説明

洗い場床

【課題】優れた排水性及びクッション性を備えると共に、洗い場床を構成する各層間に空気溜まりが形成されることを抑制できることは勿論のこと、当該洗い場床を構成する表面材にクラックが生じることを防止することが可能な洗い場床を提供する。
【解決手段】基材10と、基材10の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材20と、クッション材20の上面に配設される表面材30を備え、基材10は、基材10の上面から下面に貫通形成され且つ基材10とクッション材20との間の空気を排出する空気排出孔18を備え、表面材30の上面には、表面材30の上面に荷重がかかった際に節となり、表面材30を下方に撓ませる撓み溝32と、撓み溝32によって相対的に肉厚となる肉厚部39とが形成され、上面視で、空気排出孔18の開口全体が肉厚部39によって掩蔽されてなる洗い場床1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の洗い場床に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浴室の洗い場床にクッション性を付与する構造が提案されている。この洗い場床は、通常、基材と、当該基材の上面に配置され且つクッション性を有するクッション材と、当該クッション材の上面を覆い且つ周縁部が前記基材に接着された表面材と、を備えた複数層によって構成されている。また、前記表面材として、強度を確保するための肉厚部と、可撓性を付与するための薄肉部とを有する表面材を配設し、前記肉厚部の厚さを、前記表面材に荷重が加わった際に、当該荷重が加わった部分が局所的に変形しない程度の厚さにすることで、洗い場床としての表面耐久性を向上すると共に、使用者に柔らかさを感じさせる洗い場床が紹介されている。(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなクッション性を備えた洗い場床は、衝撃を柔らげ、使用感を向上させるが、製造時に、前述した各層の間に空気溜まりが形成されやすく、各層間の密着が不十分となることがあるが、特許文献1では、前記各層間に空気溜まりが生じることについて何ら言及されておらず、前記空気溜まりの発生を抑制するための構造についても開示されていない。
【0004】
一方、前記各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制することが可能な洗い場床として、例えば、前記基材に、当該基材と表面材との間に溜まった空気を浴室外に逃がすことが可能な空気抜き流路を形成し、前記基材の表面に当該空気抜き流路の入口端部に連通する溝(空気排出溝)を形成した洗い場床が紹介されている。(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4174741号公報
【特許文献2】特開2009−102976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来の複数層からなる洗い場床は、例えば図5に示すように、基材10と、基材10の上面に配設されたクッション材20と、クッション材20の表面に配設された表面材30とを有しており、表面材30の上面(表面)には、表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、表面材30を下方に撓ませる撓み溝32が形成されている。また、基材10には、基材10と表面材30との間に溜まった空気を浴室外に逃がすため、基材10の上面から下面に貫通形成され空気排出孔18や、基材10の表面に形成された空気排出溝16が配設されている。ここで、空気排出孔18や空気排出溝16の位置と、撓み溝32との位置が上面視で一致すると、表面材30及びクッション材20の当該一致した領域は、図5に示すように、基材10によって下から支持されない状態となる。このため、表面材30及びクッション材20は、撓み溝32を節として、さらに下方に撓むようになり、撓み過ぎた際には、表面材30は、撓み溝32により薄肉となり、強度が比較的低いくなっている部分を起点として表面材30にクラックが生じる虞がある。
【0007】
前述した引用文献2に係る洗い場床は、基材に空気排出孔及び空気排出溝が形成され、表面層に排水流路(溝)が形成された構造を有しており、この発明は、複層構造の洗い場床における各層間に空気溜まりが形成されるのを抑制することを目的とするものであり、前記空気排出孔及び空気排出溝と、前記排水流路との位置が、上面視で一致した際に、当該表面材にクラックが生じ易くなることを解決するための発明ではない。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、優れた排水性及びクッション性を備えると共に、洗い場床を構成する各層間に空気溜まりが形成されることを抑制できることは勿論のこと、当該洗い場床を構成する表面材にクラックが生じることを防止することが可能な洗い場床を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するため本発明は、基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、前記基材は、当該基材の上面から下面に貫通形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する空気排出孔を備え、前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる撓み溝と、当該撓み溝によって相対的に肉厚となる肉厚部とが形成されてなり、上面視で、前記空気排出孔の開口全体が前記肉厚部によって掩蔽されてなる洗い場床を提供するものである。
【0010】
ここで、前記空気排出孔は、前記基材の上面から下面に貫通形成されているため、基材の空気排出孔が形成されている部分は、前記クッション材及び表面材からなる層を支持することができない。したがって、上面視で、前記空気排出孔と前記撓み溝とが一致している場合、先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓むと、撓み溝部分が深く下方に落ち込む可能性があり、この落ち込んだ部分を起点として表面材にクラックが生じる可能性が高くなる。
【0011】
本発明に係る洗い場床は、前記基材に形成されている空気排出孔の開口全体が、上面視で、前記表面材の肉厚部によって掩蔽されているため、当該表面材の撓み溝と、前記基材の空気排出孔とが、上面視で一致した(上下に重ねられた)位置に配設されることがない。したがって、先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓んだ際に、当該表面材及びクッション材の撓み溝が形成されている領域は、基材によって下から支持されることになる。このため、前記表面材が撓み過ぎることがないため、当該表面材にクラックが生じることを抑制することができる。
【0012】
また、本発明は、基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、前記基材は、当該基材の上面に形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する複数の空気排出溝を備え、前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる撓み溝と、当該撓み溝によって相対的に肉厚となる肉厚部とが形成されてなり、前記複数の空気排出溝は、互いに交差する交差部を有し、上面視で、前記交差部全体が前記肉厚部によって掩蔽されてなる洗い場床を提供するものである。
【0013】
ここで、前記空気排出溝の交差部は、上面視で四方向が開放されており、単独の(交差されていない)空気排出溝は、上面視で二方向が開放された状態となっている。したがって、上面視で、前記空気排出溝の交差部と前記撓み溝とが一致した状態で洗い場床の上面に荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓む場合と、単独の空気排出溝と前記撓み溝とが一致した状態で先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓む場合とを比べると、上面視で四方向が開放されている交差部の方が、前記表面材をより撓ませることになる。このため、上面視で、前記空気排出溝の交差部と前記撓み溝とが一致ししている場合、先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、当該撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓むと、前記表面材が撓み過ぎてクラックが生じる可能性が高くなる。
【0014】
本発明に係る洗い場床は、前記基材に形成されている空気排出溝の交差部全体が、上面視で、前記表面材の肉厚部によって掩蔽されているため、当該表面材の撓み溝と、前記基材に形成されている空気排出溝の交差部とが、上面視で一致した位置に配設されることがない。したがって、先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓んだ際に、当該表面材及びクッション材の撓み溝が形成されている領域は、基材によって下から支持されることになる。このため、前記表面材が撓み過ぎることがないため、当該表面材にクラックが生じることを抑制することができる。
【0015】
また、この構成の場合、前記基材は、当該基材の上面から下面に貫通形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出すると共に、前記空気排出溝に連通される空気排出孔をさらに備え、上面視で、前記空気排出孔の開口全体が前記肉厚部によって掩蔽された構成を備えていてもよい。このように構成することで、先端の尖った風呂椅子等によって前記洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓んだ際に、当該撓み溝と、当該空気排出溝及び空気排出孔とが、上面視で一致した位置に配設されることがなく、前記表面材が撓み過ぎることがない。このため、当該表面材にクラックが生じることを抑制することができると共に、前記基材とクッション材との間の空気を、前記空気排出溝及び空気排出孔の両方から効率よく外部に排出させることができる。
【0016】
そしてまた、本発明は、基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、前記基材は、当該基材の上面に形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する空気排出溝と、当該空気排出溝に包囲され且つ当該空気排出溝によって相対的に肉厚となる肉厚部と、を備え、前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる複数の撓み溝が形成されてなり、前記複数の撓み溝は、互いに交差する交差部を有し、上面視で、当該交差部全体が前記肉厚部上に配設されてなる洗い場床を提供するものである。
【0017】
ここで、洗い場床の上面に荷重がかけられた際に、前記表面材が単独の撓み溝を節として撓む場合、上面視で、当該撓み溝を頂点として谷折りとなる。一方、前記表面材が第1の撓み溝と第2の撓み溝が交差した交差部を節として撓む場合、第1の撓み溝を頂点として谷折りとなる場合と、第2の撓み溝を頂点として谷折りとなる場合があり、単独の撓み溝を節として撓む場合よりも、前記表面材をより撓ませることになる。このため、表面材が撓み過ぎてクラックが生じる可能性が高くなる。
【0018】
本発明に係る洗い場床は、前記表面材に形成されている撓み溝の交差部全体が、上面視で、前記基材の肉厚部上に配設されているため、当該撓み溝の交差部全体と、前記基材に形成されている空気排出溝とが、上面視で一致した位置に配設されることがない。したがって、先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓んだ際に、当該表面材及びクッション材の撓み溝が形成されている領域は、基材によって下から支持されることになる。このため、前記表面材が撓み過ぎることがないため、当該表面材にクラックが生じることを抑制することができる。
【0019】
また、本発明は、基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、前記基材は、当該基材の上面に形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する空気排出溝を備え、前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる撓み溝が形成されてなり、上面視で、前記空気排出溝と前記撓み溝が互いに平行に配設されてなる洗い場床を提供するものである。
【0020】
ここで、洗い場床の上面に荷重がかけられた際に、前記表面材は、上面視で、前記撓み溝を頂点として谷折りとなるが、当前撓み溝と空気排出溝とが一致している場合、前記表面材及びクッション材の撓み溝部分が、当該空気排出溝と一致している領域にわたって、当該空気排出溝の中へ落ち込むことになる。したがって、表面材が撓み過ぎてクラックが生じる可能性が高くなる。
【0021】
本発明に係る洗い場床は、前記空気排出溝と前記撓み溝が、上面視で平行に配設されているため、先端の尖った風呂椅子等によって洗い場床の上面の前記撓み溝近傍に集中荷重がかけられ、前記撓み溝が節となって前記表面材が下方に向けて撓んだ際に、当該表面材及びクッション材の撓み溝が形成されている領域は、基材によって下から支持されることになる。このため、前記表面材が撓み過ぎることがないため、当該表面材にクラックが生じることを抑制することができる。
【0022】
そしてまた、本発明に係る洗い場床は、前記基材に形成された空気排出溝によって形成される第1のパターンと、前記表面材に形成された撓み溝によって形成される第2のパターンとが、上面視で同一となる構成を備えていてもよい。このように構成することで、前記利点に加え、基板にクッション材を介して表面材を配設する際に、所望の一カ所において、空気排出溝と撓み溝との位置関係を決定すれば、洗い場床全体における空気排出溝と撓み溝との位置関係を決定することができ、作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、優れた排水性及びクッション性を備えると共に、洗い場床を構成する各層間に空気溜まりが形成されることを抑制できることは勿論のこと、当該洗い場床を構成する表面材にクラックが生じることを防止することが可能な洗い場床を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る洗い場床における各層の積層構造を模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、図4に示すII−II線に沿った断面の一部(空気排出孔付近)を模式的に示す断面図である。
【図3】図3は、図4に示すIII−III線に沿った断面の一部(空気排出溝付近)を模式的に示す断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施形態に係る洗い場床の平面図である。
【図5】従来の洗い場床の一部を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施形態に係る洗い場床について図面を参照して説明する。なお、以下に記載される実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をこれらの実施形態にのみ限定するものではない。したがって、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な形態で実施することができる。
【0026】
図1は、本発明の実施形態に係る洗い場床における各層の積層構造を模式的に示す斜視図、図2は、図4に示すII−II線に沿った断面の一部(空気排出孔付近)を模式的に示す断面図、図3は、図4に示すIII−III線に沿った断面の一部(空気排出溝付近)を模式的に示す断面図、図4は、本発明の実施形態に係る洗い場床の平面図である。なお、前記各図では、説明を判り易くするため、各部材の厚さやサイズ、拡大・縮小率等は、実際のものとは一致させずに記載した。
【0027】
図1〜図4に示すように、本実施形態に係る洗い場床1は、硬質の基材10と、基材10の上に積層配置されたクッション性を有するクッション材20と、クッション材20の上に積層配置された表面材30とを備えている。
【0028】
基材10は、例えば、FRP(Fiber Reinforced Plastic)等の熱硬化性樹脂、あるいはポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂からなり、浴室外に湯水を漏出させない防水性を有している。この基材10は、荷重を受ける床として機能する底面部13の周縁に水返し壁として機能する側壁部14が設けられた浅底のパン状に成形されている。底面部13には、排水用開口15が形成されており、周縁から排水用開口15に向けて下向きに傾斜した排水勾配が付けられている。なお、基材10は、壁パネルや天井パネルや風呂椅子や洗面器などの静荷重、使用者の動荷重を受けても撓んだり破損しない十分な強度を有している。
【0029】
基材10の底面部13の上面には、基材10上にクッション材20を配設することで基材10の上面とクッション材20の下面との間に形成される密閉空間に存在する残留空気を排出する複数の空気排出溝16が形成されている。これらの空気排出溝16は、全体にわたって下方に凹んだ形状となっており、互いに交差する交差部17を複数有し、全体で格子状にレイアウトされている。各々の空気排出溝16は、互いに連通しており、接着剤等によって塞がれないようになっている。また、この基材10の底面部13の上面には、格子状にレイアウトされた複数の空気排出溝16に包囲され、これらの空気排出溝16によって相対的に肉厚となる複数の肉厚部19が形成されている。これらの肉厚部19は、後に詳述する表面材30に形成された撓み溝32の交差部37の全体の面積よりも大きな面積となるように形成されている。そして、交差部37は、肉厚部19の直上に位置するように配置される。
【0030】
また、基材10には、空気排出溝16に連通すると共に、基材10の上面から下面に貫通する複数の空気排出孔18が形成されている。これらの空気排出孔18は、空気排出溝16を介して排出された空気を浴室の外部に排出する空気抜き流路としての果たすものである。このように、空気排出溝16及び空気排出孔18を介して、基材10の上面とクッション材20の下面との間に形成される密閉空間に存在する残留空気を浴室の外部に排出することができるため、基材10の上面とクッション材20の下面との間に空気溜まりが形成されることを抑制できる。したがって、洗い場床1の製造時に、基材10とクッション材20とを確実に密着させることができる。なお、本実施形態では、空気排出溝16の所望位置に空気排出孔18を形成した。
【0031】
クッション材20は、弾性変形可能であると共に、耐水性、耐薬品性、耐摩耗性、耐衝撃性など、洗い場床表面に要求される基本性能(耐久性)を有しており、例えば、ウレタン等の発泡体からなる。クッション材20は、基材10の底面部13の上面に接着または溶着固定されている。なお、クッション材20は、弾性変形可能なゴム材であっても構わないが、ゴム臭のない発泡体の方が、気密性の高い浴室の洗い場床として利用するには好ましい。
【0032】
表面材30は、クッション材20の上面に接着または溶着固定され、その表面は浴室内に露出し、使用者が触れたり、湯水にさらされる面となる。表面材30は、耐水性、耐薬品性、耐衝撃性等を有すると共に、下層のクッション材20の弾性変形に追従可能な可撓性を有している。表面材30としては、例えば、基材10に用いる材料(例えば、FRP等)よりも薄く且つ軟質な材料(例えば、この条件を満たすFRP等)を用いることができる。
【0033】
また、この表面材30の上面には、表面材30の上面に荷重がかかった際に節となり、表面材30を下方に撓ませる複数の撓み溝32が形成されている。これらの撓み溝32は、全体にわたって下方に凹んだ形状となっており、互いに交差する交差部37を複数有し、全体で格子状にレイアウトされている。この格子状のレイアウトにより、各々の撓み溝32は、上面視で、空気排出溝16と上下に重ねられることがなく、平行に配置される。なお、これらの撓み溝32は、表面材30を下方に撓ませる機能に加え、表面材30の上面を排水用開口15に向けて流れる湯水の排水流路として機能する。また、表面材30の表面に撓み溝32を形成することで、表面材30の表面に凹凸が形成され、洗い場床面が滑りにくくなる効果も得られる。また、表面材30の上面には、格子状にレイアウトされた複数の撓み溝32に包囲され、これらの撓み溝32によって相対的に肉厚となる複数の肉厚部39が形成されている。
【0034】
この表面材30は、使用者が表面材30の上に荷重をかけると(負荷時)、クッション材20が鉛直方向に縮み、接着剤で接着固定されている表面材30もクッション材20の変形に追随するように、撓み溝32を節として下方側に撓む。一方、使用者が表面材30の上に荷重をかけた状態から離れたとき(無負荷時)は、クッション材20が鉛直方向に伸び、接着剤で接着固定されている表面材30もクッション材20の変形に追随するように上方側に撓み元に戻るように形成されている。
【0035】
表面材30に形成された各々の肉厚部39は、図4に示すように、上面視で、基材10に形成されている空気排出孔18の開口面積(空気排出孔18を水平方向に切った際に得られる面積)よりも大きく形成されている。また、基材10に貫通形成されている空気排出孔18は、図2に示すように、肉厚部39の下方に位置し、上面視で、空気排出孔18の開口全体が、クッション材20を介して肉厚部39によって掩蔽される位置に配置されている。したがって、洗い場床1の上面に荷重がかけられ、撓み溝32が節となって表面材30が下方に向けて撓んだ際に、表面材30及びクッション材20の撓み溝32が形成されている領域(表面材30の薄肉部分)が、空気排出孔18の直上に配置されることがない。このため、表面材30が撓み溝32を節として撓み過ぎることがなく、表面材30にクラックが生じることを抑制することができる。
【0036】
さらに、表面材30に形成された各々の肉厚部39は、図4に示すように、上面視で、基材10に形成されている空気排出溝16の交差部17の全体よりも大きく形成されており、交差部17の全体が肉厚部39の下方に位置し、上面視で、交差部17の全体が、クッション材20を介して肉厚部39によって掩蔽される位置に配置されている。したがって、洗い場床1の上面に荷重がかけられ、撓み溝32が節となって表面材30が下方に向けて撓んだ際に、表面材30及びクッション材20の撓み溝32が形成されている領域(表面材30の薄肉部分)が、交差部17の直上に配置されることがない。このため、表面材30が撓み溝32を節として撓み過ぎることがなく、表面材30にクラックが生じることを抑制することができる。
【0037】
また、図4に示すように、撓み溝32の交差部37は、その全体が、上面視で、基材10の肉厚部19の直上に配設されている。したがって、洗い場床1の上面に荷重がかけられ、撓み溝32が節となって表面材30が下方に向けて撓んだ際に、表面材30及びクッション材20の交差部37が形成されている領域(表面材30の薄肉部分)が、空気排出孔18及び空気排出溝16の直上に配置されることがない。このため、表面材30が撓み溝32を節として撓み過ぎることがなく、表面材30にクラックが生じることを抑制することができる。
【0038】
そしてまた、図4に示すように、各々の撓み溝32は、上面視で、空気排出溝16と上下に重ねられることがなく、平行に配置されているため、洗い場床1の上面に荷重がかけられ、撓み溝32が節となって表面材30が下方に向けて撓んだ際に、表面材30及びクッション材20の撓み溝32が形成されている領域が、長さ方向にわたって、空気排出溝16内に落ち込むことがない。このため、表面材30が撓み溝32を節として撓み過ぎることがなく、表面材30にクラックが生じることを抑制することができる。
【0039】
なお、本発明に係る洗い場床1は、基材10に形成された複数の空気排出溝16によって形成される格子状のパターン(第1のパターン)と、表面材30に形成された複数の撓み溝32によって形成される格子状のパターン(第2のパターン)とが、上面視で同一となるように構成してもよい。このように構成することで、洗い場床1の製造時に、基材10と表面材30との位置合せを行う際に、前記両パターンの一部がずれるようにするだけで、空気排出孔18と撓み溝32との位置関係、空気排出溝16と撓み溝32との位置関係を決定することができ、作業性を向上させることができる。
【0040】
また、基材10、クッション材20及び表面材30の積層構造を得るにあたっては、それらを一体に熱間成型することにより相互に溶着固定させてもよいし(インサート成形)、基材10の成型加工後に、底面部13に対してクッション材20を、例えば両面テープ等の接着材を用いて貼り付け、さらにそのクッション材20の表面に、例えば両面テープ等の接着材を用いて表面材30を貼り付けてもよい。
【0041】
そしてまた、本実施形態に係る洗い場床1は、クッション材20を備えるので、使用者がひざをついても痛くなく、柔らかな感触を得ることができる。また、床が足になじみ、濡れた足でも滑りにくくなる。さらに、本実施形態に係る洗い場床1は、例えば洗面器等を床に落としても音を吸収することができ、音が響くことを防止することもできる。
【0042】
なお、本発明は、前述した構成に限らず、例えば、上面視で、空気排出孔18の開口全体が肉厚部39によって掩蔽された構成、上面視で、交差部17の全体が肉厚部39によって掩蔽された構成、交差部37の全体が肉厚部19上に配設された構成、上面視で、空気排出溝16と撓み溝32が平行に配設された構成、の少なくとも一つを有していればよい。
【符号の説明】
【0043】
1…洗い場床、 10…基材、 16…空気排出溝、 17、37…交差部、 18…空気排出孔、 19、39…肉厚部、 20…クッション材、 30…表面材、 32…撓み溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、
前記基材は、当該基材の上面から下面に貫通形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する空気排出孔を備え、
前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる撓み溝と、当該撓み溝によって相対的に肉厚となる肉厚部とが形成されてなり、
上面視で、前記空気排出孔の開口全体が前記肉厚部によって掩蔽されてなる洗い場床。
【請求項2】
基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、
前記基材は、当該基材の上面に形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する複数の空気排出溝を備え、
前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる撓み溝と、当該撓み溝によって相対的に肉厚となる肉厚部とが形成されてなり、
前記複数の空気排出溝は、互いに交差する交差部を有し、
上面視で、前記交差部全体が前記肉厚部によって掩蔽されてなる洗い場床。
【請求項3】
前記基材は、当該基材の上面から下面に貫通形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出すると共に、前記空気排出溝に連通される空気排出孔をさらに備え、
上面視で、前記空気排出孔の開口全体が前記肉厚部によって掩蔽されてなる請求項2記載の洗い場床。
【請求項4】
基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、
前記基材は、当該基材の上面に形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する空気排出溝と、当該空気排出溝に包囲され且つ当該空気排出溝によって相対的に肉厚となる肉厚部と、を備え、
前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる複数の撓み溝が形成されてなり、
前記複数の撓み溝は、互いに交差する交差部を有し、上面視で、当該交差部全体が前記肉厚部上に配設されてなる洗い場床。
【請求項5】
基材と、前記基材の上面に配設され且つクッション性を有するクッション材と、前記クッション材の上面に配設される表面材と、を備えた浴室の洗い場床であって、
前記基材は、当該基材の上面に形成され且つ当該基材と前記クッション材との間の空気を排出する空気排出溝を備え、
前記表面材の上面には、当該表面材の上面に荷重がかかった際に節となり、当該表面材を下方に撓ませる撓み溝が形成されてなり、
上面視で、前記空気排出溝と前記撓み溝が互いに平行に配設されてなる洗い場床。
【請求項6】
前記基材に形成された空気排出溝によって形成される第1のパターンと、前記表面材に形成された撓み溝によって形成される第2のパターンとが、上面視で同一である請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の洗い場床。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−58214(P2011−58214A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207261(P2009−207261)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】