説明

洗浄システム

【課題】気腹装置、或いはエアポンプ等を用いることなく、水と空気とを混合した混合流体を内視鏡の観察窓等に吹き付けて、その観察窓等に付着していた付着物を速やかに除去する洗浄システムを提供すること。
【解決手段】洗浄システム1は、液体供給路2c及び気体供給路2bを介して供給された液体と気体とを混合して混合流体を射出する洗浄シース20と、洗浄シース20に送出される液体を収納する液体パック30と、空気を供給して液体パック30を加圧して、液体パック30に収容されている液体を送出させるバルーン42及びベルト43と、液体パック30を加圧するためにバルーン42に供給した気体を洗浄シース20に送出するバルーン42、又はバルーン42及びベルト43によって液体パック30から送出される液体の流体エネルギを利用して洗浄シース20に気体を送出する流体エネルギー変換装置80とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の観察窓等に向けて混合流体を噴霧して、観察窓等に付着している付着物を除去する洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いた観察中に、該内視鏡が備える観察窓、照明窓等に生体内の粘液、血液、脂肪、汚物等が付着すると、良好な観察が妨げられる。その付着による不具合を解消するため、例えば、図13に示すような内視鏡洗浄システムが考えられる。
【0003】
図13は内視鏡洗浄システムの従来の構成を説明する図である。
【0004】
図13に示す内視鏡洗浄システムは例えば、内視鏡110と、洗浄シース120と、2つのエアポンプ131、132と、洗浄液タンク140と、2つのフィルタ付きチューブ151、152と、送液用コネクタ160と、送液用チューブ170と、送気用チューブ180と、フットスイッチ190と、送液制御スイッチ191と、送気制御スイッチ192とを備えて構成されている。符号153は滅菌フィルタである。
【0005】
内視鏡110は、先端部111、湾曲部112、及び硬性管部113を連設する挿入部114を備えている。挿入部114の基端には操作部115が連設している。操作部115の基端からはユニバーサルケーブル116が延出している。先端部111の先端面には図示しない観察窓及び照明窓が配設されている。
【0006】
洗浄シース120は、細長な筒状部材として形成されカバー部121及び取付部124を有している。カバー部121は例えば先端構成部122と軟性部123とで構成され、内視鏡110の挿入部114を被覆する。
【0007】
軟性部123には、内視鏡110の挿入部114が挿通して配置される挿入部挿通部(不図示)が備えられている。また、軟性部123には図示しない液体供給路及び気体供給路が備えられている。先端構成部122は、カバー部121内に挿入された内視鏡110の先端部111の先端面に向けて流体を射出するためのものである。
【0008】
取付部124は、カバー部121の基端に設けられ、内視鏡110の操作部115の先端側部に一体的に取り付けられるようになっている。取付部124には液体供給路に連通する液体供給口部125と、気体供給路に連通する気体供給口部126とが設けられている。液体供給口部125には予め送液チューブ127の一端部が取り付けられ、気体供給口部126には予め送気チューブ128の一端部が取り付けられている。
【0009】
洗浄シース120の内視鏡110への取り付けを説明する。
【0010】
洗浄シース120を内視鏡110に装着して内視鏡観察を行う際、ユーザーは、滅菌パックに梱包されている洗浄シース120及び2つのフィルタ付きチューブ151、152と、洗浄消毒済みの内視鏡110及び送液用コネクタ160と、洗浄液として脱気水を収容した洗浄液タンク140と、2つのエアポンプ131、132、フットスイッチ190、及びスイッチ191、192とを準備する。
【0011】
次いで、清潔域のユーザーは、洗浄シース120のカバー部121及び取付部124を内視鏡110の挿入部114、操作部115に装着する。また、ユーザーは、送気チューブ128の基端側コネクタ128aにフィルタ付きチューブ152の一端部を接続する矢印Aに示す作業、フィルタ付きチューブ152の他端部を送気制御スイッチ192に接続する矢印Bに示す作業、及び送気制御スイッチ192に送気用チューブ180の先端部を接続する矢印Cに示す作業を行う。さらに、ユーザーは、送液チューブ127の基端側コネクタ127aを送液用コネクタ160の送水口161に接続する矢印Dに示す作業、フィルタ付きチューブ151の一端部を送液用コネクタ160の第1チューブ接続口162に接続する矢印Eに示す作業、洗浄液タンク140から延出する洗浄チューブ141の先端部に設けられている先端コネクタ142を第2チューブ接続口163に接続する矢印Fに示す作業、フィルタ付きチューブ151の他端部を送液制御スイッチ191に接続する矢印Gに示す作業、及び送液制御スイッチ191に送液用チューブ170の先端部を接続する矢印Hに示す作業を行う。
【0012】
一方、不潔域のユーザーは、フットスイッチ190の接続ケーブル193を送液制御スイッチ191に接続する矢印Jに示す作業、接続ケーブル194を送気制御スイッチ192に接続する矢印Kに示す作業、送液用チューブ170の基端部に設けられているポンプ接続コネクタ171をエアポンプ132のチューブ接続口134に接続する矢印Lに示す作業、及び送気用チューブ180の基端部に設けられているポンプ接続コネクタ181をエアポンプ131のチューブ接続口133に接続する矢印Mに示す作業を行う。
【0013】
これらの接続作業の完了後、エアポンプ131、132を動作させた状態で、例えば術者がフットスイッチ190のペダル195、196を適宜操作することによって、送気、送水を行える。
【0014】
しかし、図13に示した構成の内視鏡洗浄システムでは、装置及びチューブ類の準備、及びチューブの接続作業等が煩雑で、ユーザーにとって煩わしい作業であった。
【0015】
特許文献1にはシースに硬性内視鏡を挿入したまま、観察途中で挿入部の先端のレンズを洗浄・乾燥でき、操作が容易な硬性内視鏡装置が示されている。この硬性内視鏡装置のシースは、筒状のシース本体の基端部に接続管体が設けられている。シース本体の内壁には軸方向に亘って送水管路及び送気管路が設けられている。これら管路は、シース本体の先端近傍で合流し、シース本体の先端部に設けられた対物レンズ等に向かって送水・送気できるノズルに連通している。そして、この硬性内視鏡装置では、気腹ガス供給源としてのガスボンベを備えているので、このガスボンベに充填されているガスを所定の圧に減圧して、送液用の滅菌水が収容されている容器に供給するようになっている。この容器には送液用チューブ、送気用チューブが設けられており、それぞれのチューブの端部はシースに設けられている送水口体、送気口体に接続されている。
【特許文献1】特開平5−199979号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、特許文献1の硬性内視鏡装置で使用される気腹装置は、洗浄圧に対応する第1のガス管路と気腹圧に対応する第2のガス管路とを設ける構成のため高価である。また、気腹装置を必要としない観察等を行う場合にも、観察中に内視鏡の挿入部のレンズ等を洗浄・乾燥するために、気腹装置及びガスボンベを用意しなければならない。そのため、簡易的な構成で観察窓、照明窓等に付着した汚物等の除去を容易に行える洗浄システムが望まれていた。
【0017】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、気腹装置、或いはエアポンプ等を用いることなく、水と空気とを混合した混合流体を内視鏡の観察窓等に吹き付けて、その観察窓等に付着していた付着物を速やかに除去する洗浄システムを提供することを目的にしている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の洗浄システムは、液体を供給する液体供給路及び気体を供給する気体供給路を備え、当該液体供給路及び気体供給路を介して供給された液体と気体とを混合して混合流体を射出する洗浄シースと、前記洗浄シースの液体供給路に送出される液体を収納する第1の収納手段と、気体を供給して前記第1の収納手段を加圧して、当該第1の収納手段に収容されている液体を前記液体供給路に送出させる加圧手段と、前記第1の収納手段に収容された液体を加圧するために前記加圧手段に供給した気体を前記洗浄シースの気体供給路に送出する、又は前記加圧手段によって前記第1の収納手段から送出される液体の運動エネルギを利用して前記洗浄シースの気体供給路に気体を送出する送気手段とを具備している。
【0019】
この構成によれば、洗浄シースの液体供給路には、第1の収納手段に収納された液体が加圧手段の圧力によって送出される。一方、洗浄シースの気体供給路には、送気手段によって、加圧手段に供給された気体、又は加圧手段によって第1の収納手段から送出された液体の運動エネルギを利用して気体が送出される。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、気腹装置、或いはエアポンプ等を用いることなく、水と空気とを混合した混合流体を内視鏡の観察窓等に吹き付けて、その観察窓等に付着していた付着物を速やかに除去する洗浄システムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1乃至図8は洗浄システムを備えた内視鏡洗浄システムの第1実施形態に係り、図1は内視鏡に装着される洗浄システムを説明する図、図2は図1のII−II線断面図、図3は先端構成部の構成を説明する背面図、図4は加圧装置の構成を説明する図、図5は加圧装置の作用を説明する図、図6は無操作状態の噴霧スイッチを説明する図、図7は噴霧状態の噴霧スイッチを説明する図、図8は加圧装置をスタンドに取り付けた状態を説明する図である。
図1に示ように本実施形態の内視鏡洗浄システム1は、内視鏡10と、洗浄シース20と、第1の収納手段である生理食塩水パック(以下、液体パックと略記する)30と、加圧装置40とを備えて構成されている。
【0022】
内視鏡10は例えば硬性鏡であって、先端部11、湾曲部12、及び硬性管部13を連設して構成される挿入部14を備えている。挿入部14の基端には操作部15が連設されている。操作部15の基端からはユニバーサルケーブル16が延出している。ユニバーサルケーブル16の端部は、図示しない光源装置及びビデオプロセッサ等に接続される。先端部11の先端面には図示しない観察窓及び光出射端が設けられている。操作部15には、湾曲部12を湾曲操作するための湾曲操作レバー17が配設されている。なお、内視鏡10は硬性鏡に限定されるものではなく、挿入部が軟性で細長な軟性鏡であってもよい。
【0023】
洗浄シース20は、使い捨てタイプであり、使用後には廃棄される。
洗浄シース20は、内視鏡10の挿入部14及び操作部15の先端側部を覆うように配置される。洗浄シース20は、先端側から順に、筒状体である先端構成部21と、マルチルーメンチューブで構成されたチューブ体22と、取付部23とを連設して構成されている。
【0024】
チューブ体22を構成するマルチルーメンチューブは、シリコン、ウレタン、テフロン(登録商標)等の軟質な質、あるいはポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート等の硬質な材質である。
【0025】
チューブ体22は、図2に示すように例えば3つの孔2a、2b、2cを備えている。孔2aは内視鏡配置孔(以下、内視鏡孔と略記する)であって、内視鏡10の挿入部14が挿入される。チューブ体22の中心軸と、内視鏡孔2aの中心軸とは平行であって、予め設定した距離aだけ垂直軸上において図中の下方向に偏心している。
【0026】
孔2bは、空気等の気体を供給するための気体供給路を構成する気体供給用孔(以下、送気孔と略記する)であって、チューブ体22の厚肉部側の所定位置に形成されている。
【0027】
孔2cは水、洗浄液等の液体を供給するための液体供給路を構成する液体供給用孔(以下、送液孔と略記する)であって、チューブ体22の厚肉部側の所定位置に形成されている。
【0028】
孔2b、2cは略同形状、略同断面積であって、前記垂直軸を挟んで対称な位置関係で形成されている。孔2b、2cは気体、或いは液体等の流体を供給するための流体孔であって、孔2bを送液孔にして、孔2cを送気孔にする構成であってもよい。
【0029】
取付部23は、チューブ体22の基端部に固定される。取付部23は、内視鏡10の操作部15の先端側部に一体的に取り付けられる構成である。取付部23の側面には図1に示すように気体供給口24と液体供給口25とが設けられている。気体供給口24は、送気孔2bに連通する構成であり、液体供給口25は送液孔2cに連通する構成である。
【0030】
気体供給口24には予め先端側送気チューブ26aの一端部が固設されている。液体供給口25には予め先端側送液チューブ27aの一端部が固設されている。先端側送気チューブ26a及び先端側送液チューブ27aの他端部は噴霧スイッチ50に連結されている。
【0031】
噴霧スイッチ50からは基端側送気チューブ26b及び基端側送液チューブ27bが延出している。基端側送気チューブ26bの端部には滅菌フィルタ28を介して送気用連結部29が設けられている。基端側送液チューブ27bの端部には針4が設けられている。
【0032】
なお、送気チューブ26a、26b、送液チューブ27a、27bの径寸法、及び長さ寸法は、後述するバルーン42及び液体パック30を押圧する圧力を考慮して設定されるものとする。
【0033】
先端構成部21は、チューブ体22の先端部に固設される。先端構成部21は、チューブ体22内に挿入された内視鏡10の先端部11の先端面に向けて混合流体を射出するためのものである。
【0034】
先端構成部21は例えば硬性で透明、又は半透明な樹脂部材で形成されている。図3に示すように先端構成部21の先端面に対して裏面である先端背面3aには、内視鏡10の挿入部先端面に備えられている光出射端及び観察窓を露出状態にさせる、切り欠き部3bが形成されている。
【0035】
先端背面3aには、チューブ体22の先端面の一部、及び内視鏡10の挿入部14を構成する先端部11の先端面の一部が当接する。先端背面3aには略T字形状の凹部であるT字溝3fが形成されている。T字溝3fは2つの閉塞端3c、3dと、1つの開放端3eとを備える
T字溝3fは、先端構成部21の内周面3gに沿って形成された液体供給路を構成する一端が閉じた液体供給溝(以下、送液溝と記載する)3hと、内周面3gに沿って形成された気体供給路を構成する一端が閉じた気体供給溝(以下、送気溝と記載する)3iと、噴出口を構成する開放端3eを備える混合流体供給路を構成する混合流体供給溝(以下、噴出溝と記載する)3kとを有して構成されている。
【0036】
送液溝3hの他端側の開放端と送気溝3iの他端側である開放端とは所定距離離れて対設して、液体と気体とが合流する空間部、即ち、混合流体を得る流体混合部である流体合流部3mを構成している。
【0037】
噴出溝3kは、流体合流部3mから切り欠き部3bに向かって延出している。具体的に、噴出溝3kの中心線は、流体合流部3mの中央から先端構成部21の中心軸に直交するように延出している。本実施形態において、噴出溝3kの溝幅は、流体合流部3mから開放端3eである噴出口に向かうにしたがって徐々に幅広になる設定である。
【0038】
送液溝3hの閉塞端3cの位置は、チューブ体22に形成されている送液孔2cの送液用先端開口の位置を考慮して設定される。そして、送液用先端開口から送出される液体は送液溝3hに流入する。
【0039】
送液溝3hと同様に、送気溝3iの閉塞端3dの位置は、チューブ体22に形成されている送気孔2bの送気用先端開口の位置を考慮して設定される。そして、送気用先端開口から送出される気体は送気溝3iに流入する。
【0040】
チューブ体22の先端面の一部が、先端構成部21の先端背面3aに当接(密着)している状態において、送液溝3hはチューブ体22の送液孔2cを介して供給された液体を流体合流部3mに送出し、送気溝3iはチューブ体22の送気孔2bを介して供給された気体を流体合流部3mに送出する。
【0041】
流体合流部3mは、送液溝3hから送出された液体と送気溝3iから送出された気体とを混合する。流体合流部3mで混合された流体は、噴出溝3kに送出される。
【0042】
開放端3eは、先端構成部21の先端背面3aに、チューブ体22の先端面及び先端部11の先端面が略当接した状態において噴出口を構成する。このことによって、流体合流部3mで混合されて噴出溝3kに送出された混合流体は、開放端3eから内視鏡10の観察窓等に向かって射出される。
【0043】
液体パック30は、使い捨てタイプであって、一症例毎に廃棄される。液体パック30を構成する収納体31内に例えば1リットルの生理食塩水32が収納されている。一度の症例で使用される生理食塩水32の量は、液体パック30の容量に比べて極少量であり、例えば50mlである。
【0044】
生理食塩水32は、滅菌済みである。収納体31の一端部には前記針4が穿刺される穿刺部33が設けられている。生理食塩水32は、術前に予め所定温度に暖められて使用される。
【0045】
図1、図4に示すように加圧装置40は、装置本体41、加圧手段と送気手段とを兼ねる加圧用バルーン42及び液体パック保持ベルト43を備えて構成されている。装置本体41は例えば樹脂製の板部材であって、図中上部には吊り下げ部41aが設けられている。
【0046】
加圧用バルーン(以下、バルーンと略記する)42は、気体を収納する第2の収納手段と液体パック30を加圧する加圧手段とを兼ねている。バルーン42は、膨縮自在なゴム部材等の弾性部材である。バルーン42は、そのバルーン42の一面42aが、例えば装置本体41の一面41bに一体的に固定されている。
【0047】
バルーン42からは、第1のゴム管45a、第2のゴム管45b、及び気体供給チューブ45cが延出している。第1のゴム管45aの基端部には、圧力計46が取り付けられるようになっている。第2のゴム管45bの基端部には、ゴム球47が取り付けられるようになっている。ゴム球47には排気弁47a及び逆止弁47bを有する吸気孔47cが備えられている。気体供給チューブ45cの基端部には、気体供給用コネクタ48が設けられている。気体供給用コネクタ48には、前記送気用連結部29が着脱自在に連結されるようになっている。
【0048】
バルーン42は、ゴム球47を操作して、バルーン42内に空気を供給することによって膨張する。具体的に、バルーン42を膨らませるとき、排気弁47aを閉塞状態にして、ゴム球47を操作する。すると、ゴム球47内に空気が供給された後、その空気がバルーン42内に供給されて徐々に膨張する。バルーン42内の圧力は、圧力計46によって計測される。バルーン42内の圧力が所望の値に到達したことを確認してゴム球47による空気の供給を停止する。このことによって、バルーン42が所望する内圧で膨張した状態に維持される。なお、ゴム球47の逆止弁47bは、ゴム球47内に空気が供給されるときには開状態になるが、その他の状態においてはゴム球47内の空気が外部に漏れることを防止するために閉状態になるように構成されている。
【0049】
膨張状態に維持されているバルーン42内の空気を排気する際には、排気弁47aを閉塞状態から開放状態に切り替える。すると、バルーン42の有する弾性力によって、バルーン42内の空気が排気弁47aから排出されてバルーン42が膨張状態から収縮した状態に変化する。
【0050】
液体パック保持ベルト(以下、ベルトと略記する)43は、液体パック30及びバルーン42を加圧する加圧する加圧手段であって、所定の弾性力を有するゴム部材で構成されている。ベルト43の両端部は、それぞれ装置本体41の長手側面部41c、或いはその近傍に一体的に固定される構成になっている。
【0051】
ベルト43の内面とバルーン42の他面42bとの間には隙間wの空間部44が形成されている。空間部44には図1の矢印に示すように液体パック30が配置されるようになっている。
【0052】
空間部44に液体パック30を配置した状態でゴム球47を操作する。すると、バルーン42の膨張に伴ってバルーン内圧が上昇していく。そして、バルーン42の内圧が所定内圧に到達したとき、図5に示すように装置本体41の一面41bとベルト43の内面とによって挟持された液体パック30及びバルーン42が所望する圧力で押圧された状態になる。即ち、バルーン42が図5の二点鎖線に示す状態から実線に示す状態に膨張することによって、空間部44に配置された液体パック30がバルーン42の他面42bとベルト43の内面とによって押圧された状態になる一方、バルーン42が液体パック30と装置本体41の一面41bとによって押圧された状態になって、液体パック30及びバルーン42が所望する圧力で押圧された状態になる。
【0053】
なお、バルーン内に充填された空気の容量は、一回の手技で使用される空気の最大使用量を考慮した上で、充分な圧力及び供給量が得られるように設定されている。そして、上述したように生理食塩水32の使用される量も液体パック30の容量に比べて極少量であるので、バルーン42及び液体パック30を押圧する圧力は初期の設定値で略維持される。
【0054】
図6に示すように噴霧スイッチ50は、外装体51と、スイッチ本体52とを備えて構成されている。外装体51の図中下側の端部には筒状体53が備えられている。筒状体53は、例えば螺合によって外装体51に一体的に固設されるようになっている。外装体51と筒状体53との間には図示しないOリングが設けられており、外装体51と筒状体53とで構成される内部と外部とを水密にしている。
【0055】
外装体51には長手軸方向に延びるスイッチ摺動孔54が形成されている。スイッチ摺動孔54内には棒状のスイッチ本体52が摺動自在に配設される。したがって、スイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間には予め設定された隙間が形成されている。
【0056】
外装体51の側部にはスイッチ摺動孔54に連通する連通孔55a、55b、55c、55dが形成されている。第1連通孔55aには先端側送気チューブ26aが連結される第1口金56a、第2連通孔55bには先端側送液チューブ27aが連結される第2口金56b、第3連通孔55cには基端側送気チューブ26bが連結される第3口金56c、第4連通孔55dには基端側送液チューブ27bが連結される第4口金56dが固設される。
【0057】
外装体51の一端部には凹部57が設けられている。凹部57内にはスイッチ本体52を図中の上方向に付勢するスプリング58が配設される。
【0058】
スイッチ本体52は、軸体であって両端部には抜け止めとなる鍔部52a、52bが設けられている。本実施形態において、例えば図中下側の鍔部52bは、螺合によってスイッチ本体52に一体的に固定されるようになっている。
【0059】
スイッチ本体52には複数の周状溝部59a、59b、59c、59dが形成されている。それぞれの周状溝部59a、59b、59c、59dにはOリング60が配設される。周状溝部59a、59b、59c、59d内に配設されたOリング60は、スイッチ摺動孔54の内面に密着する。
【0060】
前記スプリング58は、複数のOリング60のスイッチ摺動孔54の内面に対して密着する密着力に抗して、スイッチ本体52を押し上げる付勢力を有している。スイッチ本体52が押し上げられている状態は、無操作状態である。この無操作状態のとき、噴霧スイッチ50に備えられている第1口金56aは、第2周状溝部59bに配設されたOリング60と第3周状溝部59cに配設されたOリング60との間に位置する。第2口金56bは、第4周状溝部59dに配設されたOリング60と空間部63との間に位置する。第3口金56cは、第1周状溝部59aに配設されたOリング60と第2周状溝部59bに配設されたOリング60との間に位置する。第4口金56dは、第3周状溝部59cに配設されたOリング60と第4周状溝部59dに配設されたOリング60との間に位置する。
【0061】
このことによって、それぞれの口金56a、56b、56c、56dはOリング60によって分離して密閉されたそれぞれの空間にだけ連通した状態になる。
【0062】
無操作状態から噴霧状態に切り替える場合、スイッチ本体52をスプリング58の付勢力及びOリング60のスイッチ摺動孔54の内面に密着する密着力に抗して押し下げる。すると、噴霧スイッチ50は、図8に示す噴霧状態になる。
【0063】
噴霧状態のとき、噴霧スイッチ50に備えられている第2口金56b及び第4口金56dは、第3周状溝部59cに配設されたOリング60と第4周状溝部59dに配設されたOリング60との間に配置される。このことによって、第4口金56dと第2口金56bとがスイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間に形成されている隙間を介して連通した状態になる。
【0064】
一方、第1口金56a及び第3口金56cは、第1周状溝部59aに配設されたOリング60と第2周状溝部59bに配設されたOリング60との間に配置される。このことによって、第3口金56dと第1口金56bとがスイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間に形成されている隙間を介して連通した状態になる。
【0065】
このように、第4口金56dと第2口金56bとがスイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間の隙間を介して連通し、且つ第3口金56dと第1口金56bとがスイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間の隙間を介して連通した状態が噴霧状態である。
【0066】
ここで、洗浄シース20を内視鏡10に取り付けて内視鏡観察を行う場合の手順、及び加圧装置40を備える内視鏡洗浄システム1の作用を説明する。
【0067】
内視鏡観察を行うに当たって、ユーザーは、滅菌パックに梱包されている洗浄シース20と、液体パック30と、洗浄消毒済みの内視鏡10と、圧力計46、ゴム球47、気体供給用コネクタ48が第1のゴム管45a、第2のゴム管45b、気体供給チューブ45cにそれぞれ取り付けられている加圧装置40とを準備する。
【0068】
ユーザーは、滅菌パックから取り出した洗浄シース20のチューブ体22及び先端構成部21を内視鏡10の挿入部14に装着し、取付部23を内視鏡10の操作部15の先端側部に所定状態で取り付ける。
【0069】
次に、ユーザーは、加圧装置40に構成されている空間部44に液体パック30を配置する。そして、ベルト43を所定の巻回状態にセットする。
【0070】
次いで、図8に示すように液体パック30を配置した加圧装置40を、加圧装置保持台70に吊り下げる。即ち、加圧装置40の装置本体41に備えられている吊り下げ部41aを加圧装置保持台70に備えられている吊り具71に引っ掛ける。
【0071】
次に、ユーザーは、基端側送液チューブ27bの端部に設けられている針4を収納体31の一端部に設けられている穿刺部33に穿刺する。また、ユーザーは、基端側送気チューブ26bの端部に設けられている送気用連結部29を気体供給用コネクタ48に連結する。
【0072】
このことによって、接続作業が完了する。接続作業完了後、例えば術者は、ゴム球47を操作して、バルーン42を膨らませる。そして、術者は、圧力計46の計測値が所望の値に到達したところでゴム球47による空気の供給を停止する。このことによって、バルーン42及び液体パック30が予め設定した所定の押圧状態に維持される。
【0073】
この状態で、術者は、体腔内の観察を行うため、洗浄シース20が取り付けられている内視鏡10の挿入部14を体腔内に挿入する。内視鏡観察中、先端部11の先端面に生体内の粘液、血液、脂肪等の付着物が付着すると、この付着物によって照明光の照射範囲が狭められる不具合、或いは観察視野を確保できなくなる不具合が発生する。
【0074】
このような場合、術者は、噴霧スイッチ50のスイッチ本体52を無操作状態から噴霧状態に切り替える。即ち、スイッチ本体52をスプリング58の付勢力等に抗して押し下げる。
【0075】
すると、第4口金56dと第2口金56bとがスイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間の隙間を介して連通することによって、加圧されている液体パック30内の生理食塩水32が基端側送液チューブ27b、第4口金56d、前記隙間、第2口金56b、先端側送液チューブ27a、液体供給口25を介して送液孔2cに送出される。同時に、第3口金56dと第1口金56bとがスイッチ摺動孔54の内面とスイッチ本体52の外面との間の隙間を介して連通することによって、加圧されているバルーン42内の空気が滅菌フィルタ28、基端側送気チューブ26b、第3口金56c、前記隙間、第1口金56a、先端側送気チューブ26a、気体供給口24を介して送気孔2bに送出される。
【0076】
そして、送気孔2bに送出された空気は、該送気孔2bの送気用先端開口から送気溝3iに供給されて流体合流部3mに向かって供給される。一方、送液孔2cに送出された水は、該送液孔2cの送液用先端開口から送液溝3hに供給されて、流体合流部3mに向かって供給される。
【0077】
流体合流部3mにおいて、送気溝3iを介して供給された空気と、送液溝3hを介して供給された水とが合流して混合されることによって混合流体が噴出溝3kに供給される。
【0078】
噴出溝3kに供給された混合流体は、該噴出溝3kの開放端3eである噴出口から先端部11の先端面に設けられている図示しない観察窓、光出射端に噴霧状態で噴出される。
【0079】
このことによって、先端部11の先端面に付着した付着物が噴霧状の混合流体によって除去されて、照明光の照射範囲、及び観察視野が元の状態に戻って通常の内視鏡画像を得られる。
【0080】
術者が内視鏡画像から先端面に付着した付着物の除去を完了したと判断したなら、スイッチ本体52を押し下げる力量を低減させる。すると、スプリング58の付勢力によってスイッチ本体52が噴霧状態から無操作状態に切り替わって、加圧されている液体パック30内の生理食塩水32の送液孔2cへの送出、及び加圧されているバルーン42内の空気の送気孔2bへの送出が遮断されて、噴出流体の噴霧が停止される。
内視鏡観察終了後、内視鏡観察に使用された洗浄シース20及び液体パック30を廃棄する。 このように、生理食塩水が収納されている生理食塩水パックをバルーンとベルトとを備える加圧装置に配置し、バルーンを膨張させる構成にする。このことによって、生理食塩水パック及びバルーンが所定の圧力で押圧されて液体パックの生理食塩水を送液孔に送り出すとともに、バルーン内の空気を送気孔に送り出して、内視鏡の観察窓及び光出射端に混合流体を噴霧する洗浄システムを簡易な構成にすることができる。このことによって、複数の装置及び複数のチューブ類を準備するという煩わしい作業から解放される。
【0081】
また、洗浄シースが備える基端側送気チューブの基端に設けた送気用連結部をバルーンの有する気体供給用コネクタに連結する一方、基端側送液チューブの基端に設けた針を液体パックの穿刺部に穿刺することによって洗浄システムを構築することができる。このことによって、複数のチューブ類を接続するという煩わしい接続作業から解放される。
【0082】
なお、本実施形態においては保温した液体パック30を空間部44に配設する構成であるが、液体パック30の温度が低下することを防止する目的で液体パック30を保温シートで覆った状態にして空間部44に配設するようにしてもよい。また、加圧装置40に液体パック30を加温する加温手段を空間部44に設けるようにしてもよい。
【0083】
図9乃至図12は洗浄システムを備えた内視鏡洗浄システムの第2実施形態に係り、図9は内視鏡に装着される洗浄システムの他の構成を説明する図、図10は流体エネルギー変換装置を備えた加圧装置の構成を説明する図、図11は図10の加圧装置が備える流体エネルギー変換装置のXI−XI線断面図、図12は図11のXII−XII線断面図である。
【0084】
図9に示ように本実施形態の内視鏡洗浄システム1Aは、内視鏡10と、洗浄シース20Aと、液体パック30と、流体エネルギー変換装置80を有する加圧装置40Aとを備えて構成されている。
【0085】
本実施形他の洗浄シース20Aは、基端側送気チューブ26bの基端に設けられた滅菌フィルタ28の基端側から連結用チューブ26cが延出している。また、基端側送液チューブ27bの端部には針4が取り付けられていない。
【0086】
図9、図10に示すように加圧装置40Aは、板状の装置本体41A上に、加圧手段であるバルーン42及びベルト43と、流体エネルギー変換手段である流体エネルギー変換装置(以下、変換装置と略記する)80とを備えている。本実施形態においても、液体パック30は、バルーン42を膨張させた状態において、膨張したバルーン42とベルト43とに挟持されて所定の圧力で押圧された状態に変化する。
【0087】
変換装置80は送気手段であって、図11、図12に示すように変換部本体81と、第1蓋体82と第2蓋体83とを備えて構成されている。第1蓋体82を変換部本体81に固定した状態のとき、第1蓋体82と変換部本体81との間は例えばOリング(不図示)によって水密に保持される構成になっている。また、第2蓋体83を変換部本体81に固定した状態のとき、第2蓋体83と変換部本体81との間はOリング(不図示)によって水密に保持される構成になっている。
【0088】
変換部本体81には、第1空間部84と第2空間部85とが設けられている。符号86は隔壁であり、変換部本体81内の空間を、第1空間部84と第2空間部85とに分割している。変換部本体81の側壁には外部と第1空間部84とを連通する第1連通孔87aと第2連通孔87bとが設けられている。第1連通孔87aの外部側壁にはチューブ連結部である突部88aが設けられ、第2連通孔87bの外部側壁には突部88bが設けられている。
【0089】
また、変換部本体81の側壁には外部と第2空間部85とを連通する第3連通孔87cが設けられている。第3連通孔87cの外部側壁には突部88cが設けられている。
本実施形態において、突部88aには液体送出チューブ89の一端部が着脱自在に連結される。液体送出チューブ89の他端部には液体パック30の穿刺部33に穿刺される針4aが設けられている。突部88bには基端側送液チューブ27bの端部が着脱自在に連結され、突部88cには連結用チューブ26cの端部が着脱自在に連結される。
なお、突部88a、88b、88cは、変換部本体81に対して一体な構成であっても、変換部本体81に対して別体で、変換部本体81に一体的に固設される構造であってもよい。
【0090】
第1空間部84内には回転体で、複数の液受け部91aを備えた羽根車91、所謂水車が配設されている。羽根車91は、軸体92の第1軸部92aに一体的に固定されている。軸体92は、第1蓋体82と隔壁86とで挟持されて回動自在に軸支されている。第1空間部84は、第1連通孔87aから第2連通孔87bに反時計回りに形成した第1流路84aと、第1連通孔87aから第2連通孔87bに時計回りに形成した第2流路84bとを備えている。第1流路84aを構成する羽根車91の外面と第1空間部84の内面との間隔は、第2流路84bを構成する羽根車91の外面と第1空間部84の内面との間隔より幅広である。
【0091】
このため、回転自在な羽根車91は、液体パック30内の生理食塩水32が液体送出チューブ89を介して第1連通孔87aから第1空間部84に流入された後、第1流路84aを通過して第2連通孔87bから送出されることによって矢印P方向に回転する。符号82aは凹部であり、凹部82aには第1軸部92aの端部が配置される。
【0092】
軸体92は、第2軸部92bを備えている。第2軸部92bは、隔壁86に形成されている貫通孔86aを通過して第2空間部85内に所定量突出している。隔壁86の貫通孔86aには第2軸部92bの外周面に密着して水密を確保するOリング90が配設されている。
【0093】
第2空間部85は、回転板配設穴85aと摺動穴85bとで構成されている。回転板配設穴85aには回転板93とクランク軸94とが配設され、摺動穴85bにはクランク軸94とピストン95とが摺動自在に配設されている。
【0094】
回転板93は、回転板配設穴85aに突出する第2軸部92bの先端部近傍に一体的に固定されている。回転板93の一面側には、回転板93の回転をクランク軸94に伝達して、このクランク軸94を進退移動させる伝達部93aが突設している。
【0095】
回転板配設穴85aに位置するクランク軸94の端部には、伝達部93aが移動自在なカム孔94aが形成されている。カム孔94aに配置された伝達部93aが回転板93の回転に伴ってカム孔94a内を移動することによって、摺動穴85b内のピストン95が矢印Q方向或いは矢印R方向に移動する構成になっている。
【0096】
ピストン95は、クランク軸94の先端部には固設されている。ピストン95の外周面には摺動穴85bの内面に密着するOリング等の弾性部材96が配設されている。
【0097】
そして、第1空間部84に生理食塩水32が流入することによって羽根車91が回転されて、その羽根車91の回転に伴って回転板93が回転されて、クランク軸94及びピストン95が進退動作する。このことによって、生理食塩水32の有する流体エネルギーは、ピストン95を進退動作させる運動エネルギーに変換される。
【0098】
ピストン95は、矢印Q方向に移動するとき、摺動穴85b内の空気を第3連通孔87c、連結用チューブ26c、基端側送気チューブ26b、噴霧スイッチ50、先端側送気チューブ26aを介して送気孔2bに送出する。
その他の構成は前記第1実施形態と同様であり、同部材には同符号を付して説明を省略する。
【0099】
上述のように構成した加圧装置40Aを備える内視鏡洗浄システム1Aの作用を説明する。
【0100】
内視鏡観察を行うに当たって、ユーザーは、滅菌パックに梱包されている洗浄シース20Aと、液体パック30と、洗浄消毒済みの内視鏡10と、加圧装置40Aとを準備する。
【0101】
ユーザーは、滅菌パックから取り出した洗浄シース20Aのチューブ体22及び先端構成部21を内視鏡10の挿入部14に装着し、取付部23を内視鏡10の操作部15の先端側部に所定状態で取り付ける。
【0102】
次に、ユーザーは、加圧装置40Aに構成されている空間部44に液体パック30を配置した後、液体パック30を配置した加圧装置40Aを加圧装置保持台70に吊り下げる。
【0103】
次いで、ユーザーは、基端側送液チューブ27bの端部を突部88bに連結すると共に、連結用チューブ26cを突部88cに連結する。この後、ユーザーは、液体送出チューブ89の一端部を突部88aに連結し、その後、針4aを穿刺部33に穿刺する。
【0104】
このことによって、接続作業が完了する。接続作業完了後、例えば術者は、ゴム球47を操作して、バルーン42を膨らませる。そして、術者は、圧力計46の計測値が所望の値に到達したところでゴム球47による空気の供給を停止する。このことによって、液体パック30が予め設定した所定の押圧状態に維持される。
【0105】
この状態で、術者は、洗浄シース20Aが取り付けられている内視鏡10の挿入部14を体腔内に挿入して観察を行う。内視鏡観察中、先端部11の先端面に生体内の粘液、血液、脂肪等の付着物が付着した場合、術者は、噴霧スイッチ50のスイッチ本体52を無操作状態から噴霧状態に切り替える。
【0106】
すると、上述したように第4口金56dと第2口金56bとが隙間を介して連通することによって、加圧されている液体パック30内の生理食塩水32が液体送出チューブ89、第1連通孔87a、第1空間部84、第2連通孔87b、基端側送液チューブ27b、第4口金56d、前記隙間、第2口金56b、先端側送液チューブ27a、液体供給口25を介して送液孔2cに送出される。
【0107】
第4口金56dと第2口金56bとが隙間を介して連通して先端側送液チューブ27aに生理食塩水32の送出が開始されると同時に、羽根車91が矢印P方向に回転する。すると、羽根車91の回転に伴って第2空間部85の回転板93が回転されてピストン95が進退移動する。そして、ピストン95が矢印Q方向へ移動することによって、摺動穴85b内の空気が第3連通孔87c、連結用チューブ26c、滅菌フィルタ28、基端側送気チューブ26b、第3口金56d、前記隙間、第1口金56b、先端側送気チューブ26aを介して送気孔2bに送出される。
【0108】
このことによって、送気孔2bに送出された空気は、該送気孔2bの送気用先端開口から送気溝3iに供給される一方、送液孔2cに送出された水は該送液孔2cの送液用先端開口から送液溝3hに供給され、流体合流部3mにおいて空気と水とが合流して混合流体が噴出溝3kに供給される。そして、噴出溝3kに供給された混合流体は、開放端3eである噴出口から先端部11の先端面に設けられている図示しない観察窓、光出射端に噴霧状態で噴出される。
【0109】
このように、流体エネルギー変換装置を有する加圧装置を構成することによって、バルーンによって押圧された液体パックの生理食塩水を流体エネルギー変換装置の第1空間部を介して送液孔に送り出すとともに、第1空間部を介して送液孔に送り出される生理食塩水の運動エネルギーをピストンを進退させる運動エネルギに変換して、第2空間部内の空気を送気孔に送り出して、内視鏡の観察窓及び光出射端に混合流体を噴霧する洗浄システムを簡易な構成にすることができる。このことによって、複数の装置及び複数のチューブ類を準備するという煩わしい作業及び複数のチューブ類を接続するという煩わしい接続作業から解放される。
【0110】
なお、上述した実施形態においては、バルーンをゴム球で膨らませるとしているが、手術室内に備えられている送気装置の気体をバルーンに供給してバルーンを所望する膨張状態に維持する構成であってもよい。また、上述した実施形態においては、液体を生理食塩水としているが液体は生理食塩水に限定されるものではなく滅菌水等であってもよい。
【0111】
尚、本発明は、以上述べた実施形態のみに限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であり、上述した各実施形態等を部分的等に組み合わせて構成される実施形態等も本発明に属する。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1乃至図8は洗浄システムを備えた内視鏡洗浄システムの第1実施形態に係り、図1は内視鏡に装着される洗浄システムを説明する図
【図2】図1のII−II線断面図
【図3】先端構成部の構成を説明する背面図
【図4】加圧装置の構成を説明する図
【図5】加圧装置の作用を説明する図
【図6】無操作状態の噴霧スイッチを説明する図
【図7】噴霧状態の噴霧スイッチを説明する図
【図8】加圧装置をスタンドに取り付けた状態を説明する図
【図9】図9乃至図12は洗浄システムを備えた内視鏡洗浄システムの第2実施形態に係り、図9は内視鏡に装着される洗浄システムの他の構成を説明する図
【図10】流体エネルギー変換装置を備えた加圧装置の構成を説明する図
【図11】図10の加圧装置が備える流体エネルギー変換装置のXI−XI線断面図
【図12】図11のXII−XII線断面図
【図13】内視鏡洗浄システムの従来の構成を説明する図
【符号の説明】
【0113】
1…内視鏡洗浄システム 2b…送気孔 2c…送液孔 3h…送液溝
3i…送気溝 3k…噴出溝 3m…流体合流部 4…針 10…内視鏡
14…挿入部 15…操作部 20…洗浄シース 21…先端構成部
22…チューブ体 24…気体供給口 25…液体供給口
26a…先端側送気チューブ 26b…基端側送気チューブ
27a…先端側送液チューブ 27b…基端側送液チューブ
29…送気用連結部 30…液体パック 33…穿刺部 40…加圧装置
41…装置本体 42…バルーン 43…ベルト 48…気体供給用コネクタ
50…噴霧スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を供給する液体供給路及び気体を供給する気体供給路を備え、当該液体供給路及び気体供給路を介して供給された液体と気体とを混合して混合流体を射出する洗浄シースと、
前記洗浄シースの液体供給路に送出される液体を収納する第1の収納手段と、
気体を供給して前記第1の収納手段を加圧して、当該第1の収納手段に収容されている液体を前記液体供給路に送出させる加圧手段と、
前記第1の収納手段に収容された液体を加圧するために前記加圧手段に供給した気体を前記洗浄シースの気体供給路に送出する、又は前記加圧手段によって前記第1の収納手段から送出される液体の運動エネルギを利用して前記洗浄シースの気体供給路に気体を送出する送気手段と、
を具備することを特徴とする洗浄システム。
【請求項2】
前記送気手段は、前記加圧手段を兼ねる気体を収納する第2の収納手段であって、当該気体が収納された第2の収納手段を所定の圧力に加圧して、前記洗浄シースの気体供給路に前記気体を送出させることを特徴とする請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項3】
液体を収納する第1の収納手段と、
気体を収納する第2の収納手段と、
前記第1の収納手段から送出される液体の液体供給路及び前記第2の収納手段から送出される気体の気体供給路を備え、前記液体供給路及び気体供給路を介して供給された液体と気体とを混合して混合流体を射出する洗浄シースと、
前記第1の収納手段及び前記第2の収納手段を同時に加圧して、当該第1の収納手段に収納されている液体を前記洗浄シースの液体供給路に送出させると共に、当該第2の収納手段に収納されている気体を前記洗浄シースの気体供給路に送出させる加圧手段と、
を具備することを特徴とする洗浄システム。
【請求項4】
前記第2の収納手段は前記加圧手段と前記送気手段を兼ねる加圧用バルーンであって、当該加圧用バルーンを所定の圧力に膨張させることによって、前記加圧用バルーン内の気体が前記洗浄シースの気体供給路に送出されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の洗浄システム。
【請求項5】
前記送気手段は、前記加圧手段によって前記第1の収納手段から送出された液体の運動エネルギーを、前記洗浄シースの気体供給路に気体を送出させる運動エネルギーに変換する流体エネルギー変換手段であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄システム。
【請求項6】
液体を供給する液体供給路及び気体を供給する気体供給路を備え、前記液体供給路及び気体供給路を介して供給された液体と気体とを混合して混合流体を射出する洗浄シースと、
前記洗浄シースの液体供給路に送出される液体を収納する第1の収納手段と、
加圧用バルーンを備え、当該加圧用バルーンを所定の圧力に膨張させることによって、前記第1の収納手段に収納されている液体を送出させる加圧手段と、
前記加圧手段によって前記第1の収納手段から送出された液体の運動エネルギーを、前記洗浄シースの気体供給路に気体を送出させる運動エネルギーに変換する流体エネルギー変換手段と、
を具備することを特徴とする洗浄システム。
【請求項7】
前記流体エネルギー変換手段は、前記液体の運動エネルギーを回転運動に変換する第1変換部と、
前記回転運動を往復運動に変換することで気体を前記洗浄シースの気体供給路に送出する第2変換部と、
を備えることを特徴とする請求項6に記載の洗浄システム。
【請求項8】
前記洗浄シースは、
挿入部の先端面に少なくとも観察窓を備えた内視鏡の細長な挿入部が挿入配置される内視鏡配置孔、前記液体を供給する液体供給路、及び気体を供給する気体供給路を備えるチューブ体と、
前記チューブ体の先端部に固設される筒状体で、前記チューブ体の先端面の一部及び前記内視鏡の挿入部の先端面の一部が当接する当接面に、前記液体供給路を介して送出された液体及び前記気体供給路を介して送出された気体を合流させて液体と気体とを混合する流体混合部、及び前記流体混合部で混合された混合流体を前記内視鏡の観察窓に向けて噴出させる噴出口を構成する凹部を有する先端構成部と、
を具備することを特徴とする請求項1、請求項3、又は請求項6の何れか1項に記載の洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−136494(P2009−136494A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−316125(P2007−316125)
【出願日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】