説明

注射器用加熱装置

【課題】本発明は、加熱装置に関する。
【解決手段】本発明の注射器用加熱装置は、中空構造を有する本体及び該本体に設置された加熱ユニットを含む。前記加熱ユニットは加熱素子と、該加熱素子と電気的に接続され、間隔を置いて設置された少なくとも二つの電極を含む。前記加熱素子は複数のカーボンナノチューブのみからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置に関し、特に注射器用加熱装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
医療の外科手術において、輸液容器内の液体を患者に送る管理が重要であり、患者の体温を保持することは、所定の原則及び所定の技術標準を有する。特に、手術の前、手術中、手術の後の各々の階段に、体温の過度の低下又は他の病気の発症を防止するために、患者の体温を、正常の生理体温に保持しなければならない。従って、医療の操作において、通常は、注射液を加熱することを介して、該注射液の温度を患者に適した生理体温に保持するようにする。
【0003】
従来技術において、前記注射液を昇温させるために、輸液容器又は輸液チューブを熱水袋又は熱いタオルに直接に置き、注射液を加熱していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記方法で注射液を加熱する場合、前記注射液の温度が安定しない。前記温度が高くなる時に、前記注射液における薬が分解しやすく、また、使用する時に、前記熱水袋又は熱いタオルを常に入れ替える必要があり、不便であるという欠点がある。
【0006】
従って、本発明は、簡単で、便利で、安定的に加熱することができる注射器用加熱装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
注射器用加熱装置は、中空構造を有する本体と、該本体に設置された加熱ユニットと、を含む。前記加熱ユニットが、加熱素子と、該加熱素子と電気的に接続され、間隔を置いた少なくとも二つの電極と、を含む。前記加熱素子が複数のカーボンナノチューブのみからなる。
【0008】
前記本体の側面に開口が設置され、該開口の幅が注射液を収容する包装容器又は輸液チューブの直径より小さく、前記中空構造が前記包装容器又は輸液チューブを収容することに用いられる。
【0009】
前記加熱素子が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含み、各々のカーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。
【発明の効果】
【0010】
従来の注射器用加熱装置と比べると、本発明の注射器用加熱装置には、下記の優れた点がある。
【0011】
前記注射器用加熱装置は、前記本体を前記包装容器又は輸液チューブに直接固定することによって、注射液を加熱する。前記加熱素子に電流を流す場合、該加熱素子の抵抗が不変であり、該加熱素子に印加する電圧が不変であるので、該加熱素子から発生する熱量も不変である。従って、前記注射液を加熱する温度が不変であり、安定であり、医学においての注射液を加熱する技術標準を達成することができる。また、前記注射液を加熱する温度が便利に制御することができる。
【0012】
前記注射器用加熱装置において、前記加熱素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一的に配列され、該加熱素子が均一な厚さ及び抵抗を有するので、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができる。前記カーボンナノチューブが電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が、高いので、前記加熱装置は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0013】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブが、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該加熱素子は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、前記本体が柔らかい材料からなる場合、柔軟性の注射器用加熱装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る注射器用加熱装置の構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例1に係る注射器用加熱装置を展開した構造を示す図である。
【図3】本発明の実施例1に係る注射器用加熱装置における、ドローン構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図4】ドローン構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントの構造を示す図である。
【図5】図3中のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを引き出す見取り図である。
【図6】本発明の実施例に係る加熱装置における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図7】本発明の実施例に係る加熱装置における、プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが等方的に配列されたカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図8】本発明の実施例に係る加熱装置における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図9】本発明の実施例に係る加熱装置における、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの写真である。
【図10】ろ過された綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体の写真である。
【図11】本発明の実施例に係る加熱装置における、超長構造カーボンナノチューブフィルムのSEM写真である。
【図12】本発明の実施例に係る非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図13】本発明の実施例に係るねじれ状のカーボンナノチューブワイヤのSEM写真である。
【図14】本発明の実施例2に係る注射器用加熱装置の構造を示す図である。
【図15】本発明の実施例2に係る注射器用加熱装置を展開した構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施例について説明する。
【0016】
(実施例1)
図1及び図2を参照すると、本実施例は、注射器用加熱装置100を提供する。該注射器用加熱装置100は、本体10、該本体10に設置された加熱ユニット11および保護ユニット12を含む。前記加熱ユニット11は、前記本体10と前記保護ユニット12との間に設置する。前記保護ユニット12は、前記加熱ユニット11を保護することに用いられる。
【0017】
前記注射器は、筋肉注射用注射器、連続注射器又は点滴注射器である。前記筋肉注射用注射器及び前記連続注射器は、基本的に同じ構造を有し、一般的に、注射筒及び該注射筒に繋げられた注射針を含む。前記点滴注射器は、注射液を収容する包装容器、前記包装容器に繋げられた輸液チューブ及び、前記輸液チューブに繋げられた注射針を含む。
【0018】
前記本体10は、電気絶縁の材料からなる。該電気絶縁の材料は、例えば、セラミックス、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリエチレンなどの硬い材料、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ基及び不飽和ポリエステルなどの熱硬化性ポリマー及び木板である。前記本体10は、例えば、布、シリコンゴム、皮革、紙、柔らかいプラスチックなどの柔らかい材料からなることができる。前記本体10が硬い材料からなる場合、該本体10は、中空構造を有する。該本体10の中空構造の形状及び大きさは前記包装容器又は前記輸液チューブの形状及び大きさと基本的に同じである。前記本体の側面に開口を有し、該開口と前記中空構造とが貫通している。前記本体は、前記包装容器又は前記輸液チューブを囲むことができるので、該本体と前記包装容器又は前記輸液チューブとの接触面積が大きくなり、加熱効率が高くなる。前記本体10が柔らかい材料からなる場合、該本体10をシート状に設計し、該シート状の本体10が前記包装容器又は前記輸液チューブに被覆されることもできる。
【0019】
本実施例において、前記本体10は、ポリカーボネートからなり、中空構造を有する円柱形の構造である。前記本体10の形状は、前記包装容器又は前記輸液チューブの形状に合わせて製造することができる。前記包装容器の断面が長方形である場合、前記本体10は、長方形の中空構造を有する。前記本体10は、その側面に開口101を有し、該開口101の幅が前記包装容器又は前記輸液チューブの断面の直径より小さい。前記開口101の幅が前記包装容器又は前記輸液チューブの断面の直径より小さいので、前記包装容器又は前記輸液チューブを前記本体10における中空構造の中に置く場合、該本体10は、前記包装容器又は前記輸液チューブを挟むことができる。
【0020】
前記加熱ユニット11は、加熱素子111、第一電極112及び第二電極113を含む。前記第一電極112及び第二電極113は、それぞれ、間隔を置いて設置され、前記加熱素子111と電気的に接続される。前記加熱素子111は、前記本体10の裏表面又は外表面に設置してもよく、該本体10の内部に設置してもよい。本実施例において、前記加熱素子111は、前記本体10の裏表面に設置される。前記加熱素子111は、前記本体10の裏表面に設置される場合、該本体10は、熱絶縁材料を採用し、前記保護ユニット12は、熱伝導性が優れた材料を採用することが好ましい。また、前記加熱素子111が前記本体10の外表面又は内部に設置される場合、前記本体10は、熱伝導性が優れた熱伝導材料を採用することが好ましい。
【0021】
前記加熱素子111は、カーボンナノチューブ構造体である。該カーボンナノチューブ構造体は、自立構造を有する。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ構造体を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ構造体の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ構造体を懸架させることができることを意味する。前記カーボンナノチューブ構造体は、複数のカーボンナノチューブを含み、該複数のカーボンナノチューブが分子間力で接続され、均一に分布されるので、該カーボンナノチューブ構造体が所定の形状を有する。前記カーボンナノチューブ構造体は、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブの一種又は多種である。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1.0ナノメートル〜50ナノメートルであり、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5ナノメートル〜50ナノメートルである。
【0022】
前記カーボンナノチューブ構造体は、膜状のカーボンナノチューブ構造体又は、少なくとも一つの線状のカーボンナノチューブ構造体を含む。
【0023】
前記カーボンナノチューブ構造体は、膜状のカーボンナノチューブ構造体である場合、該膜状のカーボンナノチューブ構造体の厚さは、0.5ナノメートル〜1ミリメートルであり、50ナノメートルであることが好ましい。前記膜状のカーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含む。
【0024】
前記カーボンナノチューブフィルムは、均一的に分布された複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブは、分子間力で結合されている。前記複数のカーボンナノチューブが配向し又は配向せずに配置されている。前記複数のカーボンナノチューブの配列方式により、前記カーボンナノチューブフィルムは非配向型のカーボンナノチューブフィルム及び配向型のカーボンナノチューブフィルムの二種に分類される。本実施例における非配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、カーボンナノチューブが異なる方向に沿って配置され、又は絡み合っている。配向型のカーボンナノチューブフィルムでは、前記複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列している。又は、配向型のカーボンナノチューブフィルムにおいて、配向型のカーボンナノチューブフィルムが二つ以上の領域に分割される場合、各々の領域における複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されている。この場合、異なる領域におけるカーボンナノチューブの配列方向は異なる。
【0025】
本発明のカーボンナノチューブフィルムとしては、以下の(一)から(四)のものが挙げられる。
【0026】
(一)ドローン構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。図3を参照すると、単一の前記ドローン構造カーボンナノチューブフィルム143aは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)から引き出して得られ、自立構造を有したものである。単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。前記カーボンナノチューブがその軸向に沿って、優れた導電性を有するので、該ドローン構造カーボンナノチューブフィルムを前記加熱素子111とする場合、前記カーボンナノチューブは、前記第一電極112から前記第二電極114へ延伸するように配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、その厚さが0.5ナノメートル〜100マイクロメートルであり、その幅が前記カーボンナノチューブアレイの大きさと関係があり、その長さが制限されない。
【0027】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルム143aにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0028】
さらに、単一の前記カーボンナノチューブフィルム143aは、複数のカーボンナノチューブセグメント143bを含む。図4を参照すると、前記複数のカーボンナノチューブセグメント143bは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメント143bは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブ145を含む。単一の前記カーボンナノチューブセグメント143bにおいて、前記複数のカーボンナノチューブ145の長さは実質的に同じである。前記カーボンナノチューブフィルム143aを有機溶剤に浸漬させることにより、前記カーボンナノチューブフィルム143aの強靭性及び機械強度を高めることができる。
【0029】
前記カーボンナノチューブ構造体は、積層された複数の前記カーボンナノチューブフィルム143aを含むことができる。この場合、隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aは、分子間力で結合されている。隣接する前記カーボンナノチューブフィルム143aにおけるカーボンナノチューブ145は、それぞれ0°〜90°の角度で交差している。又は、前記複数のカーボンナノチューブフィルム143aは、同一平面上に隙間なく並列されることもできる。
【0030】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は次のステップを含む。
【0031】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1を参照)であり、該超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献1)を成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0032】
本実施例において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0033】
本実施例により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0034】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0035】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続のカーボンナノチューブフィルムが形成される(図5を参照)。
【0036】
(二)プレシッド構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のプレシッド構造カーボンナノチューブフィルム(pressed carbon nanotube film)を含む。図6又は図7を参照すると、前記プレシッド構造カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブは、等方的に配列されているか、所定の方向に沿って配列されているか、または、異なる複数の方向に沿って配列されている。前記カーボンナノチューブフィルムは、押し器具を利用することにより、所定の圧力をかけて前記カーボンナノチューブアレイを押し、該カーボンナノチューブアレイを圧力で倒すことにより形成された、シート状の自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、前記押し器具の形状及び前記カーボンナノチューブアレイを押す方向により決められている。
【0037】
図6を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向して配列される。該カーボンナノチューブフィルムは、同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブを含む。ローラー形状を有する押し器具を利用して、同じ方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、基本的に同じ方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。また、ローラー形状を有する押し器具を利用して、異なる方向に沿って、前記カーボンナノチューブアレイを同時に押す場合、前記異なる方向に沿って、選択的な方向に配列されたカーボンナノチューブを含むカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0038】
図7を参照すると、単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが配向せずに配置される。該カーボンナノチューブフィルムは、等方的に配列されている複数のカーボンナノチューブを含む。隣接するカーボンナノチューブが分子間力で相互に引き合い、接続する。該カーボンナノチューブ構造体が平面等方性を有する。該カーボンナノチューブフィルムは、平面を有する押し器具を利用して、カーボンナノチューブアレイが成長された基板に垂直な方向に沿って前記カーボンナノチューブアレイを押すことにより形成される。
【0039】
前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの傾斜の程度は、前記カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブと該カーボンナノチューブフィルムの表面とは、角度αを成し、該角度αは0°以上15°以下である。好ましくは、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが該カーボンナノチューブフィルムの表面に平行する。前記圧力が大きくなるほど、前記傾斜の程度が大きくなる。前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、前記カーボンナノチューブアレイの高さ及び該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力に関係する。即ち、前記カーボンナノチューブアレイの高さが大きくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が小さくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが大きくなる。これとは逆に、カーボンナノチューブアレイの高さが小さくなるほど、また、該カーボンナノチューブアレイにかけた圧力が大きくなるほど、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さが小さくなる。
【0040】
(三)綿毛構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の綿毛構造カーボンナノチューブフィルム(flocculated carbon nanotube film)を含む。図8及び図9を参照すると、単一の前記綿毛構造カーボンナノチューブフィルムにおいて、複数のカーボンナノチューブは、相互に絡み合い、等方的に配列されている。前記カーボンナノチューブ構造体においては、前記複数のカーボンナノチューブが均一に分布されている。複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されている。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1マイクロメートル以上であり、10マイクロメートル〜900マイクロメートルであると好ましい。前記カーボンナノチューブ構造体は、自立構造の薄膜の形状に形成されている。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ構造体を独立して利用することができるという形態である。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で接近して、相互に絡み合って、カーボンナノチューブネット状に形成されている。前記複数のカーボンナノチューブは配向せずに配置されて、多くの微小な穴が形成されている。ここで、単一の前記微小な穴の直径が10マイクロメートル以下になる。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブは、相互に絡み合って配置されるので、該カーボンナノチューブ構造体は柔軟性に優れ、任意の形状に湾曲して形成させることができる。用途に応じて、前記カーボンナノチューブ構造体の長さ及び幅を調整することができる。前記カーボンナノチューブ構造体の厚さは、1.0マイクロメートル〜1.0ミリメートルであり、100ナノメートルであることが好ましい。
【0041】
前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0042】
第一ステップでは、前記カーボンナノチューブフィルムのもとになるカーボンナノチューブを提供する。
【0043】
ナイフのような工具で前記カーボンナノチューブを前記基材から剥離し、カーボンナノチューブの原料が形成される。前記カーボンナノチューブは、ある程度互いに絡み合っている。前記カーボンナノチューブの原料においては、該カーボンナノチューブの長さは、10マイクロメートル以上であり、200マイクロメートル〜900マイクロメートルであることが好ましい。
【0044】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブの原料を溶剤に浸漬し、該カーボンナノチューブの原料を処理して、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を形成する。
【0045】
前記カーボンナノチューブ原料を前記溶剤に浸漬した後、超音波式分散、又は高強度攪拌又は振動などの方法により、前記カーボンナノチューブを綿毛構造に形成させる。前記溶剤は水または揮発性有機溶剤である。超音波式分散方法により、カーボンナノチューブを含む溶剤に対して10〜30分間処理する。カーボンナノチューブは大きな比表面積を有し、カーボンナノチューブの間に大きな分子間力が生じるので、前記カーボンナノチューブはそれぞれもつれて、綿毛構造に形成されている。
【0046】
第三ステップでは、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶液をろ過して、最終的な綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を取り出す。
【0047】
まず、濾紙が置かれたファネルを提供する。前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を濾紙が置かれたファネルにつぎ、しばらく放置して、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が分離される。図10を参照すると、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが互いに絡み合って、不規則的な綿毛構造となる。
【0048】
分離された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を容器に置き、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を所定の形状に展開し、展開された前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に所定の圧力を加え、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体に残留した溶剤を焙り、或いは、該溶剤が自然に蒸発すると、図8と図9に示す綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。
【0049】
前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体が展開される面積によって、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度を制御できる。即ち、一定の体積を有する前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体は、展開される面積が大きくなるほど、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムの厚さと面密度が小さくなる。
【0050】
また、微多孔膜とエアーポンプファネル(Air−pumping Funnel)を利用して綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。具体的には、微多孔膜とエアーポンプファネルを提供し、前記綿毛構造のカーボンナノチューブ構造体を含む溶剤を、前記微多孔膜を通して前記エアーポンプファネルにつぎ、該エアーポンプファネルに抽気し、乾燥させると、綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記微多孔膜は、平滑な表面を有する。該微多孔膜において、単一の微小孔の直径は、0.22マイクロメートルにされている。前記微多孔膜は平滑な表面を有するので、前記カーボンナノチューブフィルムは容易に前記微多孔膜から剥落することができる。さらに、前記エアーポンプを利用することにより、前記綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムに空気圧をかけるので、均一な綿毛構造のカーボンナノチューブフィルムを形成させることができる。
【0051】
(四)超長構造カーボンナノチューブフィルム
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚の超長構造カーボンナノチューブフィルム(ultra−long carbon nanotube film)を含む。図11を参照すると、前記超長構造カーボンナノチューブフィルムは、ほぼ同じ長さを有する複数のカーボンナノチューブを含む。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブは、同じ方向に沿って、均一に並列されている。単一の前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは、10ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記複数のカーボンナノチューブは、それぞれ前記複数のカーボンナノチューブフィルムの表面に平行に配列され、相互に平行に配列されている。隣接する前記カーボンナノチューブは所定の距離で分離して設置される。前記距離は0マイクロメートル〜5マイクロメートルである。前記距離が0マイクロメートルである場合、隣接する前記カーボンナノチューブは分子間力で接続されている。前記カーボンナノチューブフィルムにおける各々の前記カーボンナノチューブの長さは、前記カーボンナノチューブフィルムの長さと基本的に同じである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは、1センチメートル以上であり、1センチメートル〜30センチメートルであることが好ましい。さらに、各々の前記カーボンナノチューブには結節がない。本実施形態において、前記カーボンナノチューブフィルムの厚さは10マイクロメートルである。単一の前記カーボンナノチューブの長さは10センチメートルである。
【0052】
前記カーボンナノチューブ構造体が線状のカーボンナノチューブ構造体である場合、該線状のカーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一本のカーボンナノチューブワイヤを含む。該カーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はそれらの組み合わせのいずれか一種からなる。
【0053】
図12を参照すると、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、端と端とが接続された複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記カーボンナノチューブセグメントは、同じ長さ及び幅を有する。さらに、各々の前記カーボンナノチューブセグメントに、同じ長さの複数のカーボンナノチューブが平行に配列されている。前記複数のカーボンナノチューブはカーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列されている。この場合、一本の前記カーボンナノチューブワイヤの直径は、0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。
【0054】
前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、カーボンナノチューブアレイから引き出してなるカーボンナノチューブフィルムを利用する。前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成する方法は、次の二種がある。第一種では、前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの長手方向に沿って、前記カーボンナノチューブフィルムを所定の幅で切断し、前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成する。第二種では、前記カーボンナノチューブフィルムを有機溶剤に浸漬させて、前記カーボンナノチューブフィルムを収縮させて前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤを形成することができる。
【0055】
図13を参照すると、前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブを含む。前記複数のカーボンナノチューブは、前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列されている。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブセグメント(図示せず)を含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメントは、分子間力で、端と端とが接続される。各々のカーボンナノチューブセグメントは、分子間力で端と端とが接続されたカーボンナノチューブを含む。前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、その長さが制限されず、その直径が0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0056】
前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)してねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成することができる。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0057】
前記線状のカーボンナノチューブ構造体が二本以上のカーボンナノチューブワイヤを含む場合、各々のカーボンナノチューブワイヤが平行に配列され、非ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体を形成する。或いは、各々のカーボンナノチューブワイヤが、螺旋状に配列され、ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体を形成する。即ち、前記非ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記線状のカーボンナノチューブ構造体の長手方向に沿って、配列される。前記ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、前記線状構造体の軸向に沿って、螺旋状に配列される。
【0058】
前記非ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。前記ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブワイヤは、非ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状のカーボンナノチューブワイヤである。
【0059】
前記線状のカーボンナノチューブ構造体の直径は、0.5ナノメートル〜2ミリメートルである。単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が大きく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が多いほど、前記線状のカーボンナノチューブ構造体の直径が大きくなる。逆に、単一の前記カーボンナノチューブワイヤの直径が小さく、前記カーボンナノチューブワイヤの数量が少ないほど、前記線状のカーボンナノチューブ構造体の直径が小さくなる。
【0060】
前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、該カーボンナノチューブワイヤからなる線状のカーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが配向して配列される。
【0061】
前記カーボンナノチューブ構造体が、複数の線状のカーボンナノチューブ構造体を含む場合、該複数の線状のカーボンナノチューブ構造体が前記本体10の表面又は内部に、平行に配列され、又は交叉して配列される。前記交叉して配列された線状のカーボンナノチューブ構造体の交叉する角度は、制限されない。
【0062】
本実施例において、前記加熱素子111は、膜状のカーボンナノチューブ構造体である。該膜状のカーボンナノチューブ構造体は、積層された複数のドローン構造カーボンナノチューブフィルムを含む。該膜状のカーボンナノチューブ構造体の厚さは、100マイクロメートルである。該膜状のカーボンナノチューブ構造体は、正方形であり、その長さ及び幅は、18センチメートルである。
【0063】
前記カーボンナノチューブ構造体が優れた柔軟性を有するので、何度も折ってもその構造を破壊することができない。従って、前記本体10が柔らかい材料からなる場合、前記注射器用加熱装置100は、任意の形状に湾曲することができ、携帯することが便利になる。また、実際の応用する時に、前記包装容器又は前記輸液チューブの外表面を容易に被覆することができる。
【0064】
前記膜状のカーボンナノチューブ構造体は、その厚さが10マイクロメートルより小さい場合、優れた透明度を有し、その透光率が95%以上である。前記線状のカーボンナノチューブ構造体は、その直径が10マイクロメートルより小さい場合、その透光率が95%以上である。前記線状のカーボンナノチューブ構造体において、隣接するカーボンナノチューブワイヤの間の距離を調節することによって、加熱素子111の透光率を変えることができる。前記本体10が例えば、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリプロピレン、ポリカーボネート、又はポリエチレンなどの透明材料からなり、前記第一電極112及び前記第二電極113は例えば、膜状のカーボンナノチューブ構造体又は線状のカーボンナノチューブ構造体などの透明材料からなる場合、前記注射器用加熱装置100は、透明の構造体となる。
【0065】
前記第一電極112及び前記第二電極113は、導電材料からなり、その形状が制限されず、導電フィルム、金属シート又は金属リード線である。前記第一電極112及び前記第二電極113は、導電フィルムである場合、前記注射器用加熱装置100の厚さを減少させることができる。前記導電フィルムの材料は、金属、合金、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アンチモンスズ(ATO)、銀ペースト、導電重合体又はカーボンナノチューブ構造体などである。前記金属は、アルミニウム、銅、タングステン、モリブデン、金、チタン、ネオジム、パラジウム又はセシウムなどである。前記合金は、前記金属の合金である。前記第一電極112及び前記第二電極113がカーボンナノチューブ構造体からなる場合、該カーボンナノチューブ構造体は、ドローン構造カーボンナノチューブフィルム、超長構造カーボンナノチューブフィルム、非ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体、ねじれ状の線状のカーボンナノチューブ構造体を含む。該カーボンナノチューブフィルム又は線状のカーボンナノチューブ構造体は、金属性を有するカーボンナノチューブを含むことが必要である。この場合、該カーボンナノチューブ構造体自体の接着性又は導電接着剤によって、前記加熱素子111の表面に固定できる。複数の前記第一電極112及び前記第二電極113を利用する場合、該複数の前記第一電極112及び前記第二電極113は、交替で間隔を置いて設置される。本実施例において、それぞれ一つの前記第一電極112及び一つの前記第二電極113を設置し、前記第一電極112及び第二電極113の材料がパラジウムフィルムであり、その厚さが1マイクロメートルである。前記パラジウムと前記カーボンナノチューブとは、優れた濡れ性を有するので、前記第一電極112及び前記第二電極113と前記加熱素子111との間に良好な電気的接触を形成し、オーミック接触抵抗を減少することができる。前記金属シート又は金属リード線の材料は、銅又はアルミニウムなどである。前記第一電極112及び前記第二電極113が金属シートである場合、該金属シートを、導電接着剤で前記加熱素子111の表面に固定することができる。
【0066】
前記第一電極112及び前記第二電極113は、前記加熱素子111におけるカーボンナノチューブ構造体と電気的に接続される。前記加熱素子111が作動する場合、前記第一電極112と前記第二電極113との間の短路を防止するために、該第一電極112と該第二電極113との間に所定の抵抗を形成させる。つまり、該第一電極112と該第二電極113とを、所定の距離を置いて設置しなければならない。前記第一電極112及び前記第二電極113は、物理堆積法、電気化学法又はシルクスクリーン印刷法などの方法で前記本体10の表面に形成される。本実施例において、前記第一電極112及び前記第二電極113は、シルクスクリーン印刷法で前記本体10の表面に形成され、前記加熱素子111と電気的に接続される。前記カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列する場合、前記カーボンナノチューブは、一つの電極から、もう一つの電極へ延伸するように配列されている。
【0067】
前記加熱ユニット11が損傷することを防止するために、保護ユニット12を利用して、前記加熱ユニット11を保護する。前記保護ユニット12の材料は制限されず、例えば、プラスチックなどの絶縁材料又は例えば金属などの導電性材料である。前記金属は、ステンレス、炭素鋼、銅、ニッケル、チタン、亜鉛、アルミニウムなどである。前記保護ユニット12が絶縁材料からなる場合、該保護ユニット12と前記加熱ユニット11とが直接接触し、又は、間隔を置いて設置することができる。前記保護ユニット12が導電性材料からなる場合、該保護ユニット12と前記加熱ユニット11とを絶縁させるために、該保護ユニット12と前記加熱ユニット11とを、間隔を置いて設置する。本実施例において、前記保護ユニット12は、透明のポリメタクリル酸メチル樹脂層であり、接着剤で前記本体10の表面に固定する。前記加熱ユニット11が前記本体10の内部に設置される場合、前記保護ユニット12を設置しないこともできる。
【0068】
前記注射器用加熱装置100は、更に、恒温装置13を含む。前記恒温装置13は、前記加熱ユニット11と電気的に接続され、前記加熱ユニット11に印加する電圧によって、該注射器用加熱装置100から発生した熱量を制御し、該注射器用加熱装置100で注射液を加熱するための温度を一定に保持できる。
【0069】
前記注射器用加熱装置100を利用する場合、前記本体10を前記包装容器又は輸液チューブに直接固定することによって、注射液を加熱する。前記加熱素子111に電流を流す場合、該加熱素子111の抵抗が一定であり、該加熱素子111に印加する電圧が一定であるので、該加熱素子111から発生する熱量も一定である。従って、前記注射液を加熱する温度が一定であり、医学においての注射液を加熱する技術標準を達成することができる。勿論、前記恒温装置13を利用して、前記注射器用加熱装置100から発生する熱量を制御することができ、精確に注射液を加熱する温度を制御することができる。
【0070】
(実施例2)
図14及び図15を参照すると、本実施例は、注射器用加熱装置200を提供する。該注射器用加熱装置200は、本体20、該本体20の内部に設置された加熱ユニット21含む。前記加熱ユニット21は、加熱素子211、三つの第一電極212、三つの第二電極213、第一導線22及び第二導線23を含む。前記加熱ユニット21と前記本体20とが一体成型である。即ち、前記加熱素子211、前記複数の第一電極212、前記複数の第二電極213、第一導線22及び第二導線23が前記本体20の内部に設置される。
【0071】
前記三つの第一電極212は、前記第一導線22と電気的に接続され、該第一導線22によって、並列接続し、“山”形の構造に形成される。前記三つの第二電極213が前記第二導線23によって、並列接続し、“山”形の構造が形成される。ある第一電極212に第一端子214が設置され、ある第二電極213に第二端子215が設置される。前記第一端子214及び前記第二端子215は、前記複数の第一電極212及び前記複数の第二電極213を電源と電気的に接続することに用いられる。前記複数の第一電極212及び前記複数の第二電極213は、交替で間隔を置いて前記加熱素子211の表面に設置されている。前記加熱素子211と電気的に接続され、正極及び負極として交替に配列している。前記構造は、前記加熱素子211に均一的に電圧を印加し、該加熱素子211の放熱を均一的とさせることができる。
【0072】
前記注射器用加熱装置200は、複数の第一電極212及び複数の第二電極213を含むので、該注射器用加熱装置200の抵抗及び、該注射器用加熱装置200の作動電圧が減少し、該注射器用加熱装置200を安全電圧下で作動できる。
【0073】
前記注射器用加熱装置において、前記加熱素子がカーボンナノチューブ構造体を含み、該カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブが均一的に配列され、該加熱素子が均一な厚さ及び抵抗を有するので、該加熱素子は、均一的に熱を放出することができる。前記カーボンナノチューブが電気エネルギーを熱エネルギーに転換する効率が高いので、前記加熱装置は、昇温速度が速く、熱応答速度が速く、熱交換速度が速い。
【0074】
前記加熱素子おけるカーボンナノチューブが、優れた力学性能、優れた靭性及び優れた機械強度を有するので、該加熱素子は、優れた力学性能、優れた靭性と機械強度を有し、使用寿命が長くなる。更に、前記本体が柔らかい材料からなる場合、柔軟性のある注射器用加熱装置を製造することができる。
【符号の説明】
【0075】
100、200 注射器用加熱装置
10、20 本体
11、21 加熱ユニット
12 保護ユニット
13 恒温装置
111、211 加熱素子
112、212 第一電極
113、213 第二電極
101 開口
143a カーボンナノチューブフィルム
143b カーボンナノチューブセグメント
22 第一導線
23 第二導線
214 第一端子
215 第二端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空構造を有する本体と、該本体に設置された加熱ユニットと、を含む注射器用加熱装置において、
前記加熱ユニットが、加熱素子と、該加熱素子と電気的に接続され、間隔を置いて設置された少なくとも二つの電極と、を含み、
前記加熱素子が複数のカーボンナノチューブのみからなることを特徴とする注射器用加熱装置。
【請求項2】
前記本体の側面に開口が設置され、該開口の幅が注射液を収容する包装容器又は輸液チューブの直径より小さく、前記中空構造が前記包装容器又は輸液チューブを収容することに用いられることを特徴とする、請求項1に記載の注射器用加熱装置。
【請求項3】
前記加熱素子が少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルムを含み、各々のカーボンナノチューブフィルムが複数のカーボンナノチューブからなり、該複数のカーボンナノチューブが同じ方向に沿って配列されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の注射器用加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−279698(P2010−279698A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126744(P2010−126744)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】