説明

洗浄ヘッド

【課題】タンク用洗浄ヘッドの始動段階における回転運動の確実なトルク転送を確保できる洗浄ヘッドを提供する。
【解決手段】本発明によれば、洗浄ヘッドがタービン(3)とギアハウジング(13)のギアとの間に、ヒステリシスカップリング(9、11)を備えることにより、ギアがタービンと分離された状態のままになるので、液体による衝撃を受けることがない。ヒステリシスカップリング(9、11)は、インダクタとして電磁石(9)を使用することで調整が可能になり、洗浄ヘッドの回転運動を制御、規制して最良の洗浄パターンを得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄ヘッドに関し、特にタンクの内部に取付ける洗浄ヘッドに関する。この洗浄ヘッドは、ギアを回転させる圧力液体によって駆動されるタービンを備え、ギアハウジングおよびギアハウジングに設置されてノズルを有するハブを回転させる。この液体は作動中にタービンからノズルに送られる。ギアハウジングは固定部の取付部に取付けられ、液体はタービンからギアハウジングを迂回してノズルに流れる。そして、タービンの回転はカップリング部を有する磁気カップリングを介してギアの入力シャフトに転送される。カップリング部のうち駆動カップリング部は、ギアハウジングの外側に配置され、カップリング部のうち被駆動カップリング部はギアハウジングの内側に配置される。
【背景技術】
【0002】
この種の洗浄装置は、特にタンクの洗浄に用いられ、ノズルと圧力液体によって洗浄噴流を噴出し、これが旋回を回転を組み合わせて有効な方法でタンクを洗浄する。
【0003】
タービンのもたらす回転はギアに転送され、一部はハウジングを旋回させ、一部はノズルを有する回転ハブを回転させる。これにより、液体はギアを通過し、さらにはノズルまで通過する。
【0004】
ギアから液体が通過する部分を分離する必要がある場合、タービンの回転をギアに転送するには、磁気カップリングを介して行なわれる。この磁気カップリングは、駆動磁気部はハウジングの外側に配置され、ギアは液体から分離されて密閉されたハウジング内に組み入れられて、ギアの入力シャフトに接続された被駆動磁気部と一体化される。
【0005】
このようなタンク洗浄システムの洗浄ヘッドは、特許文献1によって知られている。特許文献1の図2では、液体流路にある羽根車38が、ギアハウジングの外側に配置された円盤状の磁気部40を駆動する。そして、円盤状の磁気部40は、ギアハウジングの内側の「ドライ」な所に位置する別の円盤状の磁気部58に磁気的に結合されている。特許文献1の第4欄第33行〜第38行および第5欄第4行〜第10行には、それぞれの磁気部は、ステンレススチールの円盤に埋め込まれた4個の均一な磁石からなり、その磁石は永久磁石の製造に典型的に用いられる材料からなることが記載されている。
【0006】
しかしながら、実際は、駆動側および被駆動側に永久磁石を有するこのような磁気カップリングをタンク用洗浄ヘッドに接続して満足するように作動させることは難しい。
【特許文献1】米国特許第5871023号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この公知のカップリングヘッドの問題は、磁気的なカップリングの一体化が失われ、これにより回転運動の転送ができなくなるという危険性であり、カップリングに「スリップ」が生じるという大きな危険性があるということである。後者の問題は主に、始動時にタービンに与えられる高速回転によるものであり、高速回転と静止した被駆動部とでは磁界を捉えることが困難になる。
【0008】
このような状況は、始動トルクまたは負荷トルクがカップリングの最大トルクを超えた時に発生する。カップリングは急激的または振動的にスリップする。その理由は互いに対向して配置された磁極の間で磁気が遮られて、非常に小さなトルクしか転送できなくなるためである。したがって、ベアリングやシステムの他の部品の損傷を避けるためにシステムを完全に閉鎖する必要がある。
【0009】
永久磁石を有するこの種のカップリングは、十分に機能するにはカップリング部品どうしが共に動くことが要求されるため、同期カップリングとも呼ばれる。言い換えると、システムが始動できるようにするには、カップリングは、その最大トルクが始動トルクよりも相当に大きくなるような規模にする必要がある。しかしながら、液体の流れの中のエラーや不純物が、負荷トルクを転送可能な最大トルクを超過させ、カップリングをスリップさせる状況が常に発生するおそれがある。通常の運転条件では、このようなカップリングは設計の際に決定される固定されたスリップ角で作動する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、このような欠点や短所を改善することである。この目的を達成するため本発明の洗浄ヘッドでは、タービンの回転は、ヒステリシスカップリングを介してギアハウジング内のギアに転送される。このヒステリシスカップリングは、液体空間に配置され、タービンによって駆動される磁気インダクタを備え、ギアの入力シャフトに接続されてギアハウジング内に設けられたヒステリシスカップリングの部品を駆動する構成になっている。
【発明の効果】
【0011】
このようなヒステリシスカップリングは、タンク用洗浄ヘッドの始動段階における回転運動の確実なトルク転送を確保する前例のない可能性を提供する。驚くことに、駆動磁気部および被駆動磁気部の間の始動時の回転速度が大きく異なるにもかかわらず、このヒステリシスカップリングは、被駆動磁気部を十分に加速させ、ギアの速度を加速させるトルクを供給することが可能であり、大きさを正しく設定すれば、始動トルクよりも大きなトルクを転送することができることがわかった。
【0012】
このヒステリシスカップリングは、さらに以下の利点を有している。カップリング部間の相対速度とは独立に、ほぼ一定のトルクを転送することができ、カップリングは連続的または変化するスリップを伴なって作動することが可能である。このスリップは「ソフト」なものであり、構造に悪影響を与えるものではない。
【0013】
しかしながら、スリップの状況においては、駆動磁気部からのエネルギーがヒステリシスカップリング部の材質に蓄積する。何故ならば、ヒステリシスカップリング部の磁極は、インダクタの磁極の通過の際に常に動くためである。このエネルギーは熱に変換され、圧力液体を介して周囲に排出される。
【0014】
請求項2および3に記載するように、電磁石をインダクタとして用いると、磁界強度を調整することができ、これにより、スリップ、ひいては転送されるトルクおよび/または速度を変化させ制御することができる。
【0015】
請求項4に記載するように、永久磁石をインダクタとして用いると、メンテナンスが不要になり、製造コストも低減できる。また、特に可燃および爆発性の気化物質のある環境で使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図面に示すように、洗浄ヘッドは入口スタブと、パイプ(図示せず)が固定される固定部6とを備えている。そして、固定部6を通じて洗浄液が洗浄ヘッドに供給される。
【0017】
入口流路1に入った液体は、ガイドプレートを有するステータ2を通って、プロペラを有するタービン3に送られる。ステータ2もタービン3も洗浄ヘッドの固定部6内の液体空間に取付けられている。
【0018】
タービン3はタービンシャフトと接続され、このタービンシャフトはヒステリシスカップリングの駆動インダクタ部9と接続されている。この駆動インダクタ部9もまた液体空間に配置されている。
【0019】
駆動インダクタ部9は複数の電磁石から構成されることが好ましく、これにより、電圧を変えることによって磁界強度を無段階に変化できる利点がある。この構成により、スリップを調整し、また、これによりトルクおよび/または速度を、ヒステリシスカップリングを介して転送するのに望ましいよう調整する選択肢が与えられる。
【0020】
電磁石に代えて、駆動インダクタ部9には永久磁石を備えることができる。これにより、ヒステリシスカップリングが規制できなくなるが、製造は容易かつ安価となり、また、可燃または爆発性の気化物質を放出する液体との作業を含むタンク洗浄システムを意図したものになる。
【0021】
ギアハウジング13は、固定部6の下方に取付けられて、仕切板10によって液体空間および流路5の液体の流れから分離される。言い換えると、ギアは液体から分離される。
【0022】
ヒステリシスカップリングの被駆動部11は、ギアハウジング13内側でギアの入力シャフト12に取付、固定される。被駆動部11は、電気的に絶縁性のFe203粉など酸化金属を含む磁性材料からなることが好ましい。この材料は高い等方性電気抵抗を有し、有効にヒステリシスカップリング部の渦電流の発生を防止する。さらに、比較的高温においても磁気特性がよい。
【0023】
この実施形態に代えて、互いが誘電性フィルムによって絶縁された複数の強磁性ヒステリシス材料の層を有する薄層状材料を用いることもできる。
【0024】
ギアはギアハウジング13とノズルハブ15とを駆動し、それぞれ旋回及び回転させ、流路4および流路5を流れた液体が流路7を介してノズル14に運ばれ、ノズル開口8から流出する。
【0025】
ヒステリシスカップリングの駆動インダクタ部9が電磁石を備える場合、磁界強度の調整によってスリップを規制することができ、また、これによりヒステリシスカップリングを介して転送されるトルクおよび/または速度を規制することができ、所望の旋回運動および回転運動を与えることができる。
【0026】
これにより、洗浄パターンは電子的に得ることができる。即ち、洗浄の動きを制御することにより、タンク内でアクセス困難な部分など、特別な領域で速度を遅くして、これらの領域の洗浄を確実に行なうことができる。
【0027】
ヒステリシスカップリングの駆動インダクタ部9が永久磁石を備える場合、カップリングのメンテナンスが不要になり、比較的製造コストが安価になる。また、可燃および爆発性の液体や気化物質を伴なう際に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1は本発明による洗浄ヘッドの実施形態を例示する部分断面図である。
【符号の説明】
【0029】
3 タービン
9 磁気インダクタ、インダクタ部
11 ヒステリシス部
12 入力シャフト
13 ギアハウジング
【図1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にタンクの内側に取付けられる洗浄ヘッドであり、この洗浄ヘッドはギアを回転させる圧力液体により駆動されるタービンを備え、このギアはギアハウジングおよびギアハウジングに取付けられてノズルを有するハブを回転させ、前記液体は作動中に前記タービンから前記ノズルに送られ、前記ギアハウジングは固定部に取付けられて前記タービンからの液体は前記ギアハウジングを迂回して前記ノズルに流れ、前記タービンの回転はカップリング部を有する磁気カップリングを介して前記ギアの入力シャフトに転送され、前記カップリング部のうち駆動カップリング部は前記ギアハウジングの外側に配置され、前記カップリング部のうち被駆動カップリング部は前記ギアハウジングの内側に配置された洗浄ヘッドにおいて、
前記タービン(3)の回転がヒステリシスカップリングを介して前記ギアハウジング(13)のギアに転送され、このヒステリシスカップリングは、液体空間に配置されて、タービン(3)によって駆動される磁気インダクタ(9)を備えるとともに、この磁気インダクタが前記ギアハウジング内に設けられたヒステリシス部(11)を駆動し、このヒステリシス部が前記ギアの入力シャフト(12)に接続されたことを特徴とする洗浄ヘッド。
【請求項2】
前記インダクタ部(9)が、電磁石から形成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄ヘッド。
【請求項3】
前記インダクタ部(9)が磁界強度に関して調整可能であり、これにより前記磁気カップリングを介して転送されるトルクおよび/または速度に関して調節可能であることを特徴とする請求項2に記載の洗浄ヘッド。
【請求項4】
前記インダクタ部(9)が、永久磁石により形成されていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄ヘッド。

【公表番号】特表2009−529414(P2009−529414A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−558636(P2008−558636)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【国際出願番号】PCT/DK2006/000643
【国際公開番号】WO2007/104307
【国際公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(506422814)
【氏名又は名称原語表記】ALFA LAVAL TANK EQUIPMENT A/S
【Fターム(参考)】