説明

洗浄剤組成物

【課題】洗浄力を低下させることなく、従来以上に濯ぎ性に優れた洗浄剤組成物と洗濯方
法を提供する。
【解決手段】(a)特定一般式で示されるポリオキシエチレン・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル等の非イオン界面活性剤及び(b)陰イオン界面活性剤からなる繊維吸着性の低い界面活性剤系を含有する洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15である、洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物及び洗濯方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、世界規模的なエネルギー問題、二酸化炭素排出問題、及び渇水化問題のみならず、石油価格の変動による影響が具体的に水道料金や電気料金に反映され、気候の変動による夏場の取水制限などに繋がっていることもあって、個人ないし家庭での節水、節電の意識を従来にも増して高めている。
【0003】
洗濯はドライクリーニングなどの特殊なものを除いて水無くして行うことはできない。
節水にかかる、濯ぎ時間の短縮は、家庭での節水・節電のみならず、上水及び下水処理での浄水化に伴うエネルギーを考慮する上でも非常に有意義である。白物家電を扱う大手電気メーカーは洗濯機への付加価値化として、節水・節電を切り口した製品が開発、販売されている。ドラム式洗濯機は浴比が低いことから洗濯水量を少なくすることができ、攪拌による繊維への傷みも少ないことから、販売シェアを伸ばしている。また従来の全自動洗濯機に関しても、脱水・シャワー濯ぎなどの各社独自の濯ぎ方法を採用したり、泡センサー等により自動的に濯ぎ回数を減らすなどの機能を導入している。
【0004】
一方、洗剤業界においても、環境に対する意識が高まってきており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。濯ぎ性をテーマとした技術としては、昔からシリコーン、脂肪酸による消泡作用を利用することで濯ぎ剤として配合することが知られており、また泡の立ちの少ない界面活性剤の使用が提案されている。特許文献1には、非イオン型シリコーン界面活性剤を用いることで、泡コントロールされた洗浄剤が記載されている。特許文献2には脂肪酸とシリコーンを併用する洗浄剤が公報一般に非イオン界面活性剤は陰イオン界面活性剤に対して泡立ちが少なく、油汚れに対する洗浄性にも優れることから多数の特許が知られている。特許文献3には、分岐鎖を有する低泡性の液体洗浄剤が記載されており、その他に非イオン界面活性剤に関しては、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7が知られている。またポリオキシエチン基(以下EO)とオキシプロピレン基(以下PO)とをEO−PO−EOの順序で有するポリオキシアルキレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤として、特許文献8、特許文献9、特許文献10及び特許文献11が挙げられる。特許文献8、特許文献9には特定の非イオン界面活性剤が泡切れ性に優れることが記載されており、特許文献11には、該非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤を併用する液体洗浄剤が開示されている。しかしながら、これら先行技術は泡コントロールに関する技術であり、泡立ちを低減させるものである。すなわち泡立ちが少ないことを目的とするものであって、水中での繊維への界面活性剤の吸着性に関する技術を示唆するものではなく、実施例のオキシエチレン基の平均付加モル数が本発明よりも少ないものである。従って、濯ぎ回数の少ない場合や浴比の低い場合の洗浄基材と繊維の関係について検討し、新たな提案をするものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平9−502746号公報
【特許文献2】特表平10−508060号公報
【特許文献3】特表平10−507788号公報
【特許文献4】特開平11−293293号公報
【特許文献5】特開2000−335700号公報
【特許文献6】特開平7−166190号公報
【特許文献7】特開2002−2851911号公報
【特許文献8】特開平11−92784号公報
【特許文献9】国際公開第1998/024864号パンフレット
【特許文献10】国際公開第1998/024867号パンフレット
【特許文献11】国際公開第1998/024865号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
界面活性剤は、水と繊維製品との界面張力を下げ、汚れが水に放出しやすい状況を作り、更には汚れを抱えて水に分散する性質を有する。そのために適切な親油−親水性バランスを有する界面活性剤が用いられる。一方、界面活性剤自体も油と水の双方に作用するものであることから、繊維製品表面に対しても少なからず作用することが考えられる。通常、界面活性剤などの洗浄成分は、洗浄後の濯ぎを十分に行うことで、繊維製品から除去することができる。しかしながら節水のコンセプトを突き詰めていくと、濯ぎ回数を減らすか、更には、浴比を更に下げる方向に向かわざるを得ず、繊維製品からの濯ぎが十分に達成できない恐れが生じる。我々は濯ぎ性を向上させる手段として、まず水中への親和性の観点から、界面活性剤自体の親水性を高める方法で検討を行った。しかしながら界面活性剤の親水性を高めることは、水溶液中での汚れや繊維表面に対するインタラクションを低下させることであるから、結果として洗浄力が低下してしまう。すなわち、濯ぎ性と洗浄性の双方の目的を満たすことは非常に困難であった。
【0007】
特許文献8〜11は、洗浄力を得るためにオキシエチレン基の平均付加モル数は12以下であり、20以上の化合物が開示されているが、洗浄力が得られない比較例となっている。
【0008】
従って、本発明の課題は、洗浄力を低下させることなく、従来以上に濯ぎ性に優れた洗浄剤組成物と洗濯方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記(a)と(b)成分からなる繊維吸着性の低い界面活性剤系を含有する洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15である、洗浄剤組成物に関する。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−[(C24O)m/(AO)n]H (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であって、mは16〜50の数であり、nは0〜5の数であり、n=0のとき、mは20以上である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
【0010】
また、本発明は、水と上記(a)成分及び上記(b)成分からなる繊維吸着性の低い界面活性剤系を、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15、(a)成分と(b)成分の合計濃度が100〜400mg/Lで含有する水性洗浄液を用いた洗浄工程を含む洗濯方法に関する。
【0011】
また、本発明は、上記(a)成分及び(b)成分を含有する洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15である、洗浄剤組成物に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗浄力と濯ぎ性に優れた洗浄剤組成物が提供される。本発明の洗浄剤組成物は、濯ぎ回数が少ない場合、特には濯ぎの水が少ない場合であっても、繊維製品からの界面活性剤の除去性に優れ、その結果、節水性に優れる。また、本発明の洗浄剤組成物及び洗濯方法では優れた洗浄力が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に使用する洗浄剤組成物について説明する。本発明の洗浄剤組成物、及び洗濯方法で用いる水性洗浄液には、主たる界面活性剤として、(a)成分及び(b)成分を含有する。我々はこの界面活性剤の組み合わせが繊維に対する吸着性が低く濯ぎ時の界面活性剤除去性に優れ、且つ衿汚れ等に対して優れた洗浄力を示すことを見出した。
【0014】
<(a)成分>
(a)成分の一般式(1)中、R1は炭素数8〜22の炭化水素基であり、炭素数8〜18、更に8〜16の炭化水素基が好ましい。また、R1は直鎖の炭化水素基が好ましい。また、R1の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。R1は、直鎖又は分岐鎖のアルキル基が好ましく、直鎖アルキル基がより好ましい。本発明では酸素原子に結合するR1の炭素原子が第一炭素原子であってもよい。このようなアルキル基は天然油脂由来の脂肪族アルコールを原料として用いることができる。一般式(1)中のR1−O−の酸素原子に結合するR1の炭素原子が第1炭素原子であるものは、第2炭素原子による化合物よりも洗浄力に優れる。特にR1は第1炭素原子を有する直鎖アルキル基が好ましい。
【0015】
一般式(1)の化合物を得る方法は、特に限定されるものではないが、炭素数8〜22のアルコールにエチレンオキシドを付加反応すること、あるいはエチレンオキシドと炭素数3〜5のアルキレンオキシドを付加反応することによって得ることができる。
【0016】
一般式(1)中のmはエチレンオキシドの付加反応後のオキシエチレン基の平均付加モル数であり、後述のnが0を超える場合、更には0.5以上の場合、特には1以上の場合に、mは濯ぎ性、洗浄性能の点から下限値は、好ましくは18以上であり、上限値は好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。nは炭素数3〜5のアルキレンオキシドの付加反応後のAOで示されるオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、洗浄性能の点から下限値は0以上、好ましくは1以上であり、上限値は5以下、好ましくは4以下、より好ましくは3以下である。但しn=0のときはmは20以上であり、好ましくは22以上である。上限値は好ましくは30以下、より好ましくは25以下である。
【0017】
一般式(1)中のAOであるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシドの付加反応によりメチル分岐、エチル分岐ないしプロピル分岐した構造を有する。AOは、プロピレンオキシドを付加反応させて得られるオキシプロピレン基(以下、POと表記する場合がある)であることが好ましい。
【0018】
本発明では、特にはAOはオキシプロピレン基であって、オキシプロピレン基の平均付加モル数nが2〜4、特には2〜3であって、且つオキシエチレン基の平均付加モル数mが16〜30、更には18〜25モル付加である化合物を用いることが、オキシプロピレン基を有しない化合物と比較して、より繊維吸着性が低いことから、濯ぎ性に優れ、および洗浄力に優れた洗浄剤組成物を得られることから好ましい。
【0019】
ところで、R1O−の近い位置にAOが存在する構造の場合、AOは疎水性基であることから、R1である鎖式炭化水素基が延長された構造に類似する構造になり、疎水性が高まる傾向を示す。本発明の(a)成分は、一般式(1)において、R1−O−C24O−である化合物の割合が、(a)成分を構成している化合物中の75モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることが好ましい。このような化合物は未反応アルコールを除去することによっても得られるが、本発明では特に、R1OHの1モルに対して、エチレンオキシドを6モル以上、特には8モル以上付加させることで、この要件を達成することができる。この規定は、後述する一般式(1−2)、(1−4)及び(1−5)においても適用してもよい。
【0020】
更には(a)成分は、一般式(1)において、前記の、R1−O−C24O−の条件を満たした上で、末端が−C24O−Hの割合も高いものが、末端が疎水性基の炭素数3〜5のオキシアルキレン基の−AO−Hである場合よりも、繊維の吸着性が低いことから好ましい。特には末端が−C24O−Hの構造を有する化合物が70モル%以上、更に80モル%以上(上限は100モル%以下)であることがより好ましい。このような化合物は、一般式(1)を製造する上で、最初にエチレンオキシドを前記条件で付加反応させるか、エチレンオキシドの付加後、未反応アルコールを除去させた後、次いでAOの元となる炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加反応工程を行い、最後にエチレンオキシドだけを6モル以上、特には8モル以上付加させることで得ることができる。この規定は後述する一般式(1−5)においても適用してもよい。なおR1−O−C24O−や−C24O−Hの割合はC13−NMRを用いた定量測定で求めることができる。
【0021】
本発明の一般式(1)は下記一般式(1−1)〜(1−5)の化合物であってもよい。
【0022】
一般式(1−1)において“/”は、本発明の(a)成分のC24O基であるオキシエチレン基(以下、EOと表記する場合がある)及びAO基の関係がランダム結合でもブロック結合でもいずれでもよいことを意味している。またAOのnは複数のブロック体として分かれていてもよい。一般式(1−1)〜(1−5)で示される化合物は、R1OHに対するアルキレンオキシドの反応割合及び反応順序を考慮することで調製することができる。
1O−(AO)n−(EO)mH (1−1)
1O−(EO)m−(AO)nH (1−2)
1O−[(EO)m1・(AO)n]−(EO)m2H (1−3)
1O−(EO)m1−[(AO)n・(EO)m2]H (1−4)
1O−(EO)m1−(AO)n−(EO)m2H (1−5)
〔式中、R1、m、n、EO、AOは前記の意味であり、m1、m2は平均付加モル数であって、m=m1+m2である。“・”はランダム結合であることを示す。〕
【0023】
本発明では一般式(1−2)、(1−4)及び(1−5)の化合物が、濯ぎ性の点からより好ましい。その理由としては、前記のようにR1O−の近い位置にAOが存在する構造の場合、AOは疎水性基であることから、R1である鎖式炭化水素基が延長された構造になり、疎水性が高まったことで、濯ぎ性が低下することが考えられる。本発明の(a)成分は、最も繊維への吸着性が少なく、且つ優れた洗浄力を得るために一般式(1−5)で示される化合物が最も好ましい。
【0024】
本発明の(a)成分は、一般式(1−5)の化合物は、R1−OHで表される化合物(R1は炭素数8〜22の炭化水素基、好ましくは前記R1と同じ)1モル当りに、エチレンオキシドをm1モル付加させた後、炭素数3〜5のアルキレンオキシドをnモル付加させた後、更にエチレンオキシドをm2モル付加させて得られる非イオン界面活性剤であって、m1は3〜50の数、好ましくは7〜30、より好ましくは8〜20の数であり、nが1〜5の数、好ましくは1〜3の数であり、m1とm2は合計でm1+m2=16〜50、好ましくは16〜30、より好ましくは18〜25の数である非イオン界面活性剤である。m2は前記m1とm1+m2より求めることができるが、本発明で、m2が好ましくは3〜30の数、より好ましくは7〜25の数以上、好ましくは8〜20の数である。本発明では特にAOが末端、及びR1に結合していないことが好ましく、より好ましくはm1とm2は、m1/(m1+m2)=0.2〜0.8、特に好ましくは0.3〜0.7である。
【0025】
(a)成分の製造に関して、R1−OHのアルコキシル化に用いられる触媒は塩基触媒、酸触媒が挙げられる。このうち特に、コストの面から塩基触媒を使用することが好ましく、塩基として水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムがより好ましく、水酸化カリウムを使用することが最も好ましい。
【0026】
水酸化カリウムを触媒として使用する場合の製造条件の一例を以下に示す。まず原料となる炭素数8〜18の飽和もしくは不飽和の高級アルコール(R1−OHで表される化合物)に水酸化カリウムを仕込んだ後、窒素置換し、100〜110℃、1〜7kPaで30分〜1時間脱水を行う。次いで100〜170℃、0.3〜0.6MPaでエチレンオキシドの付加を行い、次に100〜150℃、0.3〜0.7MPaの条件で炭素数3〜5のアルキレンオキシド、好ましくはプロピレンオキシドの付加を行い、再度100〜170℃、0.3〜0.7MPaの条件でエチレンオキシドを付加した後、添加した水酸化カリウムと当モル量の酸剤(酢酸、乳酸、グリコール酸等)で中和することによって得られる。なお各エチレンオキシド及び炭素数3〜5のアルキレンオキシドの使用量は、組成物中のm、nの平均値の条件を満たすように、原料アルコールのモル数に応じて選定される。一般に、高級アルコールに付加反応させるエチレンオキシドやアルキレンオキシドの割合は、一般式(1)の化合物及び一般式(1−1)〜(1−5)の化合物のEOやAOの平均付加モル数m、m1、m2及びnの範囲で示すことができるが、本発明では、反応に用いたエチレンオキシドやアルキレンオキシドの割合と得られた化合物のオキシエチレン基やオキシアルキレン基の平均付加モル数は異なっていてもよい。
【0027】
本発明の洗浄剤組成物において、(a)成分の配合量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が最も好ましい。また上限値は75質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。本発明の洗浄剤組成物が液体の場合であって、水を多めに配合するような場合は、該液体洗浄剤組成物のゲル化や固化を抑制するために(a)成分は35質量%未満、特には25質量%未満であってもよい。
【0028】
<(b)成分>
本発明では、(a)成分と共に(b)成分の陰イオン界面活性剤を併用することが、洗浄性の点から重要な構成要件である。本来本発明で規定する(a)成分だけでは親水性が強いため、洗浄力が低下する傾向にあるが、(b)成分を特定比率で用いることで、従来のエチレンオキシドの平均付加モル数が8〜12付近のポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤と同等以上の洗浄力を達成することができる。
【0029】
陰イオン界面活性剤としては、例えば下記(b1)〜(b5)が使用できるが、洗浄性能、安定性、溶解性の点で、(b1)、(b2)、(b4)が好ましく、更に(b1)を含有することがより好ましい。
【0030】
(b1)平均炭素数10〜20のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩。
(b2)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩
(b3)平均炭素数10〜20のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル又はアルケニル硫酸エステル塩。
(b4)平均炭素数8〜20の脂肪酸塩。
(b5)平均炭素数10〜20の直鎖1級アルコール又は直鎖2級アルコール由来のアルキル基又は分岐アルコール由来のアルキル基を有し、オキシアルキレン基の平均付加モル数が1〜5であり、オキシアルキレン基としてオキシエチレン基を含み、平均付加モル数0.2〜2モルの範囲でオキシプロピレン基を含んでいてもよい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルカルボン酸塩
【0031】
(b)成分を構成する塩はナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミン塩、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属塩などを挙げることができるが、特に安定性の観点からアルカノールアミン塩であることが好ましい。陰イオン界面活性剤は、洗浄剤中には酸型で添加して、系内でアルカリにより中和してもよい。本発明では、(b)成分はアルカノールアミン塩か、酸型で添加して系中でアルカノールアミン〔後述する(e)成分のアルカリ剤として用いるアルカノールアミン〕で中和することが好ましく、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの金属系の対イオンは、変色防止剤や酵素安定化剤として亜硫酸ナトリウムなどの塩として配合する場合の他に(a)成分の製造工程を経て、或いは金属イオン封鎖剤やその他の陰イオン性化合物の塩として含有する可能性があるが、少ないことが好ましく、実質的には5質量%以下、特には3質量%以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物では、洗浄力の観点から、(a)成分と(b)成分の含有量の合計が(a)+(b)=10〜90質量%であり、15〜80質量%が好ましく、20〜70質量%が特に好ましい。本発明の洗浄剤が液体洗浄剤の場合であって、水を多く配合する場合は、60質量%未満、特には50質量%未満であってもよい。なお(b)成分の陰イオン界面活性剤は、塩の分子量によって、その質量が異なることから、本発明では塩ではなく、酸型すなわち対イオンを水素原子イオンと仮定した時の質量を(b)成分の質量とする。
【0033】
また、本発明の洗浄剤組成物では、洗浄性能、溶解性、安定性の観点から(a)/(b)は質量比として40/60〜85/15であり、50/50〜80/20が好ましく、55/45〜75/25がより好ましい。洗浄力の点から(a)成分と(b)成分の割合が下限値以上であり、濯ぎ性の観点から上限値以下である。
【0034】
本発明の(a)成分と(b)成分からなる界面活性剤系は、繊維吸着性が低い界面活性剤系であり、例えば下記方法で測定した場合の繊維吸着率は30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは20%以下、特に好ましくは10%以下である。従来液体洗浄剤に用いられるポリオキシエチレン(平均付加モル数10)ラウリルエーテルの場合、吸着率は33%である。これに陰イオン界面活性剤を組み合わせても、繊維吸着率の低い界面活性剤系は得られない。本発明のような繊維に対する吸着率の低い界面活性剤系はすなわち従来の常識を超えた優れた濯ぎ性を得ることができる。
【0035】
[繊維吸着率の測定条件]
広口規格ビン(PS−No.11、ガラス製、直径50mm、高さ95mm、口径30mm)に、界面活性剤水溶液100g(界面活性剤濃度200mg/L、Caイオン濃度 4°DH)と木綿メリヤス〔(株)色染社製、未シルケット、坪量19mg/cm2、綿100%、5g(約1.5cm×1.5cm)〕を入れ、振とう器(RECIPRO SHAKER SR-II W ;タイテック株式会社製)で、ストローク幅50mm、300回/分の速度で、10分間振とうした。繊維吸着率は以下のようにして求めた。
繊維吸着率(%)=〔1−(振とう後の水溶液中に含まれる界面活性剤量)/(布を投入する前の水溶液中に含まれる界面活性剤量)〕×100
【0036】
なお水溶液中に含まれる界面活性剤量は液体クロマトグラフ法により測定する。また木綿メリアス布は、100cm×100cmに裁断したものを、全自動洗濯機にてJIS K3362:1998の洗浄評価用の指標洗剤で累積洗浄(洗濯時間10分、濯ぎ1回、脱水3分)を5回行った後、更に2槽式洗濯機にて、3時間注水濯ぎを行い界面活性剤を十分取り除いたものを用いる。
【0037】
<(c)成分>
本発明の洗浄剤組成物は、任意であるが(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤〔以下、(c)成分という〕を本発明の効果を損なわない範囲で含有することができる。(c)成分としては、下記の(c1)〜(c3)が挙げられる。
(c1)(a)成分に該当しない非イオン界面活性剤。
例えば、下記(c1−1)及び(c1−2)が挙げられる。
(c1−1)次の一般式で表される多糖型界面活性剤。
1c−(OR2cxy
〔式中、R1cは直鎖又は分岐鎖の炭素数8〜18のアルキル基又はアルケニル基、R1cは炭素数2〜4のアルキレン基、Gは炭素数5又は6の還元糖に由来する残基、xは平均値0〜6の数、yは平均値1〜10の数を示す。〕
(c1−2)脂肪酸アルカノールアミド、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド。
(c2)陽イオン界面活性剤。
例えば、長鎖アルキル基を有する1級〜3級のアミン(但し後述のアルカノールアミンを除く)であって、好ましくは途中にエーテル結合、エステル結合又はアミド結合を有してもよい炭素数8〜22のアルキル基を1つ又は2つ有し、残りが水素原子又は炭素数4以下のヒドロキシ基を有してもよいアルキル基である陽イオン界面活性剤を挙げることができる。本発明では、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する第4級アンモニウム型界面活性剤、炭素数8〜22の長鎖アルキル基を1つ有する3級アミンが好ましい。
(c3)両性界面活性剤
例えば、炭素数10〜18のアルキル基を有するスルホベタイン又はカルボベタインを挙げることができる。
【0038】
(c)成分の含有量は、任意であるが、全界面活性剤中好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。また各成分の製造工程中生成される本構成要件以外の化合物も含まれる場合がある。それらは本効果と生産上経済性を考慮した上で混入してもよい。なお、(c)成分のうち非イオン界面活性剤(c1)は、前記(a)成分と合わせて、〔(a)+(c1)〕/(b)として、前記(a)/(b)の質量比の範囲内に入ることが好ましい。また(c2)成分に関しては、第4級アンモニウム塩については、対陰イオンを除いた質量を該第4級アンモニウム塩の質量とし、1級、2級又は3級アミンについては、窒素原子に結合する基のうち、有機基以外を水素原子に置換した構造の質量を該1級、2級又は3級アミンの質量とする。なお(c2)成分の陽イオン界面活性剤、特に4級アンモニウム塩型の陽イオン界面活性剤の配合は、洗浄対象の繊維製品に柔軟性や抗菌性等の特徴を付与する洗浄剤組成物の提案ができる一方で、本発明では純粋に、界面活性剤全体の繊維吸着率の低減の観点から規定する場合、(c2)成分を実質的に含有しない洗浄剤組成物もまた提案することができる。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は、(a)及び(b)成分以外に、一般に洗浄剤に使用されているキレート剤、アルカリ剤及びその他の成分などを含有することができる。
【0040】
<(d)成分>
本発明の洗浄剤組成物はキレート剤を含有することができるが、分子量が1000以下のキレート剤〔以下、(d)成分という〕の含有量が少ないことが、洗浄力の観点から好ましい。(d)成分のキレート剤は、例えば、
ニトリロ三酢酸、イミノ二酢酸、エチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、トリエチレンテトラアミン六酢酸、ジエンコル酸等のアミノポリ酢酸又はこれらの塩、 ジグリコール酸、オキシジコハク酸、カルボキシメチルオキシコハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸、シュウ酸、リンゴ酸、オキシジコハク酸、グルコン酸、カルボキシメチルコハク酸、カルボキシメチル酒石酸等の有機酸又はこれらの塩、 アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、これらのアルカリ金属または低級アミン塩等が挙げられる。本発明では前記(b)成分であげたアルカノールアミンを塩とすることが好ましく、酸で配合し系中でアルカリ剤で中和した塩であってもよい。
【0041】
(d)成分の組成物中の配合割合は、酸型とみなした場合に好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。なお(d)成分は任意成分であるが、酢酸、グリコール酸又は乳酸などの有機酸を(a)成分のアルキレンオキシドの付加反応の際に用いた塩基触媒の中和剤として用いることが一般に行われており、キレート剤を中和剤として用いた場合に(a)成分に混じって本発明の洗浄剤組成中に0.05質量%以上含有することがある。従って(d)成分の下限値は0.05質量%以上として規定できる。
【0042】
<(e)アルカリ剤>
本発明の洗浄剤組成物には、アルカリ剤〔以下、(e)成分という〕を配合することが好ましい。アルカリ剤は、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩などの他に、液体洗浄剤では一般的な、炭素数2〜4のアルカノール基を1〜3つ有するアルカノールアミンをあげることができる。このうちアルカノール基はヒドロキシエチル基であるものが好ましい。アルカノール基以外は水素原子であるが、炭素数1〜5のアルキル基、特にはメチル基であってもアルカリ剤として使用することができる。アルカノールアミンとしては、2−アミノエタノール、N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、イソプロパノールアミン混合物(モノ、ジ、トリの混合物)等のアルカノールアミン類が挙げられる。本発明ではモノエタノールアミン、トリエタノールアミンが最も好ましい。
【0043】
(e)成分は後述するpH調整剤として用いることができる。また前記した(b)成分の対塩として配合してもよい。
【0044】
本発明の組成物が液体洗浄剤組成物の場合は、(e)成分を、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なかでも、(e)成分としてアルカノールアミンを、好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜7質量%含有する。なおアルカノールアミンは、(b)成分の塩などの対イオンとして配合することもでき、それらの量も(e)成分として算入する。
【0045】
〔その他の成分〕
更に本発明の洗浄剤組成物には、次の(i)〜(xiii)に示す成分を本発明の効果を損なわない程度で配合することができる。
(i)ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、重量平均分子量5000以上のポリエチレングリコール、無水マレイン酸−ジイソブチレン共重合体、無水マレイン酸−メチルビニルエーテル共重合体、無水マレイン酸−酢酸ビニル共重合体、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、及び特開昭59−62614号公報の請求項1〜21(1頁3欄5行〜3頁4欄14行)記載のポリマーなどの再汚染防止剤及び分散剤
(ii)ポリビニルピロリドン等の色移り防止剤
(iii)過酸化水素、過炭酸ナトリウムまたは過硼酸ナトリウム等の漂白剤
(iv)テトラアセチルエチレンジアミン、特開平6−316700号の一般式(I−2)〜(I−7)で表される漂白活性化剤等の漂白活性化剤
(v)セルラーゼ、アミラーゼ、ペクチナーゼ、プロテアーゼ、リパーゼ等の酵素
(vi)ホウ素化合物、カルシウムイオン源(カルシウムイオン供給化合物)、ビヒドロキシ化合物、蟻酸等の酵素安定化剤
(vii)蛍光染料、例えばチノパールCBS(商品名、チバスペシャリティケミカルズ製)やホワイテックスSA(商品名、住友化学社製)として市販されている蛍光染料
(viii)ブチルヒドロキシトルエン、ジスチレン化クレゾール、亜硫酸ナトリウム及び亜硫酸水素ナトリウム等の酸化防止剤
(ix)パラトルエンスルホン酸、クメンスルホン酸、メタキシレンスルホン酸、安息香酸塩(防腐剤としての効果もある)などの可溶化剤
(x)平均分子量約200のポリエチレングリコール、平均分子量約400のポリエチレングリコール、平均分子量約2000のポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体
(xi)オクタン、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン類、デセン、ドデセンなどのオレフィン類、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなどのハロゲン化アルキル類、D−リモネンなどのテルペン類などの水非混和性有機溶剤。
(xii)ゼオライトや結晶性層状シリケートなどの金属イオン交換剤
(xiii)硫酸ナトリウムなどの増量剤。
(xiv)その他、色素、香料、抗菌防腐剤、シリコーン等の消泡剤
【0046】
以下に本発明の洗浄剤組成物中、前記任意成分を配合する場合の指標としての濃度を示すが、洗浄剤組成物の形態によって選定される。また本効果を損なわない程度に適宜調整され、配合に適さない場合は除外される。(i)の再汚染防止剤及び分散剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(ii)の色移り防止剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(iii)の漂白剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(vi)の漂白活性化剤の含有量は0.01〜10質量%が好ましい。(v)の酵素の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vi)の酵素安定化剤の含有量は0.001〜2質量%が好ましい。(vii)の蛍光染料の含有量は0.001〜1質量%が好ましい。(viii)の酸化防止剤の含有量は0.01〜2質量%が好ましい。(ix)の可溶化剤は0.1〜2質量%が好ましい。(x)のポリアルキレングリコール系ゲル化防止重合体は0.01〜2%が好ましい。(xi)の水非混和性有機溶剤は0.001〜2質量%が好ましい。(xii)〜(xiv)の成分は例えば公知の濃度で配合することができる。
【0047】
本発明の洗浄剤組成物のpHはJIS K3362:1998記載で測定する。洗浄性の点から、液体洗浄剤組成物の場合、該pHは、好ましくは6〜11、より好ましくは8〜10(25℃)である。特には本発明の洗浄剤組成物を、(a)成分及び(b)成分の合計濃度が0.5g/Lとなるようにイオン交換水にて希釈溶解せしめた水溶液のpHが、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9.5(20℃)である。
【0048】
本発明の洗浄剤組成物は、衣料、寝具、布帛等の繊維製品用として好適である。
【0049】
本発明の洗浄剤組成物の形態は、液体状、粉末状ないし粒状、タブレット状、シート状などが挙げられる。本発明では主となる界面活性剤である(a)成分が30℃で液体状であるものを用いることが好ましく、液体洗浄剤組成物として好適に用いられる。
【0050】
以下、本発明が液体洗浄剤組成物の場合に含有することが好ましい成分について説明する。
<(g)成分>
本発明の洗浄剤組成物を液体洗浄剤組成物として用いる場合は、(g)成分として、水を含有する。水は組成物中に5〜80質量%、更には、10〜70質量%含有する。界面活性剤濃度が濃縮系の場合、例えば(a)+(b)+(c)成分が組成物中50質量%を超えるような場合は、水は30質量%以下であることが好ましい。また、界面活性剤濃度が濃縮系ではない場合は、水は40質量%を超える量であってもよい。水はイオン交換水などの組成に影響しないものを用いることが好ましい。
【0051】
<(h)成分>
本発明の洗浄剤組成物を液体洗浄剤組成物として用いる場合は、安定性、溶解性向上の点で、(h)水混和性有機溶剤を含有することが好ましい。本発明でいう水混和性有機溶剤とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解するもの、すなわち、溶解の程度が50g/L以上である溶剤を指す。
【0052】
(h)成分の含有量は、安定性、溶解性の点から、組成物中、1〜40質量%であり、2〜35質量%が好ましい。界面活性剤濃度が濃縮系ではない場合は、10質量%未満であってもよい。
【0053】
(h)成分としては、水酸基及び/又はエーテル基を有する水混和性有機溶剤が好ましい。
【0054】
水混和性有機溶剤としては、(h1)エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールなどのアルカノール類、(h2)プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、(h3)ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのグリコール類、(h4)ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、1−メチルグリセリンエーテル、2−メチルグリセリンエーテル、1,3−ジメチルグリセリンエーテル、1−エチルグリセリンエーテル、1,3−ジエチルグリセリンエーテル、トリエチルグリセリンエーテル、1−ペンチルグリセリルエーテル、2−ペンチルグリセリルエーテル、1−オクチルグリセリルエーテル、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどのアルキルエーテル類、(h5)2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、トリエチレングリコールモノフェニルエーテル、平均分子量約480のポリエチレングリコールモノフェニルエーテル、2−ベンジルオキシエタノール、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル等の芳香族エーテル類、が挙げられる。
【0055】
(h)成分は、組成物の粘度調整剤、ゲル化抑制剤として有効であり、上記の(h1)アルカノール類、(h2)グリコール類、(h4)アルキルエーテル類、(h5)芳香族エーテル類から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、より好ましくは(h2)グリコール類、(h4)アルキルエーテル類、(h5)芳香族エーテル類から選ばれるものである。(h)成分は粘度調整やゲル化抑制に効果的である。
【0056】
本発明の液体洗浄剤組成物の20℃における粘度は、取り扱いの容易さの点で10〜500mPa・sが好ましく、50〜400mPa・sがより好ましく、100〜300mPa・sが更に好ましい。(c)成分や可溶化剤によりこのような範囲になるように調整することが好ましい。
【0057】
本発明において粘度はB型粘度計により測定する。ローターは粘度に合ったものを選択する。回転数60r/minで回転し、回転開始から60秒後の粘度を液体洗浄剤組成物の粘度とする。
【0058】
<洗濯方法>
本発明の洗濯方法に用いる水性洗浄液は、水と、(a)成分及び(b)成分からなる繊維吸着性の低い界面活性剤系を、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15、(a)成分と(b)成分の合計濃度が100〜400mg/Lとなるように含有する。この水性洗浄液は、本発明の洗浄剤組成物を水道水などで希釈することで得ることができる。水性洗浄液の温度は2〜90℃の範囲から選択することができる。本発明の(a)成分は、通常の非イオン界面活性剤と比べて曇点が高いことから、欧州や米国のように洗濯液を加熱するタイプの洗濯機でも洗浄力を得ることができる。また(a)成分として前記一般式(1)においてAOを必須とする化合物、更には一般式(1−2)、(1−4)及び(1−5)の化合物、特には、一般式(1−5)の化合物又は、前記したR1O−EO−率及び−EO−H率を満たす化合物を含有する水性洗浄液をこの温度範囲で用いることが好ましい。特に一般式(1−5)の化合物は低温度でゲルや増粘しにくい性質であり、10℃以下の温度でも使用することができる。
【0059】
水性洗浄液中、(a)成分と(b)成分の好ましい質量比は、前記組成物と同じである。
【0060】
水性洗浄液中、(a)成分と(b)成分の合計濃度は100〜400mg/L、好ましくは150〜350mg/Lである。
【0061】
また、水性洗浄液中の分子量1000以下のキレート剤の濃度は、好ましくは30mg/L以下、より好ましくは15mg/L以下、更に好ましくは10mg/L以下である。
【0062】
また、水性洗浄液のpHは、好ましくは6〜10、より好ましくは7〜9.5である。このpHは使用温度でのpHであっても、20℃でのpHであってもよい。また、測定方法は前記と同じである。
【0063】
本発明の洗濯方法では、浴比は好ましくは3〜40である。ここで浴比とは、水性洗浄液の質量を衣類の質量で割った値を意味する。本発明ではドラム式洗濯機のように、低浴比の洗濯機に対しても優れた効果が得られる。具体的には浴比が3〜12、特には3〜8であっても、優れた濯ぎ性、すなわち被洗濯物からの界面活性剤の除去性を発揮する。本発明の水性洗浄液を用いた洗濯方法は、従来の限界と考えられた濯ぎ性を超えるものである。
【0064】
洗濯方法としては、手洗いによる方法、市販の洗濯機を用いる方法があり、いずれの方法においても、濯ぎ工程の回数を低減する効果、或いは少ない濯ぎ水でも優れた濯ぎ性を得ることができる。本発明の洗濯方法に用いる洗濯機としては、攪拌羽根に注水口と排水口とを有するだけの簡易洗濯機、脱水槽が分離したいわゆる二槽式洗濯機、全自動式洗濯機(ドラム式洗濯機を含む)を挙げることができる。洗濯機によっては、電気乾燥工程を含むものであってもよい。
【0065】
本発明の洗濯方法は次の工程(I)〜(IV)を含む。水性洗浄液として、前記説明の洗浄液を用いる。
洗浄工程(I):洗濯方法の中心となる工程。繊維製品を含む水性洗浄液或いは水性洗浄液を含浸させた繊維製品に物理的な応力、例えば攪拌や衝撃などを繊維製品に与えることにより洗浄する工程。繊維製品の種類や汚れの度合いにより攪拌時間や洗浄時間を変えてもよい。なお物理的な応力をかける前に、繊維製品に水性洗浄液を含浸させ、静置状態で放置すること、いわゆる“漬け置き”を行ってもよい。なお、本発明の洗浄剤組成物を用いる場合、該組成物は、被洗濯物を入れる前に先に水に溶かしてもよく、液体洗浄剤組成物の一部を繊維製品の汚れの多い部分に塗布などしてもよい。
排水工程(II):水性洗浄液を排水する。排水後又は排出途中で、脱水装置による遠心力によって水性洗浄液を強制排出してもよい。
濯ぎ工程(III):新たな水を投入し攪拌などの物理的応力をかけるなどして繊維内部に残った洗浄成分を新しい水に移動させることで、繊維製品内から洗浄基材を除去する工程。濯ぎ工程は、新しい水を追加しながらオーバーフローした水を除去していく工程(以下、流水濯ぎという場合もある)であってもよい。あるいは新しい水を追加することなく、一定の水を給水した後、それを洗濯槽内或いはポンプ等により巡回させてもよい。給水の方法としては、単純に水道口から直接洗濯槽に給水(あるいは水の巡回)してもよく、シャワー状にして、洗濯槽内の被洗濯物全体に注いでもよい。また脱水装置による緩やか又は断続的な脱水を行いながら給水(あるいは水の巡回)を行ってもよい。濯ぎ処理後、洗濯槽及び繊維製品から水は排水される。本発明の洗浄剤組成物や洗濯方法は、工程(III)で使用する水量の低減化や、或いは工程(III)を1回で終えることを可能にするが、排水後に工程(III)を繰り返してもよく、工程(III)と(IV)を繰り返してもよい。例えば、柔軟剤や糊剤の投入のために1回目の工程(III)又は工程(III)と(IV)の後に、工程(III)に戻り柔軟剤や糊剤を投入した後、原則流水濯ぎを行うことなく、工程(IV)への操作へと移る場合が挙げられる。また、過度に洗剤量を添加した場合や、過剰の洗濯物を洗濯するような場合に工程(III)を繰り返してもよく、使用者の心理的側面も加味される。
脱水工程(IV):遠心力或いは、圧縮や絞りによる繊維製品からの水の除去を行う工程。通常の洗濯工程では遠心力を用いた脱水装置により水が除去される。
【0066】
本発明の特徴は、工程(III)を簡素化できること、例えば濯ぎ回数を減らせること、或いは濯ぎ用に用いる水を減らすことを容易にする。
【実施例】
【0067】
[実験1]
表1に示す各成分を混合して得られた液体洗浄剤組成物(配合例1〜6)を用い、下記の各評価を行った。結果を表1に示す。
【0068】
(1)洗浄力評価
JIS K3362:1998記載の衿あか布を調製する。JIS K 3362:1998記載の衣料用合成洗剤の洗浄力評価方法に準じ、表1の液体洗浄剤組成物と洗浄力判定用指標洗剤の洗浄力を比較した。表1の液体洗浄剤組成物の使用濃度を0.33g/Lとした。洗浄力の判定は、指標洗剤より勝る場合を「◎」、指標洗剤と同等の場合を「○」、指標洗剤より劣る場合を「×」とした。
【0069】
(2)吸着率評価
前記の方法で表1の液体洗浄剤組成物に用いた界面活性剤系〔(a)成分及び(b)成分〕の繊維への吸着率を求めた。液体洗浄剤組成物の繊維への吸着性は、界面活性剤の吸着率と同様の傾向を示すことから、この評価による界面活性剤系の吸着率が低いほど、液体洗浄剤組成物の濯ぎ性に優れることを意味する。
【0070】
【表1】

【0071】
(注)表1中の成分は以下のものである。なお、表中では、(a’−1)及び(a’−2)も(a)成分とみなして構造や量比を示した。
(a−1):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキシドを20モル付加させたもの(一般式(1)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基、m=20、n=0の非イオン界面活性剤)
(a−2):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキシドを18モル、プロピレンオキシドを2モルの順にブロック付加させたもの。(一般式(1−2)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基、AOがオキシプロピレン基、m=18、n=2の非イオン界面活性剤)
(a−3):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキシドを9モル、プロピレンオキシドを2モル、エチレンオキシドを9モルの順にブロック付加させたもの。(一般式(1−5)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基、AOがオキシプロピレン基、m1=9、n=2、m2=9の非イオン界面活性剤)
(a’−1):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキシドを10モル付加させたもの。(一般式(1)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基、m=10、n=0の非イオン界面活性剤)
(b−1):炭素数10〜14の直鎖アルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸
キレート剤:乳酸
BDG:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
なおモノエタノールアミンは原液のpHが9になる適量を配合した。
【0072】
表1に示すように、衿汚れ洗浄力及び繊維吸着率の両方について、配合例1〜3では優れた結果が得られた。配合例1〜3の液体洗浄剤組成物は、濯ぎ性に優れるものと判断される。配合例4、5は指標洗剤よりも洗浄力がよいが、繊維吸着率は十分とは言い難い。
配合例6は洗浄力が十分ではない。
【0073】
[実験2]
表2に示す各成分を混合して得られた液体洗浄剤組成物(配合例7〜12)を用い、実験1と同様の評価を行った。結果を表2に示した。なお、表2中の成分で特記しないものは実験1と同じものである。
【0074】
【表2】

【0075】
(注)表2中の成分は以下のものである。なお、表中では、(a’−2)も(a)成分とみなして構造や量比を示した。
(a’−2):炭素数10〜14の1級直鎖アルコール1モル当りにエチレンオキシドを14モル付加させたもの(一般式(1)において、R1が炭素数10〜14の直鎖のアルキル基、m=14、n=0の非イオン界面活性剤)
(b−2):炭素数12ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩(オキシエチレン基の平均付加モル数が2、モノエタノールアミン塩、但し、表2の数値は酸と仮定した濃度を記載した。)
なおモノエタノールアミンは原液のpHが9になる適量を配合した。
【0076】
[実験3]
表1及び表2で示された各配合例を等量の水で希釈(2倍希釈)した組成物として配合例3−1、配合例3−2、配合例3−3、配合例3−4、配合例3−5、配合例3−6、配合例3−7、配合例3−8、配合例3−9、配合例3−10、配合例3−11、配合例3−12を調整する。なおここで配合例3−xの“x”に相当する番号は、表1及び表2の配合例と同じ番号の組成物を2倍希釈したものであることを示す。これら液体洗浄剤組成物に関し、洗浄力の評価方法において、0.66g/Lになるよう、すなわち2倍の濃度で添加することで、洗浄評価を行うと実験1及び実験2と同じ結果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)と(b)成分からなる繊維吸着性の低い界面活性剤系を含有する洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15である、洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−[(C24O)m/(AO)n]H (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であって、mは16〜50の数であり、nは0〜5の数であり、n=0のとき、mは20以上である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
【請求項2】
(a)成分及び(b)成分以外の界面活性剤の割合が、全界面活性剤中の20質量%以下である、請求項1記載の洗浄剤組成物
【請求項3】
分子量が1000以下のキレート剤の含有量が2質量%以下である、請求項1又は2記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
水と下記(a)成分及び(b)成分からなる繊維吸着性の低い界面活性剤系とを、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15、(a)成分と(b)成分の合計濃度が100〜400mg/Lで含有する水性洗浄液を用いた洗浄工程を含む洗濯方法。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−[(C24O)m/(AO)n]H (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であって、mは16〜50の数であり、nは0〜5の数であり、n=0のとき、mは20以上である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤
【請求項5】
水性洗浄液中の分子量1000以下のキレート剤の濃度が30mg/L以下である請求項4記載の洗濯方法。
【請求項6】
浴比が3〜40である、請求項4又は5に記載の洗濯方法。
【請求項7】
下記(a)成分と(b)成分とを含有する洗浄剤組成物であって、(a)成分と(b)成分の質量比が(a)/(b)=40/60〜85/15である、洗浄剤組成物。
(a)成分:下記一般式(1)で表される非イオン界面活性剤
1O−[(C24O)m/(AO)n]H (1)
〔式中、R1は炭素数8〜22の鎖式炭化水素基であり、AOは炭素数3〜5のオキシアルキレン基である。m、nは平均付加モル数であって、mは16〜50の数であり、nは0〜5の数であり、n=0のとき、mは20以上である。“/”はC24O基及びAO基が、ランダム又はブロックのいずれに結合したものであってもよいことを示す。〕
(b)成分:陰イオン界面活性剤

【公開番号】特開2011−32456(P2011−32456A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−265120(P2009−265120)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】