説明

注出栓

【課題】容器の内圧上昇を軽減して好適な範囲での内容物の注出が可能な注出栓を提供する。
【解決手段】本発明は、容器口部20aに固定保持され、先端開孔2bを通して内容液を流出させる注出筒体2と、注出筒体2の内側に弾性部材4を介して支持され、注出筒体2の内側座面F12に当接して先端開孔2bを密閉状態に維持する弁体5とを備え、弁体5に注出筒体の先端開孔2bを通り抜けて外界に露出すると共に該露出部分の押し込みによって弁体5を注出筒体座面F12から離反させて先端開孔2bを開放する押し込み突起5bを設け、突起5bの先端開孔Aを通して外界に通じさせる内部通路5dを弁体5に形成すると共に、弁体5の下側に、当該弁体5との間に内部空間Rを形成する部材6を設け、この部材6に、容器口部20aを内部空間Rに通じさせる第1小孔7を形成すると共に、弁体5に、通路5dを通して内部空間Rを外界に通じさせる第2小孔8を形成し、更に内部空間Rに、ボール弁Bを配置したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部を下向きにして傾倒させるか、容器を倒立姿勢に保持して先端開孔の突起を押し込むことにより容器の内容物を取り出す注出栓に関するものである。
【背景技術】
【0002】
先端開孔から突出させた突起を押し込むことにより容器の内容物を取り出す注出栓は、押し込み動作を解除すると弾性部材の反発力により突起が初期位置へとすぐさま復元して先端開孔を閉じることが可能であり、液ダレがなく、しかも容器の内容物が外気に触れるのを極力避けることができる利点があり化粧料や薬剤を充填する容器に多用されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】実用新案登録第2553493号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、こうした注出栓は、例えば、保管時に容器内で温度上昇が生じた場合など、容器の内圧が上昇するため、そのまま蓋体を開けて注出を行うと、内容液が多量に注出されてしまったり、内容液が勢いよく注出され飛び散ってしまうという問題があった。
【0004】
本発明の解決すべき課題は、容器の内圧上昇に伴い内容物が過度に注出されることにあり、本発明の目的とするところは、注出時における容器の内圧上昇を軽減して好適な範囲での内容物の注出が可能な注出栓を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、容器の口部に固定保持され、先端開孔を通して容器の内容物を外界に向けて流出させる注出筒体と、この注出筒体の内側に弾性部材を介して支持され、当該注出筒体の内側座面に当接して先端開孔を密閉状態に維持する流量調整用弁体とを備え、この流量調整用弁体に、注出筒体の先端開孔を通り抜けて外界に露出すると共に該露出部分の押し込みによって流量調整用弁体を注出筒体の内側座面から離反させて先端開孔を開放する押し込み突起を設け、
この押し込み突起の先端開孔を通して外界に通じさせる内部通路を流量調整用弁体に形成すると共に、
当該流量調整用弁体の下側に、当該弁体との間に内部空間を形成する部材を設け、
この部材に、容器の口部を前記内部空間に通じさせる第1の小孔を形成すると共に、
当該流量調整用弁体に、前記内部通路を通して前記内部空間を外界に通じさせる第2の小孔を形成したことを特徴とするものである。
【0006】
本発明に係る第1及び第2の小孔はそれぞれ、空気の流通を許容する一方、内溶液の流通を妨げるように設定されるものであることが好ましい。但し、2つの小孔の横断面積(例えば、丸孔の場合には「直径」)については、互いに同一であるとしても、いずれか一方を他方により大きくしてもよい。更に、本発明では、前記内部空間に、ボール弁を配置することができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器の内圧が高まっても、その内圧は、第1の小孔から内部空間に導入された後、第2の小孔を介して内部通路を通って押し込み突起の先端開孔から外界に逃げることになる。従って、本発明によれば、容器の内圧上昇を軽減して好適な範囲での内容物の注出が可能になる。
【0008】
また、本発明では、第1の小孔は内部空間に通じ、この内部空間は更に第2の小孔を経て外界に通じるため、第1の小孔より内溶液が流れ込んだときでも、当該内部空間が液溜まりとして機能することで、押し込み突起の先端開孔から迅速に滴下されることなく、その滴下は、一定の時間まで遅延する。このため、本発明では、第1の小孔より内溶液が流れ込んだ場合でも、液ダレが生じ難い。
【0009】
加えて、本発明では、内部空間にボール弁を配置すれば、第2の小孔からの液ダレをより確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明である注出栓を詳細に説明する。
【0011】
図1は、本発明の一形態である注出栓1を備えた塗布容器を蓋体と共に一部断面で示す正面図である。また、図2は、同形態において、蓋体を取り外した状態を一部断面で示す正面図である。図3,4はそれぞれ、図2の要部断面図及び、その塗布状態を一部断面で示す側面図である。
【0012】
符号2は、注出栓1の基本骨格をなす注出筒体である。この注出筒体2は、先端に向けて径が漸次小さくなる先細り形状(ノズル形状)を有している。また、注出筒体2は、図3に示すように、その内側に内部通路2aが形成され、先端部には、当該内部通路2aに繋がり内溶液を外界に向けて流出させる先端開孔2bが形成されている。
【0013】
更に、注出筒体2には、その外面にフランジ3が一体に設けられている。このフランジ3は、容器20の口部20aの上端面F20に当接して、当該フランジ3との相互間をシールすると共に、容器口部20aに対して注出筒体2を位置決めするものである。
【0014】
これにより、注出筒体2は、フランジ3によってシールされつつ、フランジ3よりも下側部分2cの外側に一体に設けた凸部2dが容器口部20aの内側に嵌合することにより、容器口部20aに固定保持される。なお、注出筒体2は、凸形状同士又は凹凸形状の組み合わせによるアンダーカットの如き手段や、圧入、ねじ止め等の既存の手段によって、容器口部20aに固定保持することができる。
【0015】
符号4は、注出筒体2の内側(内部通路2a)に配置された弾性部材(樹脂製スプリング等)である。この弾性部材4は、弾性部本体(スプリング本体)4aと、このスプリング本体4aに一体に連結して当該スプリング本体4aを支持する中空の環状基部4bからなる。
【0016】
符号5は、弾性部材4(スプリング本体4a)に一体に保持された流量調整用の弁体(以下、「流量調整用弁体」という)である。流量調整用弁体5は、注出筒体2の内部通路2aに設けられた内側座面F12に当接するテーパー面F15を有し、弾性部材4からの付勢力により先端開孔2bを密閉状態に維持する。
【0017】
流量調整用弁体5には、押し込み突起(以下、「突起」という)5bが一体に設けられている。突起5bは、注出筒体2の先端開孔2bを通り抜けて外界に露出する。また、突起5bの外周壁には、内溶液を流出させるための通路を形成する複数の縦溝5cが形成されている。
【0018】
更に、流量調整用弁体5には、突起5bの先端開孔Aを通して外界に通じさせる内部通路5dが形成されている。また、流量調整用弁体5は、その下側から環状体5eが垂下して弾性部材4(スプリング本体4a)と一体に繋がる。なお、本形態では、流量調整用弁体5、弾性部材4、押し込み突起5bを一体に成形しているが、本発明に従えば、それぞれ別体に成形したものを組み合わせても良い。
【0019】
更に、流量調整用弁体5には、その下側に、当該弁体5との間に内部空間Rを形成する凹状部材6が設けられている。凹状部材6は、環状体5eの内側に嵌合する周壁6aを有し、その下端が底壁6bにより封止されている。これにより、弁体5に凹状部材6を嵌合させると、その相互間に内部空間Rが形成される。
【0020】
また、底壁6bには、容器口部20aを内部空間Rに通じさせる第1の小孔(以下、「第1小孔」という)7が形成されている。第1小孔7は、内部空間Rの横断面積Drよりも小さな横断面積D1で構成されている。
【0021】
これに対し、弁体5には、内部通路5dを通して内部空間Rを外界に通じさせる第2の小孔(以下、「第2小孔」という)8が形成されている。第2小孔8は、内部通路5dの横断面積Dd及び内部空間Rの横断面積Drよりも小さな横断面積D2で構成されている。
【0022】
第1小孔7及び第2小孔8はそれぞれ、空気の流通を許容する一方、内溶液の流通を妨げるように設定されている。但し、第1小孔7及び第2小孔8の横断面積(例えば、丸孔の場合には「直径」)D1,D2については、互いに同一であるとしても、いずれか一方を他方により大きくしてもよい。
【0023】
図1に示す符号9は、装着筒9bが容器口部20aに螺着される蓋体である。装着筒9bには、注出栓1の上側に配置される天壁9aが一体に繋がる。天壁9aには、同図に示すように、蓋体9を閉めた状態で注出筒体2に当接して当該注出筒体2を密閉状態に維持する筒状体9cが一体に垂下して設けられている。
【0024】
本発明によれば、容器20の内圧が高まっても、その内圧は、第1小孔7から内部空間Rに導入された後、第2小孔8を介して内部通路5dを通って先端開孔Aから外界に逃げることになる。従って、本発明によれば、容器20の内圧上昇を軽減して好適な範囲での内容物の注出が可能になる。
【0025】
また、本発明では、第1小孔7は内部空間Rに通じ、この内部空間Rは更に第2小孔8を経て外界に通じるため、図4に示すように、容器20を倒立させて塗布を行うことで、第1小孔7より内溶液が流れ込んだときでも、当該内部空間Rが液溜まりとして機能することで、先端開孔Aから迅速に滴下されることなく、その滴下は、一定の時間まで遅延する。このため、本発明では、第1小孔7より内溶液が流れ込んだ場合でも、液ダレが生じ難い。
【0026】
図5は、本発明の他の形態である注出栓1を備えた塗布容器の要部拡大断面図及び、その塗布状態を一部断面で示す側面図である。なお、以下の説明において、図1〜4と同一部分は同一符号をもって、その説明を省略する。
【0027】
本形態では、凹状部材6は、その周壁6aが、環状体5eの内側に形成された段部5fに嵌合することで、その周壁6aの内周面が環状体5eの内周面と同一平面をなすことで、内部空間Rを形成している。
【0028】
加えて、内部空間Rには、ボール弁Bが配置されている。これにより、容器20を完全に倒立させた状態で塗布を行っても、ボール弁Bが自重により落下することで、図6に示すように、第2小孔8を封止することができる。従って、本形態では、完全に倒立させた状態で注出を行ったときの液ダレを、より確実に防止することができる。
【0029】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、各形態の構成は、互いに適宜組み合わせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、化粧料や薬剤を充填する容器の注出栓として採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一形態である注出栓を備えた塗布容器を蓋体と共に一部断面で示す正面図である。
【図2】同形態において、蓋体を取り外した状態を一部断面で示す正面図である。
【図3】図2の要部拡大断面図である。
【図4】同形態において、その塗布状態を一部断面で示す側面図である。
【図5】本発明の他の形態である注出栓1を備えた塗布容器の要部拡大断面図である。
【図6】同形態において、その塗布状態を一部断面で示す側面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 注出栓
2 注出筒体
2a 内部通路
2b 先端開孔
2c 注出筒体下側部分
2d 凸部
3 フランジ
4 弾性部材
4a スプリング本体
4b 中空の環状基部
5 流量調整用弁体
5b 押し込み突起
5c 縦溝
5d 内部通路
6 凹状部材
6a 周壁
6b 底壁
7 第1小孔
8 第2小孔
9 蓋体
20 容器
20a 容器口部
A 押し込み突起先端開孔
R 内部空間
12 注出筒体内側座面
15 流量調整用弁体側テーパー面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に固定保持され、先端開孔を通して容器の内容物を外界に向けて流出させる注出筒体と、この注出筒体の内側に弾性部材を介して支持され、当該注出筒体の内側座面に当接して先端開孔を密閉状態に維持する流量調整用弁体とを備え、
この流量調整用弁体に、注出筒体の先端開孔を通り抜けて外界に露出すると共に該露出部分の押し込みによって流量調整用弁体を注出筒体の内側座面から離反させて先端開孔を開放する押し込み突起を設け、
この押し込み突起の先端開孔を通して外界に通じさせる内部通路を流量調整用弁体に形成すると共に、
当該流量調整用弁体の下側に、当該弁体との間に内部空間を形成する部材を設け、
この部材に、容器の口部を前記内部空間に通じさせる第1の小孔を形成すると共に、
当該流量調整用弁体に、前記内部通路を通して前記内部空間を外界に通じさせる第2の小孔を形成したことを特徴とする注出栓。
【請求項2】
請求項1において、前記内部空間に、ボール弁を配置したことを特徴とする注出栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−30665(P2010−30665A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197521(P2008−197521)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】