい、包装容器から流動性内容物を排出させる時に、摩擦抵抗力が生じることを回避できず、注出口から粘度の高いペースト状の流動性内容物を排出させるには、手で胴部の樹脂フィルムを押し潰して絞り出す必要があり、かなりの労力を必要とするので、高齢者が負担に感じるという問題があった。
【0009】
特に、粘度の高いペースト状の流動性内容物、例えば、シャンプーやコンディショナーなどでは、他の容器へ流動性内容物を詰替える時に苦労するため、このような粘度の高いペースト状の流動性内容物が充填される詰替え用の包装容器に対しては、さらに改善が必要とされていた。しかし、単に、注出口が塞がれるのを防止するための工夫だけでは、こうした問題を解決することができなかった。
このため、液体状、ペースト状、ジェル状などの流動性内容物を他の容器へ詰替える時に、脈動を起さないで流動性内容物を排出できると共に、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても円滑に流動性内容物を排出できる注出口付き包装容器が求められていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、詰替え用の包装容器であって、他の容器への詰替え時に、脈動を起さないで流動性内容物を排出できると共に、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても円滑に流動性内容物を排出できる注出口付き包装容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明は、詰替え用の包装容器に充填されている流動性内容物を他の容器に移し替えるに当たって、包装容器を倒立させた状態で、流動性内容物の上表面(液面)の位置より上方の空隙と前記包装容器の外部とを通気管によって連通させ、流動性内容物の上表面を大気圧で加圧することにより、流動性内容物の自重の働きによって、脈動を起さないで流動性内容物を排出させると共に、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても円滑に流動性内容物を注出口より排出させることを技術思想としている。
【0012】
前記課題を解決するため、本発明は、注出口を上部の隅部に備えてなる詰替え用の包装容器において、当該包装容器内の流動性内容物を他の容器に詰替える時に、前記注出口を開封して当該包装容器を倒立させた状態で、前記包装容器の外部から前記流動性内容物の上表面の位置よりも上方の空隙に大気を導入するための、通気管を内蔵してなることを特徴とする注出口付き包装容器を提供する。
【0013】
前記注出口の位置と対角線上の下部隅部の周縁部に、吊り下げ孔を配設してなることが好ましい。
【0014】
また、前記注出口が周縁部のヒートシールにより形成され、前記通気管の一方の端が前記注出口内に配置され、前記通気管の他方の端が前記包装容器内の前記注出口と対向する下部隅部の近傍に配置されてなることが好ましい。
【0015】
また、前記注出口にはエンボス加工が施されているか、または拡管具が挿入されていることが好ましい。
【0016】
また、前記注出口が成形樹脂からなるスパウトであり、前記通気管の一方の端が前記スパウトの排出口内に配置され、前記通気管の他方の端が前記包装容器内の前記注出口と対向する下部隅部の近傍に配置されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係わる注出口付き包装容器内には、包装容器を倒立させた状態で、流動性内容物の上表面(液面)の位置より上方の空隙と包装容器の外部とを連通させる、通気管が内蔵されている。
当該包装容器内の流動性内容物を他の容器に詰替える時には、注出口の開封と同時に通気管の一方の端が外気に接触し、包装容器を倒立させた状態において、前記包装容器の外部から前記流動性内容物の上表面(液面)の位置よりも上方の空隙に通気管を通った大気が導入され、流動性内容物の上表面を大気圧で加圧することにより、流動性内容物の自重の働きによって、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても、円滑に注出口から流動性内容物が排出される。
また、粘度の低い流動性内容物であっても、脈動を起さないで注出口から流動性内容物を排出させることができる。
また、本発明に係わる注出口付き包装容器では、通気管を通った大気が包装容器の内部に導入され、流動性内容物の上表面を大気圧で加圧することにより、流動性内容物の自重で排出され、自然に注出口を開く作用が働くので、注出口付近の内面同士が密着することがなく、どんな構造・形状の注出口であっても脈動しないで円滑に流動性内容物を排出できる。
また、本発明に係わる注出口付き包装容器を、吊り下げ孔を利用して吊り下げれば倒立させた状態で放置でき、更に、本発明に係わる通気管を通して注出口付き包装容器の内部に大気が導入されるので、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても、注出口付き包装容器の内部からほぼ完全に排出され、資源の有効活用ができると共に経済的である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる注出口付き包装容器の一例を示す正面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図であって、通気管を取り付けた一例を示す。
【図3】図1のA−A矢視断面図であって、通気管を取り付けた別の例を示す。
【図4】スパウトに通気管を取り付けた一例を示す断面図である。
【図5】図4のB−B矢視断面図であって、通気管を取り付けた一例を示す。
【図6】本発明に係わる注出口付き包装容器の一例を用いて詰替える時に、通気管から大気を導入する状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好適な実施の形態に基づき、本発明を説明する。
図1に示すように、本発明に関わる、注出口を上部の隅部に備えてなる詰替え用の包装容器は、胴部の表裏2枚の合成樹脂フィルムと、2つに折り畳んだ底部の合成樹脂フィルムの周縁部がヒートシールされており、流動性内容物を充填することにより底部シート部材が広がって安定に自立できる自立型容器である、スタンディングパウチ形式の包装容器が好ましい。
本発明の開口手段を有する注出口付き包装容器では、注出口の構造及び形状に、特に制限を受けない。なぜなら、包装容器の流動性内容物を他の容器に詰替える時に、本発明に係わる通気管を通して、包装容器の内部に大気圧が加わることで流動性内容物が自重で注出口から排出され、自然に注出口を拡げる作用が働くので、注出口を拡げる方向に付勢する必要がないからである。
即ち、図1では、注出口が周縁部のヒートシールにより形成されたものを示したが、成形樹脂からなるスパウトであって良い。また、注出口が周縁部のヒートシールにより形成されたものにおいて、エンボス加工が施されているのが好ましいが、エンボス加工が施されていなくても構わない。また、注出口が周縁部のヒートシールにより形成されたものにおいて、注出口の閉塞を防止するための拡管具が挿入されているのが好ましいが、拡管具が挿入されていなくても構わない。
図1には、フィルム周縁部のヒートシールにより形成された注出口5が図示されているが、本願発明の注出口付き包装容器では、ある程度の開口断面積を有するものであれば、注出口の構造や形状には特に制限はない。具体的には、成形樹脂からなる、キャップ付きのスパウト(口栓)や、スパウトの先端に栓を設けた注出栓であっても構わない。
また、周縁部のヒートシールにより形成された注出口5においては、注出口5部分の内面が密着して閉塞するのを防止するためのエンボス加工が施されているのが好ましく、拡管具16(図3参照)が挿入されているのがより好ましい。
図1は、本発明に係わる注出口付き包装容器の一例を示す正面図である。図1において、本発明の注出口付き包装容器10は、充填口3から流動性内容物を充填封入する前の状態を示している。包装容器内に流動性内容物が充填された後、充填口3はヒートシール(例えば図6の符号3a参照)により密封される。図1において符号1は注出口付き包装容器の周縁部をヒートシールした部分である。図1において、符号4は吊り下げ用の孔を、符号2は、本発明の注出口付き包装容器において、底部のヒートシール部を示している。図1、6において、周縁部のヒートシール部1,2の範囲は平行斜線で示す。
【0020】
図1に示した注出口5は、包装容器の上部の隅部に、周縁部をヒートシールすることにより形成されている。流動性内容物を排出するには、注出口5の開封用つまみ6を手で引っ張って、ノッチ8aから開封案内線7に沿って切り裂いて注出口5を開封し、注出口5を露出させることにより可能となる。図1のA−A矢視断面図を示した図2には、胴部フィルム14,15をヒートシールして形成された注出口5の中に、通気管9の一方の端が挿入されている。また、通気管9の他方の端は、包装容器内の注出口5と対向する下部隅部の近傍に配置される。
開封案内線7に沿って切り裂いて注出口5を開封した後に、包装容器10を倒立させれば、流動性内容物が注出口5を通って包装容器の外部に排出されるが、流動性内容物の排出により生じる空隙に、通気管9の通気孔11を通って外気が補給される。
つまり、流動性内容物が排出される注出口5とは通気管により隔離された通気孔を通って、包装容器の外部の大気が流動性内容物の上表面(液面)の位置よりも上方の空隙に供給され、流動性内容物の上部が大気圧にて加圧される。
【0021】
図1において、本発明に係わる注出口付き包装容器10の、注出口の開封用つまみ6を手で引っ張って、ノッチ8aから開封案内線7に沿って切り裂けば、注出口5を開封して大気に露出させることができると共に、図2に示したように注出口5の中に配置されている通気管9の一方の端も大気に露出される。
注出口5を開封した後、本発明に係わる注出口付き包装容器10を、図6のように倒立させれば、流動性内容物が注出口5を通って包装容器の外部に排出されるが、流動性内容物の排出により生じる空隙に、通気管9の通気孔11を通って外気が流動性内容物の上表面(液面)の位置よりも上方の空隙に供給され、流動性内容物の上部が大気圧にて加圧される。
【0022】
本発明の注出口付き包装容器に使用される通気管は、中空の通気孔を有する管状であって、流動性内容物から隔離した通気孔を通して、包装容器の内部に大気を導入できるものであれば、構造及び材質には特に制限はない。通気管の断面形状は、例えば、円形、楕円形、半円形、半楕円形、あるいは四角形・六角形などの多角形などが挙げられるが、最も簡単な構造である円形の断面形状を有する通気管が、価格が安価であることから好ましい。また、通気管の材質は、取扱い易さから、低・中・高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性合成樹脂を成形したものが好ましい。通気管は、包装容器の内面にヒートシールや接着剤により、少なくとも1箇所以上を固定し、流動性内容物を他の容器に移し替えるに当たって、包装容器を倒立させた時に、流動性内容物の移動に影響されて、通気管の位置がずれないようにする。
また、通気管の内径寸法は、0.5〜12mm程度であればよく、内径が2〜8mmがより好ましい。通気管の内径が0.5mmよりも小さい場合は、ゴミなどにより目詰まりする可能性が増すことや、空気が通気する時の配管抵抗が増すことから不都合であり、内径が12mmよりも大きい場合は、限られた寸法からなる注出口の中に収納するのが困難であることから好ましくない。また、通気管の肉厚みは0.1〜1.2mm程度が好ましい。
また、通気管の成形樹脂中に有機滑剤を添加することや、あるいは、通気管の少なくとも内面に撥水剤をコーティングすることにより、通気管の内面に対する流動性内容物の付着力を抑えるのが好ましい。こうすることで、通気管の通気孔内に侵入している流動性内容物が、包装容器を倒立させた時に排出されるのが促進され、大気が包装容器内に導入されるまでの時間が短縮される。有機滑剤としては、オレイン酸アミドやエルカ酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド、ステアリン酸アミドやベヘニン酸アミド等の飽和脂肪酸アミドが挙げられる。撥水剤としては、市販されているシリコーン系オイル、各種変性シリコーン化合物、各種変性シリコーン樹脂などのシリコーン系撥水剤、あるいは四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・エチレン共重合体などのフッ素系撥水剤が挙げられる。
【0023】
本発明の注出口付き包装容器に充填されている流動性内容物を、例えば、プラスチック製のボトル容器に詰替える時には、図6に示すように、予め注出口5及び注出口5内に配置されている通気管9を露出させておいた注出口付き包装容器の注出口5を、プラスチック製のボトル容器20の口に差込み、注出口付き包装容器10を倒立させれば、自然に外気が通気管を通って、包装容器の外部の大気が流動性内容物の上表面(液面)の位置よりも上方の空隙に供給され、流動性内容物の上部に大気圧が加わることにより、流動性内容物の自重の働きによって、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても、円滑に注出口から流動性内容物が排出される。
また、本発明の注出口付き包装容器を吊り下げ用の孔4を活用して吊り下げることにより、他の容器への詰替え作業を円滑にすることが可能である。特に、注出口付き包装容器10を倒立させた状態で、流動性内容物の重量を片手で支えながら片手で開封作業をする煩わしさが無くなり、両手を用いて開口手段による開封を行えるので、手指の握力が衰えた高齢者でも容易に詰替え作業を行える。包装容器内で通気管の先端が、吊り下げ用の孔4の近傍に配設されているので、流動性内容物40の上表面41(大気に接する界面)よりも上の位置で大気が噴出する。
また、吊り下げ用の孔4を支点として注出口5がほぼ真下を向くので、注出時に注出口付き包装容器10が揺動したり、注出口5がボトル容器20の口から外れたりすることが抑制され、作業性が向上する。
また、本発明に係わる注出口付き包装容器は、吊り下げ孔を利用して吊り下げれば倒立させた状態で放置でき、更に、本発明に係わる通気手段により注出口付き包装容器の内部に大気が導入されるので、粘度の高いペースト状の流動性内容物であっても、注出口付き包装容器の内部からほぼ完全に排出できるので、資源の有効活用ができると共に経済的である。
【0024】
また、図1において、本発明に係わる注出口付き包装容器10の注出口5には、注出口が塞がれるのを防止するため、拡管具が挿入されていてもよい。拡管具の構造、材質には特に制限がないが、公知の拡管具を用いることができる。
図3に示したように、拡管具16の一例としては構造が簡単なパイプが挙げられるが、注出口5の中に、別々の通気管9と拡管具16とが組み込まれてもよく、又、通気管9と拡管具16とが一体に成形されたものでもよい。また、注出口が塞がれるのを防止するため、注出口部の樹脂フィルムにエンボス加工を施して膨らませていてもよい(図示は省略)。拡管具16は、通気管9と同じ長さを有する必要はなく、注出口5内、あるいはその近傍まで設けられればよい。
【0025】
また、注出口は、図4、図5に示したような樹脂成型によるスパウト30であってもよい。図4には、一例のスパウトの断面構造図を、図5には、図4のB−B矢視図を示した。このスパウト30は、胴部フィルム14,15間にシールされる基部22と、この基部22から突出するノズル21を有する。スパウト30の内部には排出口23が形成されるとともに、通気管24の通気孔11がノズル21の先端部26に達している。図4、図5において、通気孔11が流動性内容物によって塞がれるのを防止するため、通気孔11と流動性内容物の排出口23とは通気管24によって隔離されている。スパウト30に一体化された通気管24は、パウチ内部の通気管9と連結部25における嵌合や接着等により連結されている。ノズル先端部26は、ネジや嵌合等で着脱可能なキャップ27で閉鎖されている。通気管9がパウチと同様に柔軟な管である場合、スパウト30に一体化された通気管24がスパウト30と同じく硬い樹脂等で形成されると、排出口23を通る流動性内容物の圧力で通気孔11が塞がりにくくなり、好ましい。
スパウト30の基部22は、図5に示すように左右に拡がった形状(いわゆる舟形)をしており、胴部フィルム14,15の内面へのシールが容易で確実になっている。
【0026】
図1に示した注出口5を開封するには、ノッチ8a,8b及び開封案内線7が形成されているので、注出口の開封用つまみ6を手で引っ張れば、ノッチに力が集中するため容易に開封を開始できる。また、開封案内線がノッチに連なって形成されているため、開封案内線に沿って安定に切り裂きを進行させることができ、開封する箇所が予定した位置からずれるのを防止できる。
なお、ノッチの形状としては、線状の切り欠きの他、U字状、V字状の切り欠きや単なる切り込みでもよく、形状に制限はない。さらに、衝撃等でノッチを起点とした意図しない亀裂を生じることを防ぐため、開封案内線におけるノッチ側の先端近傍部分は、その向きがノッチに加わる力の向きと異なるように、例えば、半円状の他、略半円状、V字状、コ字状などに形成されてもよい。また、半円状である場合にも、その大きさは適宜設定可能である。また、衝撃等でノッチを起点とした意図しない亀裂を生じることを防ぐための別の手法として、開封案内線がノッチから離間し、かつノッチの終端部の延長方向に沿って設けられていてもよい。この場合、開封案内線のノッチ側の先端と、該ノッチの開封案内線側の先端との間隔は、例えば0.3〜0.8mmが好ましい。
ノッチにより切り裂きが誘導される方向に各2本の開封案内線を設け、2本の開封案内線の間に切り裂きをその両側から案内することが好ましい。この場合、各2本の開封案内線がノッチから離間していても、ノッチの終端部の延長方向に沿って設けられていることにより、切り裂きが2本の開封案内線の間から外側へはみ出しにくくなる。また、引き裂きが容易であれば、2枚のフィルムのうち、片方のフィルムだけに開封案内線を設けてもよい。ここで、ヒートシール部1において重ねられている2枚のフィルムとは、胴部の表裏2枚のフィルム14,15である。また、重ねられている2枚のフィルムのうち1枚を重ならないように延長した場合、その延長部まで連続して開封案内線を設けてもよい。
【0027】
ノッチと開封案内線とは、例えば、次に示す方法で形成することが可能である。
まず、炭酸ガスレーザーなどのレーザーを、ヒートシール部1における所定の箇所に、その裏表の両面から複数回に渡り走査させて照射して、ノッチを形成する。ここで、注出口5を構成するフィルムは、外層がレーザーを吸収しやすいPET層などからなるため、レーザー照射された外層の当該箇所は発熱、溶融し、さらには蒸発する。そして、この際の発熱などにより、レーザーを吸収しにくいLLDPE層などからなる内層も溶融、蒸発して、フィルムを貫通したノッチが形成されると考えられる。
【0028】
ついで、ノッチを形成した後、さらにレーザーを走査、照射して、ノッチに連続した凹状の開封案内線を形成する。この際、開封案内線は、十分な強度を有し、かつ、手で容易に引き裂かれる深さで形成される必要があるので、レーザー照射を適切に制御して、その箇所を切断してしまったり、あるいは深さが不十分で手で引きちぎることが不可能となったりしないようにする。通常、外層が蒸発して内層が露出する程度にレーザーを照射して、ハーフカット溝からなる開封案内線7を形成する。
レーザーを照射して形成した開封案内線は、極細であって目視確認が困難であるため、開封案内線の位置を目視確認できるように、実際の開封案内線に沿って点線、破線などの印刷で表示するのが好ましい。
【0029】
ここで、レーザーとしては、ノッチと開封案内線とを形成できるものであれば特に制限はなく、炭酸レーザー以外の気体レーザー、YAGレーザーなどの固体レーザー、半導体レーザーなどを樹脂シートの材質に応じて適宜使用することができる。
また、使用するレーザーの出力は3〜100Wの範囲が好ましい。出力が3W未満であれば、ノッチの形成に長時間を要する場合があり、100Wを超えると、レーザー装置が高価になる傾向がある。また、ノッチおよび開封案内線を形成するために、当該箇所に対してレーザーを走査させる回数は適宜設定できるが、例えば、レーザーの出力が上記範囲であり、図示例のようなノッチと開封案内線を形成する場合、ノッチの形成にはレーザーを往復で3〜10回程度走査させ、開封案内線の形成にはレーザーを往復で1〜2回走査させる。
【0030】
以上のように、包装容器10として、内層がレーザーを吸収しにくいLLDPE層などからなり、外層がレーザーを吸収しやすいPET層などからなる積層シートを使用すると、上述したレーザー照射によってノッチと開封案内線とを連続的に、容易に、かつ精度よく製造できる。また、包装容器10のうち、少なくともノッチと開封案内線とが形成される部分が、このような積層シートからなれば、上述のレーザー照射でこれらを形成可能である。しかしながら、包装容器10の材質は特にこれらに限定されず、充填される流動性内容物の性質などに応じて適宜選択することができる。例えば、包装容器10を、レーザーを吸収しにくいような材質のみから形成してもよい。その場合には、刃型を用いてノッチを機械的に形成し、さらにカッタなどで表面を機械的に傷つけて凹状に形成することなどにより開封案内線を形成することができる。
【0031】
本発明の注出口付き包装容器は、胴部の表裏2枚の合成樹脂フィルム、及び底部の2つ折りに折り畳んだ合成樹脂フィルムには、従来から常用されている素材、例えば二軸延伸ポリプロピレンフィルム、二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリエステルフィルム、エチレン−ビニルアルコール共重合体フィルムなどの各種フィルムを基材とし、これらの基材フィルムに、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンなどのオレフィン系の熱接着樹脂をシーラント層として積層した複合フィルムが用いられる。この場合、基材には上記した各種フィルムを、流動性内容物の保護性を高めるために複数積層してもよく、更にはアルミニウム箔などの金属薄膜層を使用してもよい。また、本発明の注出口付き包装容器の構造は特に制限がないが、流動性内容物の充填後は自立可能なスタンディングパウチ形式の包装容器が好ましい。
【0032】
本発明に係わる注出口付き包装容器で使用される樹脂シートの一例としては、その外層が、例えば厚さ12〜25μmの二軸延伸のポリエチレンテレフタレート(PET)層や、厚さ15〜25μmの二軸延伸のポリアミド系樹脂層であり、内層が、例えば厚さ100〜150μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)層からなる積層シートであって、ウェットラミネーション法、ドライラミネーション法、無溶剤型ドライラミネーション法、押出ラミネーション法、共押出ラミネーション法などで製造される。
【符号の説明】
【0033】
1…側面周縁部のヒートシール部、2…底部のヒートシール部、3…充填口、3a…充填口のヒートシール部、4…吊り下げ孔、5…注出口、6…注出口の開封用つまみ、7…開封案内線、8a,8b…ノッチ、9,24…通気管、10…注出口付き包装容器、11…通気孔、14,15…胴部の樹脂フィルム、16…拡管具(パイプ)、20…プラスチック製のボトル容器、21…ノズル、22…基部、23…排出口、25…連結部、26…ノズル先端部、27…キャップ、30…スパウト、40…流動性内容物、41…流動性内容物の上表面(液面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注出口を上部の隅部に備えてなる詰替え用の包装容器において、当該包装容器内の流動性内容物を他の容器に詰替える時に、前記注出口を開封して当該包装容器を倒立させた状態で、前記包装容器の外部から前記流動性内容物の上表面の位置よりも上方の空隙に大気を導入するための、通気管を内蔵してなることを特徴とする注出口付き包装容器。
【請求項2】
前記注出口の位置と対角線上の下部隅部の周縁部に、吊り下げ孔を配設してなることを特徴とする請求項1に記載の注出口付き包装容器。
【請求項3】
前記注出口が周縁部のヒートシールにより形成され、前記通気管の一方の端が前記注出口内に配置され、前記通気管の他方の端が前記包装容器内の前記注出口と対向する下部隅部の近傍に配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の注出口付き包装容器。
【請求項4】
前記注出口にはエンボス加工が施されているか、または拡管具が挿入されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の注出口付き包装容器。
【請求項5】
前記注出口が成形樹脂からなるスパウトであり、前記通気管の一方の端が前記スパウトの排出口内に配置され、前記通気管の他方の端が前記包装容器内の前記注出口と対向する下部隅部の近傍に配置されてなることを特徴とする請求項1または2に記載の注出口付き包装容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−81993(P2012−81993A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230602(P2010−230602)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】