説明

洗浄殺菌用電解水乳化剤組成物

【課題】 食品製造現場に好適で、人体に対して安全で、食材に対しても風味等に悪影響を与えず、殺菌効果を失わずに洗浄効果を向上させる殺菌洗浄剤を提供する。
【解決手段】 電解水と乳化剤からなる電解水乳化剤組成物、であり、この電解水が、ナトリウムイオン濃度が200ppm以下、pHが4.5〜6.8の範囲の電解水であること、電解水が有効塩素濃度10〜30ppm、pH5.0〜6.5であること、電解水が、実質的に塩化ナトリウムを含有しない水に塩酸を添加し、塩酸を添加した水を無隔膜電解槽に通水し、電気分解し、水で希釈して製造された電解水であること、乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであること、そして、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、脂肪酸部分の炭素数が14以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであること、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、250ppm以上の濃度であること、を望ましい態様とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄殺菌効果を持つ電解水乳化剤組成物に関する。更に詳しくは、殺菌料として、好ましくは塩酸のみを電解質として無隔膜電解槽を用いて製造した微酸性電解水に、乳化剤として、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステルを組み合わせて洗浄効果を向上させた電解水乳化剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グリセリン脂肪酸エステルなどの洗浄剤と、次亜塩素酸ナトリウム溶液などの殺菌料との併用が示されているが、洗浄剤の使用濃度が1%以上と高く、殺菌料として電解水を用いた場合、電解水中の有効塩素を消費してしまい、十分な殺菌効果が得られないという問題があった。[特許文献1]
【特許文献1】特開平8−131143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
電解水、特に微酸性電解水は、有効塩素濃度が低いにもかかわらず、高い殺菌効果をもち、人体に対して安全であること、金属腐食性が低いことなどから、特に食品製造分野の衛生管理に使用されている。さらに、使用感は水道水とほぼ同様であることから、食品工場等では水道水代わりに使用され、製造環境の衛生面での向上に役立てられている。
【0004】
しかし、微酸性電解水の有効塩素濃度は10〜30ppmと低いため、水道水代わりに使用する際に洗浄剤と混合すると、洗浄剤の構成成分により有効塩素濃度が消費され、十分な殺菌効果を発揮することができなかった。
【0005】
そこで、微酸性電解水の殺菌効果を失わずに洗浄効果を向上させる剤の開発が求められていた。また、その剤は食品製造現場で使われることから人体に対して安全で、食材に対しても風味等に悪影響を与えないものが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、電解水と乳化剤からなる電解水乳化剤組成物、である。
また、本発明は、電解水が、ナトリウムイオン濃度が200ppm以下、pHが4.5〜6.8の範囲の電解水であること、電解水が、有効塩素濃度10〜30ppm、pH5.0〜6.5であること、電解水が、実質的に塩化ナトリウムを含有しない水に塩酸を添加し、塩酸を添加した水を無隔膜電解槽に通水し、電気分解し、水で希釈して製造された電解水であること、乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルであること、そして、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、脂肪酸部分の炭素数が14以下のポリグリセリン脂肪酸エステルであること、ポリグリセリン脂肪酸エステルが、250ppm以上の濃度であること、を望ましい態様としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電解水乳化剤組成物は、電解水の殺菌効果をそこなわずに洗浄効果を向上させることができ、食品製造現場において作業者に対して安全で扱いやすく、また食材に対して風味等に影響を与えない衛生管理資材を供給することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の好ましい実施形態に限定されず、本発明の範囲内で自由に変更することができるものである。尚、本明細書において百分率は、特に断りのない限り質量による表示である。
【0009】
本発明の電解水は、原料水を電気分解して得られる電解水であれば、いかなるものでも良い。しかし、本発明では、微酸性電解水を使用することが好ましい。このような微酸性電解水としては、ナトリウムイオン濃度が200ppm以下、pHが4.5〜6.8の範囲の電解水であることが好ましく、また、有効塩素濃度10〜30ppm、pH5.0〜6.5であることが特に好ましい。
【0010】
本発明に使用される好ましい微酸性電解水は、ナトリウムイオン濃度が、一般的な上水の水質基準である200ppm以下、より好ましくは50ppm以下の電解水からなることを一つの特徴としている。
【0011】
電解水は、水を電気分解して得られるものであるが、電解効率を上昇させるために塩化ナトリウムを添加することが常識であった。しかし、本発明では、ナトリウムイオン濃度が200ppm以下の微酸性電解水を使用することが好ましい。また、この微酸性電解水は、pH値が4.5〜6.8の中性付近であることが好ましい。
【0012】
このような微酸性電解水であれば、実質的に塩化ナトリウムを含有しない電解水であるから、使用した後に、仮に残留しても食品の風味に与える影響はない。
【0013】
この場合、微酸性電解水は、次の手順で製造されるものであることが望ましい。即ち、まず、実質的に塩化ナトリウムを含有しない水に塩酸を添加する。ここに「水」は、水道水、地下水、伏流水、脱塩水、蒸留水、精製水(RO水、膜処理水)、これらの混合水等であって、実質的に塩化ナトリウムを含有しない水を意味している。
【0014】
「実質的に塩化ナトリウムを含有しない」の意味は、人為的に塩化ナトリウムを添加することがないということである。この場合、水に自然に含有されている微量の塩化ナトリウムは考慮しない。
【0015】
塩化ナトリウムが人為的に添加されていないということは、塩酸を添加した水のナトリウムイオン濃度が、前記「水」に含有されていたナトリウムイオン濃度を越えることがないことを意味している。例えば、このような「水」は、一般にナトリウムイオン濃度200ppm以下であるから、本発明における塩酸を添加した水も、ナトリウムイオン濃度は200ppm以下が好ましいことになる。
【0016】
また、塩酸を添加した水の塩化水素濃度は、適切な反応を起させるためには0.01%以上であることが望ましく、特に0.1%以上であることが推奨される。ただし、経済性を追及する場合には、塩化水素濃度は、1.0%以上、21.0%以下であることが望ましい。即ち、塩化水素濃度が1.0%以上であれば、工業的に安定した反応を得ることが可能であり、また21.0%以下であれば、常温で発煙することがなく、保管、取扱いの点で望ましいからである。
【0017】
このような塩酸を添加した水を無隔膜電解槽に通水した後、陰陽両極に通電し、電気分解する。尚、無隔膜電解槽は、隔膜を有しない電解槽である。
【0018】
この無隔膜電解槽は、単極式の電解槽であっても良いが、複極式の電解槽であることが望ましい。一般に、電解槽の中で複数の電極を結線する方式としては、単極式と複極式の2種類がある。単極式とは、電極の全てが電源の陰極又は陽極のいずれかと接続される方式であり、複極式とは、例えば、複数の電極を一定間隔で重ね合わせ、相互に絶縁した構造を有しており、電源の陽極に接続された電極(即ちアノード)と、電源の陰極に接続された電極(即ちカソード)との間に、いずれの極とも接続されない中間電極が、少なくとも1枚存在する方式である。
【0019】
尚、電気分解の際には、電極1対あたりの電圧は1.5ボルト以上、4.0ボルト以下であることが望ましい。複極式電解槽の場合は、前記したようにカソードとアノードとの間に中間電極が存在しているが、「電極1対あたりの電圧」とは、カソード、アノード、及び中間電極を含めて、隣り合った2枚の電極の間の電圧を意味する用語である。
【0020】
一般に、電極1対あたりの電圧を上げていくと、1.3ボルト以上で塩素が発生し始め、1.5ボルト以上で最大の発生量に達する。従って、電極1対あたりの電圧は1.5ボルト以上が望ましいのである。また、電圧が4.0ボルトを越えると、酸素が発生し始め、5.0ボルトを越えるとオゾンが発生し始める。オゾンの発生は望ましくないため、電圧は5.0ボルト以下が望ましい。また、酸素の発生は電力の無駄になるため、電圧は4.0ボルト以下が特に望ましい。尚、電圧は、経済上の観点からは、3.0ボルト以下であることが好ましい。少なくとも、オゾンの発生は作業環境の面で好ましくないため、電圧は5.0ボルト以下が望ましく、本発明で使用する電解水は特にオゾンのない電解水であることが好ましいのである。
【0021】
このように電解水を製造した後は、得られた電解水は希釈するとよい。一般に、電解水の製造においては、塩素濃度が高い水を少量だけ製造し、その後これを希釈して使用することが経済性の上からは望ましい。従って、電気分解した後は、希釈した上で、電解水を採取するのである。希釈の度合いは、pHが5.0〜6.5、有効塩素濃度が10〜30ppmの範囲になるように希釈することが好ましい。
【0022】
この製造方法により製造された電解水は、有効塩素濃度が1ppm乃至2ppmの濃度まで希釈されたとしても殺菌効果が消失することがない。
【0023】
なお、電解水は、中和剤により中和しても良い。有効塩素濃度が高い電解水を得た場合に、その電解水のpHが低くなる場合があるが、一般に、塩素が溶解した水は、pHによってその殺菌力が変化することが知られており(株式会社フジ・テクノシステム発行、「食品工業の微生物制御総合技術資料集」、第242〜243ペ−ジ、昭和52年)、電解水のpHも4.5〜6.8であれば殺菌力が高くなるため望ましいのである。
【0024】
また、電解水が強酸性であれば、使用する場所、方法等に制約を受けることになるため、電解水のpHは5.0以上であることが好ましい。このような中和剤としては、アルカリ性の薬品が好適であり、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等を使用することができるが、水酸化ナトリウムが最も望ましい。このように電解水を中和する場合は、中和剤の添加は、希釈の前であっても後であっても良いが、後の方が望ましい。
【0025】
以上の操作は、例えば、市販の電解水製造装置であるピュアスター(登録商標。株式会社トーワテクノ社製、以下同じ。)によって行うことができる。この装置に、21%の塩酸又は3%の塩酸を貯留したタンクを設置する。前者の場合は21%の塩酸を水で希釈した後に無隔膜電解槽に通水し、後者の場合には、3%の塩酸は、それ自体が「塩酸を添加した水」であるから、そのまま無隔膜電解槽に通水する。そして連続的に電気分解し、電解水を製造することが可能である。この際は、得られた電解水が、pH4.0以上、好ましくはpH4.5〜6.8、特に好ましくはpH5.0〜6.5、有効塩素濃度10〜30ppmの範囲になるような条件で、無隔膜電解槽の電解条件を調節し、また電解水を希釈することが好ましい。
【0026】
このようにして得られた電解水は、塩化ナトリウムが実質的に添加されておらず、しかもpHはほぼ中性の付近にあり、通常の電解水に比して、より自然水に近い物性を有している。従って、本発明に好適に利用することができるのである。
【0027】
一方、本発明の乳化剤は、様々なものを用いることができるが、ポリグリセリン脂肪酸エステルであることが好ましい。
【0028】
ポリグリセリン脂肪酸エステルを選択する場合には、脂肪酸部分の炭素数が14以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを選択することが好ましく、8〜14の範囲、特に8のものが好ましい。
【0029】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
(電解水の調製)
株式会社トーワテクノ社製ピュアスターMp−240(登録商標)を使用し、常法どおり電解水を製造し、希釈し、有効塩素濃度30ppm、pH5.2の微酸性電解水を調製した。
【0031】
なお、有効塩素濃度は、日本規格協会(1993)の日本工業規格(以下、JISと略記する。)K0102の第36.2のヨウ素滴定法により測定する。
【0032】
(電解水乳化剤組成物の調製)
上記の微酸性電解水を、1リットル容三角フラスコに採取し、界面活性剤として、5種類のポリグリセリン脂肪酸エステル(デカグリセリンジカプリル酸エステル、デカグリセリンカプリン酸エステル、デカグリセリンミリスチン酸エステル、デカグリセリンパルミチン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル)を、界面活性剤成分として500ppmの含有量になるように添加し、本発明の電解水乳化剤組成物を5種類得た。
【0033】
次に試験例を示して本発明を詳細に説明する。
[試験例1]
この試験は、本発明の電解水乳化剤組成物において、脂肪酸の炭素数と有効塩素の保存性との関係を確認するために行った。
【0034】
(試料の調製)
実施例1で得られた5種類の電解水乳化剤組成物を試験試料とした。ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸炭素数に応じて、デカグリセリンジカプリル酸エステルのものを試料1、デカグリセリンカプリン酸エステルのものを試料2、デカグリセリンミリスチン酸エステルのものを試料3、デカグリセリンパルミチン酸エステルのものを試料4、デカグリセリンステアリン酸エステルのものを試料5とした。なお、乳化剤の添加濃度は500ppmである。
【0035】
また、これとは別に、乳化剤を添加していない通常の微酸性電解水を基準試料(Blank)とし、合計6種類の試料を調製した。
【0036】
(試験方法)
これらの試料1〜5並びに基準試料について、最初に有効塩素濃度を測定した。次いで、遮光して室温にて保管し、経時的に、24時間、48時間、192時間を経過した時点で、同様に有効塩素濃度を測定した。
【0037】
(試験結果)
この試験の結果は、表1に示すとおりである。
【0038】
【表1】

【0039】
表1からは、ポリグリセリン脂肪酸エステルの脂肪酸の炭素数が14以下の試料1〜3においては、有効塩素濃度が経時的に低下する度合いが小さいことが明らかである。特に脂肪酸の炭素数が8である試料1が最小であることが明らかである。
【0040】
この試験の結果、脂肪酸の炭素数が14以下のポリグリセリン脂肪酸エステルを使用した場合には、有効塩素の保存性が高く、特に脂肪酸の炭素数が8のものであれば、この効果が顕著であることが判明した。
【0041】
[試験例2]
この試験は、本発明の電解水乳化剤組成物の、殺菌効果を確認するために行った。
(試料の調製)
実施例1で得られた5種類の電解水乳化剤組成物と同様に調製した電解水乳化剤組成物であって、炭素数が8のデカグリセリンジカプリル酸エステルを250ppm含有する電解水乳化剤組成物を試験試料1とした。また、滅菌精製水、乳化剤を添加しない微酸性電解水、及び、デカグリセリンジカプリル酸エステルを250ppm含有する精製水を、各々対照試料1、対照試料2、及び対照試料3とした。
【0042】
また、同様に、炭素数が8のデカグリセリンジカプリル酸エステルを500ppm含有する電解水乳化剤組成物を試験試料2とし、また、滅菌精製水、乳化剤を添加しない微酸性電解水、及び、デカグリセリンジカプリル酸エステルを500ppm含有する精製水のを、各々対照試料4、対照試料5、及び対照試料6とした。以上の各試料を1000mLずつ容器に貯留した。
【0043】
(試験方法)
1.5mm×26mm×76mmの大きさのステンレス板(SUS304、No.2B仕上げ)の上に、10%ペプトン含有枯草菌Bacillus subtilis (ATCC6633)の芽胞液10μlを、26mm×45mmの範囲に均一に塗布し、60℃で30分ほど乾燥し、試験片とした。
【0044】
この試験片を染色バットにセッティングし、各試料に対して、1分間で30回の頻度で浸漬と引き出しを繰り返し、3分後、5分後、10分後に、各々、表面をガーゼでふき取って、常法により段階希釈し、標準寒天培地で混釈後、35度48時間培養し、生残菌数を測定した。
【0045】
(試験結果)
この試験の結果は、表2及び表3に示すとおりである。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
表2をみれば、試験試料1は、対照試料2と同等の殺菌効果を有しており、しかも、この殺菌効果は、対照試料1や対照試料3に比しても高いことが明らかである。
【0049】
また、表3をみれば、試験試料2は、対照試料5と同等の殺菌効果を有しており、しかも、この殺菌効果は、対照試料4や対照試料6に比しても高いことが明らかである。
【0050】
この試験の結果、本発明の電解水乳化剤組成物は、乳化剤の濃度が250ppmであっても500ppmであっても、通常の微酸性電解水と同等の殺菌効果を有しており、しかもその殺菌効果は、単なる滅菌精製水や、ポリグリセリン脂肪酸エステルを250ppm又は500ppm含有する精製水に比しても高いものであることが判明した。
【0051】
[試験例3]
この試験は、本発明の電解水乳化剤組成物の、洗浄効果を確認するために行った。
(試料の調製)
実施例1で得られた5種類の電解水乳化剤組成物のうち、炭素数が8のデカグリセリンジカプリル酸エステルを500ppm含有する電解水乳化剤組成物を試験試料とした。また、乳化剤を添加しない微酸性電解水を対照試料とした。
【0052】
(試験片の調製)
最初に、表4に示す配合に基づいて、モデル汚れ液を調製した。すなわち、牛脂:大豆油を1ml:1mlの割合で混合した油脂20gと、モノオレイン0.25gと、オイルレッド0.1gとを、クロロホルム60mlに溶解し、モデル汚れ液を調製した。
【0053】
【表4】

【0054】
このモデル汚れ液に対して、スライドガラスを2秒間浸漬し、引き上げて余分な水滴を除去した後、2時間風乾し、これを担体とした。この担体の質量を測定し、予め測定してあったスライドガラスの質量を差し引いた値を「洗浄前の付着汚れの質量」とした。
【0055】
(試験方法)
二つの1リットル容ビーカーに試験試料及び対照試料を各々700ミリリットル(40℃設定)ずつをいれ、スターラーで1000±20rpmに撹拌しておき、ここに前記担体(スライドガラス)をセットし、15分後引き上げて、続けて精製水700ml中に30秒間浸漬した。引き上げて水を切り、一晩風乾した後、担体の質量を測定し、予め測定してあったスライドガラスの質量を差し引いた値を「洗浄後の付着汚れの質量」とした。
【0056】
以上の測定結果に基づいて、次式により洗浄率を求めた。
洗浄率(%)=(洗浄前の付着汚れの質量 − 洗浄後の付着汚れの質量)
/洗浄前の付着汚れの質量 × 100
【0057】
(試験結果)
この試験の結果は、表5に示すとおりである。
【0058】
【表5】

【0059】
表5では、試験試料は洗浄率8.7%であるのに対し、対照試料は5.8%であって、試験試料は対照試料に比して洗浄率が約1.5倍も高いことが明らかである。この試験の結果、本発明の電解水乳化剤組成物は、通常の微酸性電解水に比して、洗浄効果が高いことが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明の電解水乳化剤組成物は、電解水の殺菌効果をそこなわずに洗浄効果を向上させることができ、食品製造現場において作業者に対して安全で扱いやすく、また食材に対して風味等に影響を与えない衛生管理資材を供給することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解水と乳化剤からなる電解水乳化剤組成物。
【請求項2】
電解水が、ナトリウムイオン濃度が200ppm以下、pHが4.5〜6.8の範囲の電解水である請求項1に記載の電解水組成物。
【請求項3】
電解水が、有効塩素濃度10〜30ppm、pH5.0〜6.5である請求項1に記載の電解水乳化剤組成物。
【請求項4】
電解水が、実質的に塩化ナトリウムを含有しない水に塩酸を添加し、塩酸を添加した水を無隔膜電解槽に通水し、電気分解し、水で希釈して製造された電解水である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電解水乳化剤組成物。
【請求項5】
乳化剤が、ポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電解水乳化剤組成物。
【請求項6】
ポリグリセリン脂肪酸エステルが、脂肪酸部分の炭素数が14以下のポリグリセリン脂肪酸エステルである請求項5に記載の電解水乳化剤組成物。
【請求項7】
ポリグリセリン脂肪酸エステルが、250ppm以上の濃度である請求項5又は請求項6に記載の電解水乳化剤組成物。



【公開番号】特開2008−37882(P2008−37882A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209775(P2006−209775)
【出願日】平成18年8月1日(2006.8.1)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】