説明

洗浄剤組成物

【課題】顔料分散型組成物が付着した基材・装置等を洗浄するための、少量で高い洗浄効果を発揮する洗浄剤を提供する。
【解決手段】界面活性剤と、有機溶剤とを含み、Hansen 溶解性パラメータの水素結合成分 δH の範囲が 4〜10 であることを特徴とする、顔料分散型組成物を洗浄し除去するための洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散型組成物を洗浄し除去するための洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子や液晶表示素子の製造においては、フォトリソグラフイー技術が用いられているが、それらには、ポジ型やネガ型の感光性樹脂組成物が利用されている。
当該感光性樹脂組成物は、塗布液の形で、半導体基板や、ガラス基板等の基板上に塗布され、適宜乾燥処理を施し被膜を形成する。さらにこれに選択的露光を行い、次いで現像処理を行うことでパターン化された感光性樹脂被膜が形成される。
【0003】
感光性樹脂組成物の基板への塗布方法としては、回転式塗布方法が一般的であるが、特に大型化が進む液晶表示素子製造の分野においては、コートアンドスピン方式、ノンスピン方式等の塗布手段が提案されてきている。
【0004】
塗布工程においては、感光性樹脂組成物を吐出するノズルや、塗布装置内壁、基板周縁、基板裏面、その他配管系が感光性樹脂組成物により汚染されるため、定期的あるいは随時、洗浄処理を行う必要がある。
【0005】
特に顔料が分散された材料、例えばカラーフィルターやブラックマトリックスパターンを形成するための顔料分散型感光性樹脂組成物は、洗浄除去が困難である。したがって、洗浄性に優れた洗浄除去液の実現が求められていた。
【0006】
なお、本発明に関連する文献としては、例えば特許文献1および特許文献2がある。
【特許文献1】特開2000−273370号公報
【特許文献2】特開2005−202363号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の半導体用洗浄剤としては、例えば、 プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)と、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)とを 3:7 で混合した溶液が用いられてきた。しかしながら、このような洗浄剤で顔料分散型組成物(例えば、カーボンブラックなどの顔料分散型フォトレジスト、顔料分散型塗料)を洗浄すると、その洗浄液中で顔料の凝集・沈降が起きてしまい、例えば配管などの細い部分で壁面にこびりついて詰まりの原因となっていた。これにより、作業効率の低下、もしくはノズルの目詰まりが問題となっていた。
【0008】
また、高沸点の非プロトン性極性溶媒の N,N-ジメチルアセトアミドは、極性が強すぎるためにカーボンが凝集して沈降してしまっていた。そのため、配管が詰まるなど不具合が発生した。
【0009】
また、単一の成分のアルキル芳香族化合物を使用する場合には、混合系アルキル芳香族化合物を使用する場合よりも配合量を多くしないと効果を得ることができなかった。
上記の課題に鑑み、本発明では、顔料分散型組成物の洗浄用として少量で高い洗浄効果を発揮する洗浄剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る洗浄剤組成物は、顔料分散型組成物を洗浄し除去するための洗浄剤組成物であって、界面活性剤と、有機溶剤とを含み、Hansen 溶解性パラメータの水素結合成分 δH の範囲が 4〜10 であることを特徴とする。
【0011】
また、上記の洗浄剤組成物は、前記有機溶剤が、アリール、アリル、アルカン、アルケン、アルキン、アルケニル、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、およびカルボン酸から選択される構造骨格を有する化合物を、少なくとも一種類含むことを特徴とする。
【0012】
また、上記の洗浄剤組成物は、前記有機溶剤が、水素結合性を有する極性溶剤と、水素結合性を有しない非極性溶剤との混合物であることを特徴とする。
また、上記の洗浄剤組成物は、前記有機溶剤が、芳香族化合物を 5〜50wt% の範囲で含むことを特徴とする。
【0013】
また、上記の洗浄剤組成物は、前記有機溶剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、ジオキサン、オキセタン、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、フェノール、ベンジルアルコール、アセトン、 4-メチル-2-ペンタノン、 2-ブタノン、 2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、蟻酸ヘキシル、蟻酸ヘプチル、蟻酸オクチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸ヘプチル、および乳酸オクチル、から選択される化合物を少なくとも一種類含むことを特徴とする。
【0014】
また、上記の洗浄剤組成物は、前記界面活性剤が、Siを有することを特徴とする。
また、上記の洗浄剤組成物は、前記界面活性剤が、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算した重量平均分子量が、 8000〜100000 であるポリマー、コポリマー、もしくはオリゴマーを含むことを特徴とする。
【0015】
また、上記の洗浄剤組成物は、前記界面活性剤が、エーテル結合を含み、少なくともひとつの分子末端においてエステル構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る洗浄剤を用いることにより、従来品に較べ、少量の洗浄剤で同等以上の洗浄効果を得ることができる。また、本発明にかかる洗浄剤は環境への負荷も少なく、さらに、顔料の凝集、沈降が起こりにくいため、作業効率の面からも優れている。
【0017】
また、
さらに、アルキル基の炭素数に起因するものとして、炭素数が多いものほどその化合物を添加する量を少なくすることができる(すなわち、添加効率がよい)ので、本発明に係る洗浄剤を用いることにより、少量の芳香族化合物の添加量で従来品と同等以上の洗浄効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施例および比較例に基づいて詳細に説明するが、これは本発明を何ら限定するものではない。
[洗浄剤の洗浄対象]
本発明に係る洗浄剤を適用できる洗浄対象として好適である顔料分散型組成物としては、従来より半導体、液晶、カラーフィルターなどに用いられてきたポジ型、ネガ型、化学増幅型、非化学増幅型の顔料分散型感光性樹脂組成物がある。感光性樹脂組成物は、基本的には樹脂成分および光重合開始剤などの感光成分を必須成分として含有し、その他に種々のモノマー成分、界面活性剤、酸成分、含窒素有機化合物、顔料、溶剤などを含有する場合がある。
【0019】
本願発明に係る洗浄剤が特に洗浄効果を発揮する感光性樹脂組成物は、顔料が分散された感光性樹脂組成物であり、さらに好ましくは、赤(R)、緑(G)、青(B)のカラーフィルター形成用感光性樹脂組成物、ブラックマトリックスパターン形成用感光性樹脂組成物である。
【0020】
上記樹脂成分としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などのカルポキシ基を有するモノマーから選ばれる一種以上と、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、 2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、 2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、 N-ブチルアクリレート、 N-ブチルメタクリレート、イソブチルアクリート、イソブチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、フェノキシアクリレート、フェノキシメタクリレート、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、スチレン、アクリルアミド、アクリロニトリルなどから選ばれる一種以上との共重合体、フェノールノボラック型エポキシアタリレート重合体、フェノールノボラック型エポキシメタクリレート重合体、クレゾールノボラック型エポキシアクリレート重合体、クレゾールノポラック型エポキシメタクリレート重合体、ビスフェノールA型エポキシアクリレート重合体、ビスフェノールS型エポキシアタリレート重合体などの樹脂が挙げられる。
【0021】
上記光重合開始剤としては、 1-ヒドロキシシクロへキシルフェニルケトン、 2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、 1-[4-(2-ヒドロキンエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、 1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、 1-(4-ドデシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、 2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン、ビス(4-ジメチルアミノフェニル)ケトン、 2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、 2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、 2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、 4-ベンゾイル-4'-メチルジメチルスルフィド、 4-ジメチルアミノ安息香酸、 4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、 4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、 4-ジメチルアミノ安息香酸ブチル、 4-ジメチルアミノ-2-エチルヘキシル安息香酸、 4-ジメチルアミノ-2-イソアミル安息香酸、ベンジル-β-メトキシエチルアセタール、ベンジルジメチルケタール、 1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルポニル)オキシム、 o-ベンゾイル安息香酸メチル、 2,4-ジエチルチオキサントン、 2-クロロチオキサントン、 2,4-ジメチルチオキサントン、 1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、チオキサンテン、 2-クロロチオキサンテン、 2,4-ジエチルチオキサンテン、 2-メチルチオキサンテン、 2-イソプロピルチオキサンテン、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、 1,2-ベンズアントラキノン、 2,3-ジフェニルアントラキノン、アゾビス(イソプチロ)ニトリル、ベンゾイルペルオキシド、クメンペルオキシド、 2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、 2-メルカプトベンゾチアゾール、 2-(o-クロロフェニル)-4,5-ビス(m-メトキシフェニル)-イミダゾリル二量体、ベンゾフェノン、 2-クロロベンゾフェノン、 p,p'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、 4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、 4,4'-ジクロロベンゾフェノン、 3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロビルエーテル、ペンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アセトフェノン、 2,2-ジエトキシアセトフェノン、 p-ジメチルアセトフェノン、 p-ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、 p-tert-ブチルアセトフェノン、 p-ジメチルアミノアセトフェノン、 p-tert-ブチルトリクロロアセトフェノン、 p-tert-ブチルジクロロアセトフェノン、 α,α-ジクロロ-4-フェノキシアセトフェノン、チオキサントン、 2-メチルチオキサントン、 2-イノプロビルチオキサントン、ジベンゾスベロン、ペンチル-4-ジメチルアミノベンゾェート、 9-フェニルアクリジン、 1,7-ビス-(9-アクリジニル)ヘプタン、 1,5-ビス-(9-アクリジニル)ペンタン、 1,3-ビス(9-アクリジニル)プロパン、p-メトキシトリアジン、 2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-メチル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-[2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-[2-(フラン-2-イル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-[2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-[2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル]-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-(4-エトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2-(4-n-ブトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、 2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、 2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)フェニル-s-トリアジン、 2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(3-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、 2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(2-ブロモ-4-メトキシ)スチリルフェニル-s-トリアジン、などを挙げることができる。
【0022】
上記顔料としては、例えば、
C.I.Pigment Yellow 11,24,31,53,83,99,108,109,139,150,151,154,167,180,185,193;
C.I.Pigment Orange 36,38,43;
C.I.Pigment Red 105,122,149,150,155,171,175,176,177,209,224,254,264;
C.I.Pigment Violet 19,23,32,39;
C.I.Pigment Blue 1,2,15:1,15:2,15:3,16,22,60,66;
C.I.Pigment Green 7,36,37;
C.I.Pigment Brown 25,28;
C.I.Pigment Black 1,7;
カーボンブラック; などが挙げられる。
【0023】
このようなカラーフィルター形成用、またはブラックマトリックスパターン形成用の感光性樹脂組成物については多くの提案がなされており、例えば特開2004−69754号公報、特開平11−231523号公報、特開平11−84125号公報、特開平10−221843号公報、特開平9−269410号公報、特開平10−90516号公報等に記載の感光性材料等が好ましく用いられる。
【0024】
そして、この洗浄剤は、たとえば、半導体基板等に感光性樹脂組成物を塗布する塗布装置のノズル、プライミングローラー(回転ローラ)、またはノズル洗浄装置のうち少なくともひとつに塗布された前記感光性樹脂組成物を除去するために使用することができる。
【0025】
また、他の顔料分散型組成物としては、顔料分散型塗料、顔料分散型着色剤がある。
[洗浄剤の構成]
本発明に係る洗浄剤は、例えば半導体基板である基材に付着した顔料分散型組成物を溶解させて除去可能な少なくとも一種の溶剤、および界面活性剤を含む。
【0026】
また、本発明に係る洗浄剤は、常圧で沸点が 60〜300℃であるような溶剤から構成されることが好ましい。
本発明に係る洗浄剤に含まれる溶剤は、一種の溶剤だけから構成してもよいが、洗浄性、乾燥性、洗浄された顔料の沈降を防止する等の種々の特性を満足させるために複数種の溶剤を用いた混合溶剤を使用することが、バランスの取れた洗浄液を容易に設計することができる点から好ましい。
【0027】
本発明に係る洗浄剤は、固体もしくはゲル状物を含むコロイド溶液であるのが好ましく、その含有量は 0.001wt%〜1wt% であるのが好ましく、 0.01wt%〜0.1wt% であるのがさらに好ましい。
【0028】
また、洗浄剤の組成を調整することで洗浄剤の共沸点が変動するため、溶剤の選択に際して高沸点または低沸点の化合物を考慮して混合することで、乾燥性に関して調整することもできる。
【0029】
〔溶剤〕
本発明に係る洗浄剤は、Hansen 溶解性パラメータの水素結合成分 δH が 4〜10 の範囲であり、好ましくは 6〜8 の範囲である。したがって、溶剤は、それぞれのδH を考慮して使用することが好ましい。
【0030】
混合溶剤のHansen 溶解性パラメータの水素結合成分 δHmix の値は、以下の式により理論的に求められる。
δHmix = (δHA×a) + (δHB×b) + (δHC×c) + ……
ここで、式中の δHA, δHB, δHC, …… は混合する各溶剤の δH であり、 a, b, c, …… は混合する各溶剤の全体に対する重量比である。
【0031】
各溶剤の δH には、"Industrial Solvents Handbook", Marcel Deeker Inc., 1996, pp.35-68 に記載されている値を用いることができる。
例として、後述するように本発明に係る洗浄剤に用いることができる溶剤の δH を、表1にまとめた。
【0032】
【表1】

また、本発明に係る洗浄剤に含まれる溶剤は、極性炭化水素系溶剤と非極性炭化水素系溶剤とを混合して用いることが好ましい。このように極性炭化水素系溶剤と非極性炭化水素系溶剤とを混合することにより、より一層洗浄作用を向上させることができる。
【0033】
本発明に係る洗浄剤に含まれる溶剤は、炭化水素系溶剤であり、アリール、アリル、アルカン、アルケン、アルキン、アルケニル、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、およびカルボン酸から選択される構造骨格を有する化合物を、少なくとも一種類含む。
【0034】
例えば、本発明の溶剤には、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート(以下、PGMEAとも表記する)、 プロピレングリコールモノメチルエーテル(以下、PGMEとも表記する)、 1-(3-メトキシ)-ブチルアセタート、メトキシプロピルアセタート、アセトン、エチルメチルケトン、ジエチルケトン、 4-メチル-2-ペンタノン、 2-ブタノン、 2-ヘプタノン、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロパンジオール、エチレングリコールエーテル、エチレングリコールエステル、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、 3-エトキシプロピオン酸エチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、蟻酸ヘキシル、蟻酸ヘプチル、蟻酸オクチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸ヘプチル、乳酸オクチル、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、ジオキサン、オキセタン、アジピン酸ジメチルエステル、アジピン酸ジエチルエステル、コハク酸ジメチルエステル、およびコハク酸ジエチルエステルから選択される一種以上が含まれている。特に、プロピレングコールモノメチルエーテルアセタート(PGMEA)もしくは プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を使用することが好ましい。
【0035】
また、前記溶剤は、カーボンブラックのカーボン粒子の凝集現象を抑制する点に鑑みて、芳香族炭化水素を含有することが好ましく、この芳香族炭化水素としてアルキルベンゼンを含有するのがより好ましい。
【0036】
アルキルベンゼンの有する全アルキル基の炭素の総数は 3〜5 であるのが好ましく、芳香族化合物の有する全アルキル基の炭素の総数が 4 であるのがさらに好ましい。
本発明に係る洗浄剤における芳香族化合物の含有量は、 5wt%〜50wt% であるのが好ましく、10wt%〜30wt%であるのがより好ましい。芳香族化合物中における、全アルキル基の炭素数が 4 である芳香族化合物の含有量は、20wt%〜90wt% であるのが好ましい。
【0037】
芳香族化合物が含有しているアルキルベンゼンは、プロピルベンゼン、クメン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルトリメチルベンゼン、ジメチルプロピルベンゼン、ジエチルメチルベンゼン、から選択するのが好ましい。
【0038】
なお、これらのアルキルベンゼンの他に、さらに、フェノール、クレゾール、アニソール、キシレノール、ベンジルアルコール、ジフェニルエーテル、インダン、テトラメチルシクロペンタジエン、ジヒドロメチル-1H-インデン、のうち少なくとも一種が混合されていてもよい。
【0039】
これらのアルキルベンゼンを含有する溶剤としては、例えば市販のソルベッソ100、ソルベッソ150、ソルベッソ200(以上商品名; エクソン化学社製)を使用することができる。
【0040】
〔界面活性剤〕
本発明に係る洗浄剤は、界面活性剤を含み、特にSiを有する界面活性剤を含有することが好ましい。Siを有する界面活性剤によって、本発明に係る洗浄剤は、従来品に較べて少量であっても同等以上の洗浄効果を得ることができる。
【0041】
Siを有する界面活性剤としては、例えば、 Additol XL-121 (商品名; ソルーシア社製)、メガファック R-08 、メガファック R-60 (いずれも商品名; 大日本インキ化学工業社製)、 X-70-090 、 X-70-091 、 X-70-092 、 X-70-093 (いずれも商品名; 信越化学工業社製)、 BYK-310 、 BYK-315 (いずれも商品名; ビックケミー社製)のうちの少なくとも一種類を用いることができる。特に、シリコン含有グリコール縮合物である Additol XL-121 は、エーテル結合および分子末端エステル結合を有すること、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算した重量平均分子量 Mw が 11000 であること、ならびに、分子内にポリエチレングリコールブロックおよびポリプロピレングリコールを有すること、という特徴を有している。このため、本発明に係る洗浄剤には Additol XL-121 を使用することが好ましい。
【0042】
なお、これらの Siを有する界面活性剤に加えて、種々のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、およびノニオン性界面活性剤を混合して用いることも可能である。
【0043】
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸系(陰イオン)、直鎖アルキルベンゼン系、高級アルコール系(陰イオン)、アルファオレフィン系、もしくはノルマルパラフィン系を使用することができる。本発明に係る洗浄剤には、例えば、石鹸等の高級脂肪酸塩、第二級高級脂肪酸塩、高級アルキル硫酸塩、高級アルキルエーテル硫酸塩、高級アルキルエステル硫酸塩、高級アリールエーテル硫酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、第二級高級アルコール硫酸エステル塩、第一級高級アルキルスルフォン酸塩、第二級高級アルキルスルフォン酸、高級アルキルアリールスルフォン酸塩、高級アルキルジスルフォン酸塩、スルフォン化高級脂肪酸塩、硫酸化脂肪および脂肪酸塩、高級アルキル燐酸エステル塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルフォン酸塩、高級アルコール・エーテルのスルフォン酸塩、高級脂肪酸塩アミドのアルキル化スルフォン酸塩およびスルフォコハク酸エステル塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルフェノールスルフォン酸塩、アルキルナフタリンスルフォン酸塩、ナフテン酸塩、樹脂酸塩、樹脂酸アルコール硫酸エステル塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、アルキルアリールエーテルリン酸塩、もしくはスルフォコハク酸塩を用いることができる。
【0044】
カチオン性界面活性剤としては、第四級アンモニウム塩系を使用することができる。本発明に係る洗浄剤には、例えば、アルキル第四アンモニウム塩、アルキルベンジル第四級アンモニウム塩、窒素環を有する第四級アンモニウム塩を用いることができる。また、例えばオルガノシロキサンポリマーKP341(商品名; 信越化学工業製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(いずれも商品名; 共栄社油脂化学工業製)、W001(商品名; 裕商製)などの市販品を使用することもできる。
【0045】
両性界面活性剤としては、アミノ酸系、ベタイン系、もしくはアミンオキシド系を使用することができる。本発明に係る洗浄剤には、例えば、アルキルアミノ脂肪酸塩、アルキルベタイン、アルキルアミンオキシドを用いることができる。
【0046】
ノニオン性界面活性剤としては、脂肪酸系(非イオン)、高級アルコール系(非イオン)、もしくはアルキルフェノール系を使用することができる。本発明に係る洗浄剤には、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、高級脂肪酸のグリセリンエステル、高級脂肪酸のグリコールエステル、高級脂肪酸のペンタエリスリトールエステル、高級脂肪酸のソルビタンおよびマンニタンエステル、高級アルコール縮合物、高級脂肪酸縮合物、ポリプロピレンオキサイド縮合物を用いることができる。
【0047】
本発明に係る洗浄剤における Siを有する界面活性剤の含有量は、 0.001wt%〜1wt% であるのが好ましく、より好ましくは 0.01wt%〜0.1wt% である。
【実施例1】
【0048】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例では、内径 10mm のガラスチューブによって、カラーフィルター用顔料分散型フォトレジストである CFPR GH-1004(緑色)、 CFPR BK-5005 SL(黒色)(いずれも商品名; 東京応化工業社製)、カラーフィルター用インクジェット用インク(エプソン社製)を、それぞれ液送した。その後、前記ガラスチューブを洗浄剤組成物で満たして、顔料の凝集・沈降を観測した。
【実施例2】
【0049】
PGME 20質量部、PGMEA 60質量部、ソルベッソ100(商品名; エクソン化学社製) 20質量部を混合し、全溶剤 100質量部に対して、 0.005質量部の Additol XL-121 (商品名; ソルーシア社製)を添加して攪拌混合して、洗浄剤組成物 (A) を調製した。
【0050】
CFPR GH-1004 を液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (A) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降は観測されなかった。
CFPR BK-5005 SL を液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (A) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降は観測されなかった。
【0051】
カラーフィルター用インクジェット用インクを液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (A) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降は観測されなかった。
[比較例1]
PGME 70質量部、PGMEA 30質量部を混合し、洗浄剤組成物 (B) を調製した。
【0052】
CFPR GH-1004 を液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (B) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降が観測された。
CFPR BK-5005 SL を液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (B) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降が観測された。
【0053】
カラーフィルター用インクジェット用インクを液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (B) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降が観測された。
[比較例2]
PGME 100質量部に対して、 0.005質量部の Additol XL-121 (商品名; ソルーシア社製)を添加して攪拌混合して、洗浄剤組成物 (C) を調製した。
【0054】
CFPR GH-1004 を液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (C) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降が観測された。
CFPR BK-5005 SL を液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (C) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降が観測された。
【0055】
カラーフィルター用インクジェット用インクを液送したガラスチューブに洗浄剤組成物 (C) を満たしたところ、顔料の凝集・沈降が観測された。
それぞれの例で用いた洗浄剤組成物の構成成分比を、表2に示す。
【0056】
以上の観測結果をまとめたものを、表3に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
【表3】

本発明に係る洗浄剤の実施例では顔料の沈降・凝集は観測されず、一方、比較例では顔料の沈降・凝集が観測されるという結果が示された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
界面活性剤と、有機溶剤とを含み、Hansen 溶解性パラメータの水素結合成分 δH の範囲が 4〜10 であることを特徴とする、顔料分散型組成物を洗浄し除去するための洗浄剤組成物。
【請求項2】
前記有機溶剤が、アリール、アリル、アルカン、アルケン、アルキン、アルケニル、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、アルデヒド、およびカルボン酸から選択される構造骨格を有する化合物を、少なくとも一種類含むことを特徴とする、請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
前記有機溶剤が、水素結合性を有する極性溶剤と、水素結合性を有しない非極性溶剤との混合物であることを特徴とする、請求項1もしくは2に記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
前記有機溶剤が、芳香族化合物を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤中、芳香族化合物が 5〜50wt% の範囲で含むことを特徴とする、請求項4に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
前記芳香族化合物が、プロピルベンゼン、クメン、エチルメチルベンゼン、トリメチルベンゼン、エチルジメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、メチルプロピルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルトリメチルベンゼン、ジメチルプロピルベンゼン、およびジエチルメチルベンゼン、ならびにそれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項4または5に記載の洗浄剤組成物。
【請求項7】
前記有機溶剤が、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ジエチルエーテル、シクロヘキサン、シクロヘキサノール、ジオキサン、オキセタン、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、フェノール、ベンジルアルコール、アセトン、 4-メチル-2-ペンタノン、 2-ブタノン、 2-ヘプタノン、シクロヘキサノン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、蟻酸ヘキシル、蟻酸ヘプチル、蟻酸オクチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸ヘプチル、酢酸オクチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸ペンチル、乳酸ヘキシル、乳酸ヘプチル、および乳酸オクチル、から選択される化合物を少なくとも一種類含むことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記界面活性剤が、Siを有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算した重量平均分子量が、 8000〜100000 であるポリマー、コポリマー、もしくはオリゴマーを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。
【請求項10】
前記界面活性剤が、エーテル結合を含み、少なくともひとつの分子末端においてエステル構造を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2007−191524(P2007−191524A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−9309(P2006−9309)
【出願日】平成18年1月17日(2006.1.17)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】