説明

洗浄機のノズル狙い位置調整装置およびその方法

【課題】実際の洗浄状態における洗浄圧力のまま洗浄部位に対する洗浄ノズルの位置を正確に調整することができる洗浄機のノズル狙い位置調整装置およびその方法を提供する。
【解決手段】調整用ターゲット3を被洗浄物20に取り付け、ノズル部2の取付固定位置35と調整用ターゲット3の中心軸30が洗浄機のX軸上に配置されるように調節する。洗浄圧力を実際の洗浄状態の圧力と同じ圧力に設定して、洗浄液を洗浄ノズル5から調整用ターゲット3に向けて噴射する。洗浄液は円錐8に当たった後、円錐8の斜面に沿ってあるいは円筒7内周面に沿って進み、洗浄液吐出孔10から円筒外部へ吐出される。NCにより洗浄ノズル5の狙い位置を洗浄機のX、Y、Z軸、および旋回方向へ移動させ、洗浄液が各洗浄液吐出孔10から均等に吐出するように調整する。洗浄液吐出孔10から均等に洗浄液が吐出される位置座標を洗浄ノズル5の狙い位置原点として、NCにより各洗浄部位を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物に対する洗浄機の洗浄ノズル位置を容易かつ正確に調整することができるノズル狙い位置調整装置およびその方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製品を洗浄するに際して従来から洗浄ノズルを使用する方法が採用されている。洗浄対象部位付近を洗浄ノズルで狙って洗浄しているものの、基本的には製品全体を洗浄するものであるため、いわゆるシャワー洗浄が一般的な洗浄方法であり、洗浄残し部位が発生するという不具合があった。
【0003】
下記に示す特許文献1から3にも、ノズルを使用して被洗浄物を洗浄する技術が開示されている。
特許文献1には、洗浄すべき瓶の種類に対応する係止位置表示目盛に、各ノズル位置調整部材を位置合わせして固定した後、該ノズル位置調整部材のノズル当接面に各エアノズルを当接させることにより、各ノズルの間隔を洗浄する瓶の種類に応じた正確な位置に調整することができるエアノズル位置調整装置が開示されている。
特許文献2には、洗浄ケースの上部に、塗装ガン先端部が着脱自在に挿通される孔を備え、洗浄ケースを塗装ガン先端部にセットしたときに、ノズルからの洗浄液を塗装ガンに接触させ得る位置に洗浄用ノズルをアームによって支持し、塗装ガンのノズルから霧化エア並びにパターンエアを吹き出させつつ、洗浄用ノズルから洗浄液を塗装ガンに吹き付けて洗浄する塗装ガンノズル用洗浄具が開示されている。
特許文献3には、洗浄槽の開口部を囲うように等間隔離間して複数の洗浄ガンを配設し、開口部から臨入させた塗装ガンを上記洗浄ガンのノズルから噴射する溶剤等によって洗浄する塗装ガンの洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭61−180998号公報
【特許文献2】実開平06−019866号公報
【特許文献3】特開昭63−123458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
洗浄残し部位の発生を抑制する方法として、実際の洗浄状態において洗浄部位に対する洗浄ノズルの調整を行う方法が考えられるが、ノズルから噴射された洗浄液は被洗浄物に当たった後、跳ね返り飛散して霧状になるため洗浄部位の確認が困難で、ノズルの向きを正確に調整することができなかった。そこで、洗浄ノズルの位置を調整する際に、狙い位置を確認できるように洗浄圧力を低くする方法が考えられるが、低い圧力によりノズルを調整する場合には、例えば、狙い位置がノズルから遠いほど重力の影響を大きく受けるため、実際の洗浄圧力の場合と比較するとノズルの狙い位置にずれが生じてしまう。したがって、そのズレを無くすために目測で補正しながらノズルの位置を調整しなければならないという欠点があった。
【0006】
また、上記特許文献1の発明は、被洗浄物の種類に合わせて、予め表示された目盛りに、順次、ノズルを合わせるだけでノズルの間隔を被洗浄物が配置された位置に調整することは可能であったが、実際の洗浄状態においてノズルの位置を洗浄部位に調整することはできなかった。また、上記特許文献2の発明は、洗浄ケースの上部孔に挿通した塗装ガンを、アームによって支持した洗浄用ノズルからの洗浄液で洗浄することは可能であったが、上記特許文献1と同様に、実際の洗浄状態において洗浄用ノズルの位置を洗浄部位に調整することはできなかった。また、上記特許文献3の発明は、洗浄槽の開口部から臨入した塗装ガンを、囲うように配設した複数の洗浄ガンからの溶剤の噴射によって洗浄することは可能であったが、上記特許文献1と同様に、実際の洗浄状態において洗浄用ガンの位置を洗浄部位に調整することはできなかった。
【0007】
そこで、本願発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、実際の洗浄状態における洗浄液の圧力のままで、洗浄部位に対する洗浄ノズルの位置を正確に調整することができる洗浄機のノズル狙い位置調整装置およびその方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗浄機のノズル狙い位置調整装置およびその方法は、下記各態様の構成のものとすることに特徴を有する。
【0009】
(発明の態様)
各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本明細書に記載した技術の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、技術的特徴は、各項に付随する記載、実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、一態様となり得る。なお、以下の各項において、(1)項ないし(2)項の各々が、請求項1ないし請求項2の各々に対応する。
【0010】
(1)数値制御される洗浄ノズルを有し、該洗浄ノズルから噴射した洗浄液を、被洗浄物の洗浄部位に到達させる洗浄機のノズル狙い位置調整装置において、
前記被洗浄物に取り付けられる台座部と、
該台座部に立設された円筒形状部と、
該円筒形状部内の前記台座上に、先端部が前記円筒形状部の中心軸と一致するように配設された円錐形状部と、
前記円筒形状部の底部側壁に、円周方向へ等間隔に形成された複数の洗浄液吐出孔とを備えるノズル狙い位置調整用ターゲットを有し、
該ノズル狙い位置調整用ターゲットの前記円錐形状部の先端部が、前記洗浄ノズルに対向するように配置されることを特徴とする洗浄機のノズル狙い位置調整装置。
【0011】
本洗浄機の洗浄ノズルは、数値制御(NC:NumericalControl)によって、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向の3次元的な動作が可能であると共に、旋回軸を中心として上下・左右方向への向きが変更可能である。洗浄ノズルは、NCにより、複数の任意の位置に移動可能である。
【0012】
本洗浄機のノズル狙い位置調整装置には、洗浄ノズルから噴射された洗浄液を、被洗浄物の洗浄部位に正確に到達させるために、洗浄ノズルの高さ、方向等、洗浄ノズルの取り付け固定位置を決定するためのノズル狙い位置調整用ターゲット(以下、単に、調整用ターゲットという)が設けられている。調整用ターゲットは、台座部と筒部と円錐形状部から概略構成され、洗浄ノズルの位置の調整時に被洗浄物に取り付けられて用いられる。台座部は、調整用ターゲットの底部に設けられており、該台座部が取付手段(例えば、チャックハンド、ジグに設けられたヒンジ等)によって被洗浄物上に固定される。筒部は、台座部の上面に対して鉛直方向に立設されており、中空円筒形状を有している。円錐形状部は、円筒内に、その先端部を円筒の中心軸と一致させ、円筒と同様に台座部上に立設されている。円筒と円錐形状部の径の大きさは、円錐形状部の外周と円筒の内周間に空間ができるようにそれぞれ決定されている。
【0013】
円筒の側壁には、同じ高さで、且つ、円周方向を等間隔に分ける位置に、側壁を貫通する孔が形成されている。該孔は、洗浄ノズルから噴射された洗浄液を円筒外部に吐出するための孔(洗浄液吐出孔)であり、台座部に近い位置、すなわち側壁下部の低い高さの位置に複数個、例えば4個から12個が形成されている。
【0014】
調整用ターゲットは、開口状態にある円筒の上側、および円錐形状部の先端部が洗浄ノズルに対向するように配設される。洗浄ノズルの径は、前記円筒の内径より小さく形成されており、洗浄ノズルから発射された洗浄液は、円筒の開口部に噴射され円筒内の円錐形状部に当たった後に円錐形状部の斜面に沿って進み、あるいは飛散して円筒内周面に沿って進み、洗浄液吐出孔から円筒外部へ吐出される。洗浄液吐出孔は、円筒側壁の対称の位置に形成されているので、例えば、洗浄液の進行が重力の影響を無視できる程、洗浄圧力が大きい場合には、洗浄ノズルから噴射された洗浄液が円錐形状部の軸と同一の方向で円錐形状部の先端部に当たったときに、各洗浄液吐出孔から洗浄液が均等に吐出される。
【0015】
なお、洗浄液が当たる部分の形状は、円錐形状部に限定されず、例えば、正三角錐、正四角錐等の多角錐形状であってもよい。これらの形状であっても、洗浄ノズルからの洗浄液が上記先端部の軸に対して垂直方向から噴射されれば、洗浄液は均等に錐の外周へ分散し各洗浄液吐出孔から均等に吐出される。なお、多角錐形状にした場合には、側壁に形成する洗浄液吐出孔の数は、その錐の角数と同じ数にする。
【0016】
(2)1項記載の洗浄機のノズル狙い位置調整装置を用いてノズル狙い位置を調整する洗浄機のノズル狙い位置調整方法であって、
前記洗浄ノズルの固定位置と前記調整用ターゲットの中心軸とを数値制御により洗浄ノズルが移動する一つの軸上に配置調整し、
前記洗浄ノズルから噴射される洗浄液の洗浄圧力を、実際の洗浄状態における洗浄圧力と同じ圧力に調整し、
前記洗浄ノズルから噴射され前記円錐形状部に当たった洗浄液が、前記複数の洗浄液吐出孔から均等に吐出するように前記洗浄ノズルの位置を調節することを特徴とする洗浄機のノズル狙い位置調整方法。
【0017】
本調整方法は、洗浄ノズルの取付位置の補正調整作業において用いられる。調整用ターゲットを被洗浄物に取付手段を介して固定する。洗浄ノズルは、NCにより3次元的な移動が可能であり、また、旋回軸を中心にその向きの変更も可能である。先ず、洗浄ノズルと被洗浄物に取り付けた調整用ターゲットとを向かい合わせて配置させると共に、数値制御により洗浄ノズルが移動する軸のうちの一つの軸上に洗浄ノズルと調整用ターゲットを配置させる。このとき洗浄ノズルは、数値制御装置に取付けた洗浄ノズルの取付固定位置を上記軸上に配置させ、調整用ターゲットは、その中心軸を上記軸上に配置させる。次に、洗浄ノズルの向き(軸方向)と円錐形状部の中心軸とを一致させるために、洗浄ノズルから洗浄液を調整用ターゲットに向けて噴射させる。このとき噴射する洗浄液の圧力は、実際の洗浄状態のときの洗浄圧力と同じ圧力に設定する。
【0018】
噴射された洗浄液は円錐形状部に当たった後、円錐形状部の斜面に沿って、あるいは飛散して円筒内周面に沿って進み、洗浄液吐出孔から円筒外部へ吐出される。各洗浄液吐出孔から洗浄液が均等に吐出されるようになるまで洗浄ノズルをX、Y、Z軸方向へ、あるいは旋回軸を中心に移動調整する。円筒側壁には洗浄液吐出孔が外周に沿って等間隔の位置に形成されているため、洗浄液が各洗浄液吐出孔から均等に吐出された調整位置が、洗浄ノズルの狙い位置になる。このようにして調整された洗浄ノズルの狙い位置の座標が、洗浄狙いの原点となり、数値制御により洗浄ノズルが被洗浄物の各洗浄部位へ正確に移動可能となる。なお、このとき被洗浄物の原点となる洗浄部位は、調整用ターゲットの中心軸と被洗浄物との交点、すなわち円錐形状部の先端部から被洗浄物に対して垂直に下ろした位置となる。
このような方法により、実際の洗浄状態における洗浄ノズルの狙い位置を、調整用ターゲットに形成された複数の孔から吐出される洗浄液の量・勢いを目視しながら調整可能であるため、容易かつ正確にその狙い位置を調整することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る洗浄機のノズル狙い位置調整装置およびその方法によれば、洗浄ノズルから噴射される洗浄液の洗浄圧力を実際の洗浄圧にしたまま、すなわち実際の洗浄状態と同じ状態で洗浄ノズルの狙い位置を調整することができるので、ズレなく正確にノズルを狙い位置に調整でき、確実に被洗浄物の汚れを洗浄することができる。また、等間隔に形成された孔から吐出される洗浄液の量・勢いを視覚的に確認しながら洗浄ノズルの狙い位置を調整できるので、正確かつ容易にノズルを狙い位置に調整でき、確実に被洗浄物の汚れを洗浄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る洗浄機のノズル狙い位置調整装置の一形態を示す斜視図である。
【図2】(a)は図1に示す洗浄機のノズル狙い位置調整装置のノズル狙い位置調整用ターゲットの一形態を示す一部断面側面図である。(b)はノズル狙い位置調整用ターゲットの正面図である。(c)はノズル狙い位置調整用ターゲットの背面図である。
【図3】洗浄ノズルの狙い位置調整方法を説明するためのノズル狙い位置調整装置の一形態を示す図である。
【図4】図1とは別のノズル狙い位置調整装置の一形態を示す一部断面図(a)と、正面図(b)である。
【図5】さらに図4とは別のノズル狙い位置調整装置の一形態を示す一部断面図(a)と、正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は、下記の形態に限定されるものではなく、下記実施の形態の他、前記(発明の態様)の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【0022】
本装置は及びその方法は、NC制御装置を使用して、洗浄ノズルを複数の任意位置に移動させることにより被洗浄物を洗浄することができる洗浄機に用いられる。
図1に示されるように、洗浄機のノズル狙い位置調整装置1は、ノズル部2とノズル狙い位置調整用ターゲット部(以下、調整用ターゲットという)3とから構成されている。
ノズル部2は、図示を省略する数値制御装置により制御され、ノズル本体4と洗浄ノズル5を備え、X軸、Y軸、およびZ軸方向の3次元的な動作が可能である他、旋回軸(ここではZ軸と一致する)を中心として左右方向への向きが変更可能である。X軸方向を調整用ターゲット3に対する洗浄ノズル5の前後方向、Y軸方向を調整用ターゲット3に対する洗浄ノズル5の左右方向とし、Z軸方向を調整用ターゲット3に対する洗浄ノズル5の上下方向とし、また、Z軸を洗浄ノズル5の旋回軸とする。洗浄ノズル5は、噴射される洗浄液Wが調整用ターゲット3に到達するようにその位置が制御される。
【0023】
調整用ターゲット3は、図1および図2に示されるように、その底部に設けられた台座部6と、台座部6にその上面に対して垂直方向に立設された筒部7と、円筒7内に立設された円錐形状部8とから概略構成されている。調整用ターゲット3は、洗浄ノズル5の狙い位置を調整する際に被洗浄物に取り付けられて使用されるものである。台座部6は、板形状(例えば、円板形状)を有しており、その周辺部には取付孔9a、9bが設けられ、調整用ターゲット3は、この取付孔9a、9bを介して取付手段(例えば、チャックハンド、ジグに設けられたヒンジ、ビス等)によって被洗浄物の洗浄部位上に取り付け固定される。
【0024】
筒部7は、中空円筒形状を有しており、筒部(以下、円筒という)7の側壁には、円筒の高さ方向において同じ高さであって、且つ、周方向において等間隔に孔10が側壁を貫通して形成されている。該孔10は、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液Wを円筒外部に吐出するための洗浄液吐出孔10であり、円筒の高さ方向において低い下部(台座部6に近い位置)に形成されている。洗浄液吐出孔10は、例えば、4個から12個のいずれかの数に設定されている。
【0025】
円錐形状部8は、円筒7内中央部の台座部6上に、円筒7の中心軸とその中心軸を一致させ立設されている。つまり、円錐形状部の先端部11が円筒7の中心軸上に配置されるように設けられている。円錐形状部8は、台座部6に固定手段13(例えば、ビス等)によって取付固定されている(図2参照)。また、円錐形状部8の底部の大きさは、円錐形状部8の外周と円筒7の内周間に空間部12(図2参照)が存在するような大きさに設定されている。
【0026】
調整用ターゲット3は、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液Wを、被洗浄物の洗浄部位に正確に到達させるために、洗浄ノズル5の高さ、方向等、洗浄ノズル5の取り付け固定位置を決定するためのものである。調整用ターゲット3は、図1に示されるように、円筒7の上部(円錐形状部8の先端部)を洗浄ノズル5に対向して配設される。図示は省略されているが、調整用ターゲット3は洗浄ノズル5側から見て円錐形状部8の中心軸と被洗浄物の洗浄部位とが重なるように取り付けられている。洗浄ノズル5から噴射された洗浄液Wは、円筒7内の円錐に当たった後に、円錐形状部8の斜面に沿ってあるいは飛散して円筒7内周面に沿って進み、円筒7の側壁に形成された洗浄液吐出孔10から円筒外部へ吐出される。円筒7と円錐形状部8との中心軸は一致し、洗浄液吐出孔10は円筒側壁に等間隔で形成されているので、例えば、洗浄圧力が大きく、洗浄液の進行に対する重力の影響が無視できる場合には、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液Wが円錐形状部8の軸と同一の方向であって円錐形状部8の先端部11に同一軸方向から当たったときに、各洗浄液吐出孔10から吐出する洗浄液Wが均等となる。
【0027】
図1では、洗浄液が噴射される部分の形状が円錐形状に形成されているが、これに限定されず、例えば、正三角錐、正四角錐、正五角錐等の多角錐形状であってもよい。この場合、円筒7の外壁に形成される洗浄液吐出孔10の数は、その錐の角数と同数だけ形成され、多角錐の各底辺に対向して隣接する洗浄液吐出孔同士が等間隔になるように形成される。これにより、多角錐形状であっても、各洗浄液吐出孔から吐出される洗浄液の量、勢いを均等にすることで、洗浄ノズルの狙い位置を正確に調整することができる。例えば、洗浄圧力が大きく、洗浄液の進行に対する重力の影響が無視できる場合には、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液が多角錐形状部の先端部に垂直方向から当たれば、洗浄液は多角錐形状部 の各外周面へ均等に分散し、各洗浄液吐出孔から吐出される洗浄液の量、勢いも均等になる。
【0028】
図3に基づき、洗浄ノズル取付位置の補正調整作業において用いられる洗浄ノズルの狙い位置調整方法を説明する。
ノズル部2は、被洗浄部20に取り付けられた調整用ターゲット3に対して、前後方向をX軸、上下方向をY軸、左右方向をZ軸とし、また、上下旋回軸をZ軸として配設する。ノズル部2は数値制御により任意の位置に移動可能に設定されている。調整用ターゲット3は、取付手段によって被洗浄物20に取り付け固定する。ノズル部2の中心となる取付固定位置35と調整用ターゲット3の中心軸30とがX軸上に配置されるように調節する。
【0029】
次に、洗浄ノズル5の向き(ノズル軸方向31)と円錐形状部8の中心軸30とを一致させるために、洗浄液を洗浄ノズル5から調整用ターゲット3に向けて噴射する。このとき噴射する洗浄液の圧力は、実際の洗浄状態のときの洗浄圧力と同じ圧力に設定する。洗浄液は円錐形状部8に当たった後、その斜面に沿ってあるいは飛散して円筒7内周面に沿って進み、洗浄液吐出孔10から円筒外部へ吐出される。円筒7内(円錐形状部8)に噴射された洗浄液が、円筒7の側壁に放射状に形成された各洗浄液吐出孔10から均等に吐出されるように、ノズル部2の位置、すなわち洗浄ノズル5の狙い位置をX、Y、Z軸、あるいは旋回方向へ調整する。この場合、円筒7側壁には洗浄液吐出孔10が外周に沿って等間隔の位置に形成されているため、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液が、円錐形状部8の先端部に垂直方向から当たるとき、すなわち、洗浄ノズル5の軸方向(ノズルから噴射される洗浄液の方向)と円錐形状部8の中心軸とが一致するとき、洗浄液は各洗浄液吐出孔10から均等に吐出される。
【0030】
図3に示された形態の調整過程では、円錐形状部8の中心軸30に対して洗浄ノズル5の軸方向31が角度θだけ上向きにずれている。したがって、この場合には、ノズル部2を旋回軸(Z軸)を中心に角度θだけ下向き方向へ旋回調整してやればよい。このような調整により洗浄液吐出孔10から均等に洗浄液が吐出される位置を特定できたら、その座標位置を洗浄狙いの原点として、数値制御によりノズル部2を任意の各洗浄部位へ移動させることができる。
【0031】
この方法により、洗浄ノズルの狙い位置を、実際の洗浄状態と同じ状態(洗浄圧力を同じ圧力にした状態)で調整できるので、誤差なく正確に洗浄部位を特定することができる。また、各洗浄液吐出孔から吐出される洗浄液の量・勢いを目視しながら洗浄ノズルの狙い位置を調整可能であるため、容易かつ正確にその狙い位置を調整することができる。
【0032】
図4は、調整用ターゲットの別の一形態を示す。この調整用ターゲット3’は、図2に示す形態のものと比較して、洗浄液吐出孔10’が、円筒7の底面、すなわち台座部6に形成されている点で相違している。洗浄液吐出孔10’は、立設されている円錐形状部8の周囲に、隣接する洗浄液吐出孔同士が等間隔で台座部6を貫通して形成されている。洗浄液吐出孔10’の数は、4個から12個のいずれかの数に設定する。洗浄ノズル5から調整用ターゲット3’の円錐形状部8に向けて噴射された洗浄液Wは、円錐形状部8の斜面に沿って、あるいは飛散して円筒7内周面に沿って進み、各洗浄液吐出孔を通過して調整用ターゲット3の背面側外部へ吐出される。円筒7と円錐形状部8との中心軸は一致して設けられ、洗浄液吐出孔10’は円筒底面に等間隔で形成されているので、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液Wが円錐形状部8の軸と同一の方向であれば、円錐形状部8の先端部11に垂直方向から当たったときに、各洗浄液吐出孔10’から吐出される洗浄液Wが均等となる。なお、調整用ターゲット3’は、取付ブラケット40を介して被洗浄物に取り付け固定するようにしてもよい。
【0033】
本形態のように洗浄液吐出孔10’の方向が、円筒7への洗浄液Wの入射方向と同じタイプの調整用ターゲット3’は、洗浄ノズル5から噴射される洗浄液の洗浄圧力が小さく、円筒側壁方向への拡がりが少ない場合の使用に適している。本形態の調整用ターゲット3’の使用により、洗浄機のノズル狙い位置を容易かつ正確に調整することができる。なお、洗浄ノズル5の狙い位置調整方法およびその効果は、図1、2に示す形態の調整方法およびその効果と同様である。
【0034】
図5は、調整用ターゲットのさらに別の一形態を示す。この調整用ターゲット3”は、図2に示す形態のものと比較して、円筒内に円錐形状の部材を備えてなく、円筒形状部7’が台座部6を貫通し台座部6の背部まで達して形成されている。また、円筒7内を通過した洗浄液Wの流量値を、円筒形ノズルの先端部に設けた流量計51によって計測しノズルの狙い位置を調整する。洗浄ノズル5から調整用ターゲット3”の円筒7に向けて噴射された洗浄液Wは、円筒内に流れ込んだ後に流量計51に達するので、洗浄ノズル5から噴射された洗浄液が最も多く円筒7内に流れ込む洗浄ノズル5の位置が、流量計51によって測定される洗浄液の流量値が最大となる洗浄ノズル5の位置となり、この位置が洗浄ノズル狙い位置となる。なお、調整用ターゲット3”は、取付ブラケット50を介して被洗浄物に取り付け固定するようにしてもよい。
【0035】
本形態の場合、流量計が必要となるが、調整用ターゲット3”の構造を図1、図4に示す形態のものと比較して単純なものとすることができる。また、本形態の調整用ターゲット3”の使用により、洗浄機のノズル狙い位置を容易かつ正確に調整することができる。なお、洗浄ノズル5の狙い位置調整方法は、図1、図4に示す形態の調整方法における“各洗浄液吐出孔から吐出される洗浄液を均等にする調整工程”を“流量計によって計測される洗浄液の流量値を最大にする調整工程”に置き替えた調整方法になる。その効果は、図1、4に示す形態の効果と同様である。
【符号の説明】
【0036】
1 洗浄機のノズル狙い位置調整装置
2 ノズル部
3、3’、3” ノズル狙い位置調整用ターゲット部(調整用ターゲット)
4 ノズル本体
5 洗浄ノズル
6 台座部
7 筒部
8 円錐形状部
9a、9b 取付孔
10、10’ 洗浄液吐出孔
11 先端部
12 弾性部材
13 固定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御される洗浄ノズルを有し、該洗浄ノズルから噴射した洗浄液を、被洗浄物の洗浄部位に到達させる洗浄機のノズル狙い位置調整装置において、
前記被洗浄物に取り付けられる台座部と、
該台座部に立設された円筒形状部と、
該円筒形状部内の前記台座上に、先端部が前記円筒形状部の中心軸と一致するように配設された円錐形状部と、
前記円筒形状部の底部側壁に、円周方向へ等間隔に形成された複数の洗浄液吐出孔とを備えるノズル狙い位置調整用ターゲットを有し、
該ノズル狙い位置調整用ターゲットの前記円錐形状部の先端部が、前記洗浄ノズルに対向するように配置されることを特徴とする洗浄機のノズル狙い位置調整装置。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄機のノズル狙い位置調整装置を用いてノズル狙い位置を調整する洗浄機のノズル狙い位置調整方法であって、
前記洗浄ノズルの固定位置と前記調整用ターゲットの中心軸とを数値制御により洗浄ノズルが移動する一つの軸上に配置調整し、
前記洗浄ノズルから噴射される洗浄液の洗浄圧力を、実際の洗浄状態における洗浄圧力と同じ圧力に調整し、
前記洗浄ノズルから噴射され前記円錐形状部に当たった洗浄液が、前記複数の洗浄液吐出孔から均等に吐出するように前記洗浄ノズルの位置を調節することを特徴とする洗浄機のノズル狙い位置調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−194458(P2010−194458A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−42332(P2009−42332)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】