洗浄ハンドル装置
【課題】ハンドルの操作パターンの違いによってそれぞれに専用の洗浄ハンドル装置を用意する必要を無くし、共通の洗浄ハンドル装置にてそれぞれに対応可能な洗浄ハンドル装置を提供する。
【解決手段】ハンドル14の回転により洗浄水を供給して便器洗浄を行わせる洗浄ハンドル装置を、ハンドル側ストッパ42-1,42-2と、ハンドル14を回転可能に保持する保持部材側に設けた保持側ストッパ68,72-1,72-2との回転方向の当接作用によりハンドル14の回転量を規制するように構成する。そして保持側ストッパ72-1,72-2の回転方向位置を調節可能とする。
【解決手段】ハンドル14の回転により洗浄水を供給して便器洗浄を行わせる洗浄ハンドル装置を、ハンドル側ストッパ42-1,42-2と、ハンドル14を回転可能に保持する保持部材側に設けた保持側ストッパ68,72-1,72-2との回転方向の当接作用によりハンドル14の回転量を規制するように構成する。そして保持側ストッパ72-1,72-2の回転方向位置を調節可能とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンドルの回転により且つ回転の方向や回転量に応じて便器に対する洗浄水の供給量を定める洗浄ハンドル装置に関し、詳しくは共通の洗浄ハンドル装置にて様々な洗浄タンクや洗浄方式に対応可能な洗浄ハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器の洗浄装置として洗浄タンク内部に洗浄水を貯え、洗浄タンクに設けたハンドルを回転させることにより洗浄タンク底部の排出弁を開いて洗浄タンク内の洗浄水を便器側に放出(供給)し、便器洗浄を行うものが広く用いられている。
【0003】
図15はその一例を示している(下記特許文献1に開示のもの)。同図において200は洗浄タンクで、202,204はその内部に設けられた浮玉,ボールタップである。
ボールタップ204は、その弁部が連動アーム206にて浮玉202と連結されており、洗浄タンク200内部に貯えられた洗浄水が放出されて浮玉202が下降すると弁部を開いて給水口208から給水を行い、また洗浄タンク200内部が満水状態となって浮玉202が上昇すると弁部を閉じて給水口208からの給水を停止する。
尚210はオーバーフロー管である。
【0004】
212は洗浄ハンドル装置で、洗浄タンク200の壁部に回転可能に設けられたハンドル213を有している。
ハンドル213からはL字状をなす作用レバー214が洗浄タンク200内部に延び出していて、その先端が鎖218を介して洗浄タンク210底部の排出弁216に連結されている。
この便器の洗浄装置の場合、洗浄ハンドル装置212のハンドル213を回転操作すると、作用レバー214が一体に回転して鎖218を介し排出弁216を引き上げ、開動作させる。
すると洗浄タンク200内部に貯えてある洗浄水が、排出口220から一挙に便器側に排出され、便器が洗浄される。
【0005】
ところでこの種の便器の洗浄装置は、図16(A)に示しているようにハンドル213が洗浄タンク200の左側面に取り付けられる場合と、図16(B)に示しているように右側面に取り付けられる場合とがあり、それぞれでハンドル213の回転方向が逆方向となる。
また便器の種類が異なると洗浄の方式も異なったものとなり、これに応じてハンドル213の回転操作量も変化し、更に寒冷地においては凍結防止のためにハンドル213の操作によって排出弁216を開いたままとし、洗浄タンク内の洗浄水を流し放しとすることが行われている。
【0006】
図17〜図20はこれを具体的に表したものである。
このうち図17,図18はハンドル213が洗浄タンク200の左側面に取り付けられる場合を表しており、また図17中(A)は便器の洗浄方式が小洗浄ホールドの場合、具体的には小洗浄の場合には使用者がハンドル213を小洗浄側まで一杯に回転してそのまま保持する場合を表している。
この場合には、ハンドル213に対する正面視において使用者がハンドル213を左方向(時計方向)に90°回転させることで大洗浄が行われ((A)(ロ)参照)、また右方向(反時計方向)にこれよりも小さい角度、例えば55°回転させ且つそこに保持することで小洗浄が行われる((A)(ハ)参照)。
【0007】
また寒冷地仕様の洗浄ハンドル装置212においては、ハンドル213を右方向に75°回転した位置にこれを保持する機能が備えてあり、ハンドル213をこの位置に保持させておくことで排出弁216が開き放しととなり、洗浄タンク200から便器に向けて水が一定量流れ放しとなり、凍結が防止される。
【0008】
図17(B)は便器の洗浄装置が節水タイプのものである場合のハンドルの操作を表している。
便器の洗浄装置の1種として、図15に示しているように排出弁216と一体に昇降する水受器222を備えた形態のものがあり、この洗浄装置では、水受器222に水を溜めた状態又は水受器222内の水を排出した状態とに切替えることによって大洗浄と小洗浄とを切り替える。
詳しくは、水受器222に水を溜めた状態とすることで、これを排出弁216に対する錘として作用させ、これにより一旦開弁した排出弁216が閉じるまでの時間を短くして洗浄水の放出の量を少なくする。
【0009】
また一方、水受器222内の水を排出し、水受器222内を空の状態とすることで、排出弁216が閉じるまでの時間を長くし、これによって洗浄水の放出量を多くし、大洗浄を行う。
この便器の洗浄装置では、水受器222内部に水を溜めた状態とするか、又は空の状態とするかによって、小洗浄と大洗浄とを切り替えるものであり、この場合には大洗浄の場合も、小洗浄の場合もハンドル213の回転量は等しいものとなる。
【0010】
詳しくは、図17(B)(ロ)に示しているようにハンドル213を左方向に90°回転させることで大洗浄を行い、また同図(B)(ハ)に示しているように逆方向の右方向に90°回転させることで小洗浄を行う。
また寒冷地においては水抜きを行うべく、ハンドル213を110°まで回転させた位置にこれを保持し、水を出っ放しとする。
【0011】
次に、図18(C)は大洗浄のみを行う場合のハンドル213の操作を表している。
同図に示しているように、この場合にはハンドル213を左方向に90°回転操作することで大洗浄を行うが((C)(ロ)参照)、小洗浄側即ち図中右方向には回転不能である。
この(C)の場合においても、寒冷地仕様のものでは水抜きを行う機能が備えられており、この場合にはハンドル213を使用者側に(手前に)引いた上で右方向に85°回転させてタンク側に戻し、そこにこれを保持させて水を出っ放しとする。
【0012】
一方図19,図20はハンドルが洗浄タンク200の右側面に取り付けられる場合のハンドルの操作を表している。
このようにハンドル213が洗浄タンク200の右側面に取り付けられる場合には、ハンドル213の回転方向が上記とは逆方向となる。
このようにハンドル213が洗浄タンク200の右側面に取り付けられる場合においても、上記のように小洗浄ホールドの操作パターン(図19(A))と、節水の操作パターン(図19(B))と、大洗浄のみの操作パターン(図20(C))、更にはまたそれぞれで水抜きの際の操作パターンとがあり、何れもハンドル213の回転方向は、かかるハンドル213が洗浄タンク200の左側面に取り付けられた場合、即ち図17,図18に示す場合と逆方向でその回転操作量は上記と同様となる。
【0013】
以上のようにハンドルの操作のパターンは便器の種類や洗浄ハンドル装置の取り付く位置或いは寒冷地仕様であるか否か等の諸事情によって様々であり、従来にあってはそれぞれに専用の洗浄ハンドル装置を用意してこれを用いていた。
しかしながらこの場合、多種類の洗浄ハンドル装置が必要となり、洗浄ハンドル装置に要するコストも高くなるとともに、在庫管理も煩雑となり、また便器及び洗浄装置の設置されている現場において洗浄ハンドル装置を取り替える際、何れの種類の洗浄ハンドル装置であるかの特定が簡単ではなく、その特定のために時間を要するとともに、交換すべき洗浄ハンドル装置を誤ってしまうと、設置現場において洗浄ハンドル装置の取替えができなくなってしまうといったトラブルの原因ともなる。
【0014】
本発明はこのような問題点を解決するために案出されたものである。
尚、下記特許文献2には湯水混合水栓においてハンドルを湯側に回転操作する際のストッパを設け、且つそのストッパの位置を調節できるようになした点が開示されているが、このものは湯水混合水栓に関するものであって本発明とは対象が異なっており、また本発明の対象とする洗浄ハンドル装置においてストッパ位置を変更するようになしたものは従来提案されていない。
【0015】
【特許文献1】特開2002−167838号公報
【特許文献2】特開平11−21959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来のようにハンドルの操作パターンの違いによってそれぞれに専用の洗浄ハンドル装置を用意する必要を無くし、共通の洗浄ハンドル装置にてそれぞれに対応可能な洗浄ハンドル装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、ハンドルの回転により洗浄水を供給して便器洗浄を行わせるに際し、該ハンドル側に設けたハンドル側ストッパと、該ハンドルを回転可能に保持する保持部材側に設けた保持側ストッパとの回転方向の当接作用により該ハンドルの回転量を規制し洗浄水量を定めるようにした洗浄ハンドル装置において、前記ハンドル側ストッパ及び保持側ストッパの少なくとも何れか一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記保持部材又はハンドルに備えた第1のストッパ部材に対して第2のストッパ部材を組み付けることにより若しくは組付位置を変えることにより、前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項2において、前記第1のストッパ部材に対する前記第2のストッパ部材の相対的な回転方向の組付位置が変更可能となしてあり、該第2のストッパ部材の組付位置の変更により前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項3において、前記保持部材側において第2のストッパ部材を第1のストッパ部材の内周側又は外周側に組み付けてあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項2において、前記第2のストッパ部材を独立したブロック状に構成して、該第2のストッパ部材を差込穴に差し込んで組み付けるようになしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項6のものは、請求項2において、前記第2のストッパ部材を第1のストッパ部材に被せる状態に組み付けるようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明は、ハンドル側ストッパ及び保持側ストッパの少なくとも何れか一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしたもので、本発明によれば、ストッパの回転方向位置を調節することで、ハンドルの回転量に対する規制を任意に変更し調節することができる。
【0024】
これにより、操作パターンの様々に異なる各種の洗浄ハンドル装置を共通の洗浄ハンドル装置にて構成することが可能となり、洗浄ハンドル装置に要するコストを低減することができるとともに在庫管理を単純化でき、また設置現場において洗浄ハンドル装置を取り替える際においても、従来のように面倒な洗浄ハンドル装置の種類の特定を行わなくても良く、また洗浄ハンドル装置の種類を誤って特定してしまうことによって設置現場で洗浄ハンドル装置の交換ができなくなってしまうといった不都合も解消することができる。
【0025】
本発明では、保持部材又はハンドルに備えた第1のストッパ部材に対して第2のストッパ部材を組み付けることにより若しくは組付位置を変えることにより、上記ストッパの回転方向位置を調節可能となすことができる(請求項2)。
【0026】
このようにすれば容易にハンドルの回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
この場合において、第1のストッパ部材に対する第2のストッパ部材の相対的な回転方向の組付位置を変更可能となし、その第2のストッパ部材の組付位置の変更により、ストッパの回転方向位置を調節可能となしておくことができる(請求項3)。
【0027】
このようにすれば、第2のストッパ部材の組付位置を変更するだけで、簡単にハンドルの回転規制のためのストッパの回転方向位置が調節可能となる。
更にこの場合において、保持部材側で第2のストッパ部材を第1のストッパ部材の内周側又は外周側に組み付けておくことができる(請求項4)。
【0028】
一方請求項2において、第2のストッパ部材を独立したブロック状に構成し、これを差込穴に差し込んで組み付けるようになし、これによりハンドルの回転量を規制するストッパの回転方向位置を調節するようになすことができる(請求項5)。
或いはまた、第2のストッパ部材を第1のストッパ部材に被せる状態に組み付け、その組付けによって或いは組付位置を回転方向に変更することで、ハンドルの回転量を規制するストッパの回転方向位置を調節するようになすことができる(請求項6)。
【0029】
本発明においては、ハンドルを洗浄タンクの右に付けた場合と左に付けた場合とで、ハンドルに対する正面視において左右の回転範囲を対称とするように前記一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
また本発明においては、ハンドルを大洗浄側にのみ回転可能とするように前記一方のストッパ部の回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
【0030】
更に本発明においては、ハンドルに対する正面視において右方向と左方向とで同じ量だけ回転可能とするように前記一方のストッパ部の回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
また本発明においては、ハンドルを所定角度位置に保持可能とするように前記一方のストッパ部の回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンクで、この洗浄タンク10に図1〜図4に示す洗浄ハンドル装置12が設けられている。
洗浄ハンドル装置12は、ハンドル14と、これから洗浄タンク10内部に延び出した、全体としてL字状をなす作用レバー16とを有している。
この作用レバー16は、外筒部材18とその内部に挿入された芯体20とを有しており、その芯体20の外筒部材18への挿入量を変えることによって、作用レバー16が全体的に伸縮可能とされている。即ち作用レバー16の全体の長さが調節可能とされている。
【0032】
この芯体20の側面には、図3に示しているように軸方向に沿って所定ピッチで複数の係合溝22が形成されている。
一方外筒部材18には、図4に示しているように径方向に貫通の係合窓24が設けられており、この係合窓24において弾性を有する止め輪26が上記複数の係合溝22の何れかに係合されることで、外筒部材18と芯体20とが軸方向に固定されるようになっている。
【0033】
尚芯体20には上下に平坦な係合面25が形成されており、また一方外筒部材18には対応する上下の位置に平坦な係合面27が形成され、それら係合面25と27との係合により、芯体20と外筒部材18とが軸周りに回転規制されている。
【0034】
芯体20は、図中左側に断面円形をなすスピンドル部28を有している。
このスピンドル部28の先端部には、角形状をなす係合部30と略球状をなす嵌込部32が設けられており、その嵌込部32が図1に示しているようにハンドル14の嵌込孔34に弾性的に嵌め込まれ、抜止めされている。
また係合部30が、ハンドル14の中心部に形成された筒状部36の内側の対応する角形状の係合孔38に嵌入係合させられており、それら芯体20とハンドル14とが一体回転するようになっている。
【0035】
ハンドル14は、レバー部40を有している。
また図3に示しているようにその内側には、中心部の筒状部36からハンドル14の円形の周壁部に向かって図中下向きにハの字状に開いた形態のストッパ(ハンドル側ストッパ)42-1,42-2が設けられている。
尚このハンドル14の中心部の筒状部36からはまた、リブ44が円形の周壁部に向かって延び出しており、それらリブ44によって筒状部36と周壁部とが互いに連結されている。
ここでリブ44の図中右側の端面はストッパ42-1,42-2の端面よりも図中左側に引き込んだ位置に位置している。
【0036】
図1において、46は洗浄タンク10のタンク壁に取り付けられ、作用レバー16を介してハンドル14を保持する保持部材で、円筒形状をなすスピンドルガイド(第1のストッパ部材)48と、その端部(図中左端部)の外周側に回転方向に位置調節可能に設けられた、スピンドルガイド48とは別体をなす環状部材(第2のストッパ部材)50とを有している。
このスピンドルガイド48には、図1及び図3に示しているように内周側に段付部54が設けられており、この段付部54と、芯体20の段付部56との間にスプリング58が介装され、かかるスプリング58によって作用レバー16及びハンドル14が図中右向き、即ち洗浄タンク10内部に向けて付勢されている。
【0037】
環状部材50には、図1及び図4に示しているように径方向内向きのフランジ部60が設けられており、また一方スピンドルガイド48の端部には径方向外向きのフランジ部62が設けられており、環状部材50は、このスピンドルガイド48のフランジ部62とタンク壁とで軸方向に挟まれる状態でスピンドルガイド48に組み付けられている。
尚スピンドルガイド48の外周面には雄ねじ64が設けられており、この雄ねじ64への固定ナット66のねじ込みによって、保持部材46がタンク壁に取り付けられている。
【0038】
上記環状部材50のハンドル14側の面には、図5,図6に示しているように外周部に沿って円弧形状をなすストッパ68が、ハンドル14側に起立状態で設けられている。
このストッパ68の図5及び図6中右側端部と左側端部とには切欠70-1,70-2が設けられている。
ここでストッパ68は、図6に示しているように正面視において右側部分と左側部分とが対称形状をなしており、ストッパ68の図中右端と左端とが、図中下端から同じ角度θ1の位置に位置している。
【0039】
一方、スピンドルガイド48のハンドル14側の面にも同様にしてストッパ72-1,72-2が起立状態に設けられている。
これらストッパ72-1,72-2にも同様に切欠74-1,74-2が設けられている。
図5及び図6に示す状態において、環状部材50側の切欠70-1,70-2と、スピンドルガイド48側の切欠74-1,74-2とはそれぞれ互いに一致している。
【0040】
図5及び図6に示しているように、スピンドルガイド48にはハンドル14側の端部の外周面に所定間隔で複数の楔状の噛合凹部69が設けられている。
また一方、環状部材50には対応する楔形状の噛合突起71が一対設けられている。
【0041】
スピンドルガイド48と環状部材50とは、それら噛合凹部69と噛合突起71との係合により相対的な回転方向位置が固定され、また噛合突起71に係合するスピンドルガイド48側の噛合凹部69を異ならせることで、環状部材50に対するスピンドルガイド48の回転方向位置が調節される。
即ちストッパ72-1,72-2、更に切欠74-1,74-2の回転方向位置が図中右回転方向に或いは左回転方向に調節される。
【0042】
本実施形態の洗浄ハンドル装置12は、ハンドル14が洗浄タンク10の左側面に取り付けられる場合,右側面に取り付けられる場合、また便器の洗浄装置の種類が図17〜図20に示す小洗浄ホールド,節水洗浄,大洗浄のみの洗浄の何れである場合においても、また更に寒冷地仕様である場合,寒冷地仕様でない場合の何れかに対しても共通の洗浄ハンドル装置12にて対応することが可能である。
図7〜図12はこれを具体的に表している。
【0043】
先ず図7はハンドル14が洗浄タンク10の左側面に取り付けられる場合で、且つの小洗浄ホールドの操作パターンである場合を表している。
この場合、スピンドルガイド48に対する環状部材50の組付位置を楔状の噛合凹部69の1ピッチ分だけ図中左回転方向に変更することによって、スピンドルガイド48の回転方向を右回転方向に変更し、これによってスピンドルガイド48に設けたストッパ72-1,72-2を対応する角度だけ右回りに移動させる。
このとき、スピンドルガイド48の図中右側のストッパ72-1が、環状部材50のストッパ68の右端よりも図中右回転方向に移動した状態となる。
【0044】
図7(イ)はハンドル14が中立状態、即ちレバー部40が下向きであってハンドル14を何ら操作していない状態を示している。
この状態から、(ロ)に示しているようにハンドル14を図中左方向に90°まで回転させると、ハンドル14側のストッパ42-2が環状部材50側のストッパ68の図中左端に当接してそこで回転規制される。そしてこのときのハンドル14の操作によって大洗浄が行われる。
【0045】
一方、図7(ハ)に示しているようにハンドル14を図中右方向(反時計方向)に回転させると、ハンドル14のストッパ42-1がスピンドルガイド48のストッパ72-1の右端に当接してそこで回転規制される。
このときのハンドル14の回転角度は55°である。そのようにストッパ72-1の位置が予め定められている。
そしてこのようにハンドル14を図中右方向に55°回転させ、そこに保持させることで小洗浄、即ち小便時における便器の洗浄が行われる。
【0046】
図7(ニ)は寒冷地において水抜きを行う際のハンドル14の操作状態を表したもので、このときにはハンドル14のリブ状のストッパ42-1が、スピンドルガイド48のストッパ72-1の切欠74-1に嵌った状態となって、ハンドル14がそこに保持される。
このときのハンドル14の回転角度は75°である。
切欠74-1の位置が予めそのように定められている。
尚ハンドル14のストッパ42-1を切欠74-1に嵌め込むには次のようにすればよい。
即ちハンドル14をスプリング58の付勢力に抗してタンク壁から離れる方向に引っ張り、その状態でハンドル14を図中右方向に回転させる。そしてハンドル14が丁度中立位置から右方向に75°回転したところで、ハンドル14に対する引張力を除くと、スプリング58の付勢力でハンドル14がタンク壁側に引き戻され、ストッパ42-1が切欠き74-1に嵌り込んだ状態となる。
【0047】
次に、図8は同じくハンドル14が洗浄タンク10の左側面に取り付けられた場合で、且つ便器の洗浄装置が節水洗浄タイプである場合のストッパの位置とハンドルの回転角度との関係を表したものである。
この節水洗浄におけるハンドル14の操作パターンは、大洗浄,小洗浄何れの場合にもハンドル14を同じ回転量だけ図中左向き又は右向きに回転させる場合である。
そこで、ここでは図8に示しているようにスピンドルガイド48側のストッパ72-1,72-2を図6に示す状態、即ちスピンドルガイド48側のストッパ72-1,72-2の右端及び左端が、それぞれ環状部材50のストッパ68の図中右端及び左端と同一位置となるようにしておく。
【0048】
この状態でハンドル14を図中左側の大洗浄側に一杯まで回転させると(図8(ロ))、ハンドル14が90°左方向に回転したところでハンドル14側のストッパ42-2が、スピンドルガイド48のストッパ72-2及び環状部材50のストッパ68のそれぞれの図中左端に当接して、そこで回転規制される。
そしてこのハンドル14の回転操作により便器の大洗浄が行われる。
【0049】
一方、図8(ハ)に示しているようにハンドル14を今度は逆に図中右方向に90°回転させると、その位置でハンドル14側のストッパ42-1が、スピンドルガイド48のストッパ72-1及び環状部材50のストッパ68のそれぞれの図中右端に当接して、そこで回転規制される。
【0050】
但しこの場合には、(ロ)の大洗浄時に較べて洗浄タンク10からの洗浄水の放出量は少なく、便器に対する小洗浄が行われる。
尚このようにハンドル14を図中右向きに90°回転させても小洗浄が行われるのは、図15に示す水受器222に水を溜めておくことで、排出弁の閉弁までの時間が短くなることによる。
【0051】
次に図8(ニ)は寒冷地において水抜きを行う際のハンドル14の操作状態を表している。
図示のようにこのときには、ハンドル14側のストッパ42-1をスピンドルガイド48及び環状部材50の図中右側の切欠き74-1及び70-1に嵌め込んで、ハンドル14の位置を図中右方向に110°回転した位置に保持しておく。
【0052】
次に図9は便器の洗浄装置が大洗浄のみの場合のハンドル14の操作パターンをストッパの位置関係とともに表したものである。
同図に示しているようにこのときには、スピンドルガイド48を図7に示す状態よりも更に噛合凹部69の1ピッチ分だけ環状部材50に対し相対的に図中右向きに回転させておく。
このとき、スピンドルガイド48のストッパ72-1は図7に示す状態よりも更に図中右方向に前進移動した状態となる。
【0053】
図9(イ)は、ハンドル14が中立状態にある状態を表している。この状態からハンドル14を図中左方向に90°回転させると、ハンドル14のストッパ42-2が環状部材50のストッパ68の図中左端に当接して、そこで回転規制される(図9(ロ))。
このときのハンドル14の回転角度は左方向に丁度90°である。
【0054】
一方ハンドルを14(イ)の中立位置から図中右方向、即ち小洗浄側に回転しようとしても、ハンドル14側のストッパ42-1がスピンドルガイド48のストッパ72-1の右端に当接した状態にあって、ハンドル14を図中右方向に回転することができない。
即ちこの大洗浄のみの場合には、ハンドル14を小洗浄側には回転することができず、大洗浄側にのみ回転することができる。
【0055】
図9(ハ)は寒冷地において水抜きを行う際のハンドル14の操作状態を表している。
この水抜きの操作状態では、ハンドル14の一対のストッパ42-1,42-2がスピンドルガイド48のストッパ72-1と72-2との間に入り込んだ状態となって、ハンドル14がそれらストッパ72-1,72-2の作用にて位置保持される。このときのハンドル14の回転角度は図中右方向に丁度85°回転した状態である。
ストッパ72-1の図(ハ)中上端、即ち反時計方向の端の位置が予めそのように定められている。
【0056】
図10〜図12は、ハンドル14が洗浄タンク14の右側面に取り付けられている場合の図7,図8,図9に相当するハンドル14の操作状態を表した図である。
図7と図10,図8と図11,図9と図12の比較から明らかなように、これら図10,図11,図12では、スピンドルガイド48のストッパ72-1,72-2が上記とは逆向きに回転方向位置が調節され、またハンドル14の回転方向が図7〜図9に示すのと逆方向である点で他の点以外は基本的に図7〜図9に示すのと同様である。従ってここでは更に詳しい説明は省略する。
【0057】
以上のような本実施形態によれば、ストッパ68の回転方向位置を調節することで、ハンドル14の回転量に対する規制を任意に変更し調節することができる。
これにより、操作パターンの様々に異なる各種の洗浄ハンドル装置を、共通の洗浄ハンドル装置12にて構成することが可能となり、洗浄ハンドル装置に要するコストを低減することができるとともに、在庫管理を単純化でき、また設置現場において洗浄ハンドル装置を取り替える際においても、従来のように面倒な洗浄ハンドル装置の種類の特定を行わなくても良く、また洗浄ハンドル装置の種類を誤って特定してしまうことによって設置現場における洗浄ハンドル装置の交換ができなくなってしまうといった不都合も解消することができる。
【0058】
本実施形態では、スピンドルガイド48に対する環状部材50の相対回転方向の組付位置を変えることにより、ハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に容易に調節することができる。
【0059】
次に図13(A)は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、スピンドルガイド48に環状部材50を一体に構成して成る保持部材46に、スピンドルガイド48のストッパ72-1,72-2を備えるのに代えて、ブロック状をなすストッパ部材76又は78を組み付けて、ハンドル14に対する回転規制を行うストッパの位置を回転方向に調節可能となした例である。
【0060】
ここで保持部材46には、ストッパ部材76,78の組み付けのための嵌込溝(蟻溝)79-1,79-2,79-3,79-4が設けられており、またブロック状をなすストッパ部材76,78の両面には、対応する蟻突状から成る突起80-1,80-2,80-3,80-4,80-5,80-6が設けられている。
【0061】
この実施形態において、ストッパ部材76の突起80-1を保持部材46の嵌込溝79-4に嵌め込むことでストッパ部材76が保持部材46に組み付けられ、このストッパ部材76によってハンドル14を図中左向きに回転したとき、その回転量がストッパ部材76のストッパ82にて規制される。
このときのハンドル14の図中左方向の回転角度は55°で、この操作状態は図10(ハ)に示したのと同じ操作状態である。
【0062】
また一方、ストッパ部材74を向きを逆向きとして、突起80-2を保持部材46の嵌込溝79-1に嵌め込んでストッパ部材74を保持部材46に組み付けると、今度はハンドル14を図中右方向に55°だけ回転したところでハンドルの回転規制が行われる。
このときのハンドル14の操作状態は図7(ハ)に示したのと同様の操作状態である。
【0063】
次に、ストッパ部材78の突起80-3,80-4を保持部材46の嵌込溝79-4,79-3に嵌め込んで、ストッパ部材78を保持部材46の左側に組み付けると、ここにおいてハンドル14は中立位置からの図中左方向の回転がストッパ84に規制された状態となる。
このときのハンドル14の操作状態は図12(イ)に示したのと同様の操作状態である。
【0064】
他方、ストッパ部材78を表裏逆向きにして、突起80-5,80-6を保持部材46の図中右側の嵌込溝79-1,79-2に嵌め込んでストッパ部材78を保持部材46の右側に組み付けると、今度はハンドル14が中立位置から図中右方向に回転規制された状態となる。
このときのハンドル14の操作状態は図9の(イ)に示したのと同様の操作状態となる。
このように、本実施形態においても容易にハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
【0065】
次に、図13(B)は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、上記とは別の形態をなす保持部材85に対して、これとは別体をなす、円弧状のストッパ83を有するストッパ部材86を保持部材85の端面に被せるようにして、且つ回転方向に位置調節可能に組み付け、そのストッパ部材86の回転方向の位置調節によって、ハンドル14に対する回転規制を行うストッパの位置を回転方向に位置調節可能となした例である。
この実施形態においても、容易にハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
【0066】
次に図14は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例はハンドル14とは別体をなし、ストッパ88,90を有するブロック状に構成したストッパ部材92を、ハンドル14の差込穴94又は96に嵌め込んでハンドル14側のストッパの位置、即ちハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に位置調節するようになした例である。
この実施形態においても、容易にハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
【0067】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態の洗浄ハンドル装置を洗浄タンクへの取付状態で示す図である。
【図2】同実施形態の洗浄ハンドル装置を示す図である。
【図3】同実施形態の洗浄ハンドル装置を各部材に分解して示す図である。
【図4】同実施形態を図3とは異なる方向で示した図である。
【図5】同実施形態の要部を拡大して示した図である。
【図6】図5のストッパの位置関係を示した図である。
【図7】同実施形態の洗浄ハンドル装置の一操作パターンを示した模式図である。
【図8】図7とは異なる操作パターンを示した模式図である。
【図9】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図10】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図11】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図12】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図13】本発明の他の実施形態の要部を示した図である。
【図14】本発明の更に他の実施形態の要部を示した図である。
【図15】従来の便器の洗浄装置の一例を示した図である。
【図16】ハンドルがタンクの左側面に取り付けられる場合と右側面に取り付けられる場合とを示した図である。
【図17】従来のハンドルの操作パターンを示した模式図である。
【図18】図17とは異なる操作パターンを示した模式図である。
【図19】更に他の操作パターンを示した模式図である。
【図20】更に他の操作パターンを示した模式図である。
【符号の説明】
【0069】
12 洗浄ハンドル装置
14 ハンドル
42-1,42-2,68,72-1,72-2,82,83,84,88,90 ストッパ
46,85 保持部材
48 スピンドルガイド(第1のストッパ部材)
50 環状部材(第2のストッパ部材)
76,78,86,92 ストッパ部材
94,96 差込穴
【技術分野】
【0001】
この発明は、ハンドルの回転により且つ回転の方向や回転量に応じて便器に対する洗浄水の供給量を定める洗浄ハンドル装置に関し、詳しくは共通の洗浄ハンドル装置にて様々な洗浄タンクや洗浄方式に対応可能な洗浄ハンドル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、便器の洗浄装置として洗浄タンク内部に洗浄水を貯え、洗浄タンクに設けたハンドルを回転させることにより洗浄タンク底部の排出弁を開いて洗浄タンク内の洗浄水を便器側に放出(供給)し、便器洗浄を行うものが広く用いられている。
【0003】
図15はその一例を示している(下記特許文献1に開示のもの)。同図において200は洗浄タンクで、202,204はその内部に設けられた浮玉,ボールタップである。
ボールタップ204は、その弁部が連動アーム206にて浮玉202と連結されており、洗浄タンク200内部に貯えられた洗浄水が放出されて浮玉202が下降すると弁部を開いて給水口208から給水を行い、また洗浄タンク200内部が満水状態となって浮玉202が上昇すると弁部を閉じて給水口208からの給水を停止する。
尚210はオーバーフロー管である。
【0004】
212は洗浄ハンドル装置で、洗浄タンク200の壁部に回転可能に設けられたハンドル213を有している。
ハンドル213からはL字状をなす作用レバー214が洗浄タンク200内部に延び出していて、その先端が鎖218を介して洗浄タンク210底部の排出弁216に連結されている。
この便器の洗浄装置の場合、洗浄ハンドル装置212のハンドル213を回転操作すると、作用レバー214が一体に回転して鎖218を介し排出弁216を引き上げ、開動作させる。
すると洗浄タンク200内部に貯えてある洗浄水が、排出口220から一挙に便器側に排出され、便器が洗浄される。
【0005】
ところでこの種の便器の洗浄装置は、図16(A)に示しているようにハンドル213が洗浄タンク200の左側面に取り付けられる場合と、図16(B)に示しているように右側面に取り付けられる場合とがあり、それぞれでハンドル213の回転方向が逆方向となる。
また便器の種類が異なると洗浄の方式も異なったものとなり、これに応じてハンドル213の回転操作量も変化し、更に寒冷地においては凍結防止のためにハンドル213の操作によって排出弁216を開いたままとし、洗浄タンク内の洗浄水を流し放しとすることが行われている。
【0006】
図17〜図20はこれを具体的に表したものである。
このうち図17,図18はハンドル213が洗浄タンク200の左側面に取り付けられる場合を表しており、また図17中(A)は便器の洗浄方式が小洗浄ホールドの場合、具体的には小洗浄の場合には使用者がハンドル213を小洗浄側まで一杯に回転してそのまま保持する場合を表している。
この場合には、ハンドル213に対する正面視において使用者がハンドル213を左方向(時計方向)に90°回転させることで大洗浄が行われ((A)(ロ)参照)、また右方向(反時計方向)にこれよりも小さい角度、例えば55°回転させ且つそこに保持することで小洗浄が行われる((A)(ハ)参照)。
【0007】
また寒冷地仕様の洗浄ハンドル装置212においては、ハンドル213を右方向に75°回転した位置にこれを保持する機能が備えてあり、ハンドル213をこの位置に保持させておくことで排出弁216が開き放しととなり、洗浄タンク200から便器に向けて水が一定量流れ放しとなり、凍結が防止される。
【0008】
図17(B)は便器の洗浄装置が節水タイプのものである場合のハンドルの操作を表している。
便器の洗浄装置の1種として、図15に示しているように排出弁216と一体に昇降する水受器222を備えた形態のものがあり、この洗浄装置では、水受器222に水を溜めた状態又は水受器222内の水を排出した状態とに切替えることによって大洗浄と小洗浄とを切り替える。
詳しくは、水受器222に水を溜めた状態とすることで、これを排出弁216に対する錘として作用させ、これにより一旦開弁した排出弁216が閉じるまでの時間を短くして洗浄水の放出の量を少なくする。
【0009】
また一方、水受器222内の水を排出し、水受器222内を空の状態とすることで、排出弁216が閉じるまでの時間を長くし、これによって洗浄水の放出量を多くし、大洗浄を行う。
この便器の洗浄装置では、水受器222内部に水を溜めた状態とするか、又は空の状態とするかによって、小洗浄と大洗浄とを切り替えるものであり、この場合には大洗浄の場合も、小洗浄の場合もハンドル213の回転量は等しいものとなる。
【0010】
詳しくは、図17(B)(ロ)に示しているようにハンドル213を左方向に90°回転させることで大洗浄を行い、また同図(B)(ハ)に示しているように逆方向の右方向に90°回転させることで小洗浄を行う。
また寒冷地においては水抜きを行うべく、ハンドル213を110°まで回転させた位置にこれを保持し、水を出っ放しとする。
【0011】
次に、図18(C)は大洗浄のみを行う場合のハンドル213の操作を表している。
同図に示しているように、この場合にはハンドル213を左方向に90°回転操作することで大洗浄を行うが((C)(ロ)参照)、小洗浄側即ち図中右方向には回転不能である。
この(C)の場合においても、寒冷地仕様のものでは水抜きを行う機能が備えられており、この場合にはハンドル213を使用者側に(手前に)引いた上で右方向に85°回転させてタンク側に戻し、そこにこれを保持させて水を出っ放しとする。
【0012】
一方図19,図20はハンドルが洗浄タンク200の右側面に取り付けられる場合のハンドルの操作を表している。
このようにハンドル213が洗浄タンク200の右側面に取り付けられる場合には、ハンドル213の回転方向が上記とは逆方向となる。
このようにハンドル213が洗浄タンク200の右側面に取り付けられる場合においても、上記のように小洗浄ホールドの操作パターン(図19(A))と、節水の操作パターン(図19(B))と、大洗浄のみの操作パターン(図20(C))、更にはまたそれぞれで水抜きの際の操作パターンとがあり、何れもハンドル213の回転方向は、かかるハンドル213が洗浄タンク200の左側面に取り付けられた場合、即ち図17,図18に示す場合と逆方向でその回転操作量は上記と同様となる。
【0013】
以上のようにハンドルの操作のパターンは便器の種類や洗浄ハンドル装置の取り付く位置或いは寒冷地仕様であるか否か等の諸事情によって様々であり、従来にあってはそれぞれに専用の洗浄ハンドル装置を用意してこれを用いていた。
しかしながらこの場合、多種類の洗浄ハンドル装置が必要となり、洗浄ハンドル装置に要するコストも高くなるとともに、在庫管理も煩雑となり、また便器及び洗浄装置の設置されている現場において洗浄ハンドル装置を取り替える際、何れの種類の洗浄ハンドル装置であるかの特定が簡単ではなく、その特定のために時間を要するとともに、交換すべき洗浄ハンドル装置を誤ってしまうと、設置現場において洗浄ハンドル装置の取替えができなくなってしまうといったトラブルの原因ともなる。
【0014】
本発明はこのような問題点を解決するために案出されたものである。
尚、下記特許文献2には湯水混合水栓においてハンドルを湯側に回転操作する際のストッパを設け、且つそのストッパの位置を調節できるようになした点が開示されているが、このものは湯水混合水栓に関するものであって本発明とは対象が異なっており、また本発明の対象とする洗浄ハンドル装置においてストッパ位置を変更するようになしたものは従来提案されていない。
【0015】
【特許文献1】特開2002−167838号公報
【特許文献2】特開平11−21959号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は以上のような事情を背景とし、従来のようにハンドルの操作パターンの違いによってそれぞれに専用の洗浄ハンドル装置を用意する必要を無くし、共通の洗浄ハンドル装置にてそれぞれに対応可能な洗浄ハンドル装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
而して請求項1のものは、ハンドルの回転により洗浄水を供給して便器洗浄を行わせるに際し、該ハンドル側に設けたハンドル側ストッパと、該ハンドルを回転可能に保持する保持部材側に設けた保持側ストッパとの回転方向の当接作用により該ハンドルの回転量を規制し洗浄水量を定めるようにした洗浄ハンドル装置において、前記ハンドル側ストッパ及び保持側ストッパの少なくとも何れか一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする。
【0018】
請求項2のものは、請求項1において、前記保持部材又はハンドルに備えた第1のストッパ部材に対して第2のストッパ部材を組み付けることにより若しくは組付位置を変えることにより、前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする。
【0019】
請求項3のものは、請求項2において、前記第1のストッパ部材に対する前記第2のストッパ部材の相対的な回転方向の組付位置が変更可能となしてあり、該第2のストッパ部材の組付位置の変更により前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしてあることを特徴とする。
【0020】
請求項4のものは、請求項3において、前記保持部材側において第2のストッパ部材を第1のストッパ部材の内周側又は外周側に組み付けてあることを特徴とする。
【0021】
請求項5のものは、請求項2において、前記第2のストッパ部材を独立したブロック状に構成して、該第2のストッパ部材を差込穴に差し込んで組み付けるようになしてあることを特徴とする。
【0022】
請求項6のものは、請求項2において、前記第2のストッパ部材を第1のストッパ部材に被せる状態に組み付けるようになしてあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0023】
以上のように本発明は、ハンドル側ストッパ及び保持側ストッパの少なくとも何れか一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしたもので、本発明によれば、ストッパの回転方向位置を調節することで、ハンドルの回転量に対する規制を任意に変更し調節することができる。
【0024】
これにより、操作パターンの様々に異なる各種の洗浄ハンドル装置を共通の洗浄ハンドル装置にて構成することが可能となり、洗浄ハンドル装置に要するコストを低減することができるとともに在庫管理を単純化でき、また設置現場において洗浄ハンドル装置を取り替える際においても、従来のように面倒な洗浄ハンドル装置の種類の特定を行わなくても良く、また洗浄ハンドル装置の種類を誤って特定してしまうことによって設置現場で洗浄ハンドル装置の交換ができなくなってしまうといった不都合も解消することができる。
【0025】
本発明では、保持部材又はハンドルに備えた第1のストッパ部材に対して第2のストッパ部材を組み付けることにより若しくは組付位置を変えることにより、上記ストッパの回転方向位置を調節可能となすことができる(請求項2)。
【0026】
このようにすれば容易にハンドルの回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
この場合において、第1のストッパ部材に対する第2のストッパ部材の相対的な回転方向の組付位置を変更可能となし、その第2のストッパ部材の組付位置の変更により、ストッパの回転方向位置を調節可能となしておくことができる(請求項3)。
【0027】
このようにすれば、第2のストッパ部材の組付位置を変更するだけで、簡単にハンドルの回転規制のためのストッパの回転方向位置が調節可能となる。
更にこの場合において、保持部材側で第2のストッパ部材を第1のストッパ部材の内周側又は外周側に組み付けておくことができる(請求項4)。
【0028】
一方請求項2において、第2のストッパ部材を独立したブロック状に構成し、これを差込穴に差し込んで組み付けるようになし、これによりハンドルの回転量を規制するストッパの回転方向位置を調節するようになすことができる(請求項5)。
或いはまた、第2のストッパ部材を第1のストッパ部材に被せる状態に組み付け、その組付けによって或いは組付位置を回転方向に変更することで、ハンドルの回転量を規制するストッパの回転方向位置を調節するようになすことができる(請求項6)。
【0029】
本発明においては、ハンドルを洗浄タンクの右に付けた場合と左に付けた場合とで、ハンドルに対する正面視において左右の回転範囲を対称とするように前記一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
また本発明においては、ハンドルを大洗浄側にのみ回転可能とするように前記一方のストッパ部の回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
【0030】
更に本発明においては、ハンドルに対する正面視において右方向と左方向とで同じ量だけ回転可能とするように前記一方のストッパ部の回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
また本発明においては、ハンドルを所定角度位置に保持可能とするように前記一方のストッパ部の回転方向位置を調節可能となしておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1において、10は洗浄タンクで、この洗浄タンク10に図1〜図4に示す洗浄ハンドル装置12が設けられている。
洗浄ハンドル装置12は、ハンドル14と、これから洗浄タンク10内部に延び出した、全体としてL字状をなす作用レバー16とを有している。
この作用レバー16は、外筒部材18とその内部に挿入された芯体20とを有しており、その芯体20の外筒部材18への挿入量を変えることによって、作用レバー16が全体的に伸縮可能とされている。即ち作用レバー16の全体の長さが調節可能とされている。
【0032】
この芯体20の側面には、図3に示しているように軸方向に沿って所定ピッチで複数の係合溝22が形成されている。
一方外筒部材18には、図4に示しているように径方向に貫通の係合窓24が設けられており、この係合窓24において弾性を有する止め輪26が上記複数の係合溝22の何れかに係合されることで、外筒部材18と芯体20とが軸方向に固定されるようになっている。
【0033】
尚芯体20には上下に平坦な係合面25が形成されており、また一方外筒部材18には対応する上下の位置に平坦な係合面27が形成され、それら係合面25と27との係合により、芯体20と外筒部材18とが軸周りに回転規制されている。
【0034】
芯体20は、図中左側に断面円形をなすスピンドル部28を有している。
このスピンドル部28の先端部には、角形状をなす係合部30と略球状をなす嵌込部32が設けられており、その嵌込部32が図1に示しているようにハンドル14の嵌込孔34に弾性的に嵌め込まれ、抜止めされている。
また係合部30が、ハンドル14の中心部に形成された筒状部36の内側の対応する角形状の係合孔38に嵌入係合させられており、それら芯体20とハンドル14とが一体回転するようになっている。
【0035】
ハンドル14は、レバー部40を有している。
また図3に示しているようにその内側には、中心部の筒状部36からハンドル14の円形の周壁部に向かって図中下向きにハの字状に開いた形態のストッパ(ハンドル側ストッパ)42-1,42-2が設けられている。
尚このハンドル14の中心部の筒状部36からはまた、リブ44が円形の周壁部に向かって延び出しており、それらリブ44によって筒状部36と周壁部とが互いに連結されている。
ここでリブ44の図中右側の端面はストッパ42-1,42-2の端面よりも図中左側に引き込んだ位置に位置している。
【0036】
図1において、46は洗浄タンク10のタンク壁に取り付けられ、作用レバー16を介してハンドル14を保持する保持部材で、円筒形状をなすスピンドルガイド(第1のストッパ部材)48と、その端部(図中左端部)の外周側に回転方向に位置調節可能に設けられた、スピンドルガイド48とは別体をなす環状部材(第2のストッパ部材)50とを有している。
このスピンドルガイド48には、図1及び図3に示しているように内周側に段付部54が設けられており、この段付部54と、芯体20の段付部56との間にスプリング58が介装され、かかるスプリング58によって作用レバー16及びハンドル14が図中右向き、即ち洗浄タンク10内部に向けて付勢されている。
【0037】
環状部材50には、図1及び図4に示しているように径方向内向きのフランジ部60が設けられており、また一方スピンドルガイド48の端部には径方向外向きのフランジ部62が設けられており、環状部材50は、このスピンドルガイド48のフランジ部62とタンク壁とで軸方向に挟まれる状態でスピンドルガイド48に組み付けられている。
尚スピンドルガイド48の外周面には雄ねじ64が設けられており、この雄ねじ64への固定ナット66のねじ込みによって、保持部材46がタンク壁に取り付けられている。
【0038】
上記環状部材50のハンドル14側の面には、図5,図6に示しているように外周部に沿って円弧形状をなすストッパ68が、ハンドル14側に起立状態で設けられている。
このストッパ68の図5及び図6中右側端部と左側端部とには切欠70-1,70-2が設けられている。
ここでストッパ68は、図6に示しているように正面視において右側部分と左側部分とが対称形状をなしており、ストッパ68の図中右端と左端とが、図中下端から同じ角度θ1の位置に位置している。
【0039】
一方、スピンドルガイド48のハンドル14側の面にも同様にしてストッパ72-1,72-2が起立状態に設けられている。
これらストッパ72-1,72-2にも同様に切欠74-1,74-2が設けられている。
図5及び図6に示す状態において、環状部材50側の切欠70-1,70-2と、スピンドルガイド48側の切欠74-1,74-2とはそれぞれ互いに一致している。
【0040】
図5及び図6に示しているように、スピンドルガイド48にはハンドル14側の端部の外周面に所定間隔で複数の楔状の噛合凹部69が設けられている。
また一方、環状部材50には対応する楔形状の噛合突起71が一対設けられている。
【0041】
スピンドルガイド48と環状部材50とは、それら噛合凹部69と噛合突起71との係合により相対的な回転方向位置が固定され、また噛合突起71に係合するスピンドルガイド48側の噛合凹部69を異ならせることで、環状部材50に対するスピンドルガイド48の回転方向位置が調節される。
即ちストッパ72-1,72-2、更に切欠74-1,74-2の回転方向位置が図中右回転方向に或いは左回転方向に調節される。
【0042】
本実施形態の洗浄ハンドル装置12は、ハンドル14が洗浄タンク10の左側面に取り付けられる場合,右側面に取り付けられる場合、また便器の洗浄装置の種類が図17〜図20に示す小洗浄ホールド,節水洗浄,大洗浄のみの洗浄の何れである場合においても、また更に寒冷地仕様である場合,寒冷地仕様でない場合の何れかに対しても共通の洗浄ハンドル装置12にて対応することが可能である。
図7〜図12はこれを具体的に表している。
【0043】
先ず図7はハンドル14が洗浄タンク10の左側面に取り付けられる場合で、且つの小洗浄ホールドの操作パターンである場合を表している。
この場合、スピンドルガイド48に対する環状部材50の組付位置を楔状の噛合凹部69の1ピッチ分だけ図中左回転方向に変更することによって、スピンドルガイド48の回転方向を右回転方向に変更し、これによってスピンドルガイド48に設けたストッパ72-1,72-2を対応する角度だけ右回りに移動させる。
このとき、スピンドルガイド48の図中右側のストッパ72-1が、環状部材50のストッパ68の右端よりも図中右回転方向に移動した状態となる。
【0044】
図7(イ)はハンドル14が中立状態、即ちレバー部40が下向きであってハンドル14を何ら操作していない状態を示している。
この状態から、(ロ)に示しているようにハンドル14を図中左方向に90°まで回転させると、ハンドル14側のストッパ42-2が環状部材50側のストッパ68の図中左端に当接してそこで回転規制される。そしてこのときのハンドル14の操作によって大洗浄が行われる。
【0045】
一方、図7(ハ)に示しているようにハンドル14を図中右方向(反時計方向)に回転させると、ハンドル14のストッパ42-1がスピンドルガイド48のストッパ72-1の右端に当接してそこで回転規制される。
このときのハンドル14の回転角度は55°である。そのようにストッパ72-1の位置が予め定められている。
そしてこのようにハンドル14を図中右方向に55°回転させ、そこに保持させることで小洗浄、即ち小便時における便器の洗浄が行われる。
【0046】
図7(ニ)は寒冷地において水抜きを行う際のハンドル14の操作状態を表したもので、このときにはハンドル14のリブ状のストッパ42-1が、スピンドルガイド48のストッパ72-1の切欠74-1に嵌った状態となって、ハンドル14がそこに保持される。
このときのハンドル14の回転角度は75°である。
切欠74-1の位置が予めそのように定められている。
尚ハンドル14のストッパ42-1を切欠74-1に嵌め込むには次のようにすればよい。
即ちハンドル14をスプリング58の付勢力に抗してタンク壁から離れる方向に引っ張り、その状態でハンドル14を図中右方向に回転させる。そしてハンドル14が丁度中立位置から右方向に75°回転したところで、ハンドル14に対する引張力を除くと、スプリング58の付勢力でハンドル14がタンク壁側に引き戻され、ストッパ42-1が切欠き74-1に嵌り込んだ状態となる。
【0047】
次に、図8は同じくハンドル14が洗浄タンク10の左側面に取り付けられた場合で、且つ便器の洗浄装置が節水洗浄タイプである場合のストッパの位置とハンドルの回転角度との関係を表したものである。
この節水洗浄におけるハンドル14の操作パターンは、大洗浄,小洗浄何れの場合にもハンドル14を同じ回転量だけ図中左向き又は右向きに回転させる場合である。
そこで、ここでは図8に示しているようにスピンドルガイド48側のストッパ72-1,72-2を図6に示す状態、即ちスピンドルガイド48側のストッパ72-1,72-2の右端及び左端が、それぞれ環状部材50のストッパ68の図中右端及び左端と同一位置となるようにしておく。
【0048】
この状態でハンドル14を図中左側の大洗浄側に一杯まで回転させると(図8(ロ))、ハンドル14が90°左方向に回転したところでハンドル14側のストッパ42-2が、スピンドルガイド48のストッパ72-2及び環状部材50のストッパ68のそれぞれの図中左端に当接して、そこで回転規制される。
そしてこのハンドル14の回転操作により便器の大洗浄が行われる。
【0049】
一方、図8(ハ)に示しているようにハンドル14を今度は逆に図中右方向に90°回転させると、その位置でハンドル14側のストッパ42-1が、スピンドルガイド48のストッパ72-1及び環状部材50のストッパ68のそれぞれの図中右端に当接して、そこで回転規制される。
【0050】
但しこの場合には、(ロ)の大洗浄時に較べて洗浄タンク10からの洗浄水の放出量は少なく、便器に対する小洗浄が行われる。
尚このようにハンドル14を図中右向きに90°回転させても小洗浄が行われるのは、図15に示す水受器222に水を溜めておくことで、排出弁の閉弁までの時間が短くなることによる。
【0051】
次に図8(ニ)は寒冷地において水抜きを行う際のハンドル14の操作状態を表している。
図示のようにこのときには、ハンドル14側のストッパ42-1をスピンドルガイド48及び環状部材50の図中右側の切欠き74-1及び70-1に嵌め込んで、ハンドル14の位置を図中右方向に110°回転した位置に保持しておく。
【0052】
次に図9は便器の洗浄装置が大洗浄のみの場合のハンドル14の操作パターンをストッパの位置関係とともに表したものである。
同図に示しているようにこのときには、スピンドルガイド48を図7に示す状態よりも更に噛合凹部69の1ピッチ分だけ環状部材50に対し相対的に図中右向きに回転させておく。
このとき、スピンドルガイド48のストッパ72-1は図7に示す状態よりも更に図中右方向に前進移動した状態となる。
【0053】
図9(イ)は、ハンドル14が中立状態にある状態を表している。この状態からハンドル14を図中左方向に90°回転させると、ハンドル14のストッパ42-2が環状部材50のストッパ68の図中左端に当接して、そこで回転規制される(図9(ロ))。
このときのハンドル14の回転角度は左方向に丁度90°である。
【0054】
一方ハンドルを14(イ)の中立位置から図中右方向、即ち小洗浄側に回転しようとしても、ハンドル14側のストッパ42-1がスピンドルガイド48のストッパ72-1の右端に当接した状態にあって、ハンドル14を図中右方向に回転することができない。
即ちこの大洗浄のみの場合には、ハンドル14を小洗浄側には回転することができず、大洗浄側にのみ回転することができる。
【0055】
図9(ハ)は寒冷地において水抜きを行う際のハンドル14の操作状態を表している。
この水抜きの操作状態では、ハンドル14の一対のストッパ42-1,42-2がスピンドルガイド48のストッパ72-1と72-2との間に入り込んだ状態となって、ハンドル14がそれらストッパ72-1,72-2の作用にて位置保持される。このときのハンドル14の回転角度は図中右方向に丁度85°回転した状態である。
ストッパ72-1の図(ハ)中上端、即ち反時計方向の端の位置が予めそのように定められている。
【0056】
図10〜図12は、ハンドル14が洗浄タンク14の右側面に取り付けられている場合の図7,図8,図9に相当するハンドル14の操作状態を表した図である。
図7と図10,図8と図11,図9と図12の比較から明らかなように、これら図10,図11,図12では、スピンドルガイド48のストッパ72-1,72-2が上記とは逆向きに回転方向位置が調節され、またハンドル14の回転方向が図7〜図9に示すのと逆方向である点で他の点以外は基本的に図7〜図9に示すのと同様である。従ってここでは更に詳しい説明は省略する。
【0057】
以上のような本実施形態によれば、ストッパ68の回転方向位置を調節することで、ハンドル14の回転量に対する規制を任意に変更し調節することができる。
これにより、操作パターンの様々に異なる各種の洗浄ハンドル装置を、共通の洗浄ハンドル装置12にて構成することが可能となり、洗浄ハンドル装置に要するコストを低減することができるとともに、在庫管理を単純化でき、また設置現場において洗浄ハンドル装置を取り替える際においても、従来のように面倒な洗浄ハンドル装置の種類の特定を行わなくても良く、また洗浄ハンドル装置の種類を誤って特定してしまうことによって設置現場における洗浄ハンドル装置の交換ができなくなってしまうといった不都合も解消することができる。
【0058】
本実施形態では、スピンドルガイド48に対する環状部材50の相対回転方向の組付位置を変えることにより、ハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に容易に調節することができる。
【0059】
次に図13(A)は本発明の他の実施形態を示している。
この例は、スピンドルガイド48に環状部材50を一体に構成して成る保持部材46に、スピンドルガイド48のストッパ72-1,72-2を備えるのに代えて、ブロック状をなすストッパ部材76又は78を組み付けて、ハンドル14に対する回転規制を行うストッパの位置を回転方向に調節可能となした例である。
【0060】
ここで保持部材46には、ストッパ部材76,78の組み付けのための嵌込溝(蟻溝)79-1,79-2,79-3,79-4が設けられており、またブロック状をなすストッパ部材76,78の両面には、対応する蟻突状から成る突起80-1,80-2,80-3,80-4,80-5,80-6が設けられている。
【0061】
この実施形態において、ストッパ部材76の突起80-1を保持部材46の嵌込溝79-4に嵌め込むことでストッパ部材76が保持部材46に組み付けられ、このストッパ部材76によってハンドル14を図中左向きに回転したとき、その回転量がストッパ部材76のストッパ82にて規制される。
このときのハンドル14の図中左方向の回転角度は55°で、この操作状態は図10(ハ)に示したのと同じ操作状態である。
【0062】
また一方、ストッパ部材74を向きを逆向きとして、突起80-2を保持部材46の嵌込溝79-1に嵌め込んでストッパ部材74を保持部材46に組み付けると、今度はハンドル14を図中右方向に55°だけ回転したところでハンドルの回転規制が行われる。
このときのハンドル14の操作状態は図7(ハ)に示したのと同様の操作状態である。
【0063】
次に、ストッパ部材78の突起80-3,80-4を保持部材46の嵌込溝79-4,79-3に嵌め込んで、ストッパ部材78を保持部材46の左側に組み付けると、ここにおいてハンドル14は中立位置からの図中左方向の回転がストッパ84に規制された状態となる。
このときのハンドル14の操作状態は図12(イ)に示したのと同様の操作状態である。
【0064】
他方、ストッパ部材78を表裏逆向きにして、突起80-5,80-6を保持部材46の図中右側の嵌込溝79-1,79-2に嵌め込んでストッパ部材78を保持部材46の右側に組み付けると、今度はハンドル14が中立位置から図中右方向に回転規制された状態となる。
このときのハンドル14の操作状態は図9の(イ)に示したのと同様の操作状態となる。
このように、本実施形態においても容易にハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
【0065】
次に、図13(B)は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例は、上記とは別の形態をなす保持部材85に対して、これとは別体をなす、円弧状のストッパ83を有するストッパ部材86を保持部材85の端面に被せるようにして、且つ回転方向に位置調節可能に組み付け、そのストッパ部材86の回転方向の位置調節によって、ハンドル14に対する回転規制を行うストッパの位置を回転方向に位置調節可能となした例である。
この実施形態においても、容易にハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
【0066】
次に図14は本発明の更に他の実施形態を示している。
この例はハンドル14とは別体をなし、ストッパ88,90を有するブロック状に構成したストッパ部材92を、ハンドル14の差込穴94又は96に嵌め込んでハンドル14側のストッパの位置、即ちハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に位置調節するようになした例である。
この実施形態においても、容易にハンドル14の回転規制を行うためのストッパの位置を回転方向に調節することができる。
【0067】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態の洗浄ハンドル装置を洗浄タンクへの取付状態で示す図である。
【図2】同実施形態の洗浄ハンドル装置を示す図である。
【図3】同実施形態の洗浄ハンドル装置を各部材に分解して示す図である。
【図4】同実施形態を図3とは異なる方向で示した図である。
【図5】同実施形態の要部を拡大して示した図である。
【図6】図5のストッパの位置関係を示した図である。
【図7】同実施形態の洗浄ハンドル装置の一操作パターンを示した模式図である。
【図8】図7とは異なる操作パターンを示した模式図である。
【図9】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図10】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図11】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図12】更に他の異なる操作パターンを示した模式図である。
【図13】本発明の他の実施形態の要部を示した図である。
【図14】本発明の更に他の実施形態の要部を示した図である。
【図15】従来の便器の洗浄装置の一例を示した図である。
【図16】ハンドルがタンクの左側面に取り付けられる場合と右側面に取り付けられる場合とを示した図である。
【図17】従来のハンドルの操作パターンを示した模式図である。
【図18】図17とは異なる操作パターンを示した模式図である。
【図19】更に他の操作パターンを示した模式図である。
【図20】更に他の操作パターンを示した模式図である。
【符号の説明】
【0069】
12 洗浄ハンドル装置
14 ハンドル
42-1,42-2,68,72-1,72-2,82,83,84,88,90 ストッパ
46,85 保持部材
48 スピンドルガイド(第1のストッパ部材)
50 環状部材(第2のストッパ部材)
76,78,86,92 ストッパ部材
94,96 差込穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルの回転により洗浄水を供給して便器洗浄を行わせるに際し、該ハンドル側に設けたハンドル側ストッパと、該ハンドルを回転可能に保持する保持部材側に設けた保持側ストッパとの回転方向の当接作用により該ハンドルの回転量を規制し洗浄水量を定めるようにした洗浄ハンドル装置において、
前記ハンドル側ストッパ及び保持側ストッパの少なくとも何れか一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項2】
請求項1において、前記保持部材又はハンドルに備えた第1のストッパ部材に対して第2のストッパ部材を組み付けることにより若しくは組付位置を変えることにより、前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1のストッパ部材に対する前記第2のストッパ部材の相対的な回転方向の組付位置が変更可能となしてあり、該第2のストッパ部材の組付位置の変更により前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項4】
請求項3において、前記保持部材側において第2のストッパ部材を第1のストッパ部材の内周側又は外周側に組み付けてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項5】
請求項2において、前記第2のストッパ部材を独立したブロック状に構成して、該第2のストッパ部材を差込穴に差し込んで組み付けるようになしてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項6】
請求項2において、前記第2のストッパ部材を第1のストッパ部材に被せる状態に組み付けるようになしてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項1】
ハンドルの回転により洗浄水を供給して便器洗浄を行わせるに際し、該ハンドル側に設けたハンドル側ストッパと、該ハンドルを回転可能に保持する保持部材側に設けた保持側ストッパとの回転方向の当接作用により該ハンドルの回転量を規制し洗浄水量を定めるようにした洗浄ハンドル装置において、
前記ハンドル側ストッパ及び保持側ストッパの少なくとも何れか一方のストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項2】
請求項1において、前記保持部材又はハンドルに備えた第1のストッパ部材に対して第2のストッパ部材を組み付けることにより若しくは組付位置を変えることにより、前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしたことを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項3】
請求項2において、前記第1のストッパ部材に対する前記第2のストッパ部材の相対的な回転方向の組付位置が変更可能となしてあり、該第2のストッパ部材の組付位置の変更により前記ストッパの回転方向位置を調節可能となしてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項4】
請求項3において、前記保持部材側において第2のストッパ部材を第1のストッパ部材の内周側又は外周側に組み付けてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項5】
請求項2において、前記第2のストッパ部材を独立したブロック状に構成して、該第2のストッパ部材を差込穴に差し込んで組み付けるようになしてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【請求項6】
請求項2において、前記第2のストッパ部材を第1のストッパ部材に被せる状態に組み付けるようになしてあることを特徴とする洗浄ハンドル装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−23621(P2007−23621A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−207653(P2005−207653)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】
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