説明

洋風便器装置

【課題】長時間使用がなされない場合においてボウル部内の空気の滞留を防止する洋風便器装置を提供する。
【解決手段】ボウル部15内の換気を行う換気手段22と、便器の不使用状態が所定時間を越えたときには、前記換気手段を作動する制御手段11とを備えた構成としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋風便器装置に関し、詳しくは、ボウル部内の換気を行う機能を備えた洋風便器装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時において、洋風便器装置は、種々の装置を備えたものが提供されており、例えば、人体の在、不在を検知する人体検知センサからの信号に基づいて、便蓋・便座の開閉を自動で行う便蓋・便座自動開閉機構を備えたものや、便座の暖房装置、人体局部の洗浄装置や乾燥装置、ボウル部内の脱臭装置などを備えたものが知られている。例えば、特許文献1では、そのような脱臭装置を備えた脱臭便器が提案されている。
【0003】
図4は、特許文献1で提案された脱臭便器1を示し、排気ファンなどの強制排気手段2の作動によりボウル部3内の臭気を臭気吸込口4から吸引して脱臭路5内に流入させ、且つその臭気を排気口6から排水路7へと排出する際に、脱臭浄化手段8により脱臭路5内に薬品・触媒・イオン・オゾンなどの消臭・殺菌剤を直接供給し、脱臭路5内を通過する臭気の消臭・殺菌と共に、脱臭路5内壁や強制排気手段2等に付着した臭気や雑菌・不純成分等の消臭・殺菌を行う構成としている。
【0004】
ところで、洋風便器装置においては、臭気の拡散や埃等の侵入防止などの理由、あるいはインテリア性等の観点から使用後は、手動あるいは前記したように自動により便蓋は閉じられた状態となることが通常である。
頻繁に使用がなされて便蓋が頻繁に開放される場合は問題とならないが、長時間使用がなされない場合には、便蓋の閉じられた状態が長時間続くことでボウル部内の空気が滞留して、ボウル面やリム面などに付着した排泄物等に起因する細菌やカビの発生を助長するといった問題があった。また、それらに起因する悪臭がボウル部内に滞留し、次回使用する者にとって不快であった。
【特許文献1】実登2551868号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1で提案されている脱臭便器1によれば、強制排気手段2を作動させ脱臭浄化手段8による消臭・殺菌剤の供給により脱臭路5内を通過する臭気の消臭・殺菌と共に、脱臭路5内壁や強制排気手段2等に付着した臭気や雑菌・不純成分等の消臭・殺菌は可能となるが、スイッチ等の押下げにより強制排気手段2を作動させる構成としているので、前記したような長時間使用がなされない場合にはボウル部3内の空気の滞留を防ぐことはできない。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、長時間使用がなされない場合においてボウル部内の空気の滞留を防止する洋風便器装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の洋風便器装置は、ボウル部内の換気を行う換気手段と、便器の不使用状態が所定時間を越えたときには、前記換気手段を作動する制御手段とを備えたことを特徴とする。
ここに、ボウル部内とは、便蓋が閉じられた状態で形成される空間を意味するものである。
【0008】
請求項2では、請求項1において、前記換気手段は、便蓋を自動開閉する便蓋自動開閉機構で構成され、前記便蓋を開放させることにより前記ボウル部内の換気を行うことを特徴とする。
【0009】
請求項3では、請求項1において、前記換気手段は、人体の局部を乾燥する乾燥装置で構成され、前記乾燥装置を作動させることにより前記ボウル部内の換気を行うことを特徴とする。
【0010】
請求項4では、請求項1において、前記換気手段は、前記ボウル部内を脱臭する吸気口と排気口とを有した脱臭装置で構成され、前記脱臭装置を作動させることにより前記ボウル部内の換気を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1乃至4に記載の洋風便器装置によれば、便器の不使用状態が所定時間を越えたときには、ボウル部内の換気を行う換気手段を作動するので、長時間使用がなされない場合において、ボウル部内の空気の滞留を防止することができる。
また、ボウル部内の空気の滞留を防止できるので、ボウル部内での細菌やカビの発生や繁殖条件を阻害し、抑止できる。さらに、それらに起因する悪臭の発生を低減することができる。
【0012】
請求項2では、便蓋を開放させることによりボウル部内の換気を行うので、簡易な構成によりボウル部内の換気を行うことができる。
【0013】
請求項3では、乾燥装置の作動によりボウル部内の換気を行うので、強制的にボウル部内に滞留した空気をボウル部外に排出することができる。
【0014】
請求項4では、脱臭装置の作動によりボウル部内の換気を行うので、強制的に外気をボウル部内に導入することができ、換気を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至図3は、本実施形態に係る洋風便器装置を示し、図1は、本実施形態の洋風便器装置を示す概略斜視図、図2は、本実施形態に係る洋風便器装置の内部構成を示すブロック図、図3は、本実施形態に係る洋風便器装置で実行される換気機能の基本動作を示すフローチャートである。
【0016】
図1に示す洋風便器装置10では、便器本体19の後部に水洗タンクを備えていない、水道配管直結方式、いわゆるタンクレスタイプのものを図示しているが、水洗タンクを備えたものにも本発明の適用が可能である。
図例の便器本体19は、ボウル部15と、ボウル部15の上端に周設されたリム部12と、ボウル部15の外周に形設されたスカート部16と、便器本体19の後方に後述する制御手段を構成するCPU11や後述するボウル部15内の換気を行う換気手段22などの各種装置を内蔵する便蓋・便座設置部17と、便蓋・便座設置部17に開閉自在に枢着された便座14及び便蓋13と、スカート部16の後方にボウル部15への水洗用水を供給する吐出口などを内包するサイドカバー18を備えている。
尚、詳述は省略するが、洋風便器装置10は、ボウル部15に排泄された排泄物を流すための給水システム及び排水システムなどの便器装置として必要な他の構成を備えていることは当然である。
【0017】
本実施形態に係る洋風便器装置10は、便蓋・便座設置部17に配設された、人体の在、不在を検知する人体検知センサ20と、使用者の着座、離座を検知する着座センサ21とを更に備えており、人体検知センサ20が人体の在を検知すると、便蓋・便座設置部17に内蔵されている便蓋・便座自動開閉機構22a(図2参照)を作動し、便蓋13を開放、すなわち起立状態(図1に示す状態)とし、その後、所定時間、着座センサ21からの着座検知の信号がないと、便座14も起立状態とする。所定時間経過後、あるいは、人体検知センサ20が人体の不在を検知すると、再度、便蓋・便座自動開閉機構22aを作動して便蓋13、便座14を閉駆動し、更に、自動水洗システム(不図示)を作動して汚物を排出する構成としている。
【0018】
また、着座センサ21が使用者の着座を検知すると、便蓋・便座設置部17に内蔵されている脱臭装置22c(図2参照)を作動して、便蓋・便座設置部17の前方に開口しボウル部15内に臨む吸気口23cからボウル部15内の空気を吸い込み、排水路(不図示)内に開口する排気口24cから排気を行い、離座を検知すると、脱臭装置22cを停止する構成としている。
さらに、座位にて使用時に使用者の局部洗浄ボタン(不図示)などの操作により便蓋・便座設置部17に内蔵されている局部洗浄手段(不図示)を作動し、人体の局部を洗浄し、その後、乾燥装置22b(図2参照)を作動して、便蓋・便座設置部17の前方に開口しボウル部15内に臨む温風吐出口23bからボウル部15内へ加熱手段(不図示)で加熱された温風を吐出し、人体の局部を乾燥する構成としている。
尚、便蓋・便座自動開閉機構22a、脱臭装置22c、乾燥装置22bの具体的構成は省略するが、公知のものが適用可能である。
【0019】
次に、前記構成の洋風便器装置10における制御手段、換気手段について図2に基づいて詳細に説明する。
本実施形態では、ボウル部15内の換気を行う換気手段22として以下の3種の態様を適用している。
【0020】
第1の態様として、換気手段22は、便蓋・便座自動開閉機構22aで構成され、便蓋・便座自動開閉機構22aが便蓋13を開駆動し、便蓋13を例えば数分程度の所定時間、開放させることによりボウル部15内の換気を行う。
すなわち、ボウル部15内に滞留している空気は、便蓋13が開放されることによりボウル部15外へ拡散され、あるいはボウル部15内に外気が導入され換気が行われる。
この態様によれば、簡易な構成によりボウル部15内の換気を行うことができる。
ここで、便蓋13の開駆動とともに便座14の開駆動をしてもよく、また、開閉駆動を数回、繰り返し行う態様としてもよい。また、本実施形態では、便座14も自動開閉される構成としているが、少なくとも便蓋13を自動開閉する機構を備えておればよい。
【0021】
第2の態様として、換気手段22は、人体の局部を乾燥する乾燥装置22bで構成され、乾燥装置22bを例えば数分程度の所定時間作動して、温風吐出口23bから温風を吐出することにより、ボウル部15内の換気を行う。
すなわち、温風吐出口23bから吐出された温風(送風)は、便蓋13が閉じられた状態で、ボウル部15内に滞留している空気を循環させながら、ボウル部15内を通気し、便蓋13や便座14とリム部12やスカート部16との空隙からボウル部15外へ排出され、換気が行われる。
この態様によれば、強制的にボウル部15内に滞留した空気をボウル部15外に排出し、換気を行うことができる。
ここで、換気手段22として乾燥装置22bを作動する場合は、前記した加熱手段を作動させず、送風を温風吐出口23bから吐出する態様とすることが好ましい。これによれば、省電力が図れ、また細菌の繁殖をより効果的に抑止できる。
【0022】
第3の態様として、換気手段22は、ボウル部15内を脱臭する脱臭装置22cで構成され、脱臭装置22cを例えば数分程度の所定時間作動して、吸気口23cからボウル部15内の空気を吸い込み、排気口24cから排気を行うことにより、ボウル部15内の換気を行う。
すなわち、便蓋13が閉じられた状態で、ボウル部15内に滞留している空気は、脱臭装置22cの作動により、便蓋13や便座14とリム部12やスカート部16との空隙からボウル部15外の空気がボウル部15内に導入され、ボウル部15内に滞留している空気を循環させながら、吸気口23cに吸い込まれ、排気口24cから排気され、排水路を介して便器外へ排出される。
ここで、換気手段22として脱臭装置22cを作動する態様の場合は、少なくとも吸気口23cからボウル部15内の空気を吸い込み、排気口24cから排気が可能な構成の脱臭装置22cであればよい。
この態様によれば、強制的に外気をボウル部15内に導入することができ、換気を行うことができる。
また、排水路内に開口する排気口24cから排気し、排水路を介してボウル部15内の空気が便器外へ排出されるので、ボウル部15内に滞留した空気がトイレ室内に拡散することを防止できる。
【0023】
尚、図2では、換気手段22として、前記した3種の態様に必要な3種の換気手段を図示しているが、少なくともいずれか1種の換気手段を備える構成とすればよく、また、前記した3種の態様を組み合わせて各換気手段を作動する態様としてもよい。
例えば、便蓋13を開駆動するとともに乾燥装置22bを作動する、あるいは、便蓋13を開駆動するとともに脱臭装置22cを作動する態様としてもよい。
【0024】
前記態様の各換気手段22は、制御手段を構成するCPU11の制御により作動される。
詳しくは、CPU11では、人体検知センサ20からの検知信号に基づいて、洋風便器装置10の使用を検知すると、内蔵されたクロックタイマをリセットし、直ぐに起動させて時間を計測する。すなわち、洋風便器装置10の使用検知からの経過時間を計測し、その経過時間を洋風便器装置10の使用がなされない状態、すなわち不使用状態とする。
CPU11の記憶手段(不図示)には、予めあるいは使用者により設定された所定時間が記憶されており、CPU11は、その所定時間と前記不使用状態との比較、判別を行い該不使用状態が所定時間を越えたときには、換気手段22を作動する構成としている。
ここで、前記所定時間は、例えば、夏場であれば12時間、冬場であれば48時間などとして、温度や湿度条件などに応じて、細菌やカビの発生や繁殖条件を阻害し抑止可能な時間が設定される。
【0025】
尚、換気手段22を作動後、CPU11のクロックタイマをリセットし、直ぐに起動させて時間を計測し、その経過時間を洋風便器装置10の使用がなされない状態、すなわち不使用状態とし、その不使用状態が前記所定時間を越える毎に、繰り返し換気手段22を作動する構成としてもよい。
【0026】
また、洋風便器装置10の使用検知手段として、本実施形態では、人体検知センサ20を適用しているが、これに限られず、例えば、便蓋や便座の開閉センサ、水洗ボタンや水洗レバー、水洗音検知センサなど便器の使用検知が可能でCPU11に検知信号を送信できる構成のものであればどのようなものでもよい。
【0027】
次に、前記のように構成された洋風便器装置10におけるCPU11の制御による換気機能の基本動作を図3のフローチャートに基づいて説明する。
まず、便器の使用を検知しない間は、その検知がなされるまで待機をし、便器の使用を検知すると、CPU11のクロックタイマをリセット/起動させて、その経過時間、すなわち不使用状態が前記所定時間を越えると、換気手段22を所定時間作動し、あるいは前記した便蓋13の開放により換気を行う場合は、所定時間開放又は所定回数開閉駆動を行い、換気手段22を停止し、あるいは前記した便蓋13の開放により換気を行う場合は、便蓋13を閉駆動し、ステップ100に戻り、再度、便器の使用検知がなされるまで待機する(ステップ100〜104)。
ステップ102において、便器使用検知からの経過時間、すなわち不使用状態が、前記所定時間を越えずに便器の使用を検知すると(ステップ105)、ステップ101に戻り、再度、CPU11のクロックタイマをリセット/起動させて前記したステップ102〜105を繰り返す。
【0028】
前記のように構成された洋風便器装置10によれば、所定時間以上、不使用状態が継続したときには、換気手段22を作動して、ボウル部15内の換気を行うので、ボウル部15内の空気の滞留を防止できる。また、ボウル部15内での細菌やカビの発生や繁殖条件を阻害し、抑止できる。さらに、それらに起因する悪臭の発生を低減することができる。
【0029】
尚、前記したように、ステップ104のあとに、タイマをリセット/起動させて、換気手段22の作動停止からの経過時間を計測し、その経過時間、すなわち不使用状態が便器の使用を検知することなく前記所定時間を越えると、換気手段22を繰り返し作動する構成としてもよい。これによれば、換気手段22の作動後、長時間便器の使用を検知しない場合でも換気手段22の作動がなされるので、長期間便器の使用がなされない場合でもボウル部15内の空気の滞留を防止することができる。
また、ステップ103において、換気手段22の作動中に、人体検知センサ20などにより便器の使用を検知、すなわち、トイレ室内への入室を検知すると、換気手段22を停止させる構成としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る洋風便器装置の実施形態の一例を示す概略斜視図である。
【図2】本発明に係る洋風便器装置の同実施形態における内部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る洋風便器装置の同実施形態で実行される換気機能の基本動作を示すフローチャートである。
【図4】従来例を示す図である。
【符号の説明】
【0031】
10 洋風便器装置
11 CPU(制御手段)
13 便蓋
15 ボウル部
22 換気手段
22a 便蓋・便座自動開閉機構(換気手段)
22b 乾燥装置(換気手段)
22c 脱臭装置(換気手段)
23c 吸気口
24c 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボウル部内の換気を行う換気手段と、便器の不使用状態が所定時間を越えたときには、前記換気手段を作動する制御手段とを備えたことを特徴とする洋風便器装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記換気手段は、便蓋を自動開閉する便蓋自動開閉機構で構成され、
前記便蓋を開放させることにより前記ボウル部内の換気を行うことを特徴とする洋風便器装置。
【請求項3】
請求項1において、
前記換気手段は、人体の局部を乾燥する乾燥装置で構成され、
前記乾燥装置を作動させることにより前記ボウル部内の換気を行うことを特徴とする洋風便器装置。
【請求項4】
請求項1において、
前記換気手段は、前記ボウル部内を脱臭する吸気口と排気口とを有した脱臭装置で構成され、
前記脱臭装置を作動させることにより前記ボウル部内の換気を行うことを特徴とする洋風便器装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−81928(P2008−81928A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259902(P2006−259902)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】