説明

洗浄性向上剤及びこの洗浄性向上剤を含有する洗剤組成物

【課題】洗浄性を向上させる洗浄性向上剤及びこの洗浄性向上剤を含有する洗剤組成物を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼ(A)からなる洗浄性向上剤。この洗浄性向上剤(B)及び界面活性剤(C)を含有する洗剤組成物。好ましくはさらにプロテアーゼ(D)及びプロテアーゼ阻害剤(E)を含有する洗剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄性向上剤及びこの洗浄性向上剤を含有する洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
衣料用洗剤において、洗浄性を向上させるための研究開発が行われており、例えば、界面活性剤にプロテアーゼ等の酵素を併用することで洗浄性が向上すること(特許文献1)は知られている。しかし、洗浄性の向上が十分ではない。
【0003】
ところで、近年塩基配列決定技術の進展に伴って多種多様な生物のゲノムDNAの塩基配列が決定され、生物情報科学的な観点から遺伝子の配列や機能も予測されている。しかし、その遺伝子がコードするタンパク質の機能が実際に予測に一致しない例が多い。そのため、実際に生化学的解析をしなければ正確な機能が特定できないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−073396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、洗浄性を向上させる洗浄性向上剤及びこの洗浄性向上剤を含有する洗剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、洗浄性を向上させる成分を得るべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の洗浄性向上剤(B)は、配列番号1のアミノ酸配列を有する、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼ(A)からなる洗浄性向上剤である。
また、本発明の洗剤組成物は、洗浄性向上剤(B)及び界面活性剤(C)を含有する洗剤組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の洗浄性向上剤は、洗剤の洗浄性を向上させることができる。また、本発明の洗剤組成物は、洗浄性が優れている。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の洗浄性向上剤(B)は、配列番号1のアミノ酸配列を有する、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼ(A)からなるものである。
【0009】
本発明においてセルラーゼ(A)は、β−1,4−グルカンのグリコシド結合を加水分解するというエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を有する酵素である。
【0010】
本発明において、配列番号1のアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼとは、変質後も依然としてエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を保持するアミノ酸配列を有するセルラーゼであり、配列番号1のアミノ酸配列と等価であるアミノ酸配列を有するセルラーゼを意味する。
上記アミノ酸の付加とは、配列番号1のアミノ酸配列中のアミノ酸とアミノ酸との間に、1若しくは数個のアミノ酸が付加することを意味し、アミノ酸配列のN及び/又はC末端へのアミノ酸の付加は含まない。
上記1若しくは数個は、エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を有する観点から、1〜10個が好ましく、さらに好ましくは1〜5個である。
【0011】
セルラーゼ(A)は、エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を有するものであれば、配列番号1又はこのアミノ酸配列と等価であるアミノ酸配列のN及び/又はC末端に、ペプチド配列(N)を有していてもいい。(N)は、アミノ酸1個又はアミノ酸が2個以上結合したペプチド配列である。(N)として、具体的には、MD配列、MKYLLPTAAAGLLLLAAQPAMAMD配列(配列番号(2))及びSDPNSSSVDKLAAALE配列(配列番号(12))等が挙げられる。
(N)を構成するアミノ酸の数は、エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を有する観点から、1〜30個が好ましく、さらに好ましくは1〜20個、特に好ましくは1〜10個である。
【0012】
また、セルラーゼ(A)は、上記(N)以外に、セルラーゼ(A)のN又はC末端に特殊なアミノ酸配列を有するタンパク質又はペプチド(以下これらを「精製タグ」と称する)を有してもいい。精製タグとしては、アフィニティー精製用のタグが利用される。そのような精製タグとしては、ポリヒスチジンからなる6×Hisタグ、V5タグ、Xpressタグ、AU1タグ、T7タグ、VSV−Gタグ、DDDDKタグ、Sタグ、CruzTag09TM、CruzTag22TM、CruzTag41TM、Glu−Gluタグ、Ha.11タグ及びKT3タグ等が挙げられる。
以下に、各精製タグ(i)とそのタグを認識結合するリガンド(ii)との組み合わせの一例を示す。
(i−1)グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GTS) (ii−1)グルタチオン
(i−2)マルトース結合タンパク質(MBP) (ii−2)アミロース
(i−3)HQタグ (ii−3)ニッケル
(i−4)Mycタグ (ii−4)抗Myc抗体
(i−5)HAタグ (ii−5)抗HA抗体
(i−6)FLAGタグ (ii−6)抗FLAG抗体
(i−7)6×Hisタグ (ii−7)ニッケル又はコバルト
前記精製タグ配列の導入方法としては、発現用ベクターにおけるセルラーゼ(A)をコードする核酸の5’又は3’末端に精製タグをコードする核酸を挿入する方法や市販の精製タグ導入用ベクターを使用する方法等が挙げられる。
【0013】
本発明において、セルラーゼ(A)の活性は、一般的なエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性測定法によって測定できる。エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性測定法として、具体的には、粘度測定法が挙げられる。
【0014】
粘度測定法は、CMC(カルボキシメチルセルロース)を基質として用いて反応させた後、溶液の粘度を測定してエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性を検出する方法である。具体的には、下記の粘度測定法により測定される。
<粘度測定法>
pH7.5のリン酸緩衝液に、17.5g/LになるようにCMC(製品名:カルボキシメチルセルロースナトリウム039−01335、和光純薬社製)を溶解し、基質溶液を調整する。pH7.5のリン酸緩衝液に、一定量のセルラーゼ(A)を溶解したセルラーゼ(A)溶液を調整する。基質溶液3mLとセルラーゼ(A)溶液5μLを混合し、40℃に温度を調節した粘度計(例えば、TVE−22L粘度計、2rpm)に移す。混合直後に粘度を読み取り、1、2、3、4、5及び6分後に粘度を読み取る。セルラーゼ(A)の濃度が異なるセルラーゼ(A)溶液を用いて同様に測定する。セルラーゼ(A)溶液及び基質溶液を混合直後の粘度と、5分後の粘度とを比較して、5分後の粘度が1/2となるセルラーゼ(A)の量(mg)を、エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性1単位と定義する。1単位となるセルラーゼ量(単位:mg)から、セルラーゼ1mg当たりのエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性単位を算出する。
【0015】
セルラーゼ(A)の粘度測定法によるエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性は、洗浄性を向上させる観点から、1〜10000単位/mgが好ましく、さらに好ましくは20〜2000単位/mgである。
【0016】
上記セルラーゼ(A)は、配列番号1に示すアミノ酸配列を有するセルラーゼ又はこのアミノ酸配列と等価のアミノ酸配列を有するセルラーゼをコードする遺伝子を微生物等の宿主に導入し、宿主を培養液中で培養し、培養液中からセルラーゼを採取及び精製することによって生産することができる。
【0017】
なお、セルラーゼ(A)をコードする遺伝子は、自然界等から得ることも可能ではあるが、更に部位特異的突然変異誘発法等の公知の手法を利用して調製することもできる。
【0018】
セルラーゼ(A)は、セルラーゼ(A)をコードする遺伝子を、例えばバチラス属に属する微生物、例えばBacillus licheniformis等から、ショットガン法、PCR法を用いてクローニングし、適当なベクターと宿主菌を用いて大量に生産することができる。
【0019】
セルラーゼ(A)をコードする遺伝子を用いてセルラーゼ(A)を生産する方法は、目的とする宿主内で遺伝子を発現するのに適した任意のベクターに、セルラーゼ(A)をコードする遺伝子を組込み、この組換えベクターを用いて宿主を形質転換し、組み換えベクターを含む形質転換体を得る。得られた形質転換体を培養し、この培養液からセルラーゼを採取すればよい。
【0020】
組換えベクターは、適当なベクターにセルラーゼ(A)をコードする遺伝子を挿入することによって得ることができる。
ベクターは種々のものが公知であり、市販品も多く存在する。当業者であれば、宿主の種類に応じて適切なベクターを容易に選択することができる。ベクターの具体例としては、pETシリーズ及びpUCシリーズ等が挙げられる。
組換えベクターの調製方法自体は周知の常法である。適当なベクターにセルラーゼ(A)をコードする遺伝子を挿入し、宿主を形質転換する具体的な方法としては、エレクトロポレーション法及びカルシウム法等が挙げられる。
【0021】
本発明において、宿主としては、動物細胞、微生物、植物細胞などが挙げられる。
動物細胞としては、特に限定されないが、昆虫細胞、サル細胞COS−7、Vero、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞及びCHO細胞等が挙げられる。
昆虫細胞としては、特に限定されないが、Sf9細胞及びSf21細胞等が挙げられる。
微生物としては、特に限定されないが、細菌及び酵母等が挙げられる。
細菌としては、真正細菌及び古細菌が含まれる。
真正細菌には、グラム陰性菌及びグラム陽性菌が含まれる。グラム陰性細菌としては、エシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)等が挙げられる。グラム陽性菌としては、バチルス属(Bacillus属)、ストレプトマイセス属(Streptmyces属)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)、ビフィドバクテリウム属 (Bifidobacterium属)、ラクトコッカス属 (Lactococcus属)、エンテロコッカス属 (Enterococcus属)、ペディオコッカス属(Pediococcus属)、リューコノストック属 (Leuconostoc属)、ストレプトマイセス属(Streptomyces属)等が挙げられる。
植物細胞としては、特に限定されないが、BY−2細胞等が挙げられる。
【0022】
本発明において、宿主としては、クローニングの容易さの観点から、微生物が好ましく、さらに好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、サーマス属菌(Thermus)、リゾビウム属菌(Rhizobium)、シュードモナス属菌(Pseudomonas)、シュワネラ属菌(Shewanella)、ビブリオ属菌(Vibrio)、サルモネラ属菌(Salmonella)、アセトバクター属(Acetobacter属)、シネコシスティス属(Synechocystis属)であり、特に好ましくはエシェリチア属菌(Escherichia)、シュワネラ属菌(Shewanella)、バチルス属(Bacillus属)、ブレビバチルス属(Brevibacillus属)である。
【0023】
培養は微生物の資化可能な炭素源、窒素源その他の必須栄養素を含む培地に接種し、常法に従って行えばよい。
【0024】
本発明において、培養液からセルラーゼ(A)を採取及び精製する方法としては、常法に準じて行うことができる。例えば、培養物から遠心分離又は濾過することで菌体を除き、得られた培養上清液から常法手段により目的酵素を濃縮することができる。このようにして得られた酵素液又は乾燥粉末はそのまま用いることもできるが更に公知の方法により結晶化や造粒化することができる。
【0025】
本発明の洗浄性向上剤(B)は、上記セルラーゼ(A)からなるものである。
本発明の洗浄性向上剤(B)を洗浄剤に添加することにより、洗浄剤の洗浄性を向上させることができる。さらに、洗浄性向上剤(B)により向上した洗浄性は、長期間保管後も低下しない。
【0026】
また、本発明の洗剤組成物は、上記洗浄性向上剤(B)及び界面活性剤(C)を含有する洗剤組成物である。
【0027】
洗剤組成物中に含む洗浄性向上剤(B)として、好ましいものは、上記と同様である。
【0028】
界面活性剤(C)には、非イオン性界面活性剤(C−1)、アニオン性界面活性剤(C−2)、カチオン性界面活性剤(C−3)、両性界面活性剤(C−4)及びバイオサーファクタント(C−5)が含まれる。
【0029】
非イオン性界面活性剤(C−1)としては、アルキレンオキサイド付加型非イオン性界面活性剤(C−1−1)及び多価アルコール型非イオン性界面活性剤(C−1−2)等が挙げられる。
【0030】
(C−1−1)としては、高級アルコール(炭素数8〜18)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜30)、アルキル(炭素数1〜12)フェノールエチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドをEOと記載することがある)付加物(付加モル数1〜30)、高級アミン(炭素数8〜22)アルキレン(炭素数2〜4、好ましいのは2)オキサイド付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜40)、脂肪酸(炭素数8〜18)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜60)、ポリプロピレングリコール(分子量200〜4000)EO付加物(活性水素1個当たりの付加モル数1〜50)、ポリオキシエチレン(繰り返し単位数3〜30)アルキル(炭素数6〜20)アリルエーテル並びにソルビタンモノラウレートEO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)及びソルビタンモノオレートEO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステルEO付加物(活性水素1個あたりの付加モル数1〜30)等が挙げられる。
【0031】
(C−1−2)としては、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、ソルビタンモノラウレート及びソルビタンモノオレート等の多価(2〜8価又はそれ以上)アルコール(炭素数2〜30)の脂肪酸(炭素数8〜24)エステル並びにラウリン酸モノエタノールアミド及びラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0032】
アニオン性界面活性剤(C−2)としては、炭素数8〜24のアルキルエーテルカルボン酸又はその塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンエーテルカルボン酸又はその塩[(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルスルホコハク酸2ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩[ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸ナトリウム及びラウリル(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)硫酸−トリエタノールアミン塩等]、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸スルホン酸ナトリウム、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩[ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等]、炭素数8〜24のアルキルリン酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレンリン酸エステル塩[ラウリルリン酸ナトリウム及び(ポリ)オキシエチレン(重合度=1〜100)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム等]、脂肪酸塩[ラウリン酸ナトリウム及びラウリン酸トリエタノールアミン等]、アシル化アミノ酸塩[ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシンナトリウム、ヤシ油脂肪酸ザルコシントリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸トリエタノールアミン、N−ヤシ油脂肪酸アシル−L−グルタミン酸ナトリウム及びラウロイルメチル−β−アラニンナトリウム等]が挙げられる。
【0033】
カチオン性界面活性剤(C−3)としては、第4級アンモニウム塩型[塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム及びエチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム等]及びアミン塩型[ステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド乳酸塩、ジラウリルアミン塩酸塩及びオレイルアミン乳酸塩等]等が挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤(C−4)としては、ベタイン型両性界面活性剤[ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウム等]、アミノ酸型両性界面活性剤[β−ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等]が挙げられる。
【0035】
バイオサーファクタント(C−5)としては、サーファクチン、ラムノリピッド及びこれらの塩等が挙げられる。塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びオニウム塩等が挙げられる。
【0036】
(C)としては、1種又は2種以上が使用出来る。2種以上を使用する場合、その組み合わせとしては、例えば非イオン性界面活性剤(C−1)とアニオン性界面活性剤(C−2)、非イオン性界面活性剤(C−1)とカチオン性界面活性剤(C−3)及び非イオン性界面活性剤(C−1)と両性界面活性剤(C−4)の組み合わせ等が挙げられる。
【0037】
(C)として、洗浄性の観点から、非イオン性界面活性剤(C−1)単独での使用、及び非イオン性界面活性剤(C−1)とアニオン性界面活性剤(C−2)との組み合わせでの使用が好ましい。
非イオン性界面活性剤(C−1)としては、洗浄性の観点から、脂肪族アルコール(炭素数8〜24)エチレンオキサイド付加物(重合度=1〜100)が好ましく、さらに好ましくは脂肪族アルコール(炭素数12〜18)エチレンオキサイド付加物(重合度4〜20)、次にさらに好ましくは脂肪族アルコール(炭素数12〜15)エチレンオキサイド付加物(重合度=8〜12)、特に好ましくはラウリルアルコールエチレンオキサイド11モル付加物である。
アニオン性界面活性剤(C−2)としては、洗浄性の観点から、炭素数8〜24のアルキルフェニルスルホン酸塩、脂肪酸塩、炭素数8〜24のアルキル硫酸エステル塩及び炭素数8〜24のアルキル(ポリ)オキシエチレン硫酸エステル塩が好ましく、さらに好ましくは、炭素数12〜16のアルキルフェニルスルホン酸塩及び炭素数8〜16の脂肪酸塩、次にさらに好ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸モノエタノールアミン塩及びラウリン酸ナトリウムである。
【0038】
本発明の洗剤組成物中に含まれる洗浄性向上剤(B)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、(B)及び(C)の合計重量を基準として、0.0001〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
【0039】
本発明の洗剤組成物に含まれる洗浄性向上剤(B)の含有量は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量を基準として、0.0001〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜0.5重量%である。
【0040】
本発明の洗剤組成物中に含まれる界面活性剤(C)の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、(B)及び(C)の合計重量を基準として、40〜99.9999重量%が好ましく、さらに好ましくは95〜99.99重量%である。
【0041】
本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤(C)の含有量は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量を基準として、1〜90重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜80重量%である。
【0042】
本発明における洗剤組成物には、上記の洗浄性向上剤(B)及び界面活性剤(C)以外に、プロテアーゼ(D)及びプロテアーゼ阻害剤(E)を含有することができる。洗浄性の観点から、(D)及び(E)を含有することが好ましい。
【0043】
本発明においてプロテアーゼ(D)とは、ペプチド又はタンパク質を基質として加水分解を触媒する酵素である。(D)としては、セリンプロテアーゼ(D−1)、アスパラギン酸プロテアーゼ(D−2)、システインプロテアーゼ(D−3)及び金属プロテアーゼ(D−4)が含まれる。
【0044】
セリンプロテアーゼ(D−1)は、触媒残基としてセリン残基をもつプロテアーゼであり、キモトリプシン、トリプシン、トロンビン、プラスミン、エラスターゼ、スブチリシン及びケキシン等が含まれる。具体的には、ブタすい臓由来トリプシン、バシラス菌(Bacillus)由来のサブチリシン Novo、サブチリシン Carlsberg、サブチリシン 309、サブチリシン 147及びサブチリシン 168が挙げられる。
市販のセリンプロテアーゼ(D−1)としては、ノボザイムス社製のアルカラーゼ、サビナーゼ、エバラーゼ、PTN及びジェネンコア社のピュラフェクト、ピュラフェクト OXP等が挙げられる。
【0045】
アスパラギン酸プロテアーゼ(D−2)は、活性中心にアスパラギン酸の存在するプロテアーゼであり、ペプシン、カテプシンD、レニン及びキモシン等が含まれる。具体的には、ヒト胃由来のペプシン等が挙げられる。
【0046】
システインプロテアーゼ(D−3)は、チオール基が活性中心に存在するプロテアーゼであり、パパイン、ブロメライン、フィシン、アクチニジン、カテプシンB、カテプシンH、カテプシンL及びショウガプロテアーゼ等が含まれる。
【0047】
金属プロテアーゼ(D−4)は、活性中心に金属イオンを含むプロテアーゼであり、例えば、サーモライシン、マトリックスメタロプロテイナーゼ、カルボキシペプチダーゼA、カルボキシペプチダーゼB及びコラゲナーゼ等が挙げられる。
【0048】
上記プロテアーゼ(D)のうち、洗浄性の観点から、セリンプロテアーゼ(D−1)が好ましく、さらに好ましくはスブチリシンである。
【0049】
本発明の洗剤組成物が(B)、(C)、(D)及び(E)を含む場合、洗剤組成物に含まれる洗浄性向上剤(B)の含有量は、洗浄性の観点から、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準として、0.001〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜5重量%である。
本発明の洗剤組成物に含まれる界面活性剤(C)の含有量は、洗浄性の観点から、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準として、10〜99.998998重量%が好ましく、さらに好ましくは85〜99.9889重量%、特に好ましくは89〜99.9869であり、最も好ましくは93〜99.9867である。
本発明において、洗剤組成物中のプロテアーゼ(D)の含有量は、洗浄性の観点から、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準として、0.000001〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは0.001〜5重量%、特に好ましくは0.003〜1重量%である。
(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準としたプロテアーゼ(D)の含有量が0.000001重量%以上であることで、洗剤組成物の洗浄性が良好となる。また、30重量%以下であることで、添加量に見合った洗浄性を得られる。
【0050】
また、洗剤組成物中のプロテアーゼ(D)の含有量は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量を基準として、0.000001〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜0.05重量%である。
洗剤組成物の重量を基準としたプロテアーゼ(D)の含有量が0.00001重量%以上であることで、洗剤組成物の洗浄性が良好となる。また、0.05重量%以下であることで、添加量に見合った洗浄性を得られる。
【0051】
本発明において、プロテアーゼ阻害剤(E)としては、プロテアーゼ阻害剤の機能を持つ公知のものが使用でき、例えば、Streptomyces albogriseolous由来Streptomyces subtilisin inhibitor(SSI)に代表されるStreptomyces属由来のスブチリシン阻害剤、大豆由来トリプシン阻害剤、コムギ由来スブチリシン・キモトリプシン阻害剤(WSCI)、ヒト由来シスタチンB、回虫由来ペプシン阻害剤及びジャガイモ由来カテプシンD阻害剤等もしくはその改変体等が挙げられる。
プロテアーゼ活性阻害剤(E)の機能とは、プロテアーゼ(D)と一定のモル比で可逆的に結合し、プロテアーゼ(D)の活性を阻害することである。
【0052】
本発明において、洗剤組成物中のプロテアーゼ阻害剤(E)の含有量は、洗浄性及び洗剤組成物の保存安定性の観点から、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準として、0.000001〜89.99899重量%が好ましく、さらに好ましくは0.0001〜5重量%、特に好ましくは0.0003〜1重量%である。
(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準としたプロテアーゼ阻害剤(E)の含有量が0.000001重量%以上であることで、プロテアーゼ(D)の保存安定性が向上し、洗剤組成物の洗浄性を保つことができる。また、89.9989重量%以下であることで、添加量に見合った保存安定性を得られる。
【0053】
また、洗剤組成物中のプロテアーゼ阻害剤(E)の含有量は、洗浄性及び洗剤組成物の保存安定性の観点から、洗剤組成物の重量を基準として、0.000001〜1重量%が好ましく、さらに好ましくは0.00001〜0.5重量%である。
洗剤組成物の重量を基準としたプロテアーゼ阻害剤(E)の含有量が0.000001重量%以上であることで、プロテアーゼ(D)の保存安定性が向上し、洗剤組成物の洗浄性を保つことができる。また、1重量%以下であることで、添加量に見合った保存安定性を得られる。
プロテアーゼ阻害剤(E)とプロテアーゼ(D)とのモル比{(E)のモル数/(D)のモル数}が0.5〜100が好ましく、さらに好ましくは1〜80、特に好ましくは1〜50である。
プロテアーゼ阻害剤(E)とプロテアーゼ(D)との比が0.5以上であることで、プロテアーゼ(D)の保存安定性が向上し、洗剤組成物の洗浄性を保つことができる。また、100以下であることで、添加量に見合った保存安定性を得られる。
【0054】
洗剤組成物には、必要により、水又は公知のその他の成分、例えば特開2004−27181号公報に記載のビルダー、キレート剤、親水性溶媒、消泡剤、蛍光増白剤、漂白剤、柔軟剤、除菌剤、香料、着色剤、pH緩衝剤、アミラーゼ及びリパーゼ等を含有してもよい。
【0055】
ビルダーとしては、ポリカルボン酸塩(アクリル酸塩ホモポリマー及びマレイン酸塩ホモポリマー等)、多価カルボン酸塩(クエン酸及びリンゴ酸等)、及びアルカリビルダー(苛性ソーダ、ソーダ灰、アンモニア、トリエタノールアミン、トリポリリン酸ソーダ及びケイ酸ソーダ等)等が挙げられる。
キレート剤としては、EDTA及びNTA等が挙げられる。親水性溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。
消泡剤としては、シリコーン系消泡剤、ポリオキシアルキレン系消泡剤及び鉱物油系消泡剤等が挙げられる。
pH緩衝剤としては、ホウ酸バッファー、リン酸バッファー、酢酸バッファー、Trisバッファー、HEPESバッファー、硫酸、塩酸、クエン酸、乳酸、ピルビン酸、蟻酸、塩化ナトリウム、塩化カリウム、モノエタノールアミン及びジエタノールアミン等が挙げられる。
アミラーゼとしては、公知のアミラーゼが使用でき、具体的には、ノボザイムス社製、商品名「ターマミル」中に含まれるアミラーゼ等が挙げられる。
リパーゼとしては、公知のリパーゼが使用でき、具体的には、ノボザイムス社製、商品名「リポラーゼ」中に含まれるリパーゼ等が挙げられる。
酵素安定化剤としては、公知の酵素安定化剤が使用でき、具体的には、糖等が挙げられる。
【0056】
洗剤組成物中の水の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜98.9重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜93.995重量%であり、次にさらに好ましくは10〜79.9重量%、特に好ましくは20〜67.9重量%である。
その他の成分のうち、洗剤組成物中のビルダー及びキレート剤の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜5重量%である。
洗剤組成物中の蛍光増白剤、漂白剤、柔軟剤、酵素、除菌剤、香料、着色剤及び消泡剤の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜5重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜2重量%である。
洗剤組成物中の親水性溶媒の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量に基づいて、0〜20重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜10重量%である。
洗剤組成物中のpH緩衝剤の含有量(重量%)は、洗浄性の観点から、洗剤組成物の重量を基準として、0〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜15重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
洗剤組成物中のアミラーゼの含有量(重量%)は、洗剤組成物の重量を基準として、洗浄性の観点から、0〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜0.05重量%、特に好ましくは0〜0.01重量%である。
洗剤組成物中のリパーゼの含有量(重量%)は、洗剤組成物の重量を基準として、洗浄性の観点から、0〜0.1重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜0.05重量%、特に好ましくは0〜0.01重量%である。
洗剤組成物中の酵素安定化剤の含有量(重量%)は、洗剤組成物の重量を基準として、洗浄性の観点から、0〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは0〜20重量%、特に好ましくは0〜10重量%である。
【0057】
本発明の洗剤組成物の性状は特に限定されないが、液体状、ペースト状、粉末状、フレーク状及びブロック状等が挙げられる。これらのうち、取り扱い易さの観点から好ましいのは粉末状及び液体状である。
【0058】
本発明の洗剤組成物は、性状の違いにより、以下の方法を選択して製造することができる。
(1)洗剤組成物の性状が液体状又はペースト状の場合
撹拌機及び加熱冷却装置を備えた混合槽に、界面活性剤(C)と、必要により水及びその他の成分を投入順序に特に制限なく投入し、10〜50℃で均一になるまで撹拌し、洗浄性向上剤(B)を加えてさらに10〜50℃で均一になるまで攪拌して製造する方法。
(2)洗剤組成物の性状が粉末状の場合
撹拌機及び加熱冷却装置を備えた混合槽に、界面活性剤(C)と、必要により水及びその他の成分を投入順序に特に制限なく投入し、10〜50℃で均一になるまで撹拌し、洗浄性向上剤(B)を加えてさらに10〜50℃で均一になるまで攪拌した後、噴霧乾燥器(例えば圧力噴霧ノズル型噴霧乾燥機、2流体噴霧ノズル型噴霧乾燥機及び回転円盤式噴霧乾燥機等)で噴霧乾燥する方法。
(3)洗剤組成物の性状が粉末状、フレーク状及びブロック状の場合
撹拌機及び加熱冷却装置を備えた混合槽に、界面活性剤(C)と、必要によりその他の成分を投入順序に特に制限なく投入し、10〜50℃で均一になるまで撹拌し、洗浄性向上剤(B)を加えてさらに10〜50℃で均一になるまで攪拌した後、離型紙上に溶融物を取り出して室温まで冷却し、得られた固化物を粉砕機(例えばミルミキサー、ボールミル、ジェット粉砕機、コロイドミル及びホモジナイザー等)で適度な大きさ(粉状、フレーク状又はブロック状)に粉砕する方法。
【0059】
上記洗剤組成物は、衣料用洗剤、自動食器洗浄機用洗剤及びコンタクトレンズ用洗浄剤等に使用できる。
【0060】
洗剤組成物の使用方法は、従来の洗剤組成物の使用方法と同じでよく、特に限定されるものではない。衣料用洗剤としての使用方法の1例を下記に示す。
(1)洗濯物が入った洗濯機に水道水を張り、洗剤組成物を25℃で添加し、軽く撹拌して溶解させる。
(2)洗濯機で洗濯物を洗浄する。
(3)洗濯機から液を抜き、水道水で1〜2回すすぐ。
(4)適宜脱水をかける。
【実施例】
【0061】
以下の実施例、比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0062】
<製造例1>
プライマー1(配列番号5)と2(配列番号6)を用いてPCR法によりBacillus licheniformisのbglC遺伝子を増幅した。PCR増幅断片を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。その後、BL21(DE3)大腸菌株(Novagen社)へ形質転換を行い、配列番号1及び配列番号2のアミノ酸配列からなる配列番号3のセルラーゼ(A−1)を発現する大腸菌(α)を作成した。
【0063】
<製造例2>
プライマー2の代わりにプライマー3(配列番号8)を用いること以外は製造例1と同様にして、配列番号9のセルラーゼ(A−3)を発現する大腸菌(β)を作成した。
【0064】
<実施例1>
○洗浄性向上剤(B−1)の製造
大腸菌(α)の終夜培養液10mlを作製し、250mL培養液(TB培養液(Difco社)、0.7重量%硫酸アンモニウム、0.05重量%クエン酸2アンモニウム、1mM硫酸マグネシウム)に植菌し、1L微生物培養装置(エイブル社)を用いてpH7.0、37℃で維持したまま培養を行った。培養開始3時間後に、1M IPTG(イソプロピル−β−チオガラクトピラノシド)を0.75mL加え、さらに、培養液中の濃度が1.0重量%になるようにヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(三洋化成工業(株)製、商品名「レボン2000」)を加えた。培養を48時間行った後、培養液15mLから遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて菌体を分離し、上清のみを回収した。得られた上清を、遠心分離機(KUBOTA社製「5922」、4℃、6000×g、10分)を用いて沈殿除去を行った後、限外ろ過膜(Millipore社製「アミコンウルトラ−15」分画分子量10000)を用いて、5mL程度になるまで上清の濃縮を行い、リン酸緩衝液10mL加えて再び5mL程度になるまで濃縮を行い、再度リン酸緩衝液を加え5mL程度になるまで濃縮を行い、配列番号4のセルラーゼ(A−2)を含む水溶液(すなわち、洗浄性向上剤(B−1)含有溶液)を得た(大腸菌(α)において発現誘導を行い細胞外に分泌される際に、分泌シグナル部位が切断され、配列番号4のアミノ酸配列となった)。SDS−PAGEを測定したところ、水溶液中のセルラーゼ(A−2)の濃度は15g/Lであった。
得られた洗浄性向上剤(B−1)含有溶液を用いて、表1の割合で25℃で配合した溶液を用いて、洗浄性試験を行った。結果を表1に示す。
【0065】
<実施例2>
○洗浄性向上剤(B−2)の製造
実施例1において、「大腸菌(α)」に変えて「大腸菌(β)」を用いること以外は同様に行って、配列番号10のセルラーゼ(A−4)を含む水溶液(すなわち、洗浄性向上剤(B−2)含有溶液)を得た(大腸菌(β)において発現誘導を行い細胞外に分泌される際に、分泌シグナル部位が切断され、配列番号10のアミノ酸配列となった)。SDS−PAGEを測定したところ、水溶液中のセルラーゼ(A−4)の濃度は15g/Lであった。
得られた洗浄性向上剤(B−2)含有溶液を用いて、表1の割合で25℃で配合した溶液を用いて、洗浄性試験を行った。結果を表1に示す。
【0066】
<セルラーゼ(A−2)のエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性の測定>
pH7.5のリン酸緩衝液に、17.5g/LになるようにCMC(製品名:カルボキシメチルセルロースナトリウム039−01335、和光純薬社製)を溶解し、基質溶液を調整した。pH7.5のリン酸緩衝液3mLに、実施例1で得たセルラーゼ(A−2)の水溶液を加え、リン酸緩衝液で100倍希釈して、セルラーゼ(A−2)溶液を調整した。基質溶液3mLとセルラーゼ(A−2)溶液5μLを混合し、40℃に温度を調節した粘度計(TVE−22L粘度計、2rpm)に移した。混合直後に粘度を読み取り、その後、1、2、3、4、5及び6分後に粘度を読み取った。セルラーゼ(A−2)の濃度が異なるセルラーゼ(A−2)溶液を作成して同様に測定し、混合直後の粘度と5分後の粘度を比較した。5分後の粘度が1/2となるセルラーゼ(A−2)の量(エンド−1,4−β−グルカナーゼ活性1単位)は0.05mgであった。したがって、セルラーゼ(A−2)の粘度測定法によるエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性は20単位/mgであった。
【0067】
<セルラーゼ(A−4)のエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性の測定>
「セルラーゼ(A−2)のエンド−1,4−β−グルカナーゼ活性の測定」において、「実施例1で得たセルラーゼ(A−2)の水溶液」に変えて「実施例2で得たセルラーゼ(A−4)の水溶液」を用いること以外は同様に行った。活性は20単位/mgであった。
【0068】
<比較例1>
実施例1において、洗浄性向上剤(B−1)含有溶液に変えて水を用いる以外は同様にして、洗浄性試験を行った。結果を表1に示す。
【0069】
【表1】

表1中の各成分は、下記のものを使用した。
洗浄性向上剤(B−1)含有溶液:実施例1で得た15g/Lセルラーゼ(A−2)の水溶液
洗浄性向上剤(B−2)含有溶液:実施例2で得た15g/Lセルラーゼ(A−4)の水溶液
【0070】
表1の洗浄率の結果から、比較例1の水のみで洗浄した場合と比較して、実施例1及び2で得られた洗浄性向上剤を用いることで、洗浄率が高くなった。したがって、本発明の洗浄性向上剤は、洗浄性向上剤のみでも、洗浄性を向上させることができることがわかる。
【0071】
<製造例3>
配列番号7の遺伝子を制限酵素NcoIとBamHIで処理後、pET−22bプラスミド(Novagen社)のNcoI制限酵素サイトとBamHI制限酵素サイトに結合した。そのBL21(DE3)大腸菌株にこのプラスミドを形質転換してプロテアーゼ阻害剤(E−1)を発現する大腸菌(γ)を作成した。
【0072】
<製造例4>
○プロテアーゼ阻害剤(E−1)の製造
実施例1の、「洗浄性向上剤(B−1)の製造」において、「大腸菌(α)」に変えて「大腸菌(γ)」を用いる以外は同様にして、Streptomyces albogriseolus由来の配列番号11のプロテアーゼ阻害剤(E−1)含有溶液を得た。SDS−PAGEを測定したところ、プロテアーゼ阻害剤(E−1)含有溶液中のプロテアーゼ阻害剤の濃度は2.2g/Lであった。
【0073】
<実施例3〜23>
表2の割合で25℃で配合し、本発明の洗剤組成物を作製した。
【0074】
<比較例2〜9>
表3の割合で25℃で配合し、比較の洗剤組成物を作製した。
【0075】
【表2】

【0076】
【表3】

【0077】
表2及び3中の各成分は、下記のものを使用した。
洗浄性向上剤(B−1)含有溶液:実施例1で得た15g/Lセルラーゼ(A−2)の水溶液
洗浄性向上剤(B−2)含有溶液:実施例2で得た15g/Lセルラーゼ(A−4)の水溶液
プロテアーゼ阻害剤含有溶液:製造例4で得た2.2g/Lプロテアーゼ阻害剤(E−1)含有溶液、151μM
界面活性剤:ラウリルアルコールエチレンオキサイド11モル付加物、三洋化成工業(株)製
プロテアーゼ溶液:ノボザイムス社製、商品名「アルカラーゼ2.5L」、SDS−PAGEよりアルカラーゼ含量は1g/Lと推定、37μM
【0078】
<洗浄性試験>
<配合直後の洗浄率>
実施例1〜23及び比較例1〜9で作製した溶液及び洗剤組成物0.6gを、水999.4gに溶解し溶液を得た。この溶液に、湿式人工汚染布(4cm×4cm)5枚を投入し、ターゴトメーター(大栄化学製)を用いて以下の条件にて洗浄及びすすぎをした後、布を取り出し、ギヤーオーブン(TABAI製、GPS−222)を用いて70℃で60分間乾燥し、試験布を得た。ついで、多光源分光測色計(スガ試験機製)を使用して、この試験布の540nmの反射率を、試験布1枚ごとに表裏2個所ずつ計4個所(試験布5枚で合計20個所)測定し、この平均値を求め、以下の式にて洗浄率(%)を算出した。結果を表1〜3に示す。
(洗浄条件)
時間:10分、温度:25℃、回転速度:120rpm
(すすぎ条件)
時間:1分、温度:25℃、回転速度:120rpm
(洗浄率)
洗浄率(%)={(RW−RS)/(RI−RS)}×100
なお、RIは清浄布の反射率、RWは洗浄布の反射率、RSは汚染布の反射率を示す。
また、使用した湿式人工汚染布は、表2の汚垢組成を有する財団法人洗濯科学協会製の湿式人工汚染布(540nmにおける反射率が40±5%)である。
【0079】
【表4】

【0080】
<25℃3ヶ月保管後の洗浄率>
実施例3〜23及び比較例2〜9で得た洗剤組成物について、上記<配合直後の洗浄率>において、作成直後の洗剤組成物の代わりに、洗剤組成物の作成後25℃で3ヶ月保管した後の洗剤組成物を用いる以外は同様に洗浄性試験をおこない、洗浄率を算出した。結果を表2及び3に示す。
【0081】
表2及び表3の配合直後の洗浄率の評価結果から、表2の実施例3〜23の本発明の洗浄性向上剤を含む洗剤組成物は、表3のそれぞれ界面活性剤濃度が同じ比較例2〜9と比較して、洗浄率が高いことがわかる。したがって、本願発明の洗浄性向上剤は、洗剤の洗浄性を向上させることができることが分かる。
特に、プロテアーゼを含む実施例の洗剤組成物は、さらに洗浄率が高いことがわかる。
また、25℃3ヶ月保管後の洗浄率の評価結果から、本発明の実施例において、プロテアーゼ及びプロテアーゼ阻害剤を含む洗剤組成物は、高い洗浄性を長期的に保つことができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の洗浄性向上剤は、衣料用洗浄剤、自動食器洗浄機用洗浄剤及びコンタクトレンズ用洗浄剤等の洗浄剤の洗浄性を向上させる洗浄性向上剤として使用できる。また、本発明の洗剤組成物は、衣料用洗浄剤、自動食器洗浄機用洗浄剤及びコンタクトレンズ用洗浄剤として使用でき、特に衣料用液体洗剤に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸配列を有する、又はこのアミノ酸配列の1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換及び付加からなる群より選ばれる少なくとも1種により変質したアミノ酸配列を有するセルラーゼ(A)からなる洗浄性向上剤(B)。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄性向上剤(B)及び界面活性剤(C)を含有する洗剤組成物。
【請求項3】
洗浄性向上剤(B)及び界面活性剤(C)の含有量が、(B)及び(C)の合計重量を基準として、(B)が0.0001〜60重量%、(C)が40〜99.9999重量%である請求項2に記載の洗剤組成物。
【請求項4】
さらにプロテアーゼ(D)及びプロテアーゼ阻害剤(E)を含有する請求項2又は3に記載の洗剤組成物。
【請求項5】
洗浄性向上剤(B)、界面活性剤(C)、プロテアーゼ(D)及びプロテアーゼ阻害剤(E)の含有量が、(B)、(C)、(D)及び(E)の合計重量を基準として、(B)が0.001〜60重量%、(C)が10〜99.998998重量%、(D)が0.000001〜30重量%、(E)が0.000001〜89.99899重量%である請求項4に記載の洗剤組成物。
【請求項6】
プロテアーゼ阻害剤(E)とプロテアーゼ(D)とのモル比{(E)のモル数/(D)のモル数}が0.5〜100である請求項4又は5に記載の洗剤組成物。

【公開番号】特開2012−196205(P2012−196205A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−38348(P2012−38348)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(000002288)三洋化成工業株式会社 (1,719)
【Fターム(参考)】