説明

洗浄剤組成物

【課題】本発明は、殺菌性能を十分発揮し、芳香性も付与した、、好ましくは、固形タイプの、廃棄物を利用した、安価で、環境問題にも配慮した洗浄剤組成物を提供する事を目的とする。
【解決手段】天然精油と水酸化カルシウムを含む洗浄剤組成物である。
また、酸化カルシウムおよび水を混合し反応させ、水酸化カルシウムを生成させた後、天然精油と混合した洗浄剤組成物でもよい。この場合、上記酸化カルシウムとしては、廃棄物である赤貝、イガイ、牡蠣、ハマグリ、アワビ類、サザエ等の食用貝の貝殻を粉砕し、500℃〜1800℃で焼成した粉末を使用してもよい。
天然精油としては、オレンジ油の成分であるリモネン等が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関するものである。好ましくは、固形タイプの洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄剤、特に固形タイプの洗浄剤組成物は、各種製造され、特許出願もされてはいるが、殺菌性、芳香性等の効果が十分でない。また殺菌性化合物として次亜塩素酸ナトリウム等が使用するものも出願されてはいるが、人体内への取り込みが懸念されているのが実状である。(特許文献1)
【特許文献1】特開2001−139991号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、殺菌性能を十分発揮し、芳香性も付与した、好ましくは固形タイプの、廃棄物を利用した、安価で、環境問題にも配慮した洗浄剤組成物を提供する事を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記問題点を解決するために鋭意検討した結果、天然精油と水酸化カルシウムを含む洗浄剤組成物により上記目的を達成しうることを見いだし本発明を完成した。さらに、本発明は、酸化カルシウムおよび水を混合し反応させ、水酸化カルシウムを生成させた後、天然精油と混合したものからなる固形消臭性組成物をも見いだし本発明を完成した。
【0005】
ここで、上記酸化カルシウムとしては、廃棄物である貝殻を粉砕し、500℃〜1800℃で焼成した粉末を使用してもよい。
天然精油としては、オレンジ油の成分であるリモネン等が挙げられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明の洗浄剤組成物は、その殺菌性、芳香性等の性能が良好であるばかりでなく、廃棄物である貝殻を利用した、環境問題にも配慮したものであり、従来の洗浄剤組成物に比べて比較的安価に製造可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の洗浄剤組成物について説明する。
まず、本発明で使用される天然精油について説明する。
天然精油は、植物から得られる油であるが、その種類は非常に多く、高価なものも多い。天然精油の中でも、安価で、工業的にも大量に入手可能なテルペン化合物についてさらに説明する。
テルペン化合物は天然の植物系の精油中に多く含まれ、安全性に優れた化合物である。
工業的には、植物の幹、葉、実から抽出される。中でも松ヤニやオレンジの果皮から得られるものが多く利用されている。
【0008】
テルペン化合物としては、炭素数10のモノテルペン化合物、炭素数15のセスキテルペン化合物、炭素数20のジテルペン化合物、炭素数30のトリテルペン化合物、モノテルペン化合物の多量体等が挙げられる。これらのテルペン化合物には、鎖状構造のものや単環のもの、更に多環のものがある。また、その種類は炭化水素の他に、アルコール体、アルデヒド体、ケトン体、エーテル体、およびカルボキシル基体等があり、その何れも使用することができる。その具体的な例として例えば次のものが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0009】
1)モノテルペン化合物の例
α−ピネン、β−ピネン、ジペンテン、リモネン、フェランドレン、α−テルピネン、γ−テルピネン、テルピノレン、ミルセン、アロオシメン、カンフェン、ボルニレン、パラメンテン−1、パラメンテン−2、パラメンテン−3、パラメンタジエン類、パラメンタン、2−カレン、3−カレン、ツジャン等のモノテルペン炭化水素類、α、βおよびγターピネオール、4−ターピネオール、パラメンテノール、パラメンタノール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、シトロネロール、アロシメノール、ミルセノール、カルベオール、メントール、ボルネオール、イソボルネオール、フェンチルアルコール、ベルベノール等のモノテルペンアルコール類、シトラール、シトロネラール等のテルペンアルデヒド類、イソプレゴン、カルボン、カンファー等のテルペンケトン類、飽水テレピン、パラメンタンジオール等のテルペンジオール類、1,4−シネオール、1,8−シネオール等のテルペンエーテル等である。
【0010】
2)セスキテルペン化合物の例
ロンギホレン、カリオフィレン、カジネン、ツヨプセン、セドレン、クロベン、ロンギピネン等のセスキテルペン炭化水素類、エレモール、カジノール、ユーデスモール等のセスキテルペンアルコール類等である。
【0011】
3)ジテルペン・トリテルペン化合物の例
カンフォレン、カウレン、アビエチノール、アビエチン酸、ピマール酸、イソピマール酸、レボピマール酸、ネオアビエチン酸等のロジン化合物、スクワレン等である。
【0012】
4)モノテルペン化合物の多量体の例
ピネンダイマー、リモネンダイマー、アロオシメンダイマー等のモノテルペン化合物の2量体、ピネン重合体、ジペンテン重合体等のモノテルペンの重合体等である。
【0013】
これらのテルペン化合物は単独で使用しても良いし、また2種類以上組み合わせて使用することもできる。
テルペン化合物を含む天然精油は、殺菌性を付与できると共に、芳香性も付与できる。
テルペン化合物の中でも、好ましくはリモネンである。
【0014】
本発明で使用される水酸化カルシウムは、水酸化カルシウム自体でもアルカリ性の作用により細菌やカビなどを死滅させることが可能であるが、天然精油が水酸化カルシウムに吸着保持された状態ものであれば、殺菌性、芳香性ともに良好となる。
水酸化カルシウムと天然精油の使用割合は、通常、水酸化カルシウム100重量部に対して、天然精油が0.1〜240重量部、好ましくは、1〜120重量部である。
0.1重量部未満であると、殺菌性の効果がなくなり、240重量部を超えると、水酸化カルシウムが、天然精油を含有する含有出来る限度を超える。
さらに、その好ましい例として、天然精油が水酸化カルシウムをシェルとするカプセル中に捕獲されたものを挙げることができる。
即ち、天然精油を水酸化カルシウムでカプセル化することにより、天然精油の浸出や飛散および酸素による変質を防止すること、および殺菌性効果を持続させることができる。また、天然精油が直接製品に触れることがないので安全性が向上する。
【0015】
また、本発明で使用される水酸化カルシウムは、酸化カルシウムならびに水を混合し反応させることにより得られる水酸化カルシウムであってもよい。
その洗浄剤組成物の製法としては、天然精油と、貝殻等を粉砕して焼成した酸化カルシウムならびに水を混合し反応させることにより得られる。
【0016】
本発明の貝殻は、天然の貝殻であれば、特に問題ないが、本発明では、具体的には、食用貝加工業者から排出される廃棄物である貝殻が好ましい。例えば、赤貝、イガイ、牡蠣、ハマグリ、アワビ類、サザエ等の食用貝である。
これら貝殻の主成分は炭酸カルシウムであるが、本発明では、この貝殻を粉砕し、500〜1800℃、好ましくは800〜1100℃、より好ましくは950〜1000℃で焼成した粉末を使用するものである。
炭酸カルシウム等は、上記温度で焼成することにより、大部分は、酸化カルシウム等に変化する。
酸化カルシウムは水と容易に水和反応し、発熱をともなって水酸化カルシウムとなる。その際、殺菌性を有する化合物を存在させておくと水和反応の際、その化合物が水酸化カルシウムに吸着保持される。
ここで、天然精油と酸化カルシウムおよび水の割合を変えることにより良好な洗浄剤組成物を得ることができる。即ち、これらの割合を最適化させると、殺菌性を有する天然精油を水酸化カルシウムをシェルとするカプセル中に完全に捕獲することができる。さらにこれらの割合はカプセルの粒径や、シェルの厚みに影響を与える。カプセルの粒径やシェルの厚みは、中に捕獲されている抗菌性または忌避性を有する化合物の浸出量や浸出速度に影響を与えるので本発明の成形体の重要な要素である。
【0017】
上記製法で使われる天然精油、酸化カルシウムおよび水の使用割合は、通常、酸化カルシウム100重量部に対して天然精油が0.1〜180重量部、好ましくは、1〜120重量部、水が5〜60重量部、好ましくは、10〜50重量部である。天然精油が0.1重量部未満だと消臭性の効果が小さく、また180重量部を越えると強度が劣るため好ましくない。また、水が5重量部未満だと水和反応が不十分となり、また60重量部を越えると気密性や強度が劣り好ましくない。
【0018】
本発明の製法で使われる酸化カルシウムは、粉末状のものでも粒状のもの、破砕品のいずれも使用できる。また、保存性を持たせるために粉末状または粒状のものの表面を撥水性の化合物でコーティングしたものを使用することもできる。
【0019】
また、本発明の洗浄剤組成物中には、必要に応じて、未反応の炭酸カルシウム、研磨剤、界面活性剤、殺菌剤、香料等の各種添加剤を含有させてもよい。
研磨剤としては、珪藻土、真珠岩、タルク、カリオンなどの多孔質吸油性紛体、および多孔質吸水性紛体等が使用できる。
界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルファオレフィンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、脂肪酸アルカノールアミド等があげられる。
【0020】
また、本発明の洗浄剤組成物中は、水などの溶媒に分散またはエマルジョン化させて製品化または使用することもできる。
【0021】
また、本発明の洗浄剤組成物の使用形態として、他の機能性製品、例えば芳香剤と組み合わせて使用してもよい。
【実施例】
【0022】
実施例1
ヤスハラケミカル(株)製d−リモネン(純度:99%)40gと粉末状水酸化カルシウム100gを室温下で混合し、白色粒状体を得た。この白色粒状体組成物にアルキル硫酸エステル塩10g、タルク100gを配合し、洗浄剤組成物を作製した。この洗浄剤組成物10gを、ビニルたわしにふりかけ、食用油が付着したプラスチック製食器を水を加えて洗浄したところ、食用油が完全に除去でき、芳香性も良好であった。また、この洗浄剤組成物は、水酸化カルシウムおよびd−リモネンを使用しているので殺菌性を有している。
【0023】
実施例2
主成分が炭酸カルシウムである廃棄物となっている牡蠣殻をボールミル粉砕機を使用して粉砕した後、径4m、長さ60mの鋼鉄製円筒管であるロータリーキルンを使用して、950〜1000℃で焼成し、主成分の酸化カルシウムを得た。
この粉末状酸化カルシュウム80gとd−リモネン40gとを室温下混合し、撹拌しながら、これに水を10分間で30g滴下し、さらに2時間撹拌したところ、白色粒状体が得られた。この白色粒状体組成物にアルキル硫酸エステル塩10g、タルク100gを配合し、洗浄剤組成物を作製した。この洗浄剤組成物10gを、実施例1と同様にして、食用油が付着したプラスチック製食器を水をつけて洗浄したところ、食用油が完全に除去でき、芳香性も良好であった。また、この洗浄剤組成物は、水酸化カルシウムおよびd−リモネンを使用しているので殺菌性を有している。
【0024】
比較例1
上記実施例1および2で使用したアルキル硫酸エステル塩10gとタルク100gを配合し、洗浄剤組成物を作製した。この洗浄剤組成物10gを、実施例1、2と同様にして、食用油が付着したプラスチック製食器を水をつけて洗浄したところ、食用油の汚れ落ちは実施例1、2に比べて不十分であり、芳香性は全くなかった。
【産業上の利用可能性】
【0025】
【0025】
本発明により製造される洗浄剤組成物は殺菌性および芳香性に優れ、また、貝殻等の廃棄物を使用しているので、比較的安価に、液状、固形、エマルジョン等の形態で製造できる。用途としてはガスレンジ等の汚れをはじめとして、調理台、電気ポット、鍋、土鍋、フライパン、やかん、浴室、洗面所、リビング等様々な用途に使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然精油ならびに水酸化カルシウムを含むことを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
天然精油ならびに酸化カルシウムならびに水を混合し反応させることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項3】
天然精油がリモネンである請求項1または2記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−100059(P2007−100059A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−320090(P2005−320090)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000117319)ヤスハラケミカル株式会社 (85)
【Fターム(参考)】